説明

読書灯

【課題】光源からの光軸を読書時の姿勢のままで所望の方向に極めて容易に向けることができるようにした読書灯を提供する。
【解決手段】読書灯1,1Aは、読書灯制御部40,40Aの入力部41が撮像部30からの撮像データを受け取ると、掌判別部43が撮像データと掌画像データ部42に記憶してある掌画像データの掌Pとを比較して撮像データに掌Pの情報を含むか否かを判別し、掌Pの情報を含むときに、光源駆動部20を駆動して光源部10からの光軸を撮像部30が撮影した掌Pの位置に向ける。これにより、読書灯1,1Aの使用者が撮像部30の画角内で掌Pをかざすだけで所望の方向に光源部10からの光を照射させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座席に着座した着座者ごとに該着座者の所望する位置に光を照射することができる読書灯に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の読書灯としては、例えば特許文献1に記載された従来例や特許文献2に示すようなものがある。
特許文献1にはその従来例の一つとして、座席の上方の天井にスポットライトを設けたもの、すなわち着座者の上方にスポットライトを設けたものがある。このスポットライトを使用するときは、点灯スイッチをいれてスポットライトを点灯した状態にしてから、手で好みの照射方向にスポットライトを向けるようにする。
また、特許文献2には、座席ごとに設けられた読書灯が記載されており、その読書灯は、アームレストに設けた操作盤に配置してある調整つまみを操作することによって照射方向を変えることができるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−241447号公報
【特許文献2】特開平6−255592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の従来例として記載されているようなものでは、天井のスポットライトの光を所望の位置に照射するためには、着座者は、スポットライトを直接に手で動かして照射方向を調整しなければならなかった。ところが、手でスポットライトの向きを調節するには、身体を着座位置から動かさなければ手が届かないことが有るため、読書時の姿勢とは全く異なる姿勢でスポットライトの向きを調節しなければならず、実際に照らしたい方向にスポットライトの光軸を合わせるのには手間がかかるという問題点があった。
さらに、読書中に着座姿勢を変えて読書を続けたくなった場合、その都度、手間をかけてスポットライトの向きを調節しなければならなかった。
【0005】
また、特許文献2に開示されているものでは、読書灯を直接に手で動かすのではなく、読書灯を動かすための調節つまみ等のコントローラを操作して読書灯の光軸を合わせるので、読書時の姿勢のままで読書灯からの光を所望の位置に照射することができる点で前記の従来例に比べて使い勝手が改善されている。しかしながら、コントローラの扱いに慣れていない着座者にとっては、コントローラによって読書灯の光軸を所望の方向に上手く合わせることが難しいという問題点があった。
【0006】
本発明は、このような従来の技術が有する問題点に着目してなされたもので、光源からの光軸を読書時の姿勢のままで所望の方向に極めて容易に向けることができるようにした読書灯を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。[1] 座席(2)に着座した着座者ごとに該着座者の所望する位置に光を照射することができる読書灯(1,1A)において、
光を照射する光源部(10)と、該光源部(10)を変位させて該光源部(10)からの光軸方向を変位させる光源駆動部(20)と、着座者の掌(P)を撮影するための撮像部(30)と、該撮像部(30)からの撮像データに掌(P)の情報を含むか否かを判断するとともに、該撮像データに掌(P)の情報を含むと判断したときに前記光源部(10)からの光軸を前記撮影した掌(P)の位置に向けるように前記光源駆動部(20)を駆動させる読書灯制御部(40,40A)とを備え、
前記読書灯制御部(40,40A)は、前記撮像部(30)からの撮像データを受け取る入力部(41)と、前記撮像データに掌(P)の情報を含むか否かを判別するための掌画像データを予め記憶しておく掌画像データ部(42)と、前記撮像データを前記掌画像データと比較して前記撮像データに掌(P)の情報を含むか否かを判別する掌判別部(43)とを有して成り、
前記掌判別部(43)が前記撮像データに掌(P)の情報を含むと判別したときに、前記光源駆動部(20)を駆動して前記光源部(10)からの光軸を前記撮像部(30)が撮影した掌(P)の位置に向けることを特徴とする読書灯(1,1A)。
【0008】
[2] 座席(2)に着座した着座者ごとに該着座者の所望する位置に光を照射することができる読書灯(1)において、
光を照射する光源部(10)と、該光源部(10)を変位させて該光源部(10)からの光軸方向を変位させる光源駆動部(20)と、着座者の掌(P)を撮影するための撮像部(30)と、該撮像部(30)からの撮像データに掌(P)の情報を含むか否かを判断するとともに、該撮像データに掌(P)の情報を含むと判断したときに前記光源部(10)からの光軸を前記撮影した掌(P)の位置に向けるように前記光源駆動部(20)を駆動させる読書灯制御部(40)とを備え、
前記撮像部(30)は、前記光源部(10)からの光軸の延びる方向に向けて前記光源部(10)に設けられ、
前記読書灯制御部(40)は、前記撮像部(30)からの撮像データを受け取る入力部(41)と、前記撮像データが掌(P)の情報を含むか否かを判別するための掌画像データを予め記憶しておく掌画像データ部(42)と、前記撮像データを前記掌画像データと比較して前記撮像データに掌(P)の情報を含むか否かを判別する掌判別部(43)とを有して成り、
前記掌判別部(43)が前記撮像データに掌(P)の情報を含むと判別したときに、前記光源駆動部(20)を駆動して前記光源部(10)からの光軸を前記撮像部(30)が撮影した掌(P)の位置に向けることを特徴とする読書灯(1)。
【0009】
[3] 座席(2)に着座した着座者ごとに該着座者の所望する位置に光を照射することが可能な読書灯(1A)において、
光を照射する光源部(10)と、該光源部(10)を変位させて該光源部(10)からの光軸方向を変位させる光源駆動部(20)と、着座者の掌(P)を撮影するための撮像部(30)と、該撮像部(30)からの撮像データに掌(P)の情報を含むか否かを判断するとともに、該撮像データに掌(P)の情報を含むと判断したときに前記光源部(10)からの光軸を前記撮影した掌(P)の位置に向けるように前記光源駆動部(20)を駆動させる読書灯制御部(40A)とを備え、
前記撮像部(30)は、前記光源部(10)と離隔した位置に固設され、
前記読書灯制御部(40A)は、前記撮像部(30)からの撮像データを受け取る入力部(41)と、前記撮像データに掌(P)の情報を含むか否かを判別するための掌画像データを予め記憶しておく掌画像データ部(42)と、前記撮像データを前記掌画像データと比較して前記撮像データに掌(P)の情報を含むか否かを判別する掌判別部(43)と、該掌判別部(43)が前記撮像部(30)からの撮像データに掌(P)の情報を含むと判断したときに、前記掌(P)の位置を算出する掌位置算出部(45)を有して成り、
前記読書灯制御部(40A)は、前記掌判別部(43)が前記撮像データに掌(P)の情報を含むと判断したときに、前記光源駆動部(20)を駆動して前記光源部(10)からの光軸を前記掌位置算出部(45)が算出した掌(P)の位置に向けることを特徴とする読書灯(1A)。
【0010】
[4] 前記読書灯制御部(40A)は、前記光源部(10)の位置と該光源部(10)からの光軸を所定の方向に向けた基準方向とを示す光源部基準情報を記憶しており、
前記掌位置算出部(45)は、前記撮像部(30)による撮像画像全体の中心からの掌(P)の撮像画像のずれの方向と前記撮像部(30)から掌(P)までの距離とから前記掌(P)の位置を求め、
前記読書灯制御部(40A)は、前記掌(P)の位置と前記光源部基準情報に基づいて、前記光源部(10)からの光軸を前記掌(P)の位置に向けることを特徴とする項[3]に記載の読書灯(1A)。
【0011】
[5] 前記読書灯制御部(40,40A)は、前記掌判別部(43)が掌(P)の情報を含むと判断した撮像データの示す掌が前記撮像部(30)の撮影画角内に所定時間かざされたままであるときに、前記光源駆動部(20)を駆動して前記光源部(10)からの光軸を前記撮像部(30)が撮影した掌(P)の位置に向けることを特徴とする項[1]、[2]、[3]または[4]に記載の読書灯(1,1A)。
【0012】
[6] 前記読書灯制御部(40,40A)は、前記撮像部(30)による撮影を行わせる撮像スイッチ(270)と前記光源部(10)を点灯および消灯させる点灯スイッチ(280)、または前記光源部(10)を点灯させると同時に前記撮像部(30)による撮影を行わせる読書灯使用スイッチ(290)を座席(2)に有し、前記撮像スイッチ(270)または前記読書灯使用スイッチ(290)のON操作によって前記撮像部(30)による撮影を行うことを特徴とする項[1]、[2]、[3]、[4]または[5]に記載の読書灯(1,1A)。
【0013】
[7] 前記読書灯制御部(40,40A)は、一度、前記光源部(10)からの光軸を前記撮像部(30)が撮影した掌(P)の位置に向けた後は、再度、前記撮像スイッチ(270)または前記読書灯使用スイッチ(290)のON操作があるまで、光の照射を前記光軸の方向に固定することを特徴とする項[6]に記載の読書灯(1,1A)。
【0014】
前記本発明は次のように作用する。
読書灯(1,1A)を使用するときは、座席(2)に着座して読書をしようとする姿勢をとった後に、読み物を位置させようとする所望の位置に読書灯(1,1A)の光源部(10)からの光軸方向を向けるように調節する。
【0015】
その調節のために着座者は、所望の位置に掌(P)を開き気味にして撮像部(30)に向けるようにかざす。この掌(P)を撮像部(30)が撮影すると、その撮影した掌(P)の撮像データが読書灯制御部(40,40A)の入力部(41)に送られる。入力部(41)は、この撮像データを読書灯制御部(40,40A)の掌判別部(43)に送る。
【0016】
読書灯制御部(40,40A)は、予め掌画像データを記憶させてある掌画像データ部(42)を有しており、この掌画像データは、掌判別部(43)が撮像データに掌(P)の情報を含むか否かの判別をする際に、撮像データとの比較に使用される。掌判別部(43)は、掌画像データが示す掌(P)の特徴を撮像データから検出したときは、撮像データに掌(P)の情報を含むと判断する。
【0017】
掌判別部(43)が撮像部(30)からの撮像データの示すものに掌(P)が含まれると判断したときは、読書灯制御部(40,40A)は、光源部(10)からの光軸を撮影した掌(P)の位置に向けるように光源駆動部(20)を駆動させる。これにより、着座者は読書をするときに実際に読み物を置く位置に光源部(10)の光軸を容易に合わせることができ、着座者の所望する最適な位置に読書灯(1,1A)の光を照射することができる。
【0018】
撮像部(30)が光源部(10)からの光軸の延びる方向に向けて光源部(10)に設けられているものの場合には、光源部(10)からの光軸と撮像部(30)のレンズの光軸とは平行であり、かつ、それら光軸間の間隔も小さいので、掌(P)の位置が撮像部(30)の撮像画面の中心に来るように光源部(10)を変位させればよい。
【0019】
また、撮像部(30)を光源部(10)から離隔した位置に固設した読書灯(1A)の場合には、掌判別部(43)が撮像部(30)からの撮像データに掌(P)の情報を含むと判断したときに、掌位置算出部(45)が掌(P)の位置を算出してその掌(P)の位置に光源部(10)からの光軸を向ける。この場合、掌位置算出部(45)は、撮像部(30)による撮像画像全体の中心からの掌(P)の撮像画像のずれの方向と撮像部(30)から掌(P)までの距離とから掌(P)の位置を求める。
【0020】
読書灯制御部(40A)は、光源部(10)の位置と該光源部(10)からの光軸を所定の方向に向けた基準方向とを示す光源部基準情報を記憶しており、この光源部基準情報と掌(P)の位置とに基づいて、光源部(10)を駆動して光源部(10)からの光軸を掌(P)の位置に向ける。
【0021】
なお、読書灯(1,1A)の誤動作を防止するために、掌判別部(43)が掌(P)であると判断した撮像情報の示すものが撮像部(30)の撮影画角内に所定時間かざされたままであるときに、読書灯制御部(40,40A)が光源駆動部(20)を駆動して光源部(10)からの光軸を撮像部(30)が撮影した掌(P)の位置に向けるようにしてもよい。
【0022】
また、撮像部(30)による撮影を行わせる撮像スイッチ(270)と光源部(10)を点灯させる点灯スイッチ(280)を座席(2)に設けて、読書灯制御部(40,40A)は、撮像スイッチ(270)のON操作によって撮像部(30)による撮影を行うようにすることにより、読書時の姿勢をほとんど変えずに読書灯(1,1A)を容易に操作できる。撮像スイッチ(270)と点灯スイッチ(280)とを別個に設ける代わりに、光源部(10)を点灯させると同時に撮像部(30)による撮影を行わせる読書灯使用スイッチ(290)を座席(2)に設けてもよく、この場合にも同様に読書時の姿勢をほとんど変えずに読書灯(1,1A)を容易に操作できる。
【0023】
さらに、一度、光源部(10)からの光軸を撮像部(30)が撮影した掌(P)の位置に向けた後は、再度、撮像スイッチ(270)または読書灯使用スイッチ(290)のON操作があるまで、光の照射を光軸の方向に固定するようにすれば、誤動作を防止できるとともに読書中に姿勢を変えたくなったときに、変えた姿勢での撮像スイッチ(270)または読書灯使用スイッチ(290)のON操作をするだけで、新たな所望の位置に光を照射することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明にかかる読書灯によれば、読書灯からの照射光の方向の調節は、光源部を直接に手で動かす必要がなく、座席に着座して読書する姿勢のままで、書籍等を手に持つ位置や書籍等を置く位置などの所望の位置で掌を撮像部に撮影させれば光源部からの光軸が掌に向けられるので、読書時の姿勢のままで所望の方向に極めて容易に光を照射させることができる。
【0025】
また、掌判別部が掌であると判断した撮像情報の示すものが撮像部の撮影画角内に所定時間かざされたままであるときに、光源駆動部を駆動して光源部からの光軸を撮像部が撮影した掌の位置に向けるようにしたものでは、着座者が所望の位置に掌をかざす以前に掌が撮影され、そのときの掌の位置に光源部からの光軸が向けられてしまうというような誤動作の発生を防止することができる。
【0026】
また、撮像部による撮影を行わせる撮像スイッチと光源部を点灯させる点灯スイッチ、または光源部を点灯させると同時に撮像部による撮影を行わせる読書灯使用スイッチを座席に有するものでは、読書時の姿勢をほとんど変えずに読書灯を操作でき、さらに、一度、光源部からの光軸を撮像部が撮影した掌の位置に向けた後は、再度、撮像スイッチまたは読書灯使用スイッチのON操作があるまで、光の照射を前記光軸の方向に固定することにより、誤動作を防止できるとともに読書中に姿勢を変えたくなったときに、変えた姿勢での所望の位置に光を照射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施の形態に係る読書灯を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る読書灯が設けられた座席を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る読書灯の変形例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面に基づき本発明の好適な一実施の形態を説明する。
各図は本発明の一実施の形態を示している。
図1および2に示すように、読書灯1は、航空機の座席2に着座した着座者ごとに該着座者の所望する位置に光を照射することができるものである。
【0029】
読書灯1は、光を照射する光源部10と、該光源部10を変位させて該光源部10からの光軸方向を変位させる光源駆動部20と、着座者の掌Pを撮影するための撮像部30と、該撮像部30からの撮像データが掌Pであるか否かを判断するとともに、該撮像データが掌Pであると判断したときに前記光源部10からの光軸を前記撮影した掌Pの位置に向けるように前記光源駆動部20を駆動させる読書灯制御部40とを備えている。
【0030】
読書灯1の光源部10は、図2に例示したように座席2ごとにシートバック210の頂部に設けられている。光源部10は、シートバック210の頂部の両端の一方に固設した脚部11に枢設されており、光源駆動部20によって鉛直方向および水平方向に回動させることができる。光源部10は、その光源として例えば電球や複数の発光ダイオード等を使用するものである。
【0031】
この光源部10が設けられている座席2は、シートボトム220の後端に配設された支点を回動中心にしてシートバック210が起倒可能に枢支されており、シートバック210の起倒に伴ってシートボトム220も前後動するリクライニング可能なものである。
【0032】
シートボトム220の前端部にはレッグレスト221が設けられており、該レッグレスト221の前端部にはフットレスト222が設けられている。また、シートボトム220の両側にはアームレスト230が設けられており、座席2,2の間にはセンターアームレスト240が設けられている。センターアームレスト240には、TV用ディスプレイ250や飲物を載置するカクテルトレイ260等が配設されている。
【0033】
アームレスト230には、各種の操作を行うための操作ボタンが配設された操作盤231が設けられている。この操作盤231には、読書灯1の撮像部30による撮影を行わせるための撮像スイッチ270、光源部10を点灯および消灯させるための点灯スイッチ280、座席2をリクラインする際に操作するリクライニングボタン(図示せず)やTV用ディスプレイ250で各種の映像を鑑賞するときに操作するディスプレイスイッチ(図示せず)等が配設されている。なお、撮像スイッチ270と点灯スイッチ280に代えて光源部10を点灯および消灯させ、点灯と同時に撮像部30による撮影を行わせる読書灯使用スイッチ290を設けてもよい。また、アームレスト230には、アームレスト230に格納可能なテーブル232が設けられている。
【0034】
シートバック210の頂部に設けられた光源部10上部には撮像部30が設けられている。撮像部30は、例えばCCDカメラであり、光源部10からの光軸の延びる方向に向けられている。したがって、光源部10からの光軸と撮像部30のレンズの光軸とは平行になっている。
【0035】
図2では、光源部10の上部に撮像部30を設けてあるが、撮像部30は、上部に限らず光源部10の下部や側部に設けてもよい。また、撮像部30は、光源部10のケーシングに内蔵し、光源部10と一体にしたものでもよい。光源部10から着座者が読む書籍類までの距離、すなわち撮像部30から該撮像部30が撮影する掌Pの位置までは2mも離れていない近い位置にあるので、撮像部30は広角のカメラでなくてよい。
【0036】
撮像部30からの撮像データを基に読書灯を制御する読書灯制御部40は、撮像部30からの撮像データを受け取る入力部41と、該入力部41が受け取った撮像データに掌Pの情報を含むものであるか否かを判別するための掌画像データを予め記憶しておく掌画像データ部42と、撮像データを掌画像データと比較して撮像データに掌Pの情報を含むか否かを判別する掌判別部43と、光源駆動部20を制御する駆動制御部44とを有して成る。掌画像データ部42が記憶しておく掌画像データとは、右手の掌の輪郭を示す画像データと左手の掌の輪郭を示す画像データである。
【0037】
また、読書灯制御部40は、撮像スイッチ270と点灯スイッチ280を、または読書灯使用スイッチ290を前記したように座席2の操作盤231に有している。撮像スイッチ270と点灯スイッチ280を操作盤231に有するものの場合は、撮像スイッチ270のON操作によって撮像部30による撮影、掌判別部43による判別等が開始される。また、読書灯使用スイッチ290を操作盤231に有するものの場合には、読書灯使用スイッチ290のON操作によって撮像部30による撮影、掌判別部43による判別等が開始される。
【0038】
掌判別部43の行う判別は、撮像部30が撮影した画像中に掌が写っているか否かの判別である。すなわち、撮像部30からの撮像データに掌の輪郭を示す情報を含むか否かを検出する。掌の輪郭を示す情報であるか否かの判別は、掌画像データ部42に記憶してある掌画像データと比較して掌画像データに相当するか否かで行われる。
【0039】
掌画像データは、掌から延びる指を含めた全体を示すものである。掌の輪郭は厳密には十人十色で一人一人異なるが、そのような個人差程度の相違が判別に影響しないようにすること、および指を含めた掌全体の輪郭に類似する輪郭を有するものは手袋くらいしかなく、手袋以外のものの輪郭と指を含む掌の輪郭とを誤認する可能性はほとんどないことから、撮像部30からの撮像データと掌画像データとの比較は、精密にする必要はない。例えば、掌に相当する平面部分の一側縁に親指に相当する延伸部分が有り、上縁に他の指に相当する延伸部分が有るといった程度のものでも十分に良好な判別結果を得ることができる。
【0040】
掌判別部43により、撮像部30が撮影した画像中に掌が写っていると判別されたときは、光源駆動部20を駆動して光源部10からの光軸を撮像部30が撮影した掌Pの位置に向ける。具体的には、掌判別部43により掌Pが認識されると、撮像部30の撮影する画像の中心からの掌Pの位置のずれの方向と角度が容易に算出できるので、駆動制御部44はそのずれの方向に必要な角度だけ光源部10を変位させればよい。前記したように、光源部10は撮像部30に設けられており、撮像部30は光源部10からの光軸方向に向けられているので掌Pが撮像部30による撮影画像の中心部に位置するようにすればよい。
【0041】
なお、読書灯制御部40は、掌判別部43が掌Pの情報を含むと判断した撮像データの示す掌が撮像部30の撮影画角内に所定時間かざされたままであるときに、光源駆動部20を駆動して光源部10からの光軸を撮像部30が撮影した掌Pの位置に向けるようにすることにより、着座者が所望の位置に掌Pをかざす以前に掌Pが撮影され、そのときの掌Pの位置に光源部からの光軸が向けられてしまうというような誤動作の発生を防止することができる。
【0042】
また、読書灯制御部40は、一度、光源部10からの光軸を撮像部30が撮影した掌Pの位置に向けた後は、再度、撮像スイッチ270または読書灯使用スイッチ(290)のON操作があるまで、光の照射を光軸の方向に固定するようにしてもよい。あるいは、光源部10からの光軸を撮像部30が撮影した掌Pの位置に向けた後、所定時間経過した後は、再度、撮像スイッチ270または読書灯使用スイッチ(290)のON操作があるまで、光の照射を光軸の方向に固定するようにしてもよい。これにより、誤動作を防止できるとともに読書中に姿勢を変えたくなったときに、改めて撮像スイッチ270または読書灯使用スイッチ(290)のON操作をするだけで、変えた姿勢での所望の位置に光を照射することができる。
【0043】
次に、前記読書灯1の作用を説明する。
読書灯1を使用するときは、座席2に着座して読書をする姿勢をとった後、読書灯の照射光を当てたい位置、すなわち、読み物を位置させようとする位置に左右いずれかの掌Pを開気味にして撮像部30に向けるようにかざせばよい。本実施の形態では、座席2のシートバック210の頂部に設けられた光源部10に撮像部30が設けられているので、掌Pを自分に向けてかざせばよい。
【0044】
掌Pをかざした後、あるいは掌Pをかざす以前に座席2の操作盤231に配設した撮像スイッチ270または読書灯使用スイッチ(290)のON操作を行うと、撮像部30が撮影を開始する。撮像部30が撮影した掌Pの撮像データは、読書灯制御部40の入力部41に送られる。入力部41は、受け取った撮像データを読書灯制御部40の掌判別部43に送る。
【0045】
掌判別部43は、掌画像データ部42に記憶してある掌画像データと入力部41から送られてきた撮像データを比較して、撮像データに掌Pの情報が含まれているか否かを判別する。すなわち、掌判別部43は、掌画像データが示す掌Pの特徴に相当するものを撮像データから検出したときは、撮像部30の撮影画像の中に掌Pが有ると判断する。
【0046】
掌判別部43がこの判断をしたときは、読書灯制御部40は、掌Pが撮影画像の中心に来るように光源駆動部20を駆動して光源部10を変位させる。これにより、光源部10からの光軸は、撮影した掌Pの位置に向けられる。このようにして、着座者は読書をするときに実際に読み物を置く位置に読書灯1の光軸が向くように容易に光源部10の方向を調節することができ、着座者の所望する状態に読書灯1の光を照射することができる。
【0047】
なお、掌判別部43が撮像部30の撮影画像の中に掌Pが有ると判断してから掌Pが撮像部30の撮影画角内にかざされたまま所定時間が経過した後に、光源駆動部20を駆動して光源部10からの光軸を撮像部30が撮影した掌Pの位置に向けるようにしてもよい。
【0048】
このようにして光源部10からの光軸を撮像部30が撮影した掌Pの位置に向けた後は、再度、撮像スイッチ270または読書灯使用スイッチ(290)のON操作があるまで、光の照射が光軸の方向に固定される。
【0049】
読書中に姿勢を変えたくなったときなど、読書灯1の光源部10からの照射光の方向を変えたくなったときは、撮像スイッチ270または読書灯使用スイッチ(290)を再度ON操作すればよい。これによって、撮像部30による撮影から始まる前記した一連の作用が行われ、光源部10からの照射光を新たな所望の位置に当てることができる。
【0050】
図3は本発明の一実施の形態の変形例を示している。
本変形例に係る読書灯1Aでは、撮像部30を光源部10と離隔した位置に固設した点、掌判別部43が撮像部30からの撮像データに掌Pの情報が含まれると判断したときに、掌Pの位置を算出する掌位置算出部45を有する点、光源部10の位置と該光源部10からの光軸を所定の方向に向けた基準方向とを示す光源部基準情報を記憶部46に記憶してある点とが前記の読書灯1と異なっている。撮像部30を設ける、光源部10と離隔した位置とは、例えば座席の上方の天井である。
【0051】
なお、前記の実施の形態と同種の部位には同一符号を付し重複した説明を省略する。
図3に示すように、読書灯制御部40Aは、掌判別部43が撮像部30からの撮像データに掌Pの情報が含まれると判断したときに、掌位置算出部45が撮像部30による撮像画像全体の中心からの掌Pの撮像画像のずれの方向と撮像部30から掌Pまでの距離とから掌Pの位置を求める。撮像部30から掌Pまでの距離は、撮像部30にカメラのオートフォーカス機能として採用されている位相差検出方式あるいはコントラスト検出方式を備えておくことによって求めることができる。
【0052】
読書灯制御部40Aは、掌位置算出部45が算出した掌Pの位置と光源部基準情報に基づいて、光源部10からの光軸を掌Pの位置に向けるべく、光源部10を変位させる方向と角度をさらに算出し、駆動制御部44と光源駆動部20を介して光源部10を変位させる。
【0053】
次に、前記変形例に係る読書灯1Aの作用を説明する。
この変形例に係る読書灯1Aにおいて座席2の着座者が行う諸操作は前記の読書灯1における操作と全く同じである。読書灯1との相違は、撮像部30が光源部10から離隔した位置に固設されている点であり、この相違から掌判別部43が撮像部30からの撮像データに掌Pの情報が有ると判断したときに、掌位置算出部45が撮像部30による撮像画像全体の中心からの掌Pの撮像画像のずれの方向と撮像部30から掌Pまでの距離とから掌Pの位置を求める点が異なる。
【0054】
そして、読書灯制御部40Aは、光源部基準情報と掌Pの位置とに基づいて、光源部10から見た掌Pの方向を算出し、その方向に光源駆動部20を駆動して光源部10からの光軸を掌Pの位置に向ける。
【0055】
なお、前記の実施の形態および変形例において、整備時に全ての装置を集約するリセットボタンを押すことに連動して、光源部10の光軸を既定位置に向けるようにしてもよい。この場合、この既定位置に向かう方向を前記変形例における基準方向としてもよい。
【0056】
また、掌の有無の判別には背景差分法を用いても良い。すなわち、背景画像は着座者が居ない画像とし、その背景画像とその後に撮像部が撮影した画像とを比較して抽出した画像から掌の有無を判断するようにしてもよい。この場合、背景画像としては、着座者が確実にいない状況での画像であることが必要なので、例えば、搭乗客を機内に入れる以前に電源を始動した際に撮影した画像を用いるとよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
航空機の座席に限らず鉄道車両の座席等、広く乗り物用の座席に適用することができる。
【符号の説明】
【0058】
P…掌
1…読書灯
1A…読書灯
2…座席
10…光源部
11…脚部
20…光源駆動部
30…撮像部
40,40A…読書灯制御部
41…入力部
42…掌画像データ部
43…掌判別部
44…駆動制御部
45…掌位置算出部
46…記憶部
210…シートバック
220…シートボトム
221…レッグレスト
222…フットレスト
230…アームレスト
231…操作盤
232…テーブル
240…センターアームレスト
250…TV用ディスプレイ
260…カクテルトレイ
270…撮像スイッチ
280…点灯スイッチ
290…読書灯使用スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席に着座した着座者ごとに該着座者の所望する位置に光を照射することができる読書灯において、
光を照射する光源部と、該光源部を変位させて該光源部からの光軸方向を変位させる光源駆動部と、着座者の掌を撮影するための撮像部と、該撮像部からの撮像データに掌の情報を含むか否かを判断するとともに、該撮像データに掌の情報を含むと判断したときに前記光源部からの光軸を前記撮影した掌の位置に向けるように前記光源駆動部を駆動させる読書灯制御部とを備え、
前記読書灯制御部は、前記撮像部からの撮像データを受け取る入力部と、前記撮像データに掌の情報を含むか否かを判別するための掌画像データを予め記憶しておく掌画像データ部と、前記撮像データを前記掌画像データと比較して前記撮像データに掌の情報を含むか否かを判別する掌判別部とを有して成り、
前記掌判別部が前記撮像データに掌の情報を含むと判別したときに、前記光源駆動部を駆動して前記光源部からの光軸を前記撮像部が撮影した掌の位置に向けることを特徴とする読書灯。
【請求項2】
座席に着座した着座者ごとに該着座者の所望する位置に光を照射することができる読書灯において、
光を照射する光源部と、該光源部を変位させて該光源部からの光軸方向を変位させる光源駆動部と、着座者の掌を撮影するための撮像部と、該撮像部からの撮像データに掌の情報を含むか否かを判断するとともに、該撮像データに掌の情報を含むと判断したときに前記光源部からの光軸を前記撮影した掌の位置に向けるように前記光源駆動部を駆動させる読書灯制御部とを備え、
前記撮像部は、前記光源部からの光軸の延びる方向に向けて前記光源部に設けられ、
前記読書灯制御部は、前記撮像部からの撮像データを受け取る入力部と、前記撮像データに掌の情報を含むか否かを判別するための掌画像データを予め記憶しておく掌画像データ部と、前記撮像データを前記掌画像データと比較して前記撮像データに掌の情報を含むか否かを判別する掌判別部とを有して成り、
前記掌判別部が前記撮像データに掌の情報を含むと判別したときに、前記光源駆動部を駆動して前記光源部からの光軸を前記撮像部が撮影した掌の位置に向けることを特徴とする読書灯。
【請求項3】
座席に着座した着座者ごとに該着座者の所望する位置に光を照射することが可能な読書灯において、
光を照射する光源部と、該光源部を変位させて該光源部からの光軸方向を変位させる光源駆動部と、着座者の掌を撮影するための撮像部と、該撮像部からの撮像データに掌の情報を含むか否かを判断するとともに、該撮像データに掌の情報を含むと判断したときに前記光源部からの光軸を前記撮影した掌の位置に向けるように前記光源駆動部を駆動させる読書灯制御部とを備え、
前記撮像部は、前記光源部と離隔した位置に固設され、
前記読書灯制御部は、前記撮像部からの撮像データを受け取る入力部と、前記撮像データに掌の情報を含むか否かを判別するための掌画像データを予め記憶しておく掌画像データ部と、前記撮像データを前記掌画像データと比較して前記撮像データに掌の情報を含むか否かを判別する掌判別部と、該掌判別部が前記撮像部からの撮像データに掌の情報を含むと判断したときに、前記掌の位置を算出する掌位置算出部を有して成り、
前記読書灯制御部は、前記掌判別部が前記撮像データに掌の情報を含むと判断したときに、前記光源駆動部を駆動して前記光源部からの光軸を前記掌位置算出部が算出した掌の位置に向けることを特徴とする読書灯。
【請求項4】
前記読書灯制御部は、前記光源部の位置と該光源部からの光軸を所定の方向に向けた基準方向とを示す光源部基準情報を記憶しており、
前記掌位置算出部は、前記撮像部による撮像画像全体の中心からの掌の撮像画像のずれの方向と前記撮像部から掌までの距離とから前記掌の位置を求め、
前記読書灯制御部は、前記掌の位置と前記光源部基準情報に基づいて、前記光源部からの光軸を前記掌の位置に向けることを特徴とする請求項3に記載の読書灯。
【請求項5】
前記読書灯制御部は、前記掌判別部が掌の情報を含むと判断した撮像データの示す掌が前記撮像部の撮影画角内に所定時間かざされたままであるときに、前記光源駆動部を駆動して前記光源部からの光軸を前記撮像部が撮影した掌の位置に向けることを特徴とする請求項1、2、3または4に記載の読書灯。
【請求項6】
前記読書灯制御部は、前記撮像部による撮影を行わせる撮像スイッチと前記光源部を点灯および消灯させる点灯スイッチ、または前記光源部を点灯させると同時に前記撮像部による撮影を行わせる読書灯使用スイッチを座席に有し、前記撮像スイッチまたは前記読書灯使用スイッチのON操作によって前記撮像部による撮影を行うことを特徴とする請求項1、2、3、4または5に記載の読書灯。
【請求項7】
前記読書灯制御部は、一度、前記光源部からの光軸を前記撮像部が撮影した掌の位置に向けた後は、再度、前記撮像スイッチまたは前記読書灯使用スイッチのON操作があるまで、光の照射を前記光軸の方向に固定することを特徴とする請求項6に記載の読書灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−37386(P2011−37386A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−187328(P2009−187328)
【出願日】平成21年8月12日(2009.8.12)
【出願人】(390010054)小糸工業株式会社 (136)
【Fターム(参考)】