説明

調理済み青果物の製造方法及び調理済み青果物

【課題】1年中、青果物の旬の旨味と、青果物の保存状態の相違によらず、ばらつきの少ない適度な餅々感とを味わうことができる調理済み青果物の製造方法及び調理済み青果物を提供すること。
【解決手段】生鮮青果物、解凍青果物、脱塩青果物、及び水戻し青果物の少なくともいずれか1つを、微細カット状又はペースト状とする加工工程(ステップS6)と、生鮮青果物、解凍青果物、脱塩青果物、及び水戻し青果物にそれぞれ対応する所定の比率で米粉を混合する混合工程(ステップS7)と、混合工程後の生鮮青果物、解凍青果物、脱塩青果物、及び水戻し青果物の少なくともいずれか1つと米粉との混合物を型に入れて個別の製品形状を有する成形物を作製する成形工程(ステップS8)と、成形物に対して調理を目的とする加熱を行う加熱工程(ステップS9)と、成形物を冷蔵する製品冷蔵工程(ステップS12)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生鮮青果物、冷凍青果物、塩蔵青果物、及び乾燥青果物の少なくともいずれか1つと、米粉とを用いた調理済み青果物の製造方法及びこれを用いて製造した調理済み青果物に関する。
【背景技術】
【0002】
米粉とは、米を粉にしたものであり、例えば上新粉、もち粉、白玉粉、玄米粉などの様々な種類がある。代表的な米粉の加工方法と特徴を挙げると、上新粉は、うるち米を精白し、水洗い、乾燥させてから粉にしたものであり、歯ごたえがよく、団子などの加工に使われる。もち粉は、もち米を水洗いし、乾燥させてから粉にしたものであり、食感が柔らかく、大福、最中などの加工に使われる。白玉粉は、もち米を水洗いして石臼で水ごと粉に挽き、沈殿したものを乾燥させたものであり、白玉の加工に使われる。玄米粉は、精白されていない状態のうるち米やもち米の玄米を粉にしたものである。
【0003】
パンやケーキや麺などを、従来の小麦粉ではなく米粉で作ろうとする試みがあり、米粉の粒子を小麦粉と同等又は同等よりさらに細かい粒子にした米粉がある。このように、米粉を用いることにより、団子や餅状の柔らかくて適度な粘り気のある食感(餅々感)を生み出すことができる。
【0004】
また、下記特許文献1に記載されているように、洗浄し、剥皮し、蒸煮したポテトに、ばれいしょ澱粉を加えて所望の水分量とし、攪拌混合した後、成形して急速冷凍を施すポテト餅が知られている。
【0005】
また、下記特許文献2に記載されているように、採れた野菜をすりつぶして、粘度及び水分を調整してから冷凍するペースト状の野菜が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭59−187760号公報
【特許文献2】特開2004−275139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び2では、生鮮野菜を材料としているため、鮮度が低下しないように、1年のうち野菜の採れる所定の期間に集中して製造する必要がある。そのため、野菜を採ってから鮮度が低下するまでの期間と生鮮野菜を加工する生産能力とにより調理済み野菜製品の生産量が制限されてしまうという問題がある。
【0008】
また、製品に適度な餅々感を出すためには、餅々感を出すための材料(澱粉、米粉など)と、水分との混合量を所定の比率に調整する必要があるため、加工の手間がかかる。また、特許文献1及び2には、材料となる野菜の状況に応じた餅々感を出すための材料の適切な特定の比率などを採用することについては考慮されていない。また、餅々感を出す材料としての澱粉は、多種類あり廉価であるが、旨みが無い。さらに、澱粉は、水で薄めると一定以上で固まらず流れてしまう。一方、米粉は高価で澱粉のように薄めることができないが、旨いという特徴がある。
【0009】
そこで、本発明は、1年中いつでも、青果物の旬の旨味と、青果物の保存状態の相違によらず、ばらつきの少ない適度な餅々感とを味わうことができる調理済み青果物の製造方法及び調理済み青果物を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、微細カット状又はペースト状の青果物に付与する餅々感を、青果物の本来の旨味を失わず、手間をかけずに調整することができる調理済み青果物の製造方法及び調理済み青果物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明に係る調理済み青果物の製造方法は、生鮮青果物、冷凍青果物を解凍した解凍青果物、塩蔵青果物を脱塩した脱塩青果物、及び乾燥青果物を水戻しした水戻し青果物の少なくともいずれか1つを、微細カット状又はペースト状とする加工工程と、生鮮青果物には米粉を5重量%以上35重量%以下の比率で、解凍青果物には米粉を10重量%以上40重量%以下の比率で、脱塩青果物には米粉を15重量%以上45重量%以下の比率で、水戻し青果物には米粉を5重量%以上45重量%以下の比率で混合する混合工程と、混合工程後の生鮮青果物、解凍青果物、脱塩青果物、及び水戻し青果物の少なくともいずれか1つと米粉との混合物から個別の製品形状を有する成形物を作製する成形工程と、成形工程後、成形物に対して調理を目的とする加熱を行う加熱工程と、加熱工程後、成形物を冷蔵する冷蔵工程と、を備える。ここで、青果物とは、野菜(芋類及び豆類を含む)、きのこ、及び果物の総称である。また、個別の製品形状とは、用途に応じてさまざまな外形(例えば、四角形、円形、星形、ボール状など)に形を整えた形状や、耐熱性のある袋やカップ容器に充填し密封して形を整えた形状である。また、冷蔵には、冷凍による保存も含まれる。
【0011】
上記調理済み青果物の製造方法によれば、生鮮青果物に加えて、冷凍青果物や塩蔵青果物や水戻し青果物を原料として用いるため、1年中、青果物の旬の旨味を味わうことが可能となる。また、原料の青果物を、微細カット状又はペースト状とした後に混合する米粉の量を、原料に応じた適切な重量%とすることにより、ばらつきの少ない適度な餅々感のある食感を調理済み青果物に生み出すことができる。また、製品の品数が増え、バラエティ豊かな製品シリーズとして、副食やスナックのみならず、デザートにも製品を展開することができる。
【0012】
本発明の具体的な態様又は観点では、上記調理済み青果物の製造方法において、混合工程において、混合物は、生鮮青果物、解凍青果物、脱塩青果物、及び水戻し青果物の少なくともいずれか2つの組み合わせで構成される。この場合、上記の原料を組み合わせることにより、原料の季節要因や個体差および価格差を考量して製品を製造することができる。また、上記の原料の組み合わせにより単一の原料を用いた場合とは異なる新たな食感と旨味を作り出すことができる。
【0013】
本発明の別の観点では、混合工程において、生鮮青果物、解凍青果物、脱塩青果物、及び水戻し青果物のいずれか1つと、米粉とを、生鮮青果物、解凍青果物、脱塩青果物、及び水戻し青果物のいずれか1つが有する水分で混合する。この場合、青果物と米粉との混合時に、水を一切加えずに、青果物が本来持っている水分のみを用いることとなる。これにより、青果物本来の旨味を薄めることなく、1年中いつでも、青果物の旬の旨味を味わうことができる。また、食前の調理において自由な味付けを楽しむことが可能である。さらに、調味料、添加物も添加されていない場合、健康や病気の改善に配慮した調理をすることができる。
【0014】
本発明のさらに別の観点では、混合工程後であって加熱工程前に、切断した固形の青果物、農産加工品、肉、肉加工品、魚、及び水産加工品の少なくともいずれか1つを混合する。この場合、主原料の青果物の旨味に加えて、切断した青果物の食感や色合え、肉、肉加工品、魚、水産加工品の旨味や風味や食感を付与することができる。
【0015】
本発明のさらに別の観点では、加熱工程は、低温スチームで加熱後、油で揚げる又は油で焼くことを行う。この場合、低温スチーム加工独特の加熱により、調理済み青果物に甘みと旨味を付加することができる。さらに、油で揚げたり焼いたりすることで、餅々感に加えて、調理済み青果物の表面の食感や香ばしさ(例えば、カリカリ感など)を付加することができる。
【0016】
本発明に係る調理済み青果物は、上述の製造方法によって製造される。
【0017】
上記調理済み青果物によれば、生鮮青果物に加えて、冷凍青果物や塩蔵青果物や乾燥青果物を原料として用いるため、1年中、青果物の旬の旨味を有する調理済み青果物となる。また、原料の青果物を、微細カット状又はペースト状とした後に混合する米粉の量を、原料に応じた適切な重量%とすることにより、ばらつきの少ない適度な餅々感のある食感を調理済み青果物に生み出すことができる。また、これにより製品の品数が増え、バラエティ豊かな製品シリーズとして、副食やスナックのみならず、デザートにも製品を展開することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、微細カット状又はペースト状の青果物に付与する餅々感を、青果物本来の旨味を失わず、手間をかけずに調整することができる。また、1年中いつでも、安定した青果物の旬の旨味と、ばらつきの少ない適度な餅々感をもった調理済み青果物を製造することができる。
【0019】
また、青果物と米粉との混合時に、水のみならず調味料、添加物も一切加えないとすれば、野菜本来の旨味を失わず、かつ手間をかけずに調整することができる。そのため、調理済み青果物を調理する際に、個人の好みに応じて調味料などを加えることで様々な味付けが楽しめる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態の調理済み冷凍大根の工程図である。
【図2】第2実施形態の調理済み冷凍大根の工程図である。
【図3】第3実施形態の調理済み冷凍大根の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態である調理済み青果物の製造方法及び調理済み青果物ついて、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下において、%は重量%とする。
【0022】
本実施形態における調理済みの青果物を製造するための基本原料(青果物)として、大根、人参、牛蒡、筍、蓮根、茄子、里芋、じゃがいも、薩摩芋、カボチャ、冬瓜、山芋、長いも、いんげん、玉葱、白菜、キャベツ、セロリ、ラディシュ、ブロッコリー、カリフラワー、長ねぎ、蕪、チンゲンサイ、ターサイ、パクチョイ、椎茸、マッシュルーム、シメジ、エリンギ、舞茸、エノキ筍、木耳、平茸、ふくろ筍、鮑筍、大豆、小豆、そら豆、剥き枝豆、レンズ豆、雛豆、いんげん豆、イチゴ、スイカ、メロン、グリーンピース、スウィーコーン、カリン、ナシ、リンゴ、さくらんぼ、アンズ、梅、ザクロ、スモモ、桃、アケビ、イチジク、柿、キウイフルーツ、グミ、桑、クランベリー、コケモモ、ナツメ、ブドウ、ラズベリー、ブルーベリー、オリーブ、ビワ、ヤマモモ、オレンジ、グレープフルーツ、柚子、ダイダイ、カボス、スダチ、レモン、夏みかん、ハッサク、スウィーティ、イヨカン、ブンタン、みかん、ポンカン、ドリアン、マンゴー、マンゴスチン、アセロラ、アボカド、パイナップル、バナナ、パパイア、グアバ、ライチー、及びココナッツなどが用いられる。なお、上記基本原料は、これらに限定されるものではなく、本実施形態の製造方法が可能なすべての青果物が含まれる。
【0023】
上記基本原料に混合する米粉として、上新粉、もち粉、白玉粉、及び玄米粉のいずれかを使用する。上新粉、もち粉、白玉粉、及び玄米粉は単独で用いてもよいし、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0024】
図1に示すように、本実施形態の調理済み青果物の製造方法は、収穫工程(ステップS1)と、選別・洗浄工程(ステップS2)と、保管量算定工程(ステップS3)と、切断工程(ステップS5)と、加工工程(ステップS6)と、混合工程(ステップS7)と、成形工程(ステップS8)と、加熱工程(ステップS9)と、冷却工程(ステップS10)と、裁断工程(ステップS11)と、製品冷蔵工程(ステップS12)と、包装工程(ステップS13)と、検査工程(ステップS16)とを備える。また、原料冷凍工程(ステップS14)と、解凍工程(ステップS15)と、をさらに備える。
【0025】
調理済み青果物の製造方法のうち、収穫工程(ステップS1)において、基本原料として青果物の野菜、きのこ、果物などを収穫する。
【0026】
収穫工程(ステップS1)後、選別・洗浄工程(ステップS2)において、調理済み青果物の製造工程の前処理として収穫した基本原料の選別と洗浄とを行う。洗浄は、流水中又は換水下で行われる。これにより、基本原料に残留している異物などを除去することができる。
【0027】
選別・洗浄工程(ステップS2)後、保管量算定工程(ステップS3)において、収穫した基本原料の保管量を算定する。保管量の算定は、基本原料の鮮度が低下するまでの期間と基本原料を加工する1日の生産能力との関係により決定する。算定した保管量に基づいて、基本原料の鮮度が低下して無駄にならない量の基本原料を次工程である切断工程(ステップS5)のために生鮮青果物として生鮮状態のまま保管し(ステップS4のN)、残りの量の基本原料を後述する原料冷凍工程(ステップS14)にて冷凍し、切断工程(ステップS5)のために冷凍青果物として冷凍庫に保管する(ステップS4のY)。
【0028】
保管量算定工程(ステップS4)後、切断工程(ステップS5)において、生鮮状態のまま保管(ステップS4のN)された生鮮青果物を所望の大きさに切断する。切断の大きさ及び形状は、原料となる野菜、きのこ、果物などの種類によって異なり、次工程の加工工程(ステップS6)において、微細カット状又はペースト状に加工しやすい大きさ及び形状とする。切断方法は、例えば、切断機を用いてみじん切り、千本切り、乱切りなどに切断する方法がある。
【0029】
なお、冷凍保管(ステップS4のY、ステップS14)された冷凍青果物は、自然解凍、スチーム、水などを用いて解凍して解凍青果物とした後(ステップS15)、切断工程(ステップS5)にて切断する。ここで、解凍青果物の切断の際には、解凍青果物の細胞内の水分をドリップとして流出させてしまわないようにして加工工程(ステップS6)に移行する。解凍青果物の切断の際に、細胞内の水分を流出させないことで食材の旨みを確保することができる。また、サイレントスライサー(冷凍裁断機)を用いれば、切断と解凍とを同時に行うこともできる。サイレントスライサーで切断する際にも、解凍青果物の細胞内の水分をドリップとして流出させてしまわないように確保する。
【0030】
切断工程(ステップS5)後、加工工程(ステップS6)において、切断した基本原料(生鮮青果物及び解凍青果物)を微細カット状又はペースト状に加工する。ここで、微細カット状とは、ペースト状になる前の微細な固形物を有する状態をいう。微細カット状又はペースト状に加工する手段として、例えば切断した基本原料を、おろし金又はチョッパーなどを用いて、基本原料の細胞内の水分と共に微細カット状又はペースト状にする方法がある。
【0031】
加工工程(ステップS6)後、混合工程(ステップS7)において、微細カット状又はペースト状の基本原料と米粉とを混合する。混合手段として、フードミキサーなどを用いる。具体的には、混合工程において、微細カット状又はペースト状とした生鮮青果物に対し、米粉を5%〜35%(好ましくは、15%〜20%)加えて、フードミキサーなどを用いて、均一な混合状態となるまで攪拌する。ただし、攪拌をしすぎると粘りが出て餅状となり、基本原料の歯ざわりが大幅に失われてしまうので、粘りが出始める前に混合工程を終了することが好ましい。
【0032】
また、微細カット状又はペースト状とした解凍青果物に対しては、生鮮青果物の場合に比べて、混合する米粉の量を5%程度増量する。つまり、解凍青果物に対し、米粉を10%〜40%(好ましくは、20%〜25%)加えて、フードミキサーなどを用いて、均一な混合状態となるまで攪拌する。なお、上述と同様に、粘りが出始める前に混合工程を終了することが好ましい。ここで、米粉の量を増量するのは、冷凍青果物を解凍後、離水が生じて解凍青果物から自由水が流出すると実質上混合時の水分が増えて、生鮮青果物の場合と同量の米粉を混合しても、生鮮青果物の場合と同様の餅々感を生み出すことができないためである。よって、上述のように、解凍青果物では、生鮮青果物の場合よりも米粉の量を5%程度増量することにより、自由水が流出しても生鮮青果物の場合と同様の餅々感を生み出すことができる。
【0033】
以上において、米粉の配合量が少ないと、粘着性が低く、微細カット状又はペースト状の基本原料と米粉とを混合した状態で成形することが困難となる。また、米粉の配合量が多いと基本原料の味が薄くなることや、米粉に含まれる澱粉の冷凍変性などにより、基本原料本来の旨味を味わうことが困難となる。以上のことから、微細カット状又はペースト状とした生鮮青果物に対し、米粉を5%〜35%(好ましくは、15%〜20%)とし、微細カット状又はペースト状とした冷凍青果物に対しては、米粉を10%〜40%(好ましくは、20%〜25%)とすることが好ましい。
【0034】
米粉は、上新粉、もち粉、白玉粉、及び玄米粉を単独又は組み合わせて使用することにより、多様に食感をコントロールすることができる。例えば、上新粉又はうるち米の玄米粉を単独で基本原料に混合すると、加える比率を多くするほど板餅と同じような味と食感を強めることができる。もち粉又はもち米の玄米粉を単独で基本原料に混合すると、大福の生地のような柔らかさと粘りの食感を強めることができる。白玉粉を単独で基本原料に混合すると、もち粉よりもさらに柔らかさと粘りの食感を強めることができる。
【0035】
なお、混合工程(ステップS7)において、米粉の他には水のみならず調味料、添加物も一切加えず、微細カット状又はペースト状にした基本原料に含まれていた細胞内の水分のみで攪拌する。また、水分が多過ぎる場合には、ネットなどを用いて液切りする。したがって、水の混合量を所定の比率に調整する必要もなく、加工の手間がかからない。水分を加えなくてもよいのは、基本原料に調味料や添加物を浸透させる必要がないためである。具体的に説明すると、一般的には、基本原料に調味料や添加物を均一に浸透させるために水分を加えているが、調理済み青果物では、製品を解凍して食前に調理する際に、個人の好みに応じて調味料、添加物などを加えることで様々な味付けをするために、水分を加える必要がない。ただし、調理済み青果物に予め味を付加しておきたい場合には、適量の調味料、添加物を加えてもよい。また、芋類やきのこなどの餅々感を出すには水分が足りない青果物については、適量の水分、調味料、添加物を加えてもよい。
【0036】
また、微細カット状又はペースト状にした基本原料と米粉とを混合した混合物に対し、切断した青果物、例えば、野菜、きのこ、果物などの千切などを加えることで色合いと食感を付加できる。さらに、肉製品、魚製品を単独又は複合で混合する。例えば、干海老を混合することにより色和えと食感と旨味とを付加できる。このように、基本原料の旨味に加えて、切断した固形の青果物の食感、肉製品、魚製品の風味や色和えを付与することができる。
【0037】
混合工程(ステップS7)後、成形工程(ステップS8)において、ペースト状にした基本原料と米粉とを混合した混合物から成形物を作製する。成形物の作製手段として、さまざまな外形(四角形、円形、星形など)及び深さの型に流し込み、形を整える方法がある。また、ボール成形機によりボール状に形を整える方法がある。また、耐熱性のある袋やカップ容器に充填し密封して形を整える方法がある。また、型等を用いずに成形してもよい。
【0038】
成形工程(ステップS8)後、加熱工程(ステップS9)において、熱処理によって成形物の加熱を行う。これにより、成形物の調理及び殺菌がなされる。加熱工程において、成形物を、飽和水蒸気による低温スチームで45分〜60分の間、約35℃〜99℃(好ましくは90℃)にて低温スチームをする。低温スチーミング機器は、蒸しを行う室内(容器)の任意の設定温度に対し、注入水蒸気を室内の熱消費量に相当する量にコントロールすることにより、約35℃〜99℃の温度を得ることができる。
【0039】
ここで、いわゆるスチームコンベクションのような不飽和水蒸気空間では当初あった空気もそのままに熱し攪拌するので、空気温度は上がり水分を奪う現象が生じ、しかもその高温空気が食材を強制的に酸化させ、特有の臭いがついてしまい、調理レベルが限られたものになる。翻って、飽和水蒸気による低温スチームは、食材の酸化を最小限に抑え、栄養価やうまみ成分を閉じ込めることができる。
【0040】
なお、耐熱性のある袋やカップ容器に充填し密封した混合物は、ボイルによる加熱や加圧加熱のレトルト調理(殺菌)を行うこともできる。
【0041】
必要に応じて、低温スチームの後、油調する(油で揚げる、又は油で焼く)こともできる。油で揚げる場合は、例えば、まず140℃の油調用油で揚げることで形を整え、次に170℃で揚げて油調を完了させる2度揚げが好ましい。この油調により、成形物の表面に、カリカリ感を有する食感を加えることができる。
【0042】
また、加熱工程は、低温スチームの後に油調(油で揚げる、油で焼く)を施すのみならず、低温スチーム(蒸す)、お湯でボイル(茹でる)、油で揚げる、油で焼くなどの加工を単独で施したり、蒸す、茹でるといった加熱調理の後に、油で揚げる、油で焼くなどの油調加工を組み合わせたりすることにより、成形物の表面及び内部の食感を様々に変化させることができる。
【0043】
加熱工程(ステップS9)後、冷却工程(ステップS10)において、加熱調理された成形物を、自然放冷にて常温以下にまで下げる。
【0044】
冷却工程(ステップS10)後、裁断工程(ステップS11)において、成形物を必要に応じて適切な大きさ及び形状(例えば、約4cm×5cm×1cmのサイズ)に裁断する。なお、裁断しなくてもよい成形物は、裁断工程を行わず、そのまま次工程の製品冷蔵工程(ステップS12)を行ってもよい。
【0045】
裁断工程(ステップS11)後、製品冷蔵工程(ステップS12)において、裁断した成形物(調理済み青果物)を冷凍する。製品冷蔵工程は急速冷凍であることが好ましい。
【0046】
製品冷蔵工程(ステップS12)後、包装工程(ステップS13)において、冷凍した成形物(調理済み青果物)を、ビニール袋に充填し、箱に梱包して冷凍庫に保管する。
【0047】
包装工程(ステップS13)後、検査工程(ステップS16)において、包装内の内外を検査する。検査工程は、第1検査と第2検査とを行う。第1検査は、製品の重量、製品内の異物、包装袋のピンホールなどを目視検査する。第2検査は、製品内の金属検査を行う。
【0048】
検査工程(ステップS16)後、製品は検品、ラベル貼り、箱詰めなどを経て出荷される(ステップS17)。
【0049】
以上説明した調理済み青果物の製造方法によれば、生鮮青果物に加えて、冷凍青果物を原料として用いるため、1年中、青果物の旬の旨味を味わうことができる。また、基本原料の青果物を微細カット状又はペースト状とした後に混合する米粉の量を、生鮮青果物や解凍青果物に応じた適切な重量%とすることにより、ばらつきの少ない適度な餅々感のある食感を調理済み青果物に生み出すことができる。また、これにより製品の品数が増え、バラエティ豊かな製品シリーズとして、副食やスナックのみならず、デザートにも製品を展開することができる。
【実施例1】
【0050】
以下、本実施形態の具体例である生鮮状態の大根(生鮮大根)と冷凍状態の大根(冷凍大根)とを原料とした調理済み冷凍大根の製造方法について説明する。
【0051】
調理済み冷凍大根の原料として、基本原料となる青果物の大根と、米粉とを用いる。
まず、図1に示すように、大根を収穫最盛期に収穫する(ステップS1)。次に、収穫した大根を選別及び洗浄する(ステップS2)。その後、収穫した大根の保管量を算定する(ステップS3)。鮮度が低下するまでの期間と生鮮大根を加工する1日の生産能力との関係より、鮮度が低下して無駄にならない量を生鮮大根として生鮮状態のまま保管し(ステップS4のN)、残りの量の大根を原料冷凍工程(ステップS14)にて冷凍し、冷凍大根として冷凍庫に保管する(ステップS4のY)。
【0052】
次に、冷凍しない生鮮大根は、切断工程にて適当な大きさ及び形状に切断する(ステップS5)。冷凍大根は、解凍(ステップS15)して解凍大根とした後に、切断工程にて切断する(ステップS5)。切断後、大根をおろし金又はチョッパーなどによって大根の細胞内の水分と共にペースト状にする。
【0053】
次に、ペースト状とした生鮮大根に対し、米粉を5%〜35%(好ましくは、15%〜20%)加え、フードミキサーなどを用いて、均一な混合状態となるまで攪拌する(ステップS7)。ペースト状とした解凍大根に対しては、生鮮大根に比べて混合する米粉の量を5%程度増量し、米粉を10%〜40%(好ましくは、20%〜25%)加え、フードミキサーなどを用いて、均一な混合状態となるまで攪拌する(ステップS7)。
【0054】
次に、ペースト状にした大根と米粉とを混合した混合物を、さまざまな外形(四角形、円形、星形など)及び深さの型に流し込み、形を整えて成形物を作製する(ステップS8)。或いは、ボール成形機によりボール状に形を整えたり、耐熱性のある袋やカップ容器に充填し密封したりする。
【0055】
次に、成形物を飽和水蒸気による低温スチームで加熱調理する(ステップS9)。加熱条件は、加熱時間が45分〜60分であり、加熱温度が約35℃〜99℃(好ましくは90℃)である。
【0056】
次に、加熱調理された成形物は熱い状態であるので、粗熱をとる(ステップS10)。成形物は、自然放冷にて常温以下にまで下げた後、必要に応じて適切な大きさ(例えば、約4cm×5cm×1cmのサイズ)に切断し、製品冷蔵工程(ステップS12)を通過させて冷凍する。
【0057】
その後、冷凍した成形物(調理済み冷凍大根)をビニール袋に充填する(ステップS13)。次に、第1検査において、目視検査を行い、第2検査において、金属検査を行う(ステップS16)。検査後、完成した製品は、検品、ラベル貼り、箱詰めされ冷凍庫に保管され順次出荷される(ステップS17)。
【実施例2】
【0058】
以下、本実施形態の具体例である生鮮状態のバナナ(生鮮バナナ)と冷凍状態のバナナ(冷凍バナナ)とを原料とした調理済み冷凍バナナの製造方法について説明する。なお、実施例1と同様の部分は説明を省略する。
【0059】
調理済み冷凍バナナの原料として、基本原料となる青果物のバナナと、米粉とを用いる。
収穫工程(ステップS1)と、選別・洗浄工程(ステップS2)と、保管量算定工程(ステップS3)と、生鮮バナナの皮を剥き、切断工程(ステップS5)の後、チョッパーなどを用いてペースト状にする(ステップS6)。冷凍保管する冷凍バナナは、皮を剥き、原料冷凍工程(ステップS14)、解凍工程(ステップS15)、切断工程(ステップS5)を行う。これにより、冷凍バナナは解凍バナナとなる。
【0060】
次に、ペースト状とした生鮮バナナに対し、米粉を10%〜25%(好ましくは、10%〜15%)加え、フードミキサーなどを用いて、均一な混合状態となるまで攪拌する。ペースト状とした解凍バナナに対しては、生鮮バナナに比べて混合する米粉の量を5%程度増量し、米粉を10%〜30%(好ましくは、15%〜20%)加え、フードミキサーなどを用いて、均一な混合状態となるまで攪拌する(ステップS7)。
【0061】
その後、成形工程(ステップS8)と、加熱工程(ステップS9)と、冷却工程(ステップS10)と、裁断工程(ステップS11)と、製品冷蔵工程(ステップS12)と、包装工程(ステップS13)と、検査工程(ステップS16)とを行う。
【0062】
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態に係る調理済み青果物の製造方法及び調理済み青果物について説明する。なお、第2実施形態に係る調理済み青果物の製造方法及び調理済み青果物は、第1実施形態を変形したものであり、特に説明しない部分については、第1実施形態と同様であるものとする。
【0063】
本実施形態において、図2に示すように、保管量算定工程(ステップS3)後、生鮮状態のまま保管しない(ステップS24のY)基本原料は、塩蔵工程(ステップS25)を行う。
【0064】
塩蔵工程(ステップS25)において、青果物を塩蔵すなわち塩漬けして塩蔵青果物として保存する。塩蔵の際には、漬け方、塩の添加量、漬け込み期間(貯蔵期間)、温度などの管理が重要となる。これらの適切な塩蔵管理により、腐敗菌の増殖防止、変色防止、食感維持を可能とする。青果物の品質、価格、安全性を一定にするために、露地栽培における最盛期の野菜や施設園芸におけるきのこなどを収穫し、病害虫を含む異物を除去し、収穫直後の鮮度のよい状態で塩漬けする。青果物の漬け方として、例えば食塩を添加してそのまま貯蔵する方法や、荒漬け(下漬け)の段階で青果物の水分を除去し、2度漬け(本漬け)の段階で保存期間に応じた塩分濃度に仕上げて貯蔵する方法がある。青果物を漬け込む際の塩の添加量は、青果物の種類、水分、漬け込み時期の気温、貯蔵期間、漬け込みタンクの状況などによって異なる。例えば、貯蔵期間が1〜2カ月であれば、原料に対して6%〜8%、半年以上であれば、原料に対して15%以上の食塩が添加される。食塩は、主にNaClの純度が高いものが用いられるが、KCl、CaCl、MgClなどの割合が多いものを用いてもよい。ここで、pH調整のため、2度漬けの際に食塩とともにクエン酸などを添加してもよい。また、青果物の軟化防止のため、例えばCaSOなどのCa化合物を添加してもよい。また、さらに貯蔵途中で食塩水の差し水をしたり、追い塩をしたりしてもよい。これらの中でも、本実施形態の調理済み青果物の製造方法では、長期保存に適した塩蔵青果物を用いるため、下漬け及び本漬けの段階を経て塩蔵することが好ましい。具体的には、通常、半年から1年間以上の長期保存を目的としており、塩分濃度を15%以上として保存する。
【0065】
塩蔵工程(ステップS25)後、脱塩工程(ステップS26)において、塩蔵青果物を脱塩する。これにより、塩蔵青果物は脱塩青果物となる。脱塩手段として、脱塩槽内に塩蔵青果物を入れ、水中に気泡を発生させて塩抜きする方法、流水や換水のもとで水に浸した状態で塩抜きする方法、水槽中で撹拌して塩抜きする方法、流水や換水のもとで撹拌して塩抜きする方法、及びイオン交換樹脂などを用いて塩抜きする方法などがある。本実施形態では、操作が簡単であることから塩蔵青果物を収容した脱塩槽を流水や換水のもとで撹拌する方法を用いる。この脱塩工程(ステップS26)では、例えば塩蔵青果物800kg〜1200kgに対して水2000kgを使用する。また、脱塩時間は、例えば20分〜1時間である。塩蔵青果物を脱塩した後の脱塩青果物の塩分濃度は、約0%〜0.3%となっている。なお、脱塩工程(ステップS26)は、上述のように切断工程(ステップS5)の前後に2段階に分けて行うこともできる。具体的には、切断工程(ステップS5)前に塩蔵青果物をホールのまま脱塩する第1脱塩工程と、第1脱塩工程を経た塩蔵青果物を切断工程(ステップS5)後に脱塩し、脱塩青果物を作製する第2脱塩工程とに分けて行う。これにより、塩分を完全に除去できる。
【0066】
脱塩工程(ステップS26)後、脱水工程(ステップS27)において、塩抜きした脱塩青果物を脱水する。切断工程(ステップS5)の前後に脱塩を行った場合、第2脱塩工程後に脱水工程を行う。脱水方法は、青果物の種類によって異なる。脱水は、例えば圧搾機や遠心分離機を用いて行う。ある程度圧力をかけても形が崩れない原料では、圧搾機を用いて圧搾を行う。一方、形の崩れやすい原料では、浅い脱水を行う必要があり、この場合、ろ過や遠心分離機が用いられる。脱水量は、原料の性質によって異なり、原料の15%〜80%となる。なお、青果物によっては、脱水せずに次工程に移行できるものもあるが、脱水工程後の脱塩青果物が基本原料として用いられることが望ましい。
【0067】
脱水工程(ステップS27)後、切断工程(ステップS5)を行う。切断の際には、基本原料となる脱塩青果物の細胞内の水分をドリップとして流出させてしまわないようにして加工工程(ステップS6)に移行する。細胞内の水分を流出させないことで食材の旨みを確保することができる。
【0068】
本実施形態の加工工程(ステップS6)において、微細カット状又はペースト状とした脱塩青果物に対しては、生鮮青果物に比べて混合する米粉の量を10%程度増量し、米粉を15%〜45%(好ましくは、25%〜30%)加えて、フードミキサーなどを用いて、均一な混合状態となるまで攪拌する。なお、粘りが出始める前に混合工程を終了するのが好ましい。ここで、米粉の量を増量するのは、塩蔵青果物を脱塩後、解凍青果物の場合よりもさらに多くの離水が生じて脱塩青果物から自由水が流出するため、解凍青果物と同様に、生鮮青果物の場合と同量の米粉を混合しても、生鮮青果物の場合と同様の餅々感を生み出すことができないためである。よって、上述のように、脱塩青果物では、生鮮青果物の場合よりも米粉の量を10%程度増量することにより、自由水が流出しても生鮮青果物の場合と同様の餅々感を生み出すことができる。
【実施例3】
【0069】
以下、本実施形態の具体例である生鮮状態の大根(生鮮大根)と塩蔵状態の大根(塩蔵大根)とを原料とした調理済み冷凍大根の製造方法について説明する。なお、実施例1と同様の部分は説明を省略する。
【0070】
図2に示すように、収穫工程(ステップS1)及び選別・洗浄工程(ステップS2)後、収穫した大根の保管量を算定する(ステップS3)。鮮度が低下するまでの期間と生鮮大根を加工する1日の生産能力との関係より、鮮度が低下して無駄にならない量を生鮮大根として生鮮状態のまま保管し(ステップS24のN)、残りの量の大根を塩蔵工程(ステップS25)にて塩蔵し、塩蔵大根として保管する(ステップS24のY)。
【0071】
塩蔵しない生鮮大根は、切断工程にて適当な大きさ及び形状に切断する(ステップS5)。塩蔵大根は、ホール(原料丸のまま)の状態で流水で洗浄及び脱塩(ステップS26)して脱塩大根とした後に切断する(ステップS5)。なお、1回目の脱塩及び切断後、さらに流水で攪拌し2回目の脱塩をしてもよい。脱塩後の脱塩大根の塩分濃度は、0%〜0.3%になっている。脱塩後、脱塩大根を脱水槽に移す。さらに、圧搾機により脱塩大根を圧搾する(ステップS27)。脱水後、脱塩大根の脱水量は、約30%となっている。
【0072】
次に、切断した大根を、おろし金又はチョッパーなどを用いて、大根の細胞内の水分と共にペースト状にする(ステップS6)。
【0073】
次に、ペースト状とした生鮮大根に対し、米粉を5%〜35%(好ましくは、15%〜20%)加え、フードミキサーなどを用いて、均一な混合状態となるまで攪拌する(ステップS7)。ペースト状とした脱塩大根に対しては、生鮮大根に比べて混合する米粉の量を10%程度増量し、米粉を15%〜45%(好ましくは、25%〜30%)加え、フードミキサーなどを用いて、均一な混合状態となるまで攪拌する(ステップS7)。
【0074】
その後、成形工程(ステップS8)と、加熱工程(ステップS9)と、冷却工程(ステップS10)と、裁断工程(ステップS11)と、製品冷蔵工程(ステップS12)と、包装工程(ステップS13)と、検査工程(ステップS16)とを行う。
【0075】
〔第3実施形態〕
以下、第3実施形態に係る調理済み青果物の製造方法及び調理済み青果物について説明する。なお、第3実施形態に係る調理済み青果物の製造方法及び調理済み青果物は、第1実施形態を変形したものであり、特に説明しない部分については、第1実施形態と同様であるものとする。
【0076】
本実施形態において、図3に示すように、保管量算定工程(ステップS3)後、生鮮状態のまま保管しない(ステップS34のY)基本原料は、乾燥工程(ステップS35)を行う。
【0077】
乾燥工程(ステップS35)において、青果物を乾燥して乾燥青果物として保存する。乾燥手段として、天日で自然乾燥させる方法、熱風乾燥機を用いて乾燥させる方法、遠赤外線を照射して乾燥させる方法などがある。乾燥の際の温度や時間の条件は、青果物によって異なり、乾燥工程後の乾燥青果物の水分量は、10%〜15%となるようにする。なお、乾燥しにくい青果物の場合、切断工程(ステップS5)を先に行ってから乾燥工程(ステップS35)を行ってもよい。
【0078】
乾燥工程(ステップS35)後、水戻し工程(ステップS36)において、乾燥青果物を水戻しする。これにより、乾燥青果物は水戻し青果物となる。水戻し手段として、水槽内に乾燥青果物を入れ静置して水戻しする方法、流水や換水のもとで水に浸した状態で水戻しする方法、水槽中で撹拌して水戻しする方法、及び流水や換水のもとで撹拌して水戻しする方法などがある。本実施形態では、操作が簡単であることから乾燥青果物を収容した水槽を静置して水戻しする方法を用いる。水戻し工程(ステップS36)は、乾燥青果物が水分を含んで柔らかくなる程度まで行う。例えば乾燥青果物1kgに対して水10kgを使用する。また、水戻し時間は、例えば30分〜14時間である。
【0079】
水戻し工程(ステップS36)後、脱水工程(ステップS37)において、水戻しした水戻し青果物を脱水する。脱水方法は、脱塩青果物の場合と同様であるため、説明を省略する。
【0080】
脱水工程(ステップS37)後、切断工程(ステップS5)を行う。切断の際には、基本原料となる水戻し青果物の細胞内の水分をドリップとして流出させてしまわないようにして加工工程(ステップS6)に移行する。細胞内の水分を流出させないことで食材の旨みを確保することができる。
【0081】
本実施形態の加工工程(ステップS6)において、微細カット状又はペースト状とした水戻し青果物に対しては、生鮮青果物の場合に比べて混合する米粉の量を最大10%程度増量し、米粉を5%〜45%(好ましくは、15%〜30%)加えて、フードミキサーなどを用いて、均一な混合状態となるまで攪拌する。なお、粘りが出始める前に混合工程を終了するのが好ましい。ここで、米粉の量を増量するのは、乾燥青果物を水戻しした後、離水が生じて水戻し青果物から自由水が流出する場合があり、生鮮青果物の場合と同量の米粉を混合しても、生鮮青果物の場合と同様の餅々感を生み出すことができないためである。よって、上述のように、水戻し青果物では、生鮮青果物の場合よりも米粉の量を最大10%程度増量することにより、自由水が流出しても生鮮青果物の場合と同様の餅々感を生み出すことができる。
【実施例4】
【0082】
以下、本実施形態の具体例である生鮮状態の大根(生鮮大根)と乾燥状態の大根(乾燥大根)とを原料とした調理済み冷凍大根の製造方法について説明する。なお、実施例1と同様の部分は説明を省略する。
【0083】
図3に示すように、収穫工程(ステップS1)及び選別・洗浄工程(ステップS2)後、収穫した大根の保管量を算定する(ステップS3)。鮮度が低下するまでの期間と生鮮大根を加工する1日の生産能力との関係より、鮮度が低下して無駄にならない量を生鮮大根として生鮮状態のまま保管し(ステップS34のN)、残りの量の大根を乾燥工程(ステップS35)にて乾燥し、乾燥大根として保管する(ステップS34のY)。
【0084】
乾燥しない生鮮大根は、切断工程にて適当な大きさ及び形状に切断する(ステップS5)。乾燥大根は、水戻し(ステップS36)して水戻し大根とした後に切断する(ステップS5)。水戻し後、水戻し大根を脱水槽に移す。さらに、圧搾機により水戻し大根を圧搾する(ステップS37)。脱水後、水戻し大根の脱水量は、約30%となっている。
【0085】
次に、切断した大根を、おろし金又はチョッパーなどを用いて、大根の細胞内の水分と共にペースト状にする(ステップS6)。
【0086】
次に、ペースト状とした生鮮大根に対し、米粉を5%〜35%(好ましくは、15%〜20%)加え、フードミキサーなどを用いて、均一な混合状態となるまで攪拌する(ステップS7)。ペースト状とした水戻し大根に対しては、生鮮大根に比べて混合する米粉の量を最大10%程度増量し、米粉を5%〜45%(好ましくは、15%〜30%)加え、フードミキサーなどを用いて、均一な混合状態となるまで攪拌する(ステップS7)。
【0087】
その後、成形工程(ステップS8)と、加熱工程(ステップS9)と、冷却工程(ステップS10)と、裁断工程(ステップS11)と、製品冷蔵工程(ステップS12)と、包装工程(ステップS13)と、検査工程(ステップS16)とを行う。
【0088】
以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、混合工程(ステップS7)において、追加原料として固形の青果物、肉、及び魚は、生鮮状態のものに限らず、冷凍、塩蔵、又は乾燥したものを用いてもよい。なお、塩蔵した追加原料は、ほとんど塩分がない状態に脱塩して用いる。
【0089】
また、上記実施形態において、製品冷蔵工程(ステップS12)の際に成形物(調理済み青果物)を冷凍したが、冷蔵してもよい。この場合、調理済み青果物は、裁断工程(ステップS11)において適切な大きさに成形物を裁断した後、冷凍せずに、ビニール袋に充填し真空パックし加熱殺菌後、冷蔵庫内で冷蔵保存する。また、耐熱性の袋やカップ容器に充填しレトルト殺菌した調理済み青果物は、常温で保管および流通することもできる。この際、脱気及び封止は、例えばシール機を用いて行う。
【0090】
また、上記実施形態において、生鮮青果物、解凍青果物、脱塩青果物、及び水戻し青果物は、単独で用いてもよい。また、生鮮青果物、解凍青果物、脱塩青果物、及び水戻し青果物の組み合わせは、上述のものに限らず、用途に応じて自由に組み合わせることができる。また、組み合わせる種類も2つに限らず、3つ以上でもよい。
【符号の説明】
【0091】
S1…収穫工程、 S2…選別・洗浄工程、 S3…保管量算定工程、 S5…切断工程、 S6…加工工程、 S7…混合工程、 S8…成形工程、 S9…加熱工程、 S10…冷却工程、 S11…裁断工程、 S12…製品冷蔵工程、 S13…包装工程、 S16…検査工程、 S14…原料冷凍工程、 S15…解凍工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生鮮青果物、冷凍青果物を解凍した解凍青果物、塩蔵青果物を脱塩した脱塩青果物、及び乾燥青果物を水戻しした水戻し青果物の少なくともいずれか1つを、微細カット状又はペースト状とする加工工程と、
前記生鮮青果物には米粉を5重量%以上35重量%以下の比率で、前記解凍青果物には米粉を10重量%以上40重量%以下の比率で、前記脱塩青果物には米粉を15重量%以上45重量%以下の比率で、前記水戻し青果物には米粉を5重量%以上45重量%以下の比率で混合する混合工程と、
前記混合工程後の前記生鮮青果物、前記解凍青果物、前記脱塩青果物、及び前記水戻し青果物の少なくともいずれか1つと前記米粉との混合物から個別の製品形状を有する成形物を作製する成形工程と、
前記成形工程後、前記成形物に対して調理を目的とする加熱を行う加熱工程と、
加熱工程後、前記成形物を冷蔵する冷蔵工程と、
を備えることを特徴とする調理済み青果物の製造方法。
【請求項2】
前記混合工程において、前記混合物は、前記生鮮青果物、前記解凍青果物、前記脱塩青果物、及び前記水戻し青果物の少なくともいずれか2つの組み合わせで構成されることを特徴とする請求項1に記載の調理済み青果物の製造方法。
【請求項3】
前記混合工程において、前記生鮮青果物、前記解凍青果物、前記脱塩青果物、及び前記水戻し青果物の少なくともいずれか1つと、前記米粉とを、前記生鮮青果物、前記解凍青果物、前記脱塩青果物、及び前記水戻し青果物のいずれか1つが有する水分で混合することを特徴とする請求項1及び請求項2のいずれか一項に記載の調理済み青果物の製造方法。
【請求項4】
前記混合工程後であって前記加熱工程前に、切断した固形の青果物、農産加工品、肉、肉加工品、魚、及び水産加工品の少なくともいずれか1つを混合することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の調理済み青果物の製造方法。
【請求項5】
前記加熱工程は、低温スチームで加熱後、油で揚げる又は油で焼くことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の調理済み青果物の製造方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の製造方法によって製造された調理済み青果物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−120508(P2012−120508A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275750(P2010−275750)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【特許番号】特許第4918157号(P4918157)
【特許公報発行日】平成24年4月18日(2012.4.18)
【出願人】(505408114)株式会社勝美ジャパン (6)
【Fターム(参考)】