説明

調光用偏光板、及びシャッター用偏光板

【課題】色味付きのない調光用偏光板の提供。
【解決手段】少なくとも1種類のフィルム、偏光子、及び光透過性基板を含む積層体からなり、波長λnmにおける単板透過率T1(λ)%及び直交透過率T2(λ)%が、下記式(1)〜(4)を満足することを特徴とする調光用偏光板である。
(1) 55%≧T1(430)≧38%
(2) 60%≧T1(590)≧42.5%
(3) 1.0≧T1(430)/T1(590)≧0.9
(4) T2(430)≧0.02%

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調光機能又はシャッター機能を有する偏光板に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光子を利用した調光方法が種々提案されている(例えば、特許文献1)。かかる調光方法を建物用窓から入射する太陽光の調光に利用することも期待される。しかし、偏光子(直線偏光膜ともいう)をガラス等の光透過性基板に実際に貼合すると、色味付きが認識される。窓ガラスの色味付きの色相やその程度は、室内空間の快適さに影響する。また、近年では、例えば、ショーウィンドウ等の商業用建物の窓には、光透過性のディスプレイを搭載することがあり、窓の色味付きによって、当該ディスプレイ上に表示された画像が色味付き、表示品位を損なうという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−275976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、色味付きが少なく、種々の用途に利用可能な、調光用偏光板、及びシャッター用偏光板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] 少なくとも1種類のフィルム、偏光子、及び光透過性基板を含む積層体からなり、波長λnmにおける単板透過率T1(λ)%及び直交透過率T2(λ)%が、下記式(1)〜(4)を満足することを特徴とする調光用偏光板。
(1) 55%≧T1(430)≧38%
(2) 60%≧T1(590)≧42.5%
(3) 1.0≧T1(430)/T1(590)≧0.9
(4) T2(430)>0.02%
[2] 下記式(1’)及び(2’)を満足する[1]の調光用偏光板。
(1’) 55%≧T1(430)≧38.5%
(2’) 60%≧T1(590)≧43%
[3] 下記式(1”)及び(2”)を満足する[1]の調光用偏光板。
(1”) 55%≧T1(430)≧39%
(2”) 60%≧T1(590)≧45%
[4] 前記積層体に含まれる少なくとも一層に、すくなくとも1種の紫外線吸収剤を含有する[1]〜[3]のいずれかの調光用偏光板。
[5] 前記積層体が、面内遅相軸方向及び面内レターデーションの少なくとも一方が互いに異なる第1位相差領域及び第2位相差領域を含むとともに、該第1及び第2位相差領域が、面内の任意の方向において幅Lが1mm〜50mmのパターンで面内に配置されたパターン光学異方性層、をさらに有する[1]〜[4]のいずれかの調光用偏光板。
[6] 前記パターン光学異方性層が、互いに隣り合う第1及び第2の位相差領域の間に存在する幅L1の境界線を含み、前記幅Lと境界線幅L1とが、下記式(a)を満足するパターン光学異方性層である[5]の調光用偏光板。
式(a) 100≦L/L1≦5,000
[7] 前記境界線に対応する位置に配置された色素部分を、前記パターン光学異方性層の上層及び下層の少なくとも一方に有する[5]又は[6]の調光用偏光板。
[8] 前記第1位相差領域及び第2位相差領域が、幅Lのストライプ形状である[5]〜[7]のいずれかの調光用偏光板。
[9] 前記第1及び第2位相差領域の面内遅相軸と、前記偏光子の透過軸とがそれぞれ±45°の角度をなす[5]〜[8]のいずれかの調光用偏光板。
[10] 前記積層体の前記偏光子を除く全ての部材の波長550nmの面内レターデーションRe(550)の合計値が、110〜160nmである[5]〜[9]のいずれかの調光用偏光板。
[11] 前記パターン光学異方性層に隣接する、一方向に配向処理された配向膜をさらに有する[5]〜[10]のいずれかの調光用偏光板。
[12] 前記配向膜が、一方向にラビング処理されたラビング配向膜である[11]の調光用偏光板。
[13] 前記パターン光学異方性層が、重合性基を有するディスコティック液晶を主成分とする組成物から形成された層である[5]〜[12]のいずれかの調光用偏光板。
[14] 前記ディスコティック液晶が、垂直配向状態に固定されている[13]の調光用偏光板。
[15] [5]〜[14]のいずれかの調光用偏光板を少なくとも2枚有することを特徴とするシャッター用偏光板。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、色味付きが少なく、種々の用途に利用可能な、調光用偏光板、及びシャッター用偏光板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の調光用偏光板の一例の断面模式図である。
【図2】本発明の調光用偏光板の一例の断面模式図である。
【図3】本発明の調光用偏光板の一例の断面模式図である。
【図4】本発明に利用可能なパターン光学異方性層の一例の上面模式図である。
【図5】本発明に利用可能なパターン光学異方性層の一例の断面模式図である。
【図6】偏光子の吸収軸とパターン光学異方性層の遅相軸との組み合わせの一例を説明するための上面模式図である。
【図7】本発明のシャッター用偏光板の一例の断面模式図である。
【図8】本発明のシャッター用偏光板の一例の機能を説明するために用いた模式図である。
【図9】実施例で用いたゴム状フレキソ版の断面模式図である。
【図10】実施例で用いたフレキソ印刷装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書では、測定波長について特に付記がない場合は、測定波長は550nmである。
また、本明細書において、角度(例えば「90°」等の角度)、及びその関係(例えば「直交」、「平行」、及び「45°で交差」等)については、本発明が属する技術分野において許容される誤差の範囲を含むものとする。例えば、厳密な角度±10°未満の範囲内であることなどを意味し、厳密な角度との誤差は、5°以下であることが好ましく、3°以下であることがより好ましい。
【0009】
本発明は、少なくとも1種類のフィルム、偏光子、及び光透過性基板を含む積層体からなる調光用偏光板に関する。光透過性基板は、ガラス板、又はアクリル板等のプラスチック基板であり、これに、例えば、互いに直交する吸収軸を有する、直線偏光能を示す偏光子を2枚積層した偏光板を用いると、光の入射角度に応じて、透過光の透過率を調整、即ち調光することができる。また、後述するパターン光学異方性層を利用することでも、調光機能を付与することができる。
【0010】
一方で、偏光子を積層すると、無色透明のガラス板等の光透過性基板が、色味付くことがわかった。この色味付きの色相やその程度は、積層する偏光子の特性に影響され、例えば、液晶表示装置に一般的に利用されている偏光子を積層すると、黄色味付きがあることがわかった。窓ガラスが黄色味付くことは、室内空間の快適性を損なう場合がある。また、ショーウィンドウ等の商業用建物の窓には、光透過性のディスプレイが搭載される場合があるが、当該ディスプレイ上に表示される画像を着色させ、その表示品位を著しく低下する場合がある。
【0011】
液晶表示装置等の表示装置の技術分野では、理想的な黒状態を達成することが技術課題の一つである。理想的な黒を達成するためには、短波長の光漏れを防止することが重要であり、従って、液晶表示装置に用いられている偏光板の単板透過率T1(λ)%は、以下の式(i)を満足するのが一般的である。また、理想的な黒状態の達成には、直交透過率T2を0に近づける(具体的にはT2を0.01%未満にする)ことが重要であり、そのためには可視光域の単板透過率T1%が、以下の式(ii)を満足するのが一般的である。
(i) T1(430)<38%
(ii) T1(λvis)<42.5% (但し、λvisは、可視光域の任意の波長)
【0012】
本発明の偏光板は、着色が少ないので、種々の用途に用いることができる。一例は、窓用途であり、当該用途では、単板で使用した際の色味付き、及び光透過性等が重要な特性である。本発明者が種々検討した結果、短波長光の単板透過率を、液晶表示装置に用いられる偏光板より高くすることで、色味付きを顕著に軽減できることがわかった。さらに、可視光域における単板透過率T1を、液晶表示装置に用いられる偏光板より低くし、且つ直交透過率T2を前記偏光板より高くすることで、色味付きをさらに軽減できることがわかった。
【0013】
具体的には、本発明では、偏光板の波長λnmにおける単板透過率T1(λ)%及び直交透過率T2(λ)%を調整し、下記式(1)〜(4)を満足する特性にすることで、偏光板としての機能を維持しつつ、上記問題点を解決している。
(1) 55%≧T1(430)≧38%
(2) 60%≧T1(590)≧42.5%
(3) 1.0≧T1(430)/T1(590)≧0.9
(4) T2(430)≧0.02%
【0014】
ここで、単板透過率T1(λ)%とは、波長λの光が、1枚の偏光板を透過する割合を意味し、また直交透過率T2(λ)%とは、波長λの光の直交位の透過率を意味する。これらは、分光光度計により測定することができ、具体的には、自動偏光フィルム測定装置「VAP-7070」(日本分光株式会社)により測定することができる。
【0015】
前記式(1)は、可視光域の短波長光(例えば青色光)の単板透過率T1の範囲を特定する関係式であり、色味付きの低減効果の観点では、下記式(1’)を満足するのがより好ましく、下記式(1”)を満足するのがさらに好ましい。また、前記式(2)は、可視光域の中心波長光(例えば緑色光)の単板透過率T1の範囲を特定する関係式であり、色味付きの低減効果の観点では、下記式(2’)を満足するのがより好ましく、下記式(2”)を満足するのがさらに好ましい。
(1’) 55%>T1(430)>38.5%
(1”) 55%>T1(430)>39%
(2’) 60%>T1(590)>43%
(2”) 60%>T1(590)>45%
【0016】
前記式(3)は、緑色光の単板透過率に対する青色光の単板透過率の割合範囲を特定する関係式であり、色味付きの低減効果の観点では、T1(430)/T1(590)は、0.91〜0.98であるのが好ましく、0.91〜0.95であるのがより好ましい。なお、上記した通り、一般的な表示装置に用いる偏光板では、短波長光の漏れによる黒状態の色味付きを軽減するために、T1(430)を小さく設定しているので、T1(430)/T1(590)は、0.87程度になっている。
【0017】
前記式(4)は、直交位の透過率を特定する関係式であり、色味付きの軽減効果の観点では、0.02%〜1.0%であるのが好ましく、0.03〜0.5%であるのがより好ましい。
【0018】
本発明の窓用偏光板は、偏光子及び光透過性基板を少なくとも含む積層体からなる。前記光透過性基板としては、通常の窓に用いられるガラス板、及びアクリル板、ポリカーボネート板、ポリスチレン板等のプラスチック基板を用いることができる。前記光透過性基板の厚みの好ましい範囲は、用途によって異なるが、建物用の窓では、一般的には、0.1〜20mmであり、自動車等の乗り物用の窓では、一般的には、1〜10mmである。
【0019】
本発明の窓用偏光板が有する偏光子についても特に制限はない。従来使用されている直線偏光膜を広く利用することができる。偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜があり、本発明にはいずれを使用してもよい。ヨウ素系偏光膜および染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。偏光膜の製造方法は、例えば、特開2011−128584号公報の記載を参酌することができる。また、偏光子は、塗布によって形成される層であってもよい。
【0020】
前記偏光子は、一様に形成されていても、パターン状に形成されていてもよい。一例では、吸収軸を互いに異なる方向に有する2以上の領域が所定のパターンに配置されたパターン偏光子である。パターン偏光子を利用することで、前記窓用偏光板に調光機能やシャッター機能を持たせることができる。パターン偏光子は、例えば、液晶性を示す二色性色素を用いることで簡易に形成可能である。使用可能な液晶性二色性色素の例には、WO2010/123090A1号公報等に記載のアゾ色素が含まれる。前記パターン偏光子の一例は、吸収軸が互いに直交する2つの領域が、所定のパターンに配置されたパターン偏光子である。この態様では、パターン偏光子の一方の領域の吸収軸と直交する方向であり、且つ他方の領域の吸収軸と平行な方向に吸収軸を有する一様な偏光子と組み合わせることで、又は前記パターン偏光子を2枚組み合わせることで、調光機能又はシャッター機能を有する本発明の偏光板を構成することができる。
【0021】
本発明の偏光板は、前記偏光子の少なくとも一方の表面上に、偏光子を保護するための保護フィルムを有しているのが好ましい。また偏光子が塗布によって形成される層である態様では、該保護フィルムが、偏光子の支持体として利用されていてもよい。保護フィルムとしては、特に制限はなく、種々の高分子材料(重合体及び樹脂の双方を含む意味で用いる)を主成分として含む高分子フィルムを用いることができる。光透過性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性などに優れる重合体や樹脂を主成分とするフィルムが好ましい。例えば、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマーなどがあげられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、又は前記ポリマーを混合したポリマーも例としてあげられる。また本発明の高分子フィルムは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の紫外線硬化型、熱硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。
【0022】
前記保護フィルムとしては、セルロースアシレート、環状オレフィン、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、及びポリカーボネート樹脂から選択される少なくとも1種を主成分として含むフィルムを用いるのが好ましい。
【0023】
また、市販品を用いてもよく、例えば、日本ゼオン(株)製のゼオネックス、ゼオノア、JSR(株)製のアートン等を用いることができる。また、種々の市販のセルロースアシレートフィルムを用いることもできる。
【0024】
また、前記フィルムとしては、溶液製膜法及び溶融製膜法のいずれの方法で製膜されたフィルムも用いることもできる。フィルムの厚みは、10〜1000μmであることが好ましく、40〜500μmであることがより好ましく、40〜200μmであることが特に好ましい。
【0025】
前記フィルムの光学特性については特に制限はない。斜め方向から観察した際の光漏れの軽減の観点では、光学等方性のフィルムであるのが好ましいが、ただし、この態様に限定されるものではない。具体的には、Reが0〜10nmであり、且つRthの絶対値が20nm以下のフィルムが好ましい。
【0026】
本発明の窓用偏光板は、太陽光による劣化を防止するため、いずれかの層が、紫外線吸収剤を含有しているのが好ましい。紫外線吸収剤は、いずれの層中に添加されていてもよい。一例は、前記保護フィルムが紫外線吸収剤を含む態様である。紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、且つ光透過性の点より波長400nm以上の可視光の吸収が可及的に少ないものを用いることが好ましい。特に、波長370nmでの透過率が、20%以下であることが望ましく、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である。このような紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物、前記のような紫外線吸収性基を含有する高分子紫外線吸収化合物等があげられるが、これらに限定されない。紫外線吸収剤は2種以上用いてもよい。
【0027】
溶液製膜法で紫外線吸収剤含有フィルムを製造する場合は、紫外線吸収剤を主成分ポリマーの溶液であるドープに添加するが、紫外線吸収剤のドープへの添加方法は、アルコールやメチレンクロライド、ジオキソランなどの有機溶媒に溶解してから添加してもよいし、また直接ドープ組成中に添加してもよい。無機粉体のように有機溶媒に溶解しないものは、有機溶媒と主成分ポリマー中にデゾルバやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
なお、セルロースアシレートフィルムについては、特に、紫外線吸収剤を添加して、耐光性を改善するのが好ましい。
【0028】
本発明において紫外線吸収剤の使用量は、前記フィルムの主成分100質量部に対し0.1〜5.0質量部、好ましくは0.5〜2.0質量部、より好ましくは0.8〜2.0質量部である。
【0029】
前記式(1)〜(4)の特性を満足する偏光板を作製するためには、偏光子の偏光度を波長430nmの光を入射した際に99.8%以下にするのが好ましい。前記偏光度を示す偏光子は、 通常の偏光板作成工程において、ヨウ素染色量を低減させるか、ポリビニルアルコールの総合延伸倍率を低減させる等により作製することができる。また、前記式(1)〜(4)の特性を満足する偏光板を作製するためには、光透過性基板や、所望により使用される偏光子の保護フィルムとして、フィルム単板での透過率が90%以上の光学特性を示すものを使用するのが好ましい。
【0030】
本発明の調光用偏光板の一例の断面模式図を図1に示す。なお、図中の層の厚みの相対的関係は、実際の相対的関係を反映しているわけではない。以下、いずれの図についても同様である。
図1に示す偏光板は、ガラス板又はプラスチック基板等からなる光透過性基板10と、その表面上に偏光子12とを有する。偏光子12の双方の表面には、保護フィルム14a、14bが積層されている。図1に示す偏光板を、例えば窓に利用する際は、光透過性基板10を外側にして配置するのが好ましい。なお、調光機能を持たせるためには、保護フィルム14bの面内遅相軸を偏光子12の吸収軸もしくは、吸収軸に直交する軸に対して、35〜55°に調整するのが好ましく、40〜50°に調整するのがさらに好ましい。なお、保護フィルム14aの面内遅相軸は、偏光子12の吸収軸もしくは、吸収軸に直交する軸に対して、−25〜25°であるのが好ましい。
【0031】
図1に示す偏光板は、偏光子12の双方の表面に、保護フィルム14a、14bを貼合した積層体11を、光透過性基板10に粘着剤を用いて貼合して作製することができる。該粘着剤については特に制限はなく、接着剤を用いてもよい。使用可能な粘着剤の例には、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤などが含まれる。
【0032】
本発明の調光用偏光板の他の例の断面模式図を図2および図3にそれぞれ示す。図1中の調光用偏光板と同一の部材については、詳細な説明は省略し、同一の符号を付すものとする。
図2に示す偏光板は、図1に示す偏光板の光透過性基板10の裏面に、パターン光学異方性層16が積層された構成である。また、図3に示す偏光板は、保護フィルム14bに代えて、パターン光学異方性層16を積層した構成である。
【0033】
パターン光学異方性層16の一例は、面内遅相軸方向及び面内レターデーションの少なくとも一方が互いに異なる第1位相差領域及び第2位相差領域を含むとともに、該第1及び第2位相差領域が、面内の任意の方向において幅Lが1mm〜50mmのパターンで面内に配置されたパターン光学異方性層である。図4は、パターン光学異方性層16の一例を示す上面図であって、1は第1位相差領域を、2は第2位相差領域を、3は第1位相差領域と第2位相差領域の境界である境界線を示している。矢印は、第1位相差領域および第2位相差領域の遅相軸の方向を示している。尚、図中の符号は、特に述べない限り、以下の図面についても共通するものとする。
また、図4は、概略図であり、第1位相差領域1と、第2位相差領域と、境界線3の関係を分かりやすく説明するため、寸法比としてはこれが最も適切なものではない。これらの寸法比の好ましい範囲については後述する。
【0034】
図4において、Lは各位相差領域の幅であって、具体的には、第1位相差領域と第2位相差領域の境界である境界線3であって隣接する2つの境界線3・3間の距離を示している。ここで、境界線間3・3の距離は、1つの位相差領域の一方の端の膜の厚み方向の平均面と、隣接する位相差領域の前記位相差領域に近い側の端の膜の厚み方向の平均面の間の最短距離をいう。ここで、平均面とは、位相差領域の端の厚み方向の面が凸凹な面となっている場合に、該凸凹面を平坦な平面と仮定したときの、基準面をいう。
本発明では、Lは1mm〜50mmであるのが好ましい。Lが前記範囲であると、調光機能の観点で好ましい。
【0035】
L1は、境界線の幅を意味する。境界線の幅は、1つの位相差領域の一方の端の厚み方向の平均面と、該位相差領域と隣接する位相差領域の前記位相差領域に近い側の端の厚みに方向の平均面の間の最短距離をいう。本発明では、前記隣接する2つの境界線の距離Lと、該境界線の幅L1が下記式(a)を満たすことが好ましい。
式(a) 100≦L/L1≦5,000
さらには、200≦L/L1≦5,000であることが好ましく、400≦L/L1≦5,000であることがより好ましく、500≦L/L1≦5,000であることがさらに好ましい。このような比率とすることにより、クロストークがより低減する傾向にある。
【0036】
第1位相差領域と第2位相差領域は、互いに、等しい形状であるのが好ましい。また、それぞれの配置は、均等であることが好ましい。本実施形態におけるパターン光学異方性層は、第1位相差領域および第2位相差領域が、それぞれ、該順にストライプ状に交互に配置された構造となっているが、ストライプ状に限るものではない。また、本実施形態では、ストライプは、光学フィルムの長手方向に形成されていてもよいし、長手方向に垂直な方向に形成されていてもよい。
【0037】
本発明では、第1位相差領域および第2位相差領域は、面内遅相軸方向および面内レターデーションの少なくとも一方が互いに異なることを特徴とする。
【0038】
本態様では、少なくとも、第1位相差領域および第2位相差領域の面内遅相軸方向は、互いに異なる態様が好ましい。第1位相差領域の遅相軸と第2位相差領域の遅相軸は、それぞれ、任意の辺(好ましくは、位相差領域によって形成されるストライプ)に対し、±45°であることが好ましい。第1位相差領域と第2位相差領域の面内遅相軸方向は、70〜110°の角度差を有することが好ましく、80〜100°の角度差を有することがより好ましく、90°の角度差を有することがさらに好ましい。
【0039】
第1位相差領域および第2位相差領域の波長550nmの面内レターデーションRe(550)は、それぞれ、110〜160nmであることが好ましく、120〜170nmであることがより好ましく、125〜140nmであることがさらに好ましい。
【0040】
前記パターン光学異方性層の上層及び下層の少なくとも一方には、前記境界線に対応する位置に配置された色素部分を有するのが好ましい。図5は、色素部分を設けた実施態様を示す断面模式図の一例であって、色素部分4が光学異方性層10の境界線3をカバーするように設けられている。色素部分を設けることにより、境界部の光漏れによる調光機能の乱れを抑制することができる。なお、色素部分は、色素を含有することによって光透過性が低下した部分であり、1種又は2種以上の色素を含むことにより、ブラック又はそれに類似する色相であることが好ましい。
色素部分の幅は、輝度とクロストークの視野角の観点で適切に設定され、境界線の距離Lの0.1〜0.7倍であることが好ましく、0.3〜0.5倍であることがより好ましい。
【0041】
前記パターン光学異方性層は、高分子フィルム等からなる支持体の表面に形成し、該支持体とともに、偏光板に組み込まれてもよい。特に、図3の態様では、パターン光学異方性層の支持体を、偏光子の保護フィルムとしても利用できるので好ましい。支持体としては、光透過性の高分子フィルムが好ましく、支持体として使用可能な高分子フィルムは、前記偏光子の保護フィルムとして使用可能なポリマーフィルムの例と同様である。なお、支持体のRthとパターン光学異方性層のRthの合計が|Rth|≦20nmを満たすことが好ましく、そのためには、透明支持体は、−150nm≦Rth(630)≦100nmを満たすことが好ましい。
【0042】
また、本態様の偏光板は、前記パターン光学異方性層に隣接する配向膜を有していてもよい。該配向膜は、前記パターン光学異方性層を形成する際に、液晶分子の配向を制御する機能を有する。該配向膜の一例は、一方向に配向処理された配向膜であり、また一方向にラビング処理されたラビング配向膜である。当該配向膜を利用したパターン光学異方性層の形成方法については、後述する。
【0043】
なお、パターン光学異方性層、又はパターン光学異方性層と支持体との積層体は、粘着剤又は接着剤を利用して、光透過性基板又は偏光子に貼合することができ、使用可能な粘着剤の例は、上記保護フィルムを光透過性基板に貼合するのに使用可能な粘着剤の例と同様である。
【0044】
本態様の一例では、前記第1位相差領域および第2位相差領域の面内遅相軸と、前記偏光膜12の吸収軸とがそれぞれ±45°の角度をなす。図6は、偏光子12の吸収軸と、光学異方性層16の面内遅相軸の関係を示したものであって、偏光子12の吸収軸と、光学異方性層16の面内遅相軸がそれぞれ±45°の角度をなしている。
また、本態様の偏光板を2枚組み合わせて用いる場合、一方の偏光板の偏光子の吸収軸は、上記ストライプと直交し、他方の偏光板の偏光子の吸収軸は上記ストライプと平行となるように設定することが好ましい。この点については、詳細を後述する。
【0045】
以下に、本発明に利用可能なパターン光学異方性層について詳細に説明する。
<パターン光学異方性層>
本発明におけるパターン光学異方性層は、液晶組成物(好ましくは、ディスコティック液晶化合物を含む組成物)を利用して、各位相差領域を形成するのが好ましく、液晶を主成分とする同一の硬化性液晶組成物を利用して、各位相差領域を形成するのが好ましく、パターン露光により各位相差領域を形成するのが好ましい。
【0046】
より具体的には、パターン光学異方性層を形成する第1の態様は、液晶の配向制御に影響を与える複数の作用を利用し、その後、外部刺激(熱処理等)によりいずれかの作用を消失させて、所定の配向制御作用を支配的にする方法である。例えば、配向膜による配向制御能と、液晶組成物中に添加される配向制御剤の配向制御能との複合作用により、液晶を、所定の配向状態とし、それを固定して一の位相差領域を形成した後、外部刺激(熱処理等)により、いずれかの作用(例えば配向制御剤による作用)を消失させて、他の配向制御作用(配向膜による作用)を支配的にし、それによって他の配向状態を実現し、それを固定して他の位相差領域を形成する。例えば、所定のピリジニウム化合物又はイミダゾリウム化合物は、ピリジニウム基又はイミダリウム基が親水的であるため前記親水的なポリビニルアルコール配向膜表面に偏在する。特に、ピリジニウム基が、さらに、水素原子のアクセプターの置換基であるアミノ基が置換されていると、ポリビニルアルコールとの間に分子間水素結合が発生し、より高密度に配向膜表面に偏在すると共に、水素結合の効果により、ピリジニウム誘導体がポリビニルアルコールの主鎖と直交する方向に配向するため、ラビング方向に対して液晶の直交配向を促進する。前記ピリジニウム誘導体は、分子内に複数個の芳香環を有しているため、前述した、液晶、特にディスコティック液晶との間に強い分子間π−π相互作用が起こり、ディスコティック液晶の配向膜界面近傍における直交配向を誘起する。特に、親水的なピリジニウム基に疎水的な芳香環が連結されていると、その疎水性の効果により垂直配向を誘起する効果も有する。しかし、その効果は、ある温度を超えて加熱すると、水素結合が切断され、前記ピリジニウム化合物等の配向膜表面における密度が低下し、その作用を消失する。その結果、ラビング配向膜そのものの規制力により液晶が配向し、液晶は平行配向状態になる。この方法の詳細については、特願2010−141346号明細書に記載があり、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。
【0047】
パターン光学異方性層を形成する第2の態様は、パターン配向膜を利用する態様である。この態様では、互いに異なる配向制御能を有するパターン配向膜を形成し、その上に、液晶組成物を配置し、液晶を配向させる。液晶は、パターン配向膜のそれぞれの配向制御能によって配向規制され、互いに異なる配向状態を達成する。それぞれの配向状態を固定することで、配向膜のパターンに応じた位相差領域のパターンが形成される。パターン配向膜は、印刷法、ラビング配向膜に対するマスクラビング、光配向膜に対するマスク露光等を利用して形成することができる。また、配向膜を一様に形成し、配向制御能に影響を与える添加剤(例えば、上記オニウム塩等)を別途所定のパターンで印刷することによって、パターン配向膜を形成することもできる。大掛かりな設備が不要である点や製造容易な点で、印刷法を利用する方法が好ましい。この方法の詳細については、特願2010−173077号明細書に記載があり、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。
【0048】
また、上記第1及び第2の態様を併用してもよい。一例は、配向膜中に光酸発生剤を添加する例である。この例では、配向膜中に光酸発生剤を添加し、露光量(露光強度)のオン・オフによって、2種類以上の位相差領域を形成することができる。
すなわち、パターン露光により、光酸発生剤が分解して酸性化合物が発生した領域と、光酸発生剤が分解せず、酸性化合物が発生していない領域とを形成する。光未照射部分では光酸発生剤はほぼ未分解のままであり、配向膜材料、液晶、及び所望により添加される配向制御剤の相互作用が配向状態を支配し、液晶を、その遅相軸がラビング方向と直交する方向に配向させる。配向膜へ光照射し、酸性化合物が発生すると、その相互作用はもはや支配的ではなくなり、ラビング配向膜のラビング方向が配向状態を支配し、液晶は、その遅相軸をラビング方向と平行にして平行配向する。前記配向膜に用いられる光酸発生剤としては、水溶性の化合物が好ましく用いられる。この方法の詳細については、特願2010−289360号明細書に記載があり、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。
【0049】
本発明の光学フィルムの製造方法として、特に好ましくは、
1)透明支持体上に、少なくとも一種の光酸発生剤を含む組成物からなる配向膜を形成する工程、
2)フォトマスク下、配向膜を光照射して、光照射領域の光酸発生剤を分解し、光照射領域に酸性化合物を発生させる工程、
3)配向膜上に、重合性基を有する液晶を主成分とする一種の組成物を塗布して塗膜を形成する工程、
4)温度T1℃で配向膜の光照射領域上の液晶の遅相軸を第一の方向に配向させ、配向膜の未照射領域上の液晶の遅相軸を第一の方向とは異なる第二の方向に配向させる工程
5)温度T2(但し、T1>T2)℃で重合反応を進行させて配向状態を固定化し、互いに面内遅相軸方向が異なる第1相差領域及び第2位相差領域を含むパターン光学異方性層を形成する工程、
をこの順で含むことを特徴とする光学フィルムの製造方法である。
【0050】
前記方法では、パターン光学異方性層の形成に、一方向に配向処理された配向膜を利用することが好ましく、ラビング処理又は光配向処理された配向膜を利用することが特に好ましく、ラビング処理されたラビング配向膜を利用することが最も好ましい。なお、配向処理は、1)工程と2)工程との間に、又は2)工程と3)工程との間に、実施することができる。1)工程と2)工程との間に実施するのが好ましい。
【0051】
ラビング配向膜は、ラビング処理によって配向制御能を発現する。通常、一方向にラビング処理された配向膜上で液晶を配向させると、液晶は、ラビング方向に対して、その遅相軸を平行にして、又は直交にして配向する。いずれの配向状態になるかは、配向膜材料、液晶、及び配向制御剤の1以上の種類等によって決定される。後述するように、本発明では、配向膜への紫外線照射によって発生する酸性化合物の効果により、配向膜材料を分解、及び/又は、配向制御剤の配向膜界面偏在性を変化させて、ラビング方向に対して液晶の遅相軸が直交配向した配向状態、及びラビング方向に対して液晶の遅相軸が平行配向した配向状態を、それぞれ実現している。第1及び第2の位相差領域の形状及び配置は、2)工程に用いられるフォトマスクを選択することで、所望の形状及び配置のパターンにすることができる。立体画像表示用の画像表示装置に用いられる態様では、前記第1及び第2の位相差領域が、互いの短辺の長さがほぼ等しい帯状であり、かつ交互に繰り返しパターニングされていることが好ましい。
【0052】
前記本発明における方法では、配向膜の光照射領域上の液晶の遅相軸を第一の方向に配向させ、配向膜の未照射領域上の液晶の遅相軸を第一の方向とは異なる第二の方向に配向させる。光照射により、少なくとも一種の光酸発生剤が分解し、光照射部と光未照射部とでは、分解によって生じる酸性化合物の割合に差が生じ、それによって配向膜の配向制御能にも差を持たせることができる。一例は、以下の通りである。
未照射部分では光酸発生剤はほぼ未分解のままであり、配向膜材料、液晶、及び所望により添加される配向制御剤の相互作用が配向状態を支配し、液晶を、その遅相軸がラビング方向と直交する方向に配向させる。配向膜へ紫外線照射し酸性化合物が発生すると、その相互作用はもはや支配的ではなくなり、ラビング配向膜のラビング方向が配向状態を支配し、液晶は、その遅相軸をラビング方向と平行にして平行配向する。これらの状態を達成する条件は、使用する各材料/量及び照射条件によって変動し、一概に決めることはできない。本発明では、酸性化合物の生成及び拡散が起こるため、温湿度等の環境条件や照射量がパターン精度に寄与する。例えば、ラビング処理や液晶の塗布配向工程は高湿条件で行われることが好ましく、具体的には、湿度は40%以上であることが特に好ましく、60%以上であることがより好ましい。光学異方性層形成に利用される液晶組成物に少量の水を添加しておくことも好ましい態様である。
【0053】
上記例では、3)工程に用いられる前記塗布液が配向膜界面配向制御剤を含有し、2)工程で配向膜の光照射領域に発生した酸性化合物もしくはその構成イオンが、配向膜界面配向制御剤の配向膜界面偏在性を減少させることによって、配向膜の光照射領域と光未照射領域とに配向制御能の差をもたせてもよい。配向膜界面配向制御剤としてオニウム塩を用いると、円盤状液晶を、ラビング軸に対して円盤面を直交にして且つ円盤面を層面に対して垂直にして配向(即ち直交垂直配向)させることができる。配向膜の光未照射領域上では、該配向膜界面配向制御剤が配向膜界面に偏在し、円盤状液晶を直交垂直配向させるが、配向膜の光照射領域上では、該配向膜界面制御剤の配向膜界面偏在性が、光酸発生剤が分解することによって生じた酸性化合物又はそれを構成するイオンによって軽減され、配向膜界面配向制御剤の作用は弱められる。その結果、ラビング処理によって発現された配向制御能が支配的になり、円盤状液晶は、ラビング軸に対して円盤面を平行にして且つ円盤面を層面に対して垂直にして配向、即ち平行垂直配向状態に転移する。
この態様では、配向膜界面配向制御剤の配向膜界面偏在性の減少は、配向膜界面配向制御剤を構成しているイオンと、光照射領域に発生した酸性化合物の構成イオンとのイオン交換により生じてもよい。例えば、配向膜界面配向制御剤としてピリジニウム化合物及びイミダゾリウム化合物等のオニウム塩を用いた例では、オニウム塩と、光照射領域に発生した酸性化合物とのアニオン交換により、オニウム塩の配向膜界面偏在性が減少してもよい。
【0054】
2)工程では、フォトマスク下、紫外線照射して、酸性化合物を発生させる。前述の通り、光酸発生剤の分解とともに酸性化合物の生成及び拡散が起こるため、フォトマスク下での照射には、紫外線を用いるのが好ましく、非偏光紫外線を用いるのがより好ましい。照射波長としては200〜250nmにピークを有することが好ましく、UV−C光源を用いることが好ましく、その露光量は、5〜1000mJ/cm2程度であることが好ましく、5〜100mJ/cm2程度であることがさらに好ましく、5〜50mJ/cm2程度であることが特に好ましい。露光量が少なすぎるとパターンが形成できない。一方、露光量が多すぎると酸性化合物の拡散によりパターン解像度が低下する。パターン解像度を向上させるためには、室温で露光することが好ましい。
なお、光照射の条件は、配向膜組成物の組成等に応じて適宜設定することができ、上記条件に限定されるものではない。
【0055】
5)工程における、配向状態の固定も、光照射(例えば、紫外線照射)により、重合性液晶の重合反応を進行させることで達成するのが好ましい。照射エネルギーは、10mJ/cm2〜10J/cm2であることが好ましく、25〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。照度は10〜1000mW/cm2であることが好ましく、20〜500mW/cm2であることがより好ましく、40〜350mW/cm2であることがさらに好ましい。照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは加熱条件下で光照射を実施してもよい。光源としては、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)あるいはショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)が好ましく用いられる。
なお、配向状態の固定のための重合反応は、迅速に進行するので、5)工程において全面に光照射され、その段階で光酸発生剤が分解しても、光学異方性層の配向状態への影響はない。
【0056】
5)工程における配向状態の固定は、温度T2℃であって、4)工程の液晶の配向温度T1℃との関係で、T1>T2を満足する温度で行う。この条件を満足すると、配向状態の乱れを抑制しつつ、配向状態の固定が可能となる。T1℃及びT2℃それぞれの好ましい温度範囲は、選択する材料等に応じて変動する。一般的には、T1℃は約50〜約150℃であり、T2℃は約20〜約120℃である。またT1とT2との差は、約10〜約100℃であるのが好ましい。
【0057】
配向膜:
上記1)及び2)工程により、パターン光学異方性層を実現できる配向膜を形成する。さらに、1)工程と2)工程との間に、又は2)工程と3)工程との間に、一方向に配向処理することが好ましい。1)工程と2)工程との間に実施するのが好ましい。配向処理は、ラビング処理が好ましい。即ち、ラビング配向膜を利用するのが好ましい。
本発明に利用可能な「ラビング配向膜」とは、ラビングによって、液晶分子の配向規制能を有するように処理された膜を意味する。ラビング配向膜には、液晶分子を配向規制する配向軸があり、当該配向軸に従って、液晶分子は配向する。本発明では、液晶分子は、配向膜への紫外線照射部分でラビング方向に対して液晶の遅相軸が平行になるように配向し、未照射部分で液晶分子の遅相軸がラビング方向に対して直交配向するように、配向膜の材料、酸発生剤、液晶、及び配向制御剤を選択する。
【0058】
ラビング配向膜は、一般的にはポリマーを主成分とする。配向膜用ポリマー材料としては、多数の文献に記載があり、多数の市販品を入手することができる。本発明において利用されるポリマー材料は、ポリビニルアルコール又はポリイミド、及びその誘導体が好ましい。特に変性又は未変性のポリビニルアルコールが好ましい。ポリビニルアルコールは、種々の鹸化度のものが存在する。本発明では、鹸化度85〜99程度のものを用いるのが好ましい。市販品を用いてもよく、例えば、「PVA103」、「PVA203」(クラレ社製)等は、上記鹸化度のPVAである。ラビング配向膜については、WO01/88574A1号公報の43頁24行〜49頁8行、特許第3907735号公報の段落番号[0071]〜[0095]に記載の変性ポリビニルアルコールを参照することができる。ラビング配向膜の厚さは、0.01〜10μmであることが好ましく、0.01〜1μmであることがさらに好ましい。
【0059】
ラビング処理は、一般にはポリマーを主成分とする膜の表面を、紙や布で一定方向に数回擦ることにより実施することができる。ラビング処理の一般的な方法については、例えば、「液晶便覧」(丸善社発行、平成12年10月30日)に記載されている。
ラビング密度を変える方法としては、「液晶便覧」(丸善社発行)に記載されている方法を用いることができる。ラビング密度(L)は、下記式(A)で定量化されている。
式(A) L=Nl(1+2πrn/60v)
式(A)中、Nはラビング回数、lはラビングローラーの接触長、rはローラーの半径、nはローラーの回転数(rpm)、vはステージ移動速度(秒速)である。
【0060】
ラビング密度を高くするためには、ラビング回数を増やす、ラビングローラーの接触長を長く、ローラーの半径を大きく、ローラーの回転数を大きく、ステージ移動速度を遅くすればよく、一方、ラビング密度を低くするためには、この逆にすればよい。
ラビング密度と配向膜のプレチルト角との間には、ラビング密度を高くするとプレチルト角は小さくなり、ラビング密度を低くするとプレチルト角は大きくなる関係がある。
長尺状の偏光膜であって、吸収軸が長手方向の偏光膜と貼り合わせるには、長尺のポリマーフィルムからなる支持体上に配向膜を形成し、長手方向に対して45°の方向に連続的にラビング処理して、ラビング配向膜を形成するのが好ましい。
【0061】
可能であれば(例えば、光酸発生剤の分解のための光照射と、光配向機能発現のための光照射を分離して実行できる場合は)、光配向膜を利用してもよい。
【0062】
光酸発生剤:
本発明に係わる配向膜は、少なくとも一種の光酸発生剤を含有する。光酸発生剤とは、紫外線等の光照射により分解し酸性化合物を発生する化合物である。前記光酸発生剤が、光照射により分解して酸性化合物を発生すると、配向膜の配向制御能に変化が生じる。ここでいう配向制御能の変化は、配向膜単独の配向制御能の変化として特定されるものであっても、配向膜とその上に配置される光学異方性層形成用組成物中に含まれる添加剤等とによって達成される配向制御能の変化として特定されるものであってもよいし、またこれらの組み合わせとして特定されるものであってもよい。
後述する円盤状(ディスコティック)液晶は、オニウム塩を添加することで、直交垂直配向状態になる場合がある。分解により発生した酸と、該オニウム塩とが、アニオン交換すると、該オニウム塩の配向膜界面における偏在性が低下し、直交垂直配向効果を低下させ、平行垂直配向状態を形成させてもよい。また、例えば、配向膜がポリビニルアルコール系配向膜である場合には、そのエステル部分が発生した酸により分解し、その結果、前記オニウム塩の配向膜界面偏在性を変化させてもよい。
【0063】
前記配向膜に用いられる光酸発生剤としては、水溶性の化合物が好ましく用いられる。使用可能な光酸発生剤の例には、Prog. Polym. Sci., 23巻、1485頁(1998年)に記載の化合物が含まれる。
前記光酸発生剤としては、ピリジニウム塩、ヨードニウム塩及びスルホニウム塩が特に好ましく用いられる。ピリジニウム塩、ヨードニウム塩及びスルホニウム塩の好ましい例としては、下記の一般式で表される塩をそれぞれ挙げることができる。
【0064】
【化1】

【0065】
【化2】

【0066】
【化3】

【0067】
式中、Rはそれぞれ水素原子、炭素原子数1〜6の直鎖アルキル基もしくは分岐アルキル基、炭素原子数1〜6の直鎖アルコキシ基もしくは分岐アルコキシ基、炭素原子数6〜12のアリール基、又はハロゲン原子である。Yは、炭素原子数1〜6の直鎖アルキル基もしくは分岐アルキル基、炭素原子数1〜6の直鎖アルコキシ基もしくは分岐アルコキシ基である。X―は、ピリジニウム塩、ヨードニウム塩又はスルホニウム塩の対アニオンを表し、分解により生じる酸性化合物のアニオンになる。好ましくはPF6-又はBF4-である。例えば、X―がBF4-である光酸発生剤からは、分解により酸HBF4が発生し、X―がPF6-である光酸発生剤からは、HPF6が発生する。
【0068】
【化4】

【0069】
【化5】

【0070】
【化6】

【0071】
式中、Rはそれぞれ水素原子、炭素原子数1〜6の直鎖アルキル基もしくは分岐アルキル基、炭素原子数1〜6の直鎖アルコキシ基もしくは分岐アルコキシ基、炭素原子数6〜12のアリール基、又はハロゲン原子である。Yは、炭素原子数1〜6の直鎖アルキル基もしくは分岐アルキル基、炭素原子数1〜6の直鎖アルコキシ基もしくは分岐アルコキシ基である。X―は、ピリジニウム塩、ヨードニウム塩又はスルホニウム塩の対アニオンを表し、分解により生じる酸性化合物のアニオンになる。好ましくはPF6-又はBF4-である。例えば、X―がBF4-である光酸発生剤からは、分解により酸HBF4が発生し、X―がPF6-である光酸発生剤からは、HPF6が発生する。
【0072】
以下に、本発明に利用可能な光酸発生剤の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0073】
【化7】

【0074】
【化8】

【0075】
【化9】

【0076】
前記配向膜の形成に利用される組成物は、塗布液として調製するのが好ましい。塗布の調製に用いられる溶媒は、水を含有しているのが好ましく、より好ましくは水を20質量%以上、さらに好ましくは50〜80質量%含む。含水溶媒により調製した塗布液を使用することで、支持体上に塗布する際、溶媒による支持体の溶出を抑制または制御することができる。
【0077】
前記配向膜組成物中の各成分の含有量は、安定な配向膜を形成できるように適宜設定することができる。例えば、主成分である配向膜用ポリマー材料の含有量は、組成物(溶媒を含む)の合計量に対して2.0〜10.0質量%、好ましくは2.0〜5.0質量%とすることができる。光酸発生剤の添加量は、前述のオニウム塩の対アニオンとイオン交換し得る範囲で適宜設定することができ、例えば、配向膜用ポリマー材料に対して0.1〜10.0質量%、好ましくは0.5〜5.0質量%とすることができる。また、組成物における溶媒量は、例えば、組成物の合計量に対して80〜98質量%、好ましくは90〜97質量%とすることができる。
【0078】
また、前記パターン光学異方性層の形成に利用されるパターン配向膜の他の好ましい例として、水平配向膜と直交配向膜とが、所望のパターン光学異方性層と同様にパターン形成されたパターン配向膜が挙げられる。当該パターン配向膜は、例えば、第一の組成物からなる第一の配向制御領域を透明支持体上に形成する第一の配向制御領域形成工程と、第一の組成物と組成が異なる第二の組成物からなる第二の配向制御領域をパターン状に印刷する第二の配向制御領域形成工程とを、少なくとも含む方法により製造することができる。なお、上記方法において、第一及び第二の配向制御領域の一方が平行配向膜を意味し、他方が直交配向膜を意味する。前記第一の配向制御領を、前記透明支持体の全面上に形成してもよいし、前記第一の配向制御領域を前記透明支持体の一部の領域上に形成してもよい。前者の態様では、第二の配向制御領域は、前記第一の配向制御領域上の一部にパターン状に印刷され、後者の態様では、第二の配向制御領域は、第一の配向制御領域が形成されていない透明支持体表面上にパターン状に印刷される。印刷には、例えば、フレキソ印刷法を利用することができる。本方法により製造されるパターン配向膜を、一方向に配向処理(例えばラビング処理)することによって、一方の配向制御領域においては、液晶の長軸を配向処理方向に対して平行に、他方の配向制御領域においては、液晶の長軸を配向処理方向に対して直交に配向制御可能である。本方法及び本方法によって製造されるパターン配向膜の詳細については、特願2010−173077号明細書(又はPCT/JP2011/67255号明細書)に詳細な記載があり、参照することができる。
【0079】
パターン光学異方性層:
上記3)工程で、配向膜のラビング処理面等の表面に、塗布液として調製された、重合性基を有する液晶を主成分とする一種の組成物を塗布する。塗布方法としては特に制限はく、カーテンコーティング法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、印刷コーティング法、スプレーコーティング法、スロットコーティング法、ロールコーティング法、スライドコーテティング法、ブレードコーティング法、グラビアコーティング法、ワイヤーバー法等の公知の塗布方法が挙げられる。
【0080】
4)工程では、例えば、液晶の遅相軸をラビング方向に対して直交及び平行にしてそれぞれ配向させる。これにより、第1及び第2の面内遅相軸の方向が決定され、互いに直交した面内遅相軸を有する第1及び第2の位相差領域が形成される。さらに、これらの工程における液晶の配向状態によって、光学異方性層の光学特性(Re及びRth)が決定される。前記光学異方性層は、λ/4板、即ち直線偏光を円偏光に変換する機能を有する光学異方性層であるのが好ましい。λ/4板としての機能を有する光学異方性層の形成には種々の方法がある。一例は、重合性基を有する棒状液晶化合物の遅相軸を層面に水平配向させた状態に固定化する方法である、又は、ディスコティック液晶の円盤面を層面に対して垂直配向させた状態に固定化する方法である。より好ましくは、ディスコティック液晶を垂直配向させた状態に固定する方法である。
【0081】
前記光学異方性層の形成に用いられる組成物の一例は、重合性基を有する液晶化合物の少なくとも1種、及び配向制御剤の少なくとも1種を含有する液晶組成物である。その他、重合開始剤及び増感剤を含有していてもよい。
以下、各材料について詳細に説明する。
【0082】
[重合性基を有する液晶化合物]
本発明の光学異方性層の主原料として使用可能な液晶としては、棒状液晶及びディスコティック液晶を挙げることができ、ディスコティック液晶が好ましく、前記のとおり重合性基を有するディスコティック液晶がより好ましい。
棒状液晶としては、例えば、Makromol. Chem., 190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許4683327号、同5622648号、同5770107号、世界特許(WO)95/22586号、同95/24455号、同97/00600号、同98/23580号、同98/52905号、特開平1−272551号、同6−16616号、同7−110469号、同11−80081号、同11−513019号及び特願2001−64627号などの各公報及び明細書に記載の化合物の中から選んで用いることができる。
【0083】
前記低分子棒状液晶化合物としては、下記一般式(X)で表される化合物が好ましい。
一般式(X)
1−L1−Cy1−L2−(Cy2−L3n−Cy3−L4−Q2
式中、Q1及びQ2はそれぞれ独立に重合性基を表し、L1及びL4はそれぞれ独立に二価の連結基を表し、L2及びL3はそれぞれ独立に単結合又は二価の連結基を表し、Cy1、Cy2及びCy3はそれぞれ独立に二価の環状基を表し、nは0、1又は2である。
【0084】
式中、Q1及びQ2はそれぞれ独立に重合性基である。重合性基の重合反応は、付加重合(開環重合を含む)又は縮合重合であることが好ましい。言い換えると、重合性基は、付加重合反応又は縮合重合反応が可能な官能基であることが好ましい。
【0085】
本発明の光学異方性層の主原料として使用可能なディスコティック液晶としては、前記のとおり重合性基を有する化合物が好ましい。
【0086】
[ディスコティック液晶化合物]
ディスコティック液晶化合物には、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physics lett,A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体及びJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルが含まれる。
【0087】
前記ディスコティック液晶化合物には、分子中心の母核に対して、直鎖のアルキル基、アルコキシ基、又は置換ベンゾイルオキシ基が母核の側鎖として放射線状に置換した構造の、液晶性を示す化合物も含まれる。分子又は分子の集合体が、回転対称性を有し、一定の配向を付与できる化合物であることが好ましい。
ディスコティック液晶化合物から光学異方性層を形成した場合、最終的に光学異方性層に含まれる化合物は、もはや液晶性を示す必要はない。例えば、低分子のディスコティック液晶化合物が熱、又は光で反応する基を有しており、熱又は光によって該基が反応して、重合又は架橋し、高分子量化することによって、光学異方性層が形成される場合などは、光学異方性層中に含まれる化合物は、もはや液晶性を失っていてもよい。
【0088】
ディスコティック液晶化合物の好ましい例は、特開平8−50206号公報、特開2006−76992号公報明細書中の段落番号[0052]、特開2007−2220号公報明細書中の段落番号[0040]〜[0063]に記載されている。例えば下記一般式(DI)、(DII)で表される化合物が高い複屈折性を示すので好ましい。さらに下記一般式(DI)、(DII)表される化合物の中でも、ディスコティック液晶性を示す化合物が好ましく、特に、ディスコティックネマチック相を示す化合物が好ましい。下記化合物の詳細(式中の符号の定義、及びその好ましい範囲)については、上記公報に具体的記載がある。
【0089】
【化10】

【0090】
また、前記円盤状液晶化合物の好ましい例には、特開2005−301206号公報に記載の化合物も含まれる。
【0091】
[オニウム塩化合物(配向膜側配向制御剤)]
本発明では、前述のように、重合性基を有する液晶化合物、特に、重合性基を有するディスコティック液晶の垂直配向を実現するために、オニウム塩を添加することが好ましい。オニウム塩は配向膜界面に偏在し、液晶分子の配向膜界面近傍におけるチルト角を増加させる作用をする。
【0092】
オニウム塩としては、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
一般式(1)
Z−(Y−L−)nCy+・X‐
式中、Cyは5又は6員環のオニウム基であり、L、Y、Z、Xは、後述する一般式(II)におけるL23、L24、Y22、Y23、Z21、Xに同義であり、その好ましい範囲も同一であり、nは2以上の整数を表す。
【0093】
5又は6員環のオニウム基(Cy)は、ピラゾリウム環、イミダゾリウム環、トリアゾリウム環、テトラゾリウム環、ピリジニウム環、ピラジニウム環、ピリミジニウム環、トリアジニウム環が好ましく、イミダゾリウム環、ピリジニウム環が特に好ましい。
【0094】
5又は6員環のオニウム基(Cy)は、配向膜材料と親和性のある基を有するのが好ましい。オニウム塩化合物は、酸発生剤が分解していない部分(未露光部分)では配向膜材料との親和性が高く配向膜界面に偏在している。一方、酸発生剤が分解し酸性化合物が発生している部分(露光部分)では、オニウム塩のアニオンがイオン交換し親和性が低下し配向膜界面における偏在性が低下している。水素結合は、液晶を配向させる実際の温度範囲内(室温〜150℃程度)において、結合状態にも、その結合が消失した状態にもなり得るので、水素結合による親和性を利用するのが好ましい。但し、この例に限定されるものではない。
例えば、配向膜材料としてポリビニルアルコールを利用する態様では、ポリビニルアルコールの水酸基と水素結合を形成するために、水素結合性基を有しているのが好ましい。水素結合の理論的な解釈としては、例えば、H.Uneyama and K.Morokuma、Journal of American Chemical Society、第99巻、第1316〜1332頁、1977年に報告がある。具体的な水素結合の様式としては、例えば、J.N.イスラエスアチヴィリ著、近藤保、大島広行訳、分子間力と表面力、マグロウヒル社、1991年の第98頁、図17に記載の様式が挙げられる。具体的な水素結合の例としては、例えば、G.R.Desiraju、Angewante Chemistry International Edition English、第34巻、第2311頁、1995年に記載のものが挙げられる。
【0095】
水素結合性基を有する5又は6員環のオニウム基は、オニウム基の親水性の効果に加え、ポリビニルアルコールと水素結合することによって、配向膜界面の表面偏在性を高めるとともに、ポリビニルアルコール主鎖に対する直交配向性を付与する機能を促進する。好ましい水素結合性基としては、アミノ基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、酸アミド基、ウレイド基、カルバモイル基、カルボキシル基、スルホ基、含窒素複素環基(例えば、イミダゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、1,3,5−トリアジル基、ピリミジル基、ピリダジル基、キノリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基、コハクイミド基、フタルイミド基、マレイミド基、ウラシル基、チオウラシル基、バルビツール酸基、ヒダントイン基、マレイン酸ヒドラジド基、イサチン基、ウラミル基などが挙げられる)を挙げることができる。更に好ましい水素結合性基としては、アミノ基、ピリジル基を挙げることができる。
例えば、イミダゾリウム環の窒素原子ように、5又は6員環のオニウム環に、水素結合性基を有する原子を含有していることも好ましい。
【0096】
nは、2〜5の整数が好ましく、3又は4であるのがより好ましく、3であるのが特に好ましい。複数のL及びYは、互いに同一であっても異なっていてもよい。nが3以上である場合、一般式(1)で表されるオニウム塩は、3つ以上の5又は6員環を有しているため、前記ディスコティック液晶と強い分子間π−π相互作用が働くため、該ディスコティック液晶の垂直配向、特に、ポリビニルアルコール配向膜上では、ポリビニルアルコール主鎖に対する直交垂直配向を実現することができる。
【0097】
前記一般式(1)で表されるオニウム塩は、下記一般式(2a)で表されるピリジニウム化合物又は下記一般式(2b)で表されるイミダゾリウム化合物であることが特に好ましい。
一般式(2a)及び(2b)で表される化合物は、主に、前記一般式(I)〜(IV)で表されるディスコティック液晶の配向膜界面における配向を制御することを目的として添加され、ディスコティック液晶の分子の配向膜界面近傍におけるチルト角を増加させる作用がある。
【0098】
【化11】

【0099】
式中、L23及びL24はそれぞれ二価の連結基を表す。
23は、単結合、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−O−AL−O−、−O−AL−O−CO−、−O−AL−CO−O−、−CO−O−AL−O−、−CO−O−AL−O−CO−、−CO−O−AL−CO−O−、−O−CO−AL−O−、−O−CO−AL−O−CO−又は−O−CO−AL−CO−O−であるのが好ましく、ALは、炭素原子数が1〜10のアルキレン基である。L23は、単結合、−O−、−O−AL−O−、−O−AL−O−CO−、−O−AL−CO−O−、−CO−O−AL−O−、−CO−O−AL−O−CO−、−CO−O−AL−CO−O−、−O−CO−AL−O−、−O−CO−AL−O−CO−または−O−CO−AL−CO−O−が好ましく、単結合または−O−がさらに好ましく、−O−が最も好ましい。
【0100】
24は、単結合、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH=N−、−N=CH−または−N=N−であるのが好ましく、−O−CO−又は−CO−O−がより好ましい。mが2以上のとき、複数のL24が交互に、−O−CO−及び−CO−O−であるのがさらに好ましい。
【0101】
22は水素原子、無置換アミノ基、又は炭素原子数が1〜20の置換アミノ基である。
22が、ジアルキル置換アミノ基である場合、2つのアルキル基が互いに結合して含窒素複素環を形成してもよい。このとき形成される含窒素複素環は、5員環または6員環が好ましい。R23は水素原子、無置換アミノ基、または炭素原子数が2〜12のジアルキル置換アミノ基であるのがさらに好ましく、水素原子、無置換アミノ基、または炭素原子数が2〜8のジアルキル置換アミノ基であるのがよりさらに好ましい。R23が無置換アミノ基及び置換アミノ基である場合、ピリジニウム環の4位が置換されていることが好ましい。
【0102】
Xはアニオンである。
Xは、一価のアニオンであることが好ましい。アニオンの例には、ハライドイオン(フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン)およびスルホン酸イオン(例、メタンスルホネートイオン、p−トルエンスルホネートイオン、ベンゼンスルホネートイオン)が含まれる。
【0103】
22及びY23はそれぞれ、5又は6員環を部分構造として有する2価の連結基である。
前記5又は6員環が置換基を有していてもよい。好ましくは、Y22及びY23のうち少なくとも1つは、置換基を有する5又は6員環を部分構造として有する2価の連結基である。Y22およびY23は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい6員環を部分構造として有する2価の連結基であるのが好ましい。6員環は、脂肪族環、芳香族環(ベンゼン環)および複素環を含む。6員脂肪族環の例は、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環およびシクロヘキサジエン環を含む。6員複素環の例は、ピラン環、ジオキサン環、ジチアン環、チイン環、ピリジン環、ピペリジン環、オキサジン環、モルホリン環、チアジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペラジン環およびトリアジン環を含む。6員環に、他の6員環または5員環が縮合していてもよい。
置換基の例は、ハロゲン原子、シアノ、炭素原子数が1〜12のアルキル基および炭素原子数が1〜12のアルコキシ基を含む。アルキル基およびアルコキシ基は、炭素原子数が2〜12のアシル基または炭素原子数が2〜12のアシルオキシ基で置換されていてもよい。置換基は、炭素原子数が1〜12(より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜3)のアルキル基であるのが好ましい。置換基は2以上であってもよく、例えば、Y22及びY23がフェニレン基である場合は、1〜4の炭素原子数が1〜12(より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜3)のアルキル基で置換されていてもよい。
【0104】
なお、mは1又は2であり、2であるのが好ましい。mが2のとき、複数のY23及びL24は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0105】
21は、ハロゲン置換フェニル、ニトロ置換フェニル、シアノ置換フェニル、炭素原子数が1〜10のアルキル基で置換されたフェニル、炭素原子数が2〜10のアルコキシ基で置換されたフェニル、炭素原子数が1〜12のアルキル基、炭素原子数が2〜20のアルキニル基、炭素原子数が1〜12のアルコキシ基、炭素原子数が2〜13のアルコキシカルボニル基、炭素原子数が7〜26のアリールオキシカルボニル基および炭素原子数が7〜26のアリールカルボニルオキシ基からなる群より選ばれる一価の基である。
mが2の場合、Z21は、シアノ、炭素原子数が1〜10のアルキル基または炭素原子数が1〜10のアルコキシ基であることが好ましく、炭素原子数4〜10のアルコキシ基であるのがさらに好ましい。
mが1の場合、Z21は、炭素原子数が7〜12のアルキル基、炭素原子数が7〜12のアルコキシ基、炭素原子数が7〜12のアシル置換アルキル基、炭素原子数が7〜12のアシル置換アルコキシ基、炭素原子数が7〜12のアシルオキシ置換アルキル基または炭素原子数が7〜12のアシルオキシ置換アルコキシ基であることが好ましい。
【0106】
アシル基は−CO−R、アシルオキシ基は−O−CO−Rで表され、Rは脂肪族基(アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基)または芳香族基(アリール基、置換アリール基)である。Rは、脂肪族基であることが好ましく、アルキル基またはアルケニル基であることがさらに好ましい。
【0107】
pは、1〜10の整数である。pは、1または2であることが特に好ましい。Cp2pは、分岐構造を有していてもよい鎖状アルキレン基を意味する。Cp2pは、直鎖状アルキレン基(−(CH2p−)であることが好ましい。
【0108】
式(2b)中、R30は、水素原子又は炭素原子数が1〜12(より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜3)のアルキル基である。
【0109】
前記式(2a)又は(2b)で表される化合物の中でも、下記式(2a')又は(2b’)で表される化合物が好ましい。
【0110】
【化12】

【0111】
式(2a’)及び(2b’)中、式(2)と同一の符号は同一の意義であり、好ましい範囲も同様である。L25はL24と同義であり、好ましい範囲も同様である。L24及びL25は、−O−CO−又は−CO−O−であるのが好ましく、L24が−O−CO−で、且つL25が−CO−O−であるのが好ましい。
【0112】
23、R24及びR25はそれぞれ、炭素原子数が1〜12(より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜3)のアルキル基である。n23は0〜4、n24は1〜4、及びn25は0〜4を表す。n23及びn25が0で、n24が1〜4(より好ましくは1〜3)であるのが好ましい。
30は、炭素原子数が1〜12(より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜3)のアルキル基であるのが好ましい。
【0113】
一般式(1)で表される化合物の具体例としては、特開2006−113500号公報明細書中[0058]〜[0061]に記載の化合物が挙げられる。
【0114】
以下に、一般式(1)で表される化合物の具体例を示す。但し、下記式中、アニオン(X-)は省略した。
【0115】
【化13】

【0116】
式(2a)及び(2b)の化合物は、一般的な方法で製造することができる。例えば、式(2a)のピリジニウム誘導体は、一般にピリジン環をアルキル化(メンシュトキン反応)して得られる。
オニウム塩は、その添加量が、液晶化合物に対して5質量%を超えることはなく、0.1〜2質量%程度であるのが好ましい。
【0117】
前記一般式(2a)及び(2b)で表されるオニウム塩は、ピリジニウム基又はイミダリウム基が親水的であるため前記親水的なポリビニルアルコール配向膜表面に偏在する。特に、ピリジニウム基に、さらに、水素原子のアクセプターの置換基であるアミノ基(一般式(2a)及び(2a’)において、R22が無置換のアミノ基又は炭素原子数が1〜20の置換アミノ基)が置換されていると、ポリビニルアルコールとの間に分子間水素結合が発生し、より高密度に配向膜表面に偏在すると共に、水素結合の効果により、ピリジニウム誘導体がポリビニルアルコールの主鎖と直交する方向に配向するため、ラビング方向に対して液晶の直交配向を促進する。前記ピリジニウム誘導体は、分子内に複数個の芳香環を有しているため、前述した、液晶、特にディスコティック液晶との間に強い分子間π−π相互作用が起こり、ディスコティック液晶の配向膜界面近傍における直交配向を誘起する。特に、一般式(2a’)で表されるように、親水的なピリジニウム基に疎水的な芳香環が連結されていると、その疎水性の効果により垂直配向を誘起する効果も有する。
【0118】
さらに、前記一般式(2a)及び(2b)で表されるオニウム塩を併用すると、光分解により光酸発生剤から放出された酸性化合物とアニオン交換し、該オニウム塩の水素結合力及び親水性が変化することにより配向膜界面における偏在性が低下し、液晶が、その遅相軸を、ラビング方向に対して平行にして配向する、平行配向を促進するようになる。これは、塩交換により、オニウム塩が配向膜に均一に分散され配向膜表面における密度が低下し、ラビング配向膜そのものの規制力により液晶が配向するためである。
【0119】
[フルオロ脂肪族基含有共重合体(空気界面配向制御剤)]
フルオロ脂肪族基含有共重合体は、液晶の空気界面における配向を制御することを目的として添加され、液晶の分子の空気界面近傍におけるチルト角を増加させる作用がある。さらに、ムラ、ハジキなどの塗布性も改善される。
本発明に使用可能なフルオロ脂肪族基含有共重合体としては、特開2004−333852号、同2004−333861号、同2005−134884号、同2005−179636号、及び同2005−181977号などの各公報及び明細書に記載の化合物の中から選んで用いることができる。特に好ましくは、特開2005−179636号、及び同2005−181977号の各公報及び明細書に記載の、フルオロ脂肪族基と、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SO3H)、ホスホノキシ{−OP(=O)(OH)2}}及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上の親水性基とを側鎖に含むポリマーである。
フルオロ脂肪族基含有共重合体は、その添加量が、液晶化合物に対して2質量%を超えることはなく、0.1〜1質量%程度であるのが好ましい。
【0120】
フルオロ脂肪族基含有共重合体は、フルオロ脂肪族基の疎水性効果により空気界面への偏在性を高めると共に、空気界面側に低表面エネルギーの場を提供し、液晶、特にディスコティック液晶のチルト角を増加させることができる。さらに、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SO3H)、ホスホノキシ{−OP(=O)(OH)2}}及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上の親水性基とを側鎖に含む共重合成分を有すると、これらのアニオンと液晶のπ電子との電荷反発により液晶化合物の垂直配向を実現することができる。
【0121】
[溶媒]
光学異方性層の形成に利用する、前記組成物は塗布液として調製するのが好ましい。塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0122】
[重合開始剤]
前記の重合性基を有する液晶化合物を含有する組成物(例えば塗布液)を、所望の液晶相を示す配向状態とした後、重合反応を進行させて、該配向状態を固定する(上記方法の5)工程)。固定化は、液晶化合物に導入した反応性基の重合反応により実施することが好ましい。紫外線照射による、光重合反応により固定化するのが好ましい。光重合反応としては、ラジカル重合、カチオン重合のいずれでも構わない。ラジカル光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。カチオン光重合開始剤の例には、有機スルフォニウム塩系、ヨードニウム塩系、フォスフォニウム塩系等を例示する事ができ、有機スルフォニウム塩系、が好ましく、トリフェニルスルフォニウム塩が特に好ましい。これら化合物の対イオンとしては、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロフォスフェートなどが好ましく用いられる。
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。
【0123】
[増感剤]
また、感度を高める目的で重合開始剤に加えて、増感剤を用いてもよい。増感剤の例には、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、及びチオキサントン等が含まれる。光重合開始剤は複数種を組み合わせてもよく、使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。液晶化合物の重合のための光照射は紫外線を用いることが好ましい。
【0124】
[その他の添加剤]
前記組成物は、重合性液晶化合物とは別に、非液晶性の重合性モノマーを含有していてもよい。重合性モノマーとしては、ビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物が好ましい。なお、重合性の反応性官能基数が2以上の多官能モノマー、例えば、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンアクリレートを用いると、耐久性が改善されるので好ましい。前記非液晶性の重合性モノマーは、非液晶性成分であるので、その添加量が、液晶化合物に対して40質量%を超えることはなく、0〜20質量%程度であるのが好ましい。
【0125】
この様にして形成する光学異方性層の厚みについては特に制限されないが、0.1〜10μmであるのが好ましく、0.5〜5μmであるのがより好ましい。
【0126】
色素部分:
前記パターン光学異方性層が、互いに隣り合う第1及び第2の位相差領域の間に存在する幅L1の境界線を含む場合は、光漏れ等を軽減することを目的として、前記境界線に対応する位置に配置された色素部分を有しているのが好ましい。該色素部分は、前記パターン光学異方性層の上層及び下層の少なくとも一方に有しているのが好ましい。色素部分は、光漏れの軽減の観点から、黒又は黒に類似する色相を有しているのが好ましく、1種又は2種以上の色素を含むことにより当該色相になっているのが好ましい。使用可能な色素としては、従来、カラーフィルタのブラックマトリックスの形成に利用されている色素等が挙げられる。なお、前記色素部分は、例えば印刷法を利用して、前記パターン光学異方性層上等に形成することができ、印刷法の一例は、フレキソ印刷法である。
【0127】
シャッター用偏光板:
本発明の偏光板を2枚利用することで、シャッター機能を有する偏光板を構成することができる。組み合わせる2枚の偏光板はパターン光学異方性層を有する態様であるのが好ましい。また、組み合わせる際は、パターン光学異方性層を対向させて(所望により離間させて)積層するのが好ましい。また、組み合わせる2つの偏光板のそれぞれに含まれる偏光子の吸収軸は互いに直交しているのが好ましい。透過モードから遮光モードへの切り替えは、例えば、いずれか一方の偏光板を、パターン光学異方性層の位相差領域の幅だけスライドさせる操作により実施することができ、当該スライド機構を備えていてもよい。
【0128】
図7に、図3の態様の偏光板を2枚組み合わせた、シャッター用偏光板の一例の断面模式図を示す。
図7に示す実施形態では、図3に示す態様の2枚の偏光板I及びIIが、パターン光学異方性層16を対向させ、且つ離間されて積層されている。それぞれの偏光板に含まれるパターン光学異方性層16の各位相差領域の面内遅相軸と、偏光子12の吸収軸との関係は、図6に示す様に、互いに±45°になっていて、且つそれぞれの偏光板に含まれる偏光子の吸収軸は互いに直交している。例えば、一方の偏光子12の吸収軸は、パターン光学異方性層16のストライプに対し直交するように設定され、且つ他方の偏光子12の吸収軸は、パターン光学異方性層16のストライプに対し、平行となるように設定されている。
【0129】
図8(A)に示す通り、偏光板I及びII中のパターン光学異方性層16のパターンが一致している状態では、偏光板Iの偏光子12を通過した直線偏光は、遅相軸方向が同一でλ/4の位相差である、2つの第1位相差領域又は2つの第2位相差領域を通過するので、90°回転した直線偏光に変換される。偏光板I及びIIにそれぞれ含まれる偏光子12の吸収軸は互いに直交しているので、当該直線偏光は、偏光板IIの偏光子12を透過する(透過モード)。
【0130】
一方、図8(B)に示す通り、偏光板Iを位相差領域の幅分だけスライドさせて、パターンが不一致の状態では、偏光板Iの偏光子12を通過した直線偏光は、遅相軸方向が互いに直交し且つλ/4の位相差である、第1位相差領域と第2位相差領域とを通過するので、なんら位相差の影響を受けず、その偏光状態を維持する。偏光板I及びIIにそれぞれ含まれる偏光子12の吸収軸は互いに直交しているので、当該直線偏光は、偏光板IIの偏光子12によって吸収される(遮光モード)。
【0131】
本発明の偏光板は、調光性又は遮光性を要求される種々の用途に用いることができる。具体的には、例えば、カメラやVTR、プロジェクター用の撮影レンズやファインダー、フィルター、プリズム、フレネルレンズなどの映像分野、CDプレイヤーやDVDプレイヤー、MDプレイヤーなどの光ディスク用ピックアップレンズなどのレンズ分野、CDプレイヤーやDVDプレイヤー、MDプレイヤーなどの光ディスク用の光記録分野、液晶用導光板、偏光子保護フィルムや位相差フィルムなどの液晶ディスプレイ用フィルム、表面保護フィルムなどの情報機器分野、光ファイバ、光スイッチ、光コネクターなどの光通信分野、自動車ヘッドライトやテールランプレンズ、インナーレンズ、計器カバー、サンルーフなどの車両分野、眼鏡やコンタクトレンズ、内視境用レンズ、滅菌処理の必要な医療用品などの医療機器分野、道路透光板、ペアガラス用レンズ、採光窓やカーポート、照明用レンズや照明カバー、建材用サイジングなどの建築・建材分野、電子レンジ調理容器(食器)等に好適に用いることができる。特に、一般住宅及び集合住宅等の住宅用建物、並びにオフィスビル等の商業用建物等、種々の建物用の窓に利用することができる。また建物のみならず、自動車等の乗り物用の窓に利用することもできる。
【0132】
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のリターデーションおよび厚さ方向のリターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADHまたはWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定することができる。
【0133】
測定されるフィルムが1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
【0134】
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。
尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の数式(21)及び数式(22)よりRthを算出することもできる。
【0135】
【数1】

上記式中、Re(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表す。また、上記式中、nxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dはフィルムの膜厚を表す。
【0136】
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
【0137】
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:
セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。
これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
なお、本明細書において、Re、Rth及び屈折率について特に測定波長が付記されていない場合は、測定波長550nmであるものとする。
【実施例】
【0138】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0139】
1.光透過性基板の準備
光透過性基板として、ガラス板を準備した。
【0140】
2.偏光子の準備
平均重合度2400、ケン化度99.9モル%の厚み65μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の温水中に60秒間浸漬し膨潤させた。次いで、ヨウ素/ヨウ化カリウム(重量比=0.5/8)が下記表に記載の濃度の水溶液にそれぞれ浸漬し、延伸しながら、フィルムをそれぞれ染色した。その後、65℃のホウ酸エステル水溶液中で、トータルの延伸倍率が、下記表に記載の延伸倍率となるようにそれぞれ延伸を行った。延伸後に、40℃のオーブンにて3分間乾燥を行い、下記表に記載の偏光子をそれぞれ作製した。
【0141】
【表1】

【0142】
3.保護フィルムの準備
偏光子の保護フィルムとして、以下のフィルムをそれぞれ準備した。
(1)CTAフィルム
下記の組成のセルロースアシレート溶液(ドープ)を調製した。
ドープの組成:
セルローストリアセテート 100.0質量部
トリフェニルフォスフェード 7.8質量部
ビフェニルジフェニルフォスフェード 3.9質量部
メチレンクロライド 272.0質量部
メタノール 93.0質量部
n ブタノール 7.0質量部
紫外線吸収剤(下記のUV1、UV2及びUV3の混合物) 1.0質量部
(UV1/UV2/UV3=0.2/0.4/0.4(質量比))
【0143】
【化14】

【0144】
上記ドープを用いて、溶液製膜法により、セルロースアシレートフィルムCTAフィルムを作製した。製膜条件は、特許第3974422号公報に記載の実施例1と同様である。いくつかの条件を列挙すると、以下の通りである。
製膜速度:60m/分、
層構成:単層
支持体温度:−マイナス5℃
流延ダイ温度:35℃
また、得られたCTAフィルムの光学特性及び膜厚は以下の通りであった。
光学特性:Re=0nm、Rth=40nm
膜厚:60μm
【0145】
また、上記UV剤を添加しなかった以外は同様にしてセルローストリアセテートフィルムを作製し、CTA2フィルムとして用いた。
【0146】
(2)COPフィルム
環状オレフィンポリマーを主成分として含むフィルムとして、日本ゼオン社製「ZF14」を準備した。このフィルムの厚み、Re及びRthは、下記表に示す。
(3)PCフィルム
ポリカーボネートを主成分として含むフィルムとして、帝人化成社製「パンライト PC2151」(125μ)を準備した。このフィルムの厚み、Re及びRthは、下記表に示す。
【0147】
4.パターン光学異方性フィルムの準備
(1)支持体の準備
上記保護フィルムとして準備した、CTA1フィルム、CTA2フィルム、COPフィルム、PCフィルムのそれぞれを支持体として用いた。
【0148】
(2)パターン配向膜の形成
(2)−1 平行配向膜(第一の配向膜)の形成
上記支持体の表面に、クラレ社製ポリビニルアルコール「PVA103」の4%水/メタノール溶液(PVA−103(4.0g)を、水72g及びメタノール24gに溶解させた、粘度4.35cp、表面張力44.8dyne)を、12番バーで塗布を行い、120℃で2分間乾燥させた。配向膜の膜厚は、0.9μmであった。本配向膜は平行配向膜として作用する。
【0149】
(2)−2 直交配向膜(第二の配向膜)の形成
下記直交配向膜用の化合物2.646gをトリエチルアミン0.658gとテトラフルオロプロパノール12gに溶解させ、パターン印刷用直交配向膜液1を調整した。
【0150】
【化15】

(a=40、b=60、Mn=9298、Mw=24249、Mw/Mn=2.608)
【0151】
フレキソ版として、図9に記載の寸法の凹凸を有する合成ゴム状フレキソ版を準備した。
図10に記載のフレキソ印刷装置50として、フレキシプルーフ100(RK Print Coat Instruments Ltd. UK)を使用した。アニロックスローラ53はセル400線/cm(容積3cm3/m2)を使用した。図9に示すゴム状フレキソ版61をフレキシプルーフ100の圧胴51に感圧テープ(図示せず)をつけて貼り合わせた。印圧ローラ52に、上記のいずれかの支持体用フィルム(図10中の符号62)を貼り付けた後、前記パターン印刷用直交配向膜液(図10中の符号63)をドクターブレード54に入れ、印刷速度30m/min(アニロックスローラ圧が40、印圧ローラ圧が42、いずれも単位なし)で直交配向膜を平行配向膜の上にパターン印刷した。
【0152】
(3)色素部分(ブラックストライプ)の形成
前記直交配向膜の形成と同様の方法にて、黒色染料組成物(大日本精化社製、ハイドリックFCG)をフレキソ印刷した。このとき、形成したブラックストライプの幅は300μmであり、該ブラックストライプは、前記直交配向膜に対して平行方向、且、直交配向膜と平行配向膜の境界上に印刷した。
【0153】
(4)ブラックストライプ付パターン配向膜のラビング処理
ストライプに対して45°の方向に1往復、1000rpmでラビング処理を行い、ブラックストライプとラビング配向膜付き支持体を作製した。
【0154】
(5)パターン光学異方性層の形成
下記組成のディスコティック液晶組成物1の0.35mLを、前記ラビング処理したブラックストライプ付パターン配向膜上に、スピンコート塗布し(2500rpm、10秒間)、90℃で加熱しながらUV照射(10秒間)して硬化させた後に、顕微鏡で配列を確認した。
・ディスコティック液晶組成物1
下記重合性液晶3/下記重合開始剤2/下記増感剤1/下記ピリジニウム化合物1/下記空気界面配向剤2/下記空気界面配向剤3(=100:3:1:2:0.3:0.5)の固形分20%MEK溶液
【0155】
【化16】

【0156】
第1及び第2位相差領域の幅は3mmであり、境界部はブラックストライプで遮蔽されているため観察できず、また、ブラックストライプの幅は300μmであった。また、第1及び第2位相差領域の面内遅相軸はストライプパターンの長手方向に対してそれぞれ±45°であり、ディスコティック液晶は各々の領域において垂直配向しており、Reはいずれも137nmであったことを確認した。
【0157】
5.偏光板の作製と評価
(1)偏光板の作製
上記保護フィルムから選ばれる同一のフィルムを、上記偏光子1〜8それぞれの双方の表面に、PVA系接着剤を用いて貼合して積層体1〜8をそれぞれ作製した。この積層体のそれぞれを、総研化学社製 SK2057粘着剤を用いて、上記ガラス板の表面に貼合し、図1に示す構成と同様の偏光板1〜8をそれぞれ作製した。
【0158】
(2)透過率の測定
上記で作製した偏光板それぞれの分光透過率について、自動偏光フィルム測定装置「VAP-7070」(日本分光株式会社)を用いて、測定波長380〜780nmで測定した。以下の表に、波長430nmの単板透過率T1(430)%、波長590nmの単板透過率T1(590)、及びこれらの比をそれぞれ示す。
さらに、上記で作製した偏光板それぞれの波長430nmの直交位の透過率T2(430)%を測定した。以下の表にそれぞれ示す。
【0159】
(3)実施例1〜8の評価方法
色味の目視評価:
各偏光板を、ガラス基板に貼合した状態で目視にて外観を観察し、以下の基準で評価した。
◎:ガラス越しに目視観察しても、黄色味付きが全くなく、ガラスない状態で目視観察しているのと同等であった。
○:ガラス越しに目視観察しても、ほとんど黄色味付きがない。
△:ガラス越しに目視観察すると、わずかに黄色味付いている。
×:ガラス越しに目視観察すると、黄色味付いている。
【0160】
光漏れ評価:
各偏光板を2枚準備し、第一の偏光子と第二の偏光子が重なりあった状態でかつ、吸収軸が直交する状態に配置した状態で、第一の偏光子の下側から、点光源にて光を入射した際の光漏れを評価した。結果を下記表に示す。
【0161】
耐光性評価:
各偏光板について、 キセノンランプ500時間を照射したあとに単板透過率をそれぞれ測定し、以下の基準で評価した。
○:透過率変化が10%未満であった。
△:透過率変化が10%以上30%未満であった。
×:透過率変化が30%以上であった。
【0162】
【表2】

【0163】
6.偏光板の作製と評価
(1)パターン光学異方性層付き偏光板の作製
上記保護フィルムから選択されるフィルムと、それと同一のフィルムを支持体として作製したパターン光学異方性フィルムとを、上記偏光子11〜14それぞれの双方の表面に、PVA系接着剤を用いて貼合して積層体11〜14をそれぞれ作製した。この積層体のそれぞれを、総研化学社製 SK2057粘着剤を用いて、上記ガラス板の表面に貼合し、図3に示す構成と同様の偏光板11〜14をそれぞれ作製した。なお、パターン光学異方性フィルムを偏光子に貼合する際は、偏光子の表面と支持体の裏面とを貼合した。この様にして、同一の構成の偏光板をそれぞれ2枚製造した。
【0164】
(2)透過率の測定
上記と同様にして、各偏光板の透過率を測定した。結果を下記表に示す。
【0165】
(3)シャッター用偏光板の作製
同一の偏光板を、パターン光学異方性層を対向させて、層面に平行な方向にスライド可能に積層し、シャッター用偏光板をそれぞれ作製した。
【0166】
(4)評価
上記と同様にして、各シャッター用偏光板について、透過モードにおける色味の目視評価、遮光モードにおける光漏れ評価、及び耐光性評価をそれぞれ行った。結果を下記表に示す。
【0167】
(3)実施例11〜14までの評価方法
色味の目視評価:
各パターン偏光板の2枚を対向させ、パターン層の遅相軸が互いに平行になるように配置し、即ち偏光板が透過している状態に配置し、目視にて色味を観察し、以下の基準で評価した。
◎:ガラス越しに目視観察しても、黄色味付きが全くなく、ガラスない状態で目視観察しているのと同等であった。
○:ガラス越しに目視観察しても、ほとんど黄色味付きがない。
△:ガラス越しに目視観察すると、わずかに黄色味付いている。
×:ガラス越しに目視観察すると、黄色味付いている。
【0168】
光漏れ評価:
各パターン偏光板の2枚を対向させ、パターン層の遅相軸が互いに直交になるように配置し、即ち偏光板がほぼ透過していない状態に配置し、点光源にて光を入射した際の光漏れを評価した。結果を下記表に示す。
【0169】
耐光性評価:
各パターン偏光板の2枚を対向させ、パターン層の遅相軸が互いに平行になるように配置し、キセノンランプ500時間を照射したあとに単板透過率をそれぞれ測定し、以下の基準で評価した。
○:透過率変化が10%未満であった。
△:透過率変化が10%以上30%未満であった。
×:透過率変化が30%以上であった。
【0170】
【表3】

【符号の説明】
【0171】
10 光透過性基板
12 偏光子
14a、14b 保護フィルム
16 パターン光学異方性層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種類のフィルム、偏光子、及び光透過性基板を含む積層体からなり、波長λnmにおける単板透過率T1(λ)%及び直交透過率T2(λ)%が、下記式(1)〜(4)を満足することを特徴とする調光用偏光板。
(1) 55%≧T1(430)≧38%
(2) 60%≧T1(590)≧42.5%
(3) 1.0≧T1(430)/T1(590)≧0.9
(4) T2(430)>0.02%
【請求項2】
下記式(1’)及び(2’)を満足する請求項1に記載の調光用偏光板。
(1’) 55%≧T1(430)≧38.5%
(2’) 60%≧T1(590)≧43%
【請求項3】
下記式(1”)及び(2”)を満足する請求項1に記載の調光用偏光板。
(1”) 55%≧T1(430)≧39%
(2”) 60%≧T1(590)≧45%
【請求項4】
前記積層体に含まれる少なくとも一層に、すくなくとも1種の紫外線吸収剤を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の調光用偏光板。
【請求項5】
前記積層体が、面内遅相軸方向及び面内レターデーションの少なくとも一方が互いに異なる第1位相差領域及び第2位相差領域を含むとともに、該第1及び第2位相差領域が、面内の任意の方向において幅Lが1mm〜50mmのパターンで面内に配置されたパターン光学異方性層、をさらに有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の調光用偏光板。
【請求項6】
前記パターン光学異方性層が、互いに隣り合う第1及び第2の位相差領域の間に存在する幅L1の境界線を含み、前記幅Lと境界線幅L1とが、下記式(a)を満足するパターン光学異方性層である請求項5に記載の調光用偏光板。
式(a) 100≦L/L1≦5,000
【請求項7】
前記境界線に対応する位置に配置された色素部分を、前記パターン光学異方性層の上層及び下層の少なくとも一方に有する請求項5又は6に記載の調光用偏光板。
【請求項8】
前記第1位相差領域及び第2位相差領域が、幅Lのストライプ形状である請求項5〜7のいずれか1項に記載の調光用偏光板。
【請求項9】
前記第1及び第2位相差領域の面内遅相軸と、前記偏光子の透過軸とがそれぞれ±45°の角度をなす請求項5〜8のいずれか1項に記載の調光用偏光板。
【請求項10】
前記積層体の前記偏光子を除く全ての部材の波長550nmの面内レターデーションRe(550)の合計値が、110〜160nmである請求項5〜9のいずれか1項に記載の調光用偏光板。
【請求項11】
前記パターン光学異方性層に隣接する、一方向に配向処理された配向膜をさらに有する請求項5〜10のいずれか1項に記載の調光用偏光板。
【請求項12】
前記配向膜が、一方向にラビング処理されたラビング配向膜である請求項11に記載の調光用偏光板。
【請求項13】
前記パターン光学異方性層が、重合性基を有するディスコティック液晶を主成分とする組成物から形成された層である請求項5〜12のいずれか1項に記載の調光用偏光板。
【請求項14】
前記ディスコティック液晶が、垂直配向状態に固定されている請求項13に記載の調光用偏光板。
【請求項15】
請求項5〜14のいずれか1項に記載の調光用偏光板を少なくとも2枚有することを特徴とするシャッター用偏光板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−92707(P2013−92707A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235685(P2011−235685)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】