説明

調味漬け食品の歩留り向上方法

【課題】調味漬け食品の歩留りを向上させること。
【解決手段】
水に濃度1.5%で溶解したときのゼリー強度が30〜550g/cmの寒天を0.035〜0.35%の濃度で添加した調味液に、漬け込み対象となる食品(イクラを除く。)を所定時間浸漬すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調味漬け食品の歩留り向上方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
調味漬け食品の代表的なものとしては、醤油漬けイクラがある。これは、原卵に、醤油、酒、みりん、グルタミン酸ナトリウム等のアミノ酸の配合された調味液に漬けられたものである。
【0003】
この醤油漬けイクラの歩留りを向上する方法として、本出願人はすでにその技術を特願2008−311600として提案している(平成20年11月10日出願)。
【先行技術文献】
【0004】
【特許文献1】特願2008−311600
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1は、イクラだけに関する歩留り向上方法の技術であり、その他の調味漬け食品には適用されない限定技術であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、すでに提案した醤油漬けイクラの歩留まり向上方法(特願2008−311600)がイクラ以外の調味漬け食品にも利用できないかを検討したところ、それらにも利用可能であることを見出し、完成されたものである。
【0008】
すなわち本発明は、水に濃度1.5%で溶解したときのゼリー強度が30〜550g/cmの寒天を0.035〜0.35%の濃度で添加した調味液に、漬け込み対象となる食品(イクラを除く。)を所定時間浸漬することを特徴とする調味漬け食品の歩留り向上方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明方法によると、特定の性状での寒天が調味漬け食品(イクラを除く。)をコーティングすることでそれらの歩留まりを向上させることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の対象となる調味漬け食品の食材としては、イカそうめん、飛卵及び中華クラゲが好ましい。
また、使用する寒天の基本物性としては、水に1.5%濃度で溶解したときのゼリー強度(日寒水式)が30〜550g/cmのものが好ましい。
【0011】
調味液は、イカそうめんにおいては、みりん、アミノ酸及び水を所定の割合で調合したものが用いられ、イカ100重量部に対して100重量部とする。そして、この配合量での調味液中の寒天は、その質量が0.07〜0.35%の範囲で使用されることが好ましい。
飛卵においては、醤油、みりん、アミノ酸、食塩及び水を所定の割合で調合したものが用いられ、飛卵100重量部に対して調味液200重量部とする。そして、この配合での調味液中の寒天は、その質量が0.035〜0.35%の範囲で使用されることが好ましい。
さらに中華クラゲにおいては、甘味料、核酸系調味料、アミノ酸、酵母エキス、白ゴマ、唐辛子、胡麻油及び水を所定の割合で調合したものが用いられ、クラゲ100重量部に対して調味液16重量部とする。そして、この配合量での調味液中の寒天は、その質量が0.13〜0.26%の範囲で使用されることが好ましい。
【実施例】
【0012】
以下、実施例によって本発明方法を説明するが、本発明の技術的範囲はこれによって限定されるものではない。
【0013】
「実施例1」
原料スルメいかをイカそうめん状に細断し、食塩を用いてイカ表面に付着しているヌメリを取り除いた。出来上がったイカそうめんを表1の調味料にイカ100重量部に対して調味液100重量部となるように一晩浸漬した。調味液へは前述の寒天を0.07%、0.175%、0.35%それぞれ溶解している。その際、80℃で15分加熱溶解して8℃まで冷却したものを寒天添加調味液としている。一晩浸漬した調味漬けイカそうめんを、ザルを用いて1時間の水切りを行い、イカの重量を測定した。調味漬け前重量と一晩調味漬け水切り後重量から各々歩留りを算出した(表2)。
【0014】
【表1】

【0015】
【表2】


【0016】
「実施例2」
原料塩蔵飛卵(バラ卵)を解凍し、流水で3時間脱塩を行った後、3分間遠心脱水を行った。脱水した飛卵を表3の調味液に飛卵100重量部に対して調味液200重量部となるように一晩浸漬した。調味液へは前述の寒天を0.035%、0.07%、0.21%、0.35%でそれぞれ溶解している。その際、80℃で15分加熱溶解して8℃まで冷却したものを寒天添加調味液としている。一晩浸漬した調味漬け飛卵を、ザルを用いて1時間の水切りを行い、飛卵の重量を測定した。調味漬け前重量と一晩調味漬け水切り後重量から各々歩留りを算出した(表4)。
【0017】
【表3】

【0018】
【表4】

【0019】
「実施例3」
原料クラゲを流水で一晩脱塩を行った後、ザルを用いて1時間水切りを行い下漬け調味液(表5)へ一晩浸漬した。下漬け後のクラゲを、ザルを用いて1時間水切りし、表6の調味液にクラゲ100重量部に対して調味液16重量部となるように一晩浸漬した。調味液へは前述の寒天0.13%、0.26%でそれぞれ溶解している。その際、80℃で15分加熱溶解して8℃まで冷却したものを寒天添加調味液としている。一晩浸漬した調味漬けクラゲをザルを用いて1時間の水切りを行い、クラゲの重量を測定した。調味漬け前重量と一晩調味漬け水切り後重量から各々歩留りを算出した(表7)。
【0020】
【表5】

【0021】
【表6】

【0022】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0023】
調味液漬けに適した食品であれば、上記以外の食品、例えばシシャモ卵、数の子卵、チョウザメ卵(キャビア)等にも利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水に濃度1.5%で溶解したときのゼリー強度が30〜550g/cmの寒天を0.035〜0.35%の濃度で添加した調味液に、漬け込み対象となる食品(イクラを除く。)を所定時間浸漬することを特徴とする調味漬け食品の歩留り向上方法。