説明

豚骨スープ及び豚骨冷風乾処理方法並びに豚骨ラーメンスープ

【課題】 冷風乾処理された豚骨を煮出すと、約15%以上薄めて使用できる極めて濃いスープが得られ経済的であり、イノシン酸系の旨味が多量に抽出されたコクのある白濁したスープであって、冷風乾処理により雑味や臭気(獣臭さ)が消去された極めて旨味と甘みの優れた豚骨スープ及び豚骨冷風乾処理方法並びに豚骨ラーメンスープを提供する
【解決手段】 豚骨表面の汚れを取る洗浄工程1と、汚れを洗浄した豚骨を豚骨スープ成分が抽出されない程度に下茹でする下茹工程2と、下茹しながら表面のアクを取り除くアク除去工程3と、豚骨スープをとる2〜5日前から約5〜10℃の冷風にて乾燥する冷風乾工程6とからなる冷風乾処理方法及びそれにより風乾処理された豚骨を主体として煮出して得られる豚骨スープ並びに豚骨ラーメンスープとした。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明は、冷風乾処理して得られる豚骨を主材として使用する豚骨スープ及び豚骨冷風乾処理方法並びに豚骨ラーメンスープに関するもので、これら豚骨スープ、その濃縮だし、粉末スープの素等に使用するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1(特開2003−265147号公報)には、「少なくとも豚ガラおよび/または鶏ガラをベースとする中華スープの製造方法において、豚ガラおよび/または鶏ガラを250〜350℃のオーブンにて表面がキツネ色になるまでローストした後、ローストした豚ガラおよび/または鶏ガラの旨味成分を水で煮出すことを特徴とする中華スープの製造方法」〔請求項1〕が記載されている。
【0003】
そして、「豚ガラ、ゲンコツ、鶏ガラ等のスープの元となる材料を、最初に軽くボイルするアク抜きおよび不純物の除去手段を行うことなく、これらの材料を、ローストして旨味成分を材料中に閉じ込めておき、そのローストした材料の旨味成分を水で煮出すことが、豚骨本来の旨味を効率よく抽出できる方法であることを見出した」〔0007〕旨記載されている。
【0004】
さらに、「・・・ローストにしたがって豚ガラ、ゲンコツ、鶏ガラ等の材料から鉄板上に旨味成分が滲み出してくる。この滲み出した旨味成分は、ローストが完了した時点で少量の水で抽出を行い、味に苦味がないものであれば、それを煮出したスープに加え、旨味成分のロスを完全に抑えることができる」〔0022〕旨説明されている。
【0005】
しかしながら、この発明においては、豚ガラおよび/または鶏ガラを250〜350℃の高温でオーブンにて表面がキツネ色になるまで短時間にローストするため、あく成分である苦味がどうしても残り、元来時間をかけてじっくり煮込んで豚骨本来の純粋な旨味成分(白濁したコクのある豚骨スープ)を得ることができない。
【0006】
また、特許文献2(特開平8−116932)には、「醤油を含んだ醤油タレと、肉および野菜の旨味を抽出したスープとを混ぜ合わせて、茹でた中華麺を浸して食されるラーメンスープの製造方法において、前記スープを豚骨と、鳥ミンチと、香味野菜とを水に入れ、強火にかけ、沸騰させた後、強火のままアクを取りながら2〜3時間、煮込んで得ることを特徴とする醤油ラーメンスープの製造方法」〔請求項1〕が記載されている。
【0007】
そして、「これらの旨味成分は、その旨味成分を大量に含んでいる材料を単純に熱水で煮出せば、簡単に抽出できるものではない。これら旨味成分と共に不要な雑味が一緒に抽出されるからである。・・・例えば、豚骨をベースにして、これを煮立たせないように火加減を調節することにより透明なスープを得ることができるが、同じ豚骨をベースにしてスープを作る場合に、ぐらぐらと昼夜煮立たせて、白濁したスープ(所謂「豚骨スープ」)を得ることができる。旨味成分に限ると、白濁したスープの方が、イノシン酸系の旨味は多量に抽出されて、コクのあるスープとなる。しかしながら、この旨味成分と一緒に抽出される雑味や臭気(獣臭さ)が、人によっては好ましくない場合がある」〔0009〕〔0010〕旨説明されている。
【0008】
しかしながら、この発明においては、上述されているように、昼夜煮立たせて白濁したスープであって、イノシン酸系の旨味が多量に抽出されたコクのあるスープを得ようとしても、一緒に抽出される雑味や臭気(獣臭さ)を消すことができない旨説明されている。また、この発明においては、強火で短時間に煮出すので、まろやかな味には仕上げることはできない。さらに、鶏ミンチの割合が5〜6.25と少ないのであっさりし過ぎて深みのある味に仕上げることができない。
【0009】
また、特許文献3(特開平成6−62801)には、「スライスした味付け過熱豚肉を、減圧下でマイクロ波誘電過熱乾燥し、引続いて温風乾燥することを特徴とする即席焼豚の製造方法」が記載されている。
【0010】
そして、「加熱中の豚肉の温度が70℃を超えない」〔請求項3〕旨、また「・・・マイクロ誘電加熱を行った。この処理を15分間行い、含有水分20%にまで乾燥した。・・・かつ品温が70℃を超えなかった。引き続き70℃で温風乾燥を30分間行い、・・・」〔0019〕旨説明されている。
【0011】
しかしながら、この発明は、即席焼豚の製造方法であって、豚骨スープに関する製造方法ではない。また、加熱中の豚肉の温度が70℃を超えないようにマイクロ誘電加熱を行い、含有水分20%にまで乾燥し、さらに70℃で温風乾燥を行うため、水分が極めて少なくスープとして使用しても味の抽出が充分でないか、または味の抽出に長時間を要する。
【0012】
また、特許文献4(特公平5−60902)には、「生のかわはぎを開腹して内蔵類を全部除去した後水洗いし、次いでこのかわはぎの身を熱湯で煮た後、冷水に漬けて身を引締め、それから熱風乾燥するか天然乾燥した後、更にオーブンで焼いて完全乾燥させるようにしてなるかわはぎ製のだし材の製法」が記載されている。
【0013】
そして、〔特許請求の範囲6〜11〕には、この「かわはぎ製のだしを煮込んで得られるだし汁やスープ状の液体」が得られる旨説明されている。
【0014】
しかしながら、この発明は、かわはぎ製のだし材の製法であって、豚骨スープに関するものではない。即ち、豚骨の場合は熱風乾燥すると骨髄が発酵した異臭が発生してスープにすることができず、冷風乾燥しなければならない。
【0015】
また、特許文献5(特公昭62−9286)には、「牛、豚、鶏などの新鮮な原肉につき、脂身を除去すると共に可及的均一厚となるよう切断して肉片を得、この肉片を燻煙乾燥処理した後、当該燻煙肉片を蒸煮乾燥処理し、さらに当該蒸煮肉片を一次熱風乾燥処理して一次乾燥肉片を得、この一次乾燥肉片を切削して薄切り肉片となした後、これに二次熱風乾燥処理を施すようにしたことを特徴とする削り乾燥食肉の製法」が記載されている。
【0016】
そして、「・・・上記燻煙乾燥処理は60〜80℃にて2〜3時間行うようにし、蒸煮乾燥処理は100℃にて10分程度行い、一次乾燥肉片の乾燥度合は15〜16%程度の含水率となるまで続けられ、二次熱風乾燥処理にて13%未満の含水率となるようにした・・・」旨説明されている。
【0017】
しかしながら、この発明は、削り乾燥食肉の製法であって豚骨スープに関するものではない。即ち、豚骨の場合、燻煙乾燥処理60〜80℃および蒸煮乾燥処理100℃を行うと高温のため骨髄が発酵して異臭が発生するためスープにすることができない。また、含水率が13%未満にまで乾燥すると水分が極めて少なくスープとして使用しても味の抽出が充分でないか、または抽出に長時間を要する。
【0018】
特許文献1 特開2003−265147号公報
特許文献2 特開平8−116932号公報
特許文献3 特開平6−62801号公報
特許文献4 特公平5−60902号公報
特許文献5 特公昭62−9286号公報
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、冷風乾処理された豚骨を煮出すと、約15%以上薄めて使用できる極めて濃いスープが得られ経済的であり、イノシン酸系の旨味が多量に抽出されたコクのある白濁したスープが得られて、冷風乾処理により雑味や臭気(獣臭さ)が消去されて旨味と甘みの優れた豚骨スープ及び豚骨冷風乾処理方法並びに豚骨ラーメンスープを提供するものである。
【課題を解決する手段】
【0020】
請求項1の発明は、冷風乾処理した豚骨を主体として煮出した豚骨スープを提供するものである。
【0021】
この発明においては、冷風乾処理された豚骨を煮出すと、約15%以上薄めて使用できる極めて濃いスープが得られ経済的であり、イノシン酸系の旨味が多量に抽出されたコクのある白濁したスープが得られ、冷風乾処理により雑味や臭気(獣臭さ)が消去されて極めて旨味と甘みの優れたコクのある豚骨スープを提供することができる。
【0022】
請求項2の発明は、豚骨表面の汚れを取る洗浄工程と、汚れを洗浄した豚骨を豚骨スープ成分が抽出されない程度に下茹でする下茹工程と、下茹しながら表面のアクを取り除くアク除去工程と、豚骨スープをとる2〜5日前から約5〜10℃の冷風にて乾燥する冷風乾工程とを含む豚骨冷風乾処理方法を提供するものである。
【0023】
この発明においては、冷風乾処理された豚骨を煮出すと、約15%以上薄めて使用できる極めて濃いスープが得られ経済的であり、イノシン酸系の旨味が多量に抽出されたコクのある白濁したスープであって、冷風乾処理により雑味や臭気(獣臭さ)が消去されて旨味と甘みの優れたコクのある豚骨スープが得られる豚骨冷風乾処理方法を提供することができる。
【0024】
冷風乾工程において、豚骨スープをとる2日以降の短時間で風乾処理すると上記風乾処理の作用・効果が充分発揮されず、5日以前から長時間風乾処理すると臭気が発生する。好ましくは、豚骨スープをとる3日前からの約3日間冷風乾燥することが最適である。また、冷風乾工程において、冷風温度が5℃未満であるとスープの味が充分抽出されず、10℃を超えると骨隋が発酵し易くなり臭気が発生する。好ましくは、約6〜8℃である。
【0025】
請求項3の発明は、前記冷風乾処理した豚骨と、鶏ガラと、和風ダシとを5〜7:2〜4:0.5〜2の割合で煮込んで得られるスープを主体とした豚骨ラーメンスープを提供するものである。
【0026】
この発明においては、冷風乾処理された豚骨を煮出すと、約15%以上薄めて使用できる極めて濃いラーメンスープが得られ経済的であり、イノシン酸系の旨味が多量に抽出されたコクのある白濁したスープが得られ、冷風乾処理により雑味や臭気(獣臭さ)が消去された極めて旨味と甘みの優れたコクのある豚骨ラーメンスープを提供することができる。
【0027】
豚骨スープと、鶏ガラスープと、和風ダシとが5〜7:2〜4:0.5〜2の割合の範囲外であるとバランスの取れた味が得られない。即ち、豚骨スープの割合が少ないと豚骨スープのコクが充分でない。また、鶏ガラスープが少ないと深みのあるまろやかな味がでない。更に、特に和風ダシ(かつお、昆布、シイタケ等)の味か勝つと、豚骨スープ、鶏ガラスープの純粋な味が壊されてしまう。
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例1】
【0028】
(豚骨スープに使用する豚骨冷風乾下処理方法)
図1は豚骨冷風乾の下処理工程を示すフローチャートである。豚骨冷風乾下処理工程は、先ず冷凍入荷された豚骨表面の汚れを取る洗浄工程1と、汚れを洗浄した豚骨を豚骨スープ成分が除去されない程度に25〜50分下茹でする下茹工程2と、下茹しながら表面のアクを取り除くアク除去工程3と、アクを除去した豚骨をダシ取り1回分を計量袋詰めする袋詰工程4と、袋詰めした豚骨を冷凍保存する冷凍保存工程5と、豚骨スープをとる約3日前から約3日間約6〜8℃の冷風にて乾燥する冷風乾工程6とからなる。
【0029】
即ち、前記下茹工程2は予め沸騰させた湯に洗浄された豚骨を入れ、その後再沸騰させ、表面に発生するアクをこまめに取り除いた。その際、豚骨と湯との量は、豚骨に湯がちょうど被るひたひた程度がよい。また、豚骨でも、比較的塊の小さい頭部分は約35分、塊の大きいゲンコツ(足)部分は約40分下茹でした。前記下茹工程において、再沸騰後の下茹時間が25分未満であるとアクが充分抜けきらず、50分を超えると豚骨の旨味成分が逃げてしまう。
【0030】
また、冷風乾工程において、豚骨スープをとる2日以降の短時間で風乾処理すると濃い豚骨スープが得られず、雑味や臭気(獣臭さ)が残り、旨味と甘みのある豚骨スープが得られなかった。5日以前から長時間風乾処理すると逆に臭気が発生した。好ましくは、豚骨スープをとる約3日前から約3日間に冷風乾することが最適であることがわかった。
【0031】
また、冷風乾工程において、冷風の温度が5℃未満であるとスープの味が充分抽出されず、10℃を超えると骨隋が発酵し易くなり臭気が発生した。冷風の温度は6〜8℃が最適であることがわかった。
【実施例2】
【0032】
(豚骨ラーメンスープの製造方法)
上記冷風乾処理した豚骨に水を加えて約5時間45分煮出した。その際、通常の水の量(豚骨にひたひたになる程度)に更に15%程度多くの水を予め足した。また、洗浄した鶏ガラに水を加え約2時間煮出した(鶏ガラも冷風乾燥したものを使用してもよい)。更に、和風スープとして、昆布とシイタケに水を足して臭み消しに少量の酒を加えて中火で煮出し、沸騰させてすぐに火を止めた。そこへ削りカツオを加え約2分後カツオを引き上げた。
【0033】
上記それぞれ別個に煮出した豚骨スープ、鶏ガラスープ、和風スープを6:3:1の割合で混合し、これに塩、醤油等で味付けをして豚骨ラーメンスープを調整した。このようにして得られた豚骨ラーメンスープは、豚骨スープを煮出す際に15%水を足しても充分コクがあり、このことはラーメン100杯につき15杯分以上多くスープをとることができることを意味している。また、イノシン酸系の旨味が多量に抽出されたコクのある白濁したスープが得られ、雑味や臭気(獣臭さ)がなく極めて旨味と甘みの優れたコクのある豚骨ラーメンスープを得ることができた。
【0034】
さらに、特に和風ダシ(かつお、昆布、シイタケ等)の味か勝つと、豚骨スープ及び鶏ガラスープの純粋な味が壊されてしまうが、冷風乾処理したコクある豚骨スープ対して和風ダシが0.5〜2と少量であっても、上記和風ダシが充分な隠し味となって、バランスの取れた極めて美味しいラーメンスープが得られることがわかった。好ましくは、6:3:1の割合である
【発明の効果】
【0035】
この発明においては、冷風乾処理された豚骨を煮出すと、約15%以上薄めて使用できる極めて濃いスープが得られ経済的であり、イノシン酸系の旨味が多量に抽出されたコクのある白濁したスープが得られ、冷風乾処理により雑味や臭気(獣臭さ)が消去された極めて旨味と甘みの優れたコクのある豚骨スープ及び豚骨冷風乾処理方法並びに豚骨ラーメンスープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】 豚骨冷風乾下処理工程を示すフローチャート
【符号の説明】
1 冷凍豚骨洗浄工程
2 下茹工程
3 アク除去工程
5 冷凍保存工程
6 冷風乾工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷風乾処理した豚骨を主体として煮出した豚骨スープ。
【請求項2】
豚骨表面の汚れを取る洗浄工程と、汚れを洗浄した豚骨を豚骨スープ成分が抽出されない程度に下茹する下茹工程と、下茹しながら表面のアクを取り除くアク除去工程と、豚骨スープをとる2〜5日前から約5〜10℃の冷風にて乾燥する冷風乾工程とを含む豚骨冷風乾処理方法。
【請求項3】
冷風乾処理した豚骨と、鶏ガラ、和風ダシを5〜7:2〜4:0.5〜2の割合で煮込んで得られるスープを主体とした豚骨ラーメンスープ。

【図1】
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