説明

調整装置及び調整方法、並びに撮像装置

【課題】 本発明は、製品毎に発生し得る撮像素子の分光感度特性のばらつきを精度良く調整する調整装置及び調整方法、並びに、この調整装置で調整された撮像装置を提供する。
【解決手段】 調整装置は、光源部と、分光部と、保持部と、メモリと、取得部と、演算部とを備える。光源部は、可視光線を発する。分光部は、可視光線をスペクトル分光する。保持部は、撮像素子を有する撮像装置を保持する。メモリは、調整の基準となる分光感度特性のデータを記録する。取得部は、分光部でスペクトル分光された可視光線を撮像素子で光電変換することにより、RGBの画像データを取得する。演算部は、取得部で取得した画像データに基づいて、予め定められた波長毎に算出されたRGB値に所定の係数を乗算した各RGB値と、基準となる分光感度特性の波長毎に対応する各RGB値との差分を各々算出し、差分の総和の平均値を最小とする係数を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子の分光感度特性を調整する調整装置及び調整方法、並びに撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撮像装置の1つである電子カメラにおいて、製品毎に発生し得る撮像素子の分光感度特性のばらつきを調整する調整方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1に開示された調整方法では、R(赤)G(緑)B(青)の原色信号の画像データに対して、波長(周波数)毎に細かく調整を行う点について考慮されていない点で改善の余地がある。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑み、製品毎に発生し得る撮像素子の分光感度特性のばらつきを精度良く調整する調整装置及び調整方法、並びに、この調整装置で調整された撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明に係る調整装置は、光源部と、分光部と、保持部と、メモリと、取得部と、演算部とを備える。光源部は、可視光線を発する。分光部は、可視光線をスペクトル分光する。保持部は、分光感度特性が調整対象となる撮像素子を有する撮像装置を保持する。メモリは、調整の基準となる分光感度特性のデータを記録する。取得部は、分光部でスペクトル分光された可視光線を撮像素子で光電変換することにより、R(赤)G(緑)B(青)の色成分の組み合わせからなる画像データを取得する。演算部は、取得部で取得した画像データに基づいて、予め定められた波長毎に算出されたRGB値に所定の係数を乗算した各RGB値と、調整の基準となる分光感度特性の波長毎に対応する各RGB値との差分を各々算出し、差分の総和の平均値を最小とする係数を求める。
【0006】
第2の発明に係る調整装置は、光源部と、フィルタと、保持部と、メモリと、取得部と、演算部とを備える。光源部は、可視光線を発する。フィルタは、可視光線の内、各々異なる通過波長帯域を有する。保持部は、分光感度特性が調整対象となる撮像素子を有する撮像装置を保持する。メモリは、調整の基準となる分光感度特性のデータを記録する。取得部は、フィルタを通過した可視光線を撮像素子で光電変換することにより、R(赤)G(緑)B(青)の色成分の組み合わせからなる画像データを取得する。演算部は、取得部で取得した画像データに基づいて、予め定められた波長毎に算出されたRGB値に所定の係数を乗算した各RGB値と、調整の基準となる分光感度特性の波長毎に対応する各RGB値との差分を各々算出し、差分の総和の平均値を最小とする係数を求める。
【0007】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、係数は、N行N列の行列式であることが好ましい。
【0008】
第4の発明は、第1又は第2の発明において、係数は、非線形ガンマ関数から算出される補正値であることが好ましい。
【0009】
第5の発明は、第1又は第2の発明において、演算部は、N行N列の行列式と、非線形ガンマ関数から算出される補正値とを組み合わせることにより、各々の差分の平均値を最小にする。
【0010】
第6の発明に係る調整方法は、撮像ステップと、取得ステップと、演算ステップとを備える。撮像ステップは、分光感度特性が調整対象となる撮像素子を有する撮像装置にスペクトル分光された可視光線を照射し、撮像素子で光電変換する。取得ステップは、光電変換により生成したR(赤)G(緑)B(青)の色成分の組み合わせからなる画像データを取得する。演算ステップは、取得ステップで取得した画像データに基づいて、予め定められた波長毎に算出されたRGB値に所定の係数を乗算した各RGB値と、調整の基準となる分光感度特性の波長毎に対応する各RGB値との差分を各々算出し、差分の総和の平均値を最小とする係数を求める。
【0011】
第7の発明に係る調整方法は、撮像ステップと、取得ステップと、演算ステップとを備える。撮像ステップは、分光感度特性が調整対象となる撮像素子を有する撮像装置に、各々異なる通過波長帯域を有するフィルタにより選択的に通過した可視光線を照射し、撮像素子で光電変換する。取得ステップは、光電変換により生成したR(赤)G(緑)B(青)の色成分の組み合わせからなる画像データを取得する。演算ステップは、取得ステップで取得した画像データに基づいて、予め定められた波長毎に算出されたRGB値に所定の係数を乗算した各RGB値と、調整の基準となる分光感度特性の波長毎に対応する各RGB値との差分を各々算出し、差分の総和の平均値を最小とする係数を求める。
【0012】
第8の発明に係る撮像装置は、撮像素子と、係数記録部とを備える。撮像素子は、光電変換により画像データを生成する。係数記録部は、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の調整装置により算出された係数を記録する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、製品毎に発生し得る撮像素子の分光感度特性のばらつきを精度良く調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態の調整装置1の構成を示すブロック図
【図2】電子カメラ100の構成を示すブロック図
【図3】コンピュータ200の構成を示すブロック図
【図4】撮像素子103の受光面に照射される可視光線について説明する図
【図5】波長毎に記録される画像データについて説明をする図
【図6】調整の基準となる分光感度特性を例示する模式図
【図7】調整装置の動作の一例を示すフローチャート
【図8】アナログ波形の画像データの一例を示す図
【図9】第1実施形態における係数が算出されるまでの流れを説明する図
【図10】第2実施形態における係数が算出されるまでの流れを説明する図
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態の説明)
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0016】
図1は、本実施形態の調整装置1の構成を示すブロック図である。図1に示す通り、調整装置1は、暗室10とコンピュータ(PC)200とを備える。暗室10は、外部からの光を遮断するために用いられる。さらに、暗室10の内部には、光源室4と、分光室5と、電子カメラ室6とを備える。光源室4と分光室5との間は、スリット7が設けられている。分光室5と電子カメラ室6との間には、スリット7が設けられている。光源室4には、光源2が配置される。分光室5には、プリズム3が配置される。電子カメラ室6には、ステージ9が配置され、電子カメラ100が保持される。また、ステージ9は、コンピュータ200からの指示を受けることにより上下左右に移動する。これにより、電子カメラ100は、所望の位置に配置されている。
【0017】
光源2は、太陽光(一例として、色温度5500K)と同様の光を発する光源である。
【0018】
プリズム3は、光源2から発せられた可視光線を連続的にスペクトル分光する。このスペクトル分光された可視光線と、撮像素子との関係については後述する。なお、本実施形態では、可視光線の一例として、380nm〜780nmを採用する。
【0019】
次に、調整用の電子カメラ100について説明する。
【0020】
図2は、電子カメラ100の構成を示すブロック図である。図2に示す通り電子カメラ1は、撮影レンズ101と、カットフィルタ102と、撮像素子103と、アナログフロントエンド部(以下、「AFE」という。)104と、RAM(Random Access Memory)105と、ROM(Read Only Memory)106と、操作部107と、CPU(Central Processing Unit)108と、通信インターフェース(I/F)109とを備える。
【0021】
このうちAFE104、RAM105、ROM106、CPU108及び通信インターフェース(I/F)109は、バス110を介して互いに接続している。また、操作部107は、CPU108に接続している。
【0022】
撮影レンズ101は、ズームレンズと、フォーカスレンズとを含む複数のレンズ群で構成されている。なお、簡単のため、図2では、撮影レンズ101を1枚のレンズとして図示する。
【0023】
カットフィルタ102は、入射光線の波長成分の内、赤外線側の波長成分と紫外線側の波長成分をカットする。このカットフィルタ102は、紫外線成分の波長をカットする光学ローパスフィルタに、赤外線成分をカットするIR(InfraRed)カットフィルタが蒸着されている。
【0024】
撮像素子103は、撮影レンズ101からの入射光線を光電変換することにより、画像データを生成する。この撮像素子103には、CCD(Charge Coupled Devices)やCMOS(Complementary Metal−Oxide Semiconductor)のイメージセンサを適宜選択して用いることができる。
【0025】
なお、撮像素子103の受光面には、入射光線をカラー検出するために、RGBの3種類のカラーフィルタが公知のベイヤー配列で配置されている。これによって、撮像素子103の受光面には、R画素とG画素とB画素との3種類の画素が配置される。すなわち、画像データはR信号(R)、G信号(G)、B信号(B)の3種類の信号から構成されることになる。なお、ベイヤー配列は一例であって、この配列に限定されるものではない。
【0026】
AFE104は、撮像素子103が生成する画像データに対して信号処理を施すアナログフロントエンド回路である。このAFE104は、画像データのゲイン調整やA/D変換等を行う。このAFE104が出力する画像データは、RAM105に記録される。このRAM105は、フレームメモリとしても機能する。
【0027】
ROM106は、電子カメラ100の制御を行うプログラム等を予め記憶している不揮発性のメモリである。なお、工場出荷前の調整作業時に、撮像素子103の分光感度特性のばらつきを調整するための係数が、ROM106に書き込まれる(詳細は、後述する)。
【0028】
操作部107は、例えば、コマンドダイヤル、十字状のカーソルキー、電源ボタン、レリーズ釦等を有している。そして、操作部107は、電子カメラ1への操作の指示入力を受け付ける。
【0029】
CPU108は、電子カメラ100の統括的な制御を行うプロセッサである。また、CPU108は、画像処理機能も有しており、RAM105に記録されている画像データを読み出し、各種の画像処理(階調変換処理、輪郭強調処理、ホワイトバランス処理等)を施す。
【0030】
通信インターフェース(I/F)109は、不図示の通信ケーブルが電気的に接続されることにより、コンピュータ200と画像データ等の送受信を実現するための通信インターフェースである。なお、通信インターフェース(I/F)109は、無線で画像データ等の送受信をする無線LAN(Local Area Network)を実現させるための通信インターフェースであってもよい。
【0031】
次に、コンピュータ200について説明する。
【0032】
図3は、コンピュータ200の構成を示すブロック図である。図3に示す通りコンピュータ200は、通信インターフェース(I/F)201と、ROM202と、RAM203と、コンピュータ用CPU204と、表示モニタ205と、キーボード206とを備える。ここでは、説明の便宜上、表示モニタ205やキーボード206もコンピュータ200に含めるものとする。
【0033】
通信インターフェース(I/F)201は、不図示の通信ケーブルで電気的に接続されることにより、電子カメラ100と画像データ等の送受信を実現するための通信インターフェースである。ROM202は、コンピュータ200の制御を行うプログラム等を予め記憶している不揮発性のメモリである。
【0034】
RAM203は、電子カメラ100で取得された画像データを記録するメモリである。また、RAM203は、コンピュータ用CPU204の演算処理に使用するメモリである。
【0035】
コンピュータ用CPU204は、コンピュータ200の統括的な制御を行うプロセッサである。また、本実施形態の調整方法の処理を行うためのプログラムが、コンピュータ用CPU204に組み込まれる。これにより、コンピュータ用CPU204は、撮影制御部204aと、取得部204bと、演算部204cとしても機能する。
【0036】
撮影制御部204aは、電子カメラ1に対して静止画撮影を行わせる。すなわち、撮影制御部204aは、通信インターフェース(I/F)201を介して、電子カメラ100のCPU108に撮影開始の指示を出す。これにより、電子カメラ100のCPU108は、撮影制御部204aからの撮影開始の指示を受け付けた後、不図示のタイミングジェネレータを介して、撮像素子103へ向けて駆動信号を送出し、静止画撮影を行わせる。この静止画撮影された画像データは、電子カメラ100のRAM105に記録される。
【0037】
ここで、撮影制御部204aからの撮影開始の指示を受け付けた後、静止画撮影された画像データについて説明する。静止画撮影された画像データは、一例として、スペクトル分光された可視光線の光強度を、RGBの色成分の組み合わせで示すデータである。
【0038】
図4は、撮像素子103の受光面に照射される可視光線について説明する図である。図4(a)に示すように、光源2から出射した可視光線は、プリズム3でスペクトル分光される。この際、プリズムを通過する可視光線(電磁波)は、波長(周波数)によって屈折率が異なるため、スペクトル分光される。この場合、青色の波長(380nm)が赤色の波長(780nm)よりも屈折率が大きい。このプリズムの性質を利用すると、スペクトル分光された画像データを1回の撮影で取得でき、測定時間の短縮が図られる。そこで、調整装置1では、スペクトル分光された波長(一例として、380nm〜780nm)を、撮像素子103の受光面に受光できるように調整用の電子カメラ100が配置される。この場合、ステージ9が電子カメラ100を移動させることにより、撮像素子103が最適な位置に配置される。
【0039】
なお、図4(b)に示すように、調整装置1では、光源2と撮像素子103との間にフィルタ20を配置してもよい。このフィルタ20は、可視光線の内、特定の波長成分を通過させる通過波長帯域を有する。例えば、通過波長帯域が異なる複数のフィルタ20を用いることで、特定の波長毎に画像データを取得することができる。
【0040】
取得部204bは、電子カメラ100のRAM105に記録された画像データ(RGBの画像データ)を、通信インターフェース(I/F)201を介して取得し、RAM203に記録する。
【0041】
演算部204cは、取得部204bで取得した画像データに基づいて、予め定められた波長毎にRGB値を算出する。なお、本実施形態では、波長(周波数)毎とは、特定の波長(周波数)を複数選択してもよく、複数の波長帯域(周波数帯域)でもよい。以下の例では、波長帯域毎として説明を続ける。そのため、波長帯域と称することがある。
【0042】
図5は、波長毎に記録される画像データについて説明をする図である。
【0043】
図5(a)は、撮像素子103の正面図であり、撮影画像のイメージ図に対応している。この場合、図4(a)に示すように、プリズム3でスペクトル分光された可視光線は、図5(a)に示すように、撮像素子103の垂直ライン方向にスペクトル線となって入射することとなる。そして、水平ライン方向に連続スペクトル線が形成することになる。なお、説明の便宜上、撮像素子103を正面から見て、左端を380nmとし、右端を780nmとする。
【0044】
ここで、ある波長帯域に対応するスペクトル線の画像データの各RGB値(各々のR値、G値、B値)は、図5(b)に示すように、垂直ライン方向のベイヤー配列のRGB値を抽出して、平均値をとった値とする。例えば、各RGB値は、8ビットのデータを用いると、ダイナミックレンジとして、0から255の値をとることになる。この例では、2列のベイヤー配列のRGB値を抽出したため、Gの数が、RとBの数に比較して2倍多いので、その分の適宜補正を行ってもよい。このようにして、演算部204cは、取得部204bで取得した画像データに基づいて、予め定められた波長毎にRGB値を算出する。このRGB値は、RAM203に記録される。
【0045】
なお、撮影画像(撮像素子)のxy座標の位置に基づいて、各波長毎のRGB値を算出してもよい。そして、調整の基準となる撮影画像(撮像素子)における同一のxy座標のRGB値と比較してもよい。
【0046】
演算部204cは、予め定められた波長毎に算出されたRGB値に所定の係数を乗算した各RGB値を算出する。さらに、演算部204cは、調整の基準となる分光感度特性の波長毎に対応する各RGB値との差分を各々算出し、差分の総和の平均値を最小とする係数を求める(詳細は後述する)。
【0047】
次に、第1実施形態における調整装置の動作の一例を説明する。また、電子カメラ1の調整方法について説明する。
【0048】
ここでは、まず、電子カメラ1の調整方法の概要について述べる。本実施形態では、調整対象となる複数の電子カメラに対して、調整の基準となる分光感度特性を予め用意する。この分光感度特性は、測定若しくは計算で求めてもよい。
【0049】
図6は、調整の基準となる分光感度特性を例示する模式図である。ここでは、説明の便宜上、模式図として描いている。本実施形態の調整装置1は、調整対象となる電子カメラ100に対して、調整の基準となる分光感度特性(波長毎の各RGB値)に近づけるようにして、電子カメラ機種間における撮像素子の分光感度特性のばらつきを抑制する調整方法を提供する。以下、フローチャートを用いて具体的に説明する。
【0050】
図7は、調整装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【0051】
このフローチャートは、図1に示す調整装置1に調整対象となる電子カメラ100が配置された後、キーボード206から調整方法のプログラム開始の指示入力をコンピュータ用CPU204が受け付けると開始する。なお、電子カメラ1の電源は予めONになっているものとする。また、光源2も不図示の通信ケーブルを介して、コンピュータ用CPU204からの指示で点灯するものとする。
【0052】
なお、調整用に用いられる撮像素子103の分光感度特性のもとになるアナログ波形の画像データとしては、一例として、380nmから780nmの範囲(780−380=400nm)を40等分にして、波長帯域10nmに相当するスペクトル線の画像データを取得することとする。
【0053】
ステップS101:コンピュータ用CPU204の撮影制御部204aは、キーボード206から、撮影開始の指示入力を受け付けると、調整装置1の光源2を点灯させた後、電子カメラ100に対して静止画撮影を行わせる。撮影制御部204aは、通信インターフェース(I/F)201を介して、電子カメラ100のCPU108に撮影開始の指示を出す。これにより、電子カメラ100のCPU108は、不図示のタイミングジェネレータを介して、撮像素子103へ向けて駆動信号を送出し、静止画撮影を行わせる。すると、スペクトル分光された可視光線の光強度を表すアナログ波形の画像データ(アナログデータ)が取得される。なお、静止画撮影が終了すると、コンピュータ用CPU204は、光源2を消灯させる。
【0054】
図8は、アナログ波形の画像データの一例を示す図である。撮像素子103は、プリズム3を介して、380nmから780nmまでの連続スペクトル線を撮像する。CPU108は、連続スペクトル線を1フレームの静止画像を撮影した後、波長(波長帯域:10nm)毎に画像データを抽出する。説明をわかりやすくするため、1フレームの静止画像データから、波長毎に、光強度の分布を抽出し、図8に示すようにして40フレーム(nは、1から40までの自然数)の静止画像の画像データを作成することとする。図8では、波長(波長帯域:10nm)毎の光強度を表している。AFE104が出力する静止画像の画像データ(デジタルデータ)は、RAM105に記録される。
【0055】
ステップS102:コンピュータ用CPU204の取得部204bは、電子カメラ100のRAM105に記録された画像データを、通信インターフェース(I/F)201を介して取得する。そして、取得部204bは、その画像データをRAM203に記録する。さらに、演算部204cは、RAM203に記録された画像データに基づいて、波長毎に各RGB値を算出する。これらの各RGB値は、RAM203に記録される。
【0056】
ステップS103:コンピュータ用CPU204の演算部204cは、調整の基準となる分光感度特性の波長毎の各RGB値と、静止画撮影により得られた波長毎の各RGB値とに基づいて、係数を算出する。具体的に図9を参照しながら、係数の算出について説明する。
【0057】
図9は、第1実施形態における係数が算出されるまでの流れを説明する図である。
【0058】
まず、演算部204cは、図9(a)に示す通り、調整の基準(目標)となる各RGB値(R、G、B)をROM202から読み出す。
【0059】
【数1】

【0060】
ここで、nは、1から40までの自然数である。つまり、演算部204cは、調整の基準となる各RGB値(R、G、B)を40組用意する。次に、演算部204cは、図9(b)に示す通り、撮影制御部204aの指示により静止画撮影して得られた波長毎の各RGB値に、3行3列の行列式(係数)を乗算して出力値(R’、G’、B’)を算出する。
【0061】
【数2】

【0062】
ここで、nは、1から40までの自然数である。
【0063】
次に、演算部204cは、図9(c)に示す通り、調整の基準となる各RGB値(R、G、B)と、出力値(R’、G’、B’)との差分を波長毎に算出する。
【0064】
【数3】

【0065】
ここで、nは、1から40までの自然数である。
【0066】
次に、演算部204cは、図9(d)に示す通り、n=1から40までの差分の総和の平均値を算出する。
【0067】
【数4】

【0068】
次に、演算部204cは、差分の総和の平均値が最小(ゼロ)に近づくように、3行3列の行列式(係数)を調節し、再度、図9(b)、図9(c)、図9(d)の処理を繰り返し、係数が収束するまで演算を繰り返す。なお、この演算自体は、公知の行列演算であるので、詳細は省略する。このようにして、演算部204cは、最終的に係数を算出する。
【0069】
【数5】

【0070】
この係数は、RAM203に記録される。
【0071】
ステップS104:コンピュータ用CPU204は、RAM203から係数を読み出し、通信インターフェース(I/F)201を介して、係数(データ)を電子カメラ100に送信する。電子カメラ100は、通信インターフェース(I/F)109を介して係数(データ)を受信し、その係数(データ)をROM106に書き込む。そして、図7に示すフローチャートの処理ルーチンは、終了する。なお、引き続き、他の電子カメラを調整する場合には、改めて、他の電子カメラが調整装置1に設置された後、図7に示すフローチャートを実行すればよい。
【0072】
以上、第1実施形態の調整装置1及び調整方法によれば、製品毎に発生し得る撮像素子103の分光感度特性のばらつきを、精度良く調整することができる。なお、撮像素子103の分光感度特性のばらつきは、IRカットフィルタや撮像素子103に用いられるカラーフィルタの分光特性に影響を受ける。第1実施形態の調整方法では、IRカットフィルタやカラーフィルタに起因する分光感度特性のばらつきを補償することができる。
【0073】
また、第1実施形態の調整方法によれば、3行3列の行列式を係数にすることで、容易に係数を求めることができる。なお、3行3列の行列式は、一例であって、3行3列の行列式に限定されるものではない。
【0074】
さらに、第1実施形態の電子カメラ100によれば、調整作業時に電子カメラ100に係数が記録されるので、撮像素子103の分光感度特性を基準の分光感度特性に合わせることができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態では、演算部204cは、3行3列の行列式と、非線形ガンマ関数から算出される補正値とを組み合わせることにより、各々の差分の総和の平均値を最小にする。なお、本発明の第1実施形態と本発明の第2実施形態とでは、演算部204cの数学的処理(図7のステップS103)が異なるだけなので、調整装置1の構成については、同じ要素については同じ符号を付して説明を省略する。第2実施形態では、まず、第1実施形態と同様にして、予め係数(3行3列の行列式)を求めておくことを前提とする。
【0075】
次に、第2実施形態における調整装置1の動作の一例について説明する。
【0076】
なお、調整装置1の動作の一例を示すフローチャートについても図7を流用して説明する。そのため、ステップS101及びステップS102の処理は、第1実施形態と同じ手順であるので説明は省略する。
【0077】
図10は、第2実施形態における係数が算出されるまでの流れを説明する図である。
【0078】
ステップS103:演算部104cは、図10(a)に示す通り、調整の基準となる各RGB値(R、G、B)をROM202から読み出す。
【0079】
次に、演算部204cは、図10(b)に示す通り、静止画撮影して得られた波長毎の各RGB値に、第1実施形態で求めた係数(3行3列の行列式)を乗算して出力値(R’、G’、B’)を算出する。
【0080】
次に、演算部204cは、波長毎の出力値(R’、G’、B’)に対して、R’、G’、B’個別にいわゆるガンマ補正を行う。このガンマ補正は、入力xに対して、y=axγの関係になるときのγの値を補正する(図10(c))。なお、aは比例定数である。この場合、演算部204cは、入力x(R’、G’、B’)に対して、各RGB毎にガンマ係数(γ、γ、γ)を調整して出力値(R”、G”、B”)を算出する。
【0081】
次に、演算部204cは、図10(d)に示す通り、n=1から40までの差分の総和の平均値を算出する。
【0082】
次に、演算部204cは、差分の総和の平均値が最小(ゼロ)に近づくように、ガンマ係数を調節し、再度、図9(c)、図9(d)、図9(e)の処理を繰り返し、ガンマ係数が収束するまで演算を繰り返す。なお、この演算自体は、公知の数学的処理であるので、詳細は省略する。このようにして、演算部204cは、ガンマ係数(γ、γ、γ)を補正値として算出する。このガンマ係数(γ、γ、γ)は、RAM203に記録される。
【0083】
ステップS104:コンピュータ用CPU204は、RAM203から係数(3行3列の行列式、ガンマ係数(γ、γ、γ)を読み出し、電子カメラ100に送信する。電子カメラ100は、その係数をROM106に書き込む。そして、図7に示すフローチャートの処理ルーチンは、終了する。
【0084】
以上、第2実施形態の調整装置1及び調整方法によっても、第1実施形態と同様、製品毎に発生し得る撮像素子103の分光感度特性のばらつきを、精度良く調整することができる。また、第2実施形態の調整方法によれば、3行3列の行列式とガンマ係数を組み合わせることで、第1実施形態と比較して、さらに精度良く調整することができる。
【0085】
さらに、第2実施形態の電子カメラ100によれば、調整作業時に電子カメラ100に係数が記録されるので、撮像素子103の分光感度特性を基準の分光感度特性に合わせることができる。
<実施形態の補足事項>
(1)第2実施形態では、演算部204cは、3行3列の行列式と、非線形ガンマ関数から算出される各RGB値の補正値(ガンマ係数)とを組み合わせることにより、各々の差分の総和の平均値を最小にするようにしたが、非線形ガンマ関数から算出される補正値(ガンマ係数)のみで、各々の差分の総和の平均値を最小にするようにしてもよい。
【0086】
(2)第1実施形態及び第2実施形態では、調整の基準となる分光感度特性を計算により求めた。例えば、所定の電子カメラの分光感度特性を基準機として採用する場合には、予め、基準機の分光感度特性を調整の基準となる分光感度特性に合わせるようにして、前処理を行う。これにより、調整用の他の電子カメラに対しては、基準機の分光感度特性に合わせるようにすればよい。
【0087】
(3)第1実施形態及び第2実施形態では、分光器としてプリズム3を採用したが、プリズム3を用いず、図4(b)に示すように、特定の波長の可視光線のみを透過させるフィルタを用いて、光源2からの可視光線を選択的に透過させるようにしてもよい。この場合においても、第1実施形態及び第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0088】
(4)第1実施形態及び第2実施形態では、コンピュータ用CPU204に、撮影制御部204a、取得部204b、演算部204cを備えたが、電子カメラ100のCPU108に備えるようにしてもよい。
【0089】
(5)第1実施形態及び第2実施形態では、RGBの3種類のカラーフィルタを採用したが、これに限られず、補色フィルタを用いて同様の調整方法を行ってもよい。
【符号の説明】
【0090】
1・・・調整装置、2・・・光源、3・・・プリズム、20・・・フィルタ、9・・・ステージ、106、202・・・ROM、204b・・・取得部、204c・・・演算部、100・・・電子カメラ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0091】
【特許文献1】特開2001−197511号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光線を発する光源部と、
前記可視光線をスペクトル分光する分光部と、
分光感度特性が調整対象となる撮像素子を有する撮像装置を保持する保持部と、
調整の基準となる前記分光感度特性のデータを記録するメモリと、
前記分光部でスペクトル分光された可視光線を前記撮像素子で光電変換することにより、R(赤)G(緑)B(青)の色成分の組み合わせからなる画像データを取得する取得部と、
前記取得部で取得した画像データに基づいて、予め定められた波長毎に算出されたRGB値に所定の係数を乗算した各RGB値と、調整の基準となる前記分光感度特性の前記波長毎に対応する各RGB値との差分を各々算出し、前記差分の総和の平均値を最小とする前記係数を求める演算部と、
を備えることを特徴とする調整装置。
【請求項2】
可視光線を発する光源部と、
前記可視光線の内、各々異なる通過波長帯域を有するフィルタと、
分光感度特性が調整対象となる撮像素子を有する撮像装置を保持する保持部と、
調整の基準となる前記分光感度特性のデータを記録するメモリと、
前記フィルタを通過した可視光線を前記撮像素子で光電変換することにより、R(赤)G(緑)B(青)の色成分の組み合わせからなる画像データを取得する取得部と、
前記取得部で取得した画像データに基づいて、予め定められた波長毎に算出されたRGB値に所定の係数を乗算した各RGB値と、調整の基準となる前記分光感度特性の前記波長毎に対応する各RGB値との差分を各々算出し、前記差分の総和の平均値を最小とする前記係数を求める演算部と、
を備えることを特徴とする調整装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の調整装置において、
前記係数は、N行N列の行列式であることを特徴とする調整装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の調整装置において、
前記係数は、非線形ガンマ関数から算出される補正値であることを特徴とする調整装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の調整装置において、
前記演算部は、前記N行N列の行列式と、非線形ガンマ関数から算出される補正値とを組み合わせることにより、各々の前記差分の平均値を最小にすることを特徴とする調整装置。
【請求項6】
分光感度特性が調整対象となる撮像素子を有する撮像装置にスペクトル分光された可視光線を照射し、前記撮像素子で光電変換する撮像ステップと、
前記光電変換により生成したR(赤)G(緑)B(青)の色成分の組み合わせからなる画像データを取得する取得ステップと、
前記取得ステップで取得した画像データに基づいて、予め定められた波長毎に算出されたRGB値に所定の係数を乗算した各RGB値と、調整の基準となる前記分光感度特性の前記波長毎に対応する各RGB値との差分を各々算出し、前記差分の総和の平均値を最小とする前記係数を求める演算ステップと、
を備えることを特徴とする調整方法。
【請求項7】
分光感度特性が調整対象となる撮像素子を有する撮像装置に、各々異なる通過波長帯域を有するフィルタにより選択的に通過した可視光線を照射し、前記撮像素子で光電変換する撮像ステップと、
前記光電変換により生成したR(赤)G(緑)B(青)の色成分の組み合わせからなる画像データを取得する取得ステップと、
前記取得ステップで取得した画像データに基づいて、予め定められた波長毎に算出されたRGB値に所定の係数を乗算した各RGB値と、調整の基準となる前記分光感度特性の前記波長毎に対応する各RGB値との差分を各々算出し、前記差分の総和の平均値を最小とする前記係数を求める演算ステップと、
を備えることを特徴とする調整方法。
【請求項8】
光電変換により画像データを生成する撮像素子と、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の調整装置により算出された前記係数を記録する係数記録部と、
を備えることを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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