説明

調湿建材

【課題】 調湿建材の調湿機能を低下させることなく、実用上、従来の微小な粒径の光触媒粒子と変わらない担持性を保持すると共に、従来の微小な粒径の光触媒粒子を用いる場合より光触媒性能の向上した調湿建材を提供すること。
【解決手段】調湿建材本体の表面に、光触媒粒子が担持された調湿建材であって、前記光触媒粒子の50%以上が、1.0μmを超えて10.0μm以下、好ましくは1.0μmを超えて3.0μm以下の粒径を有している調湿建材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒粒子を表面に担持した調湿建材、その製造方法、及びかかる調湿建材の製造に使用する調湿建材塗布用液体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、室内の湿度調整を行うことが可能な調湿建材が開発されている(例えば、特許文献1参照。)。そして、かかる調湿建材に対して光触媒を担持させ、調湿機能のみならず、光触媒のもつ有毒ガス等の有機物を分解する分解機能等を調湿建材に付与する提案がなされている(例えば、特許文献2,3参照。)。
【0003】
例えば、特許文献2においては、浄化機能を有する調湿建材として、多孔質の調湿建材本体と、該調湿建材本体の表面付近に担持された光触媒とを有し、該光触媒が該光触媒含有液を該調湿建材本体に付着させることにより担持された調湿建材が提案されている。かかる特許文献2においては、段落番号〔0013〕に「本発明によって提供される浄化機能を有する調湿建材は、光触媒が調湿建材本体の表面の微細な凹部に多量に担持されるようになる」と記載されると共に、段落番号〔0022〕には「なお、光触媒微粒子の平均粒径は5〜1000nm程度であることが好ましい。」と記載されているように、多孔質な調湿建材本体の凹部に微小な光触媒粒子を多量に担持させる方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献3においては、環境改善機能を有する建材として、少なくとも表面が多孔質構造であり調湿機能を有する調湿基材と、前記調湿基材の表面に存在する多孔質構造の細孔に、バインダーを介さずに担持された、光触媒機能を有する酸化チタン微粒子とを備える建材が提案されている。かかる特許文献3においては、その段落番号〔0013〕に「酸化チタン微粒子は、調湿基材の表面に存在する多孔質構造の細孔に担持される。したがって、酸化チタン微粒子の粒径は、細孔径よりも小さいか同じ程度までである。具体的には、酸化チタン微粒子の粒径は、1nm〜1μmの範囲に設定できる。」と記載され、上記特許文献2と同様に、多孔質な調湿建材本体の凹部(細孔部)に微小な光触媒粒子を担持させる方法が開示されている。また、特許文献3の段落番号〔0016〕には、「酸化チタン微粒子を生成する水溶液として、特開平9−71418号公報に開示されたチタニア膜形成用液体が使用できる。」と記載されると共に、かかる特開平9−71418号公報の段落番号〔0008〕には、「・・・請求項1の黄色の透明粘性液体を得ることができる。この液体は、後述するように、過酸化状態の水酸化チタンを含んでいると考えられ、市販のTiOゾルとは本質的に異なるものである。」と記載されているように、特許文献3には、特殊な液体を用いて光触媒(酸化チタン)を担持させる方法が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−273718号公報
【特許文献2】特開2002−348183号公報
【特許文献3】特開2004−76494号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、調湿建材の細孔部に導入されないような比較的大きな粒径の光触媒粒子を調湿建材に担持させることにより、調湿建材の調湿機能を低下させることなく、実用上、従来の微小な粒径の光触媒粒子と変わらない担持性を保持すると共に、従来の微小な粒径の光触媒粒子を用いる場合より光触媒性能の向上した調湿建材、その製造方法、及びかかる調湿建材を形成可能な調湿建材塗布用液体組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、室内で使用される調湿建材は、日光が室内に差し込む場合があるものの、その受光量は少なく、実際上、光触媒能が十分に得られていないことに鑑み、調湿建材における光触媒の機能をより有効に発揮させるべく鋭意研究した結果、従来、上記のように、微小な粒径の光触媒粒子が用いられてきたが、意外にも、多孔質の調湿建材においては、調湿建材の細孔部に導入されないような比較的大きな所定粒径の光触媒粒子を用いることにより、光触媒能が向上すると共に、このような比較的大きな粒径の光触媒粒子を用いても、もともと表面に凹凸のある調湿建材においては、実用上、従来の微小な粒径の光触媒粒子を用いる場合と変わらない担持性を保持することができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、(1)調湿建材本体の表面に、光触媒粒子が担持された調湿建材であって、前記光触媒粒子の50%以上が、1.0μmを超えて10.0μm以下の粒径を有していることを特徴とする調湿建材や、(2)光触媒粒子の50%以上が、1.0μmを超えて3.0μm以下の粒径を有していることを特徴とする上記(1)に記載の調湿建材や、(3)光触媒粒子の一部又は全部が、該光触媒粒子と比較して光触媒活性が低い物質からなる被覆層により覆われていることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の調湿建材に関する。
【0009】
また、本発明は、(4)平均粒径が1.0μmを超えて10.0μm以下の光触媒粒子を含有し、調湿建材本体に塗布して用いられることを特徴とする調湿建材塗布用液体組成物や、(5)光触媒粒子の平均粒径が1.0μmを超えて3.0μm以下であることを特徴とする上記(4)に記載の調湿建材塗布用液体組成物や、(6)光触媒粒子の一部又は全部が、該光触媒粒子と比較して光触媒活性が低い物質からなる被覆層により覆われていることを特徴とする上記(4)又は(5)に記載の調湿建材塗布用液体組成物や、(7)上記(4)〜(6)のいずれかに記載の調湿建材塗布用液体組成物を調湿建材本体に塗布することを特徴とする調湿建材の製造方法に関する。
【0010】
さらに、本発明は、(8)加熱した調湿建材本体に対して、調湿建材塗布用液体組成物を塗布することを特徴とする上記(7)に記載の調湿建材の製造方法や、(9)スプレーにより塗布することを特徴とする上記(7)又は(8)に記載の調湿建材の製造方法や、(10)上記(7)〜(9)のいずれかに記載の調湿建材の製造方法により製造されたことを特徴とする調湿建材に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、比較的大きな粒径の光触媒粒子を調湿建材に担持させることにより、調湿建材の調湿機能を低下させることなく、実用上、従来の微小な粒径の光触媒粒子を用いる場合と変わらない担持性を保持すると共に、従来の微小な粒径の光触媒粒子を用いる場合より光触媒性能の向上した調湿建材、その製造方法、及びかかる調湿建材を形成可能な調湿建材塗布用液体組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
〔調湿建材〕
本発明の調湿建材としては、調湿建材本体の表面に、光触媒粒子が担持された調湿建材であって、前記光触媒粒子の50%以上が、1.0μmを超えて10.0μm以下の粒径を有している調湿建材であれば特に制限されるものではなく、光触媒粒子の粒径が1.0μm以下であると、室内の使用において実用上の光触媒能の向上があまりみられず、また光触媒粒子の粒径が10.0μmを超えるものは、現状の分散技術ではかかる粒径の分散液の調製が困難であると共に、光触媒粒子の担持性に問題が生じる可能性がある。また、かかる粒径の光触媒粒子は、上記のように、50%以上であることが必要であるが、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。このような比較的大きな粒径の光触媒粒子を用いることにより、光触媒能が向上するのは、光触媒粒子が比較的大きな粒子であるので、三次元的に光触媒の表面積が大きくなっており、また、調湿建材の細孔部に光触媒粒子が導入されずに建材表面に存在することにより、光触媒粒子の受光量が大きくなることによるものであると考えられる。
【0013】
また、本発明における光触媒粒子の粒径としては、上記のように、1.0μmを超えて10.0μm以下であることが必要であるが、室内での実用上の光触媒能及び担持性を考慮すると、粒径が1.0μmを超えて5.0μm以下であることが好ましく、1.2μm以上5.0μm以下であることがより好ましく、1.2μm以上3.0μm以下であることがさらに好ましい。ここで、光触媒粒子の粒径とは、一次粒子で存在していれば一次粒子の粒子径を意味し、一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合はその二次粒子の粒子径を意味する。なお、本発明の調湿建材における光触媒粒子の粒径及びその割合は、調湿建材の表面を電子顕微鏡等で観察することにより決定することができる。
【0014】
本発明における光触媒粒子としては、紫外光・可視光等の光照射により、有機物分解活性等の光触媒活性を発揮する粒子であれば特に制限されるものではなく、例えば、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化鉄、酸化インジウム、硫化亜鉛を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、酸化チタンが好ましい。酸化チタンの結晶構造に制限はなく、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型、非晶質の何れであってもよいが、活性の強いアナターゼ型が好ましい。これらは、より強く電子による還元性の性質を付与するために、白金、金、パラジウム、銀、銅、亜鉛、ロジウムなどの金属微粒子の被覆処理や、或いはより強く正孔による酸化性の性質を付与するために酸化ルテニウム等の金属酸化物被覆処理などを行っていてもよく、可視光応答型光触材料でもよい。
【0015】
かかる光触媒粒子は、その一部又は全部が、該光触媒粒子と比較して光触媒活性が低い物質からなる被覆層により覆われていることが好ましく、光触媒活性がない物質からなる被覆層により覆われていることがより好ましい。被覆の形態としては、光触媒粒子の一次粒子を被覆してもよく、二次粒子を被覆してもよいが、光触媒粒子の一次粒子を被覆したものが好ましく、この被覆された一次粒子を用いて二次粒子としたものが特に好ましい。これにより、調湿建材表面に塗布された有機塗料等の有機物の分解を抑制することができる。
【0016】
被覆層の材料としては、具体的に、シリカ、リン酸カルシウム、ポリシロキサン、アパタイト、アルミナ、ジルコニア等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、特にシリカが好ましい。このような被覆層を有する光触媒粒子としては、具体的に、例えば、特開2002-159865号公報に記載されているシリカ被覆酸化チタンを挙げることができる。
【0017】
本発明における光触媒粒子が担持される調湿建材本体としては、多孔質構造であって、調湿機能を有する建材であれば特に制限されるものではなく、例えば、珪藻土、大沢土、鹿沼土、膠質土、水土、味噌土、アロフェン、酸性白土、活性白土、セオイオライト、ゼオライト、ハロイサイト、セピオライト、イモゴライト、珪酸カルシウム、珪質頁岩、シリカゲル、ベントナイト、モンモリロナイト、炭類等の調湿材が用いられたタイル等の建材を挙げることができる。かかる調湿建材本体の平均細孔径としては、例えば、4〜100nm程度であり、4〜20nmであることが好ましく、比表面積としては、20〜200m/g程度である。具体的には、特開2006−027998号公報、特開2005−343751号公報、特開2005−247633号公報、特開2005−089274号公報、特開2004−277188号公報、特開2004−175601号公報、特開2004−115367号公報、特開2002−097087号公報、特開2001−130946号公報、特開平10−018446号公報等に記載の調湿建材を挙げることができる。
【0018】
〔調湿建材塗布用液体組成物〕
また、本発明の調湿建材塗布用液体組成物としては、平均粒径が1.0μmを超えて10.0μm以下の光触媒粒子を含有し、調湿建材本体に塗布して用いられるものであれば特に制限されるものではなく、室内での実用上の光触媒能及び担持性を考慮すると、平均粒径が1.0μmを超えて5.0μm以下であることが好ましく、1.2μm以上5.0μm以下であることがより好ましく、1.2μm以上3.0μm以下であることがさらに好ましい。ここで、光触媒粒子の平均粒径とは、一次粒子で存在していれば一次粒子の平均粒子径を意味し、一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合はその二次粒子の平均粒子径を意味し、具体的には、動的光散乱法によって得られる値を意味する。動的光散乱法の測定条件は、実施例に記載の通りである。
【0019】
また、本発明の光触媒粒子の一部又は全部が、該光触媒粒子と比較して光触媒活性が低い物質からなる被覆層により覆われていることが好ましく、触媒活性がない物質からなる被覆層により覆われていることがより好ましい。被覆の形態としては、光触媒粒子の一次粒子を被覆してもよく、二次粒子を被覆してもよいが、光触媒粒子の一次粒子を被覆したものが好ましく、この被覆された一次粒子を用いて二次粒子としたものが特に好ましい。これにより、調湿建材表面に塗布された有機塗料等の有機物の分解を抑制することができる。本発明の調湿建材塗布用液体組成物における光触媒粒子、調湿建材本体及び被覆層の詳細については、上記本発明の調湿建材と同様である。
【0020】
本発明の調湿建材塗布用液体組成物は、各成分を溶媒に混合することによって得ることができる。かかる溶媒としては、水、有機溶媒、これらの混合物のいずれでもよく、水が好ましい。混合には、任意の公知の混合手段を用いることができる。例えば、ボールミル、ビーズミル等が挙げられる。本発明の液体組成物における光触媒粒子の含有割合は、塗布方法に応じて選択されるが、一般には、液体組成物の総重量に対する光触媒粒子の重量が、0.1wt%以上であることが好ましく、0.5wt%以上であることがより好ましい。また、20wt%以下であることが好ましく、10wt%以下であることがより好ましい。液体組成物は、光触媒粒子が沈降しない懸濁液又は分散液の形態にあることが好ましい。
【0021】
本発明の調湿建材塗布用液体組成物は、バインダーや分散剤を含んでいてもよい。バインダーとしては、無機バインダー、有機バインダーのいずれであってもよい。分散剤としては、ポリカルボン酸系分散剤(例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−無水マレイン酸共重合体);スルホン酸系分散剤(例えば、リグニンスルホン酸、及びナフタレンスルホン酸);アルコール系分散剤(例えば、ポリビニルアルコール);アミノ酸系分散剤;ノニオン系分散剤;等が挙げられる。その他、本発明の調湿建材塗布用液体組成物は、必要に応じて安定化剤、pH調整剤、増粘剤、脱泡剤等の各種公知の成分をさらに含んでもよい。
【0022】
〔調湿建材の製造方法〕
本発明の調湿建材の製造方法としては、上記調湿建材塗布用液体組成物を調湿建材本体に塗布する方法であれば特に制限されるものではなく、塗布方法としては、各種公知の塗布方法を用いることができ、例えば、スプレー法、浸漬法、グラビアコーティング、ロールコーティング、パッド法が挙げられることができ、調湿建材の細孔部の奥まで光触媒粒子が導入されることのない点から、スプレー法が好ましい。塗布量としては、1〜20g/m程度であり、3〜15g/m程度であることが好ましい。本発明の製造方法においては、塗布後に液体組成物を乾燥してもよいし、加熱した調湿建材に液体組成物を塗布してもよいが、調湿建材本体の作製時に焼成する場合には、焼成後の加熱状態で液体組成物を塗布することが製造の効率の点から好ましい。
【0023】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例】
【0024】
[実施例1]
酸化チタン粉末(テイカ社製のTKP−101、アナターゼ型、シリカ被覆品)をボールミルを用いて水に分散させ、酸化チタン濃度が4.0wt%である水分散液を得た。この分散液の酸化チタン粒子平均粒径を動的光散乱法(Malvern,Malvern HPPS,HPP5001)により測定したところ、平均粒径は、1.3μmであった。
【0025】
この酸化チタン分散液を、ホットプレートで表面温度が300℃になるように加熱した市販の調湿タイル((株)INAX、エコカラットECO−303/F1)表面に、スプレー法で塗布量は6.0g/mになるように均一塗布した。その後ホットプレートからタイルをおろし、室温まで放冷してタイルAを得た。タイルAのSEM像を図1に示す。粒径が1.0μmを超えて10.0μm以下の光触媒粒子が50%以上であることは明らかである。
【0026】
[実施例2]
酸化チタン分散液の塗布量を9.0g/mとした点を除き、実施例1と同様にして、タイルBを得た。タイルBのSEM像を図2に示す。粒径が1.0μmを超えて10.0μm以下の光触媒粒子が50%以上であることは明らかである。
【0027】
[実施例3]
酸化チタン分散液の塗布量を12.0g/mとした点を除き、実施例1と同様にして、タイルCを得た。タイルCのSEM像を図3に示す。粒径が1.0μmを超えて10.0μm以下の光触媒粒子が50%以上であることは明らかである。
【0028】
[実施例4]
酸化チタン分散液を過熱しない調湿タイルに、スプレー法で塗布量を12.0g/mになるように均一塗布し、塗布後、電気炉で300℃で30分焼成した点を除き、実施例1と同様にして、タイルDを得た。タイルDのSEM像を図4に示す。粒径が1.0μmを超えて10.0μm以下の光触媒粒子が50%以上であることは明らかである。
【0029】
[比較例1]
光触媒を未塗布の調湿タイルをタイルEとした。タイルEのSEM像を図5に示す。
【0030】
[比較例2]
酸化チタンゾル(石原産業社製のMPT−422,アナターゼ型,シリカ被覆品)を水で希釈し、酸化チタン濃度が4.0wt%である水分散液を得た。この分散液の酸化チタン粒子平均粒径を動的光散乱法(Malvern,Malvern HPPS,HPP5001)により測定したところ、平均粒径は30nmであった。
【0031】
この酸化チタン分散液を、ホットプレートで表面温度が300℃になるように加熱した市販の調湿タイル((株)INAX、エコカラットECO−303/F1)表面に、スプレー法で塗布量は9.0g/m2になるように均一塗布した。その後ホットプレートからタイルをおろし、室温まで放冷してタイルFを得た。タイルFのSEM像を図6に示す。粒径が1.0μmを超えて10.0μm以下の光触媒粒子が50%未満(ほぼ0%)であることは明らかである。
【0032】
[評価(アセトアルデヒド分解試験)]
上記実施例及び比較例のタイルについて、アセトアルデヒド分解試験を行った。試験方法は以下の通りである。
【0033】
4Lガラス容器にサンプル(5×10cm)を入れ密閉した後、アセトアルデヒドガスを250ppmになるように仕込んだ。紫外線を照射しない状態で一定時間放置しサンプルにガスを吸着させた。吸着が平衡に達し、試験容器内のアセトアルデヒド濃度が一定となった後、光触媒塗布面で放射強度が1.0mW/cm(UVR−2((株)TOPCON)、受光部UD−36)の紫外線をBLB(ブラックライトブルー)で照射し、一定時間ごとにアセトアルデヒド濃度を測定し、ガスの分解能力を評価した。
【0034】
アセトアルデヒド濃度は、容器内のガスをマイクロシリンジで採取し、ガスクロマトグラフ(GC−14B((株)島津製作所)FID)で測定した。
【0035】
結果を図7に示す。タイルA、B、C、D、E、Fは、紫外線照射しなくても試験開始と共に吸着作用でアセトアルデヒド濃度が急速に低下した。アセトアルデヒド濃度は吸着が平衡状態に達するまで低下するが、一定値以下には下がらなかった。光触媒を塗布したサンプルも、未塗布のサンプルも吸着挙動は同等であり、光触媒塗布によって吸着能力は低下しないことがわかる。
【0036】
紫外線照射開始と共に、タイルA、B、C、D、Fはアセトアルデヒド濃度が低下した。低下速度は塗布量が多い順に速くなっていた。同じ塗布量のBとFを比較するとFの方が低下速度が遅く、酸化チタンの粒径が小さいほうが活性が低いことがわかる。未塗布のタイルEは吸着で平衡に達したままでアセトアルデヒド濃度に変化はなかった。
【0037】
アセトアルデヒドガス分解終了後、紫外線照射を停止し、容器を閉じたまま再度アセトアルデヒドガスを250ppm仕込み繰り返し試験を行った。図8に示すように、紫外線未照射では、タイルA、B、Cは、初期と同じガス濃度で平衡に達したが、タイルEは、平衡に達する濃度が高くなった。紫外線照射開始で、初期と同様にA、B、Cはアセトアルデヒド濃度が低下した。低下速度は塗布量が多い順に速くなっていた。未塗布のタイルEは、吸着で平衡に達したままでアセトアルデヒド濃度に変化はなかった。
【0038】
[評価(担持性試験)]
光触媒粒子の担持性評価は、人差し指の腹の部分で、光触媒粒子を未塗付のタイルEの表面がはげない程度の強さで塗膜表面を擦り、塗膜の付着強さを評価した。タイルA〜Fには、異常は認められず、未塗付タイルと同等の強度を示した。なお、テープ剥離試験では、タイル自体の表面の剥離が起こり、光触媒粒子の付着性を評価することが困難であった。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施例1のタイルAのSEM像を示す。バーは上から100μm、10μm、1μmに対応する。
【図2】実施例2のタイルBのSEM像を示す。バーは上から100μm、10μm、1μmに対応する。
【図3】実施例3のタイルCのSEM像を示す。バーは上から100μm、10μm、1μmに対応する。
【図4】実施例4のタイルDのSEM像を示す。バーは上から100μm、10μm、1μmに対応する。
【図5】比較例1のタイルEのSEM像を示す。バーは上から100μm、10μm、1μmに対応する。
【図6】比較例2のタイルFのSEM像を示す。バーは上から100μm、10μm、1μmに対応する。
【図7】実施例1、2、3、4及び比較例1のアセトアルデヒドガス分解試験結果を示す。
【図8】実施例1、2、3、及び比較例1のアセトアルデヒドガス分解、繰り返し試験結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調湿建材本体の表面に、光触媒粒子が担持された調湿建材であって、
前記光触媒粒子の50%以上が、1.0μmを超えて10.0μm以下の粒径を有していることを特徴とする調湿建材。
【請求項2】
光触媒粒子の50%以上が、1.0μmを超えて3.0μm以下の粒径を有していることを特徴とする請求項1に記載の調湿建材。
【請求項3】
光触媒粒子の一部又は全部が、該光触媒粒子と比較して光触媒活性が低い物質からなる被覆層により覆われていることを特徴とする請求項1又は2に記載の調湿建材。
【請求項4】
平均粒径が1.0μmを超えて10.0μm以下の光触媒粒子を含有し、調湿建材本体に塗布して用いられることを特徴とする調湿建材塗布用液体組成物。
【請求項5】
光触媒粒子の平均粒径が1.0μmを超えて3.0μm以下であることを特徴とする請求項4に記載の調湿建材塗布用液体組成物。
【請求項6】
光触媒粒子の一部又は全部が、該光触媒粒子と比較して光触媒活性が低い物質からなる被覆層により覆われていることを特徴とする請求項4又は5に記載の調湿建材塗布用液体組成物。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれかに記載の調湿建材塗布用液体組成物を調湿建材本体に塗布することを特徴とする調湿建材の製造方法。
【請求項8】
加熱した調湿建材本体に対して、調湿建材塗布用液体組成物を塗布することを特徴とする請求項7に記載の調湿建材の製造方法。
【請求項9】
スプレーにより塗布することを特徴とする請求項7又は8に記載の調湿建材の製造方法。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれかに記載の調湿建材の製造方法により製造されたことを特徴とする調湿建材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−224600(P2007−224600A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−47030(P2006−47030)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【Fターム(参考)】