説明

警戒システム

【課題】雨量計、水位計などの設備や、処理能力の高いコンピューターが不要であり、安価で簡便にシステム構築を行うことが可能な警戒システムに関する。
【解決手段】本発明の警戒システムは、通信回線を介して所定地域に関する降雨情報を取得する降雨情報取得手段(ステップS101)と、前記降雨情報取得手段によって取得された降雨情報に基づいて時系列の現降雨パターンを画像化する画像処理手段(ステップS102)と、前記画像処理手段によって画像化された現降雨パターンと当該地域における過去降雨パターンとを比較し比較の結果に基づいて評価値を算出する評価算出手段(ステップS103)と、前記評価算出手段により算出された評価値に応じて警報を報知する報知手段(ステップS104)と、からなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、降雨によってもたらされる水没などの被害を予測し報知する警戒システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市部において局所豪雨による被害が頻発しているが、このような被害は、雨水排水能力の一時的超過に起因する「内水氾濫」の一種であるということができる。一般に都市部の「内水氾濫」を予測する方法としては、時々刻々と変化する局所豪雨を一様な降雨強度に仮定した上で、地盤の標高や地形、地表面の土地利用状況などの詳細なモデル化による地表流解析と、地下に縦横に張り巡らされた下水道網を再現した流出解析を組み合わせた、複雑で高度な解析方法が採られる。上記のような解析方法におけるモデル化では、下水道網の更新や変更、下水道から河川への放流を行う排水機場の運転状況、地表面と下水道の間の流出入など、モデル化の精度向上が難しい項目も多い。また、上記のような解析方法において、解析の重要因子である降雨外力「局所豪雨」は地域的、強度的に一様に降るものではないため、現実とかい離した解析結果になりかねない。さらに、解析エリアの浸水量を予測算出することはできても、具体的にどの位置に被害が発生するかまでは予測することができない。特に「局所豪雨」の発生・認識から被害発生までの時間(タイムラグ)が数10分〜数時間と短く、仮に具体的な降雨外力が特定できたとしても、その時点からの詳細な分析や解析は不可能である。
【0003】
一方、個々の住民や個別の建物管理者の関心は、「突然強いにわか雨が降り出したが自宅周辺は大丈夫だろうか」という非常に即時的で身近な危険性にある。現在、テレビラジオやインターネット上の民間の天気予報のほか、公共機関が提供する降雨概況情報(例えば、東京アメッシュ(都下水道局提供)、MPレーダー(国土交通省提供))が存在し、局所豪雨の発生情報を入手できる環境にある。しかし、それらの局所豪雨の発生情報は、豪雨に起因する個別の場所での被害発生可能性となんら関連付けられていない。
【0004】
そこで、従来、降雨によって所定地域の浸水可能性などの被害を予測する技術が提案されている。例えば、特許文献1(特開2002−298063号公報)には、主に自治体の下水道管理者、防災担当者のためのシステムであり、リアルタイムの計測データ(雨量計、水位計)、膨大なモデル化(地形標高、下水道網)、詳細解析作業(降雨解析、氾濫解析)によって、具体的被害との関連付けを行う技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献2(特開2004−192206号公報)には、自治体の防災担当者向けのシステムで、リアルタイムの情報に基づき、今後の浸水状況を予測(流出解析、浸水解析、下水道網流量解析)し、必要に応じて地域全体に警報を発することができるものが開示されている。
【特許文献1】特開2002−298063号公報
【特許文献2】特開2004−192206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の特許文献1記載の技術においては、対象地域に雨量計、水位計などの設備を設置しなければならず、大きなコストと手間を要する、という問題があった。また、特許文献2に記載されたシステムにおいては、流出解析、浸水解析、下水道網流量解析などのコン
ピューターの処理負担が大きい解析処理を実行しなければならず、処理能力の高いコンピューターを用意しなければならず、システム構築のためのコストがかかる、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を解決するものであって、請求項1に係る発明は、通信回線を介して所定地域に関する降雨情報を取得する降雨情報取得手段と、前記降雨情報取得手段によって取得された降雨情報に基づいて時系列の現降雨パターンを画像化する画像処理手段と、前記画像処理手段によって画像化された現降雨パターンと当該地域における過去降雨パターンとを比較し比較の結果に基づいて評価値を算出する評価算出手段と、前記評価算出手段により算出された評価値に応じて警報を報知する報知手段と、からなることを特徴とする警戒システムである。
【0008】
また、請求項2に係る発明は、通信回線を介して所定地域に関する降雨情報を取得する降雨情報取得手段と、前記降雨情報取得手段によって取得された降雨情報に基づいて時系列の現降雨パターンを画像化する画像処理手段と、前記画像処理手段によって画像化された現降雨パターンと当該地域における過去降雨パターンとを比較し比較の結果に基づいて評価値を算出する評価算出手段と、前記評価算出手段により算出された評価値を、当該地域における土地特性に基づいて補正する評価値補正手段と、前記評価値補正手段により補正された評価値に応じて警報を報知する報知手段と、からなることを特徴とする警戒システムである。
【0009】
また、請求項3に係る発明は、請求項2に記載の警戒システムにおいて、当該地域における土地特性は、地盤標高、窪地率、土地利用形態、排水能力であることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に係る発明は、請求項2又は請求項3に記載の警戒システムにおいて、前記報知手段による報知レベルが複数あることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る警戒システムによれば、雨量計、水位計などの設備や、処理能力の高いコンピューターが不要であり、安価で簡便にシステム構築を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る警戒システム1を実行させるために用いられるシステム構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る警戒システム1と各種情報提供サーバーの関係を説明する図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る警戒システム1の処理のフローチャートを示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る警戒システム1の報知判定サブルーチンの処理のフローチャートを示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る警戒システム1の処理のフローチャートを示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る警戒システム1の評価値算出サブルーチンの処理のフローチャートを示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る警戒システム1の報知判定サブルーチンの処理のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施形態に係
る警戒システム1を実行させるために用いられるシステム構成の一例を示す図である。
【0014】
図1において、10はシステムバス、11はCPU(Central Processing Unit)、12はRAM(Random Access Memory)、13はROM(Read Only Memory)、14は外部情報機器との通信を司る通信制御部、15はキーボードコントローラなどの入力制御部、16はディスプレイコントローラなどの出力制御部、17は外部記憶装置制御部、18はキーボード、ポインティングデバイス、マウスなどの入力機器からなる入力部、19はLCDディスプレイなどの表示装置や印刷装置からなる出力部、20はHDD(Hard Disk Drive)等の外部記憶装置である。
【0015】
図1において、CPU11は、ROM13内のプログラム用ROM、或いは、大容量の外部記憶装置20に記憶されたプログラム等に応じて、外部機器と通信することでデータを検索・取得したり、また、図形、イメージ、文字、表等が混在した出力データの処理を実行したり、更に、外部記憶装置20に格納されているデータベースの管理を実行したり、などといった演算処理を行うものである。
【0016】
また、CPU11は、システムバス10に接続される各デバイスを統括的に制御する。ROM13内のプログラム用ROMあるいは外部記憶装置20には、CPU11の制御用の基本プログラムであるオペレーティングシステムプログラム(以下OS)等が記憶されている。また、ROM13あるいは外部記憶装置20には出力データ処理等を行う際に使用される各種データが記憶されている。RAM12は、CPU11の主メモリ、ワークエリア等として機能する。
【0017】
入力制御部15は、キーボードや不図示のポインティングデバイスからの入力部18を制御する。また、出力制御部16は、LCDディスプレイ等の表示装置やプリンタなどの印刷装置の出力部19の出力制御を行う。
【0018】
外部記憶装置制御部17は、ブートプログラム、各種のアプリケーション、フォントデータ、ユーザーファイル、編集ファイル、プリンタドライバ等を記憶するHDD(Hard Disk Drive)や、或いはフロッピーディスク(FD)等の外部記憶装置20へのアクセスを制御する。
【0019】
本実施形態に係る警戒システム1おいては、特に、この外部記憶装置20に降雨被害データベース21及び土地特性データベース22が記憶されており、CPU11が適宜参照するように構成されている。
【0020】
降雨被害データベース21は、所定の地域の過去の豪雨被害発生時の降雨パターンと、その被害度を対応させて記憶させたデータベースである。過去の降雨パターンとしては時系列の降雨パターンが画像化されたものが想定される。本実施形態では、一例であるが、降雨被害データベース21には、それぞれの地域ごとに「被害有り」の時の時系列の降雨パターン、「被害無し」の時の時系列の降雨パターンが画像化されて記憶されている例で説明する。なお、「地域」は地図上の仮想のメッシュを規定することによって定義してもよいし、地番などに基づいて定義してもよい。
【0021】
土地特性データベース22においては、上記のような「地域」毎の、「地盤標高」、「窪地率」、「土地利用形態」、「排水能力」がデータ化されたものである。すなわち、CPU11は、この土地特性データベース22を参照すれば、例えば、ある地域Aに対する地盤標高、窪地率、土地利用形態、排水能力を参照することができるようになっている。
【0022】
また、通信制御部14は、ネットワークを介して、外部機器と通信を制御するものであり、これによりシステムが必要とするデータを、インターネットやイントラネット上の外部機器が保有するデータベースから取得したり、外部機器に情報を送信したりすることができるように構成される。
【0023】
外部記憶装置20には、CPU11の制御プログラムであるオペレーティングシステムプログラム(以下OS)以外に、本発明の警戒システム1をCPU11上で動作させるシステムプログラム、及びこのシステムプログラムで用いるデータなどがインストールされ保存・記憶されている。
【0024】
本発明の警戒システム1を実現するシステムプログラムで利用されるデータとしては、基本的には外部記憶装置20に保存されていてもよいし、これらのデータを、通信制御部14を介してインターネットやイントラネット上の外部機器から取得するようにしてもよい。
【0025】
次に上記のような警戒システム1は、通信制御部14を介して接続されるインターネットなどの通信回線50と接続され、同じく通信回線50と接続している各種情報提供サーバーから種々のデータを取得するようになっている。図2は本発明の実施形態に係る警戒システム1と各種情報提供サーバーの関係を説明する図である。
【0026】
降雨情報提供サーバー60は、例えば、東京アメッシュ(都下水道局提供)やMPレーダー(国土交通省提供)などの降雨情報を提供するサーバーである。警戒システム1は、このようなサーバーから降雨情報を取得して、現在の時系列の降雨パターンを画像化したデータを画像処理によって作成する。なお、降雨情報提供サーバー60によって、現在の時系列の降雨パターンを画像化したデータが配信される場合については、警戒システム1側で画像処理を行う必要はない。
【0027】
次に、以上のように構成される警戒システム1における第1実施形態に係る処理例について説明する。図3は本発明の第1実施形態に係る警戒システム1の処理のフローチャートを示す図である。なお、以下に説明するフローチャートはあくまで処理の一例である。第1実施形態は、土地特性データベース22を利用することなく、警戒レベルを判定する処理を行う例である。
【0028】
図4において、ステップS100で処理が開始されると、続くステップS101においては、降雨情報提供サーバー60から降雨情報を取得する。次に、ステップS102においては、必要に応じて、所得された降雨情報を画像データ化し、ステップS103では、過去(所定期間)の一連の画像データとステップS102において画像データ化された降雨情報を連結することで、画像データを時系列化する。これにより、時系列の降雨パターンが画像データ化されたデータを得ることができる。
【0029】
続く、ステップS104では、評価値算出サブルーンが実行される。以下、図4のフローチャートに基づき説明する。図4は本発明の実施形態に係る警戒システム1の評価値算出サブルーチンの処理のフローチャートを示す図である。
【0030】
ステップS200で、評価値算出サブルーチンが開始されると、次のステップS201においては、ステップS102で得られた現降雨パターンと、降雨被害データベース21に記憶されている「被害有り」の過去降雨パターンとの比較を行う。次のステップS202では、比較の結果、2つのパターン間に所定以上類似性があるか否かが判定される。この判定の結果がYESであれば、ステップS203に進み、「被害が出る可能性有り」としてLCDディスプレイなどからなる出力部19に出力して報知を行う。一方、判定の結
果がNOであれば、ステップS204に進む。
【0031】
ステップS204においては、ステップS102で得られた現降雨パターンと、降雨被害データベース21に記憶されている「被害無し」の過去降雨パターンとの比較を行う。次のステップS205では、比較の結果、2つのパターン間に所定以上類似性があるか否かが判定される。この判定の結果がYESであれば、ステップS206に進み、「被害が出る可能性無し」としてLCDディスプレイなどからなる出力部19に出力して報知を行う。一方、判定の結果がNOであれば、ステップS207に進み、「被害が出る可能性は低い」としてLCDディスプレイなどからなる出力部19に出力して報知を行い、元のルーチンにリターンする。
【0032】
以上のような報知判定サブルーチンからメインルーチンにリターンすると、続いて、ステップS105では、システムの処理終了要求があるか否かが判定され、判定がYESであると、ステップS106に進み、処理を終了し、NOであるとステップS101に戻る。
【0033】
以上のような本発明に係る警戒システム1によれば、降雨情報提供サーバー60から取得される情報に基づいて有効に警報を報知することでき、従来のように、雨量計、水位計などの設備や、処理能力の高いコンピューターが不要であり、安価で簡便にシステム構築を行うことが可能となる。また、本発明に係る警戒システム1によれば、複数の警報レベルによって的確な警報の報知を行うことが可能となる。
【0034】
次に、警戒システム1における第2実施形態に係る処理について説明する。図5は本発明の実施形態に係る警戒システム1の処理のフローチャートを示す図である。なお、以下に説明するフローチャートはあくまで処理の一例である。第2実施形態は、土地特性データベース22を利用することにより補正を行い、警戒レベルを判定する。
【0035】
図6において、ステップS300で処理が開始されると、続くステップS301においては、降雨情報提供サーバー60から降雨情報を取得する。次に、ステップS302においては、必要に応じて、所得された降雨情報を画像データ化し、ステップS303では、過去(所定期間)の一連の画像データとステップS302において画像データ化された降雨情報を連結することで、画像データを時系列化する。これにより、時系列の降雨パターンが画像データ化されたデータを得ることができる。
【0036】
続く、ステップS304では、評価値算出サブルーンが実行される。ここで、評価値(LEVEL)は、値が大きければ大きいほど、降雨に基づく被害の警戒レベルが高くなるパラメーターである。以下、図6のフローチャートに基づき説明する。図6は本発明の実施形態に係る警戒システム1の評価値算出サブルーチンの処理のフローチャートを示す図である。
【0037】
ステップS400で、評価値算出サブルーチンが開始されると、次のステップS401においては、ステップS302で得られた現降雨パターンと、降雨被害データベース21に記憶されている「被害有り」の過去降雨パターンとの比較を行う。次のステップS402では、比較の結果、2つのパターン間に所定以上類似性があるか否かが判定される。この判定の結果がYESであれば、ステップS403に進み、評価値(LEVEL)を「3」に定める。一方、判定の結果がNOであれば、ステップS404に進む。
【0038】
ステップS404においては、ステップS302で得られた現降雨パターンと、降雨被害データベース21に記憶されている「被害無し」の過去降雨パターンとの比較を行う。次のステップS405では、比較の結果、2つのパターン間に所定以上類似性があるか否
かが判定される。この判定の結果がYESであれば、ステップS406に進み、評価値(LEVEL)を「1」に定める。一方、判定の結果がNOであれば、評価値(LEVEL)を「2」に定め、元のルーチンにリターンする。
【0039】
本発明に係る警戒システム1においては、上記のような評価値(LEVEL)に基づいて、警報を報知するようにしてもよい。すなわち、高い評価値が算出された場合について、何らかの警報を、LCDディスプレイなどからなる出力部19に出力するようにしてもよい。本実施形態においては、評価値算出サブルーンで算出された評価値を、土地特性に基づいて補正した上で、警報を報知するようにしている。
【0040】
さて、ステップS304のサブルーチンからリターンした後、続いてステップS305に進み、報知判定サブルーンが実行される。以下、図7のフローチャートに基づき説明する。図6は本発明の実施形態に係る警戒システム1の報知判定サブルーチンの処理のフローチャートを示す図である。
【0041】
ステップS500で、報知判定サブルーチンが開始されると、続いて、ステップS501では、土地特性データベース22を参照して、該当する地域の土地特性(地盤標高、窪地率、土地利用形態、排水能力)に関する各パラメーターが取得される。
【0042】
続く、ステップS502では、上記の地盤標高、窪地率、土地利用形態、排水能力から、該当地域の保水率を算出する。ここで、保水率は、所定の地域がどの程度水を保持して貯水するかを示すパラメーターであり、地盤標高が高ければ低く、窪地率が高ければ高く、土地利用形態でコンクリート成分が多いような形態ほど低く、排水能力が高ければ低くなるパラメーターである。なお、保水率の算出式については、保水率が、地盤標高が高ければ低く、窪地率が高ければ高く、土地利用形態でコンクリート成分が多いような形態ほど低く、排水能力が高ければ低くなるような適当な算出式であれば、どのようなものも用いることができる。
【0043】
ステップS503では、ステップS502で算出された保水率が所定値以上であるか否かが判定される。当該判定がYESである場合には、ステップS505に進み、評価値(LEVEL)を1インクリメントする。また、判定がNOである場合にはステップS504に進む。
【0044】
ステップS504では、ステップS502で算出された保水率が所定値以下であるか否かが判定される。当該判定がYESである場合には、ステップS507に進み、評価値(LEVEL)を1ディクリメントする。また、判定がNOである場合にはステップS506に進み、評価値(LEVEL)の値を変更せず、据え置くようにする。
【0045】
ステップS508では、評価値(LEVEL)が3以上であるか否かが判定される。ステップS508の判定がYESであれば、ステップS509に進み、LCDディスプレイなどからなる出力部19などを用いて「被害が出る可能性有り」旨を報知し、リターンする。
【0046】
ステップS510では、評価値(LEVEL)が2であるか否かが判定される。ステップS510の判定がYESであれば、ステップS511に進み、LCDディスプレイなどからなる出力部19などを用いて「被害が出る可能性は低い」旨を報知し、リターンする。
【0047】
また、ステップS512に進む場合、すなわち評価値(LEVEL)が1である場合には、「被害が出る可能性無し」としてLCDディスプレイなどからなる出力部19に出力
して報知を行い、ステップS513に進みリターンする。
【0048】
以上のような報知判定サブルーチンからメインルーチンにリターンすると、続いて、ステップS306では、システムの処理終了要求があるか否かが判定され、判定がYESであると、ステップS307に進み、処理を終了しNOであるとステップS301に戻る。
【0049】
以上のような第2実施形態に係る警戒システム1によっても、降雨情報提供サーバー60から取得される情報に基づいて有効に警報を報知することでき、従来のように、雨量計、水位計などの設備や、処理能力の高いコンピューターが不要であり、安価で簡便にシステム構築を行うことが可能となる。また、本発明に係る警戒システム1によれば、複数の警報レベルによって的確な警報の報知を行うことが可能となる。
【0050】
また本実施形態に係る警戒システム1で実現し得る事項につき下記にまとめる。
(1)河川や下水道など広域の公共インフラ管理の目的でなく、特に専門知識を持たない個々の建物の防災管理者が自らの施設の豪雨による被害(主に浸水)の可能性を手軽に知るためのシステムである。
(2)専門技術者による情報収集、解析、予測、被害評価作業を必要とせず、個々の建物の防災管理者がゲリラ豪雨特有の天候の急激な崩れを契機に(天気があやしいと気づいたときに)、自らの操作により短時間で判定結果を得ることができる。
(3)膨大な降雨データや解析モデル化、各種解析に必要な高性能な機器(コンピュータなど)は必要なく、日常業務レベルの機器(コンピュータ)とインターネット接続環境のみで操作できる。
(4)ブラックボックス的な詳細解析結果からではなく、現状の降雨およびゲリラ豪雨特有の短時間降雨実績(過去10分〜2時間程度)と、過去の被害とその時の降雨実績を幾何学的、統計的な照らし合わせにより判定する。特に、その該当建物に被害をもたらした時のゲリラ豪雨を、特定方角の、特定距離が離れた地域から、特定量以上の降雨を伴って雨雲範囲が推移して来るという、地域別のパターンとしてデータベース化することによって、短時間に被害可能性を判定できるという特徴をもつ。
【0051】
また、以下のような概念についても、本実施形態に係る警戒システム1に含まれるものである。
A.
(1)一般に公表されている降雨情報を即時的、自動的に収集する手段と、(2)その降雨情報を画像処理により集計・分析する手段と、(3)事前に指定した地域の地形データとその地域の過去の局地豪雨被害発生時の降雨パターンとを組み合わせた降雨被害−地域情報を蓄積したデータベースと、(4)このデータベースの過去の該当地の被害時降雨パターンと現状の降雨パターンを比較分析・評価判定する手段と、(5)判定後に警戒情報を表示する手段とを備えることを特徴とする警戒システム。
B.
降雨情報はWeb上に公表されているデータで、要請に応じて作業開始時点のデータとその過去数時間内の時系列データを即時的に自動収集することを特徴とする警戒システム。C.
収集された降雨情報に基づき、事前に設定した警戒領域(降雨通過地域)が抽出され、画像処理手法を用いて降雨範囲、降雨強度、降雨累積などが自動的に算出されることを特徴とする警戒システム。
D.
降雨被害−地域情報データベースには、指定地点の地盤標高、窪地率、土地利用が含まれるとともに、過去に何らかの被害が発生したときの局地的降雨の範囲と強度の時系列変化、降雨量の累積などの特徴が含まれることを特徴とする警戒システム。
E.
局地豪雨被害の発生の可否の判定は、警戒している特定建物に対して事前に設定した警戒領域(降雨通過地域)の降雨パターンとその降雨量の時系列変化が、特定建物および周辺地区の過去の被害時のそれと類似しているか否かで決定することを特徴とする警戒システム。
F.
警戒情報は、今後の特定建物および周辺地区の局所豪雨による何らかの被害発生の可否を数段階程度で表記することを特徴とする警戒システム。
【符号の説明】
【0052】
1・・・警戒システム、10・・・システムバス、11・・・CPU(Central Processing Unit)、12・・・RAM(Random Access Memory)、13・・・ROM(Read Only Memory)、14・・・通信制御部、15・・・入力制御部、16・・・出力制御部、17・・・外部記憶装置制御部、18・・・入力部、19・・・出力部、20・・・外部記憶装置、21・・・降雨被害データベース、22・・・土地特性データベース、50・・・通信回線、60・・・降雨情報提供サーバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信回線を介して所定地域に関する降雨情報を取得する降雨情報取得手段と、
前記降雨情報取得手段によって取得された降雨情報に基づいて時系列の現降雨パターンを画像化する画像処理手段と、
前記画像処理手段によって画像化された現降雨パターンと当該地域における過去降雨パターンとを比較し比較の結果に基づいて評価値を算出する評価算出手段と、
前記評価算出手段により算出された評価値に応じて警報を報知する報知手段と、からなることを特徴とする警戒システム。
【請求項2】
通信回線を介して所定地域に関する降雨情報を取得する降雨情報取得手段と、
前記降雨情報取得手段によって取得された降雨情報に基づいて時系列の現降雨パターンを画像化する画像処理手段と、
前記画像処理手段によって画像化された現降雨パターンと当該地域における過去降雨パターンとを比較し比較の結果に基づいて評価値を算出する評価算出手段と、
前記評価算出手段により算出された評価値を、当該地域における土地特性に基づいて補正する評価値補正手段と、
前記評価値補正手段により補正された評価値に応じて警報を報知する報知手段と、からなることを特徴とする警戒システム。
【請求項3】
当該地域における土地特性は、地盤標高、窪地率、土地利用形態、排水能力であることを特徴とする請求項2に記載の警戒システム。
【請求項4】
前記報知手段による報知レベルが複数あることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の警戒システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−160029(P2012−160029A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19378(P2011−19378)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】