説明

貝殻焼成カルシウムを使用する藍染めの方法

【課題】 藍染め染料を用いて,いわゆる化学建てで染め液を作る場合,劇物である苛性ソーダを使用するため,危険性が伴う恐れがあること。染め液を撹拌後,浮遊物が沈殿するまで長時間を要すること。長期間にわたって染め液を使用していると,発酵や腐敗が起こり,悪臭を発するようになること等の問題があった。
【解決の手段】 貝殻焼成カルシウムは強アルカリ性であること。貝殻焼成カルシウムは酸化還元電位をマイナスにする効果があること。貝殻焼成カルシウムのカルシウムイオンは懸濁物を凝集沈殿させる凝集力を持つため,染め液を撹拌後,浮遊物の沈殿が早くなること。貝殻焼成カルシウムは殺菌・抗菌・消臭効果があること等に着目し,染め液を作る際に,劇物である苛性ソーダの使用に代えて貝殻焼成カルシウムを使用することとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は藍染めの方法に関する。
【背景技術】
【0002】
藍染め染料を用いて,いわゆる化学建てという方法で藍染めを行う場合,次のような方法で行うのが普通である。
【0003】
温湯に重量比5パーセントの「すくも」等藍染め染料(染料の量は,当該染料のインジゴ含有量によって適宜増減する。)を入れた容器に温湯の重量比0.2〜0.25パーセントの苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)及びハイドロサルファイトナトリウム(次亜硫酸ナトリウム)を投入,撹拌し,pHが11〜11.8に,酸化還元電位がマイナス670ミリボルト程度になるよう,苛性ソーダとハイドロサルファイトナトリウムの量を調整すると,藍染め染料に含有されるインジゴが還元されてロイコインジゴとなる。
【0004】
数時間静置し,液温の低下と,ロイコインジゴ以外の浮遊物が沈殿するのを待って,染めを開始する。
【0005】
被染物を3分程度浸漬した後,取り出し脱水して空気中に晒すと,ロイコインジゴが酸化してインジゴとなり青く発色するので,好みの色になるまで,浸漬と脱水酸化を繰り返す。
【0006】
染まりが悪くなったら,適量の苛性ソーダとハイドロサルファイトナトリウムを投入して撹拌し,pHが11〜11.8に,酸化還元電位がマイナス670ミリボルト程度になるよう調整し,数時間静置し,ロイコインジゴ以外の浮遊物が沈殿すると染めを再開することが可能となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
背景技術の方法では,劇物である苛性ソーダを使用するため,危険性が伴う恐れがあること。
【0008】
ハイドロサルファイトナトリウムは,亜硫酸ガスを発生するので,使用料を減少した方が良いこと。
【0009】
染め液を撹拌後,ロイコインジゴ以外の浮遊物が沈殿するまで長時間を要し,沈殿が完全でないままで染めを行うと,浮遊物が被染物に付着して,染め斑の原因となること。
【0010】
長期間にわたって染め液を使用していると,発酵や腐敗が起こり,悪臭を発するようになることがある等の問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題を解決するための手段を研究した結果,ホタテ等の貝殻を焼成粉砕して製造した,貝殻焼成カルシウムを使用する方法を見いだした。
【0012】
つまり,貝殻焼成カルシウムは強アルカリ性であること。
【0013】
貝殻焼成カルシウムは酸化還元電位をマイナスにする効果があること。
【0014】
貝殻焼成カルシウムのカルシウムイオンは懸濁物を凝集沈殿させる凝集力を持つため,ロイコインジゴ以外の浮遊物の沈殿が早くなること。
【0015】
貝殻焼成カルシウムは殺菌・抗菌・消臭効果があること等に着目し,染め液を作る際に,苛性ソーダの使用に代えて貝殻焼成カルシウムを使用することとした。
【発明の効果】
【0016】
貝殻焼成カルシウムは強アルカリ性であるため,十分なpHの上昇を得ることができるため,劇物である苛性ソーダを使用する必要がなくなったこと。
【0017】
貝殻焼成カルシウムは酸化還元電位をマイナスにする効果が有るため,ハイドロサルファイトナトリウムの使用量を大幅に減少することが出来たこと。
【0018】
貝殻焼成カルシウムのカルシウムイオンは懸濁物を凝集沈殿させる凝集力を持つため,ロイコインジゴ以外の浮遊物の沈殿が早くなったこと。
【0019】
貝殻焼成カルシウムは殺菌・抗菌・消臭効果があるため,発酵・腐敗による悪臭が発生しにくくなったこと等の効果があった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
100リットル入り容器に,特開2003−192934「含藍植物の生葉を原料とする藍染めの天然染料及びその製造方法」で製造した藍染め染料又は「すくも」等藍染め染料5キログラムと20リットルの温湯を入れて十分に練り上げた後,70リットルの温湯を加え,約200グラムの貝殻焼成カルシウムと約100グラムのハイドロサルファイトナトリウムを投入,撹拌し,pHが11〜11.8に,酸化還元電位がマイナス670ミリボルト程度になるよう,貝殻焼成カルシウムとハイドロサルファイトナトリウムの量を調整すると,藍染め染料に含有されるインジゴが還元されてロイコインジゴとなる。
【0021】
ロイコインジゴ以外の浮遊物は30分程度で沈殿するが,液温が低下するのを待って染めを開始する。
【0022】
被染物を3分程度浸漬した後,取り出し脱水して空気中に晒すと,ロイコインジゴが酸化してインジゴとなり青く発色するので,好みの色になるまで,浸漬と脱水酸化を繰り返す。
【0023】
染まりが悪くなったら,適量の貝殻焼成カルシウムとハイドロサルファイトナトリウムを投入して撹拌し,pHが11〜11.8に,酸化還元電位がマイナス670ミリボルト程度になるよう調整し,30分程度静置し,ロイコインジゴ以外の浮遊物が沈殿すると染めを再開することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貝殻焼成カルシウムを使用する藍染めの方法。

【公開番号】特開2009−191430(P2009−191430A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−61832(P2008−61832)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【出願人】(591016574)
【Fターム(参考)】