説明

調理器

【課題】収納スペースの問題や、電源供給の煩わしさを解消するだけでなく、調理直後または調理動作中に、別容器でのパッキングを可能にする調理器を提供する。
【解決手段】本発明は、鍋5と、当該鍋5を収納する本体1と、本体1内を大気圧未満に減圧する減圧ポンプ41とを備えた調理器において、減圧ポンプ41は本体1の内外を開閉自在とする吸入口キャップ53と連通し、本体1の内部にある鍋5と、本体1の外部にある別容器のどちらでも減圧状態となるように、減圧ポンプ41を駆動可能に構成している。この場合、減圧ポンプ41を駆動することにより、本体1の内部だけでなく、本体1の外部に備えた別容器に対しても、本体1の内外を吸入口キャップ53で開けることで、その別容器を任意に減圧状態とすることが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内を大気圧以下にする減圧手段を備えた調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、減圧手段により容器内を大気圧以下にすることで、調理性能や保温性能を向上させた調理器が知られている(例えば、特許文献1を参照)。また、これとは別に、袋や容器内を大気圧以下とすることを目的とした専用の製品も知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−284020号公報
【特許文献2】特開2007−106473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、調理器により減圧できるのは、その調理器の容器だけであって、一つで両方を減圧できる製品は存在せず、台所などで調理器と専用の製品を別々に収納するスペースが必要となっていた。また、専用の製品には商用電源や電池などで電力供給が必要であり、使用時に電力の供給源を確保したり、その都度セットしたりする煩わしさが残っている。
【0005】
本発明は上記問題点に鑑み、1台の調理器で二つの機能を持たせることで、収納スペースの問題や、電源供給の煩わしさを解消するだけでなく、調理直後または調理動作中に、別容器でのパッキングを可能にする調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明では、減圧手段を駆動することにより、本体内部だけでなく、本体外部の別容器に対しても、本体の内外を開閉手段で開けることで、その別容器を任意に減圧状態とすることが可能になる。そのため、1台の調理器で本体の内外に対して二つの減圧機能を持たせることができ、収納スペースの問題や、電源供給の煩わしさを解消できる。また、調理直後または調理動作中に、別容器でのパッキングが可能になる。
【0007】
請求項2の発明では、減圧手段と容器とを連通する連通手段の途中に分岐手段を設けただけで、同じ減圧手段で複数の方向の減圧が可能になり、減圧手段の共通化を図ることができる。
【0008】
請求項3の発明では、調理器の動作中であっても、閉止手段を動作させることにより、容器内を減圧状態に維持しながら、減圧手段を駆動手段により動作させて、本体外部の別容器を減圧させることが可能になる。
【0009】
請求項4の発明では、開閉手段の弾性を利用することで、閉時には本体外部への通路を確実に密閉することができる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、1台の調理器で二つの機能を持たせることで、収納スペースの問題や、電源供給の煩わしさを解消するだけでなく、調理直後または調理動作中に、別容器でのパッキングを可能にする調理器を提供できる。
【0011】
請求項2の発明によれば、分岐手段を設けただけで減圧手段の共通化を図ることができる。
【0012】
請求項3の発明によれば、調理器の動作中であっても、容器内を減圧状態に維持しながら、本体外部の別容器を減圧させることが可能になる。
【0013】
請求項4の発明によれば、本体外部への通路を確実に密閉することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明における調理器の全体断面図である。
【図2】同上、減圧ユニットの接続構成を示す概略図である。
【図3】同上、外蓋の斜視図である。
【図4】同上、吸気口ケースの使用状態を示す要部の斜視図である。
【図5】同上、吸気口ケースの平面図である。
【図6】同上、電気的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明における調理器の好ましい実施形態を説明する。
【0016】
調理器である炊飯器の全体構成を模式的に示す図1において、1は調理器の本体で、本体1の内部には、有底筒状の鍋収容部4が配設され、この鍋収容部4に米や水などの被調理物を収容する有底筒状の容器としての鍋5が着脱自在に装着される。鍋収容部4の内部で、鍋5が吊設状態に収納される。
【0017】
7は、鍋5の外側に設けられた加熱手段としての加熱コイルである。加熱コイル7は、鍋5の外底面部から外側面下部にかけて、鍋収容部4の外側に配置されており、この加熱コイル7に所定の高周波電流を供給することで、鍋5の外面に接合した磁性金属材料からなる発熱体(図示せず)を発熱させて、鍋5を電磁誘導加熱する構成となっている。また、鍋収容部4の開口する底部中央には、鍋温度検出手段たる鍋温度センサ8が設けられる。鍋温度センサ8は鍋5の外底面に当接しており、鍋5の温度を検出するようになっている。なお、加熱コイル7のような電磁誘導(IH)式に代わる加熱手段として、他に発熱ヒータなどの電熱式の加熱手段を用いてもよく、鍋5を加熱することができれば構わない。
【0018】
本体1の内部には、加熱コイル7に高周波電流を供給し、且つ加熱コイル7の加熱出力を調節する加熱ユニット11が、基板13に実装されている。また、その他に本体1の内部には、本体1の前面に設けた操作パネル14に対向して制御ユニット15が設けられる。
【0019】
本体1は、前記鍋収容部4を含む枠体2と、枠部2ひいては鍋5の上方に位置する蓋体21とにより構成される。この蓋体21は、蓋体21の上面外殻をなす外観部品としての外蓋22と、蓋体21の内面を形成する外蓋カバー23と、蓋体21の下面をなし、鍋5の上面開口部に対向する部分を形成する蓋下面部材24とを主な構成部品としている。また、蓋下面部材24を覆うようにして、鍋5の上面開口部を直接覆う内蓋25が、蓋下面部材24に対し着脱可能に設けられる。蓋体21は、枠体2の後方に設けたヒンジスプリングを有するヒンジ部26によって、枠体2と軸支される。また、ヒンジ部26と反対側にある本体1の前側には蓋開ボタン27が設けられており、この蓋開ボタン27と連結したクランプ(図示せず)が、枠体2の前方部に係止することで、枠体2に対し蓋体21が閉じた状態になり、蓋開ボタン27を押動操作すると、蓋体21と枠体2との係合が解除され、ヒンジ部26の付勢力によって蓋体21が自動的に開く構成となっている。
【0020】
蓋体21の内部には、蓋下面部材24または内蓋25を加熱する蓋ヒータ28と、内蓋25の上面に当接して、この内蓋25ひいては蓋体21の温度を検出する蓋温度センサ29などが設けられる。なお蓋温度センサ29は、内蓋25の温度ではなく、蓋下面部材24の温度を検出するようにしてもよい。蓋体21の略中央部には、鍋5内の蒸気を外部に放出するための蒸気口31が、蓋体21の上面より着脱自在に設けられる。
【0021】
さらに蓋体21の内部には、鍋5内部の圧力を、本体1外部の圧力である大気圧(常圧)よりも高い加圧状態にする加圧手段33と、本体1内部の特に鍋5内の圧力を、大気圧よりも低い減圧状態にする減圧手段34をそれぞれ備えている。これらの加圧手段33および減圧手段34は、鍋5内の圧力を大気圧以外に可変可能にするいわば調整手段として設けられている。
【0022】
加圧手段33は、鍋5内から蒸気口31に至る蒸気通路の間にあって、蓋体21の密閉度即ち鍋5内の圧力を調節するボール状の調圧弁35と、この調圧弁35を載置すると、内蓋25に設けた孔36に連通する弁孔37Aが閉塞する台座部としての調圧弁ホルダー37と、調圧弁36を覆うようにして調圧弁ホルダー37に取付けられるドーム状の調圧弁カバー38とを、前記内蓋25の上面部に配設する一方で、電磁力により出没可能なプランジャー39を備えたソレノイド40を、蓋体21の内部に配設して構成され、図1に示すように、内蓋25を蓋下面部材24に装着すると、調圧弁35に臨んでプランジャー39の先端が位置するようになる。そして、ここでの加圧手段33は、ソレノイド40の非通電状態にプランジャー39が進出し、調圧弁ホルダー37の弁孔37Aを開ける方向に調圧弁35を押し付ける一方で、ソレノイド40の通電状態にプランジャー39が後退し、調圧弁ホルダー37の弁孔37Aを閉じる方向に調圧弁35を動かすようになっており、調圧弁36が弁孔37Aを塞いでいるときに、加熱コイル7によって鍋5を加熱することで、閉ざされた鍋5内の圧力を大気圧よりも高くする構成となっている。
【0023】
減圧ユニット34は、容器5を大気圧未満にする減圧手段としての減圧ポンプ41と、この減圧ポンプ41から蓋体21内部を経て、内蓋25に設けた孔42に至る管状の経路43と、経路43の基端部を開閉する閉止手段として設けられる電磁弁44と、を備えている。減圧ポンプ41は、その吸引力を増強すると共に、一方が壊れても他方で吸引機能を維持できるように、予め複数装備されているが、図1のように蓋体21の内部ではなく、枠体2の内部に設けてもよい。
【0024】
そして、内蓋25を蓋下面部材24に装着した状態で蓋体21を閉じると、減圧ポンプ41と鍋5内部との間が、弾性部材で構成される連通手段としての経路43で連通するようになっており、ここでソレノイド40のプランジャー39が後退位置にあって、調圧弁35が弁孔37Aを塞いでいれば、減圧ポンプ41を起動することにより、鍋5内からの空気が、経路43および減圧ポンプ41を通って本体1の外部に排出され、密閉した鍋5内の圧力が低下する。また、鍋内5の圧力が大気圧よりも一定値下がった場合には、電磁弁44ひいては経路43を閉塞して、鍋5内を減圧状態に保ち、スローリークによって鍋5内の圧力が上昇した場合には、電磁弁44ひいては経路43を開放し、減圧ポンプ41を起動させて、鍋5内を大気圧よりも低い状態に維持するようになっている。
【0025】
その他、減圧ユニット34は経路43の途中に分岐手段としての分岐管46が配設される。分岐管46は、減圧ポンプ41による吸引を複数方向に切り替えるもので、減圧ポンプ41を動作させることで、鍋5内を含む複数の方向から気体を吸引できる構成になっている。ここでの分岐管46は、電磁弁44と減圧ポンプ41との間に配置される。
【0026】
図2は、本実施形態における減圧ユニット34の接続構成を示したものである。同図において、減圧ユニット34は前述のように、減圧ポンプ41と、経路43と、電磁弁44と、分岐管46とにより構成される。分岐管46は、減圧ポンプ41に連結する第1接続部46Aと、鍋5内に連結する第2接続部46Bと、本体1の適所に設けた吸引口51に連結する第3接続部46Cとを備えて構成される。ここでは、2つの減圧ポンプ41に対応して、2つの第1接続部46Aが設けられ、1つの吸引口51に対応して、1つの第3接続部46Cが設けられているが、減圧ポンプ41や吸引口51の数は限定されず、それらの数に対応して、必要な数の第1接続部46Aと第3接続部46Cを分岐管46に設ければよい。
【0027】
分岐管46に設けた吸引方向への接続部46B,46Cのなかで、電磁弁44に向かわない一方の第3接続部46Cは、分岐路に相当する管体52を介して、蓋体21の内面に設けた吸引口51に取付けられる。また、管体52の先端に設けられる吸引口51は、蓋体21の外方、つまり外気と連通するように露出して設けられる。吸引口51の外方には、開閉手段としてゴムなどの弾性部材で形成された吸入口キャップ53が設けられており、当該吸入口キャップ53により吸引口51の外方を密閉または開放する構造となっている。
【0028】
吸引口51を開けた状態では、この吸引口51に可撓性を有するチューブ54を接続することで、本体1の外部で吸入口ケース55を接続できるようになっている。吸入口ケース55の先端には吸入口56が形成され、蓋体21内に装着された減圧ポンプ41を動作させることで、鍋5の内部だけでなく、吸入口ケース55の吸入口56からも、他の容器や袋などの別容器(図示せず)内の気体を吸引して、真空減圧する構成となっている。
【0029】
図3は外蓋22の外観構成を示し、図4は吸入口ケース55の使用状態を示している。これらの各図において、蓋体21の外観をなす外蓋22の側部には、吸入口キャップ53の外形形状にほぼ一致した凹部58が設けられ、この凹部58の底部より突出して、前述した吸引口51が設けられる。は、外蓋22の外側面に装着され、凹部58の開口面を塞ぐことにより、吸引口51の先端に弾発的に密着当接するようになっている。また吸入口キャップ53は、吸引口51の開閉に拘わらず、外蓋22から外れない構造となっており、それにより吸入口キャップ53の紛失を防ぐことができる。
【0030】
図5は、吸入口ケース55単体の構成を示している。吸気口ケース55は透明で、柔軟性のない成形樹脂で構成され、チューブ54の接続口59を設けた基端側から、吸入口56を設けた先端側に向けて、テーパー状に拡がる円筒形状を有している。また、キャップ状の吸入口56はゴム製で、その中心に吸入口ケース55内と連通する開口が形成される。本体1の外部に存在する別容器内の気体は、吸入口ケース55を利用して吸引される。
【0031】
次に制御系統について、図6を参照しながら説明する。同図において、61は加熱制御手段で、これは前記鍋温度センサ8および蓋温度センサ29からの各温度情報や、操作パネル14に設けた操作スイッチ62からの操作信号を受けて、炊飯時および保温時に鍋5の底部を加熱する加熱コイル7と、蓋体21を加熱する蓋ヒータ28とを各々制御すると共に、前述したソレノイド40,減圧ポンプ42,電磁弁44の他に、操作パネル14に設けた表示器としてのLCD63や、蓋開ボタン27や操作パネル14に設けたランプとしてのLED64を各々制御するものである。なお操作パネル14は、枠体2または蓋体21の何れに設けられていてもよい。
【0032】
本実施例の加熱制御手段61は、鍋温度センサ8の検出温度に基づいて、主に加熱コイル7を制御して鍋5の底部を温度管理し、蓋温度センサ29の検出温度に基づいて、主に蓋ヒータ28を制御して蓋下面部材24ひいては内蓋25を温度管理するようになっている。加熱制御手段61は、自身の記憶手段(図示せず)に記憶されたプログラムの制御シーケンス上の機能として、炊飯時に前記鍋5内の被炊飯物を炊飯加熱する炊飯制御手段67と、保温時に鍋5内のご飯を所定の保温温度に保温加熱する保温制御手段68と、操作スイッチ62からの予約炊飯開始の指令を受けて、予め記憶手段に記憶された所定時間に鍋5内の被炊飯物が炊き上がるように炊飯制御手段67を制御する予約炊飯制御手段69を備えている。なお、前記所定時間は、例えば操作スイッチ62の時間キーや分キーを操作することで、適宜変更することができる。
【0033】
71は、加熱制御手段61からの制御信号を受けて、加熱コイル7に所定の高周波電流を供給する高周波インバータ回路などを内蔵した加熱コイル駆動手段である。またこれとは別に、加熱制御手段51の出力側には、当該加熱制御手段61からの制御信号を受けて蓋ヒータ28を駆動させる蓋ヒータ駆動手段72と、ソレノイド40をオンまたはオフにするソレノイド駆動手段73と、本体1内の減圧時に減圧ポンプ41を動作させるポンプ駆動手段74と、電磁弁44をオンまたはオフにする電磁弁駆動手段75と、LCD63を駆動させるLCD駆動手段76と、LED64を駆動させるLED駆動手段77が各々設けられる。そして、前記炊飯制御手段67による炊飯時、および保温制御手段68による保温時には、鍋温度センサ8と蓋温度センサ29からの各温度検出により、加熱コイル7による鍋5の底部への加熱と、蓋ヒータ28による蓋体21への加熱が行われるように構成する。また、前記炊飯制御手段67による炊飯が終了し、鍋5内の被調理物がご飯として炊き上がった後は、保温制御手段68による保温に自動的に移行し、鍋温度センサ8の検知温度に基づき、ご飯を所定の保温温度(約70℃〜76℃)に保温するように構成している。
【0034】
操作手段としての操作スイッチ62は、表示手段であるLCD63やLED64と共に、図1に示す操作パネル14に設けられておリ、コース選択キー62Aを含めた複数のキー(操作部)によって構成される。コース選択キー62Aは、加熱制御手段61に記憶保持される複数の炊飯コースの中から、特定の炊飯コースを選択可能にするもので、加熱制御手段61は、コース選択キー62Aで選択される炊飯コースに対応した制御パターンを実行することにより、炊飯時において加熱コイル7,蓋ヒータ28,ソレノイド40,減圧ポンプ41,電磁弁44,LCD63,LED64の何れかまたは全てを、各々の炊飯コースで独自に制御するようになっている。
【0035】
次に、上記構成についてその作用を説明すると、鍋5内に被炊飯物である米および水を入れ、操作スイッチ62の例えば炊飯開始キー(図示せず)を操作すると、炊飯制御手段67による炊飯動作が開始する。炊飯制御手段67は、予めコース選択キー62Aで選択された炊飯コースに対応した制御パターンで各部を制御しながら、ひたしから炊上げに至る一連の炊飯行程を実行する。また、この炊飯行程中に、加熱制御手段61は必要に応じて減圧ポンプ41を動作させ、且つソレノイド40や電磁弁44の開閉を制御することで、容器5内を大気圧よりも低くする減圧制御を行なう。
【0036】
具体的には、炊飯制御手段67は、実質的な炊飯を開始する前に、鍋5内の米に対する吸水を促進させるために、鍋温度センサ8による鍋5の底部の温度検知に基づいて、加熱コイル7で鍋5を加熱し、鍋5内の水温を約45〜60℃に15〜20分間保持するひたしを行なう。
【0037】
ひたしが開始すると、加熱制御手段61は鍋5内から空気を排出するために、減圧ポンプ41を駆動させる信号をポンプ駆動手段74に出力すると共に、この減圧ポンプ41に同期して電磁弁44ひいては経路43を開放させる信号を電磁弁駆動手段75に出力する。その後、加熱制御手段61は減圧ポンプ41の駆動を停止させ、且つ電磁弁44ひいては経路43を閉じて、鍋5内を減圧状態に維持し、スローリークによる圧力上昇を考慮して、所定時間が経過すると、加熱制御手段61は再び減圧ポンプ41を所定時間駆動させると共に、電磁弁44ひいては経路43を開放させて、鍋5内から空気を排出する。その後は上述した動作が繰り返されて、減圧ポンプ41と電磁弁44が同時にオン,オフ制御され、鍋5内の圧力が所望の範囲内の値に維持される。
【0038】
また、鍋5内が大気圧未満のときには、ソレノイド40が通電(オン)状態になって、プランジャー39が後退位置に移動するので、調圧弁35が調圧弁ホルダー37の弁孔37Aを塞ぎ、鍋5内の密閉が確保される。そのため、ひたし時に密閉状態で鍋5内を減圧することができ、鍋5内において米に水を十分に吸水させることが可能になる。
【0039】
その後、所定時間のひたしが終了すると、炊飯制御手段67は実質的な炊飯動作を開始すると共に、加熱制御手段61による鍋5への減圧制御を中断するので、減圧ポンプ41および電磁弁44は、その後の保温が安定した状態になるまでオフ状態となる。また、炊飯制御手段67は調圧弁35を弁孔37Aから退避させ、鍋5をほぼ大気圧に維持する。鍋5内の沸騰状態を検知すると、炊き上げ(沸騰継続加熱)とむらしが続けて行なわれるが、むらしの途中までは鍋5内を大気圧以上にするために、炊飯制御手段67はソレノイド40をオン状態にし、調圧弁35より弁孔37Aを閉塞する。これにより、鍋5内と外部との連通は遮断される。
【0040】
炊飯行程に移行すると、炊飯制御手段67は加熱コイル7により鍋5を強加熱し、被炊飯物への沸騰加熱を行なう。この沸騰加熱時に鍋5の底部の温度が90℃以上になり、蓋体21の温度が90℃以上で安定したら、鍋5内が沸騰状態になったものとして、それまでよりも加熱量を低減した沸騰継続加熱に移行する。沸騰加熱の途中で、炊飯制御手段67はソレノイド40をオフ状態にして、調圧弁35を弁孔37Aから退避させる。これにより、加圧手段33は密閉せずに鍋5の内外を連通させた開放状態となり、鍋5はほぼ大気圧に維持される。なお、上述の蓋体21の温度が90℃以上で安定したことは、蓋温度センサ29からの検出温度の温度上昇率により検知される。また、この沸騰検知において、鍋温度センサ8と蓋温度センサ29とにより、鍋5の底部および蓋体21がいずれも90℃以上になったことを確認でき、完全に鍋5内が沸騰したことを精度よく検知できる。
【0041】
また、沸騰継続に移行すると、炊飯制御手段67は蓋ヒータ28による蓋加熱を開始させる。ここでの蓋加熱は、内蓋25の温度が100〜110℃になるように、蓋温度センサ29の検知温度により管理される。また沸騰継続加熱に移行したら、炊飯制御手段67はソレノイド40を周期的にオン・オフさせる。この沸騰継続加熱では、コース選択キー62Aにより選択した炊飯コースに応じて、ソレノイド40の通断電タイミングを変えるのが好ましい。これにより、鍋5に通じる加圧手段33の密閉度を、選択した炊飯メニューに応じて最適なものに可変することができる。
【0042】
そして、鍋5の底部が所定の温度上昇を生じたら、鍋5内の炊上がりを検知して、炊飯制御手段67による炊飯行程を終了し、保温制御手段68により保温行程に移行して、最初のむらしに移行する。むらし中は蓋温度センサ29の検出温度による温度管理によって蓋ヒータ28を通断電し、内蓋25への露付きを防止すると共に、ご飯が焦げない程度に高温(98〜100℃)が保持されるように、鍋温度センサ8による温度検知により、鍋5の底部の温度を管理する。むらしは所定時間(15〜20分)続けられ、むらしが終了したら保温制御手段68による保温に移行する。
【0043】
むらしに移行すると、その後の保温開始直後に蓋体21が開けられることを考慮して、鍋5内を徐々に大気圧に戻す動作が行なわれる。保温制御手段68は、むらしの途中でソレノイド40をオン状態からオフ状態に切り換えて、調圧弁35を弁孔37Aから退避させる。
【0044】
保温になると、加熱コイル7にて鍋5の底部と側面下部を加熱すると共に、鍋5内に収容するご飯の温度よりも僅かに高く、蓋ヒータ28により蓋体21の下面を加熱する。これにより、鍋5内のご飯の温度は70〜76℃に温度保持される。また保温制御手段68は、保温経過時間が予め設定した時間に達すると、鍋5内の圧力が大気圧よりも低くなるように、減圧ポンプ41や電磁弁44の動作を再び制御する。それと共に、鍋5内を密閉状態にするために、ソレノイド40をオン状態にする。なお、こうした動作は、保温行程の所定時間後ではなく、保温行程で鍋5内が所定温度に到達したのを鍋温度センサ8が検出したときに、行なわれるようにしてもよい。保温中の鍋5に対する減圧制御は、蓋体21を開けようとする目的で蓋開ボタン27を押したときに解除され、蓋体21を閉じたときに再開する。
【0045】
上述した調理直後のひたし時や調理中の保温時に、経路43を介して鍋5内の気体だけを吸引できるようにするには、吸入口キャップ53により凹部58の開口面を塞いで、吸引口51を密閉する。こうすると、容器5内から分岐管46を経て減圧ポンプ41に至る経路43だけが形成されるので、鍋5内の気体を効率的に吸引できる。一方、鍋5内だけでなく、本体1の外部からも気体をできるようにするには、吸入口キャップ53を動かして凹部58の開口面を開放し、外部に露出した吸引口51にチューブ54の一端を接続して、当該チューブの他端に吸入口ケース55の接続口59を接続すればよい。この場合、容器5内から分岐管46を経て減圧ポンプ41に至る経路43と、吸入口ケース55からチューブ54,管体52および分岐管46を経て減圧ポンプ41に至る経路が形成され、吸入口ケース55に袋状の別容器を装着すれば、減圧ポンプ41が動作しているときに、鍋5の内部のみならず、外容器の内部を減圧機能付き調理器の本体1により簡単に減圧してパッキングすることができる。
【0046】
また、炊飯や保温が行なわれていない切状態では、ソレノイド40が非通電(オフ)状態にあって、減圧ポンプ41や電磁弁44も動作しておらず、経路43は開放している。ここで吸入口ケース55を利用して、本体1の外部で減圧制御を行ないたい場合には、吸入口キャップ53を動かして凹部58の開口面を開放し、外部に露出した吸引口51にチューブ54の一端を接続して、当該チューブの他端に吸入口ケース55の接続口59を接続する。そして、操作スイッチ62の例えば真空キー(図示せず)を操作すると、電磁弁44ひいては経路43が閉塞し、且つ減圧ポンプ41が動作して、吸入口56から吸入口ケース55,チューブ54,および管体52を順に通して気体が吸い込まれる。したがって、吸入口ケース55に袋状の別容器を装着すれば、その外容器の内部だけを簡単に減圧してパッキングすることができる。
【0047】
なお、前述のように切状態で吸入口ケース55から気体を吸入しているときには、電磁弁44で容器5内から分岐管46に至る経路43を塞いでいるので、蓋体21を開けた状態や、容器5を枠体2内に収納していない状態であっても、吸入口ケース55から効率的に気体を吸い込むことができる。また、炊飯時や保温時、或いは切状態のいずれであっても、操作スイッチ62の例えば切キーを操作すると、減圧ポンプ41の動作が停止し、且つ電磁弁44ひいては経路43が開放するようになっている。
【0048】
以上のように、本実施形態における調理器としての炊飯器は、容器としての鍋5と、当該鍋5を収納する本体1と、本体1内を大気圧未満に減圧する減圧手段としての減圧ポンプ41と、この減圧ポンプ41を駆動させる駆動手段としての加熱制御手段61やポンプ駆動手段74を備えた調理器において、減圧ポンプ41は本体1の内外を開閉自在とする開閉手段としての吸入口キャップ53と連通し、本体1の内部にある鍋5と、本体1の外部にある別容器のどちらでも減圧状態となるように、減圧ポンプ41を駆動可能に構成している。
【0049】
この場合、減圧ポンプ41を駆動することにより、本体1の内部だけでなく、本体1の外部に備えた別容器に対しても、本体1の内外を吸入口キャップ53で開けることで、その別容器を任意に減圧状態とすることが可能になる。そのため、1台の調理器で本体1の内外に対して二つの減圧機能を持たせることができ、収納スペースの問題や、電源供給の煩わしさを解消できる。また、調理直後または調理動作中に、別容器でのパッキングが可能になる。
【0050】
また本実施形態では、減圧ポンプ41と鍋5とを連通する連通手段としての経路43の途中に、分岐手段である分岐管46を設けて、減圧ポンプ41が複数方向に向かうような第2接続部46Bと第3接続部46Cとを分岐管46に設けた構成とし、減圧ポンプ41が向かう少なくとも一方向として、前記第3接続部46Cに連通する吸引口51に、吸入口キャップ53を設けている。
【0051】
この場合、減圧ポンプ41と鍋5とを連通する経路43の途中に分岐管46を設けただけで、同じ減圧ポンプ41で本体1の内部と外部への複数の方向の減圧が可能になり、減圧ポンプ41の共通化を図ることができる。
【0052】
また本実施形態では、鍋5内を閉止する閉止手段として電磁弁44を設け、分岐管46は減圧ポンプ41と電磁弁44との間に配置されている。
【0053】
この場合、炊飯や保温などの調理器の動作中であっても、電磁弁44を動作させることにより、鍋5内を減圧状態に維持しながら、減圧ポンプ41を加熱制御手段61やポンプ駆動手段74により動作させて、本体1外部の別容器を減圧させることが可能になる。
【0054】
さらに本実施形態では、吸入口キャップ53は弾性部材により構成され、当該吸入口キャップ53が吸引口51を閉じる閉時には、本体1の外部への通路である管体52を密閉するように構成している。
【0055】
この場合、吸入口キャップ53の弾性を利用することで、吸入口キャップ53が吸引口51を閉じる閉時には、本体1外部への管体52の先端にある吸引口51を確実に密閉することができる。
【0056】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更可能である。例えば、上記実施形態では吸引口51を蓋体21の側面に設けているが、代わりに枠体2に設けてもよく、さらに複数の外容器を同時に減圧できるように、複数の吸引口51を設けてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 本体
5 鍋(容器)
41 減圧ポンプ(減圧手段)
44 電磁弁(閉止手段)
46 分岐管(分岐手段)
52 管体(通路)
53 吸入口キャップ(開閉手段)
61 加熱制御手段(駆動手段)
74 ポンプ駆動手段(駆動手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、当該容器を収納する本体と、該本体内を大気圧未満にする減圧手段と、前記減圧手段を駆動させる駆動手段とを備えた調理器において、
前記減圧手段は前記本体の内外を開閉自在とする開閉手段と連通し、前記本体の内部と外部のどちらでも減圧状態となるように、前記減圧手段を駆動可能に構成したことを特徴とする調理器。
【請求項2】
前記減圧手段と前記容器とを連通する連通手段の途中に分岐手段を設けて、前記減圧手段が複数方向に向かう構成とし、
前記減圧手段が向かう少なくとも一方向に前記開閉手段が設けられることを特徴とする請求項1記載の調理器。
【請求項3】
前記容器内を閉止する閉止手段を設け、前記分岐手段は前記減圧手段と前記閉止手段との間に配置されることを特徴とする請求項2記載の調理器。
【請求項4】
前記開閉手段は弾性部材により構成され、閉時には前記本体外部への通路を密閉するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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