説明

識別手段を有するガラス物品及びガラス物品を識別するための方法

少なくとも一つのガラスシートを含むガラス物品であって、前記ガラスシートの面の一方が、分散されかつ目に見えない識別手段を含む層によって被覆されているものにおいて、前記層がさらに、少なくとも一つの機能を有する機能層であることを特徴とする。本発明による識別手段は、裸眼で見えないか又は検出することが難しいガラス物品の固有の特性の存在の識別を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、識別手段を含むガラス物品に関する。特に、本発明は、裸眼で見ることができないか又は検出することが難しいガラス物品の固有の特徴の存在の識別のための手段を含むガラス物品に関する。本発明はまた、裸眼で見ることができないか又は検出することが難しい固有の特徴のガラス物品における存在を間接的に検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特に、平坦なガラス物品は、ある種の透明被覆又は表面処理のような裸眼で見ることができないか又は検出することが難しい特徴を示すことが多い。ガラス物品の目に見えない特徴の良好な例は抗菌特性である。かかるガラス物品では、抗菌性は、抗菌性を示さない同様のガラス物品と比較して裸眼で区別することができない。
【0003】
多くの理由のため、特定の間接的な識別手段によってガラス物品の目に見えない固有の特徴の存在を識別できることに対する関心が高い。最も重要な理由は、ガラス製品中の識別手段が例えば訴訟の枠組内で純正又は認可の物品と偽造物品の間で区別するのを助けることができることである。
【0004】
それゆえ、ガラス物品中の一つ以上の目に見えない特徴の存在を間接的に検出するため及び/又はガラス物品を認証するためにガラス物品の特定の信頼性ある識別手段及び識別方法を与えることが必要である。さらに、目に見えず、しかもその場で迅速に与え、非破壊的な識別手段が好ましい。
【0005】
スペクトルコードを使用する物品の識別方法は米国特許7038766B2から知られている。この文献において、識別が望ましい物品はマークの適用によって標識付けられる。マークはさらに識別するために物品に適用され、添付され、混合され(粉末の場合)、又は連結されることができる。マークは識別手段を含み、その識別手段は連続した視覚的に識別可能な染料及び/又は顔料着色された層を含むエネルギー反応性要素及び/又は符号化されたマイクロ粒子であることができる。エネルギー反応性要素は識別手段として作用する。なぜなら、エネルギー反応性要素はエネルギー刺激を受けると、刺激に対する要素の反応を特徴づけるスペクトルサインを生みだすからである。識別は、読み取りサインと予め規定されたサインを比較する読み取り装置を使用してマークを走査し、スペクトルサインを検出することによって実施される。
【0006】
しかしながら、物品の識別のために実在する解決策は、特に平坦なガラスから作られた物品を考慮すると、幾つかの主要な欠点を示す。粉末物品の特定のケースは以下の注意事項に関係がない。まず、マークが物品の表面に直接適用されるか又はそれに連結されるとき、それは物品の外部要素を表わす。この理由のため、識別手段は裸眼によって検出可能であり、それゆえ特に透明な平坦ガラス物品の場合において物品自体の審美性及び/又は機能を損なうことがありうる。さらに、同じ理由のため、マークは、ある場合には、例えば物品自体の完全性を損なうことなく、犯罪者によって物品から容易に除去されることができる。第二に、マークは物品の表面の局在化された規定した場所に付けられる。もし物品が平坦なガラス物品のような大きな表面を持つなら、識別は、マークがあまり見えないときに単調な仕事を表わすマークの局在化を要求する。さらに、もし平坦なガラス物品が窓枠に装着されるなら、マークは前記窓枠によって隠され、窓を取りはずすことなく将来の識別を達成することができないかもしれない。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、以下の(i)〜(iv)の特徴を有する特定の識別手段を含むガラス物品を提供することによってこれらの欠点を克服することを可能にする:
(i)裸眼で見ることができない、
(ii)ガラス物品の表面全体上に分散される、
(iii)審美性及び/又は機能性を損なうことなく物品に固有に属する、
(iv)物品から除去することができない。
【0008】
本発明はまた、上で述べた特定の識別手段を使用する識別又は検出の方法を提供し、それは迅速で、非破壊性で、その場で使用されることができるものである。実際的な見地から、本発明は、特定の識別手段に関係する固有の特徴のガラス物品中の存在を確認するため及び/又はガラス物品を認証するために特定の識別手段に問い合わせる方法を提供する。例えば、本発明の方法は、物品の製造時に抗菌特性に特有な識別手段の含有によって全寿命にわたってガラス物品の目に見えない抗菌特性の存在を識別することを可能にし、そして必要により将来の識別を可能にする。本発明の識別方法はさらに、いったん製造されたらガラス物品の全寿命の間、実施されることができる。例えば、識別方法は、ガラス物品のクライアントによる保管、輸送、変形時、又は建造物や自動車にいったん固定された後であっても使用されることができる。
【0009】
本発明は、請求項1に規定されたガラス物品を提供する。
【0010】
従属請求項は、本発明のさらに好ましい実施形態及び/又は代替実施形態を規定する。
【0011】
本発明は、添付図面(縮尺通りではない)を参照して限定されない態様で以下により詳細に記載されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明による分散されかつ目に見えない識別手段を含む層によって被覆されたガラス物品の拡大した断面図である。
【0013】
【図2】図2は、図1の実施形態の変形例である。
【0014】
【図3】図3は、図1の実施形態の別の変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示されるように、本発明によるガラス物品(1)は、分散されかつ目に見えない識別手段(4)を含む層(3)によってその面の一方の上を被覆された少なくとも一つのガラスシート(2)を含む。
【0016】
好ましくは、少なくとも一つのガラスシート(2)はソーダライムガラスから作られる。ソーダライムガラスは、以下の組成(重量%で表示)を有するガラスを意味する:
SiO 60〜75%
NaO 10〜20%
CaO 0〜16%
O 0〜10%
MgO 0〜10%
Al 0〜5%
BaO 0〜2%
アルカリ土類酸化物(BaO+CaO+MgO)は合計で10〜20%
アルカリ酸化物(NaO+KO)は合計で10〜20%
【0017】
着色剤(Fe,FeO,CoO,Nd,...)、レドックス成分(NaNO,NaSO,コークス、...)などの添加剤も同様に極めて少ない割合でガラス組成に存在させることができる。
【0018】
本発明によるガラスシート(2)はフロートガラスであることができ、それは0.5〜15mmの厚さを持つことができる。ガラスシート(2)はまた、クリア、超クリア、着色及び/又はエッチングされたガラスから作られることができる。ガラスシート(2)はまた、熱的に強化されることができる。
【0019】
本発明によるガラス物品(1)は、シートの縁面部分に接着又ははんだ付けされた介在スペーサストリップによって離隔された関係で前記ガラス物品を追加のガラスシートと集成することによって形成された複数枚の板ガラスで実施されることができる。その場合において、本発明による層は集成体の内部又は外部であることができる。
【0020】
本発明によるガラス物品(1)はまた、積層された集成体で実施されることができる。その場合において、本発明による層は集成体の内部又は外部であることができる。
【0021】
本発明によれば、物品(1)の少なくとも一つのガラスシート(2)は層(3)によってその面の一方の上を被覆される。前記層は、図1の実施形態に示されるようにガラスシートと直接接触してもよい。あるいは、一つ又は複数の被覆はガラスシートと層の間に介在させてもよい。
【0022】
本発明によれば、層(3)は図1の実施形態に示されるようにシート面の表面全体を被覆することが好ましい。
【0023】
本発明による層(3)は、分散されかつ目に見えない識別手段(4)を含む。識別手段は、前記ガラス物品の一つ以上の固有の特性の存在をさらに識別することを可能にする手段を意味する。
【0024】
本発明によれば、識別手段(4)は裸眼で見ることができない。
【0025】
本発明によれば、識別手段(4)は層(3)に分散される。好ましい態様では、それらは層(3)に均一に分散される。
【0026】
有利には、識別手段(4)はエネルギー反応性粒子である。本発明によるエネルギー反応性粒子は、エネルギー励起又は刺激を受けると、刺激に対する粒子の反応を特徴づける特定のエネルギー反応を生じる粒子である。
【0027】
本発明の特別な実施形態では、層はエネルギー反応性粒子を0.001〜15重量%含む。好ましくは、層はエネルギー反応性粒子を0.025〜5重量%含む。
【0028】
別の特別な実施形態では、エネルギー反応性粒子は0.1μm〜500μmのサイズを持つ。好ましくは、エネルギー反応性粒子は0.2μm〜100μmのサイズを持つ。
【0029】
エネルギー反応性粒子のエネルギー刺激は電磁放射線、電流、熱、冷...であってもよい。
【0030】
エネルギー反応性粒子の反応は、与えられる刺激並びに粒子自体の材料に依存する。エネルギー刺激によって励起された粒子のエネルギー反応は電磁放射線であることができる。
【0031】
材料が励起され、次いで電磁放射線を放出するとき、起こる現象は発光(luminescence)と称される。この発光は、より高いエネルギー状態への励起、次いで電磁放射線(又は光子)の放出に伴う、より低いエネルギー状態への戻りとして記載される。励起が電磁放射線(又は光子)から起こるとき、その現象はフォトルミネセンス(photoluminescence)と称される。この特定のケースでは、材料は特定の波長によって励起され、異なる(しかし同様に特異的な)波長又は波長の範囲(スペクトル)を再放出する。フォトルミネセンスの主な形態は蛍光及びリン光である。
【0032】
一実施形態によれば、エネルギー反応性粒子は少なくとも一つの発光団を含む。発光団は、発光の現象を示す物質を意味する。
【0033】
発光団は、少なくとも一つの発光要素によってドープされたホストマトリックスからなることが好ましい。活性化剤はときどき、発光時間を長くするためにマトリックス中に添加されることができる。
【0034】
好ましくは、ホストマトリックスは酸化物、酸硫化物、セレン化物、硫化物、リン酸塩、ハロゲン化物及びそれらの混合物から選択される。発光団のためのホストマトリックスの例は酸化イットリウム、酸硫化イットリウム、ケイ酸イットリウム、硫化亜鉛、硫化カドミウム、リン酸ランタン、ハロゲン化銀、ニオブ酸イットリウムである。
【0035】
好ましくは、少なくとも一つの発光要素はY,Nb,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Tb,Dy,Ho,Er,Tm及びYbから選択される。
【0036】
本発明によれば、識別手段を含みかつガラス物品の少なくとも一つのガラスシートを被覆する層はさらに機能層である。
【0037】
機能層は、着色、反射防止、保護、接着、疎水性、親水性、くもり防止、エレクトロクロミック、フォトクロミック、光触媒、耐火、抗菌、耐引っ掻き、耐摩耗、耐腐食、耐衝撃、UV防止、太陽光制御、低放射、UVカット又はIRカット機能から選択された少なくとも一つの機能を持つ。
【0038】
反射防止機能を有する機能層は、ガラス物品の光反射を低減することができる層を意図される。それゆえ、反射防止層はガラス物品によって透過される光を増加する。
【0039】
保護機能を有する機能層は、ガラス物品自体に又はガラス物品に存在する追加の被覆に対して化学的及び/又は機械的保護を与える層を意図される。化学的保護の一例は腐食に対する保護である。機械的保護の一例は、摩耗又は引っ掻きに対する保護である。
【0040】
接着機能を有する機能層は、ガラス物品の性能(例えば、安全性、弾丸又は爆発に対する保護、遮音)をさらに高めながら二つのガラスシートを結合する層を意図される。
【0041】
エレクトロクロミック機能を有する機能層は、電流が適用されるときに色を可逆的に変化する層を意図される。ガラス物品では、層は着色された形態と透明な形態の間で変化することが好ましい。
【0042】
フォトロクロミック機能を有する機能層は、特定の電磁放射線にさらされると色を可逆的に変化する層を意図される。
【0043】
抗菌機能を有する機能層は、前記層と接触して入った細菌、真菌又はウィルスのような微生物を殺傷するか又はその増殖を抑制することができる層を意図される。
【0044】
耐腐食機能を有する機能層は、ガラスの腐食現象を低減又は抑制することができる層を意図される。ソーダライムガラスは、好ましくない環境条件下で、特に塩基性pHを有する水性媒体中でアルカリイオンの消耗によって腐食を実際に受けうる。
【0045】
耐UV機能を有する機能層は、ガラス物品の紫外線の透過を低下することができる層を意図される。これは、ガラス物品の背後で太陽光線にさらされる物体の変色を制限するために特に重要である。紫外線は280〜380nmの波長を有する放射線を意味する。
【0046】
太陽光制御機能を有する機能層は、ガラス物品によって画定される内部空間の過熱を回避するためにガラス物品の入射太陽光エネルギー線の通過を制限する層を意図される。太陽光エネルギー線は300〜2500nmの波長を有する放射線を意味する。
【0047】
低放射機能を有する機能層は、ガラス物品を通る内部空間からの熱損失を制限する層を意図される。この熱損失は、(i)内部空間内の物体によって放射される長波長の赤外線(2500nm以上)のガラス物品による吸収、(ii)前記物品の加熱、それに続く(iii)外部への熱の放射を介して起こる。
【0048】
UVカット又はIRカット機能を有する機能層は、反射又は吸収現象によって紫外線又は赤外線のそれぞれのガラス物品の透過をブロックする層を意図される。特に、この層は特定の波長のカットオフを可能にし、それより上又は下の全ての波長をブロックする。
【0049】
本発明の特別な実施形態によれば、機能層はゾルゲル法によって付着される。
【0050】
一般的なゾルゲル法では、使用されるプリカーサは通常、無機金属塩又は金属有機化合物、例えば金属アルコキシドである。プリカーサの溶液はまず一連の加水分解及び重縮合反応を受け、コロイド懸濁液又は「ゾル」を形成する。ゾルは次いで液相(「ゲル」)を含有する無機連続ネットワークの形成に発展する。金属M酸化物の形成は、金属中心をオキソ(M−O−M)又はヒドロキソ(M−OH−M)架橋と連結することを伴い、それゆえ、溶液中に金属−オキソ又は金属−ヒドロキソポリマーを生成する。乾燥工程はゲルから液相を除去するように作用し、従ってセラミック材料を形成する。熱処理(燃焼)はさらに、セラミック材料の機械的特性を向上させるために実施されることができる。例えば浸漬コーティング又はスピンコーティングによる「ゾル」の特別な処理は支持体上に層の形態でセラミック材料を作ることを可能にする。
【0051】
本発明の別の特別な実施形態によれば、機能層は着色されたラッカー層であることができる。
【0052】
ラッカーはペイント又はエナメルを意図される。好適なペイントは、有機及び/又は無機顔料と会合したポリウレタン、シリコーン、アルキド、ポリエステル、フェノール、アミノ、エポキシ、アクリル、メタクリル、アクリル−スチレン及びアクリルアミド樹脂のような様々な有機ベース樹脂を持つことができる。架橋タイプのペイントが好ましい。かかるペイントは、乾燥後にガラス表面上に硬化層を形成する利点を持つ。この実施形態による好適なエナメルは、ガラスシート及びメジウムより可融性のガラス組成と会合した無機顔料を含む。メジウムはポリウレタン、シリコーン、アルキド、ポリエステル、フェノール、アミノ、エポキシ、アクリル、メタクリル、アクリル−スチレン及びアクリルアミド樹脂のような様々な有機樹脂から構成されることができ、UV又はIR架橋性要素を含むことが好ましい。
【0053】
好ましくは、ラッカー層はガラスシートと直接接触する。あるいは、接着促進剤をガラスシートとラッカー層の間に存在させてガラスシートへの層の接着を向上させることができる。
【0054】
着色されたラッカー層は黒及び白を含むいかなる色を有していてもよい。
【0055】
ラッカー層は、例えばローラコーティング又はカーテンコーティング法、スプレー法又はフロー法のような業界で公知のいずれかの方法によって適用されることができる。
【0056】
図2に示された別の代替実施形態によれば、ガラス物品(1′)は少なくとも一つのガラスシート(2)上に付着された反射性金属被覆(5)をさらに含み、識別手段(4)を含む層は前記金属被覆(5)上に適用された保護層(6)である。
【0057】
この特定の実施形態によるガラス物品は反射鏡(1′)として使用されることができ、それゆえそれは様々な用途、例えば家具、ワードローブ又はバスルームなどに使用される家庭用鏡;化粧箱又はキットの鏡;車の後方視界の鏡のような自動車産業に使用される鏡の用途を持つ。
【0058】
反射性被覆(5)のために一般に使用される金属は金属銀である。
【0059】
好ましくは、保護層(6)はペイント層である。それは部分的には反射性金属被覆の摩耗を防止するのに役立つが、より重要なことは金属に耐腐食性を与えることである。もしかかる保護が与えられないなら、反射性金属被覆は大気汚染による攻撃又は酸化を受ける傾向があり、変色や退色を生じ、従って物品の鏡としての反射特性の低下を招く。
【0060】
好ましくは、ペイントは着色されたペイントである。好適な着色ペイントは顔料及び結合剤を含む。好ましい結合剤はアクリル、アルキド、エポキシ、セルロース、フェノール及びポリエステル樹脂を含む。好適なペイントは鉛を含むことができる。あるいは、好適なペイントは鉛を含まないか又は実質的に鉛を含まないようにすることができる。
【0061】
この特定の実施形態によれば、複数の保護ペイント層を反射性金属被覆上に適用することができる。好ましくは、一つのペイント層だけが識別手段を含む。
【0062】
この実施形態によれば、ペイント層は、カーテン被覆装置によって反射性金属被覆上に液体形態で適用される。ペイント層は次いで例えばトンネルオーブンで乾燥又は硬化される。
【0063】
図3に示された別の代替実施形態によれば、ガラス物品(1′′)は、識別手段を含む層を被覆する少なくとも一つの追加のガラスシート(7)をさらに含む。この実施形態では、層は二つのガラスシート(2,7)を結合する接着層(8)であり、それゆえ積層された集成体(1′′)を形成する。
【0064】
この実施形態によれば、接着層(8)は有機樹脂層であることが好ましい。有機樹脂層は熱可塑性タイプからなることが好ましい。それは積層された安全ガラスに広く使用されるポリビニルアセタール、特にポリビニルブチラールのような材料、そしてポリ塩化ビニル、ポリオレフィンなどの材料からなることができる。
【0065】
好ましくは、有機樹脂層は最大1mmの厚さを有する。最も好ましくは、有機樹脂層の厚さは0.38mmより小さいか又はそれに等しい。さらに、有機樹脂層は防音タイプのものであることができる。
【0066】
この実施形態は、二つのガラスシート間に複数の重ね合わされた接着層を使用して実施されることができる。好ましくは、一つだけの接着層が識別手段を含む。
【0067】
特別な実施形態では、複数のガラスシートは本発明による積層された集成体において実施されることができる。その場合において、少なくとも一つの接着層がガラスシートの各対の間に介在される。好ましくは、一つだけの接着層が識別手段を含む。あるいは、一つより多い接着層が識別手段を含む。
【0068】
別の特別な実施形態では、本発明による積層された集成体は、もし望むなら異なる厚さの少なくとも二つのガラスシートを含む。
【0069】
上で示したような従来の積層されたガラス集成体を製造する方法は、特にガラスシートの寸法に依存してかなり異なりうるが、中間層の性質によっても異なりうる。しかし、すべての技術は、温度と圧力の使用を含む。これらの二つの条件は、有機樹脂中間層を展性にし、良好な接着を得るためにこの中間層と硬質ガラスシートの間の接触を課す効果を持つ。集成時に及ぼされる圧力は集成体に真空を適用することからもたらされることができ、これは一緒に接合されたシート間に存在する空気を除去する追加の機能、又は構成シートの機械的圧縮(その圧縮は比較的高い真空と組み合わされうる)を有する。極めて大きい容積のために、唯一の実際の可能性は、好ましくは中間層の適度な軟化に好ましい温度で、シートを一つ以上のカレンダー操作に供することにある。
【0070】
本発明はまた、本発明によるガラス物品におけるエネルギー反応性粒子の存在を検出する方法を提供する。
【0071】
以下で使用される用語は、特許しない限り、上の説明で既に述べたものと同じ意味を有する。
【0072】
本発明によるガラス物品におけるエネルギー反応性粒子の存在を検出する方法は以下の工程を含む:
a)ガラス物品をエネルギー刺激に供する、
b)エネルギー反応性粒子からのエネルギー反応を検出することによってガラス物品がエネルギー反応性粒子を含むかどうかをチェックする。
【0073】
この方法では、エネルギー刺激及び/又はエネルギー反応はガラス物品を通過してもしなくてもよい。
【0074】
既に特定したように、エネルギー反応性粒子のエネルギー刺激は電磁放射線、電流、熱、冷、...であることができる。
【0075】
好ましい実施形態では、エネルギー刺激は電磁放射線である。この実施形態による電磁放射線は紫外、可視、赤外、マイクロ波又は電波領域であることができる。
【0076】
エネルギー刺激が電磁放射線であるとき、刺激は規則的な励起源によって実施されることができる。励起源はその場での識別のために手で持てることが好ましい。例えば、刺激は励起源として特定の波長のレーザによって与えられることができる。
【0077】
別の好ましい実施形態では、粒子のエネルギー反応は電磁放射線である。この実施形態による電磁放射線は紫外、可視、赤外、マイクロ波又は電波領域であることができる。好ましくは、電磁放射線は400〜700nmの波長の範囲を有する可視放射線である。最も好ましくは、電磁放射線は450〜550nmの波長の範囲を有する可視放射線である。
【0078】
エネルギー反応性粒子の励起とそれらのエネルギー反応の間の遅れは変動可能である。この遅れは数ナノ秒から数分、さらには数時間であることができる。好ましくは、本発明による反応の遅れは数ナノ秒から数秒であることができる。
【0079】
好ましい実施形態では、エネルギー反応性粒子の励起は可逆的である。換言すれば、エネルギー反応性粒子は直ちに又は励起源が遮断されてから短い時間内に放射を停止し、次いでもし励起源が再び作動すると、それらは放射を再開する。
【0080】
本発明による方法は、エネルギー反応を検出する工程を含む。検出は好適な検出器によって実施されることができる。検出器の性質は予想されるエネルギー反応の性質に明らかに依存する。例えば、エネルギー反応が可視光であるとき、検出器は単純に目であってもよい。その場合において、検出は、可視光反応が低い強さを示すときに暗室で実施されることができる。
【0081】
好ましくは、検出器はまた、その場での識別のために手で持てる。検出器はまた、エネルギー反応を生成するために必要な刺激を与えるための励起源を含むことができる。検出器はまた、幅広い範囲のタイプのエネルギー反応性粒子に適応させるために幅広い範囲の波長を検出することができるようにしてもよい。
【実施例】
【0082】
本発明は、その範囲をいかなる点でも限定せずに本発明を良好に説明する目的で実施例によって以下に記載されるだろう。
【0083】
実施例1
本発明によるガラス物品は以下のようにして作られた。
【0084】
まず、エネルギー反応性粒子を、ローラを有するミキサーのタンクにおいて白色ラッカー中に分散した。混合物を、120回転/分で10分間攪拌した。使用した白色ラッカーはアクリル樹脂及び顔料を含むペイントであった。
【0085】
この実施例では、使用されたエネルギー反応性粒子は本質的に、ホストマトリックスとして酸化イットリウム及び酸硫化イットリウム、及びランタン元素としてイッテルビウム及びエルビウムを含む。それらのサイズは1〜5μmの範囲である。白色ラッカーに分散されたエネルギー反応性粒子の量(重量%)は0.0025,0.0125,0.025,0.05,0.25及び1重量%であった。赤外光源で励起されたとき、これらのエネルギー反応性粒子は反応として可視緑色光を与える。
【0086】
得られたエネルギー反応性粒子とペイントの混合物を次いで透明ガラスシート上に付着した。使用したガラスシートは4mmの厚さ、40cmの長さ及び20cmの幅を持っていた。付着はコータによって実施され、ガラスシート上に得られた未乾燥の層は約50μmの厚さを持っていた。最後に、層を載せたガラスシートは66℃で10分間乾燥された。
【0087】
次に、これらの粒子の存在を検出するために異なる量のエネルギー反応性粒子を有するガラス物品に対して試験を実施した。近赤外領域の波長を有するレーザペン(300mW)を、ペイント層又は層によって被覆されていないガラスシートの面のどこかに向けた。0.025,0.05,0.25及び1重量%のエネルギー反応性粒子で作られたガラス物品に対して垂直に照明を当てると緑色の光反応が観察された。0.0025及び0.0125重量%のエネルギー反応性粒子で作られたガラス物品に対して暗室において緑色の光反応が観察された。
【0088】
実施例2
本発明による別のガラス物品を実施例1と同じ手順及び仕様に従って作ったが、この実施例では、(i)ラッカーはアクリル樹脂及び顔料を含む黒色ペイントであり、(ii)ラッカーに分散されるエネルギー反応性粒子の量(重量%)は1,10及び15重量%であるように変更した。
【0089】
次いで、異なる量のエネルギー反応性粒子を有するガラス物品に対して検出試験を実施した。近赤外領域の波長を有するレーザペン(300mW)を、ペイント層又は層によって被覆されていないガラスシートの面のどこかに向けた。1重量%のエネルギー反応性粒子で作られたガラス物品に対しては何の反応も観察されなかった。10及び15重量%のエネルギー反応性粒子で作られたガラス物品に対して垂直に照明すると緑色の光反応が観察された。
【0090】
実施例3
本発明による別のガラス物品を以下のようにして作った。
【0091】
まず、エネルギー反応性粒子を、実施例1に記載されたものと同じ方法によって緑色ペイントに分散した。使用された着色ペイントは結合剤としてアルキド樹脂及びメラミンホルムアルデヒド並びに顔料を含んでいた。
【0092】
この実施例では、使用されたエネルギー反応性粒子は本質的に、ホストマトリックスとして酸化イットリウムと酸硫化イットリウムの混合物、及びランタン元素としてイッテルビウムとエルビウムを含む。それらのサイズは1〜5μmであり、ラッカーに分散されたエネルギー反応性粒子の量(重量%)は0.0025,0.0125,0.025,0.05,0.25及び1重量%であった。
【0093】
2mmの厚さ、40cmの長さ及び20cmの幅を有するガラスシートをまず研磨、洗浄し、次いで塩化スズ溶液によって増感し、最後に洗浄した。次に、PdClの酸水溶液をガラスシート上にスプレーした。次いでガラスシートを洗浄ステーションに移し、そこで脱イオン水をスプレーし、次に銀めっきステーションに移り、そこで銀塩及び還元剤を含む伝統的な銀めっき溶液をスプレーして約800〜850mg/mの銀を含む被覆を形成した。ガラスシートを次いで水でスプレーすることによって洗浄し、銀被覆の洗浄直後に、塩化スズの新しく作られた酸性化溶液を銀めっきガラスシート上にスプレーした。
【0094】
洗浄及び乾燥後、銀被覆は上記のようにペイントとエネルギー反応性粒子の混合物の層によって被覆された。未乾燥ペイント層の厚さは約100μmであった。最後に、ガラスシートは66℃で20分間乾燥された。
【0095】
次いで、異なる量のエネルギー反応性粒子を有するガラス物品に対して検出試験を実施した。近赤外領域の波長を有するレーザペン(300mW)を、ペイント層のどこかに向けた。0.025,0.05,0.25及び1重量%のエネルギー反応性粒子で作られたガラス物品に対して垂直に照明を当てるとシートを通して緑色の光反応が観察された。0.0025及び0.0125重量%のエネルギー反応性粒子で作られたガラス物品に対して暗室において緑色の光反応が観察された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのガラスシートを含むガラス物品であって、前記ガラスシートの面の一方が、分散されかつ目に見えない識別手段を含む層によって被覆されているものにおいて、前記層がさらに、着色、反射防止、保護、接着、疎水性、親水性、くもり防止、エレクトロクロミック、フォトクロミック、光触媒、耐火、抗菌、耐引っ掻き、耐摩耗、耐腐食、耐衝撃、UV防止、太陽光制御、低放射、UVカット又はIRカット機能から選択される少なくとも一つの機能を有する機能層であることを特徴とするガラス物品。
【請求項2】
層がゾルゲル法によって付着されていることを特徴とする請求項1に記載のガラス物品。
【請求項3】
層が着色されたラッカー層であることを特徴とする請求項1に記載のガラス物品。
【請求項4】
ガラス物品が少なくとも一つのガラスシート上に付着された反射性金属被覆をさらに含むこと、及び層が前記金属被覆上に適用された保護層であることを特徴とする請求項1に記載のガラス物品。
【請求項5】
ガラス物品が、積層された集成体を形成する層を被覆する少なくとも一つの追加のガラスシートをさらに含むこと、及び層が接着性有機樹脂層であることを特徴とする請求項1に記載のガラス物品。
【請求項6】
識別手段がエネルギー反応性粒子であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のガラス物品。
【請求項7】
層が0.001〜15重量%のエネルギー反応性粒子を含むことを特徴とする請求項6に記載のガラス物品。
【請求項8】
エネルギー反応性粒子が0.1μm〜500μmのサイズを有することを特徴とする請求項6又は7に記載のガラス物品。
【請求項9】
エネルギー反応性粒子が少なくとも一つの発光団を含むことを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載のガラス物品。
【請求項10】
発色団が、少なくとも一つの発光要素によってドープされたホストマトリックスからなることを特徴とする請求項9に記載のガラス物品。
【請求項11】
ホストマトリックスが酸化物、酸硫化物、セレン化物、硫化物、リン酸塩、ハロゲン化物及びそれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項10に記載のガラス物品。
【請求項12】
少なくとも一つの発光要素がY,Nb,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Tb,Dy,Ho,Er,Tm及びYbから選択されることを特徴とする請求項10又は11に記載のガラス物品。
【請求項13】
請求項6〜12のいずれかに記載のガラス物品におけるエネルギー反応性粒子の存在を検出する方法であって、(a)ガラス物品をエネルギー刺激に供し、(b)エネルギー反応性粒子からのエネルギー反応を検出する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
エネルギー刺激が電磁放射線であることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
エネルギー反応は電磁放射線、好ましくは400〜700nmの波長範囲の可視放射線であることを特徴とする請求項13又は14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−528650(P2011−528650A)
【公表日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−519045(P2011−519045)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【国際出願番号】PCT/EP2008/059586
【国際公開番号】WO2010/009757
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(510191919)エージーシー グラス ユーロップ (27)
【Fターム(参考)】