説明

豆乳の後味の強さおよび/またはエグ味の強さを低減する方法

【課題】豆乳および豆乳を含有する飲食物において、豆乳のもつ後味、エグ味を低減することにより、良好な風味を持った豆乳および豆乳含有飲食物を提供する。
【解決手段】豆乳および豆乳を含有する飲食物に、甘味の立ちおよびキレが遅い甘味質を有する糖アルコールである、固形分中の糖組成において5糖類以上が50重量%以上の低糖化還元水飴を添加することで、豆乳のもつ後味、エグ味を低減する。これにより豆乳の後味、エグ味が低減され、良好な風味を持った豆乳および豆乳含有飲食物が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低糖化還元水飴の添加により、豆乳の後味、エグ味を低減することを特徴とする、豆乳および豆乳含有飲食物の風味改善方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、健康意識の高まりから、生活習慣病予防効果があるような機能性素材を使った食品や飲料が数多く商品化されている。中でも豆乳はイソフラボンや大豆ペプチドなど多くの機能性成分を含んでいる優れた機能性素材であるが、独特の後味、エグ味を有するという味質的な問題点がある。こうした点を補うため、特許文献1〜2のように乳酸菌発酵を行う方法、特許文献3のように酵素処理を行う方法、特許文献4〜5のように、各種食品素材を添加することにより、風味を改善する方法などが提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開平10−201416号広報
【特許文献2】特開2002−51720号広報
【特許文献3】特開2006−81440号広報
【特許文献4】特開2002−253164号公報
【特許文献5】特開2003−230365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2は乳酸菌で発酵することにより後味、エグ味を改善する方法であるが、発酵により酸味が生じてしまうといった問題点があった。特許文献3は酵素(ジグリコシダーゼ)で処理することにより後味、エグ味を改善する方法であるが、加熱処理などにより酵素を失活する必要があり、失活した酵素が製品中に残存してしまうという問題点があった。特許文献4はリン酸化糖ミネラル結合物、特許文献5はパラチノースを添加することにより、後味、エグ味を改善する方法であるが、改善効果が十分とは言い難く、また、添加量によっては添加素材の風味を感じてしまうという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、豆乳および豆乳を含有する飲食物において、固形分当たりの糖組成が、5糖類以上が50重量%以上である低糖化還元水飴を添加することにより、豆乳の後味、エグ味を低減することを特徴とする、豆乳および豆乳含有飲食物の風味改善方法に関する。特に、5糖類以上が50重量%以上且つ7糖類以上が35重量%以下の低糖化還元水飴を、豆乳100重量部に対し、1〜20重量部添加することにより、豆乳の後味、エグ味を低減することを特徴とする、豆乳および豆乳含有飲食物の風味改善方法に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、豆乳および豆乳を含有する飲食物に、特定の糖組成の低糖化還元水飴を添加することを特徴とし、これによって豆乳の後味、エグ味を低減し、良好な風味を持った豆乳および豆乳含有飲食物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
還元水飴は糖アルコールの一種で、デンプンを酸や酵素等を用いて加水分解して得られた水飴を水素添加して製造するのが一般的である。デンプンをDE40以下の低糖化水飴まで分解し水素添加したものを低糖化還元水飴と呼ぶことが多い。
【0008】
低糖化還元水飴は甘味のキレが遅く後引きがあるが、この特有の甘味質により豆乳の後味、エグ味を低減できる。甘味の後引きにより豆乳の後味、エグ味がマスキングされるため、甘味のキレが速くなるほど豆乳の後味、エグ味改善効果は小さくなる。また、低糖化還元水飴は甘味度(甘味の強さ)が低い(砂糖の1〜3割程度)ため、豆乳への添加量が多くなった場合でも糖質の甘味を感じにくい。
【0009】
本発明における還元水飴は、前記の一般的な製造方法以外にどのような方法で調製しても良い。例として、別に調製した2種類以上の水飴や糖類を混合した混合物を水素添加したものでも良く、また、別に調製した2種類以上の糖アルコールや還元水飴を混合したものでも良い。さらには、調製した水飴をクロマト分離等で分画したものを水素添加したものでも良く、また、調製した還元水飴を、クロマト分離等で分画したものでも良い。また、本発明に使用する低糖化還元水飴は液状でも粉末でも良い。粉末還元水飴としては、還元水飴を粉末化したものであればどのようなものでも良く、還元水飴を乾燥して得られたガラス状(アモルファス)粉末でも良い。還元水飴の粉末化についてはどのような方法を用いても良い。
【0010】
本発明で用いる低糖化還元水飴とは、固形分当たりの糖組成が、5糖類以上が50重量%以上であるものであればどのようなものでもよい。固形分あたりの1〜4糖類が50重量%以上になると、甘味の後引きが少なくなるため豆乳の後味、エグ味の低減効果が小さくなる。ただし、7糖類以上が35重量%を超えた場合、豆乳の後味、エグ味は低減されるが、高分子糖アルコールがもつ糊っぽいような雑味が出てくるため、豆乳や豆乳含有飲食物の風味を低下させてしまう場合がある。そのため、固形分当たりの糖組成が、5糖類以上が50重量%以上且つ7糖類以上が35重量%以下であるものが好ましい。
【0011】
低糖化還元水飴の添加量が、豆乳100重量部に対し1重量部未満の場合、豆乳の後味、エグ味低減効果が少ないため、低糖化還元水飴の添加量は、豆乳100重量部に対し1重量部以上が好ましい。但し、低糖化還元水飴の添加量が、豆乳100重量部に対し20重量部を越えると、味に対する低糖化還元水飴の甘味の影響が大きくなり、豆乳に余計な甘味がついてしまうことや、粘度が付与されてしまい製品の物性への影響が大きくなることなどから、低糖化還元水飴の添加量は、豆乳100重量部に対し20重量部以下が好ましい。
【0012】
本発明の豆乳風味改善方法は、豆乳や発酵豆乳の他、豆乳を含有している飲料(ココア飲料、コーヒー飲料、紅茶飲料など)、冷菓(アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、氷菓など)、ヨーグルト、プリン、和洋菓子、焼き菓子、チョコレート、キャンディ、パン、麺類(ラーメン、そば、うどんなど)、米飯加工品(雑炊、粥など)、惣菜、鍋、スープ、調味料、健康食品など、豆乳が含まれる飲食物であればどのようなものにも適用できる。本発明の豆乳風味改善方法により風味が改善された飲食物には、豆乳と低糖化還元水飴以外に、水や各種食品素材、食品添加物などを配合できる。
【0013】
以下、本発明の実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0014】
成分無調整の豆乳100重量部に対し、各種糖質を固形分で3.5重量部の割合で添加し豆乳飲料を調製した。糖質として低糖化還元水飴(固形分中の糖組成は5糖類以上が60重量%、7糖類以上が22重量%)、中糖化還元水飴(固形分中の糖組成は5糖類以上が10%)、砂糖(グラニュー糖)、パラチノース、低糖化水飴(固形分中の糖組成は5糖類以上が65%、7糖類以上が30%)を使用した。調製後、パネラー10人で官能検査を行った。豆乳の後味、エグ味について、糖質無添加を0点として、評点法(−3:非常に弱い、−2:弱い、−1:やや弱い、+1:やや強い、+2:強い、+3:非常に強い)にて官能検査を行ったところ、低糖化還元水飴添加区が最も豆乳の後味、エグ味が弱かった。
【0015】
【表1】

【実施例2】
【0016】
成分無調整の豆乳100重量部に対し、各種低糖化還元水飴を固形分で5重量部の割合で添加し豆乳飲料を調製した。低糖化還元水飴として、固形分あたりの5糖類以上の含量が45重量%且つ7糖類以上の含量が30重量%のもの(低糖化還元水飴A)、固形分あたりの5糖類以上の含量が50重量%且つ7糖類以上の含量が35重量%のもの(低糖化還元水飴B)、固形分あたりの5糖類以上の含量が55重量%且つ7糖類以上の含量が40重量%のもの(低糖化還元水飴C)、固形分あたりの5糖類以上の含量が80重量%且つ7糖類以上の含量が55重量%のもの(低糖化還元水飴D)を用いた。調製後、パネラー10人で官能検査を行った。豆乳の後味、エグ味と雑味(糊っぽさ)について、糖質無添加を0点として、評点法(−3:非常に弱い、−2:弱い、−1:やや弱い、+1:やや強い、+2:強い、+3:非常に強い)にて官能検査を行った。固形分あたりの5糖類以上が50%以上で後味、エグ味の低減効果が高く、また7糖類以上が35%以下で雑味(糊っぽさ)を感じなかった。
【0017】
【表2】

【実施例3】
【0018】
表3の配合にて豆乳飲料を調製した。豆乳として成分無調整の豆乳を用いた。低糖化還元水飴として、スイートNT(日研化成社製、固形分中の糖組成は5糖類以上が58%、7糖類以上が23%)を用いた。調製後、パネラー10人で官能検査を行った。後味、エグ味と甘味のくどさついて、低糖化還元水飴無添加を0点として、評点法(−3:非常に弱い、−2:弱い、−1:やや弱い、+1:やや強い、+2:強い、+3:非常に強い)にて官能検査を行った。また、好みについて順位法(最も好きな配合を5点、2番目に好きな配合を4点、3番目に好きな配合を3点、4番目に好きな配合を2点、5番目に好きな配合を1点、6番目に好きな配合を0点)にて官能検査を行った。豆乳100重量部に対して低糖化還元水飴が1重量部未満の場合には後味、エグ味の改善効果が低く、また、好みの順位も低かった。また、豆乳100重量部に対して低糖化還元水飴が20重量部よりも多くなると、甘味がくどくなり、また、好みの順位も低かった。
【0019】
【表3】

【実施例4】
【0020】
表4の配合にて豆乳ラクトアイスを調製した。低糖化還元水飴としてスイートNT(日研化成社製)を用いた。調製後、パネラー10人で官能検査を行った。豆乳の後味、エグ味について、低糖化還元水飴無添加のものを0点として、評点法(−3:非常に弱い、−2:弱い、−1:やや弱い、+1:やや強い、+2:強い、+3:非常に強い)にて官能検査を行ったところ、低糖化還元水飴添加のものの方が豆乳の後味、エグ味が弱かった。また、スイートNT無添加品と添加品のどちらを好むかを聞いたところ、全員が低糖化還元水飴添加品の方を好むと回答した。
【0021】
【表4】

【実施例5】
【0022】
表5の配合にて豆乳鍋スープを調製した。低糖化還元水飴としてスイートNT(日研化成社製)を用いた。調製後、パネラー10人で官能検査を行った。豆乳の後味、エグ味について、低糖化還元水飴無添加のものを0点として、評点法(−3:非常に弱い、−2:弱い、−1:やや弱い、+1:やや強い、+2:強い、+3:非常に強い)にて官能検査を行ったところ、低糖化還元水飴添加のものの方が豆乳の後味、エグ味が弱かった。また、スイートNT無添加品と添加品のどちらを好むかを聞いたところ、全員が低糖化還元水飴添加品の方を好むと回答した。
【0023】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0024】
豆乳および豆乳を含有する飲食物に、低糖化還元水飴を添加することにより豆乳の後味、エグ味の低減効果を示す。この豆乳の後味、エグ味低減効果により、良好な風味を有する豆乳および豆乳含有飲食物を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
豆乳および豆乳を含有する飲食物において固形分あたりの糖組成の5糖類以上が50重量%以上かつ7糖類以上が35重量%以下である低糖化還元水飴を、豆乳100重量部に対し固形分として1重量部以上20重量部未満添加することで、甘味の後引きにより豆乳の後味の強さおよび/またはエグ味の強さを低減する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法を用いて豆乳の後味の強さおよび/またはエグ味の強さが低減された豆乳および豆乳含有飲食物。

【公開番号】特開2012−65665(P2012−65665A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250853(P2011−250853)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【分割の表示】特願2007−104413(P2007−104413)の分割
【原出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(000226415)物産フードサイエンス株式会社 (30)
【Fターム(参考)】