説明

貝殻熱処理システム

【課題】効率的に貝殻から塩分を除去し、塩分を除去した貝殻から生石灰を生成する貝殻熱処理システムを提供する。
【解決手段】貝殻熱処理システム1は、貝殻に過熱水蒸気を供給し、貝殻から塩分を除去する過熱水蒸気装置30と、過熱水蒸気装置30により塩分を除去された貝殻を焼成し、生石灰を生成する焼成装置40とを有する。生石灰の生成には高温処理が必要になる。その際に、貝殻に付着している塩分が、高温処理する炉を損傷させる虞がある。上記の過熱水蒸気装置30によって、高温処理の前段で塩分除去を行うことにより、炉の損傷を抑えることが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貝殻熱処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、洗浄により塩分を除去したかき貝殻から固化材を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−362949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、効率的に貝殻から塩分を除去し、塩分を除去した貝殻から生石灰を生成する貝殻熱処理システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る貝殻熱処理システムは、貝殻に過熱水蒸気を供給し、貝殻から塩分を除去する過熱水蒸気装置と、前記過熱水蒸気装置により塩分を除去された貝殻を焼成し、生石灰を生成する焼成装置とを有する。
【0006】
好適には、前記過熱水蒸気装置は、貝殻を撹拌及び搬送しながら、貝殻に過熱水蒸気を供給し、貝殻から塩分を除去する。
【0007】
本発明に係る過熱水蒸気装置は、過熱水蒸気を発生させる過熱水蒸気発生手段と、貝殻を撹拌及び搬送する撹拌搬送手段と、前記過熱水蒸気発生手段により発生した過熱水蒸気を、前記撹拌搬送手段により撹拌及び搬送されている貝殻に噴出する噴出手段とを有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、効率的に貝殻から塩分を除去し、塩分を除去した貝殻から生石灰を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】貝殻熱処理システム1の全体構成を例示する図である。
【図2】過熱水蒸気装置30の垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0010】
図1は、貝殻熱処理システム1の全体構成を例示する図である。
図1に例示するように、貝殻処理システム1は、原料ホッパー10と、一次破砕機20と、過熱水蒸気装置30と、焼成装置40と、二次破砕機50と、原料サイロ60と、原料混練機70とから構成される。
【0011】
原料ホッパー10は、開口部を有し、この開口部に投入された貝殻を一時貯蔵しながら、利用者の操作に応じて、必要量の貝殻を供給する。そして、原料ホッパー10から供給された貝殻は、ベルトコンベアなどにより一時破砕機20へ搬送される。
【0012】
一次破砕機20は、原料ホッパーから搬送されてきた貝殻を所定の大きさに破砕する。なお、一次破砕機20が貝殻を破砕する手段は、特に限定するものではない。例えば、一次破砕機20は、回転刃により切り刻む、又はハンマーにより叩き割る等して貝殻を破砕すればよい。
本例では、一次破砕機20は、貝殻を40mm以下の大きさになるように破砕する。なお、過熱水蒸気装置30における塩分除去の効率を考慮すると、一次破砕機20は、貝殻を2mm以下まで破砕することが好ましい。
そして、一次破砕機20により破砕された貝殻は、ベルトコンベアなどにより過熱水蒸気装置30へ搬送される。
【0013】
過熱水蒸気装置30は、図2に例示する構造を有し、密閉空間において、一次破砕機20から搬送されてきた貝殻を撹拌及び搬送しながら、貝殻に過熱水蒸気を供給し、貝殻から塩分を除去する。そして、塩分を除去された貝殻は、ベルトコンベアなどにより焼成装置40へ搬送される。
なお、過熱水蒸気により貝殻の塩分が除去される原理は次の通りである。過熱水蒸気は、貝殻の表面に接触すると、100℃以下となり、貝殻の表面に凝縮する。凝縮した過熱水蒸気(以下、「凝縮水」という。)は、貝殻に熱を伝達すると同時に、貝殻が有する塩分を吸収する。そして、次々と過熱水蒸気が貝殻の表面に凝縮することにより、表面張力で支えられなくなった凝縮水が、貝殻が有する塩分を吸収した状態で、貝殻から分離する。さらに、貝殻への過熱水蒸気の供給が進むと、凝縮水から伝達される熱により、貝殻の温度が100℃以上となり、今度は、貝殻から水分が蒸発し、貝殻の乾燥が進行する。このようにして、過熱水蒸気装置30から焼成装置40へ送られる貝殻は、塩分が除去されているだけでなく、乾燥した状態にもなっているので、焼成装置40における焼成を邪魔しない。
【0014】
焼成装置40は、過熱水蒸気装置30から搬送されてきた貝殻を900℃以上で焼成し、貝殻に主に含まれる炭酸カルシウム(CaCO)から、二酸化炭素を除去するこで、生石灰(酸化カルシウム(CaO))を生成する。なお、焼成装置40が貝殻を焼成する手段は、特に限定するものではない。例えば、焼成装置40は、ロータリーキルンなどであり、回転動作により搬送及び撹拌しながら、貝殻を焼成すればよい。
本例では、焼成装置40は、貝殻を、1000〜1200℃で少なくとも30分間焼成することで、焼成された貝殻の生石灰の含有率を80%以上(日本工業規格(JIS R9001)にて規定されている工業用石灰の等級の2号に相当)にしている。
そして、焼成装置40にて生成された生石灰は、ベルトコンベアなどにより二次破砕機50へ搬送される。
【0015】
二次破砕機50は、焼成装置40から搬送されてきた生石灰を、粉末状に破砕する。なお、二次破砕機50が貝殻を破砕する手段は、特に限定するものではない。例えば、二次破砕機50は、高速の回転刃により切り刻む等して生石灰を粉末状に破砕すればよい。
本例では、二次破砕機50は、生石灰を、直径0.074mm以下の粒度になるように粉末状に粉砕する。
そして、二次破砕機50により粉末状になった生石灰は、空送などにより原料サイロ60へ搬送される。
【0016】
原料サイロ60は、二次破砕機50から搬送されてきた生石灰を、密閉空間に貯蔵し、利用者の操作に応じて、必要量の生石灰を供給する。そして、原料サイロ60から供給された生石灰は、空送などにより原料混練機70へ搬送される。
【0017】
原料混練機70は、原料サイロ60から搬送されてきた生石灰に、水和によるエトリンガイト反応に必要な物質(例えば、硫酸カルシウム(CaSO)、三酸化鉄(Fe)、及び二酸化ケイ素(SiO)など)を含む原料を混合し、固化材を生成する。
本例では、原料混練機70は、原料サイロ60から搬送されてきた生石灰に、石膏ボード、浄化槽汚泥、及び鉄粉などのリサイクル資源を混合して、固化材を生成する。
【0018】
以上説明した構成によれば、貝殻処理システム1は、過熱水蒸気装置30にて、効率的に貝殻から塩分を除去し、焼成装置40を塩害から防止することができる。従来は、洗浄により行っていた塩分除去に比べ、貝殻処理システム1は、貝殻の隅々まで過熱水蒸気を行き渡らせることができるので、効率的にしかも確実に塩分を除去することができる。さらに、貝殻処理システム1は、塩分を除去した後の貝殻が乾燥しており、その後の生石灰への焼成も効率良く行うことができる。
【0019】
図2は、過熱水蒸気装置30の垂直断面図である。
図2に例示するように、過熱水蒸気装置30は、管体110と、撹拌軸120と、過熱水蒸気発生部130と、噴出管140と、水受け150と、駆動部160とを有する。
【0020】
管体110は、過熱水蒸気を充満させるための密閉空間を形成する。管体110には、貝殻を投入するための投入口112と、過熱水蒸気により脱塩された貝殻を排出するための排出口114と、過熱水蒸気を外部へ排気するための排気口116と、凝縮水を排水するための排水口118とが設けられている。なお、投入口112、排出口114、排気口116、及び排水口118は、図示しないバルブにより開閉される。
【0021】
撹拌軸120は、管体110内部を軸線方向に貫通する。撹拌軸120の軸線方向複数個所には、半径方向へ突出する撹拌羽122が設けられている。撹拌軸120は、駆動部160により回転駆動し、それに伴って撹拌羽122が、管体110内部に堆積する貝殻を、撹拌しながら、排出口114に向かってリレー方式で搬送する(撹拌搬送手段)。
【0022】
過熱水蒸気発生部130は、水を加熱し、飽和水蒸気を発生させ、この飽和水蒸気を100℃以上に加熱することにより、過熱水蒸気を発生させる(過熱水蒸気発生手段)。そして、過熱水蒸気発生部130は、発生させた過熱水蒸気を、噴出管140へ送る。
【0023】
噴出管140は、管体110内部の上方に設けられている。噴出管140の先端には、噴出ノズル142が設けられている。噴出ノズル142は、過熱水蒸気発生部130から噴出管140に送られてきた過熱水蒸気を、管体110内部に堆積する貝殻に届くように噴出する(噴出手段)。
【0024】
水受け150は、貝殻から分離した凝縮水を網部材152を介して受け、受けた凝縮水を傾斜により排水口118へと導く。なお、網部材152の目の大きさは、少なくとも一次破砕機20により破砕された貝殻の大きさよりも小さい。
【0025】
駆動部160は、2箇所にある軸受け162により支持されている撹拌軸120と連結し、撹拌軸120を回転駆動させる。駆動部160は、撹拌軸120の回転駆動に用いる動力源として、例えば、モーター又はエンジンなどを用いればよい。
【0026】
以上説明した構成によれば、過熱水蒸気装置30は、管体110内部に堆積した貝殻に対して、撹拌羽122により撹拌しながら、過熱水蒸気を浴びせるので、貝殻の堆積物から満遍なく塩分を除去することができる。
【0027】
[変形例1]
上記実施例では、過熱水蒸気装置30にて脱塩された貝殻は、ベルトコンベアなどにより、焼成装置40に搬送されたが、これを過熱水蒸気装置30と焼成装置40とを連結し、過熱水蒸気装置30にて脱塩された貝殻を焼成装置40へ直接投入するようにしてもよい。これにより、焼成装置40は、過熱水蒸気装置30における余熱を持った状態の貝殻を焼成できるので、生石灰を生成するまでの焼成にかける時間を短縮することができる。
【0028】
[その他変形例]
上記実施例では、過熱水蒸気装置30において、撹拌羽122を設けられた撹拌軸120を回転駆動させて、貝殻を搬送したが、これを金属製のベルトコンベアにより、貝殻を搬送するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 貝殻熱処理システム
10 原料ホッパー
20 一次破砕機
30 過熱水蒸気装置
40 焼成機
50 二次破砕機
60 原料サイロ
70 原料混練機
110 貯水部
112 投入口
114 排出口
116 排気口
118 排水口
120 撹拌軸
122 撹拌羽
130 過熱水蒸気発生部
140 噴出管
142 噴出ノズル
150 水受け
152 網部材
160 駆動部
162 軸受け

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貝殻に過熱水蒸気を供給し、貝殻から塩分を除去する過熱水蒸気装置と、
前記過熱水蒸気装置により塩分を除去された貝殻を焼成し、生石灰を生成する焼成装置と
を有する貝殻熱処理システム。
【請求項2】
前記過熱水蒸気装置は、貝殻を撹拌及び搬送しながら、貝殻に過熱水蒸気を供給し、貝殻から塩分を除去する
請求項1に記載の貝殻熱処理システム。
【請求項3】
過熱水蒸気を発生させる過熱水蒸気発生手段と、
貝殻を撹拌及び搬送する撹拌搬送手段と、
前記過熱水蒸気発生手段により発生した過熱水蒸気を、前記撹拌搬送手段により撹拌及び搬送されている貝殻に噴出する噴出手段と
を有する
過熱水蒸気装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−184246(P2011−184246A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51740(P2010−51740)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(510065160)株式会社田中建設 (1)
【出願人】(507309851)
【Fターム(参考)】