説明

負の超らせんDNAの検出法

【課題】 細胞膜透過性促進剤等の細胞の損傷・死滅を生じさせる試薬を用いることなく、より簡便かつ効率よく細胞内の負の超らせんDNAを検出する手段の提供。
【解決手段】 次の一般式(1)


(式中、R1〜R5はそれぞれ同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲノアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子又はアミノ基を示し、Xは標識体の残基を示し、Aは塩基性アミノ酸に富むオリゴペプチドを示し、nは1〜4の数を示す)で表されるソラレン誘導体及びこれを含有する細胞内の負の超らせんDNA検出用試薬。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞内の負の超らせんDNAを簡便かつ効率よく検出することのできる検出用試薬に関する。
【0002】
DNAは平均10.5塩基対毎に一回転する2重らせん構造をしているが、DNAの末端を拘束した状態で、らせんのピッチをきつくする、あるいは緩める方に回転させると超らせんを生じ、それぞれを正および負の超らせん構造という。当該DNAの超らせん構造は、転写や複製に重要な役割を担っていると考えられている。特に真核生物における負の超らせんDNAは、転写が活発に起こっている細胞に多く蓄積され、がん細胞などの転写活性の高い細胞で多く存在することが指摘されている。従って、超らせんDNAの検出は、がんの検出等の転写活性の高いDNAの検出に有用であると考えられている。
【0003】
このような超らせんDNA検出法として、ソラレンが負の超らせんDNAに選択的に結合する性質を利用した方法が知られている(非特許文献1〜5参照)。しかし、この方法は、ステップが多く煩雑であること、細胞を破壊しないと検出が不可能なこと等の問題があった。
そこで本発明者らは、先にビオチン化ソラレン類を細胞に導入し、当該細胞に長波長紫外線を照射した後、発色性、蛍光性又は化学発光性の標識アビジン類を反応させ、次いで当該細胞の発色、蛍光又は発光を測定することにより細胞内の負の超らせんDNAがそのまま可視化できることを見出している(非特許文献6参照)。
【0004】
しかしながら、この検出法では、ビオチン化ソラレンを細胞に導入する際、その導入効率を高めるためにジギトニン、Triton X−100等の細胞膜透過性促進剤を用いる必要があり、これらの界面活性剤の使用により、細胞の損傷、死滅等が起こり易いという問題があった。
【非特許文献1】Methods Enzymol., 212:319-335 (1992)
【非特許文献2】Methods Enzymol., 212:242-262 (1992)
【非特許文献3】EMBO J. 12: 1067-1075 (1993)
【非特許文献4】Proc. Natl. Acad Sci. USA, 89:6055-6059 (1992)
【非特許文献5】Biochemistry, 36:3151-3158 (1997)
【非特許文献6】第25回日本分子生物学会年会 プログラム・講演要旨集 1P−0545
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、細胞膜透過性促進剤等の細胞の損傷・死滅を生じさせる試薬を用いることなく、より簡便かつ効率よく細胞内の負の超らせんDNAを検出する手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、種々検討した結果、ソラレン類に塩基性アミノ酸に富むオリゴペプチドを結合させた化合物を用いることにより、何ら界面活性剤を使用することなく、該化合物を細胞内へ導入できることを見出した。また、該化合物を細胞に導入し、当該細胞に長波長紫外線を照射した後、発色性、蛍光性又は化学発光性の標識類を反応させ、次いで当該細胞の発色、蛍光又は発光を直接測定すると、負の超らせんDNAの染色が従来のビオチン化ソラレンに比べて鮮明で、より明確に可視化できることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の一般式(1)
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、R1〜R5はそれぞれ同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲノアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子又はアミノ基を示し、Xは標識体の残基を示し、Aは塩基性アミノ酸に富むオリゴペプチドを示し、nは1〜4の整数を示す)
で表されるソラレン誘導体を提供するものである。
また、本発明は、上記ソラレン誘導体を含有する細胞内の負の超らせんDNA検出用試薬を提供するものである。
また、本発明は、当該検出用試薬を細胞に導入し、当該細胞に長波長紫外線を照射した後、発色性、蛍光性又は化学発光性の標識類を反応させ、次いで当該細胞の発色、蛍光又は発光を測定することを特徴とする細胞内の負の超らせんDNAの検出法を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の負の超らせんDNA検出用試薬は、界面活性剤を用いなくても細胞内に効率よく透過するため、これを用いれば、細胞を損傷・死滅させることなく細胞内の負の超らせんDNAを簡便かつ効率良く検出できる。また、該検出用試薬は細胞に対する毒性が少なく、あらゆる細胞への適用が可能である。さらにまた、ビオチン化ソラレン類と比べ、より染色が鮮明となり、負の超らせんDNAの細胞内での局在が明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のソラレン誘導体は、次の一般式(1)
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、R1〜R5はそれぞれ同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲノアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子又はアミノ基を示し、Xは標識体の残基を示し、Aは塩基性アミノ酸に富むオリゴペプチドを示し、nは1〜4の整数を示す)
で表される。
一般式(1)中、R1〜R5のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。また、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲノアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、アルコキシカルボニル基におけるアルキル又はアルコキシ部分の炭素数は1〜4が好ましく、特に1が好ましい。R1〜R5における基としては水素原子、メチル基又はメトキシ基が特に好ましい。
【0014】
本発明における塩基性アミノ酸に富むオリゴペプチドは、7〜20のアミノ酸からなるオリゴペプチドで、アルギニンやリジン等の塩基性アミノ酸リッチが好ましい。さらに塩基性アミノ酸50%以上、好ましくは50%〜100%、より好ましくは60%〜100%含むオリゴペプチドが好ましい。すなわち、60%〜100%がリジン及び/又はアルギニンである7〜20、より好ましくは10〜20のアミノ酸からなるオリゴペプチドがより好ましい。特に、HIV-1 Tat蛋白質、Antennapedia(Antp)由来の細胞通過ドメインのアミノ酸配列、i)Tyr-Gly-Arg-Lys-Lys-Arg-Arg-Gln-Arg-Arg-Arg(配列番号1)又
は当該配列のC末端にLysを有する配列、ii)Arg-Gln-Ile-Lys-Ile-Trp-Gln-Arg-Arg-Me
t-Lys-Lys-Trp-Lys(配列番号2)又は当該配列のC末端にLysを有する配列、iii)Tyr-
Gly-Arg-Arg-Arg-Arg-Arg-Gln-Arg-Arg-Arg(配列番号3)又は当該配列のC末端にLysを有する配列、iv)Arg-Gln-Ile-Arg-Ile-Trp-Gln-Arg-Arg-Met-Arg-Arg-Trp-Arg(配列
番号4)又は当該配列のC末端にLysを有する配列、v)Arg-Arg-Arg-Arg-Arg-Arg-Arg-Arg-Arg-Arg-Arg-Arg-Arg-Arg-Arg(配列番号5)又は当該配列のC末端にLysを有する配列、を含むものが好ましい。なお、上記iii)とiv)のアミノ酸配列は、i)とii)のリ
ジンをアルギニンに置換したものである。さらに、配列番号1のアルギニンをリジンに置換したもの、配列番号2のアルギニンをリジンに置換したもの、配列番号5のアルギニンをリジンに置換したものも良好な例として挙げることができる。
【0015】
本発明における標識体は、プローブ標識に用いられる標識体や免疫組織化学的染色方法に用いられる標識体等特に制限されず、例えば、ビオチン又はその誘導体、ジゴキシゲニン、ウサギIgG等のタンパク質、フルオレセインイソチオシアナート、Alexa Fluor 350、同430、同488、同532、同546、同568、同594、同633、同660、同688、Cy2、Cy3、Cy5、ローダミンの蛍光標識体等が挙げられ、特にビオチンが好ましい。
【0016】
本発明において、特に好ましいソラレン誘導体としては、N−(2,5,9−トリメチル−7−オキソ−7H−フロ〔3,2−g〕クロメン−3−イルメチル)−スクシニル−YGRKKRRQRRRKビオチンアミン(R1=R3=H、R2=R4=R5=CH3、X=ビオチン、A=YGRKKRRQRRRK、n=2)、又はN−(2,5,9−トリメチル−7−オキソ−7H−フロ〔3,2−g〕クロメン−3−イルメチル)−スクシニル−RRRRRRRRRRRRRRRKビオチンアミン(R1=R3=H、R2=R4=R5=CH3、X=ビオチン、A=RRRRRRRRRRRRRRRK、n=2)が挙げられる。
【0017】
一般式(1)で表されるソラレン誘導体は、例えば以下の製造方法により得ることが出来る。
【0018】
【化3】

【0019】
(式中、R1〜R5はそれぞれ同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲノアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子又はアミノ基を示し、Xは標識体の残基を示し、Aは塩基性アミノ酸に富むオリゴペプチドを示し、Halはハロゲン原子を示し、nは1〜4の整数を示す)
で表される。
すなわち、トリオキサレン(2)にハロゲンエーテルを反応させて化合物(3)を得、この化合物(3)にフタルイミドを反応させて化合物(4)を得る。次いで化合物(4)を還元して化合物(5)とした後、無水ジカルボン酸と反応させて化合物(6)を得る。この化合物(6)と別途自動ペプチド合成機により合成した標識オリゴペプチド鎖とを縮合させて本発明化合物(1)を得ることができる。
以下、上記各反応工程毎に説明する。
【0020】
トリオキサレン(2)とハロゲンエーテルの反応は、トリオキサレンを酢酸等の溶媒に溶解し、クロロメチルメチルエーテル等のハロゲンエーテルを加え室温で24〜48時間攪拌して反応させることにより行なわれる。この反応混合物を氷冷し、析出した結晶を濾取、洗浄すれば化合物(3)が得られる。
【0021】
化合物(3)とフタルイミドとの反応は、両化合物を無水DMF、無水THF等の溶媒に溶解し、50〜120℃で数時間攪拌して反応させることにより行なわれる。反応後、溶媒を除去し、洗浄後、精製することにより化合物(4)が得られる。
【0022】
化合物(4)から化合物(5)を得るには、化合物(4)をエタノール等の溶媒に懸濁させ、抱水ヒドラジン・一水和物を加え2〜8時間還流すればよい。反応液を冷却後、溶媒を除去し、洗浄、精製することにより化合物(5)が得られる。
【0023】
化合物(5)と無水ジカルボン酸の反応は、両化合物を無水DMF、無水THF等の溶媒に溶解し、数時間還流すればよい。ここで、ジカルボン酸としては、コハク酸、マロン酸、グルタル酸等が挙げられる。
この化合物(6)のカルボキシル基と別途合成した標識オリゴペプチド鎖のN末端アミノ基とを結合させて本発明化合物(1)を得ることができる。
【0024】
標識オリゴペプチドの合成は、固相法で行うことができる。すなわち、Fmoc-NH-SAL-PEG-樹脂を出発原料として、脱Fmoc化、DMF洗浄後、o-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラ-メチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩試薬を用いて、相当するFmoc-アミノ酸誘導体の縮合反応を行い、順次C末端よりペプチド鎖を延長させ、最後に化合物(6)を同様な方法でペプチド鎖に導入し、保護トリメチルソラレン-デリバリーペプチド-1樹脂を得る。この保護ペプチド樹脂の樹脂を濾過後、濾液を分取用逆相HPLCで精製し、精製トリメチルソラレン-デリバリーペプチドを得ることができる。
ここで、Fmoc-NH-SAL-PEG-樹脂に最初に縮合させるFmoc-アミノ酸誘導体は、一般式(1)中のC末端アミノ酸に標識体を結合させた標識Fmoc-アミノ酸誘導体であり、例えば、X=ビオチンの場合、リジンのε−アミノ基とビオチンのカルボキシル基を予め結合させたFmoc-アミノ酸誘導体である。また、このとき、リジンのカルボキシル基はアミド(CONH2)にしておくのが好ましい。
【0025】
本発明の検出法に用いられる細胞は、真核生物の細胞であればよく、例えばヒト、ラット、マウス等の哺乳類はもとよりショウジョウバエ等の昆虫由来の細胞であってもよい。これらの細胞は、真核生物の組織、体液を利用することができる。ヒトの場合には、培養細胞やがんが疑われる組織、細胞等を用いて検体とすればよい。
【0026】
本発明のソラレン誘導体は、ソラレンと同様に、負の超らせんをもつDNAの塩基対と塩基対の間へ選択的に挟まりこむ性質を有する。長波長紫外線、例えば365nmの光で励起すると、DNAに取り込まれたソラレン誘導体は共有結合によりDNAを架橋(クロスリンク)する。従って、細胞内において、長波長紫外線照射により超らせんDNAに固定化されたソラレン誘導体に発色性、蛍光性又は化学発光性標識類を反応させて、当該固定化されたソラレン類部分の発色、蛍光又は発光を測定すれば、細胞内における超らせんDNA部分のみが選択的に検出できる。
【0027】
本発明のソラレン誘導体を細胞内に導入するには、細胞含有液にソラレン誘導体を添加すればよく、ソラレン誘導体の濃度は、細胞数にもよるが、0.01〜100ng/ml、特に0.05〜50ng/mlが好ましい。ここで、本発明のソラレン誘導体は、界面活性剤等の非存在下で、効率良く細胞膜を通過し、細胞内に侵入する。ここで、細胞含有液としては、通常の生理食塩液、培地成分等を用いることができる。
【0028】
ソラレン誘導体の励起に用いる長波長紫外線としては、紫外部の長波長領域(320〜400nm)であればよいが、340〜380nm、特に365nm付近が好ましい。
【0029】
紫外線照射により負の超らせんDNAに固定化されたソラレン誘導体に反応させる発色性、蛍光性又は化学発光性の標識類としては、標識体に結合できるものであれば特に制限されず、例えばストレプトアビジン、アビジン等のアビジン類、抗ジゴキシゲニン抗体、抗ウサギIgG抗体等が挙げられ、特にストレプトアビジンが好ましい。
【0030】
発色性標識体としては、酵素標識が挙げられる。酵素としては、ペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼが挙げられる。これらの酵素標識類を用いた場合には、さらに、3,3′−ジアミノベンジジン(DAB)、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸(BCIP)、3,3′−(3,3′−ジメトキシ−4,4′−ビフェニレン)ビス[2−(4−ニトロフェニル)−5−フェニル−2H−テトラゾリウム クロライド](NBT)等の発色剤を組み合せることにより発色させることができる。これらの発色性標識体を用いた場合には染色体上でソラレンによってクロスリンクされた部位を茶色又は紫色の色素の沈着として検出することができる。
【0031】
蛍光標識体としては、フルオレセインイソチオシアナート、Alexa Fluor 350、同430、同488、同532、同546、同568、同594、同633、同660、同688、Cy2、Cy3、Cy5、ローダミン等が挙げられる。これらの蛍光標識類を用いた場合には、蛍光顕微鏡により観察でき、かつ容易に画像化できるので特に好ましい。
【0032】
化学発光標識体としては、ルミノール(5−アミノ−2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン)、ルシゲニン(ビス−N−メイチルアクリジニウム ナイトレート)、アクリジニウム エステル、アダマンチル1,2−ジオキセタンアリルリン酸、ナイトリック オキサイド、ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)オキサレート等が挙げられる。これらの化学発光標識アビジン類を用いた場合には、X線フィルム上にシグナルを直接記録することが可能である。
【0033】
かくして発色、蛍光又は化学発光を測定すれば、細胞からDNAを抽出する操作をすることなく、ゲノムのどの領域に負の超らせんDNAが存在するかを検出できる。また、負の超らせんDNAを有する細胞を検出することもできる。
【0034】
さらにまた、本発明においては、ソラレン誘導体でクロスリンクした負の超らせんDNAを定量することができる。ソラレン誘導体で負の超らせんDNAをクロスリンクした後、DNAをフェノールあるいはクロロホルム等を用いたDNA抽出に一般的に用いられる方法により抽出し、得られたDNAを、例えば超音波処理により断片化する。ソラレン誘導体でクロスリンクしたDNA断片は、ソラレン誘導体の標識体に結合できる標識類、例えばストレプトアビジン等を用いて特異的に回収することができる。回収したDNA断片からアルカリ処理によりクロスリンクをはずした後、DNAを定量することができる。DNAの定量は一般的に用いられる方法、例えば定量的PCR法により測定することができる。
【実施例】
【0035】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は何らこれに限定されるものではない。
【0036】
実施例1
N−(2,5,9−トリメチル−7−オキソ−7H−フロ〔3,2−g〕クロメン−3−イルメチル)−スクシニル−YGRKKRRQRRRKビオチン−NH2(R1=R3=H、R2=R4=R5=CH3、X=ビオチン、A=YGRKKRRQRRRK、n=2)の合成
【0037】
【化4】

【0038】
N−(2,5,9−トリメチル−7−オキソ−7H−フロ〔3,2−g〕クロメン−3−イルメチル)−スクシニル−YGRKKRRQRRRKビオチン-NH2(R1=R3=H、R2=R4=R5=CH3、X=ビオチン、A=YGRKKRRQRRRK、n=2)の合成は次に示した経路で行った。
【0039】
【化5】

【0040】
(1)4’−クロロメチル−4,5’,8−トリメチルソラレン(b)の合成
トリオキサレン(a)1.0gを酢酸115mLに溶解し、クロロメチルメチルエーテル7.6mLを加え室温で24時間攪拌した。さらにクロロメチルメチルエーテル7.6mLを追加し、室温で24時間攪拌した。反応混合物を氷冷し、析出した結晶を濾取、結晶をヘキサン:エーテル=3:1、ついでエーテルで洗浄し、4’−クロロメチル−4,5’,8−トリメチルソラレン(b)を0.93g得た。
【0041】
(2)4’−N−フタルイミドメチル−4,5’,8−トリメチルソラレン(c)の合成
4’−クロロメチル−4,5’,8−トリメチルソラレン(b)0.87g、フタルイミドカリウム塩0.80gを無水DMF55mLに加え、100℃で6時間攪拌後、溶媒を留去、残渣にクロロホルムを加え蒸留水で3回洗浄した。クロロホルム層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、溶媒を留去、残渣をシリカゲルカラム(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製し、4’−N−フタルイミドメチル−4,5’,8−トリメチルソラレン(c)を0.86g得た。
【0042】
(3)4’−N−アミノメチル−4,5’,8−トリメチルソラレン(d)の合成
4’−N−フタルイミドメチル−4,5’,8−トリメチルソラレン(c)0.8gを95%エタノール95mLに懸濁させ、これに抱水ヒドラジン・一水和物0.5mLを加え2時間還流した。4時間後、さらに抱水ヒドラジン・一水和物0.5mLを加え2時間還流した。冷却後、溶媒を留去、残渣に0.1N NaOH 170mLを加え、クロロホルムで3回抽出した。クロロホルム層を合わせ、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥、溶媒を留去、残渣をシリカゲルカラム(クロロホルム:メタノール=8:1)で精製し、4’−N−アミノメチル−4,5’,8−トリメチルソラレン(d)を294mg得た。
【0043】
(4)N−(2,5,9−トリメチル−7−オキソ−7H−フロ[3,2−g]−クロメン−3−イルメチル)−コハク酸(e)の合成
4’−N−アミノメチル−4,5’,8−トリメチルソラレン(d)283mg及び無水コハク酸110mgを無水THF15mL中で5時間還流した。冷後、蒸留水を加え固化、固体を濾取、乾燥した。さらに固体をヘキサン:エーテル=2:1、ついでエーテル:メタノール=2:1で洗浄し、N−(2,5,9−トリメチル−7−オキソ−7H−フロ[3,2−g]−クロメン−3−イルメチル)−コハク酸(e)を367mg得た。
【0044】
(5)トリメチルソラレン−デリバリーペプチド−1:N−(2,5,9−トリメチル−7−オキソ−7H−フロ〔3,2−g〕クロメン−3−イルメチル)−スクシニル−YGRKKRRQRRRKビオチン−NH2(7)の合成
トリメチルソラレン−デリバリーペプチド−1:N−(2,5,9−トリメチル−7−オキソ−7H−フロ〔3,2−g〕クロメン−3−イルメチル)−スクシニル−YGRKKRRQRRRKビオチン−NH2(7)の合成は、Applied Biosystems社 Pioneer型自動ペプチド合成機による連続フロー方式を用いる固相法で行った。すなわち、Fmoc−NH−SAL−PEG−樹脂0.1mmolを出発原料として、20%ピペリジン/DMFによる脱Fmoc化、DMF洗浄後、o-(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラーメチルウロニウムーヘキサフルオロリン酸塩試薬を用いて標識Fmoc−リジン誘導体との縮合反応を行い、順次C末端よりペプチド鎖を延長させた。標識Fmoc−リジン誘導体の標識はビオチンを用い、予めリジンのα−アミノ基をFmoc化して保護したビオチン化リジン(リジンのε−アミノ基とビオチンのカルボキシル基を結合させたもの)を用いた。最後にN−(2,5,9−トリメチル−7−オキソ−7H−フロ[3,2−g]−クロメン−3−イルメチル)−コハク酸(e)を同様な方法でペプチド鎖に導入し、保護トリメチルソラレン−デリバリーペプチド−1樹脂0.60gを得た。この保護ペプチド樹脂は蒸留水0.25mLおよびトリイソプロピルシラン0.25mL存在下、トリフルオロ酢酸9.5mLとともに室温120分間処理した。樹脂を濾過後、濾液を留去し残渣にエーテルを加え、沈殿物を集め、粗ペプチド56mgを得た。ここに得られた粗製ペプチドを50%酢酸5mLに溶解後、0.01NHCl/CH3CN混合溶媒を用いDevelosil ODS−HG−5(20x250mm)による分取用逆相HPLCで精製し、精製トリメチルソラレン−デリバリーペプチド−1:N−(2,5,9−トリメチル−7−オキソ−7H−フロ〔3,2−g〕クロメン−3−イルメチル)−スクシニル−YGRKKRRQRRRKビオチン−NH2(7)8.0mgを得た。
【0045】
実施例2
N−(2,5,9−トリメチル−7−オキソ−7H−フロ〔3,2−g〕クロメン−3−イルメチル)−スクシニル−RRRRRRRRRRRRRRRKビオチン−NH2(R1=R3=H、R2=R4=R5=CH3、X=ビオチン、A=RRRRRRRRRRRRRRRK、n=2)(8)の合成
実施例1で製造したソラレン誘導体(7)のペプチド部分(YGRKKRRQRRR)をアルギニンペプチド(RRRRRRRRRRRRRRR)に代えてペプチド鎖を延長させた以外は、実施例1(1)〜(5)と同様にして合成し、標記化合物(8)を得た。
【0046】
実施例3
A.材料と方法
(1)試薬
実施例1及び2で製造した本発明のソラレン誘導体(7)及び(8)、並びに比較としてビオチン化ソラレン(式(1)中、R1=R3=H、R2=R5=R6=CH3、X-A-CO-(CH2)n-CO-NH-の代わりにビオチン-NH(CH2)5CONH-(CH2)6NHCH2-、である化合物)を用いた。ジギトニンはCalbiochemから購入したものを用いた。α−アマニチン、BrUTP(ブロモウリジン 5′−トリホスフェート)、4,5′,8−トリメチルソラレンはSIGMAから購入した。制限酵素は宝酒造から購入した。
【0047】
(2)熱ショック及びX線照射
キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster Oregon R)は18℃で飼育した。必要に応じて3令幼虫をポリプロピレンチューブに入れて37℃水浴に10分間沈めて熱ショック処理した。唾腺は解剖バッファー(10mM HEPES-KOH pH7.6、5mM MgCl2、5mM KCl、130mM NaCl、1%のポリエチレングリコール6000)の中で幼虫を解剖し、得た。必要に応じて、約3Gy/min(TORREX CABINET X-RAY SYSTEMモデルTRX2800、Faxitron)の線量率で60分間唾腺をX線照射してDNAにニック(nick)を導入した。
【0048】
(3)唾腺染色体の染色
(3−1)ソラレン誘導体による唾腺染色体の染色
4−5対の唾腺を0.2ng/mlのソラレン誘導体を含む解剖バッファーで10分間処理した。その後、唾腺を長波長(365nm)UVランプ(UVPモデルUVL−21)で照射し、ソラレン誘導体をクロスリンクした。解剖バッファーに3μg/mlのα−アマニチンを添加し、RNAポリメラーゼIIによる転写を阻害した。クロスリンクの後、唾腺を40%の酢酸で固定し、スライドグラス上に唾腺染色体を展開した。
【0049】
(3−2)ビオチン化ソラレンによる唾腺染色体の染色
4−5対の唾腺を0.01%のジギトニンを含む解剖バッファー40μlで処理し、次に、ジギトニンを含まない解剖バッファーでリンスした。続けて0.2ng/mlのビオチン化ソラレンを含む解剖バッファーで10分間処理した。その後、唾腺を長波長(365nm)UVランプ(UVPモデルUVL−21)で照射し、ビオチン化ソラレンをクロスリンクした。また、2mM BrUTPをジギトニン処理と同時に解剖バッファーに加え、伸長途上のmRNAを標識した。ジギトニン処理中に解剖バッファーに3μg/mlのα−アマニチンを添加し、RNAポリメラーゼIIによる転写を阻害した。クロスリンクの後、唾腺を40%の酢酸で固定し、スライドグラス上に唾腺染色体を展開した。BrUTPは、抗BrdU単クローン抗体(Roche)及びローダミン標識抗マウスIgG抗体で検出した。
【0050】
ソラレン誘導体及びビオチン化ソラレンは、Alexa488標識ストレプトアビジン(Molecular probe)で検出した。DNAはDAPIにより染色した。蛍光画像は、カール・ツァイスAxioplan2顕微鏡及びIP labソフトウェアで解析した。
【0051】
(4)サザン法によるクロスリンクの解析
幼虫の熱ショックと解剖は染色の場合と同様に行った。20対の唾腺をソラレンを含んでいる解剖バッファー中に10分間入れた後、365nmの光線により、クロスリンクを行った。クロスリンクされたDNAは、溶解バッファー(10mM Tris-Cl pH8.2、100mM EDTA、0.5%のSDS)中で55℃、4時間プロテイナーゼK処理した後、フェノール/クロロホルム及びクロロホルム抽出により精製した。精製されたDNAは、制限酵素処理後、さらに精製した後、グリオキサール変性バッファー(1M グリオキサール、10mMリン酸ナトリウムpH7.0、50%ジメチルスルホキシド)に溶解し、50℃、1時間加熱することにより変性した。グリオキサールにより変性したDNAを10mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.0)中の1%のアガロース・ゲル電気泳動によってクロスリンクされたDNAとされていないDNAに分画した。電気泳動は3.6ボルト/cmで100分間行った。
【0052】
電気泳動後、ゲルを変性液(0.5M NaOH、1.5M NaCl)中で65℃、100分間処理してソラレンによるDNAクロスリンクを解除した。ゲル内のDNAをナイロン膜(HybondN、Amersham)にブロットした。ランダムプライム法により32P標識したプローブを作製し、ハイブリダイゼーションに使用した。ハイブリダイゼーションのシグナルはX線フィルムにより検出した。プローブの鋳型としてプラスミドp56H8RIA(26)からhsp70 CR及びDDS領域を切り出した。
【0053】
B.結果
(1)Jupe等はシュナイダー細胞を用いてショウジョウバエゲノムの特定の領域についてソラレンのクロスリンクを定量する手法を開発した(非特許文献4)。唾腺染色体で負の超らせんDNAを検出するため、我々はまず、Jupe等の手法が唾腺のような組織に適用可能であるかどうか、確認した。
手短かに手法を述べると、熱ショック前、後の幼虫から唾腺を取り出し、様々の濃度のソラレンを含むバッファーに浸漬した後、365nmの光線を照射してクロスリンクを行った。DNAを精製した後、制限酵素処理を行い、グリオキサールにより変性させた。クロスリンクされたDNAとされていないDNAをゲル電気泳動により分画し、ゲルを65℃でアルカリ処理した後、ナイロン膜にDNAをブロットした。87A7に位置するhsp70(図1、CR及びDDS)をプローブとしてサザン法により解析した。高温でのゲルのアルカリ処理はクロスリンクされたDNAの検出に不可欠であり、この処理によりゲル内でのクロスリンクされたDNAの自己アニーリングを防止し、シグナルを再現性良く検出できるようになった。我々はhsp70コード領域のクロスリンクのソラレンに対する濃度依存性を確認した(図2)。幼虫を熱ショックすることにより、クロスリンクの頻度は上昇した(図2)。熱ショック後の幼虫から得た唾腺をX線照射処理し、DNAにニックを導入してからソラレンによるクロスリンクを試みた結果、クロスリンクされたDNAはほとんど検出されなかった(図3(レーン3、レーン4))。対照として、ソラレンによるクロスリンクを行った後にX線を照射しても結果に変化は見られなかった(図3(レーン5、レーン2))。X線の照射量はおよそ30kbに一箇所のニックをDNAに導入すると予想されるので、X線照射により超らせんDNAが弛緩されている領域はCR領域(2kb)よりも大きいと考えられる。同様の結果は熱ショックをかけていない幼虫から得られた唾腺染色体についても得られた。対照的に、クロスリンクのレベルはhsp70の下流の領域(DDS)で低く、熱ショックによってもクロスリンクの頻度の変化は無かった(図3(レーン8、レーン9))。
【0054】
これらの結果はシュナイダー細胞を使用して得られていた結果(非特許文献4)と一致し、hsp70領域における負の超らせんDNAの蓄積とその熱ショックによる増加を示すものである。これらの結果より、我々はソラレンのクロスリンクによる解析は培養細胞だけでなく唾腺組織にも適用できると結論付けた。
興味深い事には、熱ショック後の染色体であっても、クロスリンク前にα−アマニチン処理を行うとクロスリンクのシグナルはほとんど検出されなかった(図3(レーン6、レーン7))。この結果はRNAポリメラーゼIIによる転写を阻害した後、負の超らせんの蓄積は速やかに解消されることを示している。
【0055】
(2)唾腺染色体上での負の超らせんDNA蓄積部位の可視化
我々は、ソラレンによるクロスリンクの手法を発展させ、本発明のソラレン誘導体(7)及び(8)、並びに比較としてビオチン化ソラレンを用い、唾腺染色体上でゲノム全体にわたって負の超らせんDNAの蓄積部位の可視化を試みた。
唾腺をソラレン誘導体を含むバッファーに浸漬し、365nmの光線によりクロスリンクし、酢酸固定した後、スライドガラス上に染色体を展開した。
また、0.01%ジギトニンにより処理した唾腺をビオチン化ソラレンを含むバッファーに浸漬し、365nmの光線によりクロスリンクし、酢酸固定した後、スライドガラス上に染色体を展開した。ソラレン誘導体及びビオチン化ソラレンはAlexa488標識したストレプトアビジンにより検出した。唾腺染色体上で、多くのシグナルがバンド状に検出された(図4A及びB、図5)。図4及び図5に示すとおり、本発明のソラレン誘導体を用いたもの(図4B、図5)は、負の超らせんDNAの染色が従来のビオチン化ソラレンを用いたもの(図4A)に比べて鮮明で、より明確に可視化できることが確認された。このことは、本発明のソラレン誘導体は、細胞膜透過性促進剤を用いなくても、効率良く細胞膜を通過し細胞内に侵入することができるため、細胞の損傷・死滅を生じさせることなく負の超らせんDNAを検出することができること、また、染色体上の負の超らせんDNAの局在を明らかにすることができることを示している。
【0056】
実施例4 負の超らせんDNAの定量
(1)熱ショック及び唾腺の摘出
キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster Oregon R)は18℃で飼育した。必要に応じて3令幼虫はポリプロピレンチューブに入れて37℃水浴に10分間沈めて熱ショック処理した。唾腺は解剖バッファー(10mM HEPES-KOH pH7.6, 5mM MgCl2、5mM KCl、130mM NaCl、1%ポリエチレングリコール6000)の中で幼虫を解剖し、得た。
【0057】
(2)ソラレン誘導体の唾腺への取込みとクロスリンク
20対の唾腺を0.2ng/mlのソラレン誘導体(8)を含む解剖バッファーで10分間処理した。その後、唾腺を長波長(365nm)UVランプ(UVPモデルUVL-21)で照射し、ソラレン誘導体(8)をクロスリンクした。
【0058】
(3)DNAの抽出と断片化
唾腺を溶解バッファー(10mM Tris-HCl pH8.2、100mM EDTA、0.5%SDS)に移して溶解させた後、DNAをフェノール/クロロホルム及びクロロホルム抽出し、イソプロパノール沈澱により回収してTE (10mM Tris-HCl pH8.0、1mM EDTA)に溶解した。こうして精製したDNAを音波処理し、約500塩基対の大きさまで断片化した。
【0059】
(4)ソラレン誘導体をクロスリンクしたDNA断片の特異的回収
ストレプトアビジンビーズまたはアビジンビーズ(SIGMA社)を結合用バッファー(10mM Tris-HCl pH8.0、1mM EDTA、100mM NaCl、0.4% Triton X-100)中で、250μg/mlのサケ精子DNA(音波処理により断片化したもの)と混ぜ、非特異的なDNAの結合をブロックした。クロスリンクしたDNA断片を30μg/mlの音波処理したサケ精子DNAを含む結合用バッファー中で、ブロック処理済ビーズと4℃で16時間混ぜた。ビーズを結合用バッファーで洗浄して結合しなかったDNA断片を除いた後、0.5N NaOH、0.1% SDSでDNA断片をビーズからはずし、遠心してビーズを除いた。上清を65℃50分間保温し、クロスリンクをはずした。1/10容の5N HClを加えて中和後、遠心した上清からDNAをエタノール沈澱で回収し、TEに溶解した。
【0060】
(5)PCRによるDNAの定量
回収したDNA断片と特定の遺伝子領域の配列をもつプライマーを用い、ライトサイクラー(ロシュダイアノスティクス社)で定量的PCRを行い、クロスリンクされたDNAを定量した。異なる試料を比較するため、RP49遺伝子について得られた値に対する相対値で表わした。クロスリンク操作をしなかった試料で得られた値をブランクとして引いた値をクロスリンクされたDNA量とした。
熱ショック処理前と熱ショック処理後のhsp70コード領域における負の超らせんDNAを定量した結果を図6に示す。サザン法解析の結果と同様に、hsp70コード領域における負の超らせんDNAは熱ショックにより増加することが判明した。なお、図はRP49遺伝子について得られた値を100とした時の、RP49遺伝子に対する相対値で示す。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】87A7における遺伝子の位置関係とサザン法解析に用いた制限酵素サイトを示す図である。矢は遺伝子の転写方向を示す。87A7はscs及びscs’(specialized chromatin structure)に挟まれている。X、XbaI;E、EcoRI;B、BglII。
【図2】唾腺細胞の87A7のhsp70遺伝子におけるソラレンによるクロスリンクのサザン法解析結果を示す図である。レーン1−7は、熱ショック後の唾腺をソラレン処理有り(レーン2−7)、無し(レーン1)の条件で解析した。クロスリンク処理の前(レーン3)及び後(レーン5)にX線照射を行った。レーン4はX線照射無しで同様の処理を行った。レーン6はソラレン処理の前にα−アマニチン処理を行った。レーン7はα−アマニチン処理を行っていない。
【図3】ソラレンクロスリンクに対するDNAニッキング及び転写阻害結果を示す図である。レーン1〜7は図2と同じ。レーン8は熱ショック処理を行っていない。レーン9は熱ショック処理を行った。
【図4】唾腺染色体でのソラレンシグナルの可視化を示す図である。(A)細胞膜透過性促進剤(界面活性剤)を用いて細胞に導入したビオチン化ソラレンのシグナルをAlexa488標識したストレプトアビジンで検出した(緑)。(B)細胞膜透過性促進剤を用いないで細胞に導入したソラレン誘導体(7)のシグナルをAlexa488標識したストレプトアビジンで検出した(緑)。
【図5】細胞膜透過性促進剤を用いないで細胞に導入した唾腺染色体でのソラレン誘導体(8)のシグナルをAlexa488標識したストレプトアビジンで検出した(緑)図である。
【図6】唾腺細胞の87A7のhsp70遺伝子における熱ショック処理前と熱ショック処理後の負の超らせんDNAを定量的PCR法により定量した結果を示す図である。RP49遺伝子に対する相対値で表した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の一般式(1)
【化1】

(式中、R1〜R5はそれぞれ同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲノアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子又はアミノ基を示し、Xは標識体の残基を示し、Aは塩基性アミノ酸に富むオリゴペプチドを示し、nは1〜4の整数を示す)
で表されるソラレン誘導体。
【請求項2】
前記オリゴペプチドが、塩基性アミノ酸50%以上含むオリゴペプチドである請求項1記載のソラレン誘導体。
【請求項3】
前記オリゴペプチドが、
i)Tyr-Gly-Arg-Lys-Lys-Arg-Arg-Gln-Arg-Arg-Arg(配列番号1)又は当該配列のC末
端にLysを有する配列、
ii)Arg-Gln-Ile-Lys-Ile-Trp-Gln-Arg-Arg-Met-Lys-Lys-Trp-Lys(配列番号2)又は当
該配列のC末端にLysを有する配列、
iii)Tyr-Gly-Arg-Arg-Arg-Arg-Arg-Gln-Arg-Arg-Arg(配列番号3)又は当該配列のC末
端にLysを有する配列、
iv)Arg-Gln-Ile-Arg-Ile-Trp-Gln-Arg-Arg-Met-Arg-Arg-Trp-Arg(配列番号4)又は当
該配列のC末端にLysを有する配列、
v)Arg-Arg-Arg-Arg-Arg-Arg-Arg-Arg-Arg-Arg-Arg-Arg-Arg-Arg-Arg(配列番号5)又は当該配列のC末端にLysを有する配列、
で表されるオリゴペプチドである請求項1又は2記載のソラレン誘導体。
【請求項4】
標識体の残基がビオチン残基である請求項1〜3のいずれか1項に記載のソラレン誘導体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のソラレン誘導体を含有する細胞内の負の超らせんDNA検出用試薬。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のソラレン誘導体を細胞に導入し、当該細胞に長波長紫外線を照射した後、発色性、蛍光性又は化学発光性の標識類を反応させ、次いで当該細胞の発色、蛍光又は発光を測定することを特徴とする細胞内の負の超らせんDNAの検出法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のソラレン誘導体を細胞に導入し、当該細胞に長波長紫外線を照射した後、発色性、蛍光性又は化学発光性の標識類を反応させ、次いで当該細胞の発色、蛍光又は発光を測定することを特徴とする負の超らせんDNA含有細胞の検出法。
【請求項8】
細胞が、真核生物細胞である請求項6又は7記載の検出法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−151939(P2006−151939A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−91475(P2005−91475)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(504202472)大学共同利用機関法人情報・システム研究機構 (119)
【Fターム(参考)】