説明

識別装置

【課題】正偶数多角形等の平面形状を有する識別対象物(硬貨等)の撮像データにおいて、該識別対象物の中心位置を求める。
【解決手段】識別装置の識別部2は、撮像データDにおける識別対象物15の中心位置Cを算出する際に、識別対象物15の縁上にある端点A1,A2を結ぶ線分LS11と、識別対象物15の縁上にある端点B1,B2を結ぶ線分であって、線分LS11と平行であり且つ長さが等しい線分LS12とを特定し、端点B1,B2のうち端点A1とは逆側にある端点B2と端点A1とを結ぶ線分LS13、並びに端点B1,B2のうち端点A2とは逆側にある端点B1と端点A2とを結ぶ線分LS14を求め、線分LS13と線分LS14との交点を中心位置Cとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正偶数角形等の平面形状を有する識別対象物(例えば硬貨等)を識別する識別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の硬貨識別装置は、例えばコイルにより発生する磁界中に硬貨を通過させることにより、硬貨の磁気的特性または電気的特性を検出するように構成される。そして、検出した磁気的特性または電気的特性に基づいて、硬貨の外径や断面積を判定している。この硬貨識別装置は、判定した硬貨の外径や断面積等に基づいて、該硬貨の種類を識別する。
【0003】
近年、上記識別方法に加えて、硬貨表面の模様や凹凸における特徴部分を判定することによって識別精度をより高めることが求められている。このような識別方法を実現するためには、硬貨表面を撮像して撮像データを作成し、この撮像データを用いて識別する方法が有効である。このような識別方法を適用した装置としては、例えば特許文献1〜3に開示された装置がある。
【0004】
硬貨表面の撮像データを用いて該硬貨を識別する際には、撮像データにおける硬貨位置と基準データにおける硬貨位置とを互いに合致させる必要がある。このとき、撮像データにおける硬貨の中心位置を求め、この中心位置を基準データにおける硬貨の中心位置に一致させることによって、硬貨位置を合致させるとよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3170147号公報
【特許文献2】特開2005−284918号公報
【特許文献3】特開2005−284934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、硬貨等の識別対象物の平面形状が例えば正偶数角形といった円形以外の形状を有する場合、その中心位置を求めることは容易ではない。例えば、上述した特許文献1では、撮像データにおける硬貨の中心位置を求める方法として、撮像データにおいてy座標が0である線分と硬貨の外縁部分との2交点を求め、該2交点を結ぶ垂直二等分線と硬貨の外縁部分との別の2交点を求め、該別の2交点の中心を硬貨の中心位置としている。しかし、この方法は識別対象物の平面形状が円形である場合のみ有効であり、平面形状が正六角形などの正偶数多角形である場合には適用することができない。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、正偶数多角形等の平面形状を有する識別対象物(硬貨等)の撮像データにおいて、該識別対象物の中心位置を求めることができる識別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明による第1の識別装置は、平面形状が、正偶数角形、正偶数角形の各辺が内側に屈曲した形状、又はこれらの角が丸められた形状である識別対象物を識別する識別装置であって、識別対象物の表面を撮像して該識別対象物に関する撮像データを生成する画像入力部と、撮像データにおける識別対象物の中心位置を算出し、識別対象物の所定の識別部位における識別データを撮像データから中心位置に基づいて抽出し、識別データと予め記憶された基準データとを比較することにより、識別対象物を識別する識別部とを備え、識別部が、識別対象物の中心位置を算出する際に、(A)撮像データにおける識別対象物の縁上にある第1及び第2の端点を結ぶ第1の線分と、撮像データにおける識別対象物の縁上にある第3及び第4の端点を結ぶ線分であって、第1の線分と平行であり且つ長さが等しい第2の線分とを特定し、(B)第3及び第4の端点のうち第1の端点とは逆側にある端点と第1の端点とを結ぶ第3の線分、並びに第3及び第4の端点のうち第2の端点とは逆側にある端点と第2の端点とを結ぶ第4の線分を求め、第3の線分と第4の線分との交点を中心位置とすることを特徴とする。
【0009】
この第1の識別装置によれば、上述した演算処理(A)、(B)を識別部が行うことによって、正偶数多角形等の平面形状を有する識別対象物(硬貨等)の撮像データにおける該識別対象物の中心位置を好適に求めることができる。
【0010】
また、第1の識別装置は、識別部が、第1及び第2の線分をそれぞれ複数本決定及び特定することにより複数の交点を求め、該複数の交点から中心位置を算出することを特徴としてもよい。これにより、正偶数多角形等の平面形状を有する識別対象物の中心位置を精度良く求めることができる。
【0011】
また、本発明による第2の識別装置は、平面形状が、正偶数角形、正偶数角形の各辺が内側に屈曲した形状、又はこれらの角が丸められた形状である識別対象物を識別する識別装置であって、識別対象物の表面を撮像して該識別対象物に関する撮像データを生成する画像入力部と、撮像データにおける識別対象物の中心位置を算出し、識別対象物の所定の識別部位における識別データを撮像データから中心位置に基づいて抽出し、識別データと予め記憶された基準データとを比較することにより、識別対象物を識別する識別部とを備え、識別部が、識別対象物の中心位置を算出する際に、(A)撮像データにおける識別対象物の縁上にある第1及び第2の端点を結ぶ第1の線分と、撮像データにおける識別対象物の縁上にある第3及び第4の端点を結ぶ線分であって、第1の線分と平行であり且つ長さが等しい第2の線分とを特定し、(C)第3及び第4の端点のうち第1の端点とは逆側にある端点と第1の端点とを結ぶ第3の線分を求め、第3の線分の中点を中心位置とすることを特徴とする。
【0012】
この第2の識別装置では、識別部が、第1の識別装置と同様の演算処理(A)を行ったのち、第1の識別装置とは異なる演算処理(C)を行っている。識別部が演算処理(A)および(C)を行うことによっても、正偶数多角形等の平面形状を有する識別対象物の中心位置を好適に求めることができる。
【0013】
また、第2の識別装置は、識別部が、第1及び第2の線分をそれぞれ複数本決定及び特定することにより複数の第3の線分を求め、該複数の第3の線分それぞれの中点から中心位置を算出することを特徴としてもよい。これにより、正偶数多角形等の平面形状を有する識別対象物の中心位置を精度良く求めることができる。
【0014】
また、第1及び第2の識別装置は、識別部が、撮像データ上の直交座標系を設定し、第1の線分を該直交座標系の一の座標軸と平行とすることを特徴としてもよい。これにより、識別部における演算処理量を軽減することができる。
【0015】
また、第1及び第2の識別装置は、撮像データが、M行N列(M、Nは2以上の整数)に配置された複数の画素からなり、第1の線分が、撮像データの行方向又は列方向に延びる線分であることを特徴としてもよい。これにより、識別部における演算処理量を軽減することができる。
【0016】
また、第1及び第2の識別装置は、正偶数角形が、正四角形、正六角形、正八角形、及び正十二角形のうち何れかであることを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明による識別装置によれば、正偶数多角形等の平面形状を有する識別対象物(硬貨等)の撮像データにおいて、該識別対象物の中心位置を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】一実施形態に係る識別装置の構成を示すブロック図である。
【図2】(a)撮像データの一例を示す図である。(b)円周上のデータの一例を示すグラフである。
【図3】(a)基準対象物を示す図である。(b)図3(a)に示された基準対象物の円周上におけるデータを示すグラフである。
【図4】識別対象物の中心算出処理を説明するための図であり、撮像データの一例を表している。
【図5】識別対象物の中心算出処理を説明するための図であり、撮像データの別の例を表している。
【図6】正六角形の識別対象物の画像を中央部に含む撮像データを示している。
【図7】中心位置算出方法の具体的な実施例を示すフローチャートである。
【図8】中心位置算出方法の具体的な実施例を示すフローチャートである。
【図9】画像入力部の構成図である。
【図10】識別装置の動作を示すフローチャートである。
【図11】閾値以上の階調値を有する画素の検出方向について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら本発明による識別装置の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
本実施形態に係る識別装置が識別対象とする物は、その平面形状が、正偶数角形、正偶数角形の各辺が内側に屈曲した形状、又はこれらの角が丸められた形状といった、円形とは異なる平面形状を有する物である。正偶数角形とは、典型的には正四角形、正六角形、正八角形、及び正十二角形のうち何れかである。このような識別対象物は例えば硬貨であり、硬貨以外にも、例えば記念硬貨、メダル、或いはトークンといった他の識別対象物を識別することができる。
【0021】
図1は、本実施形態による識別装置の構成を示すブロック図である。図1を参照すると、識別装置1は、識別対象物の表面を撮像して該表面の撮像データD1を生成する画像入力部3と、撮像データD1に基づいて識別対象物を識別する識別部2と、画像入力部3及び識別部2を制御する制御部11とを備えている。識別部2は、撮像データD1を処理する処理部5と、識別のための基準データなどを記憶する記憶部7と、識別対象物が識別基準に合致しているか否かを判定する判定部9とを備えている。処理部5は、例えば中央演算処理装置がプログラムを読み込むことにより構成されてもよく、また、電子回路によって構成されてもよい。処理部5は、撮像処理部51と、中心算出部53と、円周データ取込部55と、特徴区間抽出部57と、識別部位取込部59とを有している。記憶部7は、例えばメモリといった記憶装置からなり、撮像データ記憶領域71と、識別部位記憶領域73と、基準データ記憶領域75と、中心位置・姿勢角記憶領域77とを有している。
【0022】
撮像処理部51は、画像入力部3から撮像データD1を取り込み、撮像データD1を識別部2における演算が容易になるように処理して記憶部7に記憶させるための手段である。具体的には、撮像処理部51は、まず、画像入力部3からの撮像データD1をグレースケールデータ(濃淡画像)に変換する。そして、このグレースケールデータにおける色の濃さを各画素毎に数値化することにより、撮像データD2を生成する。撮像データD2の一例を図2(a)に示す。この例では、撮像データD2は識別対象物15としてインドの20パイス硬貨の画像を含んでいる。撮像処理部51は、生成した撮像データD2を記憶部7に送る。記憶部7は、撮像データD2を撮像データ記憶領域71に記憶する。
【0023】
中心算出部53は、撮像データD2における識別対象物15の中心位置C(図2(a)参照)を算出するための手段である。中心算出部53は、撮像データD2を記憶部7の撮像データ記憶領域71から読み出し、識別対象物15の中心位置Cを算出する。中心算出部53は、識別対象物15の中心位置Cに関する中心位置情報D13を、円周データ取込部55へ提供するとともに記憶部7の中心位置・姿勢角記憶領域77に記憶させる。
【0024】
ここで、中心算出部53における識別対象物15の中心算出方法について説明する。図4及び図5は、識別対象物15の中心算出処理を説明するための図であり、それぞれ撮像データD2の例を表している。各撮像データD2の中央部には、識別対象物15の画像が存在する。図4に示された撮像データD2には、正六角形の識別対象物15が含まれている。また、図5に示された撮像データD2には、正六角形の各辺が内側に屈曲した形状の識別対象物15が含まれている。なお、図4及び図5に示す撮像データD2の各画素は、直交する二方向(x軸方向およびy軸方向)に二次元配列されている。
【0025】
(第1の算出方法)
まず、中心算出部53は、図4及び図5に示される撮像データD2において、識別対象物15と交差する直線L1を設定する。直線L1は、撮像データD2の行方向(x軸方向)と平行な直線である。この直線L1は、識別対象物15の縁上にある第1の端点A1及び第2の端点A2を通る。中心算出部53は、撮像データD2において、直線L1を含む画素行内のデータ値の変化を読み取り、データ値が閾値以上である範囲の最初の点を端点A1とし、最後の点を端点A2とするとよい。こうして、中心算出部53は、第1の端点A1及び第2の端点A2を結ぶ第1の線分LS11が定義される。なお、端点A1及びA2の各座標軸は、次のように表される。
A1(x11,y1)
A2(x12,y1)
【0026】
また、中心算出部53は、撮像データD2において、識別対象物15と交差する別の直線L2を設定する。直線L2は、撮像データD2の行方向(x軸方向)と平行な直線であり、上記直線L1と平行である。この直線L2は、識別対象物15の縁上にある第3の端点B1及び第4の端点B2を通る。中心算出部53は、撮像データD2において、直線L2を含む画素行内のデータ値の変化を読み取り、データ値が閾値以上である範囲の最初の点を端点B1とし、最後の点を端点B2とするとよい。こうして、第3の端点B1と第4の端点B2とを結ぶ第2の線分LS12が定義される。なお、特定された端点B1及びB2の各座標軸は、次のように表される。
B1(x21,y2)
B2(x22,y2)
【0027】
中心算出部53は、第1の端点A1と第2の端点A2との距離la(すなわち線分LS11の長さ)と、第3の端点B1と第4の端点B2との距離lb(すなわち線分LS12の長さ)とが互いに等しくなるような直線L1,L2のy座標位置をそれぞれ求めることにより、2本の線分LS11,LS12を特定する。
【0028】
続いて、中心算出部53は、第3の端点B1及び第4の端点B2のうち第1の端点A1とは逆側にある端点(図4及び図5では端点B2)と、第1の端点A1とを結ぶ第3の線分LS13を求める。また、中心算出部53は、第3の端点B1及び第4の端点B2のうち第2の端点A2とは逆側にある端点(図4及び図5では端点B1)と、第2の端点A2とを結ぶ第4の線分LS14を求める。なお、ここでいう逆側の端点とは、線分LS11におけるx座標が小さい側の端点A1に対する、線分LS12におけるx座標が大きい側の端点B2をいう。同様に、線分LS11におけるx座標が大きい側の端点A2に対する、線分LS12におけるx座標が小さい側の端点B1をいう。
【0029】
以上の演算ののち、中心算出部53は、第3の線分LS13と第4の線分LS14との交点座標を、撮像データD2における識別対象物15の中心位置Cとみなす。こうして、中心算出部53は、識別対象物15の中心位置Cを算出することができる。
【0030】
上述した中心位置算出方法では、x軸と平行な第1及び第2の線分LS11,LS12を求め、これらの線分LS11,LS12に基づいて識別対象物15の中心位置Cを算出したが、y軸と平行な第1及び第2の線分に基づいて中心位置Cを算出してもよい。
【0031】
すなわち、中心算出部53は、図4及び図5に示される撮像データD2において、識別対象物15と交差する直線L3を設定する。直線L3は、撮像データD2の列方向(y軸方向)と平行な直線である。この直線L3は、識別対象物15の縁上にある第1の端点C1及び第2の端点C2を通る。中心算出部53は、撮像データD2において、直線L3を含む画素行内のデータ値の変化を両端から読み取り、データ値が閾値以上である範囲の最初の点を端点C1とし、最後の点を端点C2とするとよい。こうして、第1の端点C1及び第2の端点C2を結ぶ第1の線分LS21が定義される。なお、端点C1及びC2の各座標軸は、次のように表される。
C1(x3,y31)
C2(x3,y32)
【0032】
また、中心算出部53は、撮像データD2において、識別対象物15と交差する別の直線L4を設定する。直線L4は、撮像データD2の列方向(y軸方向)と平行な直線であり、上記直線L3と平行である。この直線L2は、識別対象物15の縁上にある第3の端点D1及び第4の端点D2を通る。中心算出部53は、撮像データD2において、直線L4を含む画素行内のデータ値の変化を両端から読み取り、データ値が閾値以上である範囲の最初の点を端点D1とし、最後の点を端点D2とするとよい。こうして、第3の端点D1と第4の端点D2とを結ぶ第2の線分LS22が定義される。なお、特定された端点D1及びD2の各座標軸は、次のように表される。
D1(x4,y41)
D2(x4,y42)
【0033】
中心算出部53は、第1の端点C1と第2の端点C2との距離lc(すなわち線分LS21の長さ)と、第3の端点D1と第4の端点D2との距離ld(すなわち線分LS22の長さ)とが等しくなるような直線L3,L4のx座標位置をそれぞれ求めることにより、2本の線分LS21,LS22を特定する。
【0034】
続いて、中心算出部53は、第3の端点D1及び第4の端点D2のうち第1の端点C1とは逆側にある端点(図4及び図5では端点D2)と、第1の端点C1とを結ぶ第3の線分LS23を求める。また、中心算出部53は、第3の端点D1及び第4の端点D2のうち第2の端点C2とは逆側にある端点(図4及び図5では端点D1)と、第2の端点C2とを結ぶ第4の線分LS24を求める。なお、ここでいう逆側の端点とは、線分LS21におけるy座標が小さい側の端点C1に対する、線分LS22におけるy座標が大きい側の端点D2をいう。同様に、線分LS21におけるy座標が大きい側の端点C2に対する、線分LS22におけるy座標が小さい側の端点D1をいう。
【0035】
以上の演算ののち、中心算出部53は、第3の線分LS23と第4の線分LS24との交点座標を、撮像データD2における識別対象物15の中心位置Cとみなす。こうして、中心算出部53は、識別対象物15の中心位置Cを算出することができる。
【0036】
なお、上記処理において、中心算出部53は、第1及び第2の線分LS11,LS12(又はLS21,LS22)をそれぞれ複数本特定することにより複数の交点を求め、該複数の交点の座標を平均することにより中心位置Cを算出してもよい。これにより、撮像窓の汚れや識別対象物15の表面の汚れ、識別対象物15の外縁と搬送路の側面との接触等による影響を低減し、中心位置Cを精度良く求めることができる。
【0037】
(第2の算出方法)
中心算出部53は、上述した第1の算出方法と同様にして、第1の端点A1及び第2の端点A2を結ぶ第1の線分LS11と、第1の線分LS11と平行であり且つ長さが等しい第2の線分LS12とを特定する。この第2の線分LS12は、第3の端点B1及び第4の端点B2を結ぶ。
【0038】
続いて、中心算出部53は、第3の端点B1及び第4の端点B2のうち第1の端点A1とは逆側にある端点(図4及び図5では端点B2)と、第1の端点A1とを結ぶ第3の線分LS13を求める。そして、中心算出部53は、第3の線分LS13の中点座標を、撮像データD2における識別対象物15の中心位置Cとみなす。或いは、中心算出部53は、第3の端点B1及び第4の端点B2のうち第2の端点A2とは逆側にある端点(図4及び図5では端点B1)と、第2の端点A2とを結ぶ第4の線分LS14を求める。そして、中心算出部53は、第4の線分LS14の中点座標を、撮像データD2における識別対象物15の中心位置Cとみなす。こうして、中心算出部53は、識別対象物15の中心位置Cを算出することができる。
【0039】
上述した中心位置算出方法では、x軸と平行な第1及び第2の線分LS11,LS12を求め、これらの線分LS11,LS12に基づいて識別対象物15の中心位置Cを算出したが、y軸と平行な第1及び第2の線分に基づいて中心位置Cを算出してもよい。
【0040】
すなわち、中心算出部53は、上述した第1の算出方法と同様にして、第1の端点C1及び第2の端点C2を結ぶ第1の線分LS21と、第1の線分LS21と平行であり且つ長さが等しい第2の線分LS22とを特定する。この第2の線分LS22は、第3の端点D1及び第4の端点D2を結ぶ。
【0041】
続いて、中心算出部53は、第3の端点D1及び第4の端点D2のうち第1の端点C1とは逆側にある端点(図4及び図5では端点D2)と、第1の端点C1とを結ぶ第3の線分LS23を求める。そして、中心算出部53は、第3の線分LS23の中点座標を、撮像データD2における識別対象物15の中心位置Cとみなす。或いは、中心算出部53は、第3の端点D1及び第4の端点D2のうち第2の端点C2とは逆側にある端点(図4及び図5では端点D1)と、第2の端点C2とを結ぶ第4の線分LS24を求める。そして、中心算出部53は、第4の線分LS24の中点座標を、撮像データD2における識別対象物15の中心位置Cとみなす。こうして、中心算出部53は、識別対象物15の中心位置Cを算出することができる。
【0042】
なお、上記処理においても、中心算出部53は、第1及び第2の線分LS11,LS12(又はLS21,LS22)をそれぞれ複数本特定することにより複数の第3の線分LS13(又はLS23)を求め、複数の第3の線分LS13(又はLS23)それぞれの中点を平均することにより中心位置Cを算出してもよい。同様に、中心算出部53は、第1及び第2の線分LS11,LS12(又はLS21,LS22)をそれぞれ複数本特定することにより複数の第4の線分LS14(又はLS24)を求め、複数の第4の線分LS14(又はLS24)それぞれの中点を平均することにより中心位置Cを算出してもよい。これにより、撮像窓の汚れや識別対象物15の表面の汚れ、識別対象物15の外縁と搬送路の側面との接触等による影響を低減し、中心位置Cを精度良く求めることができる。
【0043】
(第3の算出方法)
図6には、正六角形の識別対象物15の画像を中央部に含む撮像データD2が示されている。図6に示す撮像データD2の各画素は、M行N列(M、Nは2以上の整数)の二次元に配列されている。なお、以下の説明では、撮像データD2における識別対象物15の縁に相当する画素での階調値が、所定の閾値を超えるものとする。
【0044】
まず、座標(x,y)=(0,0)から(x,y)=(M−1,0)までの一行において、所定の閾値を超える階調値を有する画素を検出する。x座標がi≦x≦i+dを満たす画素群が所定の閾値を超える階調値を有するとき、その最初の画素の座標をS(i,0)とし、最後の画素の座標をE(i+d,0)とする。この場合、SとEとの画素間距離はdである。
【0045】
続いて、座標(x,y)=(0,1)から(x,y)=(M−1,1)までの一行において、所定の閾値を超える階調値を有する画素を検出する。x座標がi≦x≦i+dを満たす画素群が所定の閾値を超える階調値を有するとき、その最初の画素の座標をS(i,1)とし、最後の画素の座標をE(i+d,1)とする。この場合、SとEとの画素間距離はdである。
【0046】
このように、座標(x,y)=(0,j)の画素から(x,y)=(M−1,j)までの一行において、閾値を超える階調値を有する画素を検出する。x座標がi≦x≦i+dを満たす画素群が所定の閾値を超える階調値を有するとき、その最初の画素の座標をS(i,j)とし、最後の画素の座標をE(i+d,j)とする。この場合、SとEとの画素間距離はdである。このような演算を、y=0からN−1まで繰り返す。
【0047】
こうして求められた画素間距離d〜dに関し、相互の比較を行う。すなわち、画素間距離dと、画素間距離d,dn−1,・・・,dn/2のいずれかとが互いに等しいか否かを確認する。例えば画素間距離dと画素間距離dとが等しい場合、座標Sと座標Eとを結ぶ線分(第3の線分)と、座標Sと座標Eとを結ぶ線分(第4の線分)との交点は、識別対象物15の中心位置とみなされる。或いは、座標Sと座標Eとを結ぶ線分(若しくは座標Sと座標Eとを結ぶ線分)の中点は、識別対象物15の中心位置とみなされる。
【0048】
更に、このような演算を画素間距離d〜dn/2のそれぞれについて行い、結果を平均することにより、識別対象物15の中心位置を精度良く求めることができる。
【0049】
ここで、図7及び図8は、上述した中心位置算出方法の具体的な実施例を示すフローチャートである。図7に示されるように、まず、x座標およびy座標の初期値を設定する(ステップS1,S2)。そして、当該座標(x,y)における画素の階調値が所定の閾値以上か否かを判定しながら(ステップS3)、y座標がN−1に達するまでの各行について、x座標を0からM−1まで繰り返し設定する(ステップS4〜S7)。そして、階調値が所定の閾値以上である場合には(ステップS3でYes)、その閾値以上となる最初の階調値を有する最初の画素の座標S、及び最後の画素の座標Eをメモリに格納する(ステップS8)。そして、最初の画素の座標Sと最後の画素の座標Eとの距離dを求め(ステップS9)、このような距離dが存在する(すなわち、階調値が所定の閾値以上となる)箇所の総数nをメモリに格納する(ステップS10)。
【0050】
続いて、図8に示されるように、変数i,kを初期化したのち、変数iが1ずつ増加してn/2に達するまで次の処理を繰り返す(ステップS11〜S13)。まず、変数jを初期化し(ステップS14)、変数jがn/2に達するまで1ずつ加算しながら(ステップS15及びS16)、dとdn−jとが等しいか否かを判定する(ステップS17)。dとdn−jとが等しい場合(ステップS17でYes)、中心位置Cの座標を、次の数式
【数1】


によって求めることができる(ステップS18)。そして、中心位置Cとして求められた座標の個数kに1を加える(ステップS19)。
【0051】
以上の処理が全て終了したのち、求められた中心位置Cに関する複数の座標の平均値を算出する(ステップS20)。これにより、識別対象物15の中心位置Cを精度良く求めることができる。以上が、識別部2の中心算出部53における処理内容である。
【0052】
再び図1を参照する。円周データ取込部55は、識別対象物15の中心位置Cを中心とする所定の円周上のデータD14を撮像データD2から抽出するための手段である。すなわち、円周データ取込部55は、中心算出部53から中心位置Cに関する中心位置情報D13を受け取る。また、円周データ取込部55は、予め定められた円周情報(例えば半径など)D3を記憶部7の識別部位記憶領域73から読み出す。また、円周データ取込部55は、記憶部7の撮像データ記憶領域71から撮像データD2を読み出す。そして、円周データ取込部55は、中心位置情報D13及び円周情報D3に基づいて、中心位置Cを中心とする所定半径の円周(例えば図2(a)の円周A)上のデータD14を撮像データD2から抽出する。円周上のデータD14の一例を図2(b)に示す。なお、図2(b)において、横軸は円周Aにおける周方向位置であり、縦軸はデータ値である。円周データ取込部55は、抽出した円周上のデータD14を特徴区間抽出部57及び判定部9に提供する。
【0053】
特徴区間抽出部57は、円周上のデータD14において所定の特徴を有する特徴区間を決定するための手段である。すなわち、特徴区間抽出部57は、円周データ取込部55から円周上のデータD14を受け取る。そして、特徴区間抽出部57は、予め定められた特徴、例えば円周上のデータD14が当該区間にわたって規定範囲内の値を有するといった特徴を有する特徴区間(例えば、図2(b)において点a2及び点b2に挟まれた区間)を決定する。なお、特徴区間の特徴としては、この他にも、例えば当該区間のデータ値が所定レベルの変化率で連続するといった特徴など、他に様々な特徴を用いることができる。特徴区間抽出部57は、円周上のデータD14における特徴区間の位置(例えば、図2(b)における点a2及び点b2の周方向位置)を求める。また、特徴区間抽出部57は、例えば特徴区間の長さなどの情報を特徴区間情報D6として判定部9に提供する。
【0054】
また、特徴区間抽出部57は、抽出した特徴区間の位置と識別対象物の種類に応じて予め記憶された基準データにおける特徴区間の位置とに基づいて、特徴区間の位置関係を求める手段でもある。すなわち、特徴区間抽出部57は、記憶部7の基準データ記憶領域75から基準データの特徴区間の位置に関する基準位置情報D4を読み出す。ここで、図3(a)は、基準状態の識別対象物(以下、基準対象物という)17を示す図である。また、図3(b)は、図3(a)に示された基準対象物17の円周A上におけるデータ(基準データ)D8を示すグラフである。記憶部7は、基準データとして、例えば図3(b)に示す基準データD8を基準データ記憶領域75に記憶している。さらに、記憶部7は、基準位置情報D4として例えば図3(b)に示す点a及び点bの周方向における位置を基準データ記憶領域75に記憶している。特徴区間抽出部57は、記憶部7から読み出した基準位置情報D4と、円周上のデータD14における特徴区間の位置との関係を求める。そして、特徴区間抽出部57は、特徴区間の位置関係に関する位置関係情報D10を判定部9に提供する。なお、位置関係情報D10は、判定部9における円周A上のデータD14と基準データD8との関連付けに用いられる。
【0055】
さらに、特徴区間抽出部57は、姿勢角を求める手段でもある。すなわち、特徴区間抽出部57は、記憶部7から読み出した基準位置情報D4と、円周上のデータD14における特徴区間の位置との差を求めることにより、撮像データD2における識別対象物15の基準状態に対する姿勢角を求める。具体的には、円周上のデータD14の全データ数をN、点aと点a2との間隔(または点bと点b2との間隔)をLとすると、姿勢角θはθ=L×360/Nとして求められる。
【0056】
特徴区間抽出部57は、こうして求めた識別対象物15の姿勢角に関する姿勢角情報D5を、記憶部7の中心位置・姿勢角記憶領域77に記憶させる。なお、記憶部7は、識別対象物15の表面及び裏面の双方に対応する基準位置情報D4を記憶しておくことが好ましい。そして、特徴区間抽出部57は、特徴区間の長さ等に従って撮像データD2における識別対象物15の表裏を判別し、識別対象物15の表裏に応じた基準位置情報D4を用いて姿勢角を求めることが好ましい。
【0057】
識別部位取込部59は、識別対象物15の所定の識別部位における識別データD11を、識別対象物15の中心位置C及び姿勢角に基づいて撮像データD2から抽出するための手段である。すなわち、識別部位取込部59は、記憶部7の撮像データ記憶領域71から撮像データD2を読み出す。また、識別部位取込部59は、記憶部7の識別部位記憶領域73から識別部位情報D9を読み出す。ここで、識別部位情報D9とは、識別対象物15を識別するための識別部位(例えば、図2(a)及び図3(a)の領域B)の、中心位置Cを基準とする位置や大きさといった情報である。記憶部7は、このような識別部位情報D9を予め識別部位記憶領域73に記憶している。
【0058】
識別部位取込部59は、記憶部7の中心位置・姿勢角記憶領域77から姿勢角情報D5及び中心位置情報D13を読み出す。識別部位取込部59は、姿勢角情報D5及び中心位置情報D13に基づいて、識別部位情報D9に示された識別部位(図2(a)の領域B)を撮像データD2において特定する。そして、識別部位取込部59は、特定した識別部位における識別データD11を撮像データD2から抽出し、該識別データD11を判定部9に提供する。なお、記憶部7は、識別対象物15の表面及び裏面の双方に対応する識別部位情報D9を記憶しておくことが好ましい。そして、識別部位取込部59は、識別対象物15の表裏に応じた識別部位情報D9を用いて識別部位を抽出することが好ましい。
【0059】
判定部9は、識別対象物15の円周A上のデータD14と、硬貨の種類に応じて予め記憶された該円周A上の基準データD8とを特徴区間に基づいて比較することにより、識別対象物15が基準対象物17と一致しているか否かを判定するための手段である。すなわち、判定部9は、識別対象物15の円周A上のデータD14を円周データ取込部55から受け取る。また、判定部9は、記憶部7の基準データ記憶領域75から、円周A上の基準データD8を読み出す。また、判定部9は、円周A上のデータD14における特徴区間の位置関係情報D10を特徴区間抽出部57から受け取る。判定部9は、位置関係情報D10に基づいて、円周A上のデータD14における特徴区間の位置及び基準データD8における特徴区間の位置を基準にして円周A上のデータD14と基準データD8とを互いに関連付ける。
【0060】
円周A上のデータD14と基準データD8とを互いに関連付ける手法の一例としては、データD14と基準データD8とをそれぞれリングバッファ内に格納し、それぞれの特徴区間の位置を起点にしてデータを順次読み出すとよい。これにより、データD14及び基準データD8における同一部位のデータ同士が互いに関連付けられることとなる。なお、データD14と基準データD8とを互いに関連付ける方法はこれに限られるものではなく、特徴区間の位置を基準にデータD14及び基準データD8を揃えてバッファ内に格納するなど、他に様々な方法を適用することができる。また、データD14及び基準データD8を格納するためのバッファとしては、記憶部7内にバッファ用の領域を設けてもよいし、CPU内部のレジスタを用いてもよい。
【0061】
判定部9は、互いに関連付けられた円周A上のデータD14と基準データD8とを比較し、これらの一致・不一致を判定することにより、識別対象物15が基準対象物17一致しているか否かを判定する。なお、記憶部7は、識別対象物15の表面及び裏面の双方に対応する基準データD8を記憶しておくことが好ましい。そして、判定部9は、撮像データD2における識別対象物15の表裏に応じた基準データD8を用いて上記判定を行うことが好ましい。
【0062】
また、判定部9は、円周A上のデータD14における特徴区間の長さと基準データD8における特徴区間の長さとを比較することにより、識別対象物15が基準対象物17と一致しているか否かを判定する機能をさらに備えている。すなわち、判定部9は、円周A上のデータD14における特徴区間(a2−b2間)の長さに関する特徴区間情報D6を特徴区間抽出部57から受け取る。また、判定部9は、基準対象物17における特徴区間の長さ(基準長さ)に関する標準特徴区間情報D7を記憶部7の基準データ記憶領域75から読み出す。ここで、記憶部7は、図3(a)に示される基準対象物17における特徴区間(a1−b1間)の長さを標準特徴区間情報D7として基準データ記憶領域75に記憶している。判定部9は、特徴区間情報D6と標準特徴区間情報D7とに基づき、識別対象物15の特徴区間長さと基準対象物17の特徴区間長さとを比較し、これらの長さの一致・不一致を判定することにより、識別対象物15が基準対象物17と一致しているか否かを判定する。なお、記憶部7は、識別対象物15の表面及び裏面の双方に対応する標準特徴区間情報D7を記憶しておくことが好ましい。そして、判定部9は、撮像データD2における識別対象物15の表裏に応じた標準特徴区間情報D7を用いて上記判定を行うことが好ましい。
【0063】
また、判定部9は、次の機能をさらに備えている。すなわち、判定部9は、識別データD11と硬貨の種類に応じて予め記憶された基準識別データD12とを比較し、これらの一致・不一致を判定することにより、識別対象物15が基準対象物17と一致しているか否かを判定する。具体的には、判定部9は、識別部位取込部59から識別データD11を受け取るとともに、記憶部7の基準データ記憶領域75から基準識別データD12を読み出す。ここで、記憶部7は、例えば図3(a)に示す基準対象物17の領域Bにおけるデータを基準識別データD12として基準データ記憶領域75に予め記憶している。判定部9は、識別データD11と基準識別データD12とを比較することにより、識別対象物15が基準対象物17と一致しているか否かを判定する。なお、記憶部7は、識別対象物15の表面及び裏面の双方に対応する基準識別データD12を記憶しておくことが好ましい。そして、判定部9は、撮像データD2における識別対象物15の表裏に応じた基準識別データD12を用いて上記判定を行うことが好ましい。
【0064】
判定部9は、円周A上のデータD14と基準データD8とが互いに一致しており、且つ識別対象物15の特徴区間長さと基準対象物17の特徴区間長さとが互いに一致しており、且つ識別データD11と基準識別データD12とが互いに一致している場合に、識別対象物15が基準対象物17と一致していることを示す一致信号Sdを識別装置1の外部へ出力する。
【0065】
なお、判定部9は、前述した処理部5と同様に、例えば中央演算処理装置がプログラムを読み込むことにより構成されてもよく、また、電子回路によって構成されてもよい。
【0066】
制御部11は、識別部2の処理部5及び判定部9を制御するための手段である。制御部11は、硬貨投入口に硬貨(識別対象物15)が投入されたことを示す投入信号Saを画像入力部3から受け取る。そして、制御部11は、投入信号Saを受けると、撮像データD1の処理を開始するように処理部5に制御信号Sbを送る。また、制御部11は、特徴区間情報D6、位置関係情報D10、識別データD11、及びデータD14が処理部5から出力されると、判定部9に識別対象物15を判定するよう指示信号Scを送る。
【0067】
続いて、画像入力部3の構成について説明する。図9は、本実施形態による画像入力部3の構成図である。図9を参照すると、画像入力部3は、搬送ベルト31と、搬送板32と、透明ガラス34と、透明板35と、発光素子36と、CCD37と、レンズ38と、撮像タイミングセンサ39と、制御回路40とを備えている。
【0068】
搬送ベルト31と搬送板32との間には、硬貨が搬送されるための空隙である搬送路33が設けられている。また、搬送板32は開口32aを有しており、この開口32aに透明ガラス34が嵌め込まれている。この透明ガラス34は、識別対象物15を撮像するための窓となる。この開口32aは、識別対象物15の大きさよりもやや大きく設けられるとよい。
【0069】
透明板35は、例えばアクリル板といった可視光や赤外光に対して透明な材料からなり、搬送板32の搬送路33とは反対側の面上に設けられている。透明板35には、搬送板32の開口32aに応じて開口35aが設けられている。また、透明板35の内部には、発光素子36といった光源が開口32aの周囲に配置されている。発光素子36としては、例えば赤外光を照射する赤外光LEDといった赤外光源を好適に用いることができる。
【0070】
CCD37は、識別対象物15の表面を撮像するための撮像装置である。CCD37は、その受光面が透明ガラス34と対向するように配置されており、識別対象物15が透明ガラス34を通過すると、発光素子36から出射された光のうち識別対象物15の表面において反射した光を撮像して撮像データD1を生成する。また、CCD37は、制御回路40からの撮像信号Sfに応じたタイミングで撮像する。CCD37は、生成した撮像データD1を制御回路40へ送る。CCD37と透明ガラス34との間にはレンズ38が配置されており、レンズ38は識別対象物15の表面からの光を集光してCCD37に好適に入射させる。
【0071】
撮像タイミングセンサ39は、搬送路33において透明ガラス34よりも上流側に設けられており、識別対象物15が通過すると通過信号Seを制御回路40へ送る。制御回路40は、発光素子36及びCCD37を制御するための回路である。制御回路40は、撮像タイミングセンサ39から通過信号Seを受けると、発光素子36に電源電圧V1を印加して発光素子36を点灯させるとともに、CCD37に撮像信号Sfを送る。そして、CCD37から撮像データD1を受け取り、該撮像データD1を識別部2へ送る。
【0072】
図10に示すフローチャートを参照しながら識別装置1の動作について説明する。まず、画像入力部3において識別対象物15の表面が撮像され、撮像データD1が生成される(ステップS101)。続いて、撮像処理部51において撮像データD1がグレースケール変換及び数値化されて撮像データD2が生成され、該撮像データD2が記憶部7の撮像データ記憶領域71に記憶される(S103)。そして、中心算出部53において、撮像データD2における識別対象物15の中心位置Cが求められる(S105)。識別対象物15の中心位置Cに関する中心位置情報D13は、記憶部7の中心位置・姿勢角記憶領域77に記憶される。
【0073】
続いて、円周データ取込部55において、識別対象物15の中心位置Cに基づいて撮像データD2から円周上のデータD14が抽出される(S107)。このとき、円周上のデータD14は、予め記憶部7の識別部位記憶領域73に記憶されている円周情報D3に基づいて抽出される。そして、特徴区間抽出部57において、円周上のデータD14から所定の特徴を有する特徴区間が決定される(S109)とともに、決定された特徴区間の長さに関する特徴区間情報D6と、特徴区間の位置とが求められる(S111)。続いて、求められた特徴区間の位置と予め記憶部7の基準データ記憶領域75に記憶された基準位置情報D4とに基づいて、位置関係情報D10が生成されるとともに(S113)、識別対象物15の姿勢角が求められる(S115)。識別対象物15の姿勢角に関する姿勢角情報D5は、記憶部7の中心位置・姿勢角記憶領域77に記憶される。
【0074】
続いて、識別部位取込部59において、識別対象物15における所定の識別部位に対応する識別データD11が撮像データD2から抽出される(S117)。このとき、識別部位は、記憶部7の中心位置・姿勢角記憶領域77に記憶されている中心位置情報D13及び姿勢角情報D5、並びに識別部位記憶領域73に記憶されている識別部位情報D9に基づいて抽出される。
【0075】
続いて、判定部9において、位置関係情報D10に基づいて、基準データD8と円周A上のデータD14とが互いに関連付けられ、円周A上のデータD14と基準データD8との一致/不一致が判定される。また、判定部9において、記憶部7の基準データ記憶領域75に記憶されている標準特徴区間情報D7と特徴区間情報D6とに基づいて、データD14における特徴区間の長さが基準データD8における特徴区間の長さと一致しているか否かが判定される。また、判定部9において、記憶部7の基準データ記憶領域75に記憶されている基準識別データD12と識別データD11とが相互に比較され、これらの一致/不一致が判定される。そして、判定部9においてこれらの判定結果が全て一致している場合に、一致信号Sdが識別装置1の外部へ出力される(S119)。
【0076】
以上に説明した本実施形態による識別装置1は、次の効果を有する。すなわち、本実施形態による識別装置1によれば、正偶数多角形等の平面形状を有する識別対象物15の撮像データDにおける該識別対象物15の中心位置Cを好適に求めることができる。特に、上述した第1及び第2の線分LS11,LS12(又はLS21,LS22)を任意に特定できるので、磨耗している頂点や、撮影条件の都合で明確でない輪郭部分を避けることが可能となり、撮像データDにおける識別対象物15の中心位置Cをより精度良く求めることができる。従って、識別対象物15を精度良く識別できる。
【0077】
また、本実施形態のように、識別部2の中心算出部53は、撮像データD上の直交座標系を設定し、第1の線分LS11(又はLS21)を該直交座標系の一の座標軸であるx軸(又はy軸)と平行とすることが好ましい。或いは、撮像データDが、M行N列に配置された複数の画素からなり、第1の線分LS11(又はLS21)が、撮像データDの行方向又は列方向に延びる線分であることが好ましい。これにより、識別部2の中心算出部53における演算処理量を軽減することができる。
【0078】
本実施形態の識別装置1は、前述したように、正偶数角形、正偶数角形の各辺が内側に屈曲した形状、又はこれらの角が丸められた形状といった、円形とは異なる平面形状を有する識別対象物を精度良く識別することができる。より正確には、識別装置1が識別する識別対象物の平面形状は、中心位置Cとそれぞれの頂点とを結ぶ各直線を挟んで線対称となる形状である。このような形状には、星形正偶数角形や、星形正偶数角形の角が丸められた形状も含まれる。
【0079】
このような識別対象物の例としては、以下のものが挙げられる。
<正四角形若しくはその角が丸められた形状>
・インドの5パイス硬貨、旧2アンナ白銅貨、旧5アンナ白銅貨
・ビルマの2パイス白銅貨
・バングラデシュの5イシャアルミ貨
・ブータンの5チェトラムアルミ貨
・オランダ領アンチルの5セント白銅貨
・キュラソーの5セント白銅貨
・バハマの15セント白銅貨
・パキスタンの旧1/2アンナ白銅貨、5パイスニッケル黄銅貨、5パイスアルミ貨
<正六角形若しくはその角が丸められた形状>
・インドの20パイス硬貨、旧3パイスアルミ貨
・エジプトの旧2ピアストル銀貨
・ビルマの旧25パイス白銅貨
<正八角形若しくはその角が丸められた形状>
・インドの旧1ルピー銀貨
・マルタの25セント青銅貨
<正十二角形若しくはその角が丸められた形状>
・イスラエルの5シュケル硬貨
・オーストラリアの50セント白銅貨
・フィジーの50セント白銅貨
・アルゼンチンの10ペソニッケル張り鉄貨
・コロンビアの50センタボニッケル張り鉄貨
<正十二角形の各辺が内側に屈曲した形状>
・エジプトの旧5ミリエム青銅貨
・スーダンの5ミリム黄銅貨、10ミリム黄銅貨
・パキスタンの2パイス青銅貨
・インドの旧10パイス白銅貨、旧10パイスアルミ貨
・香港の旧20セント黄銅貨
【0080】
なお、本実施形態では、撮像データDにおいて所定の閾値以上の階調値を有する画素に基づいて、識別対象物15の縁上の端点A1,A2,B1,及びB2等を特定している。実際の識別対象物15には模様などの刻印があり、閾値以上の階調値を有する画素であっても、識別対象物15の縁上の画素とは限らない。そこで、本実施形態の中心算出部53は、画素間の距離が最長となる画素(すなわち、階調値が閾値以上となる範囲の最初及び最後の画素)を抽出している。これにより、端点A1,A2,B1,及びB2等を精度良く特定できる。
【0081】
本発明による識別装置は、上記実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、図11に示されるように、上記実施形態では、閾値以上の階調値を有する画素の検出を、x軸方向(行方向)またはy軸方向(列方向)の一端から他端へ向けて行なっている(図11の矢印F1)。しかしながら、閾値以上の階調値を有する画素の検出方向はこれに限られず、例えば、閾値以上の階調値を有する画素の検出を、x軸方向(行方向)またはy軸方向(列方向)の両端から内側へ向けて行ってもよい(図11の矢印F2,F3)。
【0082】
また、上記実施形態では、識別部2が、識別対象物15の中心位置Cを求めたのち、この中心位置Cを中心とする円周上の特徴区間や所定の識別部位を基準対象物と比較することにより識別対象物15を識別している。しかしながら、識別のための識別対象物の領域はこれらに限られず、例えば中心位置を求めた上で抽出される識別対象物の外形を、識別パラメータとして利用してもよい。
【符号の説明】
【0083】
1…識別装置、2…識別部、3…画像入力部、5…処理部、7…記憶部、9…判定部、11…制御部、15…識別対象物、17…基準対象物、51…撮像処理部、53…中心算出部、55…円周データ取込部、57…特徴区間抽出部、59…識別部位取込部、71…撮像データ記憶領域、73…識別部位記憶領域、75…基準データ記憶領域、77…中心位置・姿勢角記憶領域、A1,C1…第1の端点、A2,C2…第2の端点、B1,D1…第3の端点、B2,D2…第4の端点、C…中心位置、LS11,LS21…第1の線分、LS12,LS22…第2の線分、LS13,LS23…第3の線分、LS14,LS24…第4の線分。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面形状が、正偶数角形、正偶数角形の各辺が内側に屈曲した形状、又はこれらの角が丸められた形状である識別対象物を識別する識別装置であって、
前記識別対象物の表面を撮像して該識別対象物に関する撮像データを生成する画像入力部と、
前記撮像データにおける前記識別対象物の中心位置を算出し、前記識別対象物の所定の識別部位における識別データを前記撮像データから前記中心位置に基づいて抽出し、前記識別データと予め記憶された基準データとを比較することにより、前記識別対象物を識別する識別部と
を備え、
前記識別部が、前記識別対象物の前記中心位置を算出する際に、前記撮像データにおける前記識別対象物の縁上にある第1及び第2の端点を結ぶ第1の線分、前記撮像データにおける前記識別対象物の縁上にある第3及び第4の端点を結ぶ線分であって、前記第1の線分と平行であり且つ長さが等しい第2の線分を特定し、前記第3及び第4の端点のうち前記第1の端点とは逆側にある端点と前記第1の端点とを結ぶ第3の線分、並びに前記第3及び第4の端点のうち前記第2の端点とは逆側にある端点と前記第2の端点とを結ぶ第4の線分を求め、前記第3の線分と前記第4の線分との交点を前記中心位置とする、識別装置。
【請求項2】
前記識別部が、前記第1及び第2の線分をそれぞれ複数本特定することにより複数の前記交点を求め、該複数の交点から前記中心位置を算出する、請求項1に記載の識別装置。
【請求項3】
平面形状が、正偶数角形、正偶数角形の各辺が内側に屈曲した形状、又はこれらの角が丸められた形状である識別対象物を識別する識別装置であって、
前記識別対象物の表面を撮像して該識別対象物に関する撮像データを生成する画像入力部と、
前記撮像データにおける前記識別対象物の中心位置を算出し、前記識別対象物の所定の識別部位における識別データを前記撮像データから前記中心位置に基づいて抽出し、前記識別データと予め記憶された基準データとを比較することにより、前記識別対象物を識別する識別部と
を備え、
前記識別部が、前記識別対象物の前記中心位置を算出する際に、前記撮像データにおける前記識別対象物の縁上にある第1及び第2の端点を結ぶ第1の線分、前記撮像データにおける前記識別対象物の縁上にある第3及び第4の端点を結ぶ線分であって、前記第1の線分と平行であり且つ長さが等しい第2の線分を特定し、前記第3及び第4の端点のうち前記第1の端点とは逆側にある端点と前記第1の端点とを結ぶ第3の線分を求め、前記第3の線分の中点を前記中心位置とする、識別装置。
【請求項4】
前記識別部が、前記第1及び第2の線分をそれぞれ複数本特定することにより複数の前記第3の線分を求め、該複数の第3の線分それぞれの中点から前記中心位置を算出する、請求項3に記載の識別装置。
【請求項5】
前記識別部が、前記撮像データ上の直交座標系を設定し、前記第1の線分を該直交座標系の一の座標軸と平行とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の識別装置。
【請求項6】
前記撮像データが、M行N列(M、Nは2以上の整数)に配置された複数の画素からなり、
前記第1の線分が、前記撮像データの行方向又は列方向に延びる線分である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の識別装置。
【請求項7】
前記正偶数角形が、正四角形、正六角形、正八角形、及び正十二角形のうち何れかである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の識別装置。

【図1】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−238122(P2011−238122A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110406(P2010−110406)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000143396)株式会社高見沢サイバネティックス (55)
【Fターム(参考)】