説明

調律器用クリップ

【課題】薄いシート状のものに、安定して取り付けることができる調律用クリップを提供する。
【解決手段】調律器用クリップは、回動軸5に回動自在に支持された2個の挾持部3a,4aと、挾持部3a,4aが互いに近づく方向に挾持部3a,4aを付勢する付勢部8と、回動軸5に回動自在に支持され、挾持部3a,4aと連動し、互いに近づく方向に操作されると挾持部3a,4aを互いに離れさせる2個の操作部3b,4bと、挾持部3a,4aの一方の外側に設けられた、調律器を取り付けるための取付部7と、挾持部3a,4aの内側から突出し、弾性体で形成され、調律器用クリップが閉じた状態で互いに接触する2個の凸部3g,4gと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、各種楽器の調律を行う調律器の送信機を楽器に取り付けるための調律器用クリップに関し、特に、調律器の送信機をクリップの挟持部の一方に取り付ける為の送信機取付部が設けられた調律器用クリップに関する。
【背景技術】
【0002】
調律器を取付可能な調律器用クリップが知られている(例えば、特許文献1参照。)。この調律器用クリップの締め付け部の内側には弾性変形可能な中空のラバーが設けられている。したがって、この調律器用クリップは、様々な形状の楽器に取り付けることができる。
【0003】
調律しようとする者は、調律器用クリップを用いて調律器を楽器に取り付けて、調律を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−284035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された調律器用クリップは厚みのあるものに取り付けることはできるが、薄いシート状のものに取り付けた場合、取付後の状態が安定しなくなるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、調律器用クリップは、回動軸に回動自在に支持された2個の挾持部と、挾持部が互いに近づく方向に挾持部を付勢する付勢部と、回動軸に回動自在に支持され、挾持部と連動し、互いに近づく方向に操作されると挾持部を互いに離れさせる2個の操作部と、挾持部の一方の外側に設けられた、調律器を取り付けるための取付部と、挾持部の内側から突出し、弾性体で形成され、調律器用クリップが閉じた状態で互いに接触する2個の凸部と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
挾持部の先端と凸部の2箇所で薄いシート状のものを挟むことができるため、調律器用クリップを薄いシート状のものに安定して取り付けることができる。この調律器用クリップを用いて調律器を取り付けることができる場所が増えることにより、調律器の使い易さが増す。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】調律用クリップの例を示す図。(A)は正面図。(B)は左側面図。(C)は右側面図。(D)は斜視図。(E)は背面図。
【図2】対象物を調律器用クリップで挟んだ状態を示す図。(A)は対象物の径が最も小さい場合、及び、対象物の周面の曲率半径が第一曲面の曲率半径と同じ場合の図。(B)は対象物の周面の曲率半径が第二曲面の曲率半径と同じ場合の図。(C)は対象物の径が最も大きい場合の図。
【図3】調律器用クリップの使用例を示す図。
【図4】送信機の例を示す図。(A)は正面図。(B)は左側面図。(C)は右側面図。(D)は平面図。(E)は底面図。(F)は背面図。
【図5】送信機の例の斜視図。(A)は表から見た斜視図。(B)は裏から見た斜視図。
【図6】調律器の例の機能ブロック図。
【図7】送信機の例の機能ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0010】
調律用クリップは、図1に例示するように、互いに回動自在に接続された一対のアーム部3,4により構成される。
【0011】
各アーム部3,4の端部の一方には対象物6を挟む部分である挾持部3a,4aが形成されており、他方の端部には調律用クリップを開閉するために押圧操作される操作部3b,4bが形成されている。また、挾持部3a,4aと操作部3b,4bとの間の基部3c,4cには、回動軸5を保持する保持部3d,4dが突出して設けられている。
【0012】
図1(A)に例示するように、アーム部3の断面はS字形状である。挾持部3aは、湾曲しており、調律器用クリップが閉じた状態で、端部に近づくにつれて挾持部4aから一度遠ざかるが、端部に更に近づくと挾持部4aに近づき、先端部においては挾持部4aの先端と接触している。操作部3bは、調律器用クリップが閉じた状態で、端部に近づくにつれて操作部4bから離れる方向に湾曲している。すなわち、操作部3b,4bは、回動軸5から遠ざかるにつれて互いに離れている。これにより、操作部3b,4bの可動範囲が増えるため、調律器用クリップをより大きく開くことができ、図2(C)に例示するように、径が大きい対象物6を挟み込むことができる。
【0013】
一方、図1(A)に例示するように、アーム部4の断面はJ字形状である。アーム部4の断面が直線形状となっている部分に操作部4b、基部4c及び挾持部4aの一部が形成されている。調律器用クリップが閉じた状態で、端部に近づくにつれて挾持部4aは、挾持部3aに近づく方向に湾曲している。
【0014】
図1(C)に例示するように、回動軸5には、挾持部3a,4aが互いに近づく方向にアーム部3,4を付勢する付勢部8が取り付けられている。アーム部3,4を付勢することにより、挾持部3a,4aが付勢される。この例では、付勢部8はねじりコイルばねである。付勢部8による付勢力に抗して操作部3b,4bを互いに近づく方向に操作すると、挾持部3a,4aが互いに離れる方向に連動して動く。
【0015】
挾持部3a,4aの内側及び先端は、弾性体で形成されている。挾持部3a,4aで対象物6を挟み込むときに、この弾性体が対象物6の形状に応じて弾性変形するため、調律用クリップはより安定して対象物6を挟み込むことができる。
【0016】
挾持部3a,4aの内側には、弾性体で形成され、調律器用クリップが閉じた状態で互いに接触する凸部3g,4gが形成されている。図1に例だと、挾持部3a,4aの基部3c,4cに近い位置に凸部3g,4gが形成されている。
【0017】
このように、調律器用クリップが閉じた状態で互いに接触する凸部3g,4gを形成することで、挾持部3a,4aの先端と凸部3g,4gの2箇所で薄いシート状のものを挟むことができるため、調律器用クリップを薄いシート状のものに取り付けることができる。例えば、楽器用ストラップの帯や、図3に例示するように金管楽器の開口部に調律用クリップを取り付けることができる。この調律器用クリップを用いて調律器を取り付けることができる場所が増えることにより、調律器の使い易さが増す。
【0018】
また、凸部3g,4gの回動軸5に近い側の面と、アーム部3,4の保持部3d,4dの挾持部3a,4aが設けられている側の面、すなわち対象物6が挟まれる側の面とで、図2(A)に例示するように、比較的径が小さい対象物6を挟み込むことができ、調律器用クリップを用いて調律器を取り付けることができる場所がさらに増える。この場合、アーム部3,4の保持部3d,4dの挾持部3a,4aが設けられている側の面に弾性体を設けてもよい。図1の例だと、保持部3dの挾持部3aが設けられている側の面に弾性体3hが設けられている。このように、弾性体3h,4hを設けることにより、凸部3g,4gと弾性体3h,4hとで、より安定して対象物6を挟み込むことができる。
【0019】
挾持部3a,4aの内側は、曲率半径が異なる2以上の曲面が形成されている。図1の例だと、挾持部3a,4aの中央部の内側に第一曲面3e,4eが形成されており、中央部よりも端部側の内側には、第一曲面3e,4eよりも曲率半径の大きい第二曲面3f,4fが形成されている。このように、曲率半径が異なる2以上の曲面を形成することにより、図2(A)及び図2(B)に例示するように、異なる大きさの円柱を安定して挟み込むことが可能となる。
【0020】
挾持部3aの外側(挾持部4aと対向しない側)には、調律器を取り付けるための取付部7が形成されている。調律器は、図1に示すように、送信機1と受信機2とを例えば含む。取付部7には、調律器の送信機1が取り付けられる。
【0021】
図1に例示するように、取付部7の中央に係合部7aが設けられている。係合部7aの一端は取付部7の周縁に接続され、そこから取付部7の中央に延伸している。係合部7aは、取付部7の周縁に対して揺動可能である。例えば、取付部7の中央にコの字形状の切り欠きを設けることにより、係合部7aが形成される。係合部7aの先端には、抜け止め用の突起7cが形成されている。係合部7aを挟むように、2個の折曲部7bが、係合部7aの延伸方向に沿って設けられる。各折曲部7bは取付部7の板面から垂直方向に延伸され、その先端は互いに離れる方向に折り曲げられており、その断面はL字状となっている。
【0022】
調律器用クリップに取り付けられる調律器は、図6に例示するように、送信機1及び受信機2で構成されるいわゆるワイヤレス型の調律器である。図4及び図5に例示する調律器の送信機1が、取付部7に取り付けられる。
【0023】
図4及び図5に例示するように、送信機1は長円柱形状であり、その長手方向の端部に、取付部7に対応する受部1aが設けられている。受部1aは、取付部7の折曲部7bの形状に対応するL字形状の溝であるガイド部1b、及び、取付部7の係合部7aの突起7cが落ちる凹部1cを含む。送信機1の正面には、電源スイッチ1dが設けられている。送信機1の長手方向に対する垂直方向の端部には、凹凸部1eが設けられている。凹凸部1eは滑り止めの効果を有し、送信機1の取付部7に対する取り付け、取り外しのためのスライドを容易にする。
【0024】
送信機1の取付部7への取り付けは、取付部7の折曲部7bを送信機1のガイド部1bに嵌め込み、送信機1を取付部7にスライドさせることにより行われる。スライドをさせると、取付部7の係合部7aの先端の突起7cが送信機1の受部1aの凹部1cに落ち、これにより抜け止めがされる。
【0025】
送信機1には、図7に示すように、入力部11、基本周期情報生成部12及び送信部14を例えば含む。入力部11は、入力された音を電気信号に変換する。変換された電気信号である音信号は、基本周期情報生成部12に送られる。入力部11は、例えばピエゾ等のピックアップ、又は、マイクロフォンである。基本周期情報生成部12は、入力された音信号を用いて、入力された音の基本周期に関する情報である基本周期情報を生成する。生成された基本周期情報は、送信部14により、調律器の受信機2に無線送信される。受信機2は、受信した基本周波数情報に基づいて入力された音の基本周波数を表示する。
【0026】
このように、送信機1が生成した基本周期情報を受信機2に無線送信することにより、ケーブルが不要となり、調律器用クリップの配置の自由度が増す。音信号を送らずに、基本周期情報を無線送信することにより、無線送信するデータの量を減らすことができる。また、送信機1から基本周期情報を送ることで、送信機1の消費電力の増加を抑えると共に機能や部品の増加を押さえることが可能となる。もちろん、送信機1が基本周期情報ではなく入力された音信号自体を無線送信して、受信機2が受信した音信号に基づいて基本周期を表示してもよい。
【0027】
この発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 送信機
2 受信機
3a,4a 挾持部
3b,4b 操作部
3e,4e 第一曲面
3f,4f 第二曲面
3g,4g 凸部
5 回動軸
7 取付部
8 付勢部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動軸に回動自在に支持された2個の挾持部と、
上記挾持部が互いに近づく方向に上記挾持部を付勢する付勢部と、
上記回動軸に回動自在に支持され、上記挾持部と連動し、互いに近づく方向に操作されると上記挾持部を互いに離れさせる2個の操作部と、
上記挾持部の一方の外側に設けられた、調律器を取り付けるための取付部と、
上記挾持部の内側から突出し、弾性体で形成され、調律器用クリップが閉じた状態で互いに接触する2個の凸部と、
を含む調律器用クリップ。
【請求項2】
請求項1に記載の調律器用クリップにおいて、
各上記挾持部の内側には、曲率半径が異なる2以上の曲面が形成されている、
ことを特徴とする調律器用クリップ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の調律器用クリップにおいて、
上記操作部は、調律器用クリップが閉じた状態で、上記回動軸から遠ざかるにつれて互いに離れている、
ことを特徴とする調律器用クリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−197528(P2011−197528A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66010(P2010−66010)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000130329)株式会社コルグ (111)
【Fターム(参考)】