負担補正回路およびコンデンサ型計器用変圧器
【課題】実用面での負担変化に対応可能な負担補正回路とこの負担補正回路を具備するコンデンサ型計器用変圧器とを提供する。
【解決手段】コンデンサ型計器用変圧器の負担特性を補正するための負担補正回路10は、短絡保証抵抗RCSと、短絡保証抵抗RCSと直列接続された開放保証抵抗RCOと、開放保証抵抗RCOと並列接続された負担調整用可変抵抗RCMとを具備する。ここで、開放保証抵抗RCOおよび負担調整用可変抵抗RCMと並列接続された力率調整用可変コンデンサXCをさらに具備すれば、コンデンサ型計器用変圧器の力率特性も補正することができる。
【解決手段】コンデンサ型計器用変圧器の負担特性を補正するための負担補正回路10は、短絡保証抵抗RCSと、短絡保証抵抗RCSと直列接続された開放保証抵抗RCOと、開放保証抵抗RCOと並列接続された負担調整用可変抵抗RCMとを具備する。ここで、開放保証抵抗RCOおよび負担調整用可変抵抗RCMと並列接続された力率調整用可変コンデンサXCをさらに具備すれば、コンデンサ型計器用変圧器の力率特性も補正することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負担補正回路およびコンデンサ型計器用変圧器に関し、特に、コンデンサ型計器用変圧器の2次負担および力率の調整を行うのに好適な負担補正回路とこの負担補正回路を具備するコンデンサ型計器用変圧器とに関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統において使用される計器用変圧器としては、電磁誘導により電圧を変成する巻線型計器用変圧器(PI)と、1次側対地間電圧を主コンデンサC1(図2参照)と分圧用コンデンサC2(図2参照)とにより分圧してその容量比で電圧を変成するコンデンサ型計器用変圧器(PD)とがある。
また、計器用変圧器の2次側に接続される負担(2次負担)としては、保護継電器および計測器などがある。
【0003】
2次負担は、以下に示す理由により、定格2次負担の25%から100%の範囲に入るようにする必要がある。
(1)2次負担が定格2次負担の25%よりも小さくなると比誤差εがプラス側に増大する一方、2次負担が定格2次負担の100%よりも大きくなると比誤差εがマイナス側に増大するため、比誤差εが規定値を超えてしまう。
(2)2次負担が定格2次負担の100%よりも大きくなると過負荷の問題も発生する。
【0004】
また、近年における保護継電器のデジタル化に伴って計器用変圧器の2次負担は小さくなってきている。しかし、2次負担が小さくなると、計器用変圧器の公称変圧比Knに比べて実際の変圧比Kが小さくなり、次式で示す比誤差εが大きくなるため、計測器からの電圧計測値が実際の電圧値よりも大きくなるという問題がある。
ε={(Kn−K)/K}×100(%)
たとえば、公称変圧比Knが500kV/100Vであっても比誤差εが+1%であると、実際の変圧比Kは495kV/100Vとなり、実際の電圧値495kVよりも5kVほど大きい電圧を計測器で計測していることになる。
そこで、コンデンサ型計器用変圧器では、2次側に固定抵抗を挿入して負担特性を補正している。
【0005】
なお、本出願人は、下記の特許文献1において、電圧の検出誤差の発生を回避しつつ無駄な電力消費を防止するために、1次側が変電所の母線に接続された計器用変圧器の2次側にデジタル型継電器を接続し、計器用変圧器の2次側にその使用負担が定格負担の一定比率(25%)以上となるように電力消費機器(除湿器)または抵抗からなる調整負担を切換スイッチにより選択的に接続し、切換スイッチが常には除湿器を計器用変圧器の2次側に接続して除湿器で電力が消費されるようにすることにより無駄な電力消費を防止するとともに、除湿器が故障などで所定の電力消費をしなくなると計器用変圧器の2次側に調整負担を接続するように判定制御部が切換スイッチを制御するようにした、計器用変圧器の使用負担調整方法を提案している。
【0006】
また、下記の特許文献2には、巻線型計器用変圧器の誤差特性を2次側に接続した抵抗および可変リアクトル(補助リアクトル)によって許容範囲内に調整する誤差調整装置が開示されている。
下記の特許文献3には、巻線型計器用変圧器および計器用変流器の二次側定格電圧および電流を入力せしめる入力端子と、電圧並びに電流発生部と、位相等発生部と、皮相電力・力率からなる負担を演算する演算部と、負担の良否を判定する良否判定部と、商用電力入力部とから構成される自動負担測定装置が開示されている。
下記の特許文献4には、電気回路の力率を計算し、設定した目標力率に合うように電気回路に接続されたコンデンサの入り切りを自動で行う力率自動調整装置が開示されている。
下記の特許文献5には、変流器および巻線型計器用変圧器の誤差試験において、試験装置内の誤差要因を排除することにより零負担を実現し、各種の指定負担から零負担まで正確に測定できる誤差試験装置が開示されている。
【特許文献1】特開2006−164039号公報
【特許文献2】特開2003−59733号公報
【特許文献3】特開2003−235120号公報
【特許文献4】特開平6−67743号公報
【特許文献5】特開平11−142459号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した2次側に固定抵抗を挿入して負担特性を補正するコンデンサ型計器用変圧器では、保護継電器や計測器などの負担の変化に対応できないという問題があるほか、負担特性により比誤差εを算出するには負担の力率特性も考慮する必要があるが、2次側に固定抵抗を挿入しただけでは力率特性の補正はできず、適正な負担補正が困難であるという問題がある。
また、上記の特許文献2に開示された誤差調整装置、上記の特許文献3に開示された自動負担測定装置、上記の特許文献4に開示された力率自動調整装置および上記の特許文献5に開示された誤差試験装置は、巻線型計器用変圧器本体の誤差補正、負担の自動測定および電気回路の力率補正に関するものであり、上述したコンデンサ型計器用変圧器における実用面での負担変化に対する問題の解決には有効でない。
【0008】
本発明の目的は、実用面での負担変化に対応可能な負担補正回路とこの負担補正回路を具備するコンデンサ型計器用変圧器とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の負担補正回路は、コンデンサ型計器用変圧器の負担特性を補正するための負担補正回路(10)であって、短絡保証抵抗(RCS)と、該短絡保証抵抗と直列接続された開放保証抵抗(RCO)と、該開放保証抵抗と並列接続された負担調整用可変抵抗(RCM)とを具備することを特徴とする。
ここで、前記負担調整用可変抵抗が短絡した場合に前記コンデンサ型計器用変圧器の定格2次負担の60%を保証するために、前記短絡保証抵抗の抵抗値が次式により決定されており、
RCS=(5/3)×E22/Pn
ここで、E2:コンデンサ型計器用変圧器の定格2次電圧
Pn:コンデンサ型計器用変圧器の定格2次負担
前記負担調整用可変抵抗が開放した場合に前記短絡保証抵抗と共に前記コンデンサ型計器用変圧器の定格2次負担の70%を保証するために、前記開放保証抵抗の抵抗値が次式により決定されていてもよい。
RCO=5×RCS
前記負担調整用可変抵抗の抵抗値が、次式により決定されていてもよい。
RCM=(RCS−RC)RCO/(RC−RCS−RCO)
RC=E22Zb/(yPnZb−E22)
ここで、y:定格2次負担に対する2次負担の目標割合(%)
Zb:実負担インピーダンス
前記負担調整用可変抵抗の代わりに、互いに並列接続された第1乃至第3の補正用抵抗(RC1〜RC3)と、該第1乃至第3の補正用抵抗のうちの1つを選択するためのスイッチ(15)とを具備してもよい。
本発明の第2の負担補正回路は、コンデンサ型計器用変圧器の力率特性を補正するための負担補正回路(30)であって、短絡保証抵抗(RCS)と、該短絡保証抵抗と直列接続された力率調整用可変コンデンサ(XC)とを具備することを特徴とする。
ここで、前記力率調整用可変コンデンサの代わりに、互いに並列接続された3個以上の調整用コンデンサ(XC1〜XC4)と、該3個以上の調整用コンデンサのうちの隣接する2つを前記短絡保証抵抗と直列に接続させるためのスライド板(35)とを具備してもよい。
本発明の第3の負担補正回路は、コンデンサ型計器用変圧器の負担特性および力率特性を補正するための負担補正回路(50)であって、短絡保証抵抗(RCS)と、該短絡保証抵抗と直列接続された開放保証抵抗(RCO)と、該開放保証抵抗と並列接続された負担調整用可変抵抗(RCM)と、前記開放保証抵抗および前記負担調整用可変抵抗と並列接続された力率調整用可変コンデンサ(XC)とを具備することを特徴とする。
本発明の第4の負担補正回路は、コンデンサ型計器用変圧器の力率特性を補正するための負担補正回路(60)であって、タップが2次側に設けられた補助変圧器(61)と、該補助変圧器の前記タップを切り換えるためのスイッチ(62)と、互いに並列接続された補正用抵抗(RC’)および調整用コンデンサ(XC’)とを具備し、前記スイッチによって前記補助変圧器のタップを切り換えて前記補正用抵抗および前記力率補正用コンデンサの前記補助変圧器の2次側への接続位置を変えることにより力率特性の補正を行うことを特徴とする。
【0010】
本発明のコンデンサ型計器用変圧器は、本発明の負担補正回路を出力端側に具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の負担補正回路およびコンデンサ型計器用変圧器は、以下に示す効果を奏する。
(1)コンデンサ型計器用変圧器の2次側に接続される保護継電器などを試験時に切り離す場合や不要設備として除却する場合などのようにコンデンサ型計器用変圧器の2次負担が変化しても、負荷特性および力率特性を補正して、計測器から出力される電圧が変化しないようにすることができる。
(2)コンデンサ型計器用変圧器の2次負担の変化に対応するために従来行っていた保護継電器の整定変更を不要とすることができる。
(3)コンデンサ型計器用変圧器の2次負担を定格2次負担の25%から100%の範囲に入るようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
上記の目的を、短絡保証抵抗と、短絡保証抵抗と直列接続された開放保証抵抗と、開放保証抵抗と並列接続された負担調整用可変抵抗と、開放保証抵抗および負担調整用可変抵抗と並列接続された力率調整用可変コンデンサとを具備した負担補正回路により実現した。
【実施例1】
【0013】
以下、本発明の負担補正回路およびコンデンサ型計器用変圧器の実施例について、図面を参照して説明する。
本発明の第1の実施例による負担補正回路10は、コンデンサ型計器用変圧器の負担特性を補正するためのものであり、図1に示すように、短絡保証抵抗RCSと、短絡保証抵抗RCSと直列接続された開放保証抵抗RCOと、開放保証抵抗RCOと並列接続された負担調整用可変抵抗RCMとを具備する。
ここで、短絡保証抵抗RCSの一端は第1の入力端子111および第1の出力端子121と接続されており、開放保証抵抗RCOの一端および開放保証抵抗RCOの一端は第2の入力端子112および第2の出力端子122と接続されている。
【0014】
短絡保証抵抗RCSは、負担調整用可変抵抗RCMが何らかの原因で短絡した場合に、コンデンサ型計器用変圧器の定格2次負担Pnの60%を保証するためのものである。そのため、短絡保証抵抗RCSの抵抗値は、(1)式により決定される。
RCS=E22/(0.6×Pn)
=(5/3)×E22/Pn (1)
ここで、E2:コンデンサ型計器用変圧器の定格2次電圧
Pn:コンデンサ型計器用変圧器の定格2次負担
【0015】
開放保証抵抗RCOは、負担調整用可変抵抗RCMが何らかの原因で開放した場合に、短絡保証抵抗RCSと共にコンデンサ型計器用変圧器の定格2次負担Pnの70%を保証するためのものである。そのため、開放保証抵抗RCOの抵抗値は、(2)式により決定される。
RCO=E22/(0.1×Pn)−RCS
=(25/3)×E22/Pn
=5×RCS (2)
【0016】
負担調整用可変抵抗RCMの抵抗値は、定格2次負担Pnの60%で誤差が“0”となるようにコンデンサ型計器用変圧器の巻線が調整されている場合には、2次負担を定格2次負担Pnの60%に調整するように、次のようにして決定される。
【0017】
負担補正回路10の全抵抗値RCは次式で表わされる。
RC=RCS+RCORCM/(RCO+RCM)
よって、負担調整用可変抵抗RCMの抵抗値は(3)式で表わされる。
RCM=(RCS−RC)RCO/(RC−RCS−RCO) (3)
ここで、定格2次負担Pnに対する2次負担の目標割合をy%とし、実際の2次負担Prの割合をx%とし、コンデンサ型計器用変圧器の2次側に接続されている保護継電器および計測器などの実負担インピーダンスをZb(図2に示す負担インピーダンスZb1,Zb2,Zb3・・・の合成インピーダンス)とすると、実際の2次負担Prおよび負担補正回路10の負担Pcは(4)式および(5)式でそれぞれ表わされる。
Pr=xPn
=E22/Zb (4)
Pc=(y−x)Pn
=E22/RC (5)
【0018】
(4)式より、実際の2次負担Prの割合xは(6)式で表わされる。
x=Pr/Pn
=E22/ZbPn (6)
また、(5)式および(6)式より次式が成り立つ。
(y−E22/ZbPn)Pn=E22/RC
よって、負担補正回路10の全抵抗値RCは(7)式で表わされる。
RC=E22/(yPn−E22/Zb)
=E22Zb/(yPnZb−E22) (7)
したがって、(7)式で決定される負担補正回路10の全抵抗値RCを(3)式に代入することにより、負担調整用可変抵抗RCMの抵抗値は決定される。
【0019】
負担補正回路10をコンデンサ型計器用変圧器に接続する場合には、負担補正回路10の第1および第2の入力端子111,112がコンデンサ型計器用変圧器の2次側出力端子に接続され、第1および第2の出力端子121,122が負荷に接続される。
【0020】
本発明の第1の実施例によるコンデンサ型計器用変圧器20は、図2に等価回路を示すように、出力端側に負担補正回路10を具備する。
【0021】
以上の説明では、負担調整用可変抵抗RCMを用いて抵抗値を連続的に変えて負担特性を補正するようにしたが、たとえば、図3に示す負担補正回路10aのように、互いに並列接続された第1乃至第3の補正用抵抗RC1〜RC3を用いてスイッチ15によって第1乃至第3の補正用抵抗RC1〜RC3のうちの1つを選択することにより、定格2次負担Pnの25%、50%および100%と3段階で負担特性を補正するようにしてもよい。この場合には、第1乃至第3の補正用抵抗RC1〜RC3の抵抗値は、(7)式においてy(2次負担の目標割合)=0.25,0.50,1.0として決定される。
【0022】
また、スイッチ15により開放端子を選択して、開放保証抵抗RCOと並列接続される抵抗がなくなるようにしてもよい。なお、スイッチ15により開放端子を選択した場合には、負担補正回路10の全抵抗値RCは(8)式で表わされるため、2次負担は定格2次負担Pnの70%となる。
RC=RCS+RCO (8)
【実施例2】
【0023】
次に、本発明の第2の実施例による負担補正回路30について、図4および図5を参照して説明する。
本実施例による負担補正回路30は、コンデンサ型計器用変圧器の力率特性を補正するためのものであり、図4に示すように、短絡保証抵抗RCSと、短絡保証抵抗RCSと直列接続された力率調整用可変コンデンサXCとを具備する。
ここで、短絡保証抵抗RCSの一端は第1の入力端子311および第1の出力端子321と接続されており、力率調整用可変コンデンサXCの一端は第2の入力端子312および第2の出力端子322と接続されている。
【0024】
短絡保証抵抗RCSは、力率調整用可変コンデンサXCが何らかの原因で短絡した場合に、コンデンサ型計器用変圧器の定格2次負担Pnの60%を保証するためのものである。そのため、短絡保証抵抗RCSの抵抗値は、上述した(1)式により決定される。
力率調整用可変コンデンサXCは、力率を調整するためのものである。
【0025】
負担補正回路30に入力される電流をIbとし、短絡保証抵抗RCSおよび力率調整用可変コンデンサXCに流れる電流をIb1(=IR1+IC)とし、負担補正回路30から出力される電流をIb2(=IR2+IL)とすると、力率PFは(9)式で表わされる。
PF=(IR1+IR2)/{(IR1+IR2)2+(IC+IL)2}1/2 (9)
ここで、力率調整用可変コンデンサXCに流れる電流ICと、短絡保証抵抗RCSおよび力率調整用可変コンデンサXCの合成インピーダンスZCと、実負担インピーダンスZbと、短絡保証抵抗RCSおよび力率調整用可変コンデンサXCに流れる電流をIb1とは、(10)式乃至(13)式でそれぞれ表わされる。
IC=Ib1×RCS/{RCS2−1/XC2}1/2 (10)
ZC={RCS2−1/XC 2}1/2 (11)
Zb={Rb2+XL 2}1/2 (12)
Ib1=Ib×{(ZC+Zb)/ZC}
=Ib×{(ZC+E2/Ib)/ZC} (13)
したがって、力率調整用可変コンデンサXCの容量値を変えることにより、図5にベクトル図で示すように力率PFを調整することができる。
【0026】
負担補正回路30をコンデンサ型計器用変圧器に接続する場合には、負担補正回路30の第1および第2の入力端子311,312がコンデンサ型計器用変圧器の2次側出力端子に接続され、第1および第2の出力端子321,322が負荷に接続される。
【0027】
本発明の第2の実施例によるコンデンサ型計器用変圧器40は、図6に等価回路を示すように、出力端側に負担補正回路40を具備する。
【0028】
以上の説明では、力率調整用可変コンデンサXCを用いて連続的に力率PFを調整するようにしたが、たとえば、図7に示す負担補正回路30aのように、互いに並列接続された第1乃至第4の調整用コンデンサXC1〜XC4を用いてスライド板35をスライドさせて第1乃至第4の調整用コンデンサXC1〜XC4のうちの隣接する2つを短絡保証抵抗RCSと直列に接続させることにより、3段階で力率PFを調整するようにしてもよい。
なお、第1乃至第4の調整用コンデンサXC1〜XC4は3個以上であればよい。
【実施例3】
【0029】
次に、本発明の第3の実施例による負担補正回路50について、図8を参照して説明する。
本実施例による負担補正回路50は、負担特性および力率特性を補正するためのものであり、図8に示すように、開放保証抵抗RCOおよび負担調整用可変抵抗RCMと並列に図4に示した力率調整用可変コンデンサXCを接続することにより、図1に示した第1の実施例による負担補正回路10と図4に示した第2の実施例による負担補正回路30とを組み合わせたものである。
【0030】
これにより、負担補正回路50では、負担調整用可変抵抗RCMの抵抗値を変えて負担特性を補正することができるとともに、力率調整用可変コンデンサXCの容量値を変えて力率特性を補正することができる。
【0031】
なお、図3に示した負担補正回路10aと図7に示した負担補正回路30aとを同様にして組み合わせてもよい。
【0032】
本発明の第3の実施例によるコンデンサ型計器用変圧器(不図示)は、出力端側に負担補正回路50を具備する。
【実施例4】
【0033】
次に、本発明の第4の実施例による負担補正回路60について、図9を参照して説明する。
本実施例による負担補正回路60は、力率特性を補正するためのものであり、図9に示すように、タップが2次側に設けられた補助変圧器61と、補助変圧器61のタップを切り換えるためのスイッチ62と、互いに並列接続された補正用抵抗RC’および調整用コンデンサXC’とを具備する。
ここで、補助変圧器61の1次側の一端は第1の入力端子611および第1の出力端子621と接続されており、補助変圧器61の1次側の他端は第2の入力端子612および第2の出力端子622と接続されている。
【0034】
負担補正回路60では、スイッチ62によって補助変圧器61のタップを切り換えて、補正用抵抗RC’および率補正用コンデンサXCの補助変圧器61の2次側への接続位置を変えることにより、力率特性の補正を行うことができる。
【0035】
本発明の第4の実施例によるコンデンサ型計器用変圧器(不図示)は、出力端側に負担補正回路60を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1の実施例による負担補正回路10の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施例によるコンデンサ型計器用変圧器20の構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示した負担調整用可変抵抗RCMの代わりに第1乃至第3の補正用抵抗RC1〜RC3とスイッチ15とを具備する負担補正回路10aの構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第2の実施例による負担補正回路30の構成を示すブロック図である。
【図5】図4に示した力率調整用可変コンデンサXCの容量値を変えることにより力率PFを補正することができることを説明するためのベクトル図である。
【図6】本発明の第2の実施例によるコンデンサ型計器用変圧器40の構成を示すブロック図である。
【図7】図4に示した力率調整用可変コンデンサXCの代わりに第1乃至第4の補正用コンデンサXC1〜XC4とスライド板35とを具備する負担補正回路30aの構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第3の実施例による負担補正回路30の構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の第4の実施例による負担補正回路30の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0037】
10,10a,30,50,60 負担補正回路
111,112,311,312,511,512,611,612 第1および第2の入力端子
121,122,321,322,521,522,621,622 第1および第2の出力端子
15 スイッチ
20,40 コンデンサ型計器用変圧器
35 スライド板
61 補助変圧器
62 スイッチ
C1 主コンデンサ
C2 分圧用コンデンサ
E2 定格2次電圧
Ib,Ib1,Ib2,IR1,IR2,IC,IL 電流
Pn 定格2次負担
PF 力率
RCS 短絡保証抵抗
RCO 開放保証抵抗
RCM 負担調整用可変抵抗
RC1〜RC3,RC’ 補正用抵抗
XC 力率調整用可変コンデンサ
XC1〜XC4,XC’ 調整用コンデンサ
y 定格2次負担に対する2次負担の目標割合
Zb 実負担インピーダンス
Zb1〜Zb3 負荷インピーダンス
ZC 合成インピーダンス
Φ,φ 位相
【技術分野】
【0001】
本発明は、負担補正回路およびコンデンサ型計器用変圧器に関し、特に、コンデンサ型計器用変圧器の2次負担および力率の調整を行うのに好適な負担補正回路とこの負担補正回路を具備するコンデンサ型計器用変圧器とに関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統において使用される計器用変圧器としては、電磁誘導により電圧を変成する巻線型計器用変圧器(PI)と、1次側対地間電圧を主コンデンサC1(図2参照)と分圧用コンデンサC2(図2参照)とにより分圧してその容量比で電圧を変成するコンデンサ型計器用変圧器(PD)とがある。
また、計器用変圧器の2次側に接続される負担(2次負担)としては、保護継電器および計測器などがある。
【0003】
2次負担は、以下に示す理由により、定格2次負担の25%から100%の範囲に入るようにする必要がある。
(1)2次負担が定格2次負担の25%よりも小さくなると比誤差εがプラス側に増大する一方、2次負担が定格2次負担の100%よりも大きくなると比誤差εがマイナス側に増大するため、比誤差εが規定値を超えてしまう。
(2)2次負担が定格2次負担の100%よりも大きくなると過負荷の問題も発生する。
【0004】
また、近年における保護継電器のデジタル化に伴って計器用変圧器の2次負担は小さくなってきている。しかし、2次負担が小さくなると、計器用変圧器の公称変圧比Knに比べて実際の変圧比Kが小さくなり、次式で示す比誤差εが大きくなるため、計測器からの電圧計測値が実際の電圧値よりも大きくなるという問題がある。
ε={(Kn−K)/K}×100(%)
たとえば、公称変圧比Knが500kV/100Vであっても比誤差εが+1%であると、実際の変圧比Kは495kV/100Vとなり、実際の電圧値495kVよりも5kVほど大きい電圧を計測器で計測していることになる。
そこで、コンデンサ型計器用変圧器では、2次側に固定抵抗を挿入して負担特性を補正している。
【0005】
なお、本出願人は、下記の特許文献1において、電圧の検出誤差の発生を回避しつつ無駄な電力消費を防止するために、1次側が変電所の母線に接続された計器用変圧器の2次側にデジタル型継電器を接続し、計器用変圧器の2次側にその使用負担が定格負担の一定比率(25%)以上となるように電力消費機器(除湿器)または抵抗からなる調整負担を切換スイッチにより選択的に接続し、切換スイッチが常には除湿器を計器用変圧器の2次側に接続して除湿器で電力が消費されるようにすることにより無駄な電力消費を防止するとともに、除湿器が故障などで所定の電力消費をしなくなると計器用変圧器の2次側に調整負担を接続するように判定制御部が切換スイッチを制御するようにした、計器用変圧器の使用負担調整方法を提案している。
【0006】
また、下記の特許文献2には、巻線型計器用変圧器の誤差特性を2次側に接続した抵抗および可変リアクトル(補助リアクトル)によって許容範囲内に調整する誤差調整装置が開示されている。
下記の特許文献3には、巻線型計器用変圧器および計器用変流器の二次側定格電圧および電流を入力せしめる入力端子と、電圧並びに電流発生部と、位相等発生部と、皮相電力・力率からなる負担を演算する演算部と、負担の良否を判定する良否判定部と、商用電力入力部とから構成される自動負担測定装置が開示されている。
下記の特許文献4には、電気回路の力率を計算し、設定した目標力率に合うように電気回路に接続されたコンデンサの入り切りを自動で行う力率自動調整装置が開示されている。
下記の特許文献5には、変流器および巻線型計器用変圧器の誤差試験において、試験装置内の誤差要因を排除することにより零負担を実現し、各種の指定負担から零負担まで正確に測定できる誤差試験装置が開示されている。
【特許文献1】特開2006−164039号公報
【特許文献2】特開2003−59733号公報
【特許文献3】特開2003−235120号公報
【特許文献4】特開平6−67743号公報
【特許文献5】特開平11−142459号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した2次側に固定抵抗を挿入して負担特性を補正するコンデンサ型計器用変圧器では、保護継電器や計測器などの負担の変化に対応できないという問題があるほか、負担特性により比誤差εを算出するには負担の力率特性も考慮する必要があるが、2次側に固定抵抗を挿入しただけでは力率特性の補正はできず、適正な負担補正が困難であるという問題がある。
また、上記の特許文献2に開示された誤差調整装置、上記の特許文献3に開示された自動負担測定装置、上記の特許文献4に開示された力率自動調整装置および上記の特許文献5に開示された誤差試験装置は、巻線型計器用変圧器本体の誤差補正、負担の自動測定および電気回路の力率補正に関するものであり、上述したコンデンサ型計器用変圧器における実用面での負担変化に対する問題の解決には有効でない。
【0008】
本発明の目的は、実用面での負担変化に対応可能な負担補正回路とこの負担補正回路を具備するコンデンサ型計器用変圧器とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の負担補正回路は、コンデンサ型計器用変圧器の負担特性を補正するための負担補正回路(10)であって、短絡保証抵抗(RCS)と、該短絡保証抵抗と直列接続された開放保証抵抗(RCO)と、該開放保証抵抗と並列接続された負担調整用可変抵抗(RCM)とを具備することを特徴とする。
ここで、前記負担調整用可変抵抗が短絡した場合に前記コンデンサ型計器用変圧器の定格2次負担の60%を保証するために、前記短絡保証抵抗の抵抗値が次式により決定されており、
RCS=(5/3)×E22/Pn
ここで、E2:コンデンサ型計器用変圧器の定格2次電圧
Pn:コンデンサ型計器用変圧器の定格2次負担
前記負担調整用可変抵抗が開放した場合に前記短絡保証抵抗と共に前記コンデンサ型計器用変圧器の定格2次負担の70%を保証するために、前記開放保証抵抗の抵抗値が次式により決定されていてもよい。
RCO=5×RCS
前記負担調整用可変抵抗の抵抗値が、次式により決定されていてもよい。
RCM=(RCS−RC)RCO/(RC−RCS−RCO)
RC=E22Zb/(yPnZb−E22)
ここで、y:定格2次負担に対する2次負担の目標割合(%)
Zb:実負担インピーダンス
前記負担調整用可変抵抗の代わりに、互いに並列接続された第1乃至第3の補正用抵抗(RC1〜RC3)と、該第1乃至第3の補正用抵抗のうちの1つを選択するためのスイッチ(15)とを具備してもよい。
本発明の第2の負担補正回路は、コンデンサ型計器用変圧器の力率特性を補正するための負担補正回路(30)であって、短絡保証抵抗(RCS)と、該短絡保証抵抗と直列接続された力率調整用可変コンデンサ(XC)とを具備することを特徴とする。
ここで、前記力率調整用可変コンデンサの代わりに、互いに並列接続された3個以上の調整用コンデンサ(XC1〜XC4)と、該3個以上の調整用コンデンサのうちの隣接する2つを前記短絡保証抵抗と直列に接続させるためのスライド板(35)とを具備してもよい。
本発明の第3の負担補正回路は、コンデンサ型計器用変圧器の負担特性および力率特性を補正するための負担補正回路(50)であって、短絡保証抵抗(RCS)と、該短絡保証抵抗と直列接続された開放保証抵抗(RCO)と、該開放保証抵抗と並列接続された負担調整用可変抵抗(RCM)と、前記開放保証抵抗および前記負担調整用可変抵抗と並列接続された力率調整用可変コンデンサ(XC)とを具備することを特徴とする。
本発明の第4の負担補正回路は、コンデンサ型計器用変圧器の力率特性を補正するための負担補正回路(60)であって、タップが2次側に設けられた補助変圧器(61)と、該補助変圧器の前記タップを切り換えるためのスイッチ(62)と、互いに並列接続された補正用抵抗(RC’)および調整用コンデンサ(XC’)とを具備し、前記スイッチによって前記補助変圧器のタップを切り換えて前記補正用抵抗および前記力率補正用コンデンサの前記補助変圧器の2次側への接続位置を変えることにより力率特性の補正を行うことを特徴とする。
【0010】
本発明のコンデンサ型計器用変圧器は、本発明の負担補正回路を出力端側に具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の負担補正回路およびコンデンサ型計器用変圧器は、以下に示す効果を奏する。
(1)コンデンサ型計器用変圧器の2次側に接続される保護継電器などを試験時に切り離す場合や不要設備として除却する場合などのようにコンデンサ型計器用変圧器の2次負担が変化しても、負荷特性および力率特性を補正して、計測器から出力される電圧が変化しないようにすることができる。
(2)コンデンサ型計器用変圧器の2次負担の変化に対応するために従来行っていた保護継電器の整定変更を不要とすることができる。
(3)コンデンサ型計器用変圧器の2次負担を定格2次負担の25%から100%の範囲に入るようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
上記の目的を、短絡保証抵抗と、短絡保証抵抗と直列接続された開放保証抵抗と、開放保証抵抗と並列接続された負担調整用可変抵抗と、開放保証抵抗および負担調整用可変抵抗と並列接続された力率調整用可変コンデンサとを具備した負担補正回路により実現した。
【実施例1】
【0013】
以下、本発明の負担補正回路およびコンデンサ型計器用変圧器の実施例について、図面を参照して説明する。
本発明の第1の実施例による負担補正回路10は、コンデンサ型計器用変圧器の負担特性を補正するためのものであり、図1に示すように、短絡保証抵抗RCSと、短絡保証抵抗RCSと直列接続された開放保証抵抗RCOと、開放保証抵抗RCOと並列接続された負担調整用可変抵抗RCMとを具備する。
ここで、短絡保証抵抗RCSの一端は第1の入力端子111および第1の出力端子121と接続されており、開放保証抵抗RCOの一端および開放保証抵抗RCOの一端は第2の入力端子112および第2の出力端子122と接続されている。
【0014】
短絡保証抵抗RCSは、負担調整用可変抵抗RCMが何らかの原因で短絡した場合に、コンデンサ型計器用変圧器の定格2次負担Pnの60%を保証するためのものである。そのため、短絡保証抵抗RCSの抵抗値は、(1)式により決定される。
RCS=E22/(0.6×Pn)
=(5/3)×E22/Pn (1)
ここで、E2:コンデンサ型計器用変圧器の定格2次電圧
Pn:コンデンサ型計器用変圧器の定格2次負担
【0015】
開放保証抵抗RCOは、負担調整用可変抵抗RCMが何らかの原因で開放した場合に、短絡保証抵抗RCSと共にコンデンサ型計器用変圧器の定格2次負担Pnの70%を保証するためのものである。そのため、開放保証抵抗RCOの抵抗値は、(2)式により決定される。
RCO=E22/(0.1×Pn)−RCS
=(25/3)×E22/Pn
=5×RCS (2)
【0016】
負担調整用可変抵抗RCMの抵抗値は、定格2次負担Pnの60%で誤差が“0”となるようにコンデンサ型計器用変圧器の巻線が調整されている場合には、2次負担を定格2次負担Pnの60%に調整するように、次のようにして決定される。
【0017】
負担補正回路10の全抵抗値RCは次式で表わされる。
RC=RCS+RCORCM/(RCO+RCM)
よって、負担調整用可変抵抗RCMの抵抗値は(3)式で表わされる。
RCM=(RCS−RC)RCO/(RC−RCS−RCO) (3)
ここで、定格2次負担Pnに対する2次負担の目標割合をy%とし、実際の2次負担Prの割合をx%とし、コンデンサ型計器用変圧器の2次側に接続されている保護継電器および計測器などの実負担インピーダンスをZb(図2に示す負担インピーダンスZb1,Zb2,Zb3・・・の合成インピーダンス)とすると、実際の2次負担Prおよび負担補正回路10の負担Pcは(4)式および(5)式でそれぞれ表わされる。
Pr=xPn
=E22/Zb (4)
Pc=(y−x)Pn
=E22/RC (5)
【0018】
(4)式より、実際の2次負担Prの割合xは(6)式で表わされる。
x=Pr/Pn
=E22/ZbPn (6)
また、(5)式および(6)式より次式が成り立つ。
(y−E22/ZbPn)Pn=E22/RC
よって、負担補正回路10の全抵抗値RCは(7)式で表わされる。
RC=E22/(yPn−E22/Zb)
=E22Zb/(yPnZb−E22) (7)
したがって、(7)式で決定される負担補正回路10の全抵抗値RCを(3)式に代入することにより、負担調整用可変抵抗RCMの抵抗値は決定される。
【0019】
負担補正回路10をコンデンサ型計器用変圧器に接続する場合には、負担補正回路10の第1および第2の入力端子111,112がコンデンサ型計器用変圧器の2次側出力端子に接続され、第1および第2の出力端子121,122が負荷に接続される。
【0020】
本発明の第1の実施例によるコンデンサ型計器用変圧器20は、図2に等価回路を示すように、出力端側に負担補正回路10を具備する。
【0021】
以上の説明では、負担調整用可変抵抗RCMを用いて抵抗値を連続的に変えて負担特性を補正するようにしたが、たとえば、図3に示す負担補正回路10aのように、互いに並列接続された第1乃至第3の補正用抵抗RC1〜RC3を用いてスイッチ15によって第1乃至第3の補正用抵抗RC1〜RC3のうちの1つを選択することにより、定格2次負担Pnの25%、50%および100%と3段階で負担特性を補正するようにしてもよい。この場合には、第1乃至第3の補正用抵抗RC1〜RC3の抵抗値は、(7)式においてy(2次負担の目標割合)=0.25,0.50,1.0として決定される。
【0022】
また、スイッチ15により開放端子を選択して、開放保証抵抗RCOと並列接続される抵抗がなくなるようにしてもよい。なお、スイッチ15により開放端子を選択した場合には、負担補正回路10の全抵抗値RCは(8)式で表わされるため、2次負担は定格2次負担Pnの70%となる。
RC=RCS+RCO (8)
【実施例2】
【0023】
次に、本発明の第2の実施例による負担補正回路30について、図4および図5を参照して説明する。
本実施例による負担補正回路30は、コンデンサ型計器用変圧器の力率特性を補正するためのものであり、図4に示すように、短絡保証抵抗RCSと、短絡保証抵抗RCSと直列接続された力率調整用可変コンデンサXCとを具備する。
ここで、短絡保証抵抗RCSの一端は第1の入力端子311および第1の出力端子321と接続されており、力率調整用可変コンデンサXCの一端は第2の入力端子312および第2の出力端子322と接続されている。
【0024】
短絡保証抵抗RCSは、力率調整用可変コンデンサXCが何らかの原因で短絡した場合に、コンデンサ型計器用変圧器の定格2次負担Pnの60%を保証するためのものである。そのため、短絡保証抵抗RCSの抵抗値は、上述した(1)式により決定される。
力率調整用可変コンデンサXCは、力率を調整するためのものである。
【0025】
負担補正回路30に入力される電流をIbとし、短絡保証抵抗RCSおよび力率調整用可変コンデンサXCに流れる電流をIb1(=IR1+IC)とし、負担補正回路30から出力される電流をIb2(=IR2+IL)とすると、力率PFは(9)式で表わされる。
PF=(IR1+IR2)/{(IR1+IR2)2+(IC+IL)2}1/2 (9)
ここで、力率調整用可変コンデンサXCに流れる電流ICと、短絡保証抵抗RCSおよび力率調整用可変コンデンサXCの合成インピーダンスZCと、実負担インピーダンスZbと、短絡保証抵抗RCSおよび力率調整用可変コンデンサXCに流れる電流をIb1とは、(10)式乃至(13)式でそれぞれ表わされる。
IC=Ib1×RCS/{RCS2−1/XC2}1/2 (10)
ZC={RCS2−1/XC 2}1/2 (11)
Zb={Rb2+XL 2}1/2 (12)
Ib1=Ib×{(ZC+Zb)/ZC}
=Ib×{(ZC+E2/Ib)/ZC} (13)
したがって、力率調整用可変コンデンサXCの容量値を変えることにより、図5にベクトル図で示すように力率PFを調整することができる。
【0026】
負担補正回路30をコンデンサ型計器用変圧器に接続する場合には、負担補正回路30の第1および第2の入力端子311,312がコンデンサ型計器用変圧器の2次側出力端子に接続され、第1および第2の出力端子321,322が負荷に接続される。
【0027】
本発明の第2の実施例によるコンデンサ型計器用変圧器40は、図6に等価回路を示すように、出力端側に負担補正回路40を具備する。
【0028】
以上の説明では、力率調整用可変コンデンサXCを用いて連続的に力率PFを調整するようにしたが、たとえば、図7に示す負担補正回路30aのように、互いに並列接続された第1乃至第4の調整用コンデンサXC1〜XC4を用いてスライド板35をスライドさせて第1乃至第4の調整用コンデンサXC1〜XC4のうちの隣接する2つを短絡保証抵抗RCSと直列に接続させることにより、3段階で力率PFを調整するようにしてもよい。
なお、第1乃至第4の調整用コンデンサXC1〜XC4は3個以上であればよい。
【実施例3】
【0029】
次に、本発明の第3の実施例による負担補正回路50について、図8を参照して説明する。
本実施例による負担補正回路50は、負担特性および力率特性を補正するためのものであり、図8に示すように、開放保証抵抗RCOおよび負担調整用可変抵抗RCMと並列に図4に示した力率調整用可変コンデンサXCを接続することにより、図1に示した第1の実施例による負担補正回路10と図4に示した第2の実施例による負担補正回路30とを組み合わせたものである。
【0030】
これにより、負担補正回路50では、負担調整用可変抵抗RCMの抵抗値を変えて負担特性を補正することができるとともに、力率調整用可変コンデンサXCの容量値を変えて力率特性を補正することができる。
【0031】
なお、図3に示した負担補正回路10aと図7に示した負担補正回路30aとを同様にして組み合わせてもよい。
【0032】
本発明の第3の実施例によるコンデンサ型計器用変圧器(不図示)は、出力端側に負担補正回路50を具備する。
【実施例4】
【0033】
次に、本発明の第4の実施例による負担補正回路60について、図9を参照して説明する。
本実施例による負担補正回路60は、力率特性を補正するためのものであり、図9に示すように、タップが2次側に設けられた補助変圧器61と、補助変圧器61のタップを切り換えるためのスイッチ62と、互いに並列接続された補正用抵抗RC’および調整用コンデンサXC’とを具備する。
ここで、補助変圧器61の1次側の一端は第1の入力端子611および第1の出力端子621と接続されており、補助変圧器61の1次側の他端は第2の入力端子612および第2の出力端子622と接続されている。
【0034】
負担補正回路60では、スイッチ62によって補助変圧器61のタップを切り換えて、補正用抵抗RC’および率補正用コンデンサXCの補助変圧器61の2次側への接続位置を変えることにより、力率特性の補正を行うことができる。
【0035】
本発明の第4の実施例によるコンデンサ型計器用変圧器(不図示)は、出力端側に負担補正回路60を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1の実施例による負担補正回路10の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施例によるコンデンサ型計器用変圧器20の構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示した負担調整用可変抵抗RCMの代わりに第1乃至第3の補正用抵抗RC1〜RC3とスイッチ15とを具備する負担補正回路10aの構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第2の実施例による負担補正回路30の構成を示すブロック図である。
【図5】図4に示した力率調整用可変コンデンサXCの容量値を変えることにより力率PFを補正することができることを説明するためのベクトル図である。
【図6】本発明の第2の実施例によるコンデンサ型計器用変圧器40の構成を示すブロック図である。
【図7】図4に示した力率調整用可変コンデンサXCの代わりに第1乃至第4の補正用コンデンサXC1〜XC4とスライド板35とを具備する負担補正回路30aの構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第3の実施例による負担補正回路30の構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の第4の実施例による負担補正回路30の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0037】
10,10a,30,50,60 負担補正回路
111,112,311,312,511,512,611,612 第1および第2の入力端子
121,122,321,322,521,522,621,622 第1および第2の出力端子
15 スイッチ
20,40 コンデンサ型計器用変圧器
35 スライド板
61 補助変圧器
62 スイッチ
C1 主コンデンサ
C2 分圧用コンデンサ
E2 定格2次電圧
Ib,Ib1,Ib2,IR1,IR2,IC,IL 電流
Pn 定格2次負担
PF 力率
RCS 短絡保証抵抗
RCO 開放保証抵抗
RCM 負担調整用可変抵抗
RC1〜RC3,RC’ 補正用抵抗
XC 力率調整用可変コンデンサ
XC1〜XC4,XC’ 調整用コンデンサ
y 定格2次負担に対する2次負担の目標割合
Zb 実負担インピーダンス
Zb1〜Zb3 負荷インピーダンス
ZC 合成インピーダンス
Φ,φ 位相
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサ型計器用変圧器の負担特性を補正するための負担補正回路(10)であって、
短絡保証抵抗(RCS)と、
該短絡保証抵抗と直列接続された開放保証抵抗(RCO)と、
該開放保証抵抗と並列接続された負担調整用可変抵抗(RCM)と、
を具備することを特徴とする、負担補正回路。
【請求項2】
前記負担調整用可変抵抗が短絡した場合に前記コンデンサ型計器用変圧器の定格2次負担の60%を保証するために、前記短絡保証抵抗の抵抗値が次式により決定されており、
RCS=(5/3)×E22/Pn
ここで、E2:コンデンサ型計器用変圧器の定格2次電圧
Pn:コンデンサ型計器用変圧器の定格2次負担
前記負担調整用可変抵抗が開放した場合に前記短絡保証抵抗と共に前記コンデンサ型計器用変圧器の定格2次負担の70%を保証するために、前記開放保証抵抗の抵抗値が次式により決定されている、
RCO=5×RCS
ことを特徴とする、請求項1記載の負担補正回路。
【請求項3】
前記負担調整用可変抵抗の抵抗値が、次式により決定されている、
RCM=(RCS−RC)RCO/(RC−RCS−RCO)
RC=E22Zb/(yPnZb−E22)
ここで、y:定格2次負担に対する2次負担の目標割合(%)
Zb:実負担インピーダンス
ことを特徴とする、請求項2記載の負担補正回路。
【請求項4】
前記負担調整用可変抵抗の代わりに、
互いに並列接続された第1乃至第3の補正用抵抗(RC1〜RC3)と、
該第1乃至第3の補正用抵抗のうちの1つを選択するためのスイッチ(15)と、
を具備することを特徴とする、請求項1乃至3いずれかに記載の負担補正回路。
【請求項5】
コンデンサ型計器用変圧器の力率特性を補正するための負担補正回路(30)であって、
短絡保証抵抗(RCS)と、
該短絡保証抵抗と直列接続された力率調整用可変コンデンサ(XC)と、
を具備することを特徴とする、負担補正回路。
【請求項6】
前記力率調整用可変コンデンサの代わりに、
互いに並列接続された3個以上の調整用コンデンサ(XC1〜XC4)と、
該3個以上の調整用コンデンサのうちの隣接する2つを前記短絡保証抵抗と直列に接続させるためのスライド板(35)と、
を具備することを特徴とする、請求項5記載の負担補正回路。
【請求項7】
コンデンサ型計器用変圧器の負担特性および力率特性を補正するための負担補正回路(50)であって、
短絡保証抵抗(RCS)と、
該短絡保証抵抗と直列接続された開放保証抵抗(RCO)と、
該開放保証抵抗と並列接続された負担調整用可変抵抗(RCM)と、
前記開放保証抵抗および前記負担調整用可変抵抗と並列接続された力率調整用可変コンデンサ(XC)と、
を具備することを特徴とする、負担補正回路。
【請求項8】
コンデンサ型計器用変圧器の力率特性を補正するための負担補正回路(60)であって、
タップが2次側に設けられた補助変圧器(61)と、
該補助変圧器の前記タップを切り換えるためのスイッチ(62)と、
互いに並列接続された補正用抵抗(RC’)および調整用コンデンサ(XC’)と、
を具備し、
前記スイッチによって前記補助変圧器のタップを切り換えて前記補正用抵抗および前記力率補正用コンデンサの前記補助変圧器の2次側への接続位置を変えることにより力率特性の補正を行う、
ことを特徴とする、負担補正回路。
【請求項9】
請求項1乃至8いずれかに記載の負担補正回路を出力端側に具備することを特徴とする、コンデンサ型計器用変圧器。
【請求項1】
コンデンサ型計器用変圧器の負担特性を補正するための負担補正回路(10)であって、
短絡保証抵抗(RCS)と、
該短絡保証抵抗と直列接続された開放保証抵抗(RCO)と、
該開放保証抵抗と並列接続された負担調整用可変抵抗(RCM)と、
を具備することを特徴とする、負担補正回路。
【請求項2】
前記負担調整用可変抵抗が短絡した場合に前記コンデンサ型計器用変圧器の定格2次負担の60%を保証するために、前記短絡保証抵抗の抵抗値が次式により決定されており、
RCS=(5/3)×E22/Pn
ここで、E2:コンデンサ型計器用変圧器の定格2次電圧
Pn:コンデンサ型計器用変圧器の定格2次負担
前記負担調整用可変抵抗が開放した場合に前記短絡保証抵抗と共に前記コンデンサ型計器用変圧器の定格2次負担の70%を保証するために、前記開放保証抵抗の抵抗値が次式により決定されている、
RCO=5×RCS
ことを特徴とする、請求項1記載の負担補正回路。
【請求項3】
前記負担調整用可変抵抗の抵抗値が、次式により決定されている、
RCM=(RCS−RC)RCO/(RC−RCS−RCO)
RC=E22Zb/(yPnZb−E22)
ここで、y:定格2次負担に対する2次負担の目標割合(%)
Zb:実負担インピーダンス
ことを特徴とする、請求項2記載の負担補正回路。
【請求項4】
前記負担調整用可変抵抗の代わりに、
互いに並列接続された第1乃至第3の補正用抵抗(RC1〜RC3)と、
該第1乃至第3の補正用抵抗のうちの1つを選択するためのスイッチ(15)と、
を具備することを特徴とする、請求項1乃至3いずれかに記載の負担補正回路。
【請求項5】
コンデンサ型計器用変圧器の力率特性を補正するための負担補正回路(30)であって、
短絡保証抵抗(RCS)と、
該短絡保証抵抗と直列接続された力率調整用可変コンデンサ(XC)と、
を具備することを特徴とする、負担補正回路。
【請求項6】
前記力率調整用可変コンデンサの代わりに、
互いに並列接続された3個以上の調整用コンデンサ(XC1〜XC4)と、
該3個以上の調整用コンデンサのうちの隣接する2つを前記短絡保証抵抗と直列に接続させるためのスライド板(35)と、
を具備することを特徴とする、請求項5記載の負担補正回路。
【請求項7】
コンデンサ型計器用変圧器の負担特性および力率特性を補正するための負担補正回路(50)であって、
短絡保証抵抗(RCS)と、
該短絡保証抵抗と直列接続された開放保証抵抗(RCO)と、
該開放保証抵抗と並列接続された負担調整用可変抵抗(RCM)と、
前記開放保証抵抗および前記負担調整用可変抵抗と並列接続された力率調整用可変コンデンサ(XC)と、
を具備することを特徴とする、負担補正回路。
【請求項8】
コンデンサ型計器用変圧器の力率特性を補正するための負担補正回路(60)であって、
タップが2次側に設けられた補助変圧器(61)と、
該補助変圧器の前記タップを切り換えるためのスイッチ(62)と、
互いに並列接続された補正用抵抗(RC’)および調整用コンデンサ(XC’)と、
を具備し、
前記スイッチによって前記補助変圧器のタップを切り換えて前記補正用抵抗および前記力率補正用コンデンサの前記補助変圧器の2次側への接続位置を変えることにより力率特性の補正を行う、
ことを特徴とする、負担補正回路。
【請求項9】
請求項1乃至8いずれかに記載の負担補正回路を出力端側に具備することを特徴とする、コンデンサ型計器用変圧器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2009−188006(P2009−188006A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−23671(P2008−23671)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]