説明

調湿装置および調湿システム

【課題】 吸湿性液体の単位量あたりの水分授受量を増加させることができ、それによってエネルギー利用効率を向上できる調湿装置を提供する。
【解決手段】 調湿装置10は、吸湿性液体供給口15から供給されて落下した吸湿性液体Lを空気と接触させるために一時的に滞留させると共に、空気および吸湿性液体Lを加熱または冷却する熱交換コイル16を備えている。熱交換コイル16は、吸湿性液体Lの落下の方向および空気の流れる方向に広がるとともに互いに間隔をあけて配置され、加熱又は冷却される複数のコイルフィン61を含み、吸湿性液体Lおよび空気は、複数のコイルフィン61の間を通ることで互いに接触する。複数のコイルフィン61の間には、吸湿性液体Lの流路が複数のコイルフィン61の間隔よりも狭くなる狭流路部が局所的に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、塩化リチウム(LiCl)等の吸湿性液体を用いて調湿を行う湿式の調湿装置およびそれを用いた調湿システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、塩化リチウム等の吸湿性液体を空気に接触させて空気の調湿を行う調湿装置が知られている。吸湿性液体は、溶液濃度が高いほど、また、温度が低いほど、その飽和蒸気圧が低くなり、水分を吸収しやすくなる。逆に、吸湿性液体は、溶液濃度が低いほど、また、温度が高いほど、その飽和蒸気圧が高くなり、水分が脱離しやすくなる。吸湿性液体を用いた調湿装置は、吸湿性液体の上記の性質を利用して、空気中の水分を吸湿性液体に吸収させて空気を除湿し、逆に吸湿性液体の水分を空気に放出して空気を加湿する。
【0003】
上記のような調湿装置を一つは処理機(室内機)として用い、もう一つは再生機(室外機)として用いて、調湿システムが構成される。処理機は、調湿対象空間から空気を取り込み、取り込んだ空気と吸湿性液体とを接触させることにより、取り込んだ空気を除湿または加湿して調湿対象空間に放出する処理を行う。再生機は、処理機で空気と接触することで、希釈化または濃縮された吸湿性液体を再生する処理を行う。
【0004】
具体的には、処理機にて除湿処理を行う場合には、高濃度かつ低温の吸湿性液体を空調対象空間の空気と接触させることで、空気中の水分を吸湿性液体に吸収させて空気を除湿して空調対象空間に戻す。このような空気の除湿に伴って、吸湿性液体は空気中の水分を吸収して希釈化される。
【0005】
希釈化された吸湿性液体は、再生のために処理機から再生機に送られる。再生機では、この希釈化された吸湿性液体から水分を放出させることで、吸湿性液体を再び高濃度にする。このように再生機で再生(濃縮)された吸湿性液体は、再び処理機に戻される。処理機では、再生機で再生された吸湿性液体を冷却して用いる。これは上述のように、吸湿性液体は低温の方が水分を吸収しやすく、よって、除湿効果が上がるからである。
【0006】
従来の調湿装置では、吸湿性液体と空気とを接触するために、充填材が用いられる。吸湿性液体は、処理空間内で、充填材の上方から供給され、充填材に滞留して、充填材からその下に設けられた液槽に落下する。空気は、処理空間内に取り込まれて、充填材を通過して、処理空間から空調対象空間に放出される。充填材に滞留する吸湿性液体と充填材を通過する空気とが充填材内で接触することで、上述のように吸湿性液体と空気との間で水分の授受が行われる。なお、空調対象空間の空気を加湿する場合は、処理機と再生機とで上記と逆の処理が行われる。
【0007】
このような吸湿性液体を用いた調湿システムにおいて、エネルギーの利用効率を向上させる技術が提案されている(例えば特許文献1)。ここで、エネルギーの利用効率とは、調湿システムに加えたエネルギーの総和に対して、除湿あるいは加湿によって空気と吸湿性液体との間で授受される水分の量の割合である。
【0008】
この調湿システムは、吸湿性液体を処理空間内で滞留させる部材として従来の充填材に代えて熱交換コイルを採用することで、除湿に用いる吸湿性液体を冷却した上で処理空間に供給するための冷却器や、加湿に用いる吸湿性液体を加熱した上で処理空間に供給するための加熱器を省略した構成としている。即ち、この調湿システムでは、吸湿性液体を空気と接触させるために処理空間内で供給された吸湿性液体を滞留させる部材自体を、加熱又は冷却することとしている。
【0009】
熱交換コイルが吸湿性液体を滞留させる部材として加熱又は冷却されると、吸湿性液体が加熱又は冷却されて空気との水分の授受が行われ易くなる。それに加えて、この熱交換コイルを通過する空気も同時に加熱または冷却されるので、空気の飽和水蒸気量が変化し、空気についても吸湿性液体との間で水分の授受が行なわれ易くなる。これにより、従来の充填材を用いた場合と比較して、空気と吸湿性液体との間の水分の授受、即ち、空気の除湿および加湿が行われ易くなり、エネルギー利用効率が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−293831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、熱交換コイルは、一般的には伝熱性を持たせるために金属製であって、親水性がないため、充填材の場合と比較すると、吸湿性液体供給部から滴下された吸湿性液体は、速い速度で熱交換コイルを伝って流れ落ちていく。このため、熱交換コイルを流れる空気の速度に対して吸湿性液体の落下速度が高速となる。吸湿性液体が熱交換コイルを高速に流れ落ちると、吸湿性液体と空気と間で十分に水分の授受をすることができず、従って吸湿性液体の単位量あたりの水分授受量が減少する。また、吸湿性液体と熱交換コイルとの間の熱交換の量も不足し、吸湿性液体が十分に加熱又は冷却されないので、これによっても、空気との間の水分授受量が減少することになる。
【0012】
上記の問題を解決するために、処理空間への吸湿性液体の供給量を増加させることが考えられる。しかしながら、吸湿性液体の供給量を増加させても、吸湿性液体の単位量あたりの水分授受量が増えるわけではなく、逆に多量の吸湿性液体を供給するためにポンプの動力や吸湿性液体の保有量が増加して、エネルギー利用効率が低下する。
【0013】
また、上記の問題を解決するために、気流の速度を増加させることも考えられる。しかしながら、この場合にも吸湿性液体の単位量あたりの水分授受量が増加するわけでないので、加湿や除湿の効果は気流の速度に反比例してしまい、気流の速度を増加させるほど調湿装置から出力される空気の湿度変化が乏しい状態となってしまう。
【0014】
そこで、本発明は、吸湿性液体を一時的に滞留させると共に、空気および吸湿性液体を加熱または冷却する熱交換コイルを備えた調湿装置において、吸湿性液体の単位量あたりの水分授受量を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の調湿装置は、空気の調湿処理を行う処理空間を形成するとともに、前記処理空間外から空気を取り込む吸気口と前記処理空間内の空気を前記処理空間外に排出する排気口とを備えた筐体と、空気との間で水分の授受を行う吸湿性液体を前記処理空間内にて吸湿性液体供給口から供給する吸湿性液体供給部と、前記処理空間内の前記吸湿性液体供給口の下方に配置され、前記吸湿性液体供給口から供給されて落下した吸湿性液体を空気と接触させるために一時的に滞留させると共に、空気および吸湿性液体を加熱または冷却する熱交換コイルと備え、前記調湿装置は、前記吸気口から前記調湿対象空間内に取り込まれた空気が、前記熱交換コイルの一方の側面から供給されて、前記熱交換コイルの他方の側面から前記排気口を通して前記調湿対象空間外に排出するよう構成され、前記熱交換コイルは、前記吸湿性液体供給口からの前記吸湿性液体の落下の方向および前記熱交換コイルの前記一方の側面から前記他方の側面への方向に広がるとともに互いに間隔をあけて配置され、加熱又は冷却される複数のコイルフィンを含み、前記吸湿性液体および前記空気は、前記複数のコイルフィンの間を通ることで互いに接触し、前記複数のコイルフィンの間に、前記吸湿性液体の流路が前記複数のコイルフィンの前記間隔よりも狭くなる狭流路部が局所的に形成されている。
【0016】
この構成により、複数のコイルフィンの間を流れる吸湿性液体は、狭流路部で滞留することにより熱交換コイルに滞留する時間が長くなるので、空気との間で水分の授受を行うための十分な時間が確保され、かつ吸湿性液体と熱交換コイルとの熱交換も十分に行われるので、それによっても吸湿性液体と空気との間の水分の授受が促進され、結果として吸湿性液体の単位量あたりの水分授受量が増加する。
【0017】
また、上記の調湿装置において、前記コイルフィンは、前記熱交換コイル内の前記一方の側面から前記他方の側面への方向には、空気の流路が一定の広さとなるように構成されている。
【0018】
上述のように、吸湿性液体の流路は狭流路部によって局所的に狭くなるが、この構成によれば、空気の流路の広さは熱交換交換コイルの一方の側面から他方の側面にかけて一定であり、狭流路部によって空気の流れが妨げられることはなく、吸湿性液体の単位量あたりの水分授受量を増加させつつ十分な調湿空気を調湿対象空間に供給できる。
【0019】
また、上記の調湿装置において、前記複数のコイルフィンの間には、落下する吸湿性液体を受けるとともに、前記吸湿性液体を通過させる孔が前記狭流路部として形成された、滞留部材が設けられている。
【0020】
この構成により、前記吸湿性液体供給口から供給された吸湿性液体は、滞留部材で滞留した後に孔を通じて落下するので、熱交換コイルに滞留する時間が長くなり、空気と吸湿性液体との間の水分授受量を増加させることができる。この滞留部材は、吸湿性液体供給口からの吸湿性液体の落下の方向に複数段にわたって設けられてよい。
【0021】
また、上記の調湿装置において、前記滞留部材は、前記吸湿性液体の落下の方向に対して垂直に設けられた平板である。この構成により、前記吸湿性液体供給口から供給された吸湿性液体は、平板である滞留部材に当たってそこに滞留し、孔から落下するので、隣り合うコイルフィンの間に孔の開いた平板を挿入するという簡単な構成で、吸湿性液体の単位量あたりの水分授受量を増加させることができる。
【0022】
また、上記の調湿装置において、前記滞留部材は、前記吸湿性液体の落下の方向に突出し、かつ、前記熱交換コイル内の前記一方の側面から前記他方の側面への方向から見てV字形状をなすよう設けられた屈曲板であり、屈曲点に前記孔が形成されている。この構成によっても、隣り合うコイルフィンの間に孔の開いた屈曲板を挿入するという簡単な構成で、吸湿性液体の単位量あたりの水分授受量を向上させることができる。
【0023】
また、上記の調湿装置において、前記滞留部材は、前記吸湿性液体の落下の方向に突出し、かつ、前記熱交換コイル内の前記一方の側面から前記他方の側面への方向から見てU字形状をなすよう設けられた湾曲板であり、最下位置に前記孔が形成されている。この構成によっても、隣り合うコイルフィンの間に孔の開いた湾曲板を挿入するという簡単な構成で、吸湿性液体の単位量あたりの水分授受量を向上させることができる。
【0024】
また、上記の調湿装置において、前記滞留部材は、伝熱性を有する部材で構成されている。この構成により、コイルフィンの熱が滞留部材にも伝わり、滞留部材に滞留する吸湿性液体を効率よく加熱又は冷却することができる。
【0025】
また、上記の調湿装置は、調湿処理された空気を調湿対象空間に排気する処理機、または処理機で用いた吸湿性液体を再生するための再生機である。
【0026】
本発明の別の態様は、調湿処理を行った空気を調湿対象空間に排気する処理機として上記の調湿装置を備え、前記処理機で用いた吸湿性液体を再生するための再生機として上記の調湿装置を備え、前記再生機で再生された吸湿性液体を前記処理機での調湿処理に用いる調湿システムである。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、複数のコイルフィンの間に狭流路部を設けるという構造的な措置によって、吸湿性液体の単位量あたりの水分授受量を増加させることができ、それによってエネルギー利用効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態の調湿装置の構成を示す図である。
【図2(a)】本発明の第1の実施の形態の熱交換コイルの構成を示す斜視図である。
【図2(b)】本発明の第1の実施の形態の熱交換コイルの構成を示す側断面図である。
【図2(c)】本発明の第1の実施の形態の熱交換コイルの構成を示す平断面図である。
【図3(a)】本発明の第2の実施の形態の熱交換コイルの構成を示す側断面図である。
【図3(b)】本発明の第2の実施の形態の熱交換コイルの構成を示す平断面図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態の熱交換コイルの構成を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態の調湿システムについて図面を参照しながら説明する。図1は、第1の実施の形態の調湿システム1の構成を示す図である。調湿システム1は、2つの調湿装置10、30を含んでいる。第1の調湿装置10は、調湿対象空間(室内)の空気を取り込んで、取り込んだ空気を吸湿性液体Lと接触させることにより調湿を行い、調湿処理された空気を調湿対象空間に戻す処理機である。第2の調湿装置30は、処理機10での調湿処理に用いた吸湿性液体Lの再生を行う再生機である。
【0030】
ここで、吸湿性液体Lの再生とは、調湿を行うことによって濃度の変化した吸湿性液体Lの濃度を、調湿に用いる前の状態に戻すことをいう。例えば、処理機10で除湿を行う場合には、溶液濃度の高い吸湿性液体Lを冷却し、冷却した吸湿性液体Lと空気を接触させることにより、吸湿性液体Lによって空気中の水分を吸収する。この処理によって吸湿性液体Lに水分が吸収されるので、吸湿性液体Lの溶液濃度は低くなる。溶液濃度が低い吸湿性液体Lでは十分な除湿を行えないので、再生機30では、吸湿性液体Lから水分を脱離することによって、溶液濃度の高い吸湿性液体Lに戻す。なお、加湿の場合は、逆に、処理機10での加湿処理によって吸湿性液体Lの溶液濃度が高くなるので、再生機30では吸湿性液体Lに水分を吸収させることによって溶液濃度の低い吸湿性液体Lに戻す。
【0031】
本実施の形態では、吸湿性液体Lとして、塩化リチウム(LiCl)を用いる。なお、吸湿性液体としては、塩化リチウムに限らず、食塩水などの潮解性を有する塩の溶液や、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの吸湿性の高い多価アルコール、その他の吸湿性を有する安価な液体を用いてもよい。
【0032】
処理機10は、室内の空気の調湿を行う室内機であり、再生機30は外気との間で水分の授受を行うことにより吸湿性液体Lを再生する室外機である。図1では、一の処理機10に対して一の再生機30が接続された例を示しているが、複数の処理機10に対して一の再生機30を接続する構成としてもよい。例えば、集合住宅や大型スーパー等に調湿システム1を設置する場合には、各部屋あるいは各フロアに処理機10を設置し、各処理機10と接続された一の再生機30を外部に設置する態様とすることもできる。
【0033】
処理機10と再生機30は、第1の吸湿液管路50および第2の吸湿液管路51によって接続されている。第1の吸湿液管路50は、処理機10から再生機30へ吸湿性液体Lを送るための管路であり、第2の吸湿液管路51は、再生機30から処理機10へ吸湿性液体Lを送るための管路である。第1の吸湿液管路50、第2の吸湿液管路51を用いて、処理機10と再生機30との間で吸湿性液体Lを循環させることにより、処理機10にて用いた吸湿性液体Lを再生機30にて再生し、処理機10に戻すことができる。
【0034】
次に、処理機10の構成について説明する。処理機10は、吸気口12と排気口13とを有する筐体11を備えている。筐体11は、空気の調湿処理を行う処理空間を形成している。排気口13は、排気用のファン14を有しており、処理空間内の空気を強制的に排気する。また、処理空間内から空気を排出することにより、処理空間内が外部に対して負圧となり、筐体11の外部の空気が吸気口12を通じて筐体11内に取り込まれる。
【0035】
筐体11内には、吸湿性液体供給部15と、熱交換コイル16と、液槽17とを有する。吸湿性液体供給部15は、吸湿性液体Lを滴下する吸湿性液体供給口として、複数のノズルを有している。複数のノズルから吸湿性液体Lを滴下することにより、熱交換コイル16に吸湿性液体Lを供給する。
【0036】
熱交換コイル16は、吸湿性液体供給部15から供給された吸湿性液体Lを一時的に滞留させる。熱交換コイル16には、吸気口12から取り込まれた空気が吸気口12に対抗する側面(図1の右側面)から供給される(図1において、矢印は、空気の流れを示す)。これにより、上方から供給される吸湿性液体Lと右側面から供給される空気とが熱交換コイル16内で接触し、吸湿性液体Lと空気との間で水分の授受が行なわれる。熱交換コイル16の具体的な構成については、後述する。
【0037】
熱交換コイル16は、ヒートポンプ21の熱交換器を構成している。ここでヒートポンプ21の構成について説明する。ヒートポンプ21は、処理機10の熱交換コイル16と、再生機30の熱交換コイル36と、圧縮機22と、膨張弁23と、これらをつなぐ冷媒管24とを備えている。ヒートポンプ21は、冷媒の流れを逆転させることにより、熱交換コイル16を蒸発器、あるいは、凝縮器として機能させることができる。熱交換コイル36は、熱交換コイル16とは逆の処理を行う。
【0038】
熱交換コイル16は、吸湿性液体供給部15から供給された吸湿性液体Lを一時的に滞留させると共に、滞留する吸湿性液体Lと熱交換コイル16を通る空気を加熱または冷却する。吸湿性液体Lを加熱するか冷却するかは、処理機10によって空気を加湿するか除湿するかによる。すなわち、処理機10が加湿を行う場合には、吸湿性液体Lに含まれた水分を脱離させ、空気中に含ませるために吸湿性液体Lおよび空気を加熱する。逆に、処理機10が除湿を行う場合には、空気中の水分を吸湿性液体Lに吸収させやすくするために吸湿性液体Lおよび空気を冷却する。
【0039】
液槽17には、熱交換コイル16から落下した吸収性液体Lが溜められる。処理機10は、液槽17内の吸湿性液体Lを吸湿性液体供給部12に供給するための管18を有している。管18にはポンプ19が取り付けられており、液槽17内の吸湿性液体Lを吸い上げる。
【0040】
液槽17内の吸湿性液体Lを再生機30に送るための第1の吸湿液管路50は、液槽17から吸湿性液体Lを吸い上げるための管18に三方バルブ20を介して接続されている。三方バルブ20は、処理機10の吸湿性液体供給部15に送る吸湿性液体Lの量と第1の吸湿液管路50を通じて再生機30に送る吸湿性液体Lの量を制御する。即ち、液槽17に溜められた吸湿性液体Lは、一部がポンプ19によってくみ上げられて管18に流れて再利用され、一部はポンプ52によって第1の吸湿液管路50に流れて再生される。
【0041】
次に、再生機30について説明する。再生機30は、吸気口32と排気口33とを有する筐体31を備えている。筐体31は、吸湿性液体Lの再生処理を行う処理空間を形成している。なお、再生機30は、上述のように、吸湿性液体Lの再生処理のために用いられるが、これは再生機30に取り込まれる空気についてみると、処理機10と同様にこの空気の調湿処理を行っているとも理解できる。再生機30での吸湿性液体Lの再生処理において、吸湿性液体Lから空気に水分を放出し、又は吸湿性液体Lが空気中の水分を吸収するからである。よって、再生機30も処理機10と同様に空気の調湿処理を行う調湿装置であるといえる。
【0042】
再生機30は、排気用のファン34を有しており、筐体31内の空気を強制的に排気する。また、筐体31内から空気を排気することにより、外気が吸気口32を通じて筐体31内に取り込まれる。
【0043】
筐体31内には、吸湿性液体Lを供給する吸湿性液体供給部35と、吸湿性液体Lを一時的に滞留させる熱交換コイル36と、熱交換コイル36を通った吸収性液体Lを入れる液槽37とを有する。吸湿性液体供給部35は、処理機10から送られてきた吸湿性液体Lを供給する第1の供給部35aと、液槽37内の吸湿性液体Lを供給する第2の供給部35bとを有している。第1の供給部35a、第2の供給部35bはいずれも、吸湿性液体Lを滴下する吸湿性液体供給口としての複数のノズルを有している。熱交換コイル36は、処理機10が有する熱交換コイル16と同じ構成を有しているので、熱交換コイル16の説明と合わせて後述する。熱交換コイル36は、ヒートポンプ21の熱交換器を構成している。
【0044】
再生機30は、液槽37内の吸湿性液体Lを第2の供給部35bに供給するための管38を有している。管38にはポンプ39が取り付けられており、液槽37内の吸湿性液体Lを吸い上げる。また、この管38には、加熱源40が取り付けられており、液槽37から吸い上げた吸湿性液体Lを加熱する。第2の供給部35bは、液槽37から吸い上げられた吸湿性液体Lを滴下し、熱交換コイル36において吸湿性液体Lに空気を通すことにより再生処理を行う。このように管38を用いて液槽37内の吸湿性液体Lを循環させることにより、再生機30は、吸湿性液体Lの再生処理を繰り返し行う。
【0045】
また、再生機30は、液槽37に給水を行う給水管41を有する。給水管41上には、バルブ42が設けられており、バルブ42によって給水の制御を行う。
【0046】
液槽37には、第2の吸湿液管路51が接続されている。液槽37の吸湿性液体Lは、第2の吸湿液管路51を通じて処理機10に戻る。再生機30から処理機10に戻る吸湿性液体Lの量は、バルブ53によって調整される。本実施の形態では、バルブ53は、液槽37内の吸湿性液体Lの液面の高さが一定になるように、処理機10へ戻す吸湿性液体Lの量を制御する。再生機30のその他の構成は、処理機10と同じである。
【0047】
調湿システム1は、第1の吸湿液管路50と第2の吸湿液管路51との間で熱交換を行う熱交換器54を有している。この熱交換器54は、処理機10における再冷却の負荷および再生機30における再加熱の負荷の軽減に寄与する。
【0048】
次に、熱交換コイルについて説明する。上述のように、処理機10の熱交換コイル16と再生機30の熱交換コイル36とは同じ構成であるので、以下では熱交換コイル16について説明する。図2(a)は、第1の実施の形態の熱交換コイル16の構成を示す斜視図である。図2(b)は、図2(a)のD2方向中央で切断して図2(a)の左方向に見た側断面図である。図2(c)は、図2(a)のD1方向中央で切断して図2(a)の下方向に見た熱交換コイル16の平断面図である。
【0049】
図2(a)〜(c)に示すように、熱交換コイル16は、フレーム60に、所定の間隔で互いに平行に配置された複数のプレートフィン61が固定されている。熱交換コイル16は、各プレートフィン61の面の広がる方向が吸湿性液体Lの落下方向および空気の流れる方向と平行になるように処理機10に固定される。本実施の形態では、吸湿性液体供給部15からの吸湿性液体Lの落下方向は、重力方向(図2(a)のD1方向)であり、空気の流れる方向は、吸気口12から排気口13へ向かう方向(図2(a)のD2方向)である。換言すれば、熱交換コイル16は、図2(a)の上方に吸湿性液体供給部15が位置し、図2(a)の一の側面(右側面)が吸気口12に対向し、かつ他方の側面(左側面)が排気口13に対向するように、処理空間内に配置される。
【0050】
プレートフィン61の間を吸湿性液体Lおよび空気が通過することにより、吸湿性液体Lおよび空気とプレートフィン61との間で熱交換が行われる。隣り合うプレートフィン61の間隔は、狭すぎると、吸湿性液体Lの表面張力により、吸湿性液体Lが詰まってしまう。プレートフィン61の間隔は、広すぎると、吸湿性液体Lと空気との接触面積が小さくなってしまう。従って、これらの要素を考慮して、プレートフィン61の間隔は決定される。プレートフィン61の間隔は、3〜10mmが好ましく、さらに好ましくは4〜8mmであり、最も好ましくは5〜6mmである。
【0051】
熱交換コイル16は、圧縮機22または膨張弁23から流れてきた冷媒を流通させる冷媒流通機構を有している。冷媒流通機構は、入力ヘッダ62aと、出力ヘッダ62bと、伝熱管62cからなる。図2(b)に示すように、伝熱管62cは、プレートフィン61を貫通して延びている。伝熱管62cを流れる冷媒の温度がプレートフィン61に伝達される。伝熱管62cは、プレートフィン61に対して垂直な複数の直管部分を有し、複数の直管部分がプレートフィン61の外側で接続されて1つの流路を構成している。図2(b)では一の伝熱管62しか描かれていないが、図2(c)に示すように、冷媒流通機構は、D2方向に複数段の伝熱管62cを有する。
【0052】
複数の伝熱管62cの各入力端は、いずれも入力ヘッダ62aに接続されており、複数の伝熱管62cの各出力端は、いずれも出力ヘッダ62bに接続されている。入力ヘッダ62aおよび出力ヘッダ62bは、それぞれ冷媒管24aおよび冷媒管24bに接続されている。入力ヘッダ62aの冷媒管24aは、複数の伝熱管62cの並列方向の一端(図2(a)の右側)で入力ヘッダ62aに接続し、出力ヘッダ62bの冷媒管24bは、複数の伝熱管62cの並列方向の他端(図2(a)の左側)で出力ヘッダ62bに接続している。このような構成により、冷媒管24aから入力ヘッダ62aに流れ込んだ冷媒が並列された複数の伝熱管62aのすべてに満遍なく行き渡って出力ヘッダ62bの冷媒管24bから流出するので、プレートフィン61を空気の流れる方向にムラなく加熱又は冷却できる。
【0053】
熱交換コイル16において、空気が導入される面(吸気口12に対向する面)および空気が排出される面(排気口13に対向する面)には、それぞれ吸収材63a、63bが設けられる。吸収材63a、63bは、フレーム60に保持される。吸収材63a、63bは、例えばスポンジで構成される。フレーム60は、吸収材63a、63bを着脱可能に保持してよい。
【0054】
空気が導入される面に設けられた吸収材63aは、処理機10の外部から熱交換コイル16に空気が導入される際に処理機10の外部の埃等をブロックする。空気が排出される面に設けられた吸収材63bは、熱交換コイル16内に供給された吸湿性液体Lが処理機10の外部である調湿対象空間に排出されることを防ぐ。
【0055】
熱交換コイル16には、滞留部材としての複数の平板65が設けられている。平板65は、隣り合うプレートフィン61の間に配置され、隣り合うプレートフィン61を連結している。平板65は、吸湿性液体Lの落下方向(重力方向)に垂直な向き(地面に対して水平な向き)でプレートフィン61に固定されている。平板65は、空気の流れる方向(図2(a)のD2方向)全長に渡る形状を有している。平板65は、吸湿性液体Lの落下方向(図2(a)のD1方向)に複数段(図2の例では3段)設けられる。なお、平板65は、プレートフィン61に溶接その他の手段によって固着されてもよいし、プレートフィン61と一体的に形成されてもよい。
【0056】
平板65には、所定の間隔で複数の孔65aが設けられる。これにより、吸湿性液体供給部15から熱交換コイル16に供給された吸湿性液体Lは、プレートフィン61の間を通って重力方向に落下するが、平板65がこれを受け止めて、平板65が受けた吸湿性液体Lは孔65aを通って重力方向に落下する。即ち、孔65aを有する平板65は、吸湿性液体Lの流路を局所的に複数のコイルフィンの間隔よりも狭くするものであり、この孔65aによって狭流路部が形成される。そして、この局所的な狭流路部によって吸湿性液体Lの落下方向への流速が遅くなり、吸湿性液体Lが熱交換コイル16に滞留する時間が長くなる。
【0057】
図2(b)に示すように、この熱交換コイル16において、空気が流れる方向には、空気の流路を狭める狭流路部は形成されていない。熱交換コイル16における空気の流路の広さは、空気が導入される吸気口12側から、空気が排出される排出口13側にかけて、一定である。平板65を有しない従来の熱交換コイルと比較しても、平板65の厚さの分だけ空気の流路が狭まるだけであり、即ち殆ど流路は狭くなっていない。よって、従来の熱交換コイルと比較して、吸気口12や排気口13の構造および駆動の条件が同一であるという条件で、熱交換コイル16内での空気の流速や流量は従来の熱交換コイルの場合と殆ど変わらない。よって、従来と同一のエネルギー量で、従来よりも湿度変化が大きい調湿空気を、従来と同じ量および風速で、空調対象空間に供給できる。
【0058】
次に、本実施の形態の調湿システム1の動作について説明する。最初に、調湿システム1の動作の概要について述べる。本実施の形態の調湿システム1は、処理機10が調湿対象空間の空気又は外気を取り込み、取り込んだ空気を吸湿性液体Lに通すことにより、空気と吸湿性液体Lとの間で水分の授受を行なって、空気の湿度を調整し、調湿された空気を調湿対象空間に排出する。処理機10において湿度調整に用いられた吸湿性液体Lは再生機30に送られ、再生機30にて元の溶液濃度に再生される。
【0059】
以下、除湿処理を例として、調湿システム1の動作を詳しく説明する。調湿システム1にて除湿を行う場合には、ヒートポンプ21は、熱交換コイル16を蒸発器、熱交換コイル36を凝縮器として機能させる。処理機10の液槽17には、溶液濃度の高い吸湿性液体Lを入れておく。
【0060】
処理機10は、液槽17から溶液濃度の高い吸湿性液体Lを吸い上げて、吸湿性液体供給部15に供給する。吸湿性液体供給部15では、吸湿性液体Lを複数のノズルから滴下する。滴下された吸湿性液体Lは、熱交換コイル16に一時的に滞留する。
【0061】
処理機10は、上記の動作と同時に、ファン14を作動させることにより、吸気口12から空気を取り込み、取り込んだ空気を熱交換コイル16に下方から供給する。熱交換コイル16に滞留した溶液濃度の高い吸湿性液体Lと空気とが接触し、空気中の水分が吸湿性液体Lに吸収される。また、熱交換コイル16は、蒸発器として機能しているので、熱交換コイル16によって吸湿性液体Lおよび空気が冷却される。吸湿性液体Lは冷却されることにより、空気中の水分を吸収しやすくなる。また、空気が冷却されると、空気の飽和水蒸気量が減少するので、空気中の水分は吸湿性液体にいっそう吸収されやすくなる。
【0062】
吸湿性液体供給部15から滴下された吸湿性液体Lは、熱交換コイル16のプレートフィン61に付着した後、自重の作用により、プレートフィン61を伝って下方に流れる。吸湿性液体Lは、プレートフィン61の間にある平板65で一旦下向きの流れが止められ、平板65の孔65aから再び下方に流れる。このようにして、プレートフィン61の最も下端まで流れた吸湿性液体Lはプレートフィン61を離れて落下し、液層17に溜められる。
【0063】
処理機10は、上述のようにして、熱交換コイル16を通った吸湿性液体Lを液槽17にて回収する。処理機10は、液槽17の吸湿性液体Lを管18によって吸い上げ、吸湿性液体供給部15から再び吸湿性液体Lを供給する。このように液槽17に入れられた吸湿性液体Lを循環させることにより、吸湿性液体Lを効率的に利用して調湿を行うことができる。
【0064】
処理機10が除湿動作を継続して行うと、吸湿性液体Lは希釈されて、空気中の水分を吸収しにくくなるので、吸湿性液体Lを再生機30によって再生する。調湿システム1は、処理機10の液槽17から吸い出した吸湿性液体Lのうちの一部を第1の吸湿液管路50を通じて再生機30に送る。再生機30に送る吸湿性液体Lの量は、三方バルブ20によって調節する。
【0065】
再生機30は、第1の吸湿液管路50から供給される溶液濃度の低くなった吸湿性液体Lを再生処理する。具体的には、再生機30は、第1の吸湿液管路50を通じて供給された吸湿性液体Lを第1の供給部35aから滴下する。滴下された吸湿性液体Lは、熱交換器36に一時的に滞留される。
【0066】
再生機30は、上記の動作と同時に、ファン34を作動させることにより、外気を取り込み、取り込んだ外気を熱交換コイル36に下方から供給する。熱交換コイル36に滞留した溶液濃度の低い吸湿性液体Lと空気とが接触するため、吸湿性液体Lの水分が空気中に逃げる。また、熱交換コイル36は、凝縮器として機能しているので、熱交換コイル36によって吸湿性液体Lおよび空気が加熱される。吸湿性液体Lは加熱されることにより、吸湿性液体L中の水分が空気中に脱離しやすくなる。また、空気が加熱されると、空気の飽和水蒸気量が増加するので、吸湿性液体L中の水分はいっそう脱離しやすくなる。
【0067】
再生機30は、熱交換コイル36を通った吸湿性液体Lを、吸収材47を介して液槽37にて回収する。再生機30は、液槽37に入った吸湿性液体Lを管38によって吸い上げる。管38を通じて吸い上げられる吸湿性液体Lは、加熱源40によって加熱される。再生機30は、加熱された吸湿性液体Lを吸湿性液体供給部35bから供給する。このように加熱源40によって加熱されることにより、吸湿性液体Lは、水分がさらに脱離しやすい状態となり、効率的に吸湿性液体Lを再生できる。熱交換コイル36と液槽37との間で吸湿性液体Lが循環することにより、徐々に吸湿性液体Lの濃度が高くなっていく。
【0068】
再生処理が行われた液槽37内の吸湿性液体Lは、第2の吸湿液管路51を通って処理機10に戻る。吸湿性液体Lは、処理機10に戻る途中で、熱交換器54によって、再生機30に向かう吸湿性液体Lと熱交換が行われ、吸湿性液体Lの温度が低下する。以上、本実施の形態の調湿システム1の除湿の動作について説明した。
【0069】
上記では、本実施の形態の調湿システム1の除湿の動作について説明したが、加湿の動作を行う場合には、処理機10と再生機30の役割を入れ替えればよい。具体的には、ヒートポンプ21の熱交換コイル16を凝縮器とし、熱交換コイル36を蒸発器として作動させる。なお、加湿動作における吸湿性液体Lの再生処理としては、バルブ42を開いて給水手段41から水を供給してもよい。
【0070】
以上、本発明の調湿装置について実施の形態を挙げて詳細に説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではない。例えば、上記した実施の形態では、ヒートポンプ21を用いた調湿システム1の例について説明したが、本発明の調湿装置は必ずしもヒートポンプ21を用いる必要はなく、吸湿性液体Lを用いて調湿を行う調湿装置であれば適用することが可能である。例えば、処理機10側と再生機30側で異なる熱源をそれぞれ用いてもよい。処理機10および再生機30の熱源には、例えば、冷水や温水を供給することにより、吸湿性液体Lと熱交換を行う構成を採用することができる。
【0071】
また、熱交換コイルも、上記の構成に限られない。以下、熱交換コイルの他の実施の形態を説明する。
【0072】
(熱交換コイルの第2の実施の形態)
図3(a)は、第2の実施の形態の熱交換コイル26の側断面図であり、図2(b)に対応する図である。図3(b)は、第2の実施の形態の熱交換コイル16の平断面図であり、図2(c)に対応する図である。図3(a)、(b)において、図2(b)、(c)と同一の構成については、同一の符号を用いてその詳細な説明は省略する。
【0073】
第2の実施の形態の熱交換コイル26が第1の実施の形態の熱交換コイル16と異なるのは、狭流路部を形成する滞留部材である。第2の実施の形態の熱交換コイル26は、滞留部材として、屈曲板66を備えている。この屈曲板66は、隣り合うプレートフィン61吸湿性液体の落下方向(重力方向)に突出するよう屈曲している。屈曲板66は、空気の流れる方向(熱交換コイル26における空気が導入される面から空気が排出される面への方向)の全長に渡る形状を有している。
【0074】
屈曲板66は、吸湿性液体Lの落下方向(重力方向)に複数段(図3の例では3段)設けられる。屈曲板66は、プレートフィン61に溶接その他の手段によって固着されてもよいし、プレートフィン61と一体的に形成されてもよい。屈曲板66は、空気の流れる方向から見て下に凸の形状、具体的にはV字形状をなすように、プレートフィン61の間に固定される。
【0075】
屈曲板66には所定の間隔で複数の孔66aが設けられている。孔66aは、屈曲板66の最下位置、即ち屈曲点に形成されている。これにより、吸湿性液体供給部15から熱交換コイル26に供給された吸湿性液体Lは、プレートフィン61の間を通って重力方向に落下するが、屈曲板66がこれを受け止めて、屈曲板66が受けた吸湿性液体Lは孔66aを通って重力方向に落下する。即ち、孔66aを有する屈曲板66は、吸湿性液体Lの流路を局所的に複数のコイルフィンの間隔よりも狭くするものであり、この孔66aによって狭流路部が形成される。そして、この局所的な狭流路部によって吸湿性液体Lの落下方向への流速が遅くなり、吸湿性液体Lが熱交換コイル26に滞留する時間が長くなる。
【0076】
図3(a)に示すように、熱交換コイル26において、空気が流れる方向には、空気の流路を狭める狭流路部は形成されていない。熱交換コイル26における空気の流路の広さは、空気が導入される吸気口12側から、空気が排出される排出口13側にかけて、一定である。屈曲板66を有しない従来の熱交換コイルと比較しても、屈曲板66の厚さの分だけ空気の流路が狭まるだけであり、即ち殆ど流路は狭くなっていない。よって、従来の熱交換コイルと比較して、吸気口12や排気口13の構造および駆動の条件が同一であるという条件で、熱交換コイル26内での空気の流速や流量は従来の熱交換コイルの場合と殆ど変わらない。よって、従来と同一のエネルギー量で、従来よりも湿度変化が大きい調湿空気を、従来と同じ量および風速で、空調対象空間に供給できる。
【0077】
(熱交換コイルの第3の実施の形態)
第2の実施の形態では、滞留部材が屈曲した屈曲板66であり、空気の流れる方向から見てV字形状をなしていたが、滞留部材はこれに限らない。図4は、第3の実施の形態の熱交換コイルの側断面図であり、図3(a)に対応する図である。図4において、図3(a)と同一の構成については、同一の符号を用いてその詳細な説明は省略する。
【0078】
第3の実施の形態の熱交換コイル46は、第2の実施の形態の屈曲板66に代えて、湾曲板67を備えている。湾曲板67は、空気の流れる方向から見て下に凸のU字形状をなす半管である。湾曲板67には、所定の間隔で複数の孔67aが設けられている。孔67aは、湾曲板67の最下位置(変局点)に形成されている。この熱交換コイル64においても、第2の実施の形態と同様に、孔67aによって狭流路部が形成され、この局所的な狭流路部によって吸湿性液体Lの落下方向への流速が遅くなり、吸湿性液体Lが熱交換コイル46に滞留する時間が長くなる。
【0079】
(熱交換コイルのその他の実施の形態)
以上の説明では、平板65、屈曲板66、湾曲板67に所定の間隔で孔65a、66a、67aが複数形成されることにより、この孔65a、66a、67aが狭流路部として吸湿性液体Lを下方に通過させる構成としたが、これらの孔の代わりに、平板65、屈曲板66、湾曲板67の長手方向に形成された溝が狭流路部として吸湿性液体Lを下方に通過させてよい。換言すれば、上記の実施の形態において1つの部材として形成されていた平板65や屈曲板66や湾曲板67がプレートフィン61の並列方向に2つの部材に分割されて、隣り合うプレートフィン61の一方に平板65や屈曲板66や湾曲板67の一方の部材が取り付けられ、隣り合うプレートフィン61の他方に平板65や屈曲板66や湾曲板67の他方の部材が取り付けられてよい。
【0080】
さらに、狭流路部は、滞留部材をプレートフィンの間に設けることによって形成されなくてもよい。例えば、プレートフィン61自体が屈曲することで、複数のコイルフィンの間に、吸湿性液体Lの流路が隣り合うコイルフィンの間隔よりも狭くなる狭流路部が局所的に形成されてよい。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、複数のコイルフィンの間に狭流路部を設けるという構造的な措置によって、吸湿性液体の単位量あたりの水分授受量を増加させることができ、それによってエネルギー利用効率を向上できるという効果を有し、吸湿性液体を用いて調湿を行う湿式の調湿装置等として有用である。
【符号の説明】
【0082】
1 調湿システム
10 処理機
11 筐体
12 吸気口
13 排気口
14 ファン
15 吸湿性液体供給部
16 熱交換コイル
17 液槽
18 管
19 ポンプ
20 三方バルブ
21 ヒートポンプ
22 圧縮機
23 膨張弁
24 冷媒管
30 再生機
31 筐体
32 吸気口
33 排気口
34 ファン
35 吸湿性液体供給部
36 熱交換コイル
37 液槽
38 管
39 ポンプ
40 加熱源
41 給水管
42 バルブ
50 第1の吸湿液管路
51 第2の吸湿液管路
52 ポンプ
53 バルブ
54 熱交換器
60 フレーム
61 プレートフィン
62a 入力ヘッダ
62b 出力ヘッダ
62c 伝熱管
63a、63b 吸収材
65 平板
26 熱交換コイル
66 屈曲板
46 熱交換コイル
67 湾曲板
65a、66a、67a 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気の調湿処理を行う処理空間を形成するとともに、前記処理空間外から空気を取り込む吸気口と前記処理空間内の空気を前記処理空間外に排出する排気口とを備えた筐体と、
空気との間で水分の授受を行う吸湿性液体を前記処理空間内にて吸湿性液体供給口から供給する吸湿性液体供給部と、
前記処理空間内の前記吸湿性液体供給口の下方に配置され、前記吸湿性液体供給口から供給されて落下した吸湿性液体を空気と接触させるために一時的に滞留させると共に、空気および吸湿性液体を加熱または冷却する熱交換コイルと、
を備え、
前記調湿装置は、前記吸気口から前記調湿対象空間内に取り込まれた空気が、前記熱交換コイルの一方の側面から供給されて、前記熱交換コイルの他方の側面から前記排気口を通して前記調湿対象空間外に排出するよう構成され、
前記熱交換コイルは、前記吸湿性液体供給口からの前記吸湿性液体の落下の方向および前記熱交換コイルの前記一方の側面から前記他方の側面への方向に広がるとともに互いに間隔をあけて配置され、加熱又は冷却される複数のコイルフィンを含み、
前記吸湿性液体および前記空気は、前記複数のコイルフィンの間を通ることで互いに接触し、
前記複数のコイルフィンの間に、前記吸湿性液体の流路が前記複数のコイルフィンの前記間隔よりも狭くなる狭流路部が局所的に形成されていることを特徴とする調湿装置。
【請求項2】
前記コイルフィンは、前記熱交換コイル内の前記一方の側面から前記他方の側面への方向には、空気の流路が一定の広さとなるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の調湿装置。
【請求項3】
前記複数のコイルフィンの間には、落下する吸湿性液体を受けるとともに、前記吸湿性液体を通過させる孔が前記狭流路部として形成された、滞留部材が設けられていること特徴とする請求項1または2に記載の調湿装置。
【請求項4】
前記滞留部材は、前記吸湿性液体の落下の方向に対して垂直に設けられた平板であることを特徴とする請求項3に記載の調湿装置。
【請求項5】
前記滞留部材は、前記吸湿性液体の落下の方向に突出し、かつ、前記熱交換コイル内の前記一方の側面から前記他方の側面への方向から見てV字形状をなすよう設けられた屈曲板であり、屈曲点に前記孔が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の調湿装置。
【請求項6】
前記滞留部材は、前記吸湿性液体の落下の方向に突出し、かつ、前記熱交換コイル内の前記一方の側面から前記他方の側面への方向から見てU字形状をなすよう設けられた湾曲板であり、最下位置に前記孔が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の調湿装置。
【請求項7】
前記滞留部材は、伝熱性を有する部材で構成されていることを特徴とする請求項3ないし請求項6のいずれかに記載の調湿装置。
【請求項8】
前記調湿装置は、調湿処理された空気を調湿対象空間に排気する処理機、または処理機で用いた吸湿性液体を再生するための再生機であることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の調湿装置。
【請求項9】
調湿処理を行った空気を調湿対象空間に排気する処理機として請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の調湿装置を備え、前記処理機で用いた吸湿性液体を再生するための再生機として請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の調湿装置を備え、前記再生機で再生された吸湿性液体を前記処理機での調湿処理に用いることを特徴とする調湿システム。

【図1】
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【図2(a)】
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【図2(b)】
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【図2(c)】
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【図3(a)】
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【図3(b)】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−113575(P2013−113575A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263530(P2011−263530)
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【出願人】(504430008)ダイナエアー株式会社 (6)
【Fターム(参考)】