説明

豆腐含有レトルト食品の製造方法及び豆腐含有レトルト食品

【課題】柔らかく食感のよい豆腐を含み、喫食するまでの間に自然な豆腐の形状を維持している豆腐含有レトルト食品を、提供する。
【解決手段】本発明の課題は、(1)粘度200〜5000cpsの液体ソースを容器に充填する液体ソース充填工程、(2)前記容器に、粘度200〜3000cpsの豆乳及び凝固剤を含む豆乳ソースを充填する工程であって、前記液体ソースの粘度が500cps未満の場合、豆乳ソースの粘度が1000cps以上であり、前記豆乳ソースの粘度が500cps未満の場合、液体ソースの粘度が1000cps以上である豆乳ソース充填工程(3)液体ソース及び豆乳ソースをレトルト殺菌し、豆乳ソースを凝固させ、豆腐を作製するレトルト殺菌工程、を含むことを特徴とする、豆腐含有レトルト食品の製造方法、又は20℃において800cps以上の粘度を有する液体ソース、及びレトルト殺菌によって凝固した豆腐を含む豆腐含有レトルト食品によって解決することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、豆腐含有レトルト食品の製造方法及び豆腐含有レトルト食品に関する。本発明によれば、風味及び食感の優れた豆腐を含み、製造工程及び流通工程で豆腐の形態が崩壊しない、豆腐含有レトルト食品を提供することができる。
【背景技術】
【0002】
最近のレトルト処理の技術の進歩により、カレー、スープ、シチュー、牛丼、ハヤシライス、又は雑炊などの様々な食品が、レトルト食品として提供されている。これらのレトルト食品は、100℃以上を超える温度において所定の時間で加熱される。このレトルト殺菌処理によって、食品中の微生物を死滅させ、常温での流通及び保存を可能にしている。
【0003】
一方、高温での加熱は食品特有の風味や食感を損なうこともある。例えば、豆腐をレトルト殺菌処理した場合、豆腐中の水分が失われて食感が硬くなることが報告されており(特許文献1及び2)、また、豆腐に褐変が発生し、商品価値が低下することも知られている。
【0004】
前記の豆腐を用いた調理品としては、あんかけ豆腐、豆腐入りスープ、味噌汁、雑炊、中華料理の麻婆豆腐、及び韓国料理のスンドゥブチゲなどが挙げられる。しかしながら、これらの豆腐を含む調理品をレトルト食品として提供する場合、豆腐が柔らかいために、製造工程において豆腐が破壊されて、食感及び外観が損なわれるという問題がある。従って、例えば麻婆豆腐などでは、豆腐を含まないソースのみをレトルト食品として提供し、そして、家庭での調理時にソースに豆腐を加え、麻婆豆腐などの調理品を完成させるものが多い。
また、レトルト食品に予め豆腐を含む場合は、豆腐が崩れないようにデンプンを含む硬い耐熱性豆腐(特許文献3及び4)を用いるため、豆腐独特の食感や味が失われるという問題があった。このような問題を解決するため、にがりなどの凝固剤に代えて水溶性ヘミセルロースを用いた豆腐様食品(特許文献1)、又はネイティブジェランガムを含む豆腐様食品(特許文献2)を、レトルト食品に用いることも提案されているが、いずれも食感及び味は、豆腐とは異なるものであり、豆腐の代替品となるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−222102号公報
【特許文献2】特開平10−150942号公報
【特許文献3】特開平7−194331号公報
【特許文献4】特開2004298152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、柔らかく食感のよい豆腐を含み、喫食するまでの間に自然な豆腐の形状を維持している豆腐含有レトルト食品を、提供することである。また、本発明の別の目的は、柔らかく食感のよい豆腐を含み、喫食するまでの間に自然な豆腐の形状を維持している豆腐含有レトルト食品の製造方法を、提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、柔らかく食感のよい豆腐を含み、喫食するまでの間に自然な豆腐の形状を維持している豆腐含有レトルト食品について鋭意研究した。その結果、驚くべきことに、レトルト殺菌工程において、豆乳ソースを凝固させ、豆腐を作製することによって、食感のよい豆腐を含み、喫食するまでの間に自然な豆腐の形状を維持することのできる豆腐含有レトルト食品が得られることを見出した。本発明の豆腐含有レトルト食品は、20℃において液体ソースが800cps以上の粘度を有するため、常温での流通工程において、豆腐が破壊されることを防ぐことができる。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
なお、本明細書において、「常温」とは、特に断らない限り、日本工業規格JIS Z 8703で規定されている基準温度の、20℃を中心として±10℃(10から30℃)を意味する。
【0008】
従って、本発明は、(1)粘度200〜5000cpsの液体ソースを容器に充填する液体ソース充填工程、(2)前記容器に、粘度200〜3000cpsの豆乳及び凝固剤を含む豆乳ソースを充填する工程であって、前記液体ソースの粘度が500cps未満の場合、豆乳ソースの粘度が1000cps以上であり、前記豆乳ソースの粘度が500cps未満の場合、液体ソースの粘度が1000cps以上である豆乳ソース充填工程、及び(3)液体ソース及び豆乳ソースをレトルト殺菌(高温処理)し、豆乳ソースを凝固させ、豆腐を作製するレトルト殺菌工程、を含むことを特徴とする、豆腐含有レトルト食品の製造方法に関する。
【0009】
本発明の豆腐含有レトルト食品の製造方法の好ましい態様においては、前記液体ソースが、(A)(a1)加熱により粘度が上昇する熱感受性熱不可逆性加熱増粘剤であって、50℃〜100℃においてピーク粘度を示し、加熱前の20℃における粘度がピーク粘度の1/10以下であり、120℃における粘度がピーク粘度の1/2未満に低下し、粘度の低下が不可逆的である増粘剤、又は(a2)20℃において粘性を示す熱感受性常温増粘剤であって、0℃〜100℃においてピーク粘度を示し、120℃における粘度がピーク粘度の1/2未満に低下し、粘度の低下が不可逆的である増粘剤、及び(C)0℃〜50℃においてピーク粘度を示し、70℃における粘度がピーク粘度の1/2以下に低下する熱可逆性増粘剤、を含む。
本発明の豆腐含有レトルト食品の製造方法の好ましい態様においては、前記熱感受性熱不可逆性加熱増粘剤(a1)が、120℃における粘度がピーク粘度の1/5以下に低下する増粘剤であり、また、前記熱感受性熱不可逆性加熱増粘剤(a1)が、熱感受性ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、じゃがいもデンプン、トウモロコシデンプン、及びタピオカデンプンからなる群から選択される少なくとも1つのデンプンであるか、又は前記熱感受性常温増粘剤(a2)が、熱感受性アルファ化デンプンである。
【0010】
本発明の豆腐含有レトルト食品の製造方法の別の好ましい態様においては、前記液体ソースが、(B)(b1)加熱により粘度が上昇する耐熱性熱不可逆性加熱増粘剤であって、50℃〜100℃においてピーク粘度を示し、加熱前の20℃における粘度がピーク粘度の1/10以下であり、120℃における粘度がピーク粘度の1/2以上を維持する増粘剤、又は(b2)20℃において粘性を示す耐熱性常温増粘剤であって、0℃〜100℃においてピーク粘度を示し、120℃における粘度がピーク粘度の1/2以上を維持する増粘剤、を含む。本発明の豆腐含有レトルト食品の製造方法の好ましい態様においては、前記液体ソースが、(C)0℃〜50℃においてピーク粘度を示し、70℃における粘度がピーク粘度の1/2以下に低下する熱可逆性増粘剤を更に含む。
本発明の豆腐含有レトルト食品の製造方法の好ましい態様においては、前記耐熱性熱不可逆性加熱増粘剤(b1)が、耐熱性ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、及び/又はリン酸架橋デンプンであるか、又は前記耐熱性常温増粘剤(b2)が、耐熱性アルファ化デンプンである。
【0011】
本発明の豆腐含有レトルト食品の製造方法の1つの好ましい態様においては、前記豆乳ソースが、更に豆腐ペーストを含む。
【0012】
本発明の豆腐含有レトルト食品の製造方法の1つの好ましい態様においては、前記熱可逆性増粘剤(C)が、寒天、グアーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、タマリンドガム、カラヤガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、カードラン、コンドロイチン硫酸、ガラクタン、ゼラチン、及びそれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0013】
また、本発明は、前記製造方法によって得ることのできる豆腐含有レトルト食品に関する。
【0014】
更に、本発明は、20℃において800cps以上の粘度を有する液体ソース、及びレトルト殺菌によって凝固した豆腐を含む豆腐含有レトルト食品に関する。
本発明の豆腐含有レトルト食品の好ましい態様においては、前記液体ソースが、(C)0℃〜50℃においてピーク粘度を示し、70℃における粘度がピーク粘度の1/2以下に低下する熱可逆性増粘剤を含み、70℃において800cps以下の粘度を有する。
更に、本発明の豆腐含有レトルト食品の別の好ましい態様においては、前記液体ソースが、(B)(b1)加熱により粘度が上昇する耐熱性熱不可逆性加熱増粘剤であって、50℃〜100℃においてピーク粘度を示し、加熱前の20℃における粘度がピーク粘度の1/10以下であり、120℃における粘度がピーク粘度の1/2以上を維持する増粘剤、又は(b2)20℃において粘性を示す耐熱性常温増粘剤であって、0℃〜100℃においてピーク粘度を示し、120℃における粘度がピーク粘度の1/2以上を維持する増粘剤を含み、70℃において800cps以上の粘度を有するものである。また、本発明の豆腐含有レトルト食品の好ましい態様においては、前記液体ソースが、更に(C)0℃〜50℃においてピーク粘度を示し、70℃における粘度がピーク粘度の1/2以下に低下する熱可逆性増粘剤を含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明の豆腐含有レトルト食品の製造方法によれば、レトルト殺菌工程において、豆乳ソースを凝固させ、豆腐を作製することによって、柔らかく食感のよい豆腐を含む豆腐含有レトルト食品を製造することができる。また、予め作製された豆腐をレトルト食品の製造工程において添加する方法では、製造工程において豆腐の破壊がおきやすかったが、レトルト殺菌工程において、豆腐を作製するため、豆腐の崩れが起きず、外観の優れた豆腐含有レトルト食品を得ることができる。更に、本発明の豆腐含有レトルト食品の製造方法によって得られた豆腐含有レトルト食品は、常温において液体ソースが、800cps以上の粘度を有しているため、柔らかな豆腐が輸送中に破壊されることを防ぐことが可能である。
【0016】
本発明の豆腐含有レトルト食品によれば、レトルト殺菌によって、豆乳ソースを凝固させた豆腐を含むことによって、柔らかく食感のよい豆腐を含む豆腐含有レトルト食品を提供することができる。また、本発明の豆腐含有レトルト食品は、常温において液体ソースが、800cps以上の粘度を有しているため、柔らかな豆腐が輸送中に破壊されることを防ぐことが可能である。更に、本発明の1つの態様の豆腐含有レトルト食品(例えば、スンドゥブチゲ、味噌汁、又は豆腐入りスープ)は、喫食時においては粘度の低いスープ状の食品として提供することも可能である。また、別の態様の豆腐含有レトルト食品(例えば、あんかけ豆腐又は麻婆豆腐)は、喫食時において粘度の高いスープを含む食品として提供することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】熱感受性ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンの4質量%分散液の温度変化に伴う粘度の変化を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[1]豆腐含有レトルト食品の製造方法
本発明の豆腐含有レトルト食品の製造方法は、(1)粘度200〜5000cpsの液体ソースを容器に充填する液体ソース充填工程、(2)前記容器に、粘度200〜3000cpsの豆乳及び凝固剤を含む豆乳ソースを充填する工程であって、前記液体ソースの粘度が500cps未満の場合、豆乳ソースの粘度は1000cps以上であり、前記豆乳ソースの粘度が500cps未満の場合、液体ソースの粘度は、1000cps以上である豆乳ソース充填工程、及び(3)液体ソース及び豆乳ソースをレトルト殺菌(高温処理)し、豆乳ソースを凝固させ、豆腐を作製するレトルト殺菌工程、を含むことを特徴とする。
なお、本明細書において「豆腐」とは、少なくとも豆乳及び凝固剤を含み、70℃以上の温度で凝固したものを意味する。
【0019】
(1)液体ソース充填工程
本発明の製造方法においては、液体ソースを容器に充填する液体ソース充填工程を行う。この工程で用いる液体ソースの粘度は、充填時において200〜5000cpsであり、好ましくは500〜4000cpsであり、最も好ましくは1000〜3000cpsである。粘度が200cps未満であると、豆乳ソース充填工程(2)において、豆乳ソースと液体ソースとが混合し、豆腐が好適に作製されないことがある。また粘度が5000cpsを超えると、豆乳ソース充填工程(2)において、豆乳ソースと液体ソースとが分離し、液体ソース中に豆腐が混入していない製品ができることがある。
【0020】
液体ソースは、充填前に加熱を行うことが好ましい。特に後述の熱感受性熱不可逆性加熱増粘剤(a1)又は耐熱性熱不可逆性加熱増粘剤(b1)などの加熱増粘剤を含む場合は、加熱により液体ソースの粘度を上昇させ、充填時の液体ソースの粘度を調整することができる。加熱増粘剤の粘度は、熱不可逆性であり、従って、加熱により一旦上昇した加熱増粘剤を含む液体ソースの粘度は、温度の低下によっても低下しない。また、後述の熱感受性常温増粘剤(a2)又は耐熱性常温増粘剤(b2)を用いる場合は、加熱を行なわずに、液体ソースの粘度を調整することが可能であるが、充填時に加熱を行ってもよい。
【0021】
液体ソースの充填時の温度は、200〜5000cpsの粘度を維持することができる限り限定されるものではないが、好ましくは10〜90℃である。
【0022】
(2)豆乳ソース充填工程
本発明の製造方法においては、液体ソースが充填された容器に、豆乳ソースを充填する豆乳ソース充填工程を行う。豆腐含有レトルト食品の製造方法において、豆乳ソースが充填された容器に、液体ソースを充填することも可能であるが、液体ソースが充填された容器に、豆乳ソースを充填することが好ましい。
本工程で用いる豆乳ソースの粘度は、充填時において200〜3000cpsであり、好ましくは300〜2500cpsであり、最も好ましくは500〜2000cpsである。粘度が200cps未満であると、豆乳ソースと液体ソースとが混合し、豆腐が好適に作製されないことがある。また粘度が3000cpsを超えると、豆乳ソースのレトルト殺菌時の固化が進みすぎ、物性の硬い豆腐となってしまう。
【0023】
液体ソースと、豆乳ソースとが一定の粘度を有することにより、液体ソース中において、豆乳ソースが一定の形態を維持しながら、塊として存在することができる。なお、液体ソース及び豆乳ソースの粘度が同じであっても、液体ソースに豆乳ソースを添加した場合、豆乳ソースが一定の形態を維持しながら、塊として存在することができる。しかしながら、液体ソース及び豆乳ソースの粘度がいずれも低い場合は、液体ソース及び豆乳ソースが分散し、液体ソース中において、豆乳ソースが一定の形態を維持できないことがある。従って、液体ソース又は豆乳ソースのいずれかの粘度が500cps未満の場合、もう片方のソースの粘度は1000cps以上であることが重要である。また、液体ソース及び豆乳ソースの粘度がどちらとも高い場合は、豆乳ソースが液体ソースに混入できず分離してしまう。
【0024】
豆乳ソースの充填時の温度は、豆乳ソースが凝固しない温度であれば、限定されるものではないが、好ましくは0〜60℃であり、より好ましくは5〜45℃であり、最も好ましくは5〜20℃である。0℃未満では、豆乳ソースが凍結し充填が不安定になることがある。60℃を超えると豆乳ソースが凝固することがある。
【0025】
(3)レトルト殺菌工程
本発明の製造方法においては、液体ソース及び豆乳ソースを含む容器を密封し、レトルト殺菌する。本発明におけるレトルト殺菌工程は、殺菌処理を行うとともに、豆乳ソースを凝固させ、豆腐を作製する工程を意味する。従来の豆腐含有レトルト食品の製造方法においては、液体ソース中の豆乳ソースを、レトルト殺菌処理により凝固させ、豆腐を製造させることは行われていなかった。
レトルト殺菌処理の温度及び時間は、微生物を死滅させることができる限り、限定されるものではないが、例えば105〜130℃、5〜30分処理することにより、殺菌することができる。レトルト殺菌処理するための温度や時間は、製品の種類や配合・充填量の違いなどにより異なるので最適な値を選定して使用することが好ましい。レトルト殺菌処理のための装置や方法は公知のものを使用できる。
【0026】
豆乳ソースは、70℃を超えると凝固し始めるため、105〜130℃の加熱によって、豆乳ソースは凝固した豆腐となる。従来の豆腐含有レトルト食品においては、一度凝固した豆腐を、更にレトルト殺菌処理するため、豆腐が硬くなったり、また離水が起きた。本発明の製造方法においては、1回の加熱処理により豆腐を製造すること、及び液体ソース中で豆腐を製造することにより、風味及び食感の優れた豆腐を含む豆腐含有レトルト食品を製造することができると推定される。但し、本発明はこの推定により、限定されるものではない。
【0027】
(豆乳ソース)
豆乳ソースに用いる豆乳は、豆腐の製造に用いることのできる豆乳を、制限なく使用することができる。例えば、公知の豆乳の製造方法に従って得られる豆乳、市販の豆乳、又は豆乳成分を含んだ豆乳粉末を用いることができる。豆乳を調整する場合、水に浸した大豆を、水を加えながら粉砕してどろどろの状態にする。更に、加熱しながら、水を加えて呉を調製する。得られた呉を布でこし、豆乳を得ることができる。このようにして得られた豆乳を本発明の製造方法に用いることができる。豆乳の大豆固形分によって、豆腐の味わいや形状の厚みを調整することができる。使用する豆乳や、豆乳粉末を溶解した豆乳粉末含有液は、一般的に無調整豆乳と呼ばれる大豆固形分が8%以上の割合であれば、濃度調整を行わずに、塊状の豆腐様食品を得ることができるが、特に大豆固形分10%以上の豆乳を用いた場合、濃度調整を行わずに、加熱により、塊状で、口あたり及び食感の良い豆腐を得ることができる。
【0028】
豆乳ソースに用いる凝固剤としては、豆乳中の蛋白質を凝固させることができる凝固剤であれば、特に限定させるものではないが、豆腐製造に一般に用いられている凝固剤である塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、粗製海水塩化マグネシウム、又はグルコノデルタラクトンを挙げることができ、凝固剤の量も、適宜決定することが可能であるが、例えば、豆乳100重量部に対し、塩化マグネシウム量として0.05〜0.2重量部に相当する凝固作用をえる凝固剤を添加することによって、豆乳を凝固させることができる。
【0029】
前記豆乳ソースの粘度は、200〜3000cpsである。この豆乳ソースの粘度を調整するために、豆腐ペーストを用いることが好ましい。豆腐ペーストは、豆腐をペースト状にしたものであり、木綿豆腐、絹ごし豆腐、充填絹ごし豆腐、又はソフト豆腐など、ペースト状にできる豆腐を用いることができる。豆腐ペーストは、ミキシング(粉砕)又は圧縮等の力を加えることによって、得ることができる。添加する豆腐ペーストの量を、適宜、調整することによって、豆乳ソースの粘度を調整することが可能であり、例えば豆腐ペーストを5〜99質量%で用いることができる。
【0030】
また、豆腐ペーストを添加する代わりに、例えば70℃〜100℃程度で緩やかに凝固させた豆腐を作製し、その豆腐をペースト状にしたものを豆乳ソースとして用いてもよい。この豆乳ソースを、前記液体ソースに加え、再凝固させ豆腐とすることができる。この場合、緩やかに凝固させた豆腐をペースト状にした豆乳ソースには、凝固していない豆乳、凝固剤、及び凝固した豆腐のペーストが含まれており、実質的に豆乳、凝固剤、及び豆腐ペーストが含まれた豆乳ソースを用いていることになる。また、この豆腐ソースに、更に凝固剤を添加して、用いてもよい。
なお、豆腐ペーストを100%用い、豆乳ソースとして用いることも、本発明の範囲に含まれる。この場合、豆乳ペーストからなる豆乳ソースには、豆乳、及び凝固剤が含まれている。従って、豆乳、豆腐ペースト及び凝固剤によって、豆乳ペーストからなる豆乳ソースは、レトルト殺菌により再凝固し、豆腐となることができる。
【0031】
豆乳ソースの粘度は、増粘剤、食品ペースト、又は食品粉末などを豆乳ソースに加えて、調整することも可能である。また、得られる豆腐を極度に硬化させること、又は風味若しくは食感を悪化させることがない限り、その他の食用の化合物、又は物質を含むことができ、例えば、調味料又は香辛料などを含んでもよい。
【0032】
(液体ソース)
本発明に用いる液体ソースの粘度は、200〜5000cpsであり、粘度が低い場合は、特に増粘剤を用いないことも可能である。しかしながら、粘度を200〜5000cpsに維持するために、液体ソースは増粘剤を含むことが好ましい。液体スープの温度が低い場合(例えば0〜50℃の場合)は、後述の熱可逆性増粘剤(C)、熱感受性常温増粘剤(a2)、又は耐熱性常温増粘剤(b2)によって、液体スープの粘度を調整することができる。また、温度が高い場合(例えば、50〜100℃の場合)は、熱感受性熱不可逆性加熱増粘剤(a1)、耐熱性熱不可逆性加熱増粘剤(b1)、熱感受性常温増粘剤(a2)、又は耐熱性常温増粘剤(b2)によって、液体スープの粘度を調整することができる。
本発明においては、得られた豆腐含有レトルト食品の流通時に豆腐の形態を保持するために、常温時に一定の粘度を維持することが好ましい。従って、熱可逆性増粘剤(C)、耐熱性熱不可逆性加熱増粘剤(b1)、又は耐熱性常温増粘剤(b2)を含むことが好ましい。
一方、豆乳ソースが凝固するレトルト殺菌工程において、豆乳ソースが凝固するまでの間、液体ソース中で豆乳ソースの形態を維持することが重要である。豆乳ソースの形態の維持は、液体ソース中と豆乳ソースとが混合しないことによって生じるため、液体ソースが必ずしも、高い粘度を必要とするわけではないが、熱感受性熱不可逆性加熱増粘剤(a1)、耐熱性熱不可逆性加熱増粘剤(b1)、熱感受性常温増粘剤(a2)、又は耐熱性常温増粘剤(b2)を含むことが好ましい。
【0033】
本発明に用いる液体ソースは、調理品ごとに、更に様々な食品具材原料、調味料、香辛料、水などを含むことができる。食品具材原料としては、畜肉、魚肉、野菜、果実などを直接使用でき、又は加工したものを使用することもできる。更に、必要に応じて前処理を行った具材原料を使用することが可能であり、それらを単独で、又は複合して、制限なく使用することができる。
【0034】
(豆腐含有低粘性スープレトルト食品)
本発明の製造方法によって製造できるレトルト食品として、低粘性の液体スープを含む豆腐含有低粘性スープレトルト食品を挙げることができる。豆腐含有低粘性スープレトルト食品は、喫食時に液体スープの粘性が低い食品であり、具体的にはスンドゥブチゲ、豆腐入りスープ、雑炊、豆腐入り鍋つゆ、及び味噌汁を挙げることができる。
【0035】
豆腐含有低粘性スープレトルト食品の製造方法においては、レトルト殺菌工程において温度が上昇する高温時(例えば、50〜100℃)においては粘度を維持し、高温での喫食時(例えば、50〜90℃)には粘度を低下させるため、熱感受性増粘剤(A)を用いることが好ましい。熱感受性増粘剤(A)は、レトルト殺菌処理(100℃以上での処理)によって粘度が低下又は消失する増粘剤である。熱感受性増粘剤(A)としては、熱感受性熱不可逆性加熱増粘剤(a1)、及び熱感受性常温増粘剤(a2)を挙げることができる。
【0036】
(熱感受性熱不可逆性加熱増粘剤(a1))
前記熱感受性熱不可逆性加熱増粘剤(a1)は、加熱により粘度が上昇する加熱増粘剤であって、50℃〜100℃においてピーク粘度を示し、加熱前の20℃における粘度がピーク粘度の1/10以下であり、120℃における粘度がピーク粘度の1/2未満に低下し、粘度の低下が不可逆的である増粘剤である。熱感受性熱不可逆性加熱増粘剤(a1)は、0℃〜50℃においては、ほとんど粘度を示さないものが多く、50℃以上に加熱することによって、粘性を示すようになり、50℃〜100℃において、ピークの粘度を示す。また、加熱により発生した粘性は、温度が下がっても、低下することがない熱不可逆性の増粘剤である。増粘剤の粘度は、濃度を変化させることによって調整することができる。従って、熱感受性熱不可逆性加熱増粘剤(a1)のピーク粘度は、本発明の豆腐含有レトルト食品の製造に使用できる粘度であれば、限定されるものではないが、例えば2%水溶液又は分散液で500cps以上が好ましく、1000cps以上がより好ましく、2000cps以上が最も好ましい。また、ピーク粘度の上限も、限定されるものではないが、2%水溶液又は分散液であっても、6%水溶液又は分散液であっても8000cps以下が好ましい。
【0037】
また、熱感受性熱不可逆性加熱増粘剤(a1)の加熱前の20℃における粘度は、限定されるものではないが、ピーク粘度の1/10以下である。更に、熱感受性熱不可逆性加熱増粘剤(a1)は、50℃〜100℃においてピーク粘度を示した後、更に温度を上昇させることによって、粘度が低下又は消失する熱感受性の増粘剤である。すなわち、例えば120℃における粘度がピーク粘度の1/2未満が好ましく、1/3以下がより好ましく、1/5以下が更に好ましく、1/10以下が最も好ましい。粘度が消失することによって、豆腐含有低粘性スープレトルト食品を高温(例えば50〜90℃)で喫食する場合に、粘度が低くなり、スンドゥブチゲ、豆腐入りスープ、雑炊、及び味噌汁などの本来の食感が得られるからである。
【0038】
前記液体スープは、熱感受性熱不可逆性加熱増粘剤(a1)の1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて含むことができる。熱感受性熱不可逆性加熱増粘剤(a1)として、具体的には、熱感受性ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、じゃがいもデンプン、トウモロコシデンプン、又は、タピオカデンプンを挙げることができる。図1に熱感受性ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンの4質量%分散液の温度変化(40〜90℃)に伴う粘度の変化を示した。55℃を超えると急激に粘度が上昇し、65℃で2500cps程度のピーク粘度を示す。そして、70℃を超えると次第に粘度が低下する。90℃を超える温度については記載していないが、100℃を超えると粘度が更に低下し、120℃では、ピーク粘度の1/5以下程度に減少する。
【0039】
(熱感受性常温増粘剤(a2))
熱感受性常温増粘剤(a2)は、20℃において粘性を示す熱感受性常温増粘剤であって、0℃〜100℃においてピーク粘度を示し、120℃における粘度がピーク粘度の1/2未満に低下し、粘度の低下が不可逆的である増粘剤である。熱感受性常温増粘剤(a2)は、常温においても粘性を示す増粘剤であり、高温(例えば、50℃〜100℃)においても粘性を維持することのできる増粘剤である。すなわち、熱感受性常温増粘剤(a2)は、0℃〜100℃においてピーク粘度を示す。なお、増粘剤の粘度は、濃度を変化させることによって調整することができる。従って、熱感受性常温増粘剤(a2)のピーク粘度は、本発明の豆腐含有レトルト食品の製造に使用できる粘度であれば、限定されるものではないが、例えば2%水溶液又は分散液で500cps以上が好ましく、1000cps以上がより好ましく、2000cps以上が最も好ましい。また、ピーク粘度の上限も、限定されるものではないが、2%水溶液又は分散液であっても、6%水溶液又は分散液であっても8000cps以下が好ましい。
【0040】
熱感受性常温増粘剤(a2)は、0℃〜100℃においてピーク粘度を示した後、更に温度を上昇させることによって、粘度が低下又は消失する熱感受性の増粘剤である。すなわち、例えば120℃における粘度がピーク粘度の1/2未満が好ましく、1/3以下がより好ましく、1/5以下が更に好ましく、1/10以下が最も好ましい。粘度が消失することによって、豆腐含有低粘性スープレトルト食品を高温(例えば50〜90℃)で喫食する場合に、粘度が低くなり、スンドゥブチゲ、豆腐入りスープ、雑炊、及び味噌汁などの本来の食感が得られるからである。
【0041】
前記液体スープは、熱感受性常温増粘剤(a2)の1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて含むことができる。熱感受性常温増粘剤(a2)として、具体的には、熱感受性アルファ化デンプンを挙げることができる。
【0042】
前記熱感受性熱不可逆性加熱増粘剤(a1)又は熱感受性常温増粘剤(a2)を用いることによって、レトルト殺菌処理の温度上昇時に粘度を維持して、液体ソースと、豆乳ソースとが混合することを防ぐことが容易になる。また、熱感受性熱不可逆性加熱増粘剤(a1)又は熱感受性常温増粘剤(a2)の液体ソースにおける含有量は、所望の粘度により適宜決定することができるが、例えば0.5〜6質量%であり、好ましくは2〜5質量%である。
【0043】
(熱可逆性増粘剤(C))
豆腐含有低粘性スープレトルト食品においては、流通時に一定の粘度を維持し、豆腐の崩れを防ぐために、熱可逆性増粘剤(C)を含むことが好ましい。熱可逆性増粘剤(C)は、0℃〜50℃においてピーク粘度を示し、70℃における粘度がピーク粘度の1/2以下に低下する増粘剤である。熱可逆性増粘剤(C)は、0℃〜50℃においてピーク粘度を示し、加熱によって粘度が低下する。通常50℃以上では粘性を示さないものが多く、70℃における粘度がピーク粘度の1/2以下に低下する。豆腐含有低粘性スープレトルト食品に好適に使用するためには、70℃における粘度は、ピーク粘度の1/3以下が好ましく、1/5以下が更に好ましく、1/10以下が最も好ましい。熱可逆性増粘剤(C)が含まれていることにより、流通時に豆腐が崩壊せず、喫食時に粘性の低い液体スープを提供することが容易になる。
【0044】
増粘剤の粘度は、濃度を変化させることによって調整することができる。従って、熱可逆性増粘剤(C)のピーク粘度は、本発明の豆腐含有レトルト食品の製造に使用できる粘度であれば、限定されるものではないが、例えば0.3%の水溶液又は分散液で800cps以上が好ましく、900cpsがより好ましく、1000cps以上が最も好ましい。
【0045】
前記液体スープは、熱可逆性増粘剤(C)の1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて含むことができる。熱可逆性増粘剤(C)として、寒天又は増粘多糖類を挙げることができ、具体的には、寒天、グアーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、タマリンドガム、カラヤガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、カードラン、コンドロイチン硫酸、ガラクタン、ゼラチン、及びそれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。
【0046】
液体スープに含まれる熱感受性増粘剤(A)と熱可逆性増粘剤(C)との割合は、レトルト食品の種類、及び液体スープの粘度に従って、適宜決定することができる。限定されるものではないが、例えば1:100〜100:1であり、好ましくは1:1〜100:1であり、より好ましくは5:2〜10:1である。
【0047】
(豆腐含有高粘性液体スープレトルト食品)
本発明の製造方法によって製造できるレトルト食品として、高粘性の液体スープを含む
豆腐含有高粘性スープレトルト食品を挙げることができる。豆腐含有高粘性スープレトルト食品は、喫食時に液体スープの粘性が高い食品であり、例えばあんかけ豆腐、及び麻婆豆腐を挙げることができる。
【0048】
豆腐含有高粘性スープレトルト食品の製造方法においては、レトルト殺菌工程において温度が上昇する高温時(例えば、50〜100℃)においては粘度を維持し、更に高温での喫食時(例えば、50〜90℃)にも粘度を維持させるため、耐熱性増粘剤(B)を用いることが好ましい。耐熱性増粘剤(B)は、レトルト殺菌処理(100℃以上での処理)によって粘度が低下しないか又は粘度の低下が低い増粘剤である。耐熱性増粘剤(B)としては、耐熱性熱不可逆性加熱増粘剤(b1)、及び耐熱性常温増粘剤(b2)を挙げることができる。
【0049】
(耐熱性熱不可逆性加熱増粘剤(b1))
前記耐熱性熱不可逆性加熱増粘剤(b1)は、加熱により粘度が上昇する熱不可逆性加熱増粘剤であって、50℃〜100℃においてピーク粘度を示し、加熱前の20℃における粘度がピーク粘度の1/10以下であり、120℃における粘度がピーク粘度の1/2以上を維持する増粘剤である。耐熱性熱不可逆性加熱増粘剤(b1)は、0℃〜50℃においては、ほとんど粘度を示さないものが多く、50℃以上に加熱することによって、粘性を示すようになり、50℃〜100℃において、ピークの粘度を示す。また、加熱により発生した粘性は、温度が下がっても、低下することがない熱不可逆性の増粘剤である。増粘剤の粘度は、濃度を変化させることによって調整することができる。従って、耐熱性受性熱不可逆性加熱増粘剤(b1)のピーク粘度は、本発明の豆腐含有レトルト食品の製造に使用できる粘度であれば、限定されるものではないが、例えば2%水溶液又は分散液で500cps以上が好ましく、1000cps以上がより好ましく、2000cps以上が最も好ましい。また、ピーク粘度の上限も、限定されるものではないが、2%水溶液又は分散液であっても、6%水溶液又は分散液であっても8000cps以下が好ましい。
【0050】
また、耐熱性熱不可逆性加熱増粘剤(b1)の加熱前の20℃における粘度は、限定されるものではないが、ピーク粘度の1/10以下である。更に、耐熱性熱不可逆性加熱増粘剤(b1)は、50℃〜100℃においてピーク粘度を示した後、更に温度を上昇させても、粘度が低下しないか又は粘度の低下が低い耐熱性の増粘剤である。すなわち、例えば120℃における粘度がピーク粘度の1/2以上が好ましく、2/3以上が更に好ましく、3/4以上が最も好ましい。粘度を維持でき、且つ粘性が不可逆的であることによって、豆腐含有高粘性スープレトルト食品を高温(例えば50〜90℃)で喫食する場合に、高い粘度が得られ、あんかけ豆腐、及び麻婆豆腐などの本来の食感が得られるからである。
【0051】
前記液体スープは、耐熱性熱不可逆性加熱増粘剤(b1)の1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて含むことができる。耐熱性熱不可逆性加熱増粘剤(b1)として、具体的には、耐熱性ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、又はリン酸架橋デンプンを挙げることができる。
【0052】
(耐熱性常温増粘剤(b2))
耐熱性常温増粘剤(b2)は、20℃において粘性を示す常温増粘剤であって、0℃〜100℃においてピーク粘度を示し、120℃における粘度がピーク粘度の1/2以上を維持する増粘剤である。耐熱性常温増粘剤(b2)は、常温においても粘性を示す増粘剤であり、高温(例えば、50℃〜100℃)においても粘性を維持することのできる増粘剤である。耐熱性常温増粘剤(b2)の20℃又は70℃における粘度は、例えば2%水溶液又は分散液で、300cps以上が好ましく、0℃〜100℃においてピーク粘度を示す。なお、増粘剤の粘度は、濃度を変化させることによって調整することができる。従って、耐熱性常温増粘剤(b2)のピーク粘度は、本発明の豆腐含有レトルト食品の製造に使用できる粘度であれば、限定されるものではないが、例えば2%水溶液又は分散液で500cps以上が好ましく、1000cps以上がより好ましく、2000cps以上が最も好ましい。また、ピーク粘度の上限も、限定されるものではないが、2%水溶液又は分散液であっても、6%水溶液又は分散液であっても8000cps以下が好ましい。
【0053】
耐熱性常温増粘剤(b2)は、0℃〜100℃においてピーク粘度を示した後、更に温度を上昇させても、粘度が低下しないか又は粘度の低下が低い耐熱性の増粘剤である。すなわち、例えば120℃における粘度がピーク粘度の1/2以上が好ましく、2/3以上が更に好ましく、3/4以上が最も好ましい。粘度を維持できることによって、豆腐含有高粘性スープレトルト食品を高温(例えば50〜90℃)で喫食する場合に、高い粘度が得られ、あんかけ豆腐、及び麻婆豆腐などの本来の食感が得られるからである。
【0054】
前記液体スープは、耐熱性常温増粘剤(b2)の1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて含むことができる。耐熱性常温増粘剤(b2)として、具体的には、耐熱性アルファ化デンプン、を挙げることができる。
【0055】
前記耐熱性熱不可逆性加熱増粘剤(b1)及び/又は耐熱性常温増粘剤(b2)を用いることによって、レトルト殺菌処理の温度上昇時に粘度を維持して、液体ソースと、豆乳ソースとが混合することを防ぐことが容易になり、また喫食時に高温(例えば50〜90℃)であっても、高い粘度を得ることができる。また、耐熱性熱不可逆性加熱増粘剤(b1)又は耐熱性常温増粘剤(b2)の液体ソースの含有量は、所望の粘度により適宜決定することができるが、例えば0.5〜6質量%であり、好ましくは2〜5質量%である。
【0056】
(熱可逆性増粘剤(C))
前記豆腐含有高粘性液体スープレトルト食品は、耐熱性熱不可逆性加熱増粘剤(b1)及び/又は耐熱性常温増粘剤(b2)を含むことによって、流通時に一定の粘度を維持し、豆腐の崩れを防ぐことができるが、更に熱可逆性増粘剤(C)を含んでもよい。熱可逆性増粘剤(C)を含むことによって、豆腐の流通時における安定性を確保することができる。豆腐含有高粘性液体スープレトルト食品の製造に用いる熱可逆性増粘剤(C)は、前記の豆腐含有低粘性液体スープレトルト食品の製造に用いる熱可逆性増粘剤(C)を用いることができる。
【0057】
液体スープに含まれる耐熱性増粘剤(B)と熱可逆性増粘剤(C)との割合は、レトルト食品の種類、及び液体スープの粘度に従って、適宜決定することができ、限定されるものではないが、例えば1:100〜100:1であり、好ましくは1:1〜100:1であり、より好ましくは5:2〜10:1である。
【0058】
前記液体ソースと豆乳ソースの割合は、レトルト食品の種類により、適宜決定することができるが、好ましくは1:1000〜1000:1であり、より好ましくは1:1〜10:1である。
【0059】
本発明の豆腐含有レトルト食品に用いる容器は、前記液体ソース及び豆乳ソースを収容して密封包装し、殺菌などのために加熱処理したり、あるいはレトルト殺菌処理したりすることができるものであればよく、材質も特に限定されず、例えば金属、ガラス、セラミック、プラスチック、これらの2つ以上の組み合わせなど、いずれも使用できる。容器の形態や大きさなども特に限定されず、袋、瓶、又はトレーなどの形態の容器を使用できる。特に、包装袋は好ましく、耐熱性合成樹脂フィルム及び/又は金属箔のラミネート材からなるプラスチック袋などのガスバリヤー性耐熱容器包装体が更に好ましい。
【0060】
ガスバリヤー性耐熱容器包装体は、耐熱性合成樹脂フィルム及び/又は金属箔のラミネート材からなるプラスチック袋である。例えば、塩化ビニリデンフィルムを中間層とし、上下層には、ポリプロピレンを積層したプラスチック袋や(PET/ナイロン/ポリプロピレン系シーラント)からなる積層プラスチック袋などを挙げることができる。
【0061】
なお、本発明の豆腐含有レトルト食品の製造方法により得られた豆腐含有レトルト食品は、後述の本発明の「[2]豆腐含有レトルト食品」の項に記載の「(流通工程)」及び「(喫食)」に記載の特徴を有するものである。
【0062】
[2]豆腐含有レトルト食品
本発明の豆腐含有レトルト食品は、20℃において800cps以上の粘度を有する液体ソース、及びレトルト殺菌(高温処理)によって凝固した豆腐を含む豆腐含有レトルト食品である。豆腐含有レトルト食品に含まれる豆腐は、液体ソース中で凝固したものであり、従来の硬い耐熱性豆腐、又はレトルト殺菌処理され水分が失われた豆腐と異なり、風味及び食感の優れた豆腐である。また、本発明の豆腐含有レトルト食品は、限定されるものではないが、前記の本発明の豆腐含有レトルト食品の製造方法によって得ることもできる。
【0063】
本発明の豆腐含有レトルト食品に含まれる液体ソースの粘度は、20℃において800cps以上の粘度を有するが、好ましくは900cps以上であり、より好ましくは1000cpsである。20℃における粘度が800cpsより低い場合、レトルト食品の流通時において、豆腐の形態が崩れることがあり、好ましくない。粘度を800cps以上に維持するために、液体ソースは増粘剤を含むことが好ましい。具体的には、前記熱可逆性増粘剤(C)、耐熱性熱不可逆性加熱増粘剤(b1)、又は耐熱性常温増粘剤(b2)を含むことによって、液体スープの粘度を800cps以上とすることができる。
【0064】
本発明の豆腐含有レトルト食品に含まれる液体ソースは、調理品ごとに、更に様々な食品具材原料、調味料、香辛料、水などを含むことができる。食品具材原料としては、畜肉、魚肉、野菜、果実などを直接使用でき、又は加工したものを使用することもできる。更に、必要に応じて前処理を行った具材原料を使用することが可能であり、それらを単独で、又は複合して、制限なく使用することができる。
【0065】
(豆腐含有低粘性スープレトルト食品)
本発明の豆腐含有レトルト食品として、低粘性の液体スープを含む豆腐含有低粘性スープレトルト食品を挙げることができる。豆腐含有低粘性スープレトルト食品は、喫食時に液体スープの粘性が低い食品であり、具体的にはスンドゥブチゲ、豆腐入りスープ、雑炊及び味噌汁を挙げることができる。
【0066】
豆腐含有低粘性スープレトルト食品は、液体ソースに0℃〜50℃においてピーク粘度を示し、70℃における粘度がピーク粘度の1/2以下に低下する熱可逆性増粘剤(C)を含むことが好ましい。この熱可逆性増粘剤(C)を含むことによって、豆腐含有レトルト食品は、常温での流通時において、容易に800cps以上の粘度を有することができるからである。熱可逆性増粘剤(C)としては、前記の豆腐含有低粘性液体スープレトルト食品の製造に用いる熱可逆性増粘剤(C)を用いることができる。
【0067】
また、前記液体ソースの粘度は、70℃において500cps以下であり、好ましくは300cps以下であり、より好ましくは200cps以下である。500cps以下であることによって、喫食時に粘性の低い液体スープを提供することができる。前記熱可逆性増粘剤(C)は、0℃〜50℃においてピーク粘度を示すため、熱可逆性増粘剤(C)を含む液体スープは、0℃〜50℃においては比較的高い粘度を示す。従って、熱可逆性増粘剤(C)を含む豆腐含有低粘性スープレトルト食品は、基本的に、高温(例えば50〜90℃)で喫食するものであり、0℃〜50℃では液体スープの粘性が高くなり、例えば、スンドゥブチゲ、豆腐入りスープ、雑炊、及び味噌汁などの最適な食感が得られないことがある。
【0068】
(豆腐含有高粘性スープレトルト食品)
本発明の豆腐含有レトルト食品として、高粘性の液体スープを含む豆腐含有高粘性スープレトルト食品を挙げることができる。豆腐含有高粘性スープレトルト食品は、喫食時に液体スープの粘性が高い食品であり、具体的にはあんかけ豆腐、及び麻婆豆腐を挙げることができる。
【0069】
豆腐含有高粘性スープレトルト食品は、液体ソースに耐熱性増粘剤(B)を含むことが好ましい。この耐熱性増粘剤(B)を含むことによって、豆腐含有レトルト食品は、常温での流通時において、容易に800cps以上の粘度を有することができるからである。耐熱性増粘剤(B)としては、前記の豆腐含有低粘性液体スープレトルト食品の製造に用いる耐熱性増粘剤(B)を用いることができる。具体的には、耐熱性増粘剤(B)としては、(b1)加熱により粘度が上昇する耐熱性熱不可逆性加熱増粘剤であって、50℃〜100℃においてピーク粘度を示し、加熱前の20℃における粘度がピーク粘度の1/10以下であり、120℃における粘度がピーク粘度の1/2以上を維持する増粘剤、又は(b2)20℃において粘性を示す耐熱性常温増粘剤であって、0℃〜100℃においてピーク粘度を示し、120℃における粘度がピーク粘度の1/2以上を維持する増粘剤を挙げることができる。これらの耐熱性熱不可逆性加熱増粘剤(b1)及び耐熱性常温増粘剤(b2)としては、前記の豆腐含有高粘性液体スープレトルト食品の製造に用いる耐熱性熱不可逆性加熱増粘剤(b1)及び耐熱性常温増粘剤(b2)を用いることができる。
【0070】
また、前記液体ソースの粘度は、70℃において500cps以上であり、好ましくは800cps以上であり、より好ましくは1000cps以上である。500cps以上であることによって、喫食時に粘性の高い液体スープを提供することができる。更に、耐熱性熱不可逆性加熱増粘剤(b1)及び耐熱性常温増粘剤(b2)を含む液体ソースの粘度は、20℃においても500cps以上を示し、常温で喫食する豆腐含有高粘性スープレトルト食品においても、液体スープが十分な粘度を有する。
【0071】
耐熱性熱不可逆性加熱増粘剤(b1)は、0℃〜50℃においては、ほとんど粘度を示さないものが多く、50℃以上に加熱することによって、粘性を示すようになり、50℃〜100℃において、ピークの粘度を示す。また、加熱により発生した粘性は、温度が下がっても、低下することがない熱不可逆性の増粘剤である。従って、耐熱性熱不可逆性加熱増粘剤(b1)を含む液体スープは、常温においても、高温においても比較的高い粘度を示す。
【0072】
耐熱性常温増粘剤(b2)は、常温においても粘性を示す増粘剤であり、高温(例えば、50℃〜100℃)においても粘性を維持することのできる増粘剤である。また、耐熱性常温増粘剤(b2)は、0℃〜100℃においてピーク粘度を示した後、更に温度を上昇させても、粘度が低下しないか又は粘度の低下が低い耐熱性の増粘剤である。従って、耐熱性常温増粘剤(b2)を含む液体スープは、常温においても、高温においても比較的高い粘度を示す。耐熱性増粘剤(B)を含む豆腐含有高粘性スープレトルト食品は、常温及び高温(例えば50〜90℃)で喫食することができるものである。
【0073】
(熱可逆性増粘剤(C))
前記豆腐含有高粘性液体スープレトルト食品は、耐熱性熱不可逆性加熱増粘剤(b1)及び/又は耐熱性常温増粘剤(b2)を含むことによって、流通時に一定の粘度を維持し、豆腐の崩れを防ぐことができるが、更に熱可逆性増粘剤(C)を含んでもよい。熱可逆性増粘剤(C)をふくむことによって、豆腐の流通時における安定性を確保することができる。豆腐含有高粘性液体スープレトルト食品の製造に用いる熱可逆性増粘剤(C)は、前記の豆腐含有低粘性液体スープレトルト食品の製造に用いる熱可逆性増粘剤(C)を用いることができる。
【0074】
(流通工程)
本発明の豆腐含有レトルト食品のうち、豆腐含有低粘性スープレトルト食品及び豆腐含有高粘性スープレトルト食品のいずれも、流通工程において、液体スープが高い粘性を示し、それによって豆腐含有レトルト食品に含まれる豆腐の形態が崩れることを防いでいる。
【0075】
(喫食)
本発明の豆腐含有レトルト食品のうち、豆腐含有低粘性スープレトルト食品の液体スープは、常温において高い粘性を示し、高温において低い粘性を示す。従って、通常は高温において喫食するレトルト食品である。一方、豆腐含有高粘性スープレトルト食品の液体スープは、常温においても高温においても高い粘性を示す。従って、豆腐含有高粘性スープレトルト食品は、常温及び高温において喫食することのできるレトルト食品である。
【実施例】
【0076】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0077】
《実施例1:豆腐含有低粘性液体スープレトルト食品の製造》
本実施例では、喫食時に低粘性の液体スープを含むスンドゥブチゲを製造した。熱感受性ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン(グルメスター3:松谷化学工業株式会社)4質量部、寒天0.2質量部、カラギーナン0.03質量部、カロブビーンガム0.01質量部、及び水70質量部を混合することによって、液体スープを得た。得られた液体スープに、野菜類(玉ねぎ、人参)を8質量部、調味料(醤油)を5質量部、及び香辛料(コショウ、及び唐辛子など)3質量部加え、70℃に加温した。得られた液体スープは、2500cpsの粘度を示した。
【0078】
豆乳(大豆固形分11%)30質量部、凝固剤0.15質量部、及び豆腐ペースト70質量部を混合することによって、豆乳スープを得た。得られた豆乳スープは、20℃で1300cpsの粘度を示した。液体スープ及び豆乳スープに用いた増粘剤及び粘度を表1に示す。
【0079】
前記液体スープ160gを、120mm×170mmの袋(PET12/アルミ箔9/PPシール材80)に充填した。更に前記の豆乳スープを40g充填し、密封シールを行った。次に、液体スープ及び豆乳スープを充填した袋をレトルト(加圧加熱)殺菌装置を用いて、中心温度が121℃、達温で15分間加熱殺菌した。冷却後、60℃まで加熱し、容器からお皿に移して目視での製品の状態の確認を行った。液体スープは液体状であり、豆腐スープは、豆腐の形状を有していた。また、食感も良好であった。得られたレトルト食品の評価を表3に示す。
【0080】
殺菌時の中心温度の測定は、袋内の温度を、センサーを用いて測定した。レトルト殺菌処理後のレトルト食品の粘度は55℃に加温し、B型粘度計を用いて測定した。輸送テストは、製品を段ボール箱に詰めて、運送業者に依頼し、東京から福岡の1往復、及び東京から札幌の1往復を行ったものを、目視で確認した。室温3日保存後、又は室温3ヶ月保管後の色については、目視で、加熱調理(レトルト殺菌)後の色と比較して確認を行った。
【0081】
《実施例2》
本実施例では、液体スープ1000cps、及び豆乳スープ2000cpsによるスンドゥブチゲを製造した。液体スープの熱感受性ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、寒天、カラギーナン、カロブビーンガム、及び水の量を粘度が1000cpsになるように調整したこと、並びに豆乳スープの豆乳(大豆固形分11%)、凝固剤、及び豆腐ペーストを粘度が1000cpsになるように調整したことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。得られたレトルト食品の評価を表3に示す。
【0082】
《実施例3》
本実施例では、液体スープ1000cps、及び豆乳スープ500cpsによるスンドゥブチゲを製造した。液体スープの熱感受性ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、寒天、カラギーナン、カロブビーンガム、及び水の量を粘度が1000cpsになるように調整したこと、並びに豆乳スープの豆乳(大豆固形分11%)、凝固剤、及び豆腐ペーストを粘度が500cpsになるように調整したことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。得られたレトルト食品の評価を表3に示す。
【0083】
《実施例4》
本実施例では、液体スープ1000cps、及び豆乳スープ2000cpsによるスンドゥブチゲを製造した。液体スープの熱感受性ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、寒天、カラギーナン、カロブビーンガム、及び水の量を粘度が1000cpsになるように調整したこと、並びに豆乳スープの豆乳(大豆固形分11%)、凝固剤、及び豆腐ペーストを粘度が2000cpsになるように調整したことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。得られたレトルト食品の評価を表3に示す。
【0084】
《実施例5》
本実施例では、液体スープ200cps、及び豆乳スープ3000cpsによるスンドゥブチゲを製造した。液体スープの熱感受性ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、寒天、カラギーナン、カロブビーンガム、及び水の量を粘度が200cpsになるように調整したこと、並びに豆乳スープの豆乳(大豆固形分11%)、凝固剤、及び豆腐ペーストを粘度が3000cpsになるように調整したことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。得られたレトルト食品の評価を表3に示す。
【0085】
《実施例6》
本実施例では、豆腐ペーストを用いず、液体スープ3000cps、及び豆乳スープ200cpsによるスンドゥブチゲを製造した。液体スープの熱感受性ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、寒天、カラギーナン、カロブビーンガム、及び水の量を粘度が3000cpsになるように調整したこと、並びに豆乳スープの豆乳(大豆固形分11%)、及び凝固剤を粘度が200cpsになるように調整したことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。得られたレトルト食品の評価を表3に示す。
【0086】
《実施例7》
本実施例では、豆腐ペーストを用いず、液体スープ1000cps、及び豆乳スープ200cpsによるスンドゥブチゲを製造した。液体スープの熱感受性ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、寒天、カラギーナン、カロブビーンガム、及び水の量を粘度が1000cpsになるように調整したこと、並びに豆乳スープの豆乳(大豆固形分11%)、及び凝固剤を粘度が200cpsになるように調整したことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。得られたレトルト食品の評価を表3に示す。
【0087】
《実施例8》
本実施例では、寒天、カラギーナン、カロブビーンガムを用いず、液体スープ2500cps、及び豆乳スープ1350cpsによるスンドゥブチゲを製造した。液体スープの熱感受性ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、及び水の量を粘度が2500cpsになるように調整したこと、並びに豆乳スープの豆乳(大豆固形分11%)、凝固剤、及び豆腐ペーストを粘度が1350cpsになるように調整したことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。得られたレトルト食品の評価を表3に示す。
【0088】
《比較例1》
本比較例では、凝固剤を用いず、液体スープ2500cps、及び豆乳スープ1350cpsによるスンドゥブチゲを製造した。液体スープの熱感受性ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、寒天、カラギーナン、カロブビーンガム、及び水の量を粘度が2500cpsになるように調整したこと、並びに豆乳スープの豆乳(大豆固形分11%)、及び豆腐ペーストを粘度が1350cpsになるように調整したことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。得られたレトルト食品の評価を表3に示す。
【0089】
《実施例9:豆腐含有低粘性液体スープレトルト食品の製造》
本実施例では、喫食時に高粘性の液体スープを含む麻婆豆腐を製造した。耐熱性熱不可逆性ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン(タップフィル8:日本コーンスターチ株式会社)2質量部、及び水40質量部を混合することによって、液体スープを得た。得られた液体スープに、肉・野菜類(豚ひき肉、玉ねぎ等)を5質量部、調味料(豆板醤)を3質量部、及び香辛料(コショウ、及び唐辛子など)0.5質量部加え、80℃に加温した。得られた液体スープは、2000cpsの粘度を示した。液体スープ及び豆乳スープに用いた増粘剤及び粘度を表2に示す。得られたレトルト食品の評価を表4に示す。
【0090】
《実施例10》
本実施例では、液体スープ3000cps、及び豆乳スープ200cpsによる麻婆豆腐を製造した。液体スープの熱耐性ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン及び水の量を粘度が3000cpsになるように調整したこと、並びに豆乳スープの豆乳(大豆固形分11%)、凝固剤、及び豆腐ペーストを粘度が200cpsになるように調整したこと、を除いては、実施例9の操作を繰り返した。得られたレトルト食品の評価を表4に示す。
【0091】
《実施例11》
本実施例では、レトルト殺菌処理条件を中心温度が105℃、達温で15分間としたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。得られたレトルト食品の評価を表4に示す。
【0092】
《実施例12》
本実施例では、レトルト殺菌処理条件を中心温度が115℃、達温で15分間としたこと、及び容器として袋に代えてトレーを用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。得られたレトルト食品の評価を表4に示す。
【0093】
《実施例13》
本実施例では、レトルト殺菌処理条件を中心温度が135℃、達温で15分間としたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。得られたレトルト食品の評価を表4に示す。
【0094】
《比較例2》
本実施例では、豆乳スープに代えて絹ごし豆腐(カット品)を用い、スンドゥブチゲを製造した。豆乳スープに代えて絹ごし豆腐(カット品)を用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。得られたレトルト食品の評価を表4に示す。
【0095】
《比較例3》
本実施例では、豆乳スープに代えて耐熱性豆腐を用い、スンドゥブチゲを製造した。豆乳スープに代えて耐熱性豆腐を用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。得られたレトルト食品の評価を表4に示す。
【0096】
《比較例4》
本実施例では、豆乳スープに代えて木綿豆腐(カット品)を用い、スンドゥブチゲを製造した。豆乳スープに代えて木綿豆腐(カット品)を用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。得られたレトルト食品の評価を表4に示す。
【0097】
【表1】

【0098】
【表2】

【0099】
【表3】

【0100】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の豆腐含有レトルト食品の製造方法は、風味及び食感の優れた豆腐を含む豆腐含有レトルト食品を提供することができる。また、本発明の豆腐含有レトルト食品は、流通工程の輸送によって、豆腐が破壊されない豆腐含有レトルト食品を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)粘度200〜5000cpsの液体ソースを容器に充填する液体ソース充填工程、
(2)前記容器に、粘度200〜3000cpsの豆乳及び凝固剤を含む豆乳ソースを充填する工程であって、前記液体ソースの粘度が500cps未満の場合、豆乳ソースの粘度が1000cps以上であり、前記豆乳ソースの粘度が500cps未満の場合、液体ソースの粘度が1000cps以上である豆乳ソース充填工程
(3)液体ソース及び豆乳ソースをレトルト殺菌し、豆乳ソースを凝固させ、豆腐を作製するレトルト殺菌工程、
を含むことを特徴とする、豆腐含有レトルト食品の製造方法。
【請求項2】
前記液体ソースが、
(A)(a1)加熱により粘度が上昇する熱感受性熱不可逆性加熱増粘剤であって、50℃〜100℃においてピーク粘度を示し、加熱前の20℃における粘度がピーク粘度の1/10以下であり、120℃における粘度がピーク粘度の1/2未満に低下し、粘度の低下が不可逆的である増粘剤、又は(a2)20℃において粘性を示す熱感受性常温増粘剤であって、0℃〜100℃においてピーク粘度を示し、120℃における粘度がピーク粘度の1/2未満に低下し、粘度の低下が不可逆的である増粘剤、及び
(C)0℃〜50℃においてピーク粘度を示し、70℃における粘度がピーク粘度の1/2以下に低下する熱可逆性増粘剤、
を含む、請求項1に記載の豆腐含有レトルト食品の製造方法。
【請求項3】
前記熱感受性熱不可逆性加熱増粘剤(a1)が、120℃における粘度がピーク粘度の1/10以下に低下する、請求項2に記載の豆腐含有レトルト食品の製造方法。
【請求項4】
前記熱感受性熱不可逆性加熱増粘剤(a1)が、熱感受性ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、じゃがいもデンプン、トウモロコシデンプン、及びタピオカデンプンからなる群から選択される少なくとも1つのデンプンであるか、又は前記熱感受性常温増粘剤(a2)が、熱感受性アルファ化デンプンである、請求項2に記載の豆腐含有レトルト食品の製造方法。
【請求項5】
前記液体ソースが、
(B)(b1)加熱により粘度が上昇する耐熱性熱不可逆性加熱増粘剤であって、50℃〜100℃においてピーク粘度を示し、加熱前の20℃における粘度がピーク粘度の1/10以下であり、120℃における粘度がピーク粘度の1/2以上を維持する増粘剤、又は(b2)20℃において粘性を示す耐熱性常温増粘剤であって、0℃〜100℃においてピーク粘度を示し、120℃における粘度がピーク粘度の1/2以上を維持する増粘剤、
を含む、請求項1に記載の豆腐含有レトルト食品の製造方法。
【請求項6】
前記液体ソースが、(C)0℃〜50℃においてピーク粘度を示し、70℃における粘度がピーク粘度の1/2以下に低下する熱可逆性増粘剤を更に含む、請求項5に記載の豆腐含有レトルト食品の製造方法。
【請求項7】
前記耐熱性熱不可逆性加熱増粘剤(b1)が、耐熱性ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、及び/又はリン酸架橋デンプンであるか、又は前記耐熱性常温増粘剤(b2)が、耐熱性アルファ化デンプンである、請求項5又は6に記載の豆腐含有レトルト食品の製造方法。
【請求項8】
豆乳ソースが、更に豆腐ペーストを含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の豆腐含有レトルト食品の製造方法。
【請求項9】
前記熱可逆性増粘剤(C)が、寒天、グアーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、タマリンドガム、カラヤガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、カードラン、コンドロイチン硫酸、ガラクタン、ゼラチン、及びそれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項2〜4及び6〜8のいずれか一項に記載の豆腐含有レトルト食品の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の製造方法によって得ることのできる豆腐含有レトルト食品。
【請求項11】
20℃において800cps以上の粘度を有する液体ソース、及びレトルト殺菌によって凝固した豆腐を含む豆腐含有レトルト食品。
【請求項12】
前記液体ソースが、
(C)0℃〜50℃においてピーク粘度を示し、70℃における粘度がピーク粘度の1/2以下に低下する熱可逆性増粘剤を含み、70℃において800cps以下の粘度を有する、請求項11に記載の豆腐含有レトルト食品。
【請求項13】
前記液体ソースが、
(B)(b1)加熱により粘度が上昇する耐熱性熱不可逆性加熱増粘剤であって、50℃〜100℃においてピーク粘度を示し、加熱前の20℃における粘度がピーク粘度の1/10以下であり、120℃における粘度がピーク粘度の1/2以上を維持する増粘剤、又は(b2)20℃において粘性を示す耐熱性常温増粘剤であって、0℃〜100℃においてピーク粘度を示し、120℃における粘度がピーク粘度の1/2以上を維持する増粘剤を含み、70℃において800cps以上の粘度を有する、請求項11に記載の豆腐含有レトルト食品。
【請求項14】
前記液体ソースが、更に(C)0℃〜50℃においてピーク粘度を示し、70℃における粘度がピーク粘度の1/2以下に低下する熱可逆性増粘剤を含む、請求項13に記載の豆腐含有レトルト食品。

【図1】
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