説明

豆腐加工食品およびその製造方法

【課題】
保存性を高める。食材としての用途を拡大する。
【解決手段】
豆腐Aを脱水して含水分率を低下させた原料豆腐Bと豆腐のたんぱく質の結着を阻害する副材であるおからCとを撹拌羽根付きの蒸気釜に投入し、原料豆腐B,おからCを加熱粉砕して含水分率を低下させた粉粒状態の混合物とし、混合物を蒸気釜から取出し真空包装して凍結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、豆腐を素材とする豆腐加工食品に係る技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
最近、健康指向から食材としての豆腐が注目されるようになってきているが、保存性が低く調理法が限定されるためあまり需要が伸びないという傾向がある。このため、豆腐の保存性を高める技術の開発が要望されている。
【0003】
従来、豆腐の保存性を高める技術としては、例えば、以下に記載のものが知られている。
【特許文献1】特許第3790520号公報 特許文献1には、通常の製造方法で製造された豆腐を緩慢に脱水して含水分率を低下させた豆腐加工食品(脱水豆腐)が記載されている。
【0004】
特許文献1に係る豆腐加工食品は、豆腐を緩慢に脱水することで、脱水される水分とともに栄養成分,旨味成分が流出するのを防止して、栄養価,味の低下を引起こすことなく保存性を高めるものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に係る豆腐加工食品は、基本的にはブロック体形状の豆腐であることから、食材としての用途に限界があるという問題点がある。
【0006】
本発明は、このような問題点を考慮してなされたもので、保存性が高くしかも食材としての用途を拡大することのできる豆腐加工食品と、この豆腐加工食品を製造するに好適な豆腐加工食品の製造方法とを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の課題を解決するため、本発明に係る豆腐加工食品は、特許請求の範囲の請求項1,2に記載の手段を採用する。
【0008】
即ち、請求項1では、豆腐と豆腐のたんぱく質の結着を阻害する副材とが混合され含水分率の低い粉粒状態とされて真空包装され凍結されてなる。
【0009】
この手段では、含水分率を低くして真空包装し凍結させることで、腐敗,変質を長期に防止することができる。また、副材の混合で粉粒状態を維持することで、調味料の添加や他の食材への混入が容易となる。
【0010】
また、請求項2では、請求項1の豆腐加工食品において、副材はおからであり、含水分率は63〜64%であることを特徴とする。
【0011】
この手段では、副材を豆腐製造の副産物であるおからとすることで、豆腐の製造原料を有効活用することができる。また、含水分率を63〜64%とすることで、凍結適正を備えることができる。
【0012】
さらに、前述の課題を解決するため、本発明に係る豆腐加工食品の製造方法は、特許請求の範囲の請求項3〜6に記載の手段を採用する。
【0013】
即ち、請求項3では、豆腐を脱水して含水分率を低下させた原料豆腐と豆腐のたんぱく質の結着を阻害する副材とを撹拌羽根付きの蒸気釜に投入し、原料豆腐,副材を加熱粉砕して含水分率を低下させた粉粒状態とした混合物とし、混合物を蒸気釜から取出し真空包装して凍結する。
【0014】
この手段では、脱水豆腐を原料豆腐として原料豆腐を加熱むらの少ない撹拌羽根付きの蒸気釜で加熱粉砕することで、熱変性のおそれのある加熱温度での加熱を避けしかも加熱時間を短縮して含水分率を低下させた粉粒状態の混合物を得ることができる。
【0015】
また、請求項4では、請求項3の豆腐加工食品の製造方法において、混合物を蒸気釜から取出した直後に真空冷却することを特徴とする。
【0016】
この手段では、混合物を真空冷却することで、混合物が減圧下で急速に冷却される。
【0017】
また、請求項5では、請求項3または4の豆腐加工食品の製造方法において、副材をおからとし、含水分率を63〜64%とすることを特徴とする。
【0018】
この手段では、副材を豆腐製造の副産物であるおからとすることで、豆腐の製造原料を有効活用することができる。また、含水分率を63〜64%とすることで、凍結適正を備えることができる。
【0019】
また、請求項6では、請求項3〜5のいずれかの豆腐加工食品の製造方法において、原料豆腐は通常の製造方法で製造された豆腐を緩慢に脱水したものであることを特徴とする。
【0020】
この手段では、緩慢に脱水された脱水豆腐が原料豆腐とされる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る豆腐加工食品は、含水分率を低くして真空包装し凍結させることで、腐敗,変質を長期に防止することができるため、保存性を高めることができる効果がある。また、副材の混合で粉粒状態を維持することで、調味料の添加や他の食材への混入が容易となるため、食材としての用途を拡大することができる効果がある。
【0022】
また、請求項2として、副材を豆腐製造の副産物であるおからとすることで、豆腐の製造原料を有効活用することができるため、製造コストを安価にすることができる効果がある。また、含水分率を63〜64%とすることで、凍結適正を備えることができるため、凍結による変質を有効に防止することができる効果がある。
【0023】
さらに、本発明に係る豆腐加工食品の製造方法は、脱水豆腐を原料豆腐として原料豆腐を加熱むらの少ない撹拌羽根付きの蒸気釜で加熱粉砕することで、熱変性のおそれのある加熱温度での加熱を避けしかも加熱時間を短縮して含水分率を低下させた粉粒状態の混合物を得ることができるため、本発明に係る豆腐加工食品を熱変性による品質の低下をもたらすことなく製造することができる効果がある。
【0024】
また、請求項4として、混合物を真空冷却することで、混合物が減圧下で急速に冷却されるため、含水分率が均質化されるとともに含水分率の低下が促進されて粉粒状態が安定化される効果がある。
【0025】
また、請求項5として、副材を豆腐製造の副産物であるおからとすることで、豆腐の製造原料を有効活用することができるため、製造コストを安価にすることができる効果がある。また、含水分率を63〜64%とすることで、凍結適正を備えることができるため、凍結による変質を有効に防止することができる効果がある。
【0026】
また、請求項6として、緩慢に脱水された脱水豆腐が原料豆腐とされるため、栄養成分,旨味成分の流出が避けられ、栄養価,味の低下を引起こすことがない効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明に係る豆腐加工食品およびその製造方法を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
この形態は、図1に示すように、通常の製造方法で製造された豆腐Aから副材であるおからCを加える加工を実施する。
【0029】
豆腐Aについては、例えば特許文献1に係る豆腐加工食品に製造方法を利用して原料豆腐Bとする。
【0030】
即ち、豆腐Aに比較的軽い重さの重しを載せて比較的長時間を掛けて脱水を行って脱水豆腐である原料豆腐Bとする。この緩慢な脱水によると、豆腐Aから、栄養成分,旨味成分と結合していない自由水が脱水され、栄養成分,旨味成分と結合した結合水が脱水されなくなる。従って、原料豆腐Bには、栄養成分,旨味成分が充分に残留している。このため、最終の製品Dの栄養価,味の低下を引起こすことがない。なお、図2に示すように、豆腐(木綿豆腐)Aの含水分率が通常87%程度であるのに対して、原料豆腐Bの含水分率が75%程度とされる。
【0031】
次ぎに、原料豆腐B,おからCをミキサで混合する。おからCは、原料豆腐Bと同様の含水分率である例えば含水分率が約73%程度のものが選択される。ミキサには、菜種油等の油が小量投入される。
【0032】
次ぎに、原料豆腐B,おからCの混合物を撹拌羽根2付きの蒸気釜1に投入する。
【0033】
蒸気釜1は、図3に示すように、調理空間となる内釜11の外側に外釜12が被せられ、内釜11,外釜12の間に蒸気室(加熱室)13が設けられている。内釜11は、蒸気室13に供給された水蒸気,過熱水蒸気aによってあまり高温にならずしかもむらなく加熱されるようになっている。
【0034】
撹拌羽根2は、図3に示すように、回転軸21に羽根22が取付けられ、蒸気釜1の内釜11の内部に設置されている。
【0035】
蒸気釜1の内釜11に投入された原料豆腐B,おからCの混合物は、撹拌羽根2で撹拌されながら加熱されて粉砕される。なお、原料豆腐B,おからCの混合物の投入に先行して、必要に応じ蒸気釜1の内釜11に焦付き防止のための菜種油等の油が小量投入される。
【0036】
具体的には、原料豆腐Bを20Kg投入したとすると、約25分間撹拌,加熱を継続する。約25分間としたのは、25分間を超えると原料豆腐Bに焦付きが発生し、25分に満たないと水分,固形分の分離が生じなくなる凍結適正が生じないためである。粉砕されて粉粒化(大きくとも、5mm塊以下)された原料豆腐B,おからCの混合物は、図2に示すように、水分の一部が蒸散されて含水分率が製品Cと同様の63〜64%となっている。副材であるおからCは、繊維質である特性から、豆腐(原料豆腐B)のたんぱく質の熱凝固を阻害して結着を防止し、粉粒状態(パラパラの状態)の生成,維持に寄与する。
【0037】
なお、蒸気釜1の内釜11の温度は、5分経過時点で約87℃となり、10分経過時点で約90℃となる。加熱された原料豆腐Bの温度は、5分経過時点で約50℃となり、10分経過時点で約80℃となる。即ち、脱水豆腐を原料豆腐Bとしていることで、あまり高温での長時間の加熱が不要となる。従って、粉粒化される原料豆腐B,おからCの混合物の熱変性が防止される。また、蒸気釜1の特性として内釜11の加熱温度にむらが生じないことも、原料豆腐Bの熱変性の防止に役立っている。
【0038】
粉粒化された原料豆腐B,おからCの混合物は、蒸気釜1の内釜11から取出されて、真空雰囲気下での冷却である真空冷却が実施される。真空冷却は、原料豆腐B,おからCの混合物を減圧下で急速に冷却(約20℃程度まで)し、含水分率を均質化するとともに含水分率の低下が促進されて粉粒状態を安定化する。
【0039】
次ぎに、冷却された原料豆腐B,おからCの混合物は、一定量に計量されて真空包装される。
【0040】
包装には、図4に示すように、ガスバリア性,低温耐候性を有する袋状の容器3に粉粒化された原料豆腐Bをマット状になるように充填する。そして、容器3を封止する際に内部を脱気して、粉粒化された原料豆腐Bと空気との接触が遮断された真空包装とする。
【0041】
この後、容器3に収容された原料豆腐Bを急速冷凍または緩慢冷凍で凍結させる。凍結温度は、約マイナス18℃とされる。
【0042】
この結果、加工が完了した製品Cが得られる。
【0043】
製品Cは、含水分率が63〜64%で水分,固形分の分離が生じなくなる凍結適正を有して凍結されているため、長期保存が可能である。また、前述のように、加熱の際の熱変性が防止されているため、良好な品質が保障される。なお、長期に保存しても、真空包装で空気との接触が遮断されているため、酸化等の変性が生じることがなく良好な品質が保持される。
【0044】
また、製品Cは、粉粒状であるため、解凍すれば、調味料(塩,味噌等)と混合しやすく、他の食材に対して混合,混練,添加,ふりかけ等しやすく、食材としての用途が拡大される。
【0045】
また、副材として豆腐製造の副産物であるおからCを選択することで、豆腐の製造原料を有効活用することができるよういなるため、製造コストを安価にすることができる。また、おからCは、製品DにおからCの風味を付与して食感を斬新なものとすることができる。また、繊維質に富んだおからCが加えられることによって、製品Dが健康指向に対応されるようになる。
【0046】
なお、図5には、原料豆腐Bの100gに対するおからCの添加量gを変更した場合の食感の評価を表にしてある。
【0047】
図6の表の結論としては、原料豆腐Bの100gに対しておからCを30〜40g添加すると、おからCの風味があるにもかかわらずおからCそのものではなく、斬新な食感で美味しくなるということがいえる。ただし、他の食材へ混合する場合等には、おからCの添加量を増やしても違和感を生ずることはない。
【0048】
以上、図示した各例の外に、副材として米ぬか,すりゴマ,ひじき等が挙げられる。なお、本発明者の実験によると、干しえび,小麦粉,パン粉については副材として不適(粉粒状態を生成,維持できない)であるとの結論が得られている。
【実施例】
【0049】
前述の本発明に係る豆腐加工食品およびその製造方法を実施するための最良の形態の第2例について以下の具体的調理を行って、前述の作用,効果が確実に奏されることを確認した。
材料として、原料豆腐Bが20Kg(含水分率74.7%),おからCが6Kg(含水分率72.4%),菜種油0,26Kgを用意した。
原料豆腐B,おからCを菜種油の半量を投入したミキサで15分間混合した後、蒸気釜1の内釜11に菜種油の半量を投入して蒸気釜1を1分間加熱した。
この後、原料豆腐B,おからCを蒸気釜1の内釜11に投入し、蒸気釜1の加熱を25分間継続した。
蒸気釜1の加熱5分後には、蒸気釜1の内釜11の温度が87.6℃となり、材料の混合物の温度が48.0〜58.7℃(測定箇所によりバラツキがある。)となった。
蒸気釜1の加熱10分後には、蒸気釜1の内釜11の温度が90.0℃となり、材料の混合物の温度が77.1〜87.3℃(測定箇所によりバラツキがある。)となった。
蒸気釜1の加熱15分後には、蒸気釜1の内釜11の温度が90.0℃に保持され、材料の混合物の温度が87.3.0〜90.3℃(測定箇所によりバラツキがある。)となった。
蒸気釜1の加熱20分後には、蒸気釜1の内釜11の温度が90.0℃に保持され、材料の混合物の温度が99.3℃となった。
蒸気釜1の加熱25分後には、蒸気釜1の内釜11の温度が90.0℃に保持され、材料の混合物の温度が86.3.0〜99.1℃(測定箇所によりバラツキがある。)となった。
蒸気釜1の加熱25分経過直後の材料の混合物の含水分率は、66.2%であった。
真空包装,凍結された直後の材料の混合物(製品D)の含水分率は、63.3%であった。
出荷状態に置かれた製品Dの含水分率は、63.4%となった。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る豆腐加工食品およびその製造方法を実施するための最良の形態の製造工程のフローチャートである。
【図2】図1の豆腐,原料豆腐,製品の含水分率を比較するグラフである。
【図3】図1の加熱粉砕工程に使用されるである蒸気釜の簡略化された断面図である。
【図4】図1の製品の断面図である。
【図5】図1の混合工程で混合されるおからの量による食感の評価の表である。
【符号の説明】
【0051】
1 蒸気釜
2 撹拌羽根
3 容器
A 豆腐
B 原料豆腐
C おから
D 製品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
豆腐と豆腐のたんぱく質の結着を阻害する副材とが混合され含水分率の低い粉粒状態とされて真空包装され凍結されてなる豆腐加工食品。
【請求項2】
請求項1の豆腐加工食品において、副材はおからであり、含水分率は63〜64%であることを特徴とする豆腐加工食品。
【請求項3】
豆腐を脱水して含水分率を低下させた原料豆腐と豆腐のたんぱく質の結着を阻害する副材とを撹拌羽根付きの蒸気釜に投入し、原料豆腐,副材を加熱粉砕して含水分率を低下させた粉粒状態とした混合物とし、混合物を蒸気釜から取出し真空包装して凍結する豆腐加工食品の製造方法。
【請求項4】
請求項3の豆腐加工食品の製造方法において、混合物を蒸気釜から取出した直後に真空冷却することを特徴とする豆腐加工食品の製造方法。
【請求項5】
請求項3または4の豆腐加工食品の製造方法において、副材をおからとし、含水分率を63〜64%とすることを特徴とする豆腐加工食品の製造方法。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれかの豆腐加工食品の製造方法において、原料豆腐は通常の製造方法で製造された豆腐を緩慢に脱水したものであることを特徴とする豆腐加工食品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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