説明

調理用秤、及び、調理用秤における発音源制御方法

【課題】 人体に影響する恐れが無く且つ大幅な製造費の上昇を生じることなく、害虫又は害獣を寄せ付けない調理用秤を提供する。
【解決手段】 本調理用秤は、作動についての報知を行うために可聴域音を発するブザー回路50を備えている。マイクロプロセッサ21は、ブザー回路50に、害虫又は害獣が忌避する周波数である忌避周波数の超音波を発せさせるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、秤に係り、特に、作動についての報知を行うために可聴域音を発する発音源を備えた秤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から知られた秤で、その本体内側等への害虫の侵入を防止するものとして、害虫忌避剤を用いる害虫忌避電子天秤(特許文献1参照)や、接続コネクタにコネクタカバーを設けて本体内側を密閉する構造とした電子料金秤(特許文献2参照)が挙げられる。
【0003】
【特許文献1】特開平09−189597号公報(段落0005、図1等)
【特許文献2】実開平05−43033号公報(段落0010、0013、図1等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の害虫忌避電子天秤によると、害虫忌避剤が人体に影響する恐れがあるため、調理用として好ましくない。特許文献2に記載の電子料金秤では、その密閉構造によって、製造工程が複雑なものとなり、コストアップがもたらされる恐れがある。
【0005】
本発明の目的は、上記課題を解決できる調理用秤、及び、調理用秤における発音源制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る調理用秤は、作動についての報知を行うために可聴域音を発する発音源を備えている。本調理用秤は、その発音源に、害虫又は害獣が忌避する周波数である忌避周波数の超音波を発せさせる発音源制御手段を備えたことを特徴としている。
請求項2に係る調理用秤は、請求項1に係る調理用秤において、上記発音源制御手段及び上記発音源は、次のようになっていることを特徴とする。即ち、発音源制御手段は、忌避周波数、及び、可聴域音に対応する周波数である可聴域周波数のいずれかの周波数を設定し、発音源は、この発音源制御手段により設定された周波数の音を発する。
請求項3に係る調理用秤は、請求項1又は請求項2に係る調理用秤において、モード指示手段を備え、発音源制御手段が次のように構成されていることを特徴とする。モード指示手段は、操作者が忌避モードの設定を指示するためにその指示を入力可能になっている。発音源制御手段は、モード指示手段により忌避モードが設定されている場合に、上記発音源に、忌避周波数の超音波を発せさせるようになっている。
請求項4に係る調理用秤は、請求項3に係る調理用秤において、発音源制御手段が次のように構成されていることを特徴とする。即ち、この発音源制御手段は、上記モード指示手段により忌避モードが設定された場合、その忌避モードの設定の指示から所定時間が経過した後に、上記発音源に、忌避周波数の超音波を発せさせる。
請求項5に係る調理用秤は、請求項3又は請求項4に係る調理用秤において、報知手段を備えたことを特徴とする。この報知手段は、モード指示手段により忌避モードが設定されている場合に、忌避モードが設定されている旨を報知するようになっている。
請求項6に係る調理用秤は、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に係る調理用秤であって、ACアダプタ及び電池のいずれかから、電源の供給を受けるようになっているものにおいて、上記発音源制御手段が次のようになっていることを特徴とする。即ち、発音源制御手段は、本調理用秤がACアダプタから電源の供給を受けている場合に、上記発音源に、忌避周波数の超音波を発せさせる。
請求項7に係る、調理用秤における発音源制御方法は、作動についての報知を行うために可聴域音を発する発音源を備えた調理用秤におけるものである。本発音源制御方法は、上記発音源に、害虫又は害獣が忌避する周波数である忌避周波数の超音波を発せさせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本調理用秤では、超音波を発することによって、害虫及び害獣が、この調理用秤に寄り付かないようにしている。超音波は人に聞こえないから、人体への影響はない。さらに、この超音波は、作動についての報知を行うための通常用いられている発音源から発せられるので、大幅な製造費の上昇を生じない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(最良の実施の形態)
以下、本発明を実施するための最良の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
本発明に係る調理用秤の全体構成の概略につき先ず説明する。図1に示すように、この調理用秤は、計量皿11、計量部12、制御部20、液晶表示部30、操作部40及びブザー回路50を有する。例えば小麦粉や肉などの食料品が計量皿11の上に載せられる。計量部12は、周知のロードセルを用いたものである。このロードセルでは、例えば、4つの歪みゲージが、計量皿11を支える支持棒の異なる位置に接着され、これら4つの歪みゲージが、ホイートストンブリッジ回路を構成するようになっている。
【0009】
制御部20は、全体の動作を制御するものであって、上記計量部12のホイートストンブリッジ回路における電圧の変化により、計量皿11上の食料品の重さを計量することができる。より詳細に、制御部20は、マイクロプロセッサ21、RAM22、ROM23、増幅器24、A/D変換器25などからなる。
【0010】
マイクロプロセッサ21は、電源オンキーが押されて本調理用秤が起動した後に、所定の重さ計量プログラムをROM22からRAM23上へと読み出し、この重さ計量プログラムを実行するようになっている。増幅器24は、計量部21で生成された、計量値を表す電圧信号を増幅し、A/D変換器25は、この増幅されたアナログの電圧信号を、マイクロプロセッサ21での処理が可能となるように、デジタル信号へと変換するようになっている。
【0011】
さらに、液晶表示部30は、マイクロプロセッサ21での演算により得られた計量結果等を表示するようになっている。操作部40は、操作者がこの調理用秤の電源をオンするための電源オンキー、その電源をオフするための電源オフキー、数値を入力するためのテンキー及び入力を確定するための確定キーを含んでいる。加えて、操作部40は、入力した数値等をクリアするためのクリアキー、及び、操作者が通常モード及び忌避モードのいずれかを選択的に指示するためのモード指示キーなどを含んでいる。モード指示キーに代えて、通常モード及び忌避モードのいずれかの選択を切り換えるモード選択スイッチを設けてもよい。
【0012】
次にいう通常モード及び忌避モードのいずれが設定されているかを示すモード選択データは、RAM23上に保持されていて、このモード選択データに基づいて、マイクロプロセッサ21が、ブザー回路50で発せられる音の周波数を指定するようになっている。
【0013】
即ち、その通常モードでは、可聴域音に対応する周波数(以下、可聴域周波数という)が設定される。ここでいう可聴域周波数は、例えば2kHz〜4kHzの範囲のいずれかの周波数であり、その可聴域音によって、調理用秤の作動についての報知が行われる。
【0014】
この作動についての報知とは、具体的に、電源オンキー、電源オフキー等の上述した入力操作のためのキーが押下された時、又は、計量値の演算を開始した後に計量が完了した時などにブザー音を鳴らすことである。また、操作者が被計量物の重さの上限値及び下限値を設定して、その設定された重さの範囲内にある場合、又は、設定された重さの上限値よりも大きな場合やその下限値よりも小さな場合などに、ブザー音で知らせるようにしてもよい。特許第2501596号には、この上下限値を設定した上でのブザー音による報知につき、より詳細な記載がある。
【0015】
このような通常モードに対して、忌避モードとは、上記のような作動についての報知を行っていないときに、例えば、ハエ、ゴキブリなどの害虫やネズミ、ネコなどの害獣が忌避する周波数(以下、忌避周波数という)の超音波を発する調理用秤の動作形式をいう。この忌避モードでは、可聴域周波数が設定されている時以外は常に、忌避周波数が設定される。忌避周波数は、例えば25kHz〜50kHzの範囲内の固定値とすることが可能である。また、この範囲内で時間の経過とともに変化する変動値を用いてもよく、具体的に、周波数の設定値を、2,3秒の間に、35kHzを中心として±10kHzの範囲で振ってもよい。
【0016】
ブザー回路50には、一例として、図2に示す周知の電気回路を用いることができる。ここでは、発音源として圧電ブザーBZが用いられており、この圧電ブザーBZに印加される電圧が、マイクロプロセッサ21による制御に応じて順方向及び逆方向へと反転することによって、圧電ブザーBZからブザー音が発せられるようになっている。
【0017】
より詳細には、同図2において、マイクロプロセッサ21の制御ポートPが、ブザー回路50のトランジスタTRのベースBに接続されている。マイクロプロセッサ21がその制御ポートPをオフした場合、即ち、ベースB−エミッタE間に電圧が印加されていない場合、電源Pからの電流は、矢印Iaのように流れる。一方、制御ポートPをオンした場合、即ち、ベースB−エミッタE間に電圧が印加されている場合、電源Pからの電流は、矢印Ibのように流れる。
【0018】
つまり、圧電ブザーBZにかかる電圧が、制御ポートPをオンするかオフするかに合わせて反転するため、この制御ポートPのオン/オフに合わせて、圧電ブザー50を構成する金属板が振動して、音が発せられることになる。図3(a)は、可聴域音が発せられる場合において、マイクロプロセッサ21の制御ポートPから、ブザー回路50のトランジスタTRのベースBに入力される信号と、この信号に応じた、圧電ブザーBZからのブザー音(可聴域音)とを模式的に示している。同図3(b)は、超音波が発せられる場合におけるマイクロプロセッサ21の制御ポートPの信号と、圧電ブザーBZからのブザー音(超音波)とを示している。
【0019】
忌避モード設定時の超音波出力について、図4を用い、より詳しく説明する。マイクロプロセッサ21は、同図4に示す超音波出力制御のためのプログラムを所定時間の経過ごとに繰り返し実行するようになっている。ここでは、この超音波出力制御ルーチンとは異なる他の制御ルーチンで、可聴域音の出力が制御されているものとする。
【0020】
超音波出力制御ルーチンにおいて、先ず、可聴域音が圧電ブザーBZから出力されているか否かが判定される(ステップ1。以下、ステップをSと略す)。可聴域音が圧電ブザーBZから出力中である場合(S1にてYES)、本ルーチンは終了する。
【0021】
一方、可聴域音が圧電ブザーBZから出力中でない場合(S1にてNO)、続いて忌避モードが選択されているか否かが判定される(S2)。忌避モードが選択されていなければ(S2にてNO)、通常モードが選択されていることになり、通常モードでは超音波を発しないため、本ルーチンは終了する。忌避モードが選択されていれば(S2にてYES)、S3で、ブザー50の圧電ブザーBZが、一定の期間、上述した忌避周波数で駆動されるようにセットされる。
【0022】
以上のように、本調理用秤によると、忌避モード選択時において、そのブザー回路50の圧電ブザーBZから、作動についての報知のための可聴域音が発せられていないときに、この同じ圧電ブザーBZから、忌避周波数の超音波が発せられる。超音波の周波数には、害虫及び害獣が忌避する忌避周波数を設定することができるため、この超音波によって、害虫及び害獣がこの調理用秤に寄り付かないようにすることができる。その結果、この調理用秤を衛生に保ち、また、害虫等が、調理用秤の内部に侵入して、その内部の電気回路を破損させたりすることを防止することができる。
【0023】
特に、超音波は人体に影響することがないため、秤を調理用としても、安全である。また、この超音波は、通常取り付けられる圧電ブザーBZから発せられるため、その製造に、大幅なコストアップを生じない。
【0024】
(他の実施の形態等)
以上、具体的な実施の形態により本発明を説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更して実施することができる。
A. 例えば、図5のように、ブザー回路50に昇圧回路(DC/DCコンバータ、スイッチングレギュレータ)51を用いることができる。即ち、この昇圧回路51は、入力電圧Vinを出力電圧Voutに昇圧するようになっており、この昇圧回路51において、出力電圧Vout側で、スイッチングによる脈動が生じる(スイッチングに伴い、略一定の周期で瞬間的に出力電圧Voutが大きくなる)ことがある。この出力電圧Voutを、ブザー回路50を駆動する電圧とし、そのスイッチングの周波数を忌避周波数に近いものとして、ブザーBZから忌避周波数の超音波を発することが可能である。ここでは、マイクロプロセッサ21は可聴域音の出力のみを制御するようになっている。この調理用秤によると、操作者は、特に害虫等の忌避を意識することなく、通常の秤のように使用するだけで、上述と同様の効果が得られる。
【0025】
B. 調理用秤がACアダプタ及び電池のいずれかによって電源を供給されるものとし、ACアダプタが用いられている場合に限って、発音源から超音波が発せられるように制御することも可能である。この場合、上記実施の形態と同様、忌避モードが指定されているときに、超音波を出力するように制御してもよいし、通常モードや忌避モードを設けることなく、超音波を出力するようにしてもよい。(当然ながら、電池により電源が供給されている場合に、発音源から超音波が発せられるように制御することもできる。)
【0026】
C. 上記実施の形態において、発音源に圧電ブザーを用いたが、発音源を、マグネチックサウンダ、電子音ブザー、電子ブザー、圧電サウンダ、また、これらの他に、スピーカ等としてよい。
【0027】
D. 上記実施の形態では、忌避モードにおいて、調理用秤の使用時でも不使用時でも、可聴域音が発せられていない場合、常時、忌避周波数の超音波が発せられるものとした。これとは異なり、例えば、調理用秤の不使用時に忌避モードに設定されることを想定して、忌避モードの設定から、一定時間が経過した後に、忌避周波数の超音波が発せられるようにしてもよい。
【0028】
E. さらに、忌避周波数の超音波は、忌避モードに設定して5分経過した後から30秒間、10分経過後から30秒間、15分経過した後から30秒間、……、といったように、断続的に行うものとしてよい。これにより、電力の消費を可能な限り抑えながら、本調理用秤に、害虫及び害獣を有効に寄せ付けないようにすることができる。
【0029】
F. 特に、忌避モードが設定されている場合に、この忌避モードが設定されている旨を報知するようにしてもよい。液晶表示部30がその報知手段となり得、その液晶表示部30の一部に所定の図形を表示させることによってこの報知を行うことが可能である。また、LED等を報知手段として設けて、その点灯によりこの報知を行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態である調理用秤の全体構成を示すブロック図
【図2】本調理用秤のブザー回路の構成及び動作を示す回路図
【図3】ブザー回路により発せられる音を説明するための図
【図4】マイクロプロセッサが実行する超音波出力制御を示すフローチャート
【図5】本発明の他の実施の形態に係るブザー回路の構成を示す回路図
【符号の説明】
【0031】
11……計量皿
12……計量部
20……制御部
21……マイクロプロセッサ(実行プログラムとともに、発音源制御手段)
22……ROM
23……RAM
24……増幅器
25……A/D変換器
30……液晶表示部
40……操作部(モード指示手段を含む)
50……ブザー回路
51……昇圧回路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動についての報知を行うために可聴域音を発する発音源を備えた調理用秤であって、
前記発音源に、害虫又は害獣が忌避する周波数である忌避周波数の超音波を発せさせる発音源制御手段を備えたことを特徴とする調理用秤。
【請求項2】
前記発音源制御手段は、
前記忌避周波数、及び、前記可聴域音に対応する周波数である可聴域周波数のいずれかの周波数を設定し、
前記発音源は、
前記発音源制御手段により設定された周波数の音を発するようになっていることを特徴とする請求項1に記載の調理用秤。
【請求項3】
操作者が忌避モードの設定を指示するためのモード指示手段を備え、
前記発音源制御手段は、
前記モード指示手段により忌避モードが設定されている場合に、前記発音源に、前記忌避周波数の超音波を発せさせることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の調理用秤。
【請求項4】
前記発音源制御手段は、
前記モード指示手段により忌避モードが設定された場合、該忌避モードの設定の指示から所定時間が経過した後に、前記発音源に、前記忌避周波数の超音波を発せさせることを特徴とする請求項3に記載の調理用秤。
【請求項5】
前記モード指示手段により忌避モードが設定されている場合に、該忌避モードが設定されている旨を報知する報知手段を備えたことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の調理用秤。
【請求項6】
ACアダプタ及び電池のいずれかから、電源の供給を受けるようになっていて、
前記発音源制御手段は、
ACアダプタから電源の供給を受けている場合に、前記発音源に、前記忌避周波数の超音波を発せさせることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の調理用秤。
【請求項7】
作動についての報知を行うために可聴域音を発する発音源を備えた調理用秤における発音源制御方法であって、
前記発音源に、害虫又は害獣が忌避する周波数である忌避周波数の超音波を発せさせることを特徴とする、調理用秤における発音源制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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