説明

課電式事故探査装置のケーブル収納装置

【課題】課電式事故探査装置におけるケーブルの引き出し効率・収納効率の向上と、ケーブルの延長化を実現した、課電式事故探査装置のケーブル収納装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る課電式事故探査装置のケーブル収納装置は、ケーブルを巻き込むための回転ドラムと、該回転ドラムを動力伝達用のタイミングベルトを介して回転させるためのハンドルを備えた巻き取り用回転板と、アースケーブルを直接巻き取るためのハンドルを備えたアースリールのそれぞれが、箱体に収納されている。また、回転ドラムの側面に形成された凹部の内側に、高圧用の端子とアース用の端子を備え、該端子は、回転ドラムの軸受部分となる電源側固定板に形成された回転式接点部に摺接され、該回転式接点部は課電装置の電源ケーブルに接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電線の事故時において、配電線の事故点を高電圧出力用のケーブルとアースケーブルを用いて探査する際に使用する、課電式事故探査装置のケーブル収納装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、電力の供給を停止あるいは切離した高圧架空配電線の事故停電区間に高電圧を印加し、その際に流れる電流を検出して地絡事故点を探査する事故点探査方法がある(特許文献1乃至3参照)。
【0003】
例えば、配電線の事故時においては、図9に示すように、車K内に搭載されている可搬型ボックス状の課電式事故探査装置Pに接続した高電圧出力用のケーブル100とアースケーブル101を使用して、配電線の事故点を探査していた。
【0004】
そして、課電式事故探査装置Pのケーブル100,101は、不使用の際には、課電式事故探査装置Pから外して、手で任意のサイズに巻き込んでから、車K内の課電式事故探査装置Pの上に載せておくのが一般的であった。
【0005】
また、両ケーブル100,101を使用する際には、巻き込んでいるケーブル100,101を、車Kの外に引き出す必要があった。
【特許文献1】特許出願公告昭61−53663号
【特許文献2】特許出願公告昭62−35068号
【特許文献3】特開2003−043093号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来における緊急作業時の問題点として、ケーブル100,101の引き出しと巻き取りに時間が掛かり、その取り扱いが雑になり易く、ケーブル100,101に損傷を与える恐れがあった。
【0007】
また、車K内からケーブル100,101を引き出す際に、ケーブル100,101の癖を直しながら丹念に引き出す必要があるが、ケーブル100,101に既に存在するキンク等を要因として、ケーブル100,101に損傷を与える恐れもあった。
【0008】
さらに、課電式事故探査装置Pの設置、撤収、移動に手間が掛かることから、事故停電時間の短縮を図るために、作業員に焦りや苛立ちが生じていた。
【0009】
しかも、混線したケーブル100,101で車K内が乱雑になるため、使用後に乱雑になったケーブル100,101の巻き直しが必要となるのであるが、このとき、ケーブル100,101の巻き取り方や時間等に個人差が生じ、さらに、ケーブル100,101の巻溜め場所が不適当であったりする場合には、作業員の疲労感が大きいものとなっていた。
【0010】
また、ケーブル100,101の長さの問題点としては、課電ポイントとなる供給用配電箱や借用電気室がユーザの敷地内の奥に設置されていたり、商店街や繁華街等における課電ポイント付近に駐車車両が多くなっている場合には、ケーブル100,101の長さを充分に大きくする必要があるが、そうすると必然的にケーブル100,101の引き出し、巻き取りに時間が掛かり、作業員の疲労感がさらに大きくなっていた。
【0011】
そこで、本発明は如上のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、課電式事故探査装置におけるケーブルの引き出し効率・収納効率の向上と、ケーブルの延長化を実現した、課電式事故探査装置のケーブル収納装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る課電式事故探査装置のケーブル収納装置は、ケーブルを巻き込むための回転ドラムと、該回転ドラムを動力伝達用のタイミングベルトを介して回転させるためのハンドルを備えた巻き取り用回転板と、アースケーブルを直接巻き取るためのハンドルを備えたアースリールのそれぞれが、箱体に収納されていることで、上述した課題を解決した。
【0013】
また、回転ドラムの側面に形成された凹部の内側に、高圧用の端子とアース用の端子を備え、該端子は、回転ドラムの軸受部分となる電源側固定板に形成された回転式接点部に摺接され、該回転式接点部は課電装置の電源ケーブルに接続されていることで、同じく上述した課題を解決した。
【0014】
さらに、電源側固定板には、凹部の内側に形成されたガイド突部が摺動可能に係合するためのガイドレールが突設されていることで、同じく上述した課題を解決した。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る課電式事故探査装置のケーブル収納装置は、ケーブルを巻き込むための回転ドラムと、該回転ドラムを動力伝達用のタイミングベルトを介して回転させるためのハンドルを備えた巻き取り用回転板と、アースケーブルを直接巻き取るためのハンドルを備えたアースリールのそれぞれが、箱体に収納されていることから、緊急作業時において、ケーブルの引き出しと巻き取りを短時間の内に行って、ケーブルに損傷を与えることも無い。
【0016】
また、課電式事故探査装置の設置、撤収、移動も容易になり、作業員に焦りや苛立ちが生じることなく、事故停電時間の短縮を図ることができる。
【0017】
さらに、混線したケーブルで車内が乱雑になることも無いため、使用後にケーブルを巻き直す必要が無い。
【0018】
これに関連して、ケーブルの巻き取り方や時間等に個人差が生じることも無い。
【0019】
また、ケーブルの巻溜め場所が不適当となることも無いため、作業員の疲労感を減少させることができる。
【0020】
加えて、課電ポイントとなる供給用配電箱、借用電気室がユーザの敷地内の奥に設置されていたり、商店街や繁華街等における課電ポイント付近に駐車車両が多くなっている場合に、作業員に負担を与えることなく、ケーブルの長さを充分に確保することができる。
【0021】
この他、回転ドラムの側面に形成された凹部の内側に高圧用の端子を配し、その外側にアース用の端子を備え、該端子は、回転ドラムの軸受部分となる電源側固定板に形成された回転式接点部に摺接され、該回転式接点部は課電装置の電源ケーブルに接続されている。これにより、課電装置が天候等の状況により水に濡れた場合であって、万一、外側から内側にある高電圧側に水が侵入した場合でも、外側に配されたアース用端子によって、装置外部への漏電が防止できるため、測定者の感電を防止できる。
【0022】
また、電源側固定板には、凹部の内側に形成されたガイド突部が摺動可能に係合するためのガイドレールが突設されている。これにより、回転ドラムと電源側固定板とが適切な位置に配置される。また、回転ドラムの側面に形成された凹部や電源側固定板の凹部によって、天候等の状況により装置が水に濡れた場合であっても、内部の高電圧部分への水の浸入を防ぐ防波堤のような役割を担う。更には、これらのヒダの存在によって、高電圧部分とアース端子部分との間の沿面距離が長くなるので、アース端子への不要な漏電をも防ぐ役割も担っている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
【0024】
本発明に係る課電式事故探査装置Pのケーブル収納装置1は、一般的な手動巻き取り式のコードリール方式を採用している。このケーブル収納装置1を、可搬型ボックスタイプの課電式事故探査装置Pの側面に付設しているのである。
【0025】
具体的には、図1乃至図3に示すように、ケーブル収納装置1は、ケーブル7を巻き込むための硬質塩化ビニル等の絶縁性を有するリール一体型の回転ドラム2と、該回転ドラム2を動力伝達用のV型エンドレスベルト等のタイミングベルト3を介して回転させるためのハンドルHを備えた巻き取り用回転板4と、アースケーブル8を直接巻き取るためのハンドルHを備えたアースリール5のそれぞれが、上部に把持部Lを備えているコンパクトな箱体6に収納されている。
【0026】
リール一体型の回転ドラム2は、図2・図3に示すように、この中心の回転胴部12の両側面に突設した軸部13が、箱体6内に対向するように立設した一対の板状の軸受14に回転可能に支承されている。このとき、一方側の軸部13は、後述する電源側固定板19を介して支承されている。
【0027】
また、図6乃至図8に示すように、回転ドラム2には、この円周に沿って外向きコ字枠状のメインドラム16が一体形成され、そこにケーブル7が巻き取られるようにしている。このケーブル7の巻き込み方法は、巻き取り用回転板4のハンドルHを廻すことによりタイミングベルト3と連動し、リール一体型の回転ドラム2に巻き込むものである。尚、巻き取り用回転板4自体は、ケーブル7の引き出しに対して回転しない、例えば、ラチェット方式等の逆転防止装置(図示せず)を設けている。
【0028】
そして、中心の回転胴部12の一方の側面には、円形状の凹部17が形成され、その内側には、内周側と外周側との各2箇所に、それぞれ2本の高圧用と2本のアース用との合計4本の端子18a,18bが、押しバネを介して取り付けられている。
【0029】
さらに、図5・図6に示すように、前記凹部17は、前記軸受14に同軸固定されている電源側固定板19に合致接触されるようにしている。この電源側固定板19の片面には、凹部17内に形成された大径環状のガイド突部20が摺動可能に係合するための環状一対のガイドレール21が突設されている。尚、凹部17内への浸水防止のために、回転縁にフッ素ゴムを巻装している。
【0030】
そして、図7に示すように、回転胴部12の内側に空洞部22が形成されており、メインドラム16に巻かれるケーブル7の基端側が、当該メインドラム16の円周底部に穿設した通孔16aに通される。
【0031】
そして、図8に示すように、ケーブル7の芯線7aが前記した4本の端子18a,18bのうちの高圧用の端子18aに接続され、ケーブル7の芯線7aに絶縁物7cを介して巻装された金属編組によるアース線7bがアース用の端子18bに接続されている。
【0032】
前記凹部17に、前記軸受14に同軸固定されている電源側固定板19が合致して接触した際には、この電源側固定板19に形成された回転式接点部23を介して、課電式事故探査装置Pの電源ケーブル24に接続される。このとき、図3に示すように、課電式事故探査装置Pに隣接した高圧出力部と電源ケーブル24との接続は、箱体6に対して着脱可能な接続用コネクター25を介して行われる。
【0033】
こうして、ケーブル7とリール一体型の回転ドラム2が、完全に一体化されてジョイントレスに構成されている。また、アースケーブル8との干渉を防ぐため、当該アースケーブル8についても、アースリール5と完全に一体化されてジョイントレスに構成されている。
【0034】
さらに、ケーブル7とアースケーブル8の収納処理性能を向上させるために、現行の20mのケーブル7とアースケーブル8を、40mのものへ長尺化している。
【0035】
また、現行のアースケーブル8では、巻癖が残って螺旋状になってしまい、ケーブル7が歩道を横断する際に、歩行者や自転車等の通行に支障をきたす虞があるため、同等以上の線種を選別する。
【0036】
次に、以上のように構成された本発明の最良の形態について、使用・動作の一例を説明する。
【0037】
先ず、配電線の事故時において、この、配電線の事故点を、可搬型ボックス状の課電式事故探査装置Pに接続した高電圧出力用のケーブル7とアースケーブル8によって探査するに際し、図1に示すように、リール一体型の回転ドラム2からケーブル7を引き出す。この際、巻き取り用回転板4は回転しないで、ケーブル7が引き出される。また、アースケーブル8は、アースリール5から直接引き出される。
【0038】
ケーブル7の引き出し後には、図8に示すように、ケーブル7の芯線7aが前記した4本の端子18a,18bのうちの高圧用の端子18aに接続され、アース線7bがアース用の端子18bに接続されていると共に、電源側固定板19の回転式接点部23を介して、課電式事故探査装置Pの電源ケーブル24に接続されているため、ケーブル7の引き出し回転中、課電式事故探査装置Pに隣接した高圧出力部と電源ケーブル24は、予め箱体6に取り付けられた接続用コネクター25を介して常時接続されている状態となる。
【0039】
そして、探査終了後には、巻き取り用回転板4のハンドルHを廻すことにより、タイミングベルト3と連動してリール一体型の回転ドラム2にケーブル7を巻き込んで収容する。また、箱体6からは、接続用コネクター25を外す。さらに、アースケーブル8は、ハンドルHを廻すことにより、アースリール5に直接巻き込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明に係る課電式事故探査装置のケーブル収納装置は、配電線の事故時における事故点を探査するために使用するケーブルの他に、様々なケーブルを収納する装置として、幅広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】ケーブル収納装置の構成を示す右側面図である。
【図2】ケーブル収納装置の内部構造を示す左側面図である。
【図3】ケーブル収納装置の内部構造を示す右側面図である。
【図4】回転ドラムの空洞部内を露出した状態の側面図である。
【図5】回転ドラムの構造を示すもので、(a)は凹部内を露出した状態の回転ドラムの側面図、(b)は軸受に固定された電源側固定板の側面図である。
【図6】回転ドラムの構造を示すもので、(a)は凹部内を露出した状態の回転ドラムの斜視図、(b)は軸受に固定された電源側固定板の斜視図である。
【図7】回転ドラムの内部構造を示す断面図である。
【図8】回転ドラムの内部構造を示す拡大断面図である。
【図9】従来の課電式事故探査装置において、車内にケーブルを収容している状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0042】
P…課電式事故探査装置
H…ハンドル
L…把持部
1…ケーブル収納装置
2…回転ドラム
3…タイミングベルト
4…巻き取り用回転板
5…アースリール
6…箱体
7…ケーブル
7a…芯線
7b…アース線
7c…絶縁物
8…アースケーブル
12…回転胴部
13…軸部
14…軸受
16…メインドラム
16a…通孔
17…凹部
18a,18b…端子
19…電源側固定板
20…ガイド突部
21…ガイドレール
23…回転式接点部
24…電源ケーブル
25…接続用コネクター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルを巻き込むための回転ドラムと、該回転ドラムを動力伝達用のタイミングベルトを介して回転させるためのハンドルを備えた巻き取り用回転板と、アースケーブルを直接巻き取るためのハンドルを備えたアースリールのそれぞれが、箱体に収納されていることを特徴とする課電式事故探査装置のケーブル収納装置。
【請求項2】
回転ドラムの側面に形成された凹部の内側に、高圧用の端子とアース用の端子を備え、該端子は、回転ドラムの軸受部分となる電源側固定板に形成された回転式接点部に摺接され、該回転式接点部は課電装置の電源ケーブルに接続されている請求項1に記載の課電式事故探査装置のケーブル収納装置。
【請求項3】
電源側固定板には、凹部の内側に形成されたガイド突部が摺動可能に係合するためのガイドレールが突設されている請求項1または2に記載の課電式事故探査装置のケーブル収納装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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