説明

読影レポート作成支援システム

【課題】読影レポートに施された修正内容を解析し、該修正内容を伝達するか否かを判定したうえで、伝達する修正内容のみを反映し表示可能とする読影レポート作成支援システムを提供する。
【解決手段】同一検査の版が異なる読影レポートに対して、異なる記載を修正差分として抽出し、前記修正差分それぞれに対して修正方法を特定するとともに、前記修正差分それぞれに対して解析を行うことで、前記修正差分それぞれを修正差分の種類ごとに分類し、前記修正方法と前記修正差分の種類ごとの分類との組み合わせを基に修正種別を特定したうえで、前記修正種別に応じて、前記修正差分を伝達するか否かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線コンピュータ断層撮影装置(CT)や磁気共鳴イメージング装置(MRI)などの医用画像撮影装置で撮影された患者の画像に対し、医学的所見の報告書として作成された読影レポートを参照可能とする読影レポート作成支援システムに関し、特に、複数人の読影医により作成又は修正された読影レポートの修正内容を参照可能とする読影レポート作成支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医用画像撮影装置により撮像された患者の画像に対して、読影(検査画像に写っている所見をスクリーニングする作業)が行われ、その読影時の結果をまとめた報告書(読影レポート)が作成される。
【0003】
読影レポートの作成では、2人以上の読影医が当該検査の画像を読影する場合がある。例えば、2人の読影医が読影を行う場合、ある読影医(以下「1次読影医」と呼ぶ)が作成した読影レポートを、別の読影医(以下「2次読影医」と呼ぶ)が内容を修正することがある。このような場合に、2次読影医により修正された内容を1次読影医が確認することを可能とする読影レポート作成支援システムが従来技術として知られている。
【0004】
従来の読影レポート作成支援システムでは、作成済みのレポートの内容(文字列)が該レポートを作成した1次読影医と異なる読影医(例えば、2次読影医)により変更されると、レポートが修正されたことが1次読影医に伝達される。このとき1次読影医は、他の読影医に変更されたレポートの内容を読み、どのような修正が行われたのかを確認することが可能である。
【0005】
一方で、特許文献1に示されるような、ある読影レポートに対して関連性の深い他の読影レポートを抽出することを可能とした読影レポート作成支援システムが知られている。
【0006】
該読影レポート作成支援システムでは、レポートに含まれる文章に対して形態素解析を行い、該所見文から部位単語、事象単語、有無単語を含む記述単位をあらかじめ作成することで、該所見文を意味的に解析し構造化しておく。該読影レポート作成支援システムによれば、該記述単位を基にレポートの検索を行うことで意味的に関連性の深いレポートの抽出が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−129108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
2人以上の読影医が当該検査の画像を読影する場合、2次読影医による修正には、誤字脱字や変換ミスの修正等の軽微なものと、所見の修正等の医学的に重要なものとが混在している。このような場合に、従来の読影レポート作成支援システムにおいては、これらの修正を区別することなく反映し表示している。
【0009】
1次読影医は、該読影レポート作成支援システムによる表示を基に、修正後のレポートのどの部分がどのように修正されたかを確認する。そのため軽微な修正が多数含まれている場合には、重要な修正点を見落とす可能性がある。
【0010】
本発明は上記の問題を解決するものであり、読影レポートに対して修正が行われた場合に、その修正内容を解析することで、重要な修正を含む修正内容のみ1次読影医に伝達することを可能とする読影レポート作成支援システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、この発明の第1の形態は、同一検査の読影レポートを版ごとに識別して記憶するレポート管理部を備えた読影レポート作成支援システムであって、同一検査の版が異なる読影レポートに対して、異なる記載を修正差分として抽出する差分抽出部と、前記修正差分の修正方法と種類を特定する修正内容抽出部と、前記特定された修正方法と種類の組み合わせを基に修正種別を特定し、前記修正種別に応じて、前記修正差分を伝達するか否かを判定する伝達判定部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、読影レポートに施された修正の内容から修正種別を判別し、該修正種別を基に1次読影医にその修正内容を伝達するか否かを判定することが可能となる。このとき、重要な修正を含む修正種別のみ1次読影医に伝達するように設定することで、軽微な不備に対する修正について1次読影医への伝達を抑制し、重要な修正のみ伝達することが可能となる。これにより、1次読影医が修正内容を確認する作業の負担を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る読影レポート作成支援システムのシステムブロック図である。
【図2】文字情報差分抽出部の入力情報及び出力情報の一例である。
【図3】画像情報差分抽出部の入力情報及び出力情報の一例である。
【図4】文字列の修正差分を各セクションに分割した場合の一例である。
【図5】文字列の修正差分から修正方法を判別する方法を説明するための図である。
【図6】文字列の修正差分を修正差分の類に分類する処理のフローチャートである。
【図7】医学用語辞書のデータ構造の一例である。
【図8】誤記、略語一覧辞書のデータ構造の一例である。
【図9】構造化処理による記述単位の作成で使用する構造化辞書のデータ構造の一例である。
【図10】構造化処理を説明するための図である。
【図11】文字列差分管理テーブルのデータ構造の一例である。
【図12】修正種別判定テーブルのデータ構造の一例である。
【図13】修正種別が誤記の修正の場合における修正種別判定テーブルのデータの一例である。
【図14】修正種別がてにをはの修正の場合における修正種別判定テーブルのデータの一例である。
【図15】修正種別が所見文の修正の場合における修正種別判定テーブルのデータの一例である。
【図16】伝達判定テーブルのデータ構造の一例である。
【図17】文字列の修正差分に関する修正内容の表示の一例である。
【図18】画像と文字列の組み合わせの修正差分に関する修正の表示の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る読影レポート作成支援システムについて図1を参照しながら説明する。本実施形態に係る読影レポート作成支援システムは、読影レポートを版ごとに識別して取り出し可能に記憶するレポート管理部10を備えた読影レポート作成支援システムであって、更に、差分抽出部20、修正種別判別部30、伝達判定部40、伝達内容保管部50、及び、修正内容表示方法選択部60を備えている。なお、各構成要素が異なるコンピュータに内蔵され、それらのコンピュータがネットワークを介して接続される構成としても良いし、全ての構成要素を1つのコンピュータに内蔵しても良く、図1に示した構成要素が含まれていれば各構成要素の組み合わせは限定されない。
【0015】
各構成要素の機能及び処理の内容について以下に説明する。
【0016】
レポート管理部10は、作成された読影レポートを版ごとに記憶するレポート保管部11と、所定の検査に関する所定の版の読影レポートを選択的に抽出する版管理部12とで構成される。
【0017】
レポート保管部11は、作成された読影レポートを、該読影レポートを作成した読影医の情報とあわせて記憶し管理する。読影レポートは、患者IDや患者氏名等の患者情報や、検査名や検査部位等の検査情報、検査で撮影したX線、CT画像等を読影した結果である所見又は診断、及び、所見又は診断の参考情報として添付されたキー画像とで構成される。レポート保管部11は、前述した読影医の情報、患者情報、検査情報、所見又は診断等の記載を検索キーとして、該検索キーに該当する読影レポートを抽出することが可能である。
【0018】
また、レポート保管部11は、既に記憶されている読影レポートの記載が更新されると、更新された読影レポートを更新前の読影レポートとは別の版として識別可能に記憶する。具体的には、レポート保管部11は、更新された読影レポートを、更新前の読影レポートとは異なるデータとして記憶することで、該更新前の読影レポートと該更新された読影レポートを別の版として識別する。この際、レポート保管部11は、新たに作成された版をその版を作成した読影医の情報とあわせて記憶する。レポート保管部11は、読影レポートが更新されるたびに新しい版として該読影レポートを記憶する。
【0019】
版管理部12は、読影レポートを抽出する条件として検査を特定する検索キー(例えば、前述した患者情報、検査情報、所見又は診断等)と版の指定を入力として受け、レポート保管部11から、入力指定された検査及び版に該当する読影レポートを抽出する。これにより、例えば、同一検査の読影レポートに対して、最新版の読影レポートと最新版より一つ前の版の読影レポートを選択的に抽出することが可能となる。
【0020】
また、版管理部12は、読影レポートを抽出する条件として読影医の情報を指定することで、該読影医が作成もしくは修正した版を抽出できるようにすると良い。
【0021】
レポート保管部11及び版管理部12の動作について具体的に例をあげて説明する。例えば、読影医αにより作成された読影レポートを初版とすると、該読影レポートが読影医βにより修正(更新)されたときには、該修正された読影レポートは第2版としてレポート保管部11に記憶される。このとき、版管理部12を介してレポート保管部11から、読影医αにより作成された読影レポートの初版と、読影医βにより修正された読影レポートの第2版の双方を選択的に取り出すことが可能となる。
【0022】
差分抽出部20は、入力として異なる2つの読影レポートを受け、該2つの読影レポートの記載を比較し、異なる記載を1箇所以上の修正差分として抽出し、該1箇所以上の修正差分を含む比較結果の情報(以下「比較結果」と呼ぶ)を修正種別判別部30に出力する。このとき、例えば同一検査の読影レポートに対して、異なる2つの版の間で記載を比較することで、該読影レポートに対して施された修正を修正差分として抽出することが可能となる。なお、以降の説明では同一検査の読影レポートに対して異なる2つの版を比較するものとし、このとき、古い版を「旧版レポート」、新しい版を「新版レポート」と呼ぶ。なお、旧版レポートが第1の版に該当し、新版レポートが第2の版に該当する。
【0023】
差分抽出部20は、文字情報差分抽出部21と、画像情報差分抽出部22とで構成される。
【0024】
文字情報差分抽出部21は、新版レポートに記載された文字列(例えば、所見又は診断として記載された文字列)と旧版レポートに記載された文字列を比較し、修正差分として、新版レポートにのみ含まれる文字列の修正差分及び旧版レポートにのみ含まれる文字列の修正差分のいずれかもしくは双方を抽出する。なお以降では、文字情報差分抽出部21が抽出した個々の修正差分を「文字列の修正差分」と呼ぶ場合がある。文字情報差分抽出部21は、比較結果として、抽出した1箇所以上の文字列の修正差分を含む比較結果の情報(以下「文字列の比較結果」と呼ぶ)を修正種別判別部30に出力する。
【0025】
文字情報差分抽出部21の処理について図2を参照しながら例をあげて具体的に説明する。図2は、文字情報差分抽出部21の入力情報及び出力情報の一例である。文字情報差分抽出部21は、入力として新版レポート及び旧版レポートを受け、新版レポートに記載された文字列と旧版レポートに記載された文字列との間で文字列比較を行う。なお、文字列比較の方法は、例えばdiffコマンドのアルゴリズム等のように、一般的に知られているため詳しい説明は省略する。
【0026】
文字情報差分抽出部21は前記文字列比較の結果を基に、以下に示す<ルールA−1>〜<ルールA−4>で示された文字列比較の結果出力ルールに従い、文字列の修正差分を含む「文字列の比較結果」を出力する。文字情報差分抽出部21が出力した情報(文字列の比較結果)の出力例が、図2に「文字列の比較結果」として示されている。
<ルールA−1>新版レポートと旧版レポートとの間で変更の無い文字列は、行頭に“ ”(半角スペース)を付したうえで出力する。
<ルールA−2>改行は“\n”として出力する。
<ルールA−3>旧版レポートから新版レポートへの修正時に削除された文字列は、行頭に“-”を付したうえで出力する。
<ルールA−4>旧版レポートから新版レポートへの修正時に追加された文字列は、行頭に“+”を付したうえで出力する。
なお、<ルールA−3>及び<ルールA−4>に該当する文字列が、文字列の修正差分を示している。
【0027】
画像情報差分抽出部22は、まず、読影レポートに記載された文字列に関連付けられた画像と該文字列とを組み合わせた情報(以下「組み合わせ情報」と呼ぶ)を新版レポート及び旧版レポートそれぞれに対してリストとして抽出する(以下「組み合わせ情報のリスト」と呼ぶ)。このとき画像情報差分抽出部22は、例えば、該文字列にタグとして関連付けられたリンクから画像を特定し組み合わせ情報を抽出する。
【0028】
次に画像情報差分抽出部22は、新版レポート及び旧版レポートから抽出した組み合わせ情報のリストを比較し、修正差分として、新版レポートにのみ含まれる組み合わせ情報の修正差分と、旧版レポートにのみ含まれる組み合わせ情報の修正差分のいずれかもしくは双方を抽出する。なお以降では、画像情報差分抽出部22が抽出した個々の修正差分を「組み合わせ情報の修正差分」と呼ぶ場合がある。画像情報差分抽出部22は、比較結果として、抽出した1箇所以上の組み合わせ情報の修正差分を含む比較結果の情報(以下「組み合わせ情報の比較結果」と呼ぶ)を修正種別判別部30に出力する。
【0029】
画像情報差分抽出部22の処理について図3を参照しながら例をあげて具体的に説明する。図3は、画像情報差分抽出部22の入力情報及び出力情報の一例である。
【0030】
図3における旧版レポート内の記載にはIMG1、IMG2、IMG3の識別子が付された画像が関連付けられている。このとき、例えばIMG1に該当する画像と、該画像に関連付けられた文字列「右肺上葉のコンソリデーション」とを示す組み合わせ情報は、(IMG1,“右肺上葉のコンソリデーション”)のような形式で管理される。画像情報差分抽出部22は旧版レポートにおける組み合わせ情報のリストを集合Pとして以下に示す形式で抽出する。
【0031】
P={(IMG1,“右肺上葉コンソリデーション”),(IMG2,“内部に気管支透亮像”),(IMG3,“”)}
【0032】
また、図3における新版レポート内の記載にはIMG1、IMG2の識別子が付された画像が関連付けられている。画像情報差分抽出部22は新版レポートにおける組み合わせ情報のリストを集合Aとして以下に示す形式で抽出する。
【0033】
A={(IMG1,“右肺上葉コンソリデーション”),(IMG2,“内部に空洞”)}
【0034】
画像情報差分抽出部22は、集合Pと集合Aとの差集合を下記のように計算し、組み合わせ情報の修正差分を抽出する。例えば、旧版レポートにのみ含まれる組み合わせ情報(旧版レポートから新版レポートの間で削除された組み合わせ情報)は、差集合P/Aとして以下のように求められる。
【0035】
P/A={(IMG2,“内部に気管支透亮像”),(IMG3,“”)}
【0036】
また、新版レポートにのみ含まれる組み合わせ情報(旧版レポートから新版レポートの間で追加された組み合わせ情報)は、差集合A/Pとして以下のように求められる。
【0037】
A/P={(IMG2,“内部に空洞”)}
【0038】
次に画像情報差分抽出部22は、P/AとA/Pの和集合(P/A)∪(A/P)を求める。これにより、旧版レポートにのみ含まれる組み合わせ情報と新版レポートにのみ含まれる組み合わせ情報の双方が抽出される。P/AとA/Pの和集合(P/A)∪(A/P)は、図3の例の場合は以下のように求められる。
【0039】
(P/A)∪(A/P)={(IMG2,“内部に気管支透亮像”),(IMG2,“内部に空洞”),(IMG3,“”)}
【0040】
(P/A)∪(A/P)が空集合Φの場合、集合P=集合Aとなる。この場合、画像情報差分抽出部22は新版レポートと旧版レポートとの間で組み合わせ情報の修正差分は抽出されなかったことになる。
【0041】
なお以降の説明では、画像情報差分抽出部22は、組み合わせ情報の比較結果として(P/A)∪(A/P)を出力するものとして説明する。
【0042】
なお上記では、画像の識別子と該画像に関連付けられた文字列とを、組み合わせ情報の構成要素としているが、これらの構成要素に限定されるものではない。例えば、画像の識別子のみで構成しても良いし、諧調やアノテーション等の他の構成要素を加えても良い。画像の識別子のみで構成する場合は、該文字列にタグとして関連付けられたリンクから画像の識別子を抽出して組み合わせ情報とすれば良い。また、諧調やアノテーションをさらに構成要素として加える場合は、該タグとして関連付けられてリンクから画像データを参照し、画像データに含まれる諧調やアノテーションの情報を抽出して組み合わせ情報の構成要素とすれば良い。なお、組み合わせ情報の比較結果の算出方法は変わらない。
【0043】
また、上記では、組み合わせ情報を構成する全ての構成要素を比較の対象としているが、一部の構成要素のみを比較の対象としても良い。例えば、画像の識別子のみを比較の対象とした場合、図3における組み合わせ情報の比較結果(P/A)∪(A/P)は、(P/A)∪(A/P)={(IMG3,“”)}となる。
【0044】
修正種別判別部30は、差分抽出部20から比較結果を受け、該比較結果に含まれる1以上の修正差分それぞれに対し、修正方法を特定したうえで、さらに、修正差分を解析し、該修正差分の解析結果を基に修正差分の分類(この分類が「修正差分の種類ごとの分類」であり、以下「差分の類」と呼ぶ)を特定する。
【0045】
修正種別判別部30は、修正差分が新版レポート及び旧版レポートのいずれに含まれるかを検知することで、差分抽出部20で抽出された修正差分それぞれに対して修正方法を特定する。また、修正種別判別部30は、あわせて修正差分それぞれを解析し、差分の類に分類する。この分類は、文字列の修正差分を分類する場合と、組み合わせ情報の修正差分を分類する場合とで処理が異なる。また、文字列の修正差分を差分の類に分類する場合には、文字列の修正差分の意味内容に基づいた分類と、文字列の修正差分の文章構成の態様に基づいた分類とを用いる。なお、修正方法を特定する処理の詳細、及び、差分の類に分類する処理の詳細については後述する。
【0046】
また、修正種別判別部30は、文字情報差分抽出部21で抽出された文字列の修正差分を差分の類に分類する際に参照する辞書データを記憶する辞書記憶部31を備えている。
【0047】
辞書記憶部31は、第1の辞書記憶部と第2の辞書記憶部で構成されている(第1の辞書記憶部及び第2の辞書記憶部は図示しない)。図7及び図8には、第1の辞書記憶部に記憶された辞書データの例が示されている。また、図9には、第2の辞書記憶部に記憶された辞書データの例が示されている。
【0048】
第1の辞書記憶部には、病名や部位を示す文字列を分類ごとに記憶した医学用語辞書(図7参照)及び略語や誤記を示す文字列の例を集め分類ごとに記憶した誤記、略語一覧辞書(図8参照)のデータが記憶されている。第1の辞書記憶部に記憶された辞書データは、文字列の修正差分を意味内容に基づいて分類する際に参照される。また、第2の辞書記憶部には、部位単語、事象単語、及び、有無単語を示す文字列をこれらの分類ごとに記憶した構造化辞書(図9参照)のデータが記憶されている。第2の辞書記憶部に記憶された辞書データは、文字列の修正差分を文章構成の態様に基づいて分類する際に参照される。以下に、修正種別判別部30の処理の詳細ついて説明する。
【0049】
まず、修正種別判別部30の、文字列の修正差分に対する処理について図4〜図10を参照しながら説明する。
【0050】
修正種別判別部30は、文字情報差分抽出部21から文字列の比較結果を受信した場合、まず、該文字列の比較結果に対し、新版レポートと旧版レポートとの同期点を特定する。該文字列の比較結果のうち、以下の条件のいずれかに該当する部分が同期点となる。
<条件A−1>行頭が“\n”で始まる行における、“\n”の位置
<条件A−2>行頭が“ ”(半角スペース)で始まり、かつ、行中に“。”(読点)を含む行における、最初の“。”(読点)の位置。
ただし、<条件A−1>に該当する同期点と<条件A−2>に該当する同期点が隣接している場合は、該隣接する2つの同期点を1つの同期点として処理する。
【0051】
修正種別判別部30は、同期点を特定したら、該文字列の比較結果を同期点で分割する。このとき分割された各単位をセクションと呼ぶ。図4は、図2の例で文字情報差分抽出部21が出力した文字列の比較結果を、各セクションに分割した場合の一例である。図4では、文字列の比較結果は、同期点P1、P2及びP3により、セクションSEC1、SEC2及びSEC3に分割されている。
【0052】
修正種別判別部30は、文字列の比較結果を各セクションに分割した後、各セクションに含まれる文字列の修正差分に対し、修正方法の特定と差分の類への分類を行う。
【0053】
(修正方法の特定)
まず、修正種別判別部30は、セクションごとに文字列の修正差分それぞれに対して修正方法を特定する。修正方法には、「置換(追加)」、「置換(削除)」、「追加」、及び、「削除」が含まれる。修正種別判別部30の修正方法の特定に関する処理について、図5を参照しながら以下に説明する。図5は、文字列の修正差分から修正方法を判別する方法を説明するための図である。
【0054】
修正種別判別部30は、セクションが以下の条件全てを満たしているかを判定し、判定結果を基に該セクションに含まれる各文字列の修正差分の修正方法を特定する。
<条件B−1>旧版レポートから新版レポートへの修正時に削除された文字列の修正差分(行頭に“-”が付された行)が1つ存在する。
<条件B−2>旧版レポートから新版レポートへの修正時に追加された文字列の修正差分(行頭に“+”が付された行)が1つ存在する。
<条件B−3>削除された文字列の修正差分と追加された文字列の修正差分とが隣接している。
【0055】
セクションが、<条件B−1>、<条件B−2>及び<条件B−3>の全てを満たしている場合、修正種別判別部30は、判定対象のセクションに含まれる文字列の修正差分のうち、削除された文字列の修正差分の修正方法を「置換(削除)」として特定し、追加された文字列の修正差分の修正方法を「置換(追加)」として特定する。例えば、図5におけるセクションSEC2に含まれる文字列の修正差分DIF21及びDIF22が本件に該当する。この場合、文字列の修正差分DIF21の修正方法が置換(削除)となり、文字列の修正差分DIF22の修正方法が置換(追加)となる。
【0056】
セクションが、<条件B−1>、<条件B−2>及び<条件B−3>の少なくともいずれか一つを満たしていない場合、修正種別判別部30は、判定対象のセクションに含まれる文字列の修正差分のうち、削除された文字列の修正差分の修正方法を「削除」として特定し、追加された文字列の修正差分の修正方法を「追加」として特定する。例えば、図5におけるセクションSEC3に含まれる文字列の修正差分DIF31〜DIF35が本件に該当する。この場合、文字列の修正差分DIF31〜DIF33及びDIF35の修正方法が追加となり、文字列の修正差分DIF34の修正方法が削除となる。
【0057】
(差分の類への分類)
次に、修正種別判別部30は、文字列の修正差分それぞれを差分の類に分類する。修正種別判別部30の、各文字列の修正差分を差分の類に分類する処理について図6を参照しながら以下に説明する。図6は、文字列の修正差分を修正差分の類に分類する処理のフローチャートである。修正種別判別部30は、文字列の修正差分それぞれに対し図6に示す処理を施すことで差分の類に分類する。
【0058】
(ステップS1、ステップS2)
まず、修正種別判別部30は、処理対象となる文字列の修正差分を、辞書記憶部31の第1の辞書記憶部に記憶された医学用語辞書(図7参照)と照合することで、該文字列の修正差分を意味内容に基づいて解析する。また、該文字列の修正差分を、第1の辞書記憶部に記憶された誤記、略語一覧辞書(図8参照)と照合することで、該文字列の修正差分が誤記や略語を意味する言葉であるかを解析する。具体的には、処理対象の文字列の修正差分を、第1の辞書記憶部に記憶された辞書データと照合し、該文字列の修正差分と対応する文字列が該辞書データに登録されているかを確認する。
【0059】
(ステップS3)
処理対象の文字列の修正差分が第1の辞書記憶部に記憶された辞書データに登録されている場合(ステップS2、Y)、該文字列の修正差分に対応する分類を特定し、その分類を基に差分の類に分類する。図7及び図8を例に具体的に説明すると、例えば、文字列の修正差分が「頸椎症」の場合には、分類は「病名」となり、「頸椎症」の差分の類は「病名」となる。同様に、文字列の修正差分が「肺門」の場合には分類は「部位」となり対応する差分の類は「部位」、文字列の修正差分が「laucnar」の場合には分類は「誤記」となり対応する差分の類は「誤記」、文字列の修正差分が「EC」の場合には分類は「略語」となりに対応する差分の類は「略語」となる。
【0060】
(ステップS4)
処理対象の文字列の修正差分が第1の辞書記憶部に記憶された辞書データに登録されていない場合(ステップS2、N)、修正種別判別部30は、該文字列の修正差分に対し形態素解析を施し、該文字列の修正差分を形態素に分解したうえで、該文字列の修正差分を文章構成の態様に基づいて解析する。なお、形態素解析の手法については、例えば「情報処理,Vol.41,No.11,pp.1208−1214,November 2000」に公開されているように、一般的に良く知られているため具体的な説明は省略する。
【0061】
(ステップS5)
まず修正種別判別部30は、処理対象の文字列の修正差分が付属語又は副詞を含むか否かを判定する。
【0062】
(ステップS6)
処理対象の文字列の修正差分が付属語又は副詞を含まない場合(ステップS5、N)、修正種別判別部30は、該文字列の修正差分を差分の類として「その他語句」に分類する。
【0063】
(ステップS7)
処理対象の文字列の修正差分が付属語又は副詞を含む場合(ステップS5、Y)、修正種別判別部30は、該文字列の修正差分が付属語のみで構成されているか否かを判定する。
【0064】
(ステップS8)
処理対象の文字列の修正差分が付属語のみで構成されている場合(ステップS7、Y)、修正種別判別部30は、該文字列の修正差分を差分の類として「付属語」に分類する。
【0065】
(ステップS9、ステップS10)
処理対象の文字列の修正差分が付属語のみで構成されていない場合(ステップS7、N)、修正種別判別部30は、該文字列の修正差分に対して構造化処理を行い、記述単位を作成できるか否かを判定する。構造化処理による記述単位の作成について図9及び図10を参照しながら説明する。図9は、構造化処理による記述単位の作成で使用する、辞書記憶部31の第2の辞書記憶部に記憶された構造化辞書のデータ構造の一例である。また図10は、構造化処理を説明するための図である。なお、構造化処理による記述単位の作成については特許文献1に記載されているため詳細な説明は省略する。
【0066】
修正種別判別部30は、処理対象となる文字列の修正差分から記述単位が作成可能であるかを確認する。
【0067】
記述単位の作成に係る処理について図10を例に具体的に説明する。記述単位は部位単語、事象単語、及び、意味単語で構成される。修正種別判別部30は、処理対象となる文字列の修正差分に含まれる各形態素を、辞書記憶部31の第2の辞書記憶部に記憶された構造化辞書と照合し、部位単語wb、事象単語wj、及び、有無単語wuを抽出する。図10の例の場合、修正種別判別部30は、文字列の修正差分DIF51から、部位単語wbとして「左肺野」を、事象単語wjとして「胸水」を、有無単語wuとして「見られる」を抽出する。この場合、該文字列の修正差分に、部位単語wb、事象単語wj、及び、有無単語wuが含まれるため、修正種別判別部30は記述単位wsを作成することが可能であると判断する。
【0068】
(ステップS11)
修正種別判別部30は、処理対象となる文字列の修正差分に対して構造化処理を行うことで、記述単位wsを作成することが可能であると判断した場合(ステップS10、Y)、該文字列の修正差分を差分の類として「所見文」に分類する。
【0069】
(ステップS12)
修正種別判別部30は、処理対象となる文字列の修正差分に部位単語wb、事象単語wj、及び、有無単語wuのうち少なくとも1つが含まれず、記述単位wsを作成することが不可能であると判断した場合(ステップS10、N)、該文字列の修正差分を差分の類として「断片文」に分類する。以上により、文字列の修正差分それぞれに対して、修正方法と差分の類が特定される。
【0070】
修正種別判別部30は、文字列の修正差分それぞれに対して特定した修正方法及び差分の類を文字列差分管理テーブルに記憶する。図11は、文字列差分管理テーブルのデータ構造の一例である。図11(a)は図5のセクションSEC2に含まれる文字列の修正差分DIF21及びDIF22に対応する修正方法及び差分の類を記憶した文字列差分管理テーブルを示している。また、図11(b)は図5のセクションSEC3に含まれる文字列の修正差分DIF31〜DIF35に対応する修正方法及び差分の類を記憶した文字列差分管理テーブルを示している。
【0071】
次に、修正種別判別部30の、組み合わせ情報の修正差分に対する処理について説明する。
【0072】
まず修正種別判別部30は、画像情報差分抽出部22から受信した組み合わせ情報の比較結果に含まれる、組み合わせ情報の修正差分それぞれに対して修正方法を特定する。組み合わせ情報の修正差分は、修正方法として「追加」もしくは「削除」のいずれかに分類される。具体的には、修正種別判別部30は、旧版レポートにのみ含まれる組み合わせ情報(前述した差集合P/Aに含まれる組み合わせ情報)の修正方法を「削除」として分類し、新版レポートにのみ含まれる組み合わせ情報(前述した差集合A/Pに含まれる組み合わせ情報)の修正方法を「追加」として分類する。
【0073】
図3の組み合わせ情報の修正差分を例に具体的に説明すると、旧版レポートにのみ含まれる(差集合P/Aに含まれる)組み合わせ情報の修正差分(IMG2,“内部に気管支透亮像”)及び(IMG3,“”)の修正方法は「削除」となる。また、新版レポートにのみ含まれる(差集合A/Pに含まれる)組み合わせ情報の修正差分(IMG2,“内部に空洞”)の修正方法は「追加」となる。
【0074】
また修正種別判別部30は、組み合わせ情報の修正差分それぞれを差分の類として「キー画像」に分類する。以上により、組み合わせ情報の修正差分それぞれに対して、修正方法と差分の類が特定される。
【0075】
修正種別判別部30は、修正差分(文字列の修正差分及び組み合わせ情報の修正差分)それぞれに対して、修正方法及び差分の類を特定すると、各修正差分を、修正方法と差分の類との組み合わせを基に分類し集計したうえで修正種別判定テーブルを作成する。図12は、修正種別判定テーブルのデータ構造の一例であり、図2及び図3の例で示した修正差分(文字列の修正差分及び組み合わせ情報の修正差分)を基に前述の解析を施し集計した結果がデータとして入力されている。
【0076】
修正種別判別部30による、修正種別判定テーブルへの集計方法について、図11を参照しながら例をあげて具体的に説明する。例えば、図11(a)に示した文字列差分管理テーブルのデータからは、修正方法が「置換(削除)」であり差分の類が「その他語句」である修正差分が1つ、修正方法が「置換(追加)」であり差分の類が「その他語句」である修正差分が1つ集計される。同様に、図11(b)に示した文字列差分管理テーブルのデータからは、修正方法が「追加」であり差分の類が「所見文」である修正差分が2つ、修正方法が「追加」であり差分の類が「その他語句」である修正差分が2つ、修正方法が「削除」であり差分の類が「断片文」である修正差分が1つ集計される。なお、組み合わせ情報の修正差分についても同様に、修正方法及び差分の類を基に集計を行う。
【0077】
修正種別判別部30は、作成した修正種別判定テーブルと差分抽出部20から受信した比較結果(文字列の比較結果及び組み合わせ情報の比較結果)を、伝達判定部40に送信する。
【0078】
伝達判定部40は、受信した修正種別判定テーブルに集計された修正差分の組み合わせのパターンを解析することで、旧版レポートから新版レポートの間で施された修正の種別(以下「修正種別」と呼ぶ)を判定することが可能となる(修正種別の特定に係る解析処理の詳細は後述する)。
【0079】
また伝達判定部40は、伝達判定テーブルを参照し、特定した修正種別に応じて修正種別判別部30から受信した比較結果(旧版レポートと新版レポートとの間で施された修正)を操作者(該読影レポートを作成した一次読影医)に伝達するか否かを判定する。以下に、伝達判定部40による修正種別の特定に関する処理の詳細と、修正種別に応じて比較結果(1箇所以上の修正差分が含む)を伝達するか否かを判定する処理について説明する。
【0080】
(修正種別の特定)
伝達判定部40は、修正種別判定テーブルに集計された修正差分の種別(修正差分に関する修正方法と差分の類とを組み合わせた分類)を解析し、修正種別を特定する。具体的には、修正種別ごとにあらかじめ修正種別判定テーブルのパターンデータ(以下「パターンデータ」と呼ぶ)を用意しておき、修正種別判別部30から受信した修正種別判定テーブルを、各修正種別に対応するパターンデータと比較することで修正種別を特定する。
【0081】
修正種別の例としては、「誤記の修正」、「てにをはの修正」、「所見文の修正」、「断片文の修正」等があげられる。以下に前記した各修正種別の内容と、該修正種別に対応するパターンデータの例について説明する。
【0082】
誤記の修正は、部位や病名などの誤記が修正されたことを示す修正種別である。図13に、修正種別が「誤記の修正」を示すパターンデータの一例が示されている。なお、図13において、Xa、Ya及びZaのうちいずれかのみが1を示しているものとする。伝達判定部40は、図13に示すパターンデータのように、受信した修正種別判別テーブルが以下に示す<条件C−1>、<条件C−2>及び<条件C−3>全てを満たす場合に、修正種別が誤記の修正であると判定する。
<条件C−1>修正方法が「置換(削除)」又は「置換(追加)」の修正差分のみ含まれている。
<条件C−2>修正方法が「置換(削除)」である修正差分に関し、差分の類が「誤記」である。
<条件C−3>修正方法が「置換(追加)」である修正差分に関し、差分の類が「部位」、「病名」及び「その他語句」のいずれかである。
【0083】
てにをはの修正は、助詞や助動詞等の付属語の使い方に関する誤りが修正されたことを示す修正種別である。図14に、修正種別が「てにをはの修正」を示すパターンデータの一例が示されている。なお、図14において、Xbは1以上の値を示しているものとする。図14(a)は、不要な付属語が削除された場合のパターンを示している。図14(b)は、必要な付属語を追記した場合のパターンを示している。また、図14の(c)は、使い方を誤っている付属語を修正した場合のパターンを示している。伝達判定部40は、図14に示すパターンデータのように、受信した修正種別判別テーブルが以下に示す<条件D−1>を満たす場合に、修正種別がてにをはの修正であると判定する。
<条件D−1>差分の類が「付属語」の修正差分のみ含まれている。
【0084】
なお、<条件D−1>を満たしていれば、図14(a)〜図14(c)のパターンに限定されるものではない。例えば、差分の類が付属語であり修正方法が追加の修正差分と、差分の類が付属語であり修正方法が削除の修正差分とが混在している場合もこれに該当する。このように、含まれる修正差分に関し差分の類が付属語のみであれば、修正方法が異なる修正差分が複数種類含まれていても良い。
【0085】
所見文の修正は、旧版レポートから新版レポートの間で所見文(部位単語、事象単語及び有無単語を含む文)に対する修正が含まれていることを示す修正種別である。また、断片文の修正は、旧版レポートから新版レポートの間で断片文に対する修正が含まれていることを示す修正種別である。なお、断片文とは、複数種類の形態素により構成され、かつ、部位単語、事象単語及び有無単語の少なくともいずれか1つを含まない文字列を指す。
【0086】
図15に、修正種別が「所見文の修正」又は「断片文の修正」を示すパターンデータの一例が示されている。図15(a)は、不要な所見文又は断片文が削除された場合のパターンを示している。図15(b)は、不要な所見文又は断片文を追記した場合のパターンを示している。また、図15の(c)は、所見文又は断片文を修正した場合のパターンを示している。なお、図15において、Xc又はXdのいずれかが1以上の値を示しているものとする。Xcが1以上の値を示している場合、図14は修正種別が「所見文の修正」のパターンデータの一例を示している。また、Xdが1以上の値を示している場合、図15は修正種別が「断片文の修正」のパターンデータの一例を示している。
【0087】
伝達判定部40は、図15に示すパターンデータのように、受信した修正種別判別テーブルが以下に示す<条件E−1>を満たす場合に、修正種別が所見文の修正であると判定し、<条件F−1>を満たす場合に、修正種別が断片文の修正であると判定する。
<条件E−1>差分の類が「所見文」の修正差分が少なくとも1以上含まれる。
<条件F−1>差分の類が「断片文」の修正差分が少なくとも1以上含まれる。
なお、<条件E−1>と<条件F−1>の双方を満たす場合、複数の修正種別(所見文の修正及び断片文の修正)を有するものと判断するようにしても良いし、いずれか一方の修正種別(例えば所見文の修正)と判断するようにしても良い。
【0088】
また、<条件E−1>又は<条件F−1>を満たしていれば、図15(a)〜図15(c)のパターンに限定されるものではない。例えば、差分の類が所見文又は断片文であり修正方法が追加の修正差分と、差分の類が所見文又は断片文であり修正方法が削除の修正差分とが混在している場合もこれに該当する。このように、修正差分に関し差分の類が所見文又は断片文であれば、修正方法が異なる修正差分が複数種類含まれていても良い。
【0089】
(比較結果の伝達の判定)
伝達判定部40は、修正種別を特定すると、伝達判定テーブルを参照し、修正種別を基に比較結果を一次読影医に伝達するか否かを判定する。図16には、伝達判定テーブルのデータ構造の一例を示されている。この場合、伝達判定部40は、修正種別が「所見文の修正」又は「断片文の修正」の場合に比較結果を伝達するものと判定し、「誤記の修正」又は「てにをはの修正」の場合には比較結果を伝達しないものと判定する。
【0090】
これにより、例えば「誤記の修正」や「てにをはの修正」の場合のように、文章の体裁に関し意味的な内容を含まない修正の場合に、重要度の低い修正と判断し、一次読影医への比較結果の伝達を抑制することが可能となる。これにより、一次読影医は重要な修正のみ確認することが可能となり、一次読影医が二次読影医による修正を確認する負担を軽減することが可能となる。
【0091】
なお、伝達判定テーブルの内容は、操作者(読影医)により変更可能とすると良い。図16では修正種別が「所見文の修正」か「断片文の修正」の場合に比較結果を伝達する設定となっているが、例えば、修正種別が「所見文の修正」の場合のみ比較結果を伝達する設定や、全ての修正種別に対して比較結果を伝達する設定に変更することも可能である。設定の変更方法については、例えばチェックボックスのようなユーザインタフェースを操作部(図示しない)に設け、修正種別ごとに比較結果を伝達するか否かを変更可能とすると良い。
【0092】
伝達判定部40は、操作者に伝達すると判定した比較結果と、該比較結果に対応する伝達判定テーブルとを伝達内容保管部50に送信する。
【0093】
伝達内容保管部50は、伝達判定部40から受信した比較結果及び伝達判定テーブルを記憶する記憶手段を有する。伝達内容保管部50は、伝達判定部40から比較結果及び伝達判定テーブルを受信すると、該比較結果に対応する旧版レポートを識別するための情報と、旧版レポートを作成した読影医の情報を版管理部12から抽出し、伝達判定部40から受信した比較結果及び伝達判定テーブルとあわせて記憶する。
【0094】
修正内容表示方法選択部60は、伝達内容保管部50に記憶された比較結果に含まれる修正差分を表示部(図示しない)に表示させる手段を有する。修正内容表示方法選択部60は、読影医から表示対象の版(例えば新版レポート)の表示に関する操作を受け、該読影医が作成した版(例えば旧版レポート)から表示対象の版の間で施された修正を、伝達内容保管部50に記憶された比較結果を基に表示する。
【0095】
修正内容表示方法選択部60は、表示対象の修正差分が、文字列の修正差分か組み合わせ情報の修正差分かにより表示の態様を切替えて表示部に表示させる。図17は、文字列の修正差分を表示させる場合の表示の一例を示している。また、図18は、組み合わせ情報の修正差分を表示させる場合の表示の一例を示している。
【0096】
修正内容表示方法選択部60は、文字列の修正差分を図17に示すように表示させる場合、文字列の比較結果(図2における文字列の比較結果)を行ごとに遂次読込み、以下のルールに従い処理を施すことで表示を出力する。
<ルールB−1>行頭に“ ”(半角スペース)が付された行(旧版レポートから新版レポートの間で修正が施されていない文字列)はそのまま出力する。
<ルールB−2>行頭に“+”が付された行(旧版レポートから新版レポートの間で追加された文字列)は太字で強調したうえで出力する。
<ルールB−3>行頭に“-”が付された行(旧版レポートから新版レポートの間で削除された文字列)は太字で強調したうえで取り消し線を施して出力する。
<ルールB−4>記号“\n”は改行コードとして出力する。
【0097】
また、修正内容表示方法選択部60は、組み合わせ情報の修正差分を図18に示すように表示させる場合、まず、旧版レポートにのみ含まれる(削除画像に関する)組み合わせ情報と、新版レポートにのみ含まれる(追加画像に関する)組み合わせ情報をそれぞれ抽出する。削除画像に関する組み合わせ情報は、組み合わせ情報の比較結果に含まれる差集合P/Aから抽出する。また、追加画像に関する組み合わせ情報は、組み合わせ情報の比較結果に含まれる差集合A/Pから抽出する。
【0098】
修正内容表示方法選択部60は、抽出した組み合わせ情報に対応する画像を表示する。このとき修正内容表示方法選択部60は、該組み合わせ情報が追加画像に関する組み合わせ情報か、もしくは、削除画像に関する組み合わせ情報かにより、強調表示の方法を変えて表示する。画像を強調表示する方法としては、縁取りして表示する方法が良く知られている。図18の例では、追加画像と削除画像とで縁取りの方法(例えば色)を変えて表示している。
【0099】
また、修正内容表示方法選択部60は、一次読影医が作成した読影レポートに対して、二次読影医により、一次読影医への伝達が必要な修正が施された場合に、該読影レポートに対して修正が施されたことを一次読影医に伝達できるようにしても良い。この場合、修正内容表示方法選択部60は、伝達内容保管部50に該読影レポートに対する修正差分が保管されている場合に、一次読影医に該読影レポートに対して修正が施された旨を通知すると良い。
【0100】
以上により、本発明に係る読影レポート作成支援システムが、読影レポートに施された修正の内容から修正種別を判別し、該修正種別を基に1次読影医にその修正内容を伝達するか否かを判定することが可能となる。このとき、重要な修正を含む修正種別のみ1次読影医に伝達するように設定することで、軽微な不備に対する修正について1次読影医への伝達を抑制し、重要な修正のみ伝達することが可能となる。これにより、1次読影医が修正内容を確認する作業の負担を軽減することが可能となる。
【符号の説明】
【0101】
10 レポート管理部 11 レポート保管部 12 版管理部
20 差分抽出部 21 文字情報差分抽出部 22 画像情報差分抽出部
30 修正種別判別部 31 辞書記憶部 40 伝達判定部
50 伝達内容保管部 60 修正内容表示方法選択部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一検査の読影レポートを版ごとに識別して記憶するレポート管理部を備えた読影レポート作成支援システムであって、
同一検査の版が異なる読影レポートに対して、異なる記載を修正差分として抽出する差分抽出部と、
前記修正差分の修正方法と種類を特定する修正内容抽出部と、
前記特定された修正方法と種類の組み合わせを基に修正種別を特定し、前記修正種別に応じて、前記修正差分を伝達するか否かを判定する伝達判定部とを備えたことを特徴とする読影レポート作成支援システム。
【請求項2】
前記差分抽出部が、第1の版の記載と第2の版の記載とを比較し、前記第1の版と前記第2の版との間で異なる記載を1箇所以上の修正差分として抽出し、
前記修正内容抽出部が、前記第1の版及び前記第2の版のいずれに含まれるかを検知することで前記修正差分それぞれに対して修正方法を特定するとともに、前記修正差分それぞれに対して解析を行うことで、前記修正差分それぞれを修正差分の種類ごとに分類することを特徴とする請求項1に記載の読影レポート作成支援システム。
【請求項3】
前記差分抽出部が、前記第1の版に記載された文字列と前記第2の版に記載された文字列とを比較し、前記修正差分として、前記第1の版にのみ含まれる文字列の修正差分及び前記第2の版にのみ含まれる文字列の修正差分のいずれかもしくは双方を抽出する文字情報差分抽出部を備えたことを特徴とする請求項2に記載の読影レポート作成支援システム。
【請求項4】
前記修正内容抽出部が、レポートに記載される文字列と該文字列の意味内容に基づいた分類を含む辞書を記憶する第1の辞書記憶部を更に備え、前記解析として、前記文字列の修正差分を前記第1の辞書記憶部に記憶された文字列と比較することにより、該当する前記文字列の前記意味内容に基づいた分類を基に、前記文字列の修正差分を前記修正差分の種類ごとに分類することを特徴とする請求項3に記載の読影レポート作成支援システム。
【請求項5】
前記修正内容抽出部が、前記解析として、前記文字列の修正差分を形態素に分解したうえで、前記文字列の修正差分に含まれる形態素の組み合わせを基に文章構成の態様に基づいて、前記文字列の修正差分を前記修正差分の種類ごとに分類することを特徴とする請求項3に記載の読影レポート作成支援システム。
【請求項6】
前記修正内容抽出部が、レポートに記載される形態素単位の文字列と前記形態素単位の文字列の意味内容に基づいた分類を含む辞書を記憶する第2の辞書記憶部を更に備え、前記解析として更に、分解された前記形態素を前記第2の辞書記憶部に記憶された形態素単位の文字列と比較することで、分解された前記形態素それぞれに対して該当する前記意味内容に基づいた分類を特定し、前記文字列の修正差分に含まれる、前記形態素それぞれに該当する前記意味内容に基づいた分類の組み合わせを基に前記修正差分が所見文を意味する修正差分の種類ごとの分類か否かを特定することを特徴とする請求項5に記載の読影レポート作成支援システム。
【請求項7】
前記差分抽出部が、前記読影レポートに記載された文字列に関連付けられた画像と該文字列とが組み合わされた組み合わせ情報を、前記第1の版及び第2の版それぞれに対してリストとして抽出し、抽出した前記第1の版から抽出した前記組み合わせ情報のリストと第2の版から抽出した前記組み合わせ情報のリストとを比較することで、前記修正差分として、前記第1の版にのみ含まれる前記組み合わせ情報の修正差分と、前記第2の版にのみ含まれる前記組み合わせ情報の修正差分のいずれかもしくは双方を抽出する画像情報差分抽出部を更に備え、
前記修正内容抽出部が、前記組み合わせ情報の修正差分を、所定の前記修正差分の種類ごとに分類することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の読影レポート作成支援システム。
【請求項8】
前記修正差分を表示する表示部と、前記修正差分の種類ごとの分類に応じて表示の形態を変更し、前記伝達判定部の判定結果を基に前記1箇所以上の修正差分を表示部に表示させる修正内容表示方法選択部とを更に備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の読影レポート作成支援システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−125402(P2011−125402A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284426(P2009−284426)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】