説明

調整ユニット

【課題】ユニットの小型化及び大きな張力に対応できる調整ユニットを提供できるようにすることを目的とする。
【解決手段】調整ユニット10は、ケース本体11に間隔をおいて対をなすプーリ16,16を設け、これらプーリ16,16にほぼ沿ってワイヤWを配置し、ケース本体11に回転体21を回動自在に設け、この回転体21にプーリ16,16間で該案内部16,16に係合したワイヤWを折り曲げるプーリ24を設け、ワイヤWが所定の力で引っ張られると、プーリ24がワイヤWを押圧する方向に回転体21を回転付勢する圧縮コイルばね26を備える。ワイヤWに張力が加わると、該ワイヤWへの張力に応じて圧縮コイルばね26の付勢力が生じることにより、ワイヤWの剛性調整を行えることができ、しかも、回転体21を用いてワイヤWに剛性を付与することができるため、摩擦を減らして滑らかな挙動を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調整ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人型ロボットやペットロボット等の各種ロボットにおいて、駆動モータを装置本体に配置して、回動自在に連結された関節ユニットに当該駆動モータと連動するワイヤを引き回し、駆動モータによりワイヤを引っ張ることにより関節ユニットを駆動させる腱駆動機構部を備えたロボットが考えられている(例えば、特許文献1参照)。このような腱駆動機構部は、関節ユニットから駆動モータを切り離して、駆動モータを所望の位置に設置させることができるため、関節ユニット自体の小型化や、軽量化を図ることができるという利点を有している。
【0003】
また、このような腱駆動機構部では、ワイヤの剛性調整を行うことにより、関節ユニットの滑らかな駆動が可能となるため、ソフトウェアにより駆動モータを制御して剛性調整を行ったり、或いはワイヤに設けた剛性調整ユニットによって剛性調整を行うことが考えられている(例えば、非特許文献1及び非特許文献2参照)。
【0004】
さらに、非線形ばねユニットをロボットの前腕部に搭載することで、剛性可変可能な手首の開発が行われており(例えば、非特許文献3)、図10に示すように、その非線形ばねユニット101は、ユニット本体102に一対の定滑車103,103を並設すると共に、これら定滑車103,103間で交差方向に移動する動滑車104を設け、前記一対の定滑車103,103の一側にワイヤ105を掛装し、それら一対の定滑車103,103において前記ワイヤ105を動滑車104の他側に掛装し、前記動滑車104をコイルばね106により他側に引っ張ることにより、前記ワイヤ105に張力を付与しており、ロボットの手首の2組4本の拮抗筋のそれぞれに前記非線形ばねユニット101を組み込み、筋(ワイヤ105)の剛性を保ちながら制御することで前腕部の剛性調整を可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開7−96485号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Hogan . N. Impedance control: An approach to manipulator, part1-3. Trans. ASME, Journal of Dynamic of Dynamic Systems, Measurement and Control, Vol. 107, pp. 1-24, 1985.
【非特許文献2】兵頭和人, 小林博明. 非線形バネ要素を持つ腱制御手首機構の研究. 日本ロボット学会誌, Vol. 11, No. 8, pp. 1244-1251, 1993.
【非特許文献3】村松直矢, 袖山慶直, 水内郁夫, 稲葉雅幸, 非線形ばねを搭載した筋骨格ヒューマノイド小次郎前腕部の設計. 日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会'08 講演論文集, pp. 2P1-F02, 2007.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、張力センサに基づき駆動モータをソフトウェア制御して剛性調整を行う腱駆動機構部では、センサや制御部を設けた分だけ構成が複雑になるという問題や、センサフィードバックによる応答性に限界があるという問題、さらにセンサの故障により全く機能しなくなる等の問題があった。
【0008】
一方、非特許文献3における従来の非線形ばねユニット101では、ワイヤ105に加わる張力が低い値で限界に到達するため、人間のように細かい剛性調整を行うには高張力に対応できる非線形ばねユニット101が必要となる。
【0009】
また、上記のように、ユニット本体102に動滑車104を直線方向スライド可能に設けたものでは、動滑車104とユニット本体102との可動部分の接触面積が大きいため、摩擦が大きく、そのままでは滑らかにユニットの剛性を調整することができない。そして、可動部分にリニアベアリング等を使うことで摩擦を軽減することはできるが、小型化が困難となる。また、従来のユニットでは、引張バネを使用しているため、ばね係数が小さく、ワイヤ105に加える張力が小さくても剛性が一定値に到達してしまい、細かな剛性の調整が困難である。このため細かい剛性の調整を行うには、ばね係数の大きい引張ばねが必要になり、ロボットに組み込むには小型化が難しいという問題がある。
【0010】
そこで、本発明は以上の点を考慮してなされたもので、ユニットの小型化及び大きな張力に対応できる調整ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を解決するため本発明の請求項1は、張架されたワイヤの張力を調整する調整ユニットにおいて、ケース本体に間隔をおいて対をなす案内部を設け、これら案内部にほぼ沿って前記ワイヤを配置し、前記ケース本体に回転体を回動自在に設け、この回転体に前記案内部間で該案内部に係合した前記ワイヤを折り曲げる押圧部材を設け、前記ワイヤが所定の力で引っ張られると、前記押圧部材が前記ワイヤを押圧する方向に前記回転体を回転付勢する付勢手段を備えるものである。
【0012】
また、本発明の請求項2は、前記回転体に一対の前記押圧部材を設け、これら一対の押圧部材の一方の他側と他方の一側に前記ワイヤを沿わせて該ワイヤを折り曲げたものである。
【0013】
また、本発明の請求項3は、前記案内部が前記ケース本体に回動自在に設けたプーリであり、前記押圧部材が前記回転体に回動自在に設けたプーリであるものである。
【0014】
また、本発明の請求項4は、前記付勢手段が圧縮コイルばねである。
【0015】
また、本発明の請求項5は、複数の前記圧縮コイルばねを備え、
この圧縮コイルばねの端部を前記ケース本体と前記回転体にそれぞれ回動自在に連結したものである。
【0016】
また、本発明の請求項6は、前記圧縮コイルばねを案内軸に外装したものである。
【0017】
また、本発明の請求項7は、前記案内軸の一端に固定取付部材を固着し、前記案内軸の他端側に該案内軸の長さ方向に移動可能な移動取付部材を設け、前記固定取付部材と前記移動取付部材の一方を前記ケース本体に回動自在に連結すると共に、前記固定取付部材と前記移動取付部材の他方を前記回転体に回動自在に連結し、前記固定取付部材と前記移動取付部材とにより前記圧縮コイルばねを圧縮するものである。
【0018】
また、本発明の請求項8は、前記ワイヤは、所定位置に設けられた駆動モータと、所定の可動部との間に張架されており、前記駆動モータの駆動に応じて前記可動部を駆動させる前記ワイヤの剛性の調整に用いるものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の請求項1によれば、ワイヤに対して高い張力に対応することができ、且つ回転体を用いることにより低摩擦でユニットの小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例1の調整ユニットを手首ユニットに取り付けたときの構成を示す概略図である。
【図2】調整ユニットの分解斜視図である。
【図3】ワイヤを図示省略した調整ユニットの斜視図である。
【図4】初期状態の調整ユニットの断面説明図であり、図4(A)はワイヤの引き回し状態を示し、図4(B)は付勢手段の取付構造を示す。
【図5】ワイヤを引き出した状態の調整ユニットの断面説明図であり、図4(A)はワイヤの引き回し状態を示し、図5(B)は付勢手段の取付構造を示す。
【図6】ワイヤの伸びとワイヤに加わる張力との関係を示すグラフである。
【図7】ワイヤの張力とワイヤの伸びとの関係を示すグラフである。
【図8】ワイヤの張力とワイヤの剛性との関係を示すグラフである。
【図9】本発明の実施例2の剛性調整ユニットの初期状態を示し、図9(A)はワイヤの引き回し状態を示し、図9(B)は付勢手段の取付構造を示す。
【図10】従来例の非線形ばねユニットの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下図面に基づいて本発明の実施形態の一例を詳述する。
【実施例1】
【0022】
図1において、1はロボットの手首ユニットを示し、手首ユニット1は、前腕部ブロック2及び手先部ブロック3とから構成され、前腕部ブロック2の先端部と手先部ブロック3の基端部とを回動自在に連結した関節ユニット4を有し、腱駆動機構部(図示せず)によって、前腕部ブロック2に対し手先部ブロック3が回動自在に可動され得るようになされている。
【0023】
ここで、前記腱駆動機構部は、胴体部ユニット(図示せず)に設置された駆動モータ5と、当該駆動モータ5に連動して手先部ブロック3を引っ張るワイヤWとを有し、図1に示すように張架したワイヤWに調整ユニット10が設けられる。なお、図1では、説明の便宜上、手先部ブロック3を駆動させる腱駆動機構部にのみ着目し、当該腱駆動機構部のワイヤWと調整ユニット10のみを示している。
【0024】
実際上、前記ワイヤWは、例えば胴体部ユニットに設置された駆動モータ5から前腕部ブロック2内を通り、手先部ブロック3の所定箇所に固定されている。ワイヤWは、駆動モータ5に連動して引っ張られ、この引張力によって関節ユニット4を回動軸として手先部ブロック3を回動させ得るようになされている。
【0025】
この実施の形態の場合、手先部ブロック3を回動させるワイヤWには、本発明による調整ユニット10が設けられており、当該調整ユニット10によってワイヤWの剛性調整がなされている。なお、上述した実施の形態においては、手先部ブロック3を駆動モータ5で回動させるワイヤWにのみ調整ユニット10を設けるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、前腕部ブロック2を駆動モータ5で回動させるワイヤ等その他種々のワイヤに調整ユニット10を設けるようにしてもよい。
【0026】
実際上、この調整ユニット10は、図2〜図5に示すように、金属材料などからなるケース本体11を備え、このケース本体11は、板状をなす上部ケース12と、この上部ケース12の下部に組み込む下部ケース13とからなり、平面及び正面が横方向に長いほぼ直方体形状をなしている。前記下部ケース13は、中央に凹所14を有し、この凹部14の左右に取付部15,15が突設され、これら取付部15,15の上部に、板状をなす前記上部ケース12が固定される。前記取付部15には、案内部たるプーリ16を取付ける凹部17を設け、この凹部17は側面が開口し、前記凹部17に軸18により前記プーリ16が回動可能に設けられている。そして、図4(A)及び図5(A)に示すように、前記プーリ16はワイヤWの長さ方向両側で、ケース本体11の両側に設けられている。尚、前記取付部15には後述する圧縮コイルばねを配置する取付凹部19が設けられ、この取付凹部19は側面が開口する。
【0027】
また、前記凹所14には、回転体21が回動自在に縦設され、この回転体21は、一体的に回動する上部回転体22と下部回転体23とからなり、これら上部,下部回転体22,23間に一対の押圧部材たるプーリ24,24を軸25,25により回動自在に設け、これら軸25,25は、前記回転体21の回転中心に対して点対称の位置に設けられている。そして、前記プーリ24が前記ワイヤWを折り曲げる押圧部材である。さらに、上部,下部回転体22,23の上下にそれぞれ回転中心軸20,20を一体に突設し、これら回転中心軸20,20をベアリング20A,20Aにより前記上部,下部ケース12,13に回動可能に設けている。したがって、回転体21に対して軸25を中心に自転プーリたるプーリ24が自転可能であり、回転体21が回動することにより回転中心軸20を中心に公転プーリたるプーリ24が公転する。
【0028】
前記回転体21と左右の取付部15,15との間には、付勢手段たる圧縮コイルばね26,26がそれぞれ配置され、この圧縮コイルばね26は、線断面が四角形をなし、コンパクトで、ばね係数が大きい異形線圧縮ばねであって、例えば金属材料からなる。また、前記圧縮コイルばね26の内部に、案内軸27を横設し、この案内軸27により前記圧縮コイルばね26の収縮時の座屈を防止している。
【0029】
また、前記案内軸27の一端に固定取付部材28を固着し、この固定取付部材28は、前記案内軸27の端部を固着する取付孔29と、この取付孔29に連接され前記圧縮コイルばね26の一端側を収納する収納孔30と、ベアリング31A,31Aを両側に装着する装着孔32とを有し、前記収納孔30の底部30Aに前記圧縮コイルばね26の一端が当接する。そして、前記装着孔32の両端に前記ベアリング31A,31Aを挿着し、これらベアリング31A,31Aに軸31を挿入し、この軸31を、前記取付部15の前記取付凹部19に固定する。これにより軸31を中心に前記固定取付部材28がケース本体11に回動可能に連結される。また、前記取付凹部19に対応して、前記下部回転体23には、側面が開口する取付凹部33が設けられている。尚、固定取付部材28,28の軸31,31は、前記回転体21の回転中心に対して点対称の位置に設けられている。尚、図2に示すように、前記ベアリング31Aは、筒部31Bと鍔部31Cとを一体に備え、前記筒部31Bは、装着した孔との回動時の摩擦を軽減すると共に、内部に挿入した軸との回動時の摩擦を軽減し、前記鍔部31は、スラスト軸受として作用し、該鍔部31を挟む面間の回動時の摩擦を軽減し、本実施例のベアリングは全て筒部と鍔部とを一体に備える。
【0030】
一方、前記案内軸27の他端に移動取付部材34をスライド可能に設け、この移動取付部材34には前記案内軸27をスライド可能に挿通する挿通孔35を設ける。さらに、前記移動取付部材34は、前記挿通孔35に連接され前記圧縮コイルばね26の他端側を収納する収納孔30と、前記ベアリング31A,31Aを装着する装着孔32とを有し、前記収納孔30の底部30Aに前記圧縮コイルばね26の他端が当接する。そして、前記装着孔32の両端に前記ベアリング31A,31Aを挿着し、これら上下のベアリング31A,31Aに上下の軸36,36をそれぞれ挿入し、これら軸36,36を、前記回転体21の前記取付凹部33の上下に固定する。これにより軸36,36を中心に前記移動取付部材34が回転体21に回動可能に連結される。尚、移動取付部材34,34は、前記回転体21の回転中心に対して点対称の位置に設けられている。
【0031】
図4(B)に示すように、前記軸31,36を結んだ線の向きは前記案内軸26の向きであり、初期状態において案内軸26の向きは、前記ワイヤWの張架された向きと鋭角的に交差し、且つ両案内軸26,26は平行をなし、また、ワイヤWが最大量引き出された後の案内軸26の向きは、図5(B)に示すように、初期状態の案内軸26の向きとほぼ平行である。このような配置は調整ユニット10の小型化に寄与する。
【0032】
また、前記左右の取付部15,15には前記プーリ16及びプーリ24の高さ位置に対応して、ワイヤ挿通ブッシュ37,37を設けている。さらに、前記上部ケース12には、回転検出手段たるロータリーポテンションメータ38を設け、このロータリーポテンションメータ38により前記回転体21の回転角度を検出し、その角度変位を算出することができる。
【0033】
そして、図4(A)の平面図に示すように、ケース本体11において、一方(図中左)のプーリ16をワイアWの直交方向一側(図中下側)に配置し、他方(図中右)のプーリ16をワイヤWの直交方向他側(図中上側)に配置し、また、初期位置である前記圧縮コイルばね26,26が縮小する前の状態で、一方(図中左)のプーリ24がワイヤWの直交方向他側(図中上側)に配置され、他方のプーリ24がワイヤWの直交方向一側(図中下側)に配置される。この初期位置で、両側の前記ワイヤ挿通ブッシュ37,37に前記ワイヤWを挿通し、そのワイヤWの途中を、前記一方のプーリ16の他側(図中上側)、前記一方のプーリ24の一側(図中下側)、前記他方のプーリ24の他側(図中上側)、前記他方のプーリ16の一側(図中下側)にというように互い違いに掛装し、それらプーリ24,24によりワイヤWを2箇所折り曲げて該ワイヤWをほぼZ字状に引き回している。尚、前記ワイヤ挿通ブッシュ37の挿通孔は、ワイヤWより大きく、ワイヤWをプーリ16,24,24,16に掛装した状態で、図4(A)に示すように、ワイヤwがワイヤ挿通ブッシュ37の中心から一側又は他側に寄る。
【0034】
次に、前記構成につき、その作用を説明する。例えば、図1に示すように、手先部ブロック3が停止している状態で、手先ブロック3に荷重Fが加わると、図1中で上部の調整ユニット10が引っ張られ、ワイヤWが所定の力で引っ張られると、調整ユニット10からワイヤWが引き出され、手先部ブロック3が曲がる。
【0035】
ここで、この場合のワイヤWの動作を図4及び図5を用いて説明すると、図4は初期状態を示し、この初期状態は、圧縮コイルばね26が圧縮される前の状態であり、ここからワイヤWが引っ張られ、ワイヤWの張力が増加すると、ワイヤWによりプーリ16,16が押され、圧縮コイルばね26,26の付勢力に抗して、回転体21が回転し、調整ユニット10からワイヤWが引き出される。このように圧縮コイルばね26は、ワイヤWが所定の力で引っ張られると、プーリ24,24がワイヤWを押圧する方向に回転体21を回転付勢する。そして、回転体21が回転すると、プーリ16,24,24,16間を通るワイヤWの角度が変化し、ワイヤWの伸び(調整ユニット10から引き出されてワイヤWが移動する移動量)と張力とが非線形となる。そして、回転体21が回転すると、図5(B)に示すように、移動取付部材34が固定取付部材28側に移動し、これら移動取付部材34と固定取付部材28により圧縮コイルばね26が圧縮される。この場合、圧縮コイルばね26は、硬質材料からなる案内軸27に外装されているため、圧縮時に座屈を起こすことがなく、収縮することができる。
【0036】
図6は、ワイヤWの伸び(調整ユニット10から引き出されてワイヤWが移動する移動量)とワイヤWに加わる張力の理論曲線を示し、横軸に伸び、縦軸に張力を採ったグラフであり、剛性は傾きで表せるため、張力の増加に伴い剛性が向上することが確認できる。
【0037】
ここで、図7は、ワイヤWの張力と、調整ユニット10から引き出されてワイヤWが移動する移動量との関係を示したグラフであり、ワイヤWが引っ張られることにより、最大約20mm程度、ワイヤWが調整ユニット10から引き出されることを示している。また、図8は、ワイヤWの張力と、剛性との関係を示している。これら図7及び図8は、理論値であり、バネ係数kが0.60kgf/mmと0.13kgf/mmとのときの2種類のグラフを示している。このとき剛性は、ワイヤWと同値まで増加し、限界に到達する。図8ではその変化を示しており、一定の張力で剛性が極大となることが分かる。但し、図8に示すグラフは、理論値であることから、極大に発散しているが、実際はワイヤW自体の有する剛性まで到達して限界となる。
【0038】
図7に示すように、バネ係数kが大きいほうが、調整ユニット10においてワイヤWの移動量が最大になるまでに必要となる張力が大きく、そのため、図8では、ワイヤWの張力と剛性との曲線が緩やかになり、バネ係数kが低い場合に比べて、より細かな剛性調整が可能であることが分かる。
【0039】
このように本実施例では、張架されたワイヤWの張力を調整する調整ユニット10において、ケース本体11に間隔をおいて対をなす案内部たるプーリ16,16を設け、これらプーリ16,16にほぼ沿ってワイヤWを配置し、一方のプーリ16はワイヤWの直交一側方向への移動を規制し、他方のプーリ16はワイヤWの直交他側方向の移動を規制し、ケース本体11に回転体21を回動自在に設け、この回転体21にプーリ16,16間で該案内部16,16に係合したワイヤWを折り曲げる押圧部材たるプーリ24を設け、ワイヤWが所定の力で引っ張られると、プーリ24がワイヤWを押圧する方向に回転体21を回転付勢する付勢手段たる圧縮コイルばね26を備えるから、ワイヤWが所定の力で引っ張られると、プーリ24がワイヤWを押圧し、このようにワイヤWに張力が加わると、該ワイヤWへの張力に応じて圧縮コイルばね26の付勢力が生じることにより、ワイヤWの剛性調整を行えることができ、しかも、回転体21を用いてワイヤWに剛性を付与することができるため、摩擦を減らして滑らかな挙動を実現することができる。
【0040】
また、このように本実施例では、回転体21に一対の押圧部材たるプーリ24,24を設け、これら一対のプーリ24,24の一方の他側と他方の一側にワイヤWを沿わせてワイヤWを折り曲げたから、省スペースで、ワイヤWの引き回し経路を長くでき、これによりワイヤWの移動量を多く取ることができる。
【0041】
また、このように本実施例では、案内部がケース本体11に回動自在に設けたプーリ16であり、押圧部材が回転体21に回動自在に設けたプーリ24であるから、プーリ16,24という回転部材を用いることにより、摩擦を軽減し、ワイヤWをスムーズに引き出すことができる。
【0042】
また、このように本実施例では、付勢手段が圧縮コイルばね26であるから、引張コイルばねを用いる場合に比べて、小スペースで高いばね係数が実現でき、ユニットの小型化と大きな張力への対応が可能となる。
【0043】
また、このように本実施例では、複数の圧縮コイルばね26を備え、この圧縮コイルばね26の端部をケース本体11と回転体21にそれぞれ回動自在に連結したから、回転体21の回動により圧縮コイルばね26をスムーズに揺動することができる。
【0044】
また、このように本実施例では、圧縮コイルばね26を案内軸27に外装したから、圧縮コイルばね26が収縮する際の座屈を防止することができる。
【0045】
また、このように本実施例では、案内軸27の一端に固定取付部材28を固着し、案内軸27の他端側に該案内軸27の長さ方向に移動可能な移動取付部材34を設け、固定取付部材28と移動取付部材34の一方である固定取付部材28をケース本体11に回動自在に連結すると共に、固定取付部材28と移動取付部材34の他方である移動取付部材34を回転体21に回動自在に連結し、固定取付部材28と移動取付部材34とにより圧縮コイルばね26を圧縮するから、回転体21の回動により案内軸27に沿って移動取付部材34が移動し、それら取付部材28,34により圧縮コイルばね26を圧縮することができる。
【0046】
また、このように本実施例では、ワイヤWは、所定位置に設けられた駆動モータ5と、所定の可動部たる手先部ブロック3の間に張架されており、駆動モータ5の駆動に応じて手先部ブロック3を駆動させるワイヤWの剛性の調整に用いるから、手先部ブロック3を外部に優しく接触したり、手先部ブロック3に加わる衝撃を吸収したりすることができる。
【実施例2】
【0047】
図9は本発明の実施例2を示し、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述すると、同図は実施例1の図4に対応し、圧縮コイルばねに代えて引張りコイルばね41を用いており、この引張コイルばね41の一端を前記軸31に回動可能に連結し、その引張コイルばね41の他端を軸42により前記回転体21に回動可能に連結し、図9の初期状態は、引張コイルばね41が伸張前の状態である。
【0048】
したがって、張架したワイヤWを引き出すと、回転体21が図中時計回り方向に回転し、引張りコイルばね41が伸張し、この引張りコイルばね41の弾性復元力により、プーリ24がワイヤWを押圧するように回転体21を回転付勢される。
【0049】
このように本実施例では、張架されたワイヤWの張力を調整する調整ユニット10において、ケース本体11に間隔をおいて対をなす案内部たるプーリ16,16を設け、これらプーリ16,16にほぼ沿ってワイヤWを配置し、一方のプーリ16はワイヤWの直交一側方向への移動を規制し、他方のプーリ16はワイヤWの直交他側方向の移動を規制し、ケース本体11に回転体21を回動自在に設け、この回転体21にプーリ16,16間で該案内部16,16に係合したワイヤWを折り曲げる押圧部材たるプーリ24,24を設け、ワイヤWが所定の力で引っ張られると、プーリ24,24がワイヤWを押圧する方向に回転体21を回転付勢する付勢手段たる引張コイルばね26を備えるから、ワイヤWが所定の力で引っ張られると、プーリ24,24がワイヤWを押圧し、このようにワイヤWに張力が加わると、該ワイヤWへの張力に応じて引張コイルばね26の付勢力が生じることにより、ワイヤWの剛性調整を行えることができ、しかも、回転体21を用いてワイヤWに剛性を付与することができるため、摩擦を減らして滑らかな挙動を実現することができる。
【0050】
なお、本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、実施例においては、可動部たる手先部ブロック3と、所定位置に設けた駆動モータ5との間にワイヤWが張架され、当該駆動モータ5の駆動に応じてワイヤWが引っ張られ、ワイヤWによる引張力により手先部ブロック3を駆動させるロボットに対して、本発明の調整ユニット10を適用した場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば種々の状況で所定の部位間に張架されているワイヤに対して、この調整ユニット10を適用し、当該ワイヤの剛性調整を行うようにしてもよい。
【0051】
また、上述した実施例においては、付勢手段として、線材の断面が方形の圧縮コイルばねを示したが、線材の断面は円形でもよい。さらに、本発明の調整ユニットはロボットのみに限らず、例えば建築用のクレーンなどワイヤを張架するものであれば、各種のものに適用可能である。また、実施例では、案内部として、プーリを示したが、ワイヤ挿通ブッシュのようにワイヤを挿通して案内するタイプのものでよいし、
【符号の説明】
【0052】
3 手先部ブロック(可動部)
5 駆動モータ
10 調整ユニット(非線形ばねユニット)
11 ケース本体
16 プーリ(案内部・自転プーリ)
21 回転体
24 プーリ(公転プーリ)
26 圧縮コイルばね(付勢手段)
27 案内軸
28 固定取付部材
34 移動取付部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
張架されたワイヤの張力を調整する調整ユニットにおいて、
ケース本体に間隔をおいて対をなす案内部を設け、これら案内部にほぼ沿って前記ワイヤを配置し、
前記ケース本体に回転体を回動自在に設け、
この回転体に前記案内部間で該案内部に係合した前記ワイヤを折り曲げる押圧部材を設け、
前記ワイヤが所定の力で引っ張られると、前記押圧部材が前記ワイヤを押圧する方向に前記回転体を回転付勢する付勢手段を備える
ことを特徴とする調整ユニット。
【請求項2】
前記回転体に一対の前記押圧部材を設け、
これら一対の押圧部材の一方の他側と他方の一側に前記ワイヤを沿わせて該ワイヤを折り曲げた
ことを特徴とする請求項1記載の調整ユニット。
【請求項3】
前記案内部が前記ケース本体に回動自在に設けたプーリであり、
前記押圧部材が前記回転体に回動自在に設けたプーリである
ことを特徴とする請求項1又は2記載の調整ユニット。
【請求項4】
前記付勢手段が圧縮コイルばねである
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の調整ユニット。
【請求項5】
複数の前記圧縮コイルばねを備え、
この圧縮コイルばねの端部を前記ケース本体と前記回転体にそれぞれ回動自在に連結した
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の調整ユニット。
【請求項6】
前記圧縮コイルばねを案内軸に外装した
ことを特徴とする請求項5記載の調整ユニット。
【請求項7】
前記案内軸の一端に固定取付部材を固着し、
前記案内軸の他端側に該案内軸の長さ方向に移動可能な移動取付部材を設け、
前記固定取付部材と前記移動取付部材の一方を前記ケース本体に回動自在に連結すると共に、前記固定取付部材と前記移動取付部材の他方を前記回転体に回動自在に連結し、
前記固定取付部材と前記移動取付部材とにより前記圧縮コイルばねを圧縮する
ことを特徴とする請求項6記載の調整ユニット。
【請求項8】
前記ワイヤは、所定位置に設けられた駆動モータと、所定の可動部との間に張架されており、前記駆動モータの駆動に応じて前記可動部を駆動させる前記ワイヤの剛性の調整に用いることを特徴とする請求項1〜6のうちいずれか1項記載の調整ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−256982(P2011−256982A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134031(P2010−134031)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】