説明

負圧ブースタ

【課題】弁筒にその半径方向に摺動することを可能とした嵌合される連結駒が緊急ブレーキ時に弁ピストンに係合して、弁筒に対する弁ピストンの軸方向相対位置を一定に保持するようにした負圧ブースタにおいて、連結駒の摺動抵抗を減少し、連結駒の摺動作動を円滑化する。
【解決手段】弁筒20Aおよび連結駒65Aのいずれか一方に、弁筒20Aおよび連結駒65Aの他方に当接して連結駒65Aの摺動作動をガイドする摺動突部85,86が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ブレーキマスタシリンダの倍力作動のために用いられる負圧ブースタに関し、特に、緊急ブレーキ時に出力杆に速やかに高出力を発揮させるようにした負圧ブースタの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
緊急ブレーキ時に大気導入弁座を大きく開放して作動室に大量の大気を速やかに導入し、出力杆に高出力を発揮させるようにするために、弁筒にその半径方向に摺動することを可能とした嵌合される連結駒が、前記緊急ブレーキ時に弁ピストンに係合して、弁筒に対する弁ピストンの軸方向相対位置を一定に保持するようにしたものが、特許文献1で既に知られている。
【特許文献1】特開2008−247376号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1で開示されたものでは、連結駒の全周が弁筒に摺接しており、摺動面積が広くなっており、連結駒の摺動抵抗が大きく、連結駒の摺動が不円滑となる可能性があり、連結駒を弁筒の半径方向に沿う内方に付勢する弾性部材の付勢力も大きく設定する必要がある。
【0004】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、連結駒の摺動抵抗を減少し、連結駒の摺動作動を円滑化し得るようにした負圧ブースタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、ブースタシェルに、その内部を負圧源に連なる前側の負圧室と後側の作動室とに区画するブースタピストンが収容され、前記ブースタシェルの後壁に摺動自在に支承される弁筒が前記ブースタピストンに連設され、前後動可能な入力杆に連動、連結される入力ピストンと、該入力ピストンに対する所定の後退位置から前方に摺動することを可能として前記入力ピストンに嵌合されるとともに前記後退位置側に弾発付勢される弁ピストンと、前記入力杆の前後動に応じて前記作動室を前記負圧室と大気とに連通切換える制御弁とが前記弁筒内に配設され、前記入力ピストンおよび前記弁ピストンが前記弁筒に対して所定ストローク以上先行前進した緊急ブレーキ時に前記弁ピストンに係合して前記弁筒に対する前記弁ピストンの軸方向相対位置を一定に保持する連結駒が、前記弁筒の半径方向に沿う移動を可能として前記弁筒に摺動可能に嵌合され、前記弁筒および前記連結駒間に該連結駒を前記弁筒の半径方向に沿う内方に向けて付勢する弾性部材が設けられる負圧ブースタにおいて、前記弁筒および前記連結駒のいずれか一方に、前記弁筒および前記連結駒の他方に当接して前記連結駒の摺動作動をガイドする摺動突部が設けられることを特徴とする。
【0006】
また請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加えて、前記摺動突部の硬度が、前記弁筒および前記連結駒の他方の硬度よりも低く設定されることを特徴とする。
【0007】
さらに請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明の構成に加えて、複数の前記摺動突部が、前記連結駒および前記弁筒の対向面の一方に、前記連結駒の摺動方向に平行に延びるようにして突設されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、弁筒および連結駒のいずれか一方に設けられる摺動突部が、弁筒および連結駒の他方に当接することで連結駒の摺動作動がガイドされるので、連結駒の弁筒への摺接面積を小さくして摺動抵抗を減少し、連結駒の摺動作動を円滑化することができ、弾性部材の付勢力を比較的小さく設定することが可能となる。
【0009】
また請求項2記載の発明によれば、摺動突部の硬度が摺動突部を摺接させる側の硬度よりも低いので、連結駒の摺動による摩耗が摺動突部側に起こり易くし、摺動突部が該摺動突部を摺接させる側に食い込んでこじりが生じることを防止し、連結駒の安定した摺動作動を確保することができる。
【0010】
さらに請求項3記載の発明によれば、摺動突部が、連結駒の摺動方向に平行に延びるので、摺動面積をより小さくしつつ連結駒の摺動を安定してガイドすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面に基づいて説明する。
【0012】
図1〜図11は本発明の第1の実施の形態を示すものであり、図1は負圧ブースタの縦断面図、図2は負圧ブースタが非作動状態にあるときの図1の2矢示部拡大図であって図3の2−2線断面図、図3は図2の3−3線断面図、図4は図2の4−4線断面図、図5は図2の5−5線断面図、図6は図2の6ー6線断面図、図7は弾性部材および連結駒の斜視図、図8は通常ブレーキ状態での図2に対応した断面図、図9は負圧ブースタの出力特性を示す線図、図10は緊急ブレーキ状態での図2に対応した断面図、図11は緊急ブレーキ解除状態での図2に対応した断面図である。
【0013】
先ず図1において、負圧ブースタBのブースタシェル11は、前部シェル半体11aおよび後部シェル半体11bの対向端を相互に結合して構成され、後部シェル半体11bが自動車の車室前壁Dにボルト12によって固定され、前部シェル半体11aには、該ブースタBにより作動されるブレーキマスタシリンダMのシリンダボディMaがボルト14によって固着される。
【0014】
ブースタシェル11の内部は、鋼板により環状に成形されるとともにブースタシェル11に前後往復動可能に収容されるブースタピストン15と、該ブースタピストン15の後面に重ねて結着されるとともに前記両シェル半体11a,11b間に外周縁部が挟止されるダイヤフラム16とにより、前側の負圧室17と後側の作動室18とに区画され、負圧室17は、負圧導入管19を介して負圧源V(たとえば内燃機関の吸気マニホールド内部)に接続される。ブースタピストン15およびダイヤフラム16の中心部には合成樹脂製の弁筒20Aが一体的に結合される。
【0015】
図2を併せて参照して、前記弁筒20Aは、後部シェル半体11bの中心部に突設されて後方に延びる案内筒部21に軸受部材22およびシール部材23を介して摺動自在に支承される。
【0016】
弁筒20A内には、入力ピストン25と、該入力ピストン25に連結される入力杆26と、この入力杆26の前後動に応じて作動室18を負圧室17と大気とに連通切換えする制御弁27とが配設される。
【0017】
前記弁筒20Aの中心部には、前方から順に、前端を前方に開放したシリンダ孔28と、該シリンダ孔28の後端に同軸に連なる収容孔29とが同軸に設けられ、収容孔29はシリンダ孔28よりも大径に形成されており、シリンダ孔28の後端および収容孔29の前端間には後方に臨む環状の段部30が形成される。
【0018】
入力ピストン25は、ピストン後部25aと、該ピストン後部25aよりも小径のピストン前部25bと、ピストン前部25bよりも小径に形成されてピストン後部25aおよびピストン前部25b間を連結する頸部25cとを一体に有し、ピストン後部25aの前端には半径方向外方に張り出すフランジ部25dが一体に連設される。而してピストン前部25bは弁筒20Aのシリンダ孔28に摺動可能に嵌合され、ピストン後部25aおよびフランジ部25dは弁筒20Aの収容孔29に同軸に収容される。また収容孔29の前端部には、前記フランジ部25dの外周に対向する複数個たとえば4個のガイド突部29a…が、図3および図4で示すように、半径方向内方に向けて突設される。
【0019】
またピストン後部25aの後端には連結筒部25eが同軸にかつ一体に形成されており、この連結筒部25eには入力杆26の球状前端部26aが嵌合され、球状前端部26aの抜け止めのために連結筒部25eの一部がかしめられる。これにより入力杆26が入力ピストン25に首振り可能に連結され、入力杆26の後端には、該入力杆26を前進作動せしめるブレーキペダルP(図1参照)が連結される。
【0020】
入力ピストン25におけるピストン後部25aの外周には、円筒状の弁ピストン34が後退位置および前進位置間を摺動し得るように嵌合され、その後退位置は、図2で示すように、弁ピストン34の後端面が連結筒部25eの後端部外周に係止された止め輪36で受け止められることにより規定され、また弁ピストン34の前進位置は、弁ピストン34の前端が入力ピストン25のフランジ部25dに当接することにより規定される。また前記ピストン後部25aの外周面には、前記弁ピストン34の内周に摺接する環状のシール部材37が装着される。
【0021】
弁ピストン34には、前端を開放した環状の凹部35が同軸に設けられており、入力ピストン25の前記フランジ部25dおよび前記弁ピストン34間には、前記凹部35に一部を収容せしめたセットばね38が、弁ピストン34を後退位置に向かって付勢するようにして縮設される。
【0022】
弁ピストン34の後端には大気導入弁座39が形成され、この大気導入弁座39を囲繞するように同心配置される環状の負圧導入弁座40が弁筒20Aに形成される。
【0023】
また弁筒20Aには、大気導入弁座39および負圧導入弁座40と協働する共通一個の弁体41が取り付けられる。この弁体41は全体がゴム等の弾性材で成形されたもので、大気導入弁座39および負圧導入弁座40に着座可能に対向して配置される弁部41aと、弁部41aの内周に連なって後方に延びる伸縮筒部41bと、該伸縮筒部41bの後端に連なる環状の取り付けビード部41cとから成っており、前記弁部41aにその内周側から挿入される環状の補強板42が、弁部41aにモールド結合される。また弁部41aの外周には、後方へ屈曲した環状のシールリップ43が一体に形成される。
【0024】
取り付けビード部41cは、負圧導入弁座40とともに弁筒20Aの内周側に一体に形成された環状隆起部81の後端に当接する前部弁ホルダ44と、後部弁ホルダ45との間に気密に挟持され、後部弁ホルダ45には、弁筒20Aの内周面に密接するOリング等のシール部材46が装着される。
【0025】
弁部41aにモールド結合された補強板42と、入力杆26との間には、弁部41aを大気導入弁座39および負圧導入弁座40に着座させる方向に付勢する弁ばね47が縮設される。而して上記負圧導入弁座40、大気導入弁座39、弁体41および弁ばね47によって制御弁27が構成される。
【0026】
後部弁ホルダ45と、入力杆26との間には入力戻しばね48が縮設され、これによって前部および後部弁ホルダ44,45が弁筒20Aの環状隆起部81の後端に当接、保持されるとともに、入力杆26が後退方向へ付勢される。
【0027】
弁筒20Aの内周の環状隆起部81には、負圧導入弁座40を囲繞する前部環状室49が形成され、この前部環状室49に弁部41aの前面が臨む。前部環状室49の半径方向外側の内周面は負圧導入弁座40よりも後方へ延びており、その内周面に弁部41aの外周のシールリップ43が摺動可能に密接する。したがって前部環状室49は、弁部41aが負圧導入弁座40に着座したとき閉じられるようになっている。さらに環状隆起部81の内側には、シールリップ43付きの弁部41aによって、前記前部環状室49とは隔絶した後部環状室50が弁部41aの背面を臨ませるようにして画成される。
【0028】
弁筒20Aには、一端が負圧室17に通じるとともに他端が前部環状室49に開口するように形成される複数の第1ポート51…と、一端が作動室18に通じるとともに他端が負圧導入弁座40および大気導入弁座39間に開口するように形成される第2ポート52とが設けられる。
【0029】
図3、図4および図5において、第2ポート52は、前記シリンダ孔28よりも大径に形成されて該シリンダ孔28の後端に同軸に連なるとともに前記入力ピストン25のピストン後部25aおよび弁ピストン34を収容するようにして弁筒20Aに設けられる収容孔29と、一端が作動室18に通じるとともに他端が前記収容孔29の前端に通じるようにして弁筒20Aの一直径線上に設けられる一対の半径方向連通孔54…とから成るものであり、半径方向連通孔54…すなわち第2ポート52は、弁筒20Aの軸線と平行な方向に延びて弁筒20Aに設けられる軸方向連通孔55…を介して後部環状室50とも連通する。
【0030】
ブースタシェル11における後部シェル半体11bの案内筒部21の後端と、前記入力杆26とには、弁筒20Aを被覆する伸縮可能のブーツ58の両端が取り付けられ、このブーツ58の後端部に、前記弁体41の内側に連通する大気導入口59が設けられる。この大気導入口59に流入する空気を濾過するフィルタ60が入力杆26の外周面と弁筒20Aの後部内周面との間に介裝され、該フィルタ60は、入力杆26および弁筒20Aの相対移動を阻害することがないように、柔軟性を有する。
【0031】
弁筒20Aには、ブースタピストン15および入力ピストン25の後退限を規定するキー61が取り付けられる。このキー61は、図4で示すように、入力ピストン25の頸部25cを両側から挟むようにして弁筒20Aの半径方向連通孔54,54に挿通される一対の規制部61a,61aと、それらの規制部61a…の一端を連結する連結部61bとを一体に有して略U字状に形成され、前記連結部61bが、後部シェル半体11bの案内筒部21に設けられたストッパ壁62の前面に対向するように配置される。而してキー61がストッパ壁62に当接することによりブースタピストン15および弁筒20Aの後退限が規定され、また入力ピストン25における頸部25cの前端面がキー61に当接することにより入力ピストン25および入力杆26の後退限が規定される。前記頸部25cの軸方向長さはキー61の板厚より大きく設定されていて、入力ピストン25とキー61とが僅かに相対移動ができるようになっている。
【0032】
前記弁筒20Aの軸方向に沿う前記半径方向連通孔54…の前端面は、シリンダ孔28および収容孔29間の段部30に面一に連なるものであり、弁筒20Aには、前記半径方向連通孔54…の前端面から後方に突出する突部63…が、前記弁筒20Aの周方向に沿って前記半径方向連通孔54…の中央部に位置するようにして一体に突設されており、前記キー61は、一対の規制部61a,61a間に前記突部63…を挟むようにして半径方向連通孔54…に挿通される。
【0033】
前記弁筒20Aの周方向複数個所には、該弁筒20Aの半径方向に沿う移動を可能とした連結駒65A,65Aが摺動可能に嵌合されるものであり、この実施例では、弁筒20Aの周方向に等間隔をあけた2個所に配置されている前記半径方向連通孔54…に前記連結駒65A…が摺動可能に嵌合される。
【0034】
図6および図7を併せて参照して、連結駒65Aは、弁筒20Aの軸方向に沿って間隔をあけて配置される後方腕部65aおよび前方腕部65bと、前記弁筒20Aの半径方向に沿う前記後方腕部65aおよび前記前方腕部65bの外端間を結ぶ連結部65cとを一体に有して、前記弁筒20Aの半径方向内方に向けて開放した略U字状に形成される。
【0035】
この連結駒65Aは、前記弁筒20Aの軸方向に沿う前記半径方向連通孔54の後端面に後方腕部65aを対向させるとともに前記突部63に前方腕部65bを対向させて前記半径方向連通孔54に摺動可能に嵌合されるものであり、弁筒20Aの周方向に沿う前記連結駒65Aの両側面は前記半径方向連通孔54の内面に摺接する。すなわち連結駒65Aは、弁筒20Aに対する周方向相対移動は阻止されるものの弁筒20Aに対するわずかな軸方向相対移動は可能として前記半径方向連通孔54に摺動可能に嵌合される。
【0036】
前記連結駒65A…および前記弁筒20A間には、各連結駒65A…を弁筒20Aの半径方向に沿う内方側に在る弁ピストン34側に向けて弾発付勢する弾性部材66…が介設される。この弾性部材66は、前記弁筒20Aの段部30と、前記キー61における一対の規制部61a,61aと平行にして両規制部61a…の両側に配置されて前記弁筒20Aの段部31に当接する一対の支持部66a,66aと、弁筒20Aの半径方向に沿う前記両支持部66a…の外端に連結される押圧部66bとを有する。前記両支持部66a…の内端は収容孔29の内周に係合されており、前記押圧部66bは、前方に向けて開放した略U字状に形成されており、前記両支持部66a…の前記外端から後方に延びる。
【0037】
弾性部材66…における押圧部66b…の後部が連結駒65A…の連結部65c…に当接することで連結駒65A…は弁ピストン34側に向けて弾発付勢されるものであり、連結駒65A…における後方腕部65a…の内端部には、係合部67…が設けられる。一方、弁ピストン34の外周には、前記係合部67…を後方側から係合させ得る環状の係止部68と、前記係合部67…を摺接させ得るようにして前記係止部68よりも前方に配置される環状の摺接面69とが設けられる。
【0038】
而して前記係止部68は、入力ピストン25および弁ピストン34が弁筒20Aに対して所定ストローク以上先行前進した緊急ブレーキ時に、前記連結駒65A…の係合部67…を係合させることで前記弁筒20Aに対する弁ピストン34の軸方向相対位置を一定に保持するようにして前記弁ピストン34の外周に設けられ、係合部67…が係止部68に係合した状態では、弁ピストン34が弁筒20Aに実質的には固定されるようにして連結される。また前記摺接面69は、非緊急ブレーキ時に、前記係合部67…を摺接させるようにして弁ピストン34の外周に形成される。
【0039】
前記連結駒65A…における前方腕部65b…の内端部には、前方に向かうにつれて弁筒20Aの半径方向に沿う外方位置となるように傾斜した傾斜面70…が前方に臨んで形成される。一方、前記入力ピストン25に設けられるフランジ部25dは、ブレーキ作動状態では前記傾斜面70…の前方に在るもののであり、緊急ブレーキの解除時には、入力ピストン25の弁ピストン34に対する後退動作に応じて前記傾斜面70…に当接して係合部67…を前記係止部68…から離脱させるように連結駒65A…を弁筒20Aの半径方向外方に移動せしめることになる。
【0040】
また前記連結駒65A…には、前記弾性部材66…からの弾発力を受けて前記連結駒65A…が前記弁筒20Aの半径方向内方ならびに軸方向前方または後方に付勢されるようにして、該弾性部材66を当接させる受圧面71が設けられる。而してこの実施例では、前記弾性部材66…における押圧部66b…の後部が、前記連結駒65A…における連結部65c…の後部に当接するものであり、連結部65cの後部には、後方に向かうにつれて弁筒20Aの軸線から離反するように傾斜した受圧面71…が設けられ、弾性部材66…の押圧部66b…の後部が受圧面71…に当接することによって、連結駒65A…は、弁筒20Aの半径方向内方ならびに軸方向前方に付勢されることになる。
【0041】
このように弾性部材66…の弾発力によって、連結駒65A…が弁筒20Aの半径方向内方に付勢されるとともに、弁筒20Aの軸方向に沿う後方に付勢されることになるので、弁筒20Aの軸方向に連結駒65A…ががたつくことを防止することができ、その結果、連結駒65A…の円滑な作動を保証し、ブレーキアシスト特性の安定化を図ることができる。
【0042】
また前記弁筒20Aには、前記連結駒65A…の連結部65c…に弁筒20Aの半径方向に沿う内方から対向するようにして後方腕部65aおよび前方腕部65b間に配置される規制部72…が、前記半径方向連通孔54…の両側側壁間を結ぶようにして一体に設けられる。この規制部72…は、組付け時に前記弾性部材66…によって付勢されている連結駒65A…が収容孔29内に入り込んでしまうのを防止する働きをする。
【0043】
また前記弁筒20Aには、前記連結駒65Aに当接して該連結駒65A…の摺動作動をガイドする摺動突部85,85…,86…が設けられる。而して一対の摺動突部85,85は、前記半径方向連通孔54内の前記連結駒65Aの後面に摺接し得るようにして半径方向連通孔54の内面から突設されるものであり、弁筒20Aの半径方向に沿って平行に延びるように配置される。また摺動突部86は、前記半径方向連通孔54…の前端面から後方に突出する突部63…に、前記半径方向連通孔54内の前記連結駒65Aの前面に摺接し得るようにして突設されるものである。
【0044】
しかも摺動突部85,85…,86…の硬度が、それらの摺動突部85,85…,86…を摺接させる側である連結駒65A…の硬度よりも低く設定されるものであり、この第1の実施の形態では、弁筒20Aが、たとえばポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)等の合成樹脂であるのに対し、連結駒65A…は、弁筒20Bよりも硬度の高い合成樹脂、たとえばポリフタルアミド樹脂(PPA)によって形成される。
【0045】
再び図2において、弁筒20Aの前端面には、前記シリンダ孔28を囲む環状部82が形成され、この環状部82の外周にはカップ状の出力ピストン75が摺動自在に嵌合され、この出力ピストン75と、前記環状部82および入力ピストン25のピストン前部25bとの軸方向対向面間には偏平な弾性反力ピストン76が介装される。
【0046】
その際、弾性反力ピストン76は上記環状部82の前端面に密接する。また入力ピストン25のピストン前部25bおよび弾性反力ピストン76間には、負圧ブースタBの非作動時に一定の間隙gができるようになっている。
【0047】
出力ピストン75の前面には出力杆77が突設され、この出力杆77は前記ブレーキマスタシリンダMのピストン13に連接される。
【0048】
而して、弁筒20Aの環状部82、入力ピストン25、弾性反力ピストン76および出力ピストン75は、入力杆26に対する入力と、作動室18および負圧室17間の気圧差によるブースタピストン15の推力との合力を出力杆77に伝達する反力機構73を構成する。
【0049】
出力ピストン75および弁筒20Aの前端面にはリテーナ78が当接するように配設され、このリテーナ78とブースタシェル11の前壁との間にブースタピストン15および弁筒20Aを後退方向へ付勢するブースタ戻しばね79が縮設される。
【0050】
次にこの第1の実施の形態の作用について説明すると、負圧ブースタBの休止状態では、図1および図2に示すように、弁筒20Aに取り付けられたキー61が、後部シェル半体11bにおけるストッパ壁62の前面に当接し、このキー61に入力ピストン25の頸部25cの前端面が当接することにより、ブースタピストン15および入力杆26がそれぞれの後退限に位置している。このとき、弁ピストン34はセットばね38の付勢力で入力ピストン25上の止め輪36に当接する後退位置に保持されており、この弁ピストン34の後端の大気導入弁座39は弁体41の弁部41aに着座しながら、この弁部41aを押圧して負圧導入弁座40から僅かに離座させている。これによって大気導入口59および第2ポート52間の連通が遮断されるとともに、第1および第2ポート51,52間が連通される。したがって負圧室17の負圧が両ポート51,52を通して作動室18に伝達し、両室17,18は同圧となっているため、ブースタピストン15および弁筒20Aはブースタ戻しばね79の付勢力により後退位置に保持される。
【0051】
[通常ブレーキ] 車両を制動すべくブレーキペダルPを普通の速度で踏込み、入力杆26および入力ピストン25を前進させれば、入力ピストン25は、図8で示すように、後退位置に保持された状態の弁ピストン34を伴なって前進する。したがって弁ばね47の付勢力で、弁体41は直ちに伸縮筒部41bを伸ばしながら弁部41aを負圧導入弁座40に着座させることになり、それと同時に、大気導入弁座39が弁体41から離れることによって第1および第2ポート51,52間の連通が遮断されるとともに、第2ポート52が弁体41の内側を通して大気導入口59と連通される。
【0052】
その結果、大気導入口59から弁筒20A内に流入した大気が大気導入弁座39を通過し、第2ポート52を経て作動室18に導入され、作動室18を負圧室17より高圧にするので、それらの気圧差に基づく前方推力を得てブースタピストン15は、弁筒20A、弾性反力ピストン76、出力ピストン75および出力杆77を伴いながらブースタ戻しばね79の力に抗して前進し、出力杆77によりブレーキマスタシリンダMのピストン13が前方に押圧されるようになる。このように大気導入弁座39は、入力杆26の前進と同時に前進して、弁部41aから離座することで、ブースタピストン15の応答性を高めることができる。
【0053】
入力杆26の前進初期、入力ピストン25のピストン前部25bが間隙gを詰めて弾性反力ピストン76に当接するまでは、大気導入弁座39が開いても、入力杆26は反力機構73から反力を受けないので、出力杆77の出力は、図9に線a−bで示すように急速に立ち上がるジャンピング特性を示す。
【0054】
また入力杆26の前進操作時には、弁筒20Aの前部環状室49に臨む弁部41aの前面には、第1ポート51から前部環状室49に伝達する負圧が作用するのに対して、弁筒20Aの後部環状室50に臨む弁部41aの背面には、第2ポート52から軸方向連通孔55を介して後部環状室50に伝達する大気圧が作用するので、弁部41aは、弁ばね47のセット荷重による他、前部および後部環状室49,50間の気圧差によっても負圧導入弁座40との着座方向へ付勢されることになる。したがって、上記気圧差による付勢力分、弁ばね47のセット荷重を低減することが可能となり、それに伴い入力杆26を後退方向へ付勢する入力戻しばね48のセット荷重の低減も可能となり、その結果、比較的小さい初期操作入力によりジャンピング特性が得られるので、ブレーキマスタシリンダMおよび各車輪ブレーキの無効ストロークを素早く排除して、各車輪ブレーキの応答性を高めることができる。
【0055】
またこの状態において、弁部41aの外周のシールリップ43は、後方に屈曲して、弁筒20Aの内周面に密接しているので、前部および後部環状室49,50間の気圧差により、上記内周面への密接力が高められ、両環状室49,50間の気密を確保することができる。
【0056】
入力ピストン25のピストン前部25bが弾性反力ピストン76に当接してからは、出力杆77の作動反力の一部が弾性反力ピストン76を介して入力杆26にフィードバックされることになるので、操縦者は出力杆77の出力の大きさを感受することができる。
【0057】
希望の出力を得たところで入力杆26の前進を停止すれば、ブースタピストン15の前進は、弁体41の弁部41aを再び大気導入弁座39に着座させて、それ以上の大気の負圧室3への導入を阻止することで停止する。したがって弁筒20Aおよびブースタピストン15は、入力杆26の前進に倣って前進することになる。
【0058】
ところで、入力杆26の前進速度が比較的低い通常ブレーキ時には、入力杆26に対するブースタピストン15および弁筒20Aの追従遅れが比較的少ないから、入力杆26および弁筒20Aの相対変位も少なく、また入力杆26に連結した入力ピストン25とともに前進する弁ピストン34と、弁筒20Aに摺動可能に嵌合された連結駒65A…との相対変位も少ない。したがって連結駒65A…の係合部67…は弁ピストン34の摺接面69に摺接するだけで、係止部68に係合することはない。
【0059】
そして出力杆77の出力は、弾性反力ピストン76に当接する弁筒20Aの環状部82および入力ピストン25におけるピストン前部25aの受圧面積の比によって定まる倍力比をもって、図9の線b−cで示すように増加する。
【0060】
負圧室17および作動室18間の気圧差が最大となる倍力限界点cに達してからは、出力杆77の出力は、線c−dに示すように、ブースタピストン15の上記気圧差による最大推力と、入力杆26への操作入力との和となる。
【0061】
[緊急ブレーキ] ブレーキペダルPを急速に踏み込む緊急ブレーキ時には、入力ピストン25の前進速度が速いため、ブースタピストン15および弁筒20Aが前進し始める前に、入力ピストン25のピストン前部25bによって弾性反力ピストン76を圧縮しながら、入力ピストン25および弁ピストン34を大きく前進させる。すると、図10で示すように、連結駒65A…の係合部67…が弁ピストン34の係止部68に係合し、弁ピストン34はセットばね38の付勢力に抗して、弁筒20Aに摺動可能に嵌合された連結駒65A…と連結状態となり、弁ピストン34、入力ピストン25および弁筒20Aが実質的に一体化されることになり、大気導入弁座39が弁体41の弁部41aから最大に引き離された全開状態に保持される。
【0062】
而して緊急ブレーキ時には、大気導入弁座39の全開状態で弁ピストン34が連結駒65A…および弁筒20Aに図9で示す連結点eで連結されることになり、連結後にはブースタピストン15および弁筒20Aが入力杆26の前進に倣うように僅かに前進しても、弁ピストン34は弁筒20Aと一体となって前進することになるから、大気導入弁座39の全開状態は維持される。その結果、大量の大気が負圧室17に一気に導入され、図9の線e−fで示すように、負圧室17および作動室18間の気圧差が最大となる倍力限界点fに即座に到達し、通常ブレーキ時に比べてΔPだけの出力増大を図ることができ、マスタシリンダMのピストン13を強力に押圧し続け、緊急ブレーキに迅速に対応することができる。
【0063】
この緊急ブレーキ時でも、大気導入弁座39は、入力杆26の前進と同時に前進して、弁部41aから離座することができるので、ブースタピストン15の応答性を高めることができる。
【0064】
また連結駒65A…を介して弁ピストン34および弁筒20Aが連結された状態で、入力ピストン25および弁ピストン34間に設けられるセットばね38のばね荷重は、入力ピストン25に前進方向で作用するので、緊急ブレーキ時のブレーキ操作力を軽減することができる。
【0065】
さらに連結駒65A…の係合部67…を弁ピストン34の係止部68に係合させるのに必要な前記入力ピストン25の前記弁筒20Aに対する前進方向の先行ストローク量は、入力ピストン25の軸方向に沿う前記連結駒65A…の寸法を変更することで変化させることができ、緊急ブレーキ時のブレーキアシスト開始閾値を前記連結駒65A…の寸法変更によって容易に調整することができる。
【0066】
[緊急ブレーキ状態からの解除] 緊急ブレーキ状態を解除すべく、ブレーキペダルPから踏力を解放すると、先ず入力杆26および入力ピストン25が入力戻しばね48の力をもって後退する。入力ピストン25が後退を始めると、図11に示すように、入力ピストン25のフランジ部25dが、連結駒65A…の傾斜面70…に当接して連結駒65A…を前記係止部68から離脱させるように連結駒65A…を押し広げるので、連結駒65A…の弁ピストン34への係合状態が解除される。その後は、弁ピストン34が、セットばね38の付勢力によって入力ピストン25の止め輪36に当接する後退位置に直ちに復帰して、大気導入弁座39を弁体41の弁部41aに着座させるとともに、その弁部41aを後方へ押して負圧導入弁座40から離座させるので、作動室18が第2ポート52および第1ポート51を介して負圧室17と連通し、作動室18への大気の導入が阻止されるとともに、作動室18の空気が負圧室17を経て負圧源Vに吸入され、それらの気圧差が無くなる。これによりブースタピストン15も、ブースタ戻しばね79の弾発力をもって後退し、マスタシリンダMの作動を解除していく。
【0067】
しかも緊急ブレーキ解除までの前記入力ピストン25の後退方向のストローク量は、入力ピストン25の軸方向に沿う前記連結駒65Aの寸法を変更することで変化させることができ、ブレーキアシスト解除閾値および戻り時のヒステリシスを前記連結駒の寸法変更によって容易に調整することができる。
【0068】
しかも弁筒20Aに設けられる摺動突部85,85…,86…が、連結駒65A…に当接することで連結駒65A…の摺動作動がガイドされるので、連結駒65A…の弁筒20Aへの摺接面積を小さくして摺動抵抗を減少し、連結駒65A…の摺動作動を円滑化することができるとともに、弾性部材66の付勢力を比較的小さく設定することが可能となる。
【0069】
また摺動突部85,85…,86…の硬度が、摺動突部85,85…,86…を摺接させる連結駒65A…の硬度よりも低いので、連結駒65A…の摺動による摩耗が摺動突部85,85…,86…側に起こり易くし、摺動突部85,85…,86…が連結駒65A…側に食い込んでこじりが生じることを防止し、連結駒65A…の安定した摺動作動を確保することができる。
【0070】
さらに連結駒85Aの後面に摺接する一対の摺動突部85,85が、弁筒20Aの半径方向に沿って平行に延びるようにして弁筒20Aに突設されるので、摺動面積をより小さくしつつ連結駒65Aの摺動を安定してガイドすることができる。
【0071】
なお弁筒20Aを合成樹脂製とし、連結駒65A…を金属製とすることで、摺動突部85,85…,86…の硬度が、連結駒65A…の硬度よりも低く設定されるようにしてもよい。
【0072】
図12は本発明の第2の実施の形態を示すものであり、連結駒65Bに、摺動突部65d,65d,65eが設けられるようにしてもよい。すなわちこの連結駒65Bは、第1の実施の形態と同様にして、弁筒20Aの半径方向連通孔54(第1の実施の形態参照)に摺動可能に嵌合されるものであり、第1の実施の形態の連結駒65Aと同様に、後方腕部65a、前方腕部65bおよび連結部65cを一体に有するものであるが、この連結駒65Bの後面には、前記半径方向連通孔54の内面に摺接し得る一対の摺動突部65d,65dが弁筒20Aの半径方向に平行に延びるようにして一体に突設され、連結駒65Bの前面には、前記半径方向連通孔54内に在る突部63(第1の実施の形態参照)の後面に摺接し得る摺動突部65eが弁筒20Aの半径方向に延びるようにして一体に突設される。
【0073】
しかも摺動突部65d,65d,65eの硬度が、それらの摺動突部65d,65d,65eを摺接させる弁筒20Aの硬度よりも低く設定されるものであり、この第2の実施の形態では、弁筒20Aが、たとえばポリフタルアミド樹脂(PPA)によって形成されるのに対し、連結駒65Bが、弁筒20Aよりも硬度の低い合成樹脂、たとえばポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)等の合成樹脂によって形成される。
【0074】
この第2の実施の形態によっても第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0075】
図13〜図16は本発明の第3の実施の形態を示すものであり、図13は負圧ブースタが非作動状態にあるときの図2に対応した断面図、図14は図13の14−14線断面図、図15は図13の15−15線断面図、図16は弾性部材および連結駒の相対配置を示す斜視図である。
【0076】
なお第1の実施の形態に対応する部分には同一の参照符号を付して図示するのみとし、詳細な説明は省略する。
【0077】
後部シェル半体11bの中心部に突設されて後方に延びる案内筒部21に、弁筒20Bが、軸受部材87およびシール部材23を介して摺動自在に支承される。この弁筒20Bは、環状隆起部81および環状部82を有して上記第1の実施の形態の弁筒20Aに類似した形状に形成されるものであり、この弁筒20Bの周方向に等間隔をあけた2箇所に設けられた半径方向連通孔54…に連結駒91…が摺動可能に嵌合される。
【0078】
前記弁筒20Bの軸方向に沿う前記半径方向連通孔54…の前端面は、シリンダ孔28および収容孔29間の段部30に面一に連なるものであり、弁筒20Bには、前記半径方向連通孔54…の前端面から後方に突出する突部93…が、前記弁筒20Bの周方向に沿って前記半径方向連通孔54…の中央部に位置するようにして一体に突設されており、キー61が、一対の規制部61a,61a間に前記突部93…を挟むようにして半径方向連通孔54…に挿通される。しかも前記弁筒20Bの半径方向に沿う前記突部93…の内端には、後方に向けて突出する規制部93a…が一体に設けられる。
【0079】
連結駒91は、弁筒20Bの軸方向に沿って間隔をあけて配置される後方腕部91aおよび前方腕部91bと、前記弁筒20Bの半径方向に沿う前記後方腕部91aおよび前記前方腕部91bの外端間を結ぶ連結部91cとを一体に有して、前記弁筒20Bの半径方向内方に向けて開放した略U字状に形成される。
【0080】
この連結駒91は、前記弁筒20Bの軸方向に沿う前記半径方向連通孔54の後端面に後方腕部91aを対向させるとともに前記突部93に前方腕部91bを対向させて前記半径方向連通孔54に摺動可能に嵌合されるものであり、前記規制部93aが挿入される凹部94が前方腕部91bに設けられる。
【0081】
前記弁筒20Bの周方向に沿う前記連結駒91の両側面は前記半径方向連通孔54の内面に摺接しており、連結駒91は、弁筒20Bに対する周方向相対移動は阻止されるものの弁筒20Bに対するわずかな軸方向相対移動は可能として前記半径方向連通孔54に摺動可能に嵌合される。
【0082】
前記連結駒91…および前記弁筒20B間には、各連結駒91…を弁筒20Bの半径方向に沿う内方側に在る弁ピストン34側に向けて弾発付勢する弾性部材92が介設される。この弾性部材92は、一対の連結駒91,91に共通にして円弧状に形成されるものであり、前記半径方向連通孔54…の外端開口部に対応して弁筒20Bの外周に設けられる装着溝95に装着される。しかも弁筒20Bには弾性部材92の周方向両端に当接して該弾性部材92の周方向移動を規制する回り止め100が設けられるものであり、前記装着溝95は、弁筒20Bの外周に設けられた回り止め100を周方向両端間に挟むようにして円弧状に形成される。
【0083】
弾性部材92が連結駒91…の連結部91c…に当接することで連結駒91…は弁ピストン34側に向けて弾発付勢されるものであり、連結駒91…における後方腕部91a…の内端部には、弁ピストン34の外周に設けられた環状の係止部68に後方側から係合可能な係合部97…が設けられ、この係合部97…は、前記係止部68よりも前方に配置されて前記弁ピストン34の外周に設けられる摺接面69に摺接可能である。
【0084】
而して前記係止部68は、入力ピストン25および弁ピストン34が弁筒20Bに対して所定ストローク以上先行前進した緊急ブレーキ時に、前記連結駒91…の係合部97…を係合させることで前記弁筒20Bに対する弁ピストン34の軸方向相対位置を一定に保持し、係合部97…が係止部68に係合した状態では、弁ピストン34が弁筒20Bに実質的には固定されるようにして連結される。また非緊急ブレーキ時に前記係合部97…は前記摺接面69に摺接する。
【0085】
前記連結駒91における前方腕部91b…の内端部には、前方に向かうにつれて弁筒20Bの半径方向に沿う外方位置となるように傾斜した傾斜面98…が前方に臨んで形成される。一方、前記入力ピストン25に設けられるフランジ部25dは、ブレーキ作動状態では前記傾斜面98…の前方に在るもののであり、緊急ブレーキの解除時には、入力ピストン25の弁ピストン34に対する後退動作に応じて前記傾斜面98…に当接して係合部97…を前記係止部68…から離脱させるように連結駒91…を弁筒20Bの半径方向外方に移動せしめることになる。
【0086】
また前記連結駒91…には、前記弾性部材92…からの弾発力を受けて前記連結駒91…が前記弁筒20Bの半径方向内方ならびに軸方向前方または後方に付勢されるようにして、該弾性部材92を当接させる受圧面99が設けられる。而してこの第4実施例では、前記弾性部材92…が、前記連結駒91…における連結部91c…に当接するものであり、連結部91cには、前方に向かうにつれて弁筒20Bの軸線から離反するように傾斜したテーパ状の受圧面99…が設けられ、弾性部材92が受圧面99…に当接することによって、連結駒91…は、弁筒20Bの半径方向内方ならびに軸方向前方に付勢されることになる。
【0087】
このように弾性部材92…の弾発力によって、連結駒91…が弁筒20Bの半径方向内方に付勢されるとともに、弁筒20Bの軸方向に沿う後方に付勢されることになるので、弁筒20Bの軸方向に連結駒91…ががたつくことを防止することができ、連結駒91…の円滑な作動を保証し、ブレーキアシスト特性の安定化を図ることができる。
【0088】
前記弁筒20Bには、前記連結駒91…に当接して該連結駒91…の摺動作動をガイドする摺動突部101,101…,102…が設けられる。而して一対の摺動突部101,101は、前記半径方向連通孔54内の前記連結駒91の後面に摺接し得るようにして半径方向連通孔54の内面から突設されるものであり、弁筒20Bの半径方向に沿って平行に延びるように配置される。また摺動突部102は、前記半径方向連通孔54…の前端面から後方に突出する突部93…に、前記半径方向連通孔54内の前記連結駒91…の前面に摺接し得るようにして突設されるものである。
【0089】
しかも摺動突部101,101…,102…の硬度が、前記摺動突部101,101…,102…を摺接させる連結駒91…の硬度よりも低く設定されるものであり、この第3の実施の形態では、弁筒20Bが、たとえばポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)等の合成樹脂であるのに対し、連結駒91…は、弁筒20Bよりも硬度の高い合成樹脂、たとえばポリフタルアミド樹脂(PPA)によって形成される。
【0090】
このような第3の実施の形態によれば、第1および第2の実施の形態と同様の効果を奏することができるだけでなく、一対の連結駒91…に共通にして円弧状に形成される単一の弾性部材92が、各連結駒91…に当接しつつ弁筒20Bの外周に設けられる装着溝95に装着されるので、部品点数の低減を図ることができる。
【0091】
しかも弁筒20Bには弾性部材92の周方向両端に当接して該弾性部材92の周方向移動を規制する回り止め100が設けられるので、弾性部材92の周方向位置決めが容易となり、組付け性が向上する。
【0092】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】第1の実施の形態の負圧ブースタの縦断面図である。
【図2】負圧ブースタが非作動状態にあるときの図1の2矢示部拡大図であって図3の2−2線断面図である。
【図3】図2の3−3線断面図である。
【図4】図2の4−4線断面図である。
【図5】図2の5−5線断面図である。
【図6】図2の6ー6線断面図である。
【図7】弾性部材および連結駒の斜視図である。
【図8】通常ブレーキ状態での図2に対応した断面図である。
【図9】負圧ブースタの出力特性を示す線図である。
【図10】緊急ブレーキ状態での図2に対応した断面図である。
【図11】緊急ブレーキ解除状態での図2に対応した断面図である。
【図12】第2の実施の形態の連結駒の斜視図である。
【図13】第3の実施の形態を示すものであって負圧ブースタが非作動状態にあるときの図2に対応した断面図である。
【図14】図13の14−14線断面図である。
【図15】図13の15−15線断面図である。
【図16】弾性部材および連結駒の相対配置を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0094】
11・・・ブースタシェル
15・・・ブースタピストン
17・・・負圧室
18・・・作動室
20A,20B・・・弁筒
25・・・入力ピストン
26・・・入力杆
27・・・制御弁
34・・・弁ピストン
65A,65B,91・・・連結駒
65d,65e,85,86,101,102・・・摺動突部
66,92・・・弾性部材
V・・・負圧源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブースタシェル(11)に、その内部を負圧源(V)に連なる前側の負圧室(17)と後側の作動室(18)とに区画するブースタピストン(15)が収容され、前記ブースタシェル(11)の後壁に摺動自在に支承される弁筒(20A,20B)が前記ブースタピストン(15)に連設され、前後動可能な入力杆(26)に連動、連結される入力ピストン(25)と、該入力ピストン(25)に対する所定の後退位置から前方に摺動することを可能として前記入力ピストン(25)に嵌合されるとともに前記後退位置側に弾発付勢される弁ピストン(34)と、前記入力杆(26)の前後動に応じて前記作動室(18)を前記負圧室(17)と大気とに連通切換える制御弁(27)とが前記弁筒(20A,20B)内に配設され、前記入力ピストン(25)および前記弁ピストン(34)が前記弁筒(20A,20B)に対して所定ストローク以上先行前進した緊急ブレーキ時に前記弁ピストン(34)に係合して前記弁筒(20A,20B)に対する前記弁ピストン(34)の軸方向相対位置を一定に保持する連結駒(65A,65B,91)が、前記弁筒(20A,20B)の半径方向に沿う移動を可能として前記弁筒(20A,20B)に摺動可能に嵌合され、前記弁筒(20A,20B)および前記連結駒(65A,65B,91)間に該連結駒(65A,65B,91)を前記弁筒(20A,20B)の半径方向に沿う内方に向けて付勢する弾性部材(66,92)が設けられる負圧ブースタにおいて、前記弁筒(20A,20B)および前記連結駒(65A,65B,91)のいずれか一方に、前記弁筒(20A,20B)および前記連結駒(65A,65B,91)の他方に当接して前記連結駒(65A,65B,91)の摺動作動をガイドする摺動突部(85,86;65d,65e,101,102)が設けられることを特徴とする負圧ブースタ。
【請求項2】
前記摺動突部(85,86;65d,65e,101,102)の硬度が、前記弁筒(20A,20B)および前記連結駒(65A,65B,91)の他方の硬度よりも低く設定されることを特徴とする請求項1記載の負圧ブースタ。
【請求項3】
複数の前記摺動突部(85,65d,101)が、前記連結駒(65A,65B,91)および前記弁筒(20A,20B)の対向面の一方に、前記連結駒(65A,65B,91)の摺動方向に平行に延びるようにして突設されることを特徴とする請求項1または2記載の負圧ブースタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−126084(P2010−126084A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−305076(P2008−305076)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000226677)日信工業株式会社 (840)
【Fターム(参考)】