説明

譜面台

【課題】一体成型により簡単に製造することができ、楽譜がめくれないように保持することができる実用性のある安価な譜面台を提供すること。
【解決手段】この譜面台は、金型合わせやスライド金型を用いることにより、板状の背面部(背面板)1、底部(底板)2及びストッパー部3を合成樹脂で一体成型することができる。また、この譜面台の利用時には、背面部1により楽譜を背面から支持し、背面部1の下端から前方に向かって設けられた底部2により楽譜の重量を下部から支えると共に、底部2の前端から上方に延びるストッパー部3は、楽譜の前面下部を効果的に保持する譜面ストッパーとして機能する。また、底部2或いは背面部1の下部にストッパー部3に対応して形成された開口Hは、ほこり等の異物を除去するのに役立ち、ストッパー部3或いは楽譜の背後に隠れるのであまり美観を損ねない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、譜面ストッパーと共に一体成型した譜面台に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、小型のキーボードや電子楽器などの楽器に付属する取り外し可能な簡易構造の譜面台は、例えば、特許文献1,2に示されるように、プラスチックの一体成型品で構成するものが知られている。
【特許文献1】特開平11−272258号公報
【特許文献2】特開平11−272259号公報
【0003】
図1は、従来技術による譜面台の構造を説明するための図である。図1〔1〕に示す従来技術1では、(1a)に示すように、パーティング面を譜面台の主面即ち背面板の板面に合わせた上下の金型を用いて、プラスチックで一体成型された譜面台を作製することができる。この譜面台は、楽譜が載置される背面板と底部がL字状の断面をもって結合され、利用時には、(1b)に示すように、背面板で楽譜を背面から支持しつつ底部で楽譜の重量を支える。この場合、楽譜が厚い本を使用するときは、(1b)左側に矢印Aで示すように、ページが勝手にめくれてしまい、薄い楽譜のときには、(1b)右側に矢印Bで示すように、楽譜が曲がってずり落ちてしまうという事態が生じる。
【0004】
そこで、図1〔2〕に示す従来技術2のように、金型の形状と抜き方向を工夫して少しでも底部の前端が楽譜の最下端に引っかかるような構造にすることが考えられる。つまり、従来技術2では、特許文献1,2と同様に、成型する譜面台の主面を上下金型のパーティング面に対して傾斜させ、上金型の抜き方向までの角度で引っかかり部を成型して、譜面台の底部前端に設けた引っかかり部により、楽譜がずり落ちないようにする。しかしながら、この方法では、底部に対する引っかかり部の角度を小さくするにつれて金型は厚く大きく重くなるので、引っかかり形状に限界があり、十分な楽譜保持効果が得らない。
【0005】
このように、従来の譜面台一体成型技術では、金型で成型するという制約上、十分に楽譜を保持することができる部材を譜面台底部に設けることができないので、楽譜が落ちやすい、本の楽譜はページが戻りやすい、などの不具合を解消することができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、このような事情に鑑み、一体成型により簡単に製造することができ、楽譜がめくれないように保持することができる実用性のある安価な譜面台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の主たる特徴に従うと、楽譜の背面を支持するための板状の板状の背面部(背面板1)と、楽譜の下部を支持するために背面部(1)の下端から前方向に延びる板状の底部(底板2)と、楽譜の前面下部を保持するために底部(2)の前端から上方向に延びる板状のストッパー部(3:3a,3b;3c;3d)とから成り、これら背面部(1)、底部(2)及びストッパー部(3)が合成樹脂で一体成型されている譜面台〔請求項1〕が提供される。なお、括弧書きは、理解の便のために付記した実施例の参照記号、用語等を表わし、以下においても同様である。
【0008】
この発明による譜面台において、ストッパー部(3)は複数の板状体で構成され、底部(2)には開口(H)が形成される〔請求項2〕ように構成することができる。また、背面部(背面板1)の下部には開口(H)が形成される〔請求項3〕ように構成することができる。
【発明の効果】
【0009】
この発明の主たる特徴に従う譜面台(請求項1)は、板状の背面部(背面板1)、底部(底板2)及びストッパー部(3)が合成樹脂で一体成型されて構成され、利用時には、背面部(1)により楽譜を背面から支持し、底部(2)により、楽譜の重量を下部から支えると共に、底部(2)の前端から上方向に延びるストッパー部(3:3a,3b;3c;3d)は、楽譜の前面下部を効果的に保持する譜面ストッパーとして機能し、この譜面ストッパー構造は、金型合わせやスライド金型を用いることにより簡単に得られる。従って、この発明によれば、一体成型により簡単に製造することができ、楽譜がめくれないように保持することができる実用性のある安価な譜面台を提供することができる。
【0010】
この発明による譜面台においては、ストッパー部(3:3a,3b;3c;3d)を複数の板状体で構成し、底部(2)には開口(H)が形成されるように構成される(請求項2)。従って、この発明によれば、譜面台利用時に、楽譜下部の要所を的確に保持し、底部に溜まったほこり等の異物を開口から簡単に除去することができる。また、金型合わせ等により、ストッパー部(3)の背後に開口(H)を形成することができ、あまり美観を損ねないようにすることができる。
【0011】
この発明による譜面台においては、また、背面部(背面板1)の下部には開口(H)が形成されるように構成される(請求項3)。従って、この発明によれば、底部に溜まったほこり等の異物を背面部下部の開口から簡単に除去することができ、譜面台利用時には、背面部下部の開口は楽譜の背後に隠れるのであまり美観を損ねない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、この発明の好適な実施の形態について詳述するが、これは単なる一例であって、この発明の精神を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0013】
〔譜面台の基本構成〕
従来技術の説明で述べたような簡易構造の譜面台では、底部から上方向に十分な高さを有するストッパーを一体成型で突出させることにより、好ましい楽譜保持効果を得るようにすることが考えられる。しかしながら、十分に楽譜保持効果のある譜面ストッパーを譜面台に設けようとすると、ストッパーには或る程度の大きさが必要になるため、別部品の棒状などのストッパー部品を譜面台本体に取り付ける組立て方式を採用してストッパー付きの譜面台を作製することになる。しかしながら、このような組立て方式では、部品点数が多くなるだけでなく、構造が複雑になり、重量の増加、コストアップ等を伴うので、安価な譜面台モデルでは実現することができない。
【0014】
そこで、同等の効果のある譜面ストッパーを譜面台と一体成型するものとすると、例えば、図1(1a)と同様に上下の金型間の水平な樹脂充填部で譜面台の背面部を形成するようにした上下金型の合わせ構造では、ストッパーに対向する位置に譜面台の底部と背面部が存在するので、ストッパーと譜面台の底部及び背面部との間の空間は上金型の抜き方向に対してアンダーカットになってしまい、何らかの工夫をしなければ、ストッパーを譜面台と一体成型することはできない。
【0015】
これに対処するために、この発明の一実施例では、金型合わせの凸状部或いはスライド金型により、このようなアンダーカットの部分を作り出して譜面ストッパーを形成することができる。図2〜図4は、この発明の一実施例による譜面台の基本的な構成を示す。
【0016】
〔1〕第1の基本構造
第1の基本構造では、図2〔2〕に示されるように、譜面台を構成する板状の背面部(背面板)1、底部(底板)2、ストッパー部3、連結部4及び脚部5が合成樹脂で一体成型され、背面部1の下端から前方に設けられた底部2の前端には、上方に延びる複数のストッパー部3が適当な間隔で設けられ、底部2及び背面部1のストッパー部3に対向する部分には開口Hが形成される。ここで、ストッパー部3は、譜面ストッパーとして機能するために、楽譜の下部を保持するのに十分な高さ(上下方向)と幅(左右方向)を有し、しかも、できるだけユーザ(演奏者)によるページめくりに支障がないような高さに選定される。なお、譜面台の方向については、図中の矢印のように、設置時の譜面台に対してユーザが図2〔2〕右側の左側から背面部1を正視した時の方向で表わすものとする。
【0017】
このような譜面台構造は、典型的には、図2〔1〕に示されるように、金型合わせの凸状部を利用することにより実現することができる。図2〔1〕は、合成樹脂を充填した組合せ状態の上下金型に対して、ストッパー部3を上下に通りパーティング面(背面板1の表面、裏面或いは中間の面=主面に一致)に垂直な面で切った断面を示し、ストッパー部3が形成されない他の箇所については図1(1a)と同様の断面となる。下金型の上部は、図示のように、ストッパー部3を形成する箇所が凸状を呈し、上金型は、これに対応する下部箇所が凹状を呈する。つまり、ストッパー部3を形成しようとする箇所では、本来、ストッパー部3と底部2及び背面部1(図示破線部)との間にアンダーカット部UCが生じるが、この金型合わせ構造では、このアンダーカット部UCは下金型の凸状部で補充され、ストッパー部3を形成することができる。また、この箇所では、底部2と背面部3が形成されず、開口部Hとなる。
【0018】
第1の基本構造によると、図2〔2〕に示すように、底部2前端の所望箇所に十分な大きさを持った複数のストッパー部3が形成された譜面台が得られるので、電子楽器などの上面パネルの譜面台支持溝に脚部5を挿入してこの譜面台を使用する際には、楽譜の要所を的確に保持し、楽譜のめくれや脱落を防止することができる。また、底部2及び背面部1のストッパー部3に対向する部分には開口Hが形成されるので、ほこり等の異物が溜まったときには開口Hから簡単に除去することができる。さらに、開口Hは、上述した金型合わせの利用でストッパー部3に対応する底部2の位置に簡単に形成することができ、使用時には、ストッパー部3の背後に位置するので、あまり美観を損ねないようにすることができる。
【0019】
なお、この譜面台の使用時には、図2〔2〕のように、背面部1は、垂直方向からやや傾けられて、楽譜を背後(背面)から支持すると共にユーザが楽譜を見やすくし、底部2は、水平面に並行或いは水平面からやや傾けられ(背面部1とは直角以上で設置)、譜面台に載置された楽譜の重量を下部から支える。また、底部2の前端に設置されるストッパー部3は、図示の例では背面部1と略並行に形成されているが、この設置角度よりも若干開いた状態にして分厚い楽譜を容易に載置することができるようにしてもよいし、後述するように、閉じた状態にして薄い楽譜でも的確に保持するようにしてもよい。さらに、ストッパー部3は、1つでもよいが、開口部Hの形成が伴うため左右方向の幅が制限されるので、複数ある方が楽譜支持効果の点で好ましい。
【0020】
第1の基本構造は、図3に示すように、スライド金型を利用したスライド式金型構造によって実現することもできる。スライド式金型構造においては、ストッパー部3を形成する箇所では、図3〔1〕に示すように、上金型との間でストッパー部3及び底部2を形成するために断面が台形状を呈し、上述したアンダーカット部UCがスライド金型SDaで補充される。また、他の箇所では、図3〔2〕に示すように、下金型との間で底部2及び背面部1(図示破線部)を形成するために断面が略平行四辺形状を呈するスライド金型SDaが用意される。成型の際には、斜めスライドやシリンダーなどにより、上下金型間に形成されたスライド空間にスライド金型SDaを挿入し図示左方向にスライドさせて図示位置に定置し、成型の後は、スライド金型SDaを図示右方向にスライドさせる。
【0021】
図3のスライド式金型構造によると、図2〔2〕のように、底部2前端の所望箇所に複数のストッパー部3が形成された譜面台を作製することができると共に、底部2のストッパー部3に対向する部分には開口Hを形成することができる。
【0022】
なお、図3のように、背面板1の上下方向(図3〔1〕では左右方向)にスライドさせる(「縦方向スライド方式」という)金型構造では、基本的に、ストッパー部3の形成と開口部Hの形成とは独立しているので、図2〔2〕の通りにストッパー部3や開口部Hを形成しなくてもよく、例えば、ストッパー部3の形成箇所に関係なく、底部2の要所に開口部Hを形成することができる。また、背面板1については、図2〔2〕のようにストッパー部3に対向して開口部H(図3〔1〕の破線部に対応する)設けてもよいし、設けてなくてもよい。
【0023】
〔2〕第2の基本構造
第2の基本構造では、図4〔2〕に示されるように、譜面台を構成する板状の背面部(背面板)1、底部(底板)2、ストッパー部3、連結部4及び脚部5を合成樹脂で一体成型され、背面部1の下端から前方に延びる底部2の前端には、幅広で強度に優れた1乃至複数(図示例では1)のストッパー部3が上方に向かって設置され、必要に応じて、底部2に開口が形成される。この譜面台構造は、典型的には、図3や図4〔1〕のようなスライド金型を利用することにより実現することができる。
【0024】
例えば、図3の縦方向スライド方式においては、底部2前端の1乃至複数(図示例では1)の所望箇所にストッパー部3を形成することにより、第2の基本構造を実現することができる。しかしながら、このような縦方向スライド方式では、ストッパー部3の設置角度を背面板1の上下方向に並行な角度以下(閉じた角度)にして、ストッパー部3の先端を背面板1に近づけるようにすることができない。そこで、このような場合には、図4〔1〕に示されるような横方向スライド方式を用いる。
【0025】
図4〔1〕は、横方向スライド方式の金型構造について、ストッパー部3を形成する箇所の断面を示す。この金型構造では、下金型との間で底部2及び背面部1(図3〔1〕の破線部に相当)を形成し、上金型との間でストッパー部3を形成するために断面が略平行四辺形状を呈するスライド金型SDbが用意される。また、上金型には、ストッパー部3を形成する箇所に、図4〔1〕に示すように、スライド金型SDbとの間で当該ストッパー部3を形成するための樹脂充填部が形成され、下金型については、必要に応じて、底部2を形成せず開口部を設けたい箇所で直接スライド金型SDbに接触する構造にする。
【0026】
成型の際には、上下金型間に形成されたスライド空間にスライド金型SDbを背面板1の左又は右方向(図4〔1〕で紙面に垂直な方向)にスライドさせて定置し、成型後は、スライド金型SDに逆方向にスライドさせる(「横方向スライド方式」という)。
【0027】
第2の基本構造によると、図2〔2〕にストッパー部3を1つとした極端な例で示すように、左右方向の幅が広く十分な高さを持った1乃至複数のストッパー部3が底部2前端の所望箇所に強固に形成された譜面台が得られるので、電子楽器などの上面パネルの譜面台支持溝に脚部5を挿入してこの譜面台を使用する際には、分厚い楽譜本でもしっかりと保持し、楽譜のめくれや脱落を防止することができる。また、底部2には、ストッパー部3の設置箇所に拘わらず、清掃等に適した任意箇所に開口部Hを形成することができる。
【0028】
このように、この発明の一実施例による譜面台では、金型合わせやスライド金型を用いることにより、板状の背面部(背面板)1、底部(底板)2及びストッパー部3を合成樹脂で一体成型することができるので、製造工程を少なくして、部品点数が少なく耐久性のある安価な譜面台を作製することができる。この譜面台の利用時には、背面部1により楽譜を背面から支持し、背面部1に下端から前方に向かって設けられた底部2により楽譜の重量を下部から支えると共に、底部2の前端から上方に延びるストッパー部3は、楽譜の前面下部を効果的に保持する譜面ストッパーとして機能する。また、底部2或いは背面部1の下部にストッパー部3に対応して形成された開口Hは、ほこり等の異物を除去するのに役立ち、ストッパー部3或いは楽譜の背後に隠れるのであまり美観を損ねない。
【0029】
以上、この発明の一実施例による譜面台の基本構造について説明したが、製品として提供される譜面台は、全面が一体成型されたワンピース構造であっても、中央部で半分に折れる複数ピースの組立て式であっても構わない。要するに、この譜面台の特徴は、譜面台の背面部、底部及びストッパー部が一体に成型されていることにある。
【0030】
〔ストッパー部の他の構成例〕
この発明の一実施例による譜面台では、上述した基本構造を元にしてストッパー部の構造を種々に変形した態様で実施することができる。図5は、この発明の一実施例による譜面台ストッパーの他の構造例を示す。
【0031】
図5〔1〕に示される譜面台は、楽譜の乗る背面部1、楽譜の重量を支える底部2及び楽譜の載置を保持するストッパー部3が樹脂で一体に成型されると共に、ストッパー部3が、底部2に接続された支持部3aと支持部3aの端部から背面部1に延びる突出部3bとから構成され、例えば、図2〔1〕の金型合わせ又は図4〔1〕の横方向スライド金型を用いることにより作製することができる。
【0032】
この譜面台は、図5〔1〕右側に示すように、譜面台を単に立たせてているだけでは楽譜のページが滑ってしまうので、ストッパー部3に突出部3bを作ることにより、接触面積を減らすことで単位面積当たりにかかる力を強くし、更に楽譜が滑りにくくなるようにしたものである。つまり、楽譜のページが浮き上がろうとすると、突出部3bによりページを抑える力が集中し、ストッパー3と楽譜間のすべりを抑制する。
【0033】
なお、図5〔1〕左側には、複数のストッパー部3を持ち、底部2のストッパー部3対向部分に開口部Hが形成される第1の基本構造を持つ譜面台が示されているが、1乃至複数のストッパー部3を持ち開口部Hを底部2に任意に形成可能な第2の基本構造を持つ譜面台についても、図5〔1〕に示す突出部付きストッパーの実施態様を適用することができる。また、次に図5〔2〕,〔3〕で説明する傾斜付き及び滑り止め付きストッパーの実施態様も、同様に、第1及び第2の基本構造を持つ譜面台に適用することができる。
【0034】
図5〔2〕に示される譜面台では、背面部1、底部2及びストッパー部3が樹脂で一体に成型されると共に、ストッパー部3が全体的に背面部1側に傾斜している。この譜面台は、例えば、図2〔1〕の金型合わせ又は図2〔1〕の横方向スライド金型を用いることにより作製することができる。ストッパー部3が背面部1の板面に対して平行或いは開いた状態であると、例えば、楽譜の閉じようとする力でページが曲がり、するりとストッパー部3を乗り越えてしまい易いが、この譜面台構造例のように、ストッパー部3の先端が背面部1に向かう(閉じた状態になる)ようにストッパー部3の設置角度に傾斜を付けることにより、楽譜のページがストッパーを乗り越えないようにすることができる。
【0035】
図5〔3〕に示される譜面台では、背面部1、底部2及びストッパー部3が樹脂で一体に成型されると共に、楽譜の滑り止めのために、ストッパー部3の背面部1側の面(裏面)の一部または全部に凹凸が設けられる。この譜面台は、ストッパー部3の設置角度が背面部1の板面に対して平行或いは開いている場合には、例えば、図2〔1〕の金型合わせや図3及び図4〔1〕のスライド金型を用いることにより作製することができる。
【0036】
つまり、通常、樹脂成型品は、何らの加工もなされないと、表面がツルツルとしているので、単にストッパー部3を設けるだけでは楽譜が滑り易い。そこで、楽譜と接触するストッパー部3裏面の一部または全面に、シボや筋(スジ)、突起などの凹凸を施すことにより、ストッパー部3裏面に強い滑り止め機能を与えて楽譜がストツパー部3を乗り越えるのを防止する。なお、図5〔3〕に示すように、ストッパー部3が閉じた角度で設置された傾斜付き譜面台(図5〔2〕)にこの滑り止め機能を適用すると、楽譜保持機能を更に増大させることができる。
【0037】
〔ストッパーの可変構造化〕
この発明の一実施例による譜面台では、樹脂成型の段階でストッパー部を揺動可能に形成することができる。ユーザが実際に譜面台を使用する際には、ストッパーは常に必要ではない。例えば、硬い紙に印刷された一枚楽譜などの場合はストッパーが無くても問題は無く、かえって無い方が使い易いこともある。そこで、ストッパーを譜面台に一体成型するときに、種々の態様で、揺動可能な薄肉の支点部も一体成型した可変ストッパー構造にすると、必要な時にストッパーを立てて使い、必要の無い時にはストッパーをしまうというように、使い勝手を向上することができる。図6は、この発明の一実施例による譜面台ストッパーの可変構造化の一例を示す。なお、図6の各側面図(断面図)において、背面部1の主面が譜面台作製時のパーティング面となり、上下金型の抜き方向は太い矢印で表わされ、この譜面台作製条件は、後述する図7においても同様である。
【0038】
図6(1)の例では、ストッパー部3は、ストッパー本体3Mとストッパー支持体3Bから成り、ストッパー本体3Mは、左右方向からみたストッパー全体の断面がL字状を呈するように、ストッパー支持体3Bの一端に連結されており、ストッパー支持体3Bの反対側の端縁は、底部2の後端縁と薄肉連結部(図示の「一体成型支点」)で連結されている。譜面台の作製時には、図6(1)右側に示すように、背面部1に沿ってストッパー部3が一体成型され、ストッパー部3のストッパー支持体3Bは背面部1の主面にほぼ並行している。ここで、ストッパー支持体3Bは、背面部1に対し、その主面と一致させても図示のように若干の距離を隔ててもよいし、完全に並行でなくストッパー本体3Mが開口部H側に寄ってもよい。また、ストッパー支持体3Bの一端からほぼ垂直にストッパー本体3Mが後方に延び、ストッパー支持体3Bの他端縁は底部2の後端縁と薄肉連結部で連結されている。さらに、背面部1の下部には開口部Hが形成され、底部2の上面には、ストッパー支持体3Bを受け入れるための薄い凹部が形成される。
【0039】
ストッパー使用時には、細い矢印のように、底部2の後端縁に一体成型された薄肉連結部を支点としてストッパー部3を前方(ユーザからみて手前)に倒して底部2の凹部にストッパー支持体3Bを嵌入すると、図6(1)左側に示すように、底部2とストッパー支持体3Bの上面が一致し、ストッパー支持体3Bの前端にしっかりと固定されたストッパー本体3Mが底部2の前端から上方に直立する。例えば、本の状態になった楽譜を譜面台に置いた時、場合によってかなりの荷重がストッパーにかかることになるが、この可変ストッパー構造では、譜面からの力を受け止め耐えることができる。また、必要の無い時には背面部1の開口部Hを通して譜面台の背後にストッパー部3を仕舞うことができる。
【0040】
なお、図6(1)の可変ストッパー構造例では、底部2の背面部1側に揺動可能なストッパーを一体成型し、ストッパー使用時に、背面から前方向にストッパー3を切り起こすようにしたが他の構造を採ることができる。例えば、図6(2)に示すように、底部2自体の前方(手前)側における複数の所定領域に、左右方向の中間に前後方向に走る薄肉連結部(図示「一体成型支点」)で底部2と連結される揺動可能なストッパー部3を一体成型し、ストッパー使用時に、薄肉連結部を支点として左右方向にストッパー部3を切り起こす。この場合、底部2の所定領域に開口部Hが形成される。
【0041】
また、図6(3)に示す例では、底部2の支持部4側に、底部2の前端縁と薄肉連結部で連結される揺動可能な係止片(爪)付きストッパー部3を一体成型し、その際、ストッパー部3の裏面(ストッパー使用時)には、左右方向からみてほぼ中央位置(左側或いは右側でもよい)から延びる係止片(爪)3tを形成すると共に、底部2の対応箇所には溝や孔、穴などの係止用受け部2tを形成する。ストッパー使用時には、薄肉連結部を支点としてストッパー3を下方から上方に切り起こし、ストッパー3の係止片3tを底部2の係止用受け部2tに係合(圧入)して、ストッパー3を底部2に一定の位置に固定する。この場合は、支持部4更には脚部5のストッパー対応領域に開口部Hが形成される。
【0042】
〔譜面台構造の変形〕
この発明の一実施例による譜面台の構造は種々に変形することができる。構成要素1,2,4,5は、これまでの例では均一な板状にしたが、任意の形状を採用することができる。例えば、背面部1は、下部側になるほど板厚を大きくして楽譜支持を強化する構造にしてもよい。また、脚部5についても、溝や孔などの受け側(支持側)の形状に応じて任意の形状を採用することができ、複数の板状体を所定間隔で並べても、複数の柱状体を並べてもよい。さらに、支持体4を省略して底部2を充実した構造にすることもでき、図7は、この場合の譜面台構造例を示す。
【0043】
図7に示される譜面台は、背面部1、底部2、ストッパー部3及び脚部5からなり、脚部5は背面部1及び底部2を直接支持する。図7(1)の譜面台構造は、図2と同様に上下の金型合わせを用いて、底部2及びストッパー部3のアンダーカット部UCに相当する空間Aを下金型の凸状部で補充することにより作製され、背面部1にのみ開口部Hが形成される。これに対して、図7(2)の譜面台構造は、開口部を設けない構造であり、図3或いは図4と同様のスライド金型SDa,SDbにより、底部2及びストッパー部3のアンダーカット部UCに相当する空間Aを補充して作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】従来技術による譜面台の構造例を示す。
【図2】この発明の一実施例による譜面台の第1の基本構造を示す。
【図3】この発明の一実施例による譜面台の第1の基本構造をスライド金型で実現する場合の金型構造例を示す。
【図4】この発明の一実施例による譜面台の第2の基本構造を示す。
【図5】この発明の一実施例による譜面台ストッパーの他の構造例を示す。
【図6】この発明の一実施例による譜面台ストッパーの可変構造例を示す。
【図7】この発明の一実施例による譜面台の更なる変形構造例を示す。
【符号の説明】
【0045】
1,2 開口部(又は開口)Hを有する板状の背面部及び底部(主部)、
3:3a,3b;3c;3d ストッパー部(3a:支持部、3b:突出部)、
4,5 連結部及び脚部、
UC アンダーカット部、
SDa,SDb スライド金型、
A 下金型の凸状部或いはスライド金型で形成されるアンダーカット相当空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
楽譜の背面を支持するための板状の背面部と、
楽譜の下部を支持するために背面部の下端から前方向に延びる板状の底部と、
楽譜の前面下部を保持するために底部の前端から上方向に延びる板状のストッパー部と
から成り、
これら背面部、底部及びストッパー部が合成樹脂で一体成型されている
ことを特徴とする譜面台。
【請求項2】
前記ストッパー部は複数の板状体で構成され、前記底部には開口が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の譜面台。
【請求項3】
前記背面部の下部には開口が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の譜面台。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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