負圧式倍力装置
【課題】 負圧式倍力装置にて、緊急ブレーキ操作時の操作力不足を補うことが可能な制御機構をバルブピストンに組付ける際の組付性を改善すること。
【解決手段】 負圧式倍力装置は、入力部材(41)と反力部材73間に配置されて反力部材73から反力を受ける先端部材72、先端部材72の動きを制御する制御機構80を備えている。制御機構80は、先端部材72の収容孔81aを有しバルブピストン30と反力部材73間に組付けられる環状ケース81、環状ケース81に径方向にて移動可能に組付けられスプリング83により径内方に付勢され入力部材(41)のバルブピストン30に対する前進量に応じて先端部材72の動きを制御する係止部材82、バルブピストン30に組付けられ係止部材82の径方向移動に応じて前後方向に移動しバルブピストン30の原位置復帰時にキー部材71に押されて係止部材82を初期位置に復帰させる棒状伝達部材84を備えている。
【解決手段】 負圧式倍力装置は、入力部材(41)と反力部材73間に配置されて反力部材73から反力を受ける先端部材72、先端部材72の動きを制御する制御機構80を備えている。制御機構80は、先端部材72の収容孔81aを有しバルブピストン30と反力部材73間に組付けられる環状ケース81、環状ケース81に径方向にて移動可能に組付けられスプリング83により径内方に付勢され入力部材(41)のバルブピストン30に対する前進量に応じて先端部材72の動きを制御する係止部材82、バルブピストン30に組付けられ係止部材82の径方向移動に応じて前後方向に移動しバルブピストン30の原位置復帰時にキー部材71に押されて係止部材82を初期位置に復帰させる棒状伝達部材84を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ブレーキ装置に採用される負圧式倍力装置に関し、特に、運転者が慌ててブレーキペダルを踏み込んだ時のような緊急ブレーキ操作時におけるブレーキペダル踏力(操作力)の不足を補うことができるように構成した負圧式倍力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の負圧式倍力装置の一つとして、内部に圧力室を形成するハウジングと、このハウジング内に前進後退可能に組付けられて前記圧力室を前方の負圧室と後方の変圧室とに区画する可動隔壁と、前記ハウジングに前進後退可能に組付けられて前記ハウジング内に収容されている前端部にて前記可動隔壁に結合されたバルブピストンと、このバルブピストン内にて同バルブピストンに対し前進後退可能に設置されかつ外部からの操作力を受ける入力部材と、前記バルブピストンの前端部に組付けられて前記バルブピストンの推進力を外部に出力する出力部材と、前記バルブピストン内にて前記入力部材と前記出力部材間に介装されて前記出力部材に作用する力の反力を前記バルブピストンと前記入力部材に分けて伝達する反力部材とを備えるとともに、前記入力部材に設けた大気弁座とにより前記変圧室と大気との連通・遮断を制御する大気制御弁部と前記バルブピストンに設けた負圧弁座とにより前記変圧室と前記負圧室との連通・遮断を制御する負圧制御弁部を有して前記バルブピストン内に組付けられた制御弁を備え、さらに、
前記入力部材と前記バルブピストンに対して前進後退可能に組付けられて前記入力部材の前記バルブピストンに対する前進後退移動の限度を規定するとともに前記バルブピストンの前記ハウジングに対する後退移動の限度を規定するキー部材と、前記入力部材の先端部と前記反力部材の後端部間に前進後退可能に配置されて前端面にて前記反力部材と当接可能で後端面にて前記入力部材に係合・離脱可能な先端部材と、前記入力部材の前記バルブピストンに対する前進量が所定値以下の場合には、前記先端部材を前記入力部材と一体的に前進後退移動可能とし、前記入力部材の前記バルブピストンに対する前進量が所定値より大きい場合には、前記先端部材を前記入力部材から離脱した状態で前記バルブピストンに対して固定可能とする制御機構を備えている負圧式倍力装置があり、例えば下記特許文献1に記載されている。なお、後方とは、負圧式倍力装置に対してブレーキペダル側あるいは車両後方側を意味し、前方とは、負圧式倍力装置に対してブレーキマスタシリンダ側あるいは車両前方側を意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−132216号公報
【0004】
上記した特許文献1に記載されている負圧式倍力装置では、前記制御機構が、前記バルブピストンに径方向にて移動可能に組付けられてスプリングによって径内方に向けて付勢され、前記入力部材の前記バルブピストンに対する前進量が所定値以下の場合には、初期位置(径外方位置)にあって前記先端部材の前記バルブピストンに対する前進後退移動を許容し、前記入力部材の前記バルブピストンに対する前進量が所定値より大きい場合には、初期位置から径内方に移動して前記先端部材の前記バルブピストンに対する後退移動を制限する係止部材と、前記バルブピストンに前進後退移動可能に組付けられていて前記係止部材に係合しており前記係止部材の径方向移動に応じて前後方向に移動する伝達部材と、前記キー部材とは別個に構成されて前記入力部材と前記バルブピストンに対して前進後退移動可能に組付けられており前記バルブピストンが原位置(ハウジングに対する後退限度位置)に復帰するとき前記伝達部材を介して前記係止部材を初期位置に復帰させる解除部材を備えている。
【発明の概要】
【0005】
ところで、上記した特許文献1に記載されている負圧式倍力装置では、制御機構の構成部材である係止部材、スプリング、伝達部材、解除部材等がそれぞれバルブピストンに直接組付けられるように構成されている。しかも、係止部材と解除部材がバルブピストンの前進後退移動方向(軸方向)に対して直交する径方向に組付けられ、スプリングがバルブピストンの外周に組付けられ、伝達部材がバルブピストンの前進後退移動方向(軸方向)に沿って組付けられている。このため、上記した特許文献1に記載されている負圧式倍力装置では、制御機構の構成部材をバルブピストンに組付ける際に、バルブピストンに対して多方向からの組付作業が必要であり、組付性に改善の余地がある。
【0006】
また、上記した特許文献1に記載されている負圧式倍力装置では、入力部材に反力を伝達するための先端部材がバルブピストンに設けた収容孔に前進後退移動可能に組付けられている。このため、車両の要求仕様に応じて、外径の異なる複数種類の先端部材を製作するのに併せて、先端部材を前進後退移動可能に収容する収容孔の内径が異なる複数種類のバルブピストンを製作する必要がある。ところで、バルブピストンは先端部材に比して大きい部品であって、かかるバルブピストンを複数種類製作しなければならない従来の負圧式倍力装置は生産面で改善の余地がある。
【0007】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、前記制御機構が、前記先端部材を前進後退移動可能に収容する収容孔を有して、前記バルブピストンの前端部と前記反力部材の後端部間に組付けられており、前端面にて前記反力部材と当接し後端面にて前記バルブピストンに当接する環状ケースと、この環状ケースに径方向にて移動可能に組付けられてスプリングによって径内方に向けて付勢され、前記入力部材の前記バルブピストンに対する前進量が所定値以下の場合には、初期位置にあって前記先端部材の前記バルブピストンに対する前進後退移動を許容し、前記入力部材の前記バルブピストンに対する前進量が所定値より大きい場合には、初期位置から径内方に移動して前記先端部材の前記バルブピストンに対する後退移動を制限する係止部材と、前記バルブピストンに前進後退移動可能に組付けられていて、前端部にて前記係止部材に係合し後端部にて前記キー部材に係合しており、前記係止部材の径方向移動に応じて前後方向に移動可能で、前記バルブピストンが原位置に復帰するとき前記係止部材を前記スプリングの付勢力に抗して初期位置に復帰させる棒状伝達部材とを備えていることに特徴がある。
【0008】
この負圧式倍力装置においては、通常ブレーキ操作時、入力部材のバルブピストンに対する前進量が所定値以下であり、係止部材が初期位置にあって先端部材のバルブピストンに対する前進後退移動を許容する。このため、先端部材は入力部材と一体的に移動し、反力部材から先端部材に伝達される反力は入力部材に伝達される。
【0009】
また、緊急ブレーキ操作時、入力部材のバルブピストンに対する前進量が所定値より大きくて、係止部材が初期位置から径内方に移動して先端部材のバルブピストンに対する後退移動を制限する。このため、先端部材は係止部材を介してバルブピストンと一体となり、反力部材から先端部材に伝達される反力は先端部材から係止部材を介してバルブピストンに伝達される。
【0010】
この結果、緊急ブレーキ操作時に反力部材から入力部材に伝達される反力が、通常ブレーキ操作時に比して、小さくなり、緊急ブレーキ操作時における倍力比(出力/入力)が通常ブレーキ操作時における倍力比に比して大きくなる。このため、緊急ブレーキ操作時のブレーキペダル踏力の不足を補うことができて、緊急ブレーキ操作時におけるブレーキの効きを、通常ブレーキ操作時におけるブレーキの効きに比して、向上させることが可能である。
【0011】
ところで、この負圧式倍力装置においては、制御機構の構成部材である環状ケース、係止部材、スプリング、棒状伝達部材等がバルブピストンに組付けられる前に、環状ケースに係止部材とスプリングを予め組付けて、これらを一体化(サブアセンブリ化)することが可能である。このため、入力部材とキー部材を組付けた状態のバルブピストンに対して、棒状伝達部材を前方から組付けるとともに、一体化された環状ケースと係止部材とスプリングを前方から組付けることで、制御機構の構成部材をバルブピストンに容易に組付けることができて、制御機構のバルブピストンへの組付性を改善することが可能である。なお、入力部材とキー部材を組付けた状態のバルブピストンに対して制御機構の構成部材を組付ける際に、バルブピストンの前方が上方となるようにバルブピストンを設置すれば、上述した前方からの組付方向が上方からの組付方向となる。
【0012】
また、この負圧式倍力装置においては、環状ケース(バルブピストンに比して小さい部品)に、先端部材を前進後退移動可能に収容する収容孔が設けられている。このため、車両の要求仕様に応じて、外径の異なる複数種類の先端部材を製作するのに併せて、先端部材を前進後退移動可能に収容する収容孔の内径が異なる複数種類の環状ケースを製作すればよくて、バルブピストンは一種類で製作すればよく、当該負圧式倍力装置の生産面を改善することが可能である。
【0013】
また、本発明の実施に際して、前記バルブピストンと前記環状ケースには、前記環状ケースの前記バルブピストンに対する周方向の位置を規定するための位置決め手段(凸部と凹部)が設けられていることも可能である。この場合には、一体化された環状ケースと係止部材とスプリング等のバルブピストンへの誤組付を防止することが可能であり、バルブピストンに組付けられる棒状伝達部材に対して、係止部材を的確に係合させることが可能である。さらに、負圧式倍力装置の作動中にバルブピストンと環状ケースの間の周方向の相対移動を規制し、係止部材を径方向に移動可能に保持する環状ケースと棒状伝達部材との摩擦や干渉を防止して棒状伝達部材の前後移動を円滑にすることで、棒状伝達部材による係止部材の初期位置への復帰を円滑にする。
【0014】
また、本発明の実施に際して、前記環状ケースには、前記係止部材との係合によって前記係止部材の前記環状ケースに対する径内方への移動量を所定値に規定するストッパが設けられていることも可能である。この場合には、環状ケース、係止部材およびスプリングが一体化された際に、係止部材がスプリングによって径内方に押されてストッパと弾性的に係合し、環状ケースとスプリングによって係止部材が弾性的に保持される。したがって、環状ケースと係止部材とスプリングを一体化した後に、係止部材が環状ケースから脱落することを抑制することができて、一体化された部品の搬送性を良好とすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による負圧式倍力装置の一実施形態を示す断面図である。
【図2】図3の2−2線に沿った断面を展開して示すとともにバルブピストンと制御機構の関係を示した図1の要部拡大断面図である。
【図3】図2の3−3線に沿った断面図(ハウジングの断面は省略)である。
【図4】図1および図2に示した環状ケース、係止部材、スプリングが一体化された状態の拡大正面図である。
【図5】図4に示した環状ケース、係止部材、スプリングの中央縦断側面図である。
【図6】図4および図5に示した環状ケース単体の正面図である。
【図7】図6に示した環状ケース単体の中央縦断側面図である。
【図8】図6に示した環状ケース単体の底面図である。
【図9】図4および図5に示した係止部材単体の拡大正面図である。
【図10】図9に示した係止部材単体の側面図である。
【図11】図9に示した係止部材単体の平面図である。
【図12】本発明による負圧式倍力装置の入力と出力の関係を示した線図である。
【図13】本発明による負圧式倍力装置の変形実施形態を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図11に示した負圧式倍力装置は、ハウジング10に組付けられた可動隔壁20とバルブピストン30を備えるとともに、バルブピストン30に組付けられた入力部材40と出力部材50と制御弁60とキー部材71等を備えている。また、この負圧式倍力装置は、入力部材40の先端部に組付けられた先端部材72と、この先端部材72のバルブピストン30に対する前進後退を制御する制御機構80を備えている。
【0017】
ハウジング10は、図1に示したように、内部に圧力室Roを形成する前方シェル11と後方シェル12を備えていて、内部の圧力室Roが可動隔壁20によって負圧導入管13を通して負圧源(例えば、図示省略のエンジンの吸気マニホールド)に常時連通する前方の負圧室R1と、この負圧室R1と大気にそれぞれ連通・遮断する後方の変圧室R2とに区画されている。このハウジング10は、後方シェル12を気密的に貫通する複数本(図1では1本が示されている)のボルト14と、これに螺着されるナット(図示省略)を用いて、車体(図示省略)に固定されるように構成されている。また、ハウジング10の前方には、前方シェル11を気密的に貫通する複数本(図1では1本が示されている)のボルト15と、これに螺着されるナット16を用いて、ブレーキマスタシリンダ100が組付けられている。
【0018】
可動隔壁20は、金属製のプレート21とゴム製のダイアフラム22とから成り、ハウジング10内に前進後退可能に組付けられている。ダイアフラム22は、その外周縁に形成されたビード部にて、後方シェル12の外周縁に設けられた折り返し部と前方シェル11とにより気密的に挟持されている。また、ダイアフラム22は、その内周縁に形成されたビード部にて、バルブピストン30の前方フランジ部外周に設けられた溝に、プレート21とともに気密的に固定されている。
【0019】
図1に示したブレーキマスタシリンダ100は、そのシリンダ本体101の後端部101aが前方シェル11に形成された中心筒部を貫通して負圧室R1内に気密的に突入し、またシリンダ本体101に形成されたフランジ部101bの後面が前方シェル11の前面に当接している。また、ブレーキマスタシリンダ100のピストン102は、シリンダ本体101から後方に突出して負圧室R1内に突入しており、出力部材50の先端によって前方に押動されるように構成されている。
【0020】
バルブピストン30は、ハウジング10内に収容されている前端部にて可動隔壁20に結合された中空状のピストンであって、円筒状に形成された部位にてハウジング10の後方シェル12に気密的かつ前進後退可能に組付けられており、ハウジング10の前方シェル11との間に介装されたスプリング31によって後方に付勢されている。また、バルブピストン30の軸心には、図2に示したように、前端面から後端面に向けて、反力室孔30a、反力室孔30aより小径のケース収納孔30b、プランジャ収納孔(段付孔)30c、プランジャ収納孔30cより大径のプランジャ収容孔30d、制御弁収納孔30e、フィルタ収納孔30f等からなり、前後方向に貫通する軸孔が設けられている。
【0021】
また、バルブピストン30には、ケース収納孔30bに対応して出力部材50の筒部51a後端を前進後退移動可能に収容する環状収容孔30gが同軸的に設けられるとともに、プランジャ収納孔30cに対応してキー部材挿通孔30hが径方向に設けられている。また、プランジャ収納孔30cの外周に、伝達部材収納孔30iが前後方向に沿って設けられている。また、バルブピストン30には、負圧室R1と制御弁収納孔30eを連通可能な二対の連通孔30j(図2および図3参照)が設けられていて、これら各連通孔30jの後端部には制御弁60の負圧制御弁部60aが着座可能な円弧状の負圧弁座30kが形成されている。
【0022】
入力部材40は、バルブピストン30内にて同バルブピストン30に対し前進後退可能に設置されかつ外部からの操作力(入力)を受ける部材であり、バルブピストン30のケース収納孔30bから制御弁収納孔30eに収容されてバルブピストン30に対して軸方向(前後方向)に移動可能なプランジャ41と、このプランジャ41に球状先端部42aにて関節状に連結されて後端部42b(図1参照)にてブレーキペダル(図示省略)に連結される入力ロッド42を備えている。
【0023】
プランジャ41は、図2にて示したように、先端小径部と中間部にてバルブピストン30のプランジャ収納孔(段付孔)30cに軸方向へ摺動可能に組付けられていて、バルブピストン30によってガイド支持されている。また、プランジャ41は、その先端小径部にて、バルブピストン30のケース収納孔30b内に突出していて、先端(前端面)にて、円柱形状に形成された先端部材72を介して、バルブピストン30の反力室孔30aに出力部材50の筒部51aとともに収容された反力部材73に係合可能であり、その後端には制御弁60の大気制御弁部60bに離座可能に着座する環状の大気弁座41aが形成されている。
【0024】
反力部材73は、バルブピストン30内にて入力部材40と出力部材50間に先端部材72および環状ケース81とともに介装されたリアクションゴムディスクであり、その前端面にて出力部材50における後方部材51の後端面に当接し、その後端面にて、バルブピストン30の環状反力受け面30mと先端部材72の前端面に直接当接するとともに、環状ケース81を介してバルブピストン30の前端面(反力受け面)に間接的に当接するようになっていて、出力部材50に作用する力の反力をバルブピストン30と入力部材40(プランジャ41)に分けて伝達可能である。
【0025】
出力部材50は、バルブピストン30の推進力を外部に出力するものであり、反力部材73とともにバルブピストン30の反力室孔30aに軸方向へ移動可能に組付けられた後方部材51と、この後方部材51の先端部に一体的に組付けられた出力ロッド52(図1参照)によって構成されている。なお、後方部材51には、反力部材73を収容する筒部51aが形成されていて、この筒部51aの後端部はバルブピストン30の環状収容孔30g内に収容されている。また、出力ロッド52の先端は、図1に示したように、ブレーキマスタシリンダ100におけるピストン102の係合部に押動可能に当接している。
【0026】
制御弁60は、上記した負圧制御弁部60aと大気制御弁部60bを有する環状の可動部60Aと、バルブピストン30の制御弁収納孔30eに形成された段部に気密的に嵌合固定された環状の固定部60Bと、環状の可動部60Aと環状の固定部60Bを連結する円筒状の伸縮部60Dによって構成されている。環状の可動部60Aは、入力ロッド42に組付けたリテーナ43間に介装したスプリングS1によって前方に向けて付勢されていて、前後方向に移動可能である。環状の固定部60Bは、環状のリテーナ61によってバルブピストン30に固定されていて、入力ロッド42に組付けたリテーナ43間に介装したスプリングS2によって前方に向けて付勢されている。
【0027】
スプリングS2は、バルブピストン30と入力部材40間に介装されて入力部材40をバルブピストン30に対して後方所定位置に向けて後方に付勢するリターンスプリングであり、前端にてリテーナ61を介してバルブピストン30に係合し、後端にてリテーナ43を介して入力部材40の入力ロッド42に係合している。リテーナ61は、バルブピストン30に組付けられていて、バルブピストン30の内孔段部に固定されており、制御弁60の固定部60Bをバルブピストン30に固定する機能をも備えている。リテーナ43は、入力ロッド42に組付けられていて、入力ロッド42の外周段部に固定されている。
【0028】
負圧制御弁部60aは、バルブピストン30に形成された対の円弧状負圧弁座30kに着座・離座可能であり、円弧状負圧弁座30kへの着座によって負圧室R1と変圧室R2の連通を遮断し、円弧状負圧弁座30kからの離座によって負圧室R1と変圧室R2を連通させる。大気制御弁部60bは、プランジャ41に形成された環状の大気弁座41aに着座・離座可能であり、環状の大気弁座41aへの着座によって変圧室R2と大気の連通を遮断し、環状の大気弁座41aからの離座によって変圧室R2と大気を連通させる。
【0029】
キー部材71は、バルブピストン30に対するプランジャ41の軸方向移動(前進後退移動)の限度を規定するとともに、バルブピストン30のハウジング10に対する後退移動の限度(ハウジング10に対する後退限度位置、すなわち、原位置)を規定するためのものであり、プランジャ41とバルブピストン30に対して前進後退可能に組付けられていて、バルブピストン30に形成された径方向のキー部材挿通孔30hに挿通されている。キー部材71の前後方向の肉厚寸法は、キー部材挿通孔30hの前後方向寸法よりも小さくされていて、キー部材71はバルブピストン30に対して所定量だけ前後方向に移動可能である。
【0030】
このキー部材71は、バルブピストン30から径外方に突出した両端部(図3の上下両端部)の後端面にて後方シェル12に当接可能であり、ハウジング10に対するバルブピストン30の後方への移動限界位置(後退限度位置)は、図2に示すように、キー部材挿通孔30hの前方壁がキー部材71の前端面に当接しかつキー部材71の両端部の後端面が後方シェル12に当接した位置である。
【0031】
また、キー部材71は、その中央部にて、プランジャ41の中央部に形成された環状溝の前後両端面41b,41cに当接可能であって、プランジャ41がバルブピストン30に組付けられた後に、バルブピストン30に組付けられている。バルブピストン30に対するプランジャ41の後方への移動限界位置は、環状溝の前端面41bがキー部材71の前端面に当接しかつキー部材71の後端面がキー部材挿通孔30hの後方壁に当接した位置である。また、バルブピストン30に対するプランジャ41の前方への移動限界位置は、環状溝の後端面41cがキー部材71の後端面に当接しかつキー部材71の前端面がキー部材挿通孔30hの前方壁に当接した位置である。
【0032】
先端部材72は、制御機構80の環状ケース81に設けた収容孔81aに前進後退移動可能に収容されていて、プランジャ41と反力部材73間に組付けられており、前端面にて反力部材73と当接可能で、後端面にてプランジャ41の前端面と係合・離脱可能(当接可能)である。この先端部材72は、バルブピストン30に対する前進後退を制御機構80によって制御されるように構成されている。
【0033】
制御機構80は、入力部材40のバルブピストン30に対する前進量が所定値以下の場合(通常のブレーキ操作時)に、先端部材72をプランジャ41と一体的に前進後退移動可能とし、入力部材40のバルブピストン30に対する前進量が所定値より大きい場合(緊急ブレーキ操作時)に、先端部材72をプランジャ41から離脱した状態でバルブピストン30に対して固定可能とするものであって、図2に示したように、環状ケース81、係止部材82、ガータースプリング83、棒状伝達部材84を備えている。
【0034】
環状ケース81は、図1および図2と図4〜図8に示したように、先端部材72を前進後退移動可能に収容する収容孔81aを軸心部に有していて、バルブピストン30の前端部と反力部材73の後端部間に組付けられており、前端面にて反力部材73と当接し後端面にてバルブピストン30に当接している。また、環状ケース81は、環状溝81bと収容溝81cを有するとともに、ストッパ81dと凹部81eを有している。
【0035】
環状溝81bは、環状ケース81の軸方向中間部外周に形成されていて、ガータースプリング83が組付けられるように構成されている。収容溝81cは、環状ケース81の軸方向中間部から後端部に形成されていて、径方向に延びており、係止部材82を径方向に移動可能に収容している。ストッパ81dは、図5に示したように、係止部材82との係合によって係止部材82の環状ケース81に対する径内方への移動量を所定値に規定するものであり、収容溝81cの径内方部分に形成されている。凹部81eは、環状ケース81のバルブピストン30に対する組付位置を規定するためのものであり、環状ケース81の後端部に形成されていて、バルブピストン30に設けた凸部30n(図2参照)とにより位置決め手段を構成している。
【0036】
係止部材82は、図1、図2、図4、図5と図9〜図11に示したように、環状ケース81の収容溝81cに径方向へ移動可能に組付けられていて、径内方端が環状ケース81の収容孔81aに所定量突出可能に構成されており、ガータースプリング83によって径内方に向けて付勢されている。この係止部材82は、入力部材40のバルブピストン30に対する前進量が所定値以下の場合、初期位置(図2に示した径外方位置)にあって先端部材72のバルブピストン30に対する前進後退移動を許容し、入力部材40のバルブピストン30に対する前進量が所定値より大きい場合、初期位置から径内方に所定量移動して環状ケース81の収容孔81a内に突出し、先端部材72のバルブピストン30に対する後退移動を制限するものであり、直線状溝82a、段部82bおよび傾斜面部(カム部)82cを有している。
【0037】
なお、係止部材82が図2示した初期位置にあるとき、係止部材82の径内方端は先端部材72の外周面に摺動可能に当接していて、先端部材72のバルブピストン30に対する前進後退移動を許容している。また、係止部材82が図2示した初期位置から径内方に所定量移動して環状ケース81の収容孔81a内に突出したとき、係止部材82の径内方端は先端部材72の後端部端面72aに係合可能であり、先端部材72のバルブピストン30に対する後退移動を制限(規制)している。なお、上記した先端部材72の後端部端面72aは、先端部材72の後端部外周に環状の段部が形成された場合(図2に示した実施形態の場合)の環状面であり、先端部材72の後端部外周に環状の段部が形成されない場合の後端面である。
【0038】
直線状溝82aは、係止部材82の径外方端部に形成されていて、ガータースプリング83の一部を収容可能である。段部82bは、係止部材82の前端部の径内方端部に形成されていて、環状ケース81に設けたストッパ81dに対して係合・離脱可能である。傾斜面部(カム部)82cは、係止部材82の後端部の径外方部分に形成されていて、図2に示したように、棒状伝達部材84の前端部と摺動可能に係合している。
【0039】
ガータースプリング83は、環状ケース81の軸方向中間部外周に設けた環状溝81bと係止部材82の径外方端部に設けた直線状溝82aに組付けられていて、環状ケース81の外周と係止部材82の径外方端に弾性的に係合しており、係止部材82を環状ケース81の径内方(先端部材72を収容する収容孔81a内)に向けて付勢している。
【0040】
棒状伝達部材84は、図2に示したように、バルブピストン30に形成した伝達部材収納孔30iに前進後退移動可能に組付けられていて、前端部にて係止部材82の傾斜面部(カム部)82cに係合し、後端部にてキー部材71に係合しており(図3参照)、係止部材82の径方向移動に応じて前後方向に移動可能である。このため、棒状伝達部材84は、バルブピストン30が原位置(図2に示した後退限度位置)に復帰するとき、キー部材71によって前方に押されてバルブピストン30に対して前方に移動し、係止部材82をガータースプリング83の付勢力に抗して初期位置(図2に示した径外方位置)に復帰させることが可能である。
【0041】
フィルタ91は、バルブピストン30のフィルタ収納孔30f内にて入力ロッド42間に装着されている。このフィルタ91にはバルブピストン30の摺動部を外周から保護するブーツ92に形成された複数個の通気孔92aを通して大気が流入可能である。ブーツ92は、前端部にてハウジング10における後方シェル12の後端筒部に嵌合固定され、後端部にて入力ロッド42の中間部外周に嵌合固定されている。
【0042】
上記のように構成したこの実施形態の負圧式倍力装置においては、通常ブレーキ操作時、入力部材40の前方移動に対するバルブピストン30の前方移動の応答遅れ(すなわち、入力部材40の前方移動に伴って、変圧室R2が負圧室R1との連通を遮断されて大気に連通し、変圧室R2に流入する大気によってバルブピストン30が前方に移動する際の作動遅れ)が少なくて、入力部材40とバルブピストン30との相対移動量(バルブピストン30に対する入力部材40の前進量)が所定値以下である。このため、先端部材72の後端部端面72aは係止部材82の前端部より前方に移動せず、係止部材82は、先端部材72によって径内方への移動を規制されていて、先端部材72のバルブピストン30に対する前進後退移動を許容する。このため、先端部材72は入力部材40のプランジャ41と一体的に移動し、反力部材73から先端部材72に伝達される反力は先端部材72から入力部材40のプランジャ41に伝達される。
【0043】
一方、運転者が慌ててブレーキペダルを踏み込む緊急ブレーキ操作時には、入力部材40の前方移動に対するバルブピストン30の前方移動の応答遅れが多くて、入力部材40とバルブピストン30との相対移動量(バルブピストン30に対する入力部材40の前進量)が所定値より大きくなる。このため、先端部材72の後端部端面72aは係止部材82の前端部より前方に移動し、係止部材82は先端部材72による径内方への移動規制を解除される。したがって、ガータースプリング83のばね力により径内方に付勢されている係止部材82が、初期位置から径内方に移動して環状ケース81の収容孔81a内に突出し、先端部材72のバルブピストン30に対する後退移動を制限する。このため、先端部材72は係止部材82を介してバルブピストン30と一体となり、反力部材73から先端部材72に伝達される反力は先端部材72から係止部材82を介してバルブピストン30に伝達される。
【0044】
この結果、緊急ブレーキ操作時に反力部材73から入力部材40のプランジャ41に伝達される反力が、通常ブレーキ操作時に比して、先端部材72の受圧面積相当分だけ小さくなり、緊急ブレーキ操作時における倍力比(出力/入力)が通常ブレーキ操作時における倍力比に比して大きくなる。このため、緊急ブレーキ操作時のブレーキペダル踏力の不足を補うことができて、緊急ブレーキ操作時におけるブレーキの効きを通常ブレーキ操作時におけるブレーキの効きに比して向上させることが可能である。なお、図12は、この実施形態の負圧式倍力装置において得られる特性線図であり、点a,bを経て点cに向けて上昇する特性線A1は、通常ブレーキ操作時のものであり、点a,dを経て点cに向けて上昇する特性線A2は、緊急ブレーキ操作時のものであってフルサーボ性能が得られる。
【0045】
なお、上記した緊急ブレーキ操作後のブレーキ解除時には、バルブピストン30が図2に示した原位置に復帰するとき、キー部材71がハウジング10と当接して後方への移動を規制され、棒状伝達部材84を介して係止部材82をガータースプリング83のばね力に抗して初期位置(図2に示した径外方位置)に復帰させる。このため、係止部材82による先端部材72のバルブピストン30に対する後退移動制限が解除されて、先端部材72が図2に示した状態に復帰し、次のブレーキ動作に備えることになる。
【0046】
ところで、この実施形態の負圧式倍力装置においては、制御機構80の構成部材である環状ケース81、係止部材82、ガータースプリング83、棒状伝達部材84等がバルブピストン30に組付けられる前に、環状ケース81に係止部材82とガータースプリング83を予め組付けて、図4および図5に示したように、これらを一体化(サブアセンブリ化)することが可能である。このため、入力部材40とキー部材71を組付けた状態のバルブピストン30に対して、棒状伝達部材84を前方から組付けるとともに、一体化された環状ケース81と係止部材82とガータースプリング83を前方から組付けることで、制御機構80の構成部材をバルブピストン30に容易に組付けることができて、制御機構80のバルブピストン30への組付性を改善することが可能である。なお、入力部材40とキー部材71を組付けた状態のバルブピストン30に対して制御機構80の構成部材を組付ける際に、バルブピストン30の前方が上方となるようにバルブピストン30を設置すれば、上述した前方からの組付方向が上方からの組付方向となる。
【0047】
また、この負圧式倍力装置においては、環状ケース81(バルブピストン30に比して小さい部品)に、先端部材72を前進後退移動可能に収容する収容孔81aが設けられている。このため、車両の要求仕様に応じて、外径の異なる複数種類の先端部材72を製作するのに併せて、先端部材72を前進後退移動可能に収容する収容孔81aの内径が異なる複数種類の環状ケース81を製作すればよくて、バルブピストン30は一種類で製作すればよく、当該負圧式倍力装置の生産面を改善することが可能である。
【0048】
また、この実施形態においては、バルブピストン30と環状ケース81に、環状ケース81のバルブピストン30に対する周方向の位置を規定するための位置決め手段(環状ケース81の凹部81eとバルブピストン30の凸部30n)が設けられている。このため、一体化された環状ケース81と係止部材82とガータースプリング83等のバルブピストン30への誤組付を防止することが可能であり、バルブピストン30に組付けられる棒状伝達部材84に対して、係止部材82を的確に係合させることが可能である。さらに、負圧式倍力装置の作動中にバルブピストン30と環状ケース81の間の周方向の相対移動を規制し、係止部材82を径方向に移動可能に保持する環状ケース81と棒状伝達部材84との摩擦や干渉を防止して棒状伝達部材84の前後移動を円滑にすることで、棒状伝達部材84による係止部材82の初期位置への復帰を円滑にする。
【0049】
また、この実施形態においては、環状ケース81に、係止部材82との係合によって係止部材82の環状ケース81に対する径内方への移動量を所定値に規定するストッパ81dが設けられている。このため、環状ケース81、係止部材82およびガータースプリング83が一体化された際に、係止部材82がガータースプリング83によって径内方に押されてストッパ81dと弾性的に係合し、環状ケース81とガータースプリング83によって係止部材82が弾性的に保持される。したがって、環状ケース81と係止部材82とガータースプリング83を一体化した後に、係止部材82が環状ケース81から脱落することを抑制することができて、一体化された部品の搬送性を良好とすることが可能である。
【0050】
上記した実施形態においては、反力部材73からの反力を入力部材40またはバルブピストン30に伝達可能な先端部材72を円柱形状に形成して実施したが、図13に示した変形実施形態のように、反力部材73からの反力を入力部材40またはバルブピストン30に伝達可能な先端部材172を円筒形状(プランジャ41の前端小径部41dが軸方向に摺動可能に貫通する円筒形状)に形成して実施することも可能である。
【0051】
図13に示した変形実施形態においては、緊急ブレーキ操作時において、先端部材172の後端部端面172aが係止部材82の前端部より前方に移動すると、係止部材82がガータースプリング83のばね力により径内方に押されて初期位置から径内方に移動し環状ケース81の収容孔81a内に突出する。このため、先端部材172が、係止部材82によってバルブピストン30に対する後退移動を制限されて、係止部材82を介してバルブピストン30と一体となる。このとき、反力部材73からの反力は、先端部材172と係止部材82を介してバルブピストン30に伝達されるとともに、プランジャ41の先端部(入力部材40)に伝達されて、図12の点a,eを経て点cに向けて上昇する特性線A3(図12の仮想線参照)が得られる。
【0052】
また、上記した実施形態においては、一個の係止部材82を用いて本発明を実施したが、この係止部材の個数は適宜増加可能であり、2個以上の係止部材を用いて本発明を実施することも可能である。また、上記した実施形態においては、環状ケース81に組付けられて係止部材82を環状ケース81の径内方に向けて付勢するスプリングとしてガータースプリング83を用いて本発明を実施したが、このガータースプリング83に代えて同等の機能を有するスプリングを採用して本発明を実施することも可能である。また、上記した実施形態においては、シングル型の負圧式倍力装置に本発明を実施したが、本発明はタンデム型やトリプル型の負圧式倍力装置にも同様に実施可能であることは勿論のこと、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0053】
10…ハウジング、20…可動隔壁、30…バルブピストン、30b…ケース収納孔、30i…伝達部材収納孔、30k…負圧弁座、30n…凸部、40…入力部材、41…プランジャ、41a…大気弁座、50…出力部材、60…制御弁、60a…負圧制御弁部、60b…大気制御弁部、71…キー部材、72…先端部材、73…反力部材、80…制御機構、81…環状ケース、81a…収容孔、81b…環状溝、81c…収容溝、81d…ストッパ、81e凹部、82…係止部材、82a…直線状溝、82b…段部、82c…傾斜面部(カム部)83…ガータースプリング、84…棒状伝達部材、Ro…圧力室、R1…負圧室、R2…変圧室
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ブレーキ装置に採用される負圧式倍力装置に関し、特に、運転者が慌ててブレーキペダルを踏み込んだ時のような緊急ブレーキ操作時におけるブレーキペダル踏力(操作力)の不足を補うことができるように構成した負圧式倍力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の負圧式倍力装置の一つとして、内部に圧力室を形成するハウジングと、このハウジング内に前進後退可能に組付けられて前記圧力室を前方の負圧室と後方の変圧室とに区画する可動隔壁と、前記ハウジングに前進後退可能に組付けられて前記ハウジング内に収容されている前端部にて前記可動隔壁に結合されたバルブピストンと、このバルブピストン内にて同バルブピストンに対し前進後退可能に設置されかつ外部からの操作力を受ける入力部材と、前記バルブピストンの前端部に組付けられて前記バルブピストンの推進力を外部に出力する出力部材と、前記バルブピストン内にて前記入力部材と前記出力部材間に介装されて前記出力部材に作用する力の反力を前記バルブピストンと前記入力部材に分けて伝達する反力部材とを備えるとともに、前記入力部材に設けた大気弁座とにより前記変圧室と大気との連通・遮断を制御する大気制御弁部と前記バルブピストンに設けた負圧弁座とにより前記変圧室と前記負圧室との連通・遮断を制御する負圧制御弁部を有して前記バルブピストン内に組付けられた制御弁を備え、さらに、
前記入力部材と前記バルブピストンに対して前進後退可能に組付けられて前記入力部材の前記バルブピストンに対する前進後退移動の限度を規定するとともに前記バルブピストンの前記ハウジングに対する後退移動の限度を規定するキー部材と、前記入力部材の先端部と前記反力部材の後端部間に前進後退可能に配置されて前端面にて前記反力部材と当接可能で後端面にて前記入力部材に係合・離脱可能な先端部材と、前記入力部材の前記バルブピストンに対する前進量が所定値以下の場合には、前記先端部材を前記入力部材と一体的に前進後退移動可能とし、前記入力部材の前記バルブピストンに対する前進量が所定値より大きい場合には、前記先端部材を前記入力部材から離脱した状態で前記バルブピストンに対して固定可能とする制御機構を備えている負圧式倍力装置があり、例えば下記特許文献1に記載されている。なお、後方とは、負圧式倍力装置に対してブレーキペダル側あるいは車両後方側を意味し、前方とは、負圧式倍力装置に対してブレーキマスタシリンダ側あるいは車両前方側を意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−132216号公報
【0004】
上記した特許文献1に記載されている負圧式倍力装置では、前記制御機構が、前記バルブピストンに径方向にて移動可能に組付けられてスプリングによって径内方に向けて付勢され、前記入力部材の前記バルブピストンに対する前進量が所定値以下の場合には、初期位置(径外方位置)にあって前記先端部材の前記バルブピストンに対する前進後退移動を許容し、前記入力部材の前記バルブピストンに対する前進量が所定値より大きい場合には、初期位置から径内方に移動して前記先端部材の前記バルブピストンに対する後退移動を制限する係止部材と、前記バルブピストンに前進後退移動可能に組付けられていて前記係止部材に係合しており前記係止部材の径方向移動に応じて前後方向に移動する伝達部材と、前記キー部材とは別個に構成されて前記入力部材と前記バルブピストンに対して前進後退移動可能に組付けられており前記バルブピストンが原位置(ハウジングに対する後退限度位置)に復帰するとき前記伝達部材を介して前記係止部材を初期位置に復帰させる解除部材を備えている。
【発明の概要】
【0005】
ところで、上記した特許文献1に記載されている負圧式倍力装置では、制御機構の構成部材である係止部材、スプリング、伝達部材、解除部材等がそれぞれバルブピストンに直接組付けられるように構成されている。しかも、係止部材と解除部材がバルブピストンの前進後退移動方向(軸方向)に対して直交する径方向に組付けられ、スプリングがバルブピストンの外周に組付けられ、伝達部材がバルブピストンの前進後退移動方向(軸方向)に沿って組付けられている。このため、上記した特許文献1に記載されている負圧式倍力装置では、制御機構の構成部材をバルブピストンに組付ける際に、バルブピストンに対して多方向からの組付作業が必要であり、組付性に改善の余地がある。
【0006】
また、上記した特許文献1に記載されている負圧式倍力装置では、入力部材に反力を伝達するための先端部材がバルブピストンに設けた収容孔に前進後退移動可能に組付けられている。このため、車両の要求仕様に応じて、外径の異なる複数種類の先端部材を製作するのに併せて、先端部材を前進後退移動可能に収容する収容孔の内径が異なる複数種類のバルブピストンを製作する必要がある。ところで、バルブピストンは先端部材に比して大きい部品であって、かかるバルブピストンを複数種類製作しなければならない従来の負圧式倍力装置は生産面で改善の余地がある。
【0007】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、前記制御機構が、前記先端部材を前進後退移動可能に収容する収容孔を有して、前記バルブピストンの前端部と前記反力部材の後端部間に組付けられており、前端面にて前記反力部材と当接し後端面にて前記バルブピストンに当接する環状ケースと、この環状ケースに径方向にて移動可能に組付けられてスプリングによって径内方に向けて付勢され、前記入力部材の前記バルブピストンに対する前進量が所定値以下の場合には、初期位置にあって前記先端部材の前記バルブピストンに対する前進後退移動を許容し、前記入力部材の前記バルブピストンに対する前進量が所定値より大きい場合には、初期位置から径内方に移動して前記先端部材の前記バルブピストンに対する後退移動を制限する係止部材と、前記バルブピストンに前進後退移動可能に組付けられていて、前端部にて前記係止部材に係合し後端部にて前記キー部材に係合しており、前記係止部材の径方向移動に応じて前後方向に移動可能で、前記バルブピストンが原位置に復帰するとき前記係止部材を前記スプリングの付勢力に抗して初期位置に復帰させる棒状伝達部材とを備えていることに特徴がある。
【0008】
この負圧式倍力装置においては、通常ブレーキ操作時、入力部材のバルブピストンに対する前進量が所定値以下であり、係止部材が初期位置にあって先端部材のバルブピストンに対する前進後退移動を許容する。このため、先端部材は入力部材と一体的に移動し、反力部材から先端部材に伝達される反力は入力部材に伝達される。
【0009】
また、緊急ブレーキ操作時、入力部材のバルブピストンに対する前進量が所定値より大きくて、係止部材が初期位置から径内方に移動して先端部材のバルブピストンに対する後退移動を制限する。このため、先端部材は係止部材を介してバルブピストンと一体となり、反力部材から先端部材に伝達される反力は先端部材から係止部材を介してバルブピストンに伝達される。
【0010】
この結果、緊急ブレーキ操作時に反力部材から入力部材に伝達される反力が、通常ブレーキ操作時に比して、小さくなり、緊急ブレーキ操作時における倍力比(出力/入力)が通常ブレーキ操作時における倍力比に比して大きくなる。このため、緊急ブレーキ操作時のブレーキペダル踏力の不足を補うことができて、緊急ブレーキ操作時におけるブレーキの効きを、通常ブレーキ操作時におけるブレーキの効きに比して、向上させることが可能である。
【0011】
ところで、この負圧式倍力装置においては、制御機構の構成部材である環状ケース、係止部材、スプリング、棒状伝達部材等がバルブピストンに組付けられる前に、環状ケースに係止部材とスプリングを予め組付けて、これらを一体化(サブアセンブリ化)することが可能である。このため、入力部材とキー部材を組付けた状態のバルブピストンに対して、棒状伝達部材を前方から組付けるとともに、一体化された環状ケースと係止部材とスプリングを前方から組付けることで、制御機構の構成部材をバルブピストンに容易に組付けることができて、制御機構のバルブピストンへの組付性を改善することが可能である。なお、入力部材とキー部材を組付けた状態のバルブピストンに対して制御機構の構成部材を組付ける際に、バルブピストンの前方が上方となるようにバルブピストンを設置すれば、上述した前方からの組付方向が上方からの組付方向となる。
【0012】
また、この負圧式倍力装置においては、環状ケース(バルブピストンに比して小さい部品)に、先端部材を前進後退移動可能に収容する収容孔が設けられている。このため、車両の要求仕様に応じて、外径の異なる複数種類の先端部材を製作するのに併せて、先端部材を前進後退移動可能に収容する収容孔の内径が異なる複数種類の環状ケースを製作すればよくて、バルブピストンは一種類で製作すればよく、当該負圧式倍力装置の生産面を改善することが可能である。
【0013】
また、本発明の実施に際して、前記バルブピストンと前記環状ケースには、前記環状ケースの前記バルブピストンに対する周方向の位置を規定するための位置決め手段(凸部と凹部)が設けられていることも可能である。この場合には、一体化された環状ケースと係止部材とスプリング等のバルブピストンへの誤組付を防止することが可能であり、バルブピストンに組付けられる棒状伝達部材に対して、係止部材を的確に係合させることが可能である。さらに、負圧式倍力装置の作動中にバルブピストンと環状ケースの間の周方向の相対移動を規制し、係止部材を径方向に移動可能に保持する環状ケースと棒状伝達部材との摩擦や干渉を防止して棒状伝達部材の前後移動を円滑にすることで、棒状伝達部材による係止部材の初期位置への復帰を円滑にする。
【0014】
また、本発明の実施に際して、前記環状ケースには、前記係止部材との係合によって前記係止部材の前記環状ケースに対する径内方への移動量を所定値に規定するストッパが設けられていることも可能である。この場合には、環状ケース、係止部材およびスプリングが一体化された際に、係止部材がスプリングによって径内方に押されてストッパと弾性的に係合し、環状ケースとスプリングによって係止部材が弾性的に保持される。したがって、環状ケースと係止部材とスプリングを一体化した後に、係止部材が環状ケースから脱落することを抑制することができて、一体化された部品の搬送性を良好とすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による負圧式倍力装置の一実施形態を示す断面図である。
【図2】図3の2−2線に沿った断面を展開して示すとともにバルブピストンと制御機構の関係を示した図1の要部拡大断面図である。
【図3】図2の3−3線に沿った断面図(ハウジングの断面は省略)である。
【図4】図1および図2に示した環状ケース、係止部材、スプリングが一体化された状態の拡大正面図である。
【図5】図4に示した環状ケース、係止部材、スプリングの中央縦断側面図である。
【図6】図4および図5に示した環状ケース単体の正面図である。
【図7】図6に示した環状ケース単体の中央縦断側面図である。
【図8】図6に示した環状ケース単体の底面図である。
【図9】図4および図5に示した係止部材単体の拡大正面図である。
【図10】図9に示した係止部材単体の側面図である。
【図11】図9に示した係止部材単体の平面図である。
【図12】本発明による負圧式倍力装置の入力と出力の関係を示した線図である。
【図13】本発明による負圧式倍力装置の変形実施形態を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図11に示した負圧式倍力装置は、ハウジング10に組付けられた可動隔壁20とバルブピストン30を備えるとともに、バルブピストン30に組付けられた入力部材40と出力部材50と制御弁60とキー部材71等を備えている。また、この負圧式倍力装置は、入力部材40の先端部に組付けられた先端部材72と、この先端部材72のバルブピストン30に対する前進後退を制御する制御機構80を備えている。
【0017】
ハウジング10は、図1に示したように、内部に圧力室Roを形成する前方シェル11と後方シェル12を備えていて、内部の圧力室Roが可動隔壁20によって負圧導入管13を通して負圧源(例えば、図示省略のエンジンの吸気マニホールド)に常時連通する前方の負圧室R1と、この負圧室R1と大気にそれぞれ連通・遮断する後方の変圧室R2とに区画されている。このハウジング10は、後方シェル12を気密的に貫通する複数本(図1では1本が示されている)のボルト14と、これに螺着されるナット(図示省略)を用いて、車体(図示省略)に固定されるように構成されている。また、ハウジング10の前方には、前方シェル11を気密的に貫通する複数本(図1では1本が示されている)のボルト15と、これに螺着されるナット16を用いて、ブレーキマスタシリンダ100が組付けられている。
【0018】
可動隔壁20は、金属製のプレート21とゴム製のダイアフラム22とから成り、ハウジング10内に前進後退可能に組付けられている。ダイアフラム22は、その外周縁に形成されたビード部にて、後方シェル12の外周縁に設けられた折り返し部と前方シェル11とにより気密的に挟持されている。また、ダイアフラム22は、その内周縁に形成されたビード部にて、バルブピストン30の前方フランジ部外周に設けられた溝に、プレート21とともに気密的に固定されている。
【0019】
図1に示したブレーキマスタシリンダ100は、そのシリンダ本体101の後端部101aが前方シェル11に形成された中心筒部を貫通して負圧室R1内に気密的に突入し、またシリンダ本体101に形成されたフランジ部101bの後面が前方シェル11の前面に当接している。また、ブレーキマスタシリンダ100のピストン102は、シリンダ本体101から後方に突出して負圧室R1内に突入しており、出力部材50の先端によって前方に押動されるように構成されている。
【0020】
バルブピストン30は、ハウジング10内に収容されている前端部にて可動隔壁20に結合された中空状のピストンであって、円筒状に形成された部位にてハウジング10の後方シェル12に気密的かつ前進後退可能に組付けられており、ハウジング10の前方シェル11との間に介装されたスプリング31によって後方に付勢されている。また、バルブピストン30の軸心には、図2に示したように、前端面から後端面に向けて、反力室孔30a、反力室孔30aより小径のケース収納孔30b、プランジャ収納孔(段付孔)30c、プランジャ収納孔30cより大径のプランジャ収容孔30d、制御弁収納孔30e、フィルタ収納孔30f等からなり、前後方向に貫通する軸孔が設けられている。
【0021】
また、バルブピストン30には、ケース収納孔30bに対応して出力部材50の筒部51a後端を前進後退移動可能に収容する環状収容孔30gが同軸的に設けられるとともに、プランジャ収納孔30cに対応してキー部材挿通孔30hが径方向に設けられている。また、プランジャ収納孔30cの外周に、伝達部材収納孔30iが前後方向に沿って設けられている。また、バルブピストン30には、負圧室R1と制御弁収納孔30eを連通可能な二対の連通孔30j(図2および図3参照)が設けられていて、これら各連通孔30jの後端部には制御弁60の負圧制御弁部60aが着座可能な円弧状の負圧弁座30kが形成されている。
【0022】
入力部材40は、バルブピストン30内にて同バルブピストン30に対し前進後退可能に設置されかつ外部からの操作力(入力)を受ける部材であり、バルブピストン30のケース収納孔30bから制御弁収納孔30eに収容されてバルブピストン30に対して軸方向(前後方向)に移動可能なプランジャ41と、このプランジャ41に球状先端部42aにて関節状に連結されて後端部42b(図1参照)にてブレーキペダル(図示省略)に連結される入力ロッド42を備えている。
【0023】
プランジャ41は、図2にて示したように、先端小径部と中間部にてバルブピストン30のプランジャ収納孔(段付孔)30cに軸方向へ摺動可能に組付けられていて、バルブピストン30によってガイド支持されている。また、プランジャ41は、その先端小径部にて、バルブピストン30のケース収納孔30b内に突出していて、先端(前端面)にて、円柱形状に形成された先端部材72を介して、バルブピストン30の反力室孔30aに出力部材50の筒部51aとともに収容された反力部材73に係合可能であり、その後端には制御弁60の大気制御弁部60bに離座可能に着座する環状の大気弁座41aが形成されている。
【0024】
反力部材73は、バルブピストン30内にて入力部材40と出力部材50間に先端部材72および環状ケース81とともに介装されたリアクションゴムディスクであり、その前端面にて出力部材50における後方部材51の後端面に当接し、その後端面にて、バルブピストン30の環状反力受け面30mと先端部材72の前端面に直接当接するとともに、環状ケース81を介してバルブピストン30の前端面(反力受け面)に間接的に当接するようになっていて、出力部材50に作用する力の反力をバルブピストン30と入力部材40(プランジャ41)に分けて伝達可能である。
【0025】
出力部材50は、バルブピストン30の推進力を外部に出力するものであり、反力部材73とともにバルブピストン30の反力室孔30aに軸方向へ移動可能に組付けられた後方部材51と、この後方部材51の先端部に一体的に組付けられた出力ロッド52(図1参照)によって構成されている。なお、後方部材51には、反力部材73を収容する筒部51aが形成されていて、この筒部51aの後端部はバルブピストン30の環状収容孔30g内に収容されている。また、出力ロッド52の先端は、図1に示したように、ブレーキマスタシリンダ100におけるピストン102の係合部に押動可能に当接している。
【0026】
制御弁60は、上記した負圧制御弁部60aと大気制御弁部60bを有する環状の可動部60Aと、バルブピストン30の制御弁収納孔30eに形成された段部に気密的に嵌合固定された環状の固定部60Bと、環状の可動部60Aと環状の固定部60Bを連結する円筒状の伸縮部60Dによって構成されている。環状の可動部60Aは、入力ロッド42に組付けたリテーナ43間に介装したスプリングS1によって前方に向けて付勢されていて、前後方向に移動可能である。環状の固定部60Bは、環状のリテーナ61によってバルブピストン30に固定されていて、入力ロッド42に組付けたリテーナ43間に介装したスプリングS2によって前方に向けて付勢されている。
【0027】
スプリングS2は、バルブピストン30と入力部材40間に介装されて入力部材40をバルブピストン30に対して後方所定位置に向けて後方に付勢するリターンスプリングであり、前端にてリテーナ61を介してバルブピストン30に係合し、後端にてリテーナ43を介して入力部材40の入力ロッド42に係合している。リテーナ61は、バルブピストン30に組付けられていて、バルブピストン30の内孔段部に固定されており、制御弁60の固定部60Bをバルブピストン30に固定する機能をも備えている。リテーナ43は、入力ロッド42に組付けられていて、入力ロッド42の外周段部に固定されている。
【0028】
負圧制御弁部60aは、バルブピストン30に形成された対の円弧状負圧弁座30kに着座・離座可能であり、円弧状負圧弁座30kへの着座によって負圧室R1と変圧室R2の連通を遮断し、円弧状負圧弁座30kからの離座によって負圧室R1と変圧室R2を連通させる。大気制御弁部60bは、プランジャ41に形成された環状の大気弁座41aに着座・離座可能であり、環状の大気弁座41aへの着座によって変圧室R2と大気の連通を遮断し、環状の大気弁座41aからの離座によって変圧室R2と大気を連通させる。
【0029】
キー部材71は、バルブピストン30に対するプランジャ41の軸方向移動(前進後退移動)の限度を規定するとともに、バルブピストン30のハウジング10に対する後退移動の限度(ハウジング10に対する後退限度位置、すなわち、原位置)を規定するためのものであり、プランジャ41とバルブピストン30に対して前進後退可能に組付けられていて、バルブピストン30に形成された径方向のキー部材挿通孔30hに挿通されている。キー部材71の前後方向の肉厚寸法は、キー部材挿通孔30hの前後方向寸法よりも小さくされていて、キー部材71はバルブピストン30に対して所定量だけ前後方向に移動可能である。
【0030】
このキー部材71は、バルブピストン30から径外方に突出した両端部(図3の上下両端部)の後端面にて後方シェル12に当接可能であり、ハウジング10に対するバルブピストン30の後方への移動限界位置(後退限度位置)は、図2に示すように、キー部材挿通孔30hの前方壁がキー部材71の前端面に当接しかつキー部材71の両端部の後端面が後方シェル12に当接した位置である。
【0031】
また、キー部材71は、その中央部にて、プランジャ41の中央部に形成された環状溝の前後両端面41b,41cに当接可能であって、プランジャ41がバルブピストン30に組付けられた後に、バルブピストン30に組付けられている。バルブピストン30に対するプランジャ41の後方への移動限界位置は、環状溝の前端面41bがキー部材71の前端面に当接しかつキー部材71の後端面がキー部材挿通孔30hの後方壁に当接した位置である。また、バルブピストン30に対するプランジャ41の前方への移動限界位置は、環状溝の後端面41cがキー部材71の後端面に当接しかつキー部材71の前端面がキー部材挿通孔30hの前方壁に当接した位置である。
【0032】
先端部材72は、制御機構80の環状ケース81に設けた収容孔81aに前進後退移動可能に収容されていて、プランジャ41と反力部材73間に組付けられており、前端面にて反力部材73と当接可能で、後端面にてプランジャ41の前端面と係合・離脱可能(当接可能)である。この先端部材72は、バルブピストン30に対する前進後退を制御機構80によって制御されるように構成されている。
【0033】
制御機構80は、入力部材40のバルブピストン30に対する前進量が所定値以下の場合(通常のブレーキ操作時)に、先端部材72をプランジャ41と一体的に前進後退移動可能とし、入力部材40のバルブピストン30に対する前進量が所定値より大きい場合(緊急ブレーキ操作時)に、先端部材72をプランジャ41から離脱した状態でバルブピストン30に対して固定可能とするものであって、図2に示したように、環状ケース81、係止部材82、ガータースプリング83、棒状伝達部材84を備えている。
【0034】
環状ケース81は、図1および図2と図4〜図8に示したように、先端部材72を前進後退移動可能に収容する収容孔81aを軸心部に有していて、バルブピストン30の前端部と反力部材73の後端部間に組付けられており、前端面にて反力部材73と当接し後端面にてバルブピストン30に当接している。また、環状ケース81は、環状溝81bと収容溝81cを有するとともに、ストッパ81dと凹部81eを有している。
【0035】
環状溝81bは、環状ケース81の軸方向中間部外周に形成されていて、ガータースプリング83が組付けられるように構成されている。収容溝81cは、環状ケース81の軸方向中間部から後端部に形成されていて、径方向に延びており、係止部材82を径方向に移動可能に収容している。ストッパ81dは、図5に示したように、係止部材82との係合によって係止部材82の環状ケース81に対する径内方への移動量を所定値に規定するものであり、収容溝81cの径内方部分に形成されている。凹部81eは、環状ケース81のバルブピストン30に対する組付位置を規定するためのものであり、環状ケース81の後端部に形成されていて、バルブピストン30に設けた凸部30n(図2参照)とにより位置決め手段を構成している。
【0036】
係止部材82は、図1、図2、図4、図5と図9〜図11に示したように、環状ケース81の収容溝81cに径方向へ移動可能に組付けられていて、径内方端が環状ケース81の収容孔81aに所定量突出可能に構成されており、ガータースプリング83によって径内方に向けて付勢されている。この係止部材82は、入力部材40のバルブピストン30に対する前進量が所定値以下の場合、初期位置(図2に示した径外方位置)にあって先端部材72のバルブピストン30に対する前進後退移動を許容し、入力部材40のバルブピストン30に対する前進量が所定値より大きい場合、初期位置から径内方に所定量移動して環状ケース81の収容孔81a内に突出し、先端部材72のバルブピストン30に対する後退移動を制限するものであり、直線状溝82a、段部82bおよび傾斜面部(カム部)82cを有している。
【0037】
なお、係止部材82が図2示した初期位置にあるとき、係止部材82の径内方端は先端部材72の外周面に摺動可能に当接していて、先端部材72のバルブピストン30に対する前進後退移動を許容している。また、係止部材82が図2示した初期位置から径内方に所定量移動して環状ケース81の収容孔81a内に突出したとき、係止部材82の径内方端は先端部材72の後端部端面72aに係合可能であり、先端部材72のバルブピストン30に対する後退移動を制限(規制)している。なお、上記した先端部材72の後端部端面72aは、先端部材72の後端部外周に環状の段部が形成された場合(図2に示した実施形態の場合)の環状面であり、先端部材72の後端部外周に環状の段部が形成されない場合の後端面である。
【0038】
直線状溝82aは、係止部材82の径外方端部に形成されていて、ガータースプリング83の一部を収容可能である。段部82bは、係止部材82の前端部の径内方端部に形成されていて、環状ケース81に設けたストッパ81dに対して係合・離脱可能である。傾斜面部(カム部)82cは、係止部材82の後端部の径外方部分に形成されていて、図2に示したように、棒状伝達部材84の前端部と摺動可能に係合している。
【0039】
ガータースプリング83は、環状ケース81の軸方向中間部外周に設けた環状溝81bと係止部材82の径外方端部に設けた直線状溝82aに組付けられていて、環状ケース81の外周と係止部材82の径外方端に弾性的に係合しており、係止部材82を環状ケース81の径内方(先端部材72を収容する収容孔81a内)に向けて付勢している。
【0040】
棒状伝達部材84は、図2に示したように、バルブピストン30に形成した伝達部材収納孔30iに前進後退移動可能に組付けられていて、前端部にて係止部材82の傾斜面部(カム部)82cに係合し、後端部にてキー部材71に係合しており(図3参照)、係止部材82の径方向移動に応じて前後方向に移動可能である。このため、棒状伝達部材84は、バルブピストン30が原位置(図2に示した後退限度位置)に復帰するとき、キー部材71によって前方に押されてバルブピストン30に対して前方に移動し、係止部材82をガータースプリング83の付勢力に抗して初期位置(図2に示した径外方位置)に復帰させることが可能である。
【0041】
フィルタ91は、バルブピストン30のフィルタ収納孔30f内にて入力ロッド42間に装着されている。このフィルタ91にはバルブピストン30の摺動部を外周から保護するブーツ92に形成された複数個の通気孔92aを通して大気が流入可能である。ブーツ92は、前端部にてハウジング10における後方シェル12の後端筒部に嵌合固定され、後端部にて入力ロッド42の中間部外周に嵌合固定されている。
【0042】
上記のように構成したこの実施形態の負圧式倍力装置においては、通常ブレーキ操作時、入力部材40の前方移動に対するバルブピストン30の前方移動の応答遅れ(すなわち、入力部材40の前方移動に伴って、変圧室R2が負圧室R1との連通を遮断されて大気に連通し、変圧室R2に流入する大気によってバルブピストン30が前方に移動する際の作動遅れ)が少なくて、入力部材40とバルブピストン30との相対移動量(バルブピストン30に対する入力部材40の前進量)が所定値以下である。このため、先端部材72の後端部端面72aは係止部材82の前端部より前方に移動せず、係止部材82は、先端部材72によって径内方への移動を規制されていて、先端部材72のバルブピストン30に対する前進後退移動を許容する。このため、先端部材72は入力部材40のプランジャ41と一体的に移動し、反力部材73から先端部材72に伝達される反力は先端部材72から入力部材40のプランジャ41に伝達される。
【0043】
一方、運転者が慌ててブレーキペダルを踏み込む緊急ブレーキ操作時には、入力部材40の前方移動に対するバルブピストン30の前方移動の応答遅れが多くて、入力部材40とバルブピストン30との相対移動量(バルブピストン30に対する入力部材40の前進量)が所定値より大きくなる。このため、先端部材72の後端部端面72aは係止部材82の前端部より前方に移動し、係止部材82は先端部材72による径内方への移動規制を解除される。したがって、ガータースプリング83のばね力により径内方に付勢されている係止部材82が、初期位置から径内方に移動して環状ケース81の収容孔81a内に突出し、先端部材72のバルブピストン30に対する後退移動を制限する。このため、先端部材72は係止部材82を介してバルブピストン30と一体となり、反力部材73から先端部材72に伝達される反力は先端部材72から係止部材82を介してバルブピストン30に伝達される。
【0044】
この結果、緊急ブレーキ操作時に反力部材73から入力部材40のプランジャ41に伝達される反力が、通常ブレーキ操作時に比して、先端部材72の受圧面積相当分だけ小さくなり、緊急ブレーキ操作時における倍力比(出力/入力)が通常ブレーキ操作時における倍力比に比して大きくなる。このため、緊急ブレーキ操作時のブレーキペダル踏力の不足を補うことができて、緊急ブレーキ操作時におけるブレーキの効きを通常ブレーキ操作時におけるブレーキの効きに比して向上させることが可能である。なお、図12は、この実施形態の負圧式倍力装置において得られる特性線図であり、点a,bを経て点cに向けて上昇する特性線A1は、通常ブレーキ操作時のものであり、点a,dを経て点cに向けて上昇する特性線A2は、緊急ブレーキ操作時のものであってフルサーボ性能が得られる。
【0045】
なお、上記した緊急ブレーキ操作後のブレーキ解除時には、バルブピストン30が図2に示した原位置に復帰するとき、キー部材71がハウジング10と当接して後方への移動を規制され、棒状伝達部材84を介して係止部材82をガータースプリング83のばね力に抗して初期位置(図2に示した径外方位置)に復帰させる。このため、係止部材82による先端部材72のバルブピストン30に対する後退移動制限が解除されて、先端部材72が図2に示した状態に復帰し、次のブレーキ動作に備えることになる。
【0046】
ところで、この実施形態の負圧式倍力装置においては、制御機構80の構成部材である環状ケース81、係止部材82、ガータースプリング83、棒状伝達部材84等がバルブピストン30に組付けられる前に、環状ケース81に係止部材82とガータースプリング83を予め組付けて、図4および図5に示したように、これらを一体化(サブアセンブリ化)することが可能である。このため、入力部材40とキー部材71を組付けた状態のバルブピストン30に対して、棒状伝達部材84を前方から組付けるとともに、一体化された環状ケース81と係止部材82とガータースプリング83を前方から組付けることで、制御機構80の構成部材をバルブピストン30に容易に組付けることができて、制御機構80のバルブピストン30への組付性を改善することが可能である。なお、入力部材40とキー部材71を組付けた状態のバルブピストン30に対して制御機構80の構成部材を組付ける際に、バルブピストン30の前方が上方となるようにバルブピストン30を設置すれば、上述した前方からの組付方向が上方からの組付方向となる。
【0047】
また、この負圧式倍力装置においては、環状ケース81(バルブピストン30に比して小さい部品)に、先端部材72を前進後退移動可能に収容する収容孔81aが設けられている。このため、車両の要求仕様に応じて、外径の異なる複数種類の先端部材72を製作するのに併せて、先端部材72を前進後退移動可能に収容する収容孔81aの内径が異なる複数種類の環状ケース81を製作すればよくて、バルブピストン30は一種類で製作すればよく、当該負圧式倍力装置の生産面を改善することが可能である。
【0048】
また、この実施形態においては、バルブピストン30と環状ケース81に、環状ケース81のバルブピストン30に対する周方向の位置を規定するための位置決め手段(環状ケース81の凹部81eとバルブピストン30の凸部30n)が設けられている。このため、一体化された環状ケース81と係止部材82とガータースプリング83等のバルブピストン30への誤組付を防止することが可能であり、バルブピストン30に組付けられる棒状伝達部材84に対して、係止部材82を的確に係合させることが可能である。さらに、負圧式倍力装置の作動中にバルブピストン30と環状ケース81の間の周方向の相対移動を規制し、係止部材82を径方向に移動可能に保持する環状ケース81と棒状伝達部材84との摩擦や干渉を防止して棒状伝達部材84の前後移動を円滑にすることで、棒状伝達部材84による係止部材82の初期位置への復帰を円滑にする。
【0049】
また、この実施形態においては、環状ケース81に、係止部材82との係合によって係止部材82の環状ケース81に対する径内方への移動量を所定値に規定するストッパ81dが設けられている。このため、環状ケース81、係止部材82およびガータースプリング83が一体化された際に、係止部材82がガータースプリング83によって径内方に押されてストッパ81dと弾性的に係合し、環状ケース81とガータースプリング83によって係止部材82が弾性的に保持される。したがって、環状ケース81と係止部材82とガータースプリング83を一体化した後に、係止部材82が環状ケース81から脱落することを抑制することができて、一体化された部品の搬送性を良好とすることが可能である。
【0050】
上記した実施形態においては、反力部材73からの反力を入力部材40またはバルブピストン30に伝達可能な先端部材72を円柱形状に形成して実施したが、図13に示した変形実施形態のように、反力部材73からの反力を入力部材40またはバルブピストン30に伝達可能な先端部材172を円筒形状(プランジャ41の前端小径部41dが軸方向に摺動可能に貫通する円筒形状)に形成して実施することも可能である。
【0051】
図13に示した変形実施形態においては、緊急ブレーキ操作時において、先端部材172の後端部端面172aが係止部材82の前端部より前方に移動すると、係止部材82がガータースプリング83のばね力により径内方に押されて初期位置から径内方に移動し環状ケース81の収容孔81a内に突出する。このため、先端部材172が、係止部材82によってバルブピストン30に対する後退移動を制限されて、係止部材82を介してバルブピストン30と一体となる。このとき、反力部材73からの反力は、先端部材172と係止部材82を介してバルブピストン30に伝達されるとともに、プランジャ41の先端部(入力部材40)に伝達されて、図12の点a,eを経て点cに向けて上昇する特性線A3(図12の仮想線参照)が得られる。
【0052】
また、上記した実施形態においては、一個の係止部材82を用いて本発明を実施したが、この係止部材の個数は適宜増加可能であり、2個以上の係止部材を用いて本発明を実施することも可能である。また、上記した実施形態においては、環状ケース81に組付けられて係止部材82を環状ケース81の径内方に向けて付勢するスプリングとしてガータースプリング83を用いて本発明を実施したが、このガータースプリング83に代えて同等の機能を有するスプリングを採用して本発明を実施することも可能である。また、上記した実施形態においては、シングル型の負圧式倍力装置に本発明を実施したが、本発明はタンデム型やトリプル型の負圧式倍力装置にも同様に実施可能であることは勿論のこと、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0053】
10…ハウジング、20…可動隔壁、30…バルブピストン、30b…ケース収納孔、30i…伝達部材収納孔、30k…負圧弁座、30n…凸部、40…入力部材、41…プランジャ、41a…大気弁座、50…出力部材、60…制御弁、60a…負圧制御弁部、60b…大気制御弁部、71…キー部材、72…先端部材、73…反力部材、80…制御機構、81…環状ケース、81a…収容孔、81b…環状溝、81c…収容溝、81d…ストッパ、81e凹部、82…係止部材、82a…直線状溝、82b…段部、82c…傾斜面部(カム部)83…ガータースプリング、84…棒状伝達部材、Ro…圧力室、R1…負圧室、R2…変圧室
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に圧力室(Ro)を形成するハウジング(10)と、このハウジング内に前進後退可能に組付けられて前記圧力室を前方の負圧室(R1)と後方の変圧室(R2)とに区画する可動隔壁(20)と、前記ハウジングに前進後退可能に組付けられて前記ハウジング内に収容されている前端部にて前記可動隔壁に結合されたバルブピストン(30)と、このバルブピストン内にて同バルブピストンに対し前進後退可能に設置されかつ外部からの操作力を受ける入力部材(40)と、前記バルブピストンの前端部に組付けられて前記バルブピストンの推進力を外部に出力する出力部材(50)と、前記バルブピストン内にて前記入力部材と前記出力部材間に介装されて前記出力部材に作用する力の反力を前記バルブピストンと前記入力部材に分けて伝達する反力部材(73)とを備えるとともに、前記入力部材に設けた大気弁座(41a)とにより前記変圧室と大気との連通・遮断を制御する大気制御弁部(60b)と前記バルブピストンに設けた負圧弁座(30k)とにより前記変圧室と前記負圧室との連通・遮断を制御する負圧制御弁部(60a)を有して前記バルブピストン内に組付けられた制御弁(60)を備えた負圧式倍力装置において、
前記入力部材と前記バルブピストンに対して前進後退可能に組付けられて前記入力部材の前記バルブピストンに対する前進後退移動の限度を規定するとともに前記バルブピストンの前記ハウジングに対する後退移動の限度を規定するキー部材(71)と、
前記入力部材の先端部と前記反力部材の後端部間に前進後退可能に配置されて前端面にて前記反力部材と当接可能で後端面にて前記入力部材に係合・離脱可能な先端部材(72)と、
前記入力部材の前記バルブピストンに対する前進量が所定値以下の場合には、前記先端部材を前記入力部材と一体的に前進後退移動可能とし、前記入力部材の前記バルブピストンに対する前進量が所定値より大きい場合には、前記先端部材を前記入力部材から離脱した状態で前記バルブピストンに対して固定可能とする制御機構(80)を備えていて、
前記制御機構(80)が、
前記先端部材を前進後退移動可能に収容する収容孔(81a)を有して、前記バルブピストンの前端部と前記反力部材の後端部間に組付けられており、前端面にて前記反力部材と当接し後端面にて前記バルブピストンに当接する環状ケース(81)と、
この環状ケースに径方向にて移動可能に組付けられてスプリング(83)によって径内方に向けて付勢され、前記入力部材の前記バルブピストンに対する前進量が所定値以下の場合には、初期位置にあって前記先端部材の前記バルブピストンに対する前進後退移動を許容し、前記入力部材の前記バルブピストンに対する前進量が所定値より大きい場合には、初期位置から径内方に移動して前記先端部材の前記バルブピストンに対する後退移動を制限する係止部材(82)と、
前記バルブピストンに前進後退移動可能に組付けられていて、前端部にて前記係止部材に係合し後端部にて前記キー部材に係合しており、前記係止部材の径方向移動に応じて前後方向に移動可能で、前記バルブピストンが原位置に復帰するとき前記係止部材を前記スプリングの付勢力に抗して初期位置に復帰させる棒状伝達部材(84)と
を備えていることを特徴とする負圧式倍力装置。
【請求項2】
請求項1に記載の負圧式倍力装置において、前記バルブピストンと前記環状ケースには、前記環状ケースの前記バルブピストンに対する周方向の位置を規定するための位置決め手段(凸部30n、凹部81e)が設けられていることを特徴とする負圧式倍力装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の負圧式倍力装置において、前記環状ケースには、前記係止部材との係合によって前記係止部材の前記環状ケースに対する径内方への移動量を所定値に規定するストッパ(81d)が設けられていることを特徴とする負圧式倍力装置。
【請求項1】
内部に圧力室(Ro)を形成するハウジング(10)と、このハウジング内に前進後退可能に組付けられて前記圧力室を前方の負圧室(R1)と後方の変圧室(R2)とに区画する可動隔壁(20)と、前記ハウジングに前進後退可能に組付けられて前記ハウジング内に収容されている前端部にて前記可動隔壁に結合されたバルブピストン(30)と、このバルブピストン内にて同バルブピストンに対し前進後退可能に設置されかつ外部からの操作力を受ける入力部材(40)と、前記バルブピストンの前端部に組付けられて前記バルブピストンの推進力を外部に出力する出力部材(50)と、前記バルブピストン内にて前記入力部材と前記出力部材間に介装されて前記出力部材に作用する力の反力を前記バルブピストンと前記入力部材に分けて伝達する反力部材(73)とを備えるとともに、前記入力部材に設けた大気弁座(41a)とにより前記変圧室と大気との連通・遮断を制御する大気制御弁部(60b)と前記バルブピストンに設けた負圧弁座(30k)とにより前記変圧室と前記負圧室との連通・遮断を制御する負圧制御弁部(60a)を有して前記バルブピストン内に組付けられた制御弁(60)を備えた負圧式倍力装置において、
前記入力部材と前記バルブピストンに対して前進後退可能に組付けられて前記入力部材の前記バルブピストンに対する前進後退移動の限度を規定するとともに前記バルブピストンの前記ハウジングに対する後退移動の限度を規定するキー部材(71)と、
前記入力部材の先端部と前記反力部材の後端部間に前進後退可能に配置されて前端面にて前記反力部材と当接可能で後端面にて前記入力部材に係合・離脱可能な先端部材(72)と、
前記入力部材の前記バルブピストンに対する前進量が所定値以下の場合には、前記先端部材を前記入力部材と一体的に前進後退移動可能とし、前記入力部材の前記バルブピストンに対する前進量が所定値より大きい場合には、前記先端部材を前記入力部材から離脱した状態で前記バルブピストンに対して固定可能とする制御機構(80)を備えていて、
前記制御機構(80)が、
前記先端部材を前進後退移動可能に収容する収容孔(81a)を有して、前記バルブピストンの前端部と前記反力部材の後端部間に組付けられており、前端面にて前記反力部材と当接し後端面にて前記バルブピストンに当接する環状ケース(81)と、
この環状ケースに径方向にて移動可能に組付けられてスプリング(83)によって径内方に向けて付勢され、前記入力部材の前記バルブピストンに対する前進量が所定値以下の場合には、初期位置にあって前記先端部材の前記バルブピストンに対する前進後退移動を許容し、前記入力部材の前記バルブピストンに対する前進量が所定値より大きい場合には、初期位置から径内方に移動して前記先端部材の前記バルブピストンに対する後退移動を制限する係止部材(82)と、
前記バルブピストンに前進後退移動可能に組付けられていて、前端部にて前記係止部材に係合し後端部にて前記キー部材に係合しており、前記係止部材の径方向移動に応じて前後方向に移動可能で、前記バルブピストンが原位置に復帰するとき前記係止部材を前記スプリングの付勢力に抗して初期位置に復帰させる棒状伝達部材(84)と
を備えていることを特徴とする負圧式倍力装置。
【請求項2】
請求項1に記載の負圧式倍力装置において、前記バルブピストンと前記環状ケースには、前記環状ケースの前記バルブピストンに対する周方向の位置を規定するための位置決め手段(凸部30n、凹部81e)が設けられていることを特徴とする負圧式倍力装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の負圧式倍力装置において、前記環状ケースには、前記係止部材との係合によって前記係止部材の前記環状ケースに対する径内方への移動量を所定値に規定するストッパ(81d)が設けられていることを特徴とする負圧式倍力装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−240865(P2011−240865A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116156(P2010−116156)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]