説明

負極、二次電池、負極の製造方法

【課題】高容量と長いサイクル寿命とを共に実現することを可能にする負極、及びこの負極を用いた二次電池を提供する。
【解決手段】負極集電体11と負極活物質とから構成され、負極活物質が、黒鉛とリチウムと合金化可能な金属との複合材料であって、この金属が、平均粒子径が10nm〜100nmの微粒子となっており、かつ黒鉛の層構造の表面に付着成長している負極10を構成する。また、この負極10を用いて、二次電池を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負極、負極を用いた二次電池、並びに負極の製造方法に係わる。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化に伴い、高エネルギー密度を有する電池の開発が要求されている。
この要求に応える電池として、リチウム二次電池がある。
しかし、リチウム二次電池では、充電時において負極上にリチウム(Li)がデンドライト析出して不活性化するため、サイクル寿命が短いという問題がある。
【0003】
そこで、サイクル寿命を改善した二次電池として、リチウムイオン二次電池が製品化されている。
このリチウムイオン二次電池の負極には、黒鉛層間へのリチウムのインターカレーション反応を利用した黒鉛材料、或いは細孔中へのリチウムの吸蔵・放出作用を応用した炭素質材料等の負極活物質が用いられている。そのため、リチウムイオン二次電池では、リチウムがデンドライト析出せず、サイクル寿命が長い。
また、黒鉛材料或いは炭素質材料は、空気中で安定であるので、工業的に生産する上でもメリットが大きい。
【0004】
しかしながら、インターカレーションによる負極容量は、第1ステージ黒鉛層間化合物の組成CLiに規定されるように、黒鉛層間化合物の組成によって規定される上限が存在する。
一方、細孔を有する炭素質材料においては、微小な細孔構造を制御することが工業的に困難である。また、細孔を有することにより、炭素質材料の比重が低下するため、単位体積当たりの容量の向上への有効な手段とはなり得ない。
さらに、ある種の低温焼成炭素質材料では、1000mAh/gを越える負極放電容量を示すことが知られているが、この材料は、対リチウム金属において0.8V以上の貴な電位で大きな容量を有するため、金属酸化物等を正極に用い電池を構成した場合に放電電圧が低下する等の問題があった。
【0005】
このような理由から、現状の炭素質材料では、今後の更なる電子機器の使用時間の長時間化、電源の高エネルギー密度化に対応することが困難と考えられ、よりいっそうリチウムの吸蔵・放出能力の大きい負極活物質が望まれている。
【0006】
一方、より高容量を実現可能な負極活物質としては、ある種のリチウム合金が電気化学的かつ可逆的に生成及び分解することを応用した材料が広く研究されてきた。
例えば、リチウム−アルミニウム合金やリチウム−ケイ素合金(例えば、特許文献1参照)が提案されている。
しかしながら、これらの合金は、電池の負極に用いた場合、サイクル特性を劣化させてしまうという問題があった。その原因の1つとしては、これらの合金は、充放電に伴い膨張収縮するため、充放電を繰り返す度に微粉化することによって、電気的な接触が充分でなくなることが挙げられる。
【0007】
そこで、合金負極の欠点を改善するために、金属又は金属質物と黒鉛質物及び/又は炭素質物(黒鉛構造ではないもの)との複合化が検討されている。
【0008】
この複合化の一例として、金属又は金属質物と、粒子状又は繊維状の黒鉛質物とを、炭素質物で結合又は被覆した複合材料が提案されている(例えば、特許文献2や特許文献3参照)。
上記特許文献2に記載された複合材料は、アルゴンレーザーを用いたラマン分光法によって測定した、表面のDバンド1360cm−1のピーク強度IDとGバンド1580cm−1のピーク強度IGとの比ID/IG(R値)が、0.4以上を示す。
【0009】
複合化の他の例として、シリコン含有粒子と炭素含有粒子とからなる多孔性粒子を、炭素で被覆した負極材料が提案されている(例えば、特許文献4や特許文献5参照)。
【0010】
複合化のさらに他の例として、リチウムと合金化可能な金属、鱗片状黒鉛、並びに炭素質物を含有する複合黒鉛粒子が提案されている(例えば、特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第4950566号明細書
【特許文献2】特開平5−286763号公報
【特許文献3】特開平8−231273号公報
【特許文献4】特開2002−216751号公報
【特許文献5】特開2002−270170号公報
【特許文献6】特開2005−243508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記特許文献2に記載された複合材料は、黒鉛構造ではない炭素質物の含有量の最適値が10%〜30%と比較的多くなっており、特に非晶質の炭素質物の割合が高くなっている。
また、上記特許文献3に記載された複合材料も、黒鉛構造ではない炭素質物の含有量が20〜80重量%と多くなっている。
そして、黒鉛構造ではない炭素質物は、黒鉛質物に比べて、電解液の分解反応が生じにくくなるが、放電容量が小さくなり、さらに充電されたリチウムイオンが細孔にトラップされて放電されなくなることに起因して、不可逆容量が大きくなってしまう。
そのため、炭素質物の絶対含有量が多いと、放電容量及び初期充放電効率の低下が大きくなることがある。
【0013】
上記特許文献4に記載された複合材料は、シリコン含有量が10〜90重量%と多いため、シリコンの充電膨張及び放電収縮による微粉化に起因するサイクル特性の低下が大きくなる。
また、多孔性粒子の外表面を炭素で均一に完全に被覆することが必須であるため、20質量%以上の多量の炭素含有量が必要になり、特許文献2及び特許文献3に記載された複合材料と同様な問題を生じることになる。
【0014】
上記特許文献6に記載された複合黒鉛粒子は、黒鉛構造ではない炭素質物の含有量が1質量%以上20質量%未満と少なくなっているが、やはり合金そのものの微粉化は避けることができないため、微粉化によりサイクル特性が低下する。
【0015】
即ち、従来提案されている複合材料では、サイクル特性の改善の効果は充分とは言えず、高容量とサイクル特性の改善とを共に実現するまでには至っていない。
【0016】
上述した問題の解決のために、本発明においては、高容量と長いサイクル寿命とを共に実現することを可能にする負極及びこの負極を用いた二次電池、並びに負極の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の負極は、負極集電体と負極活物質とから構成され、この負極活物質が、黒鉛とリチウムと合金化可能な金属との複合材料であって、この金属が、平均粒子径が10nm〜100nmの微粒子となっており、かつ黒鉛の層構造の表面に付着成長しているものである。
本発明の二次電池は、正極及び負極と共に電解質を備え、負極が上記本発明の負極の構成であるものである。
【0018】
本発明の負極の製造方法は、黒鉛の層間に、リチウムと合金化可能な金属の化合物がゲストとして挿入された黒鉛層間化合物の前駆体を作製する工程と、この前駆体を還元することにより、金属を黒鉛の層間から取り出して黒鉛に付着成長させる工程とを有して、黒鉛と金属との複合材料から成る負極を作製するものである。
【0019】
上述の本発明の負極の構成によれば、負極活物質が、黒鉛とリチウムと合金化可能な金属との複合材料であって、この金属が、平均粒子径が10nm〜100nmの微粒子となっており、かつ黒鉛の層構造の表面に付着成長していることにより、リチウムと合金化可能な金属が、黒鉛という導電性マトリックスと共に存在している。これにより、金属と黒鉛との電気的な接触が充分になされ電気伝導性を確保することができ、また金属を微粒子化しても、導電性マトリックスと共に存在しているので、金属の微粒子によって電解液が分解しないように抑制することができる。
そして、負極活物質がリチウムと合金化可能な金属を有するので、負極を備えた電池の容量を高めることが可能になる。
【0020】
上述の本発明の二次電池の構成によれば、負極が上記本発明の負極の構成であることにより、負極において金属と黒鉛との電気的な接触が充分になされ電気伝導性を確保することができるため、充放電に伴う負極活物質の体積の膨張・収縮による電気伝導性の低下を抑制することができる。
また、金属の微粒子によって電解液が分解しないように抑制することができるので、サイクル特性を改善することができる。
さらにまた、負極の負極活物質が金属と黒鉛との複合材料であり、ベースが黒鉛であって、黒鉛構造ではない炭素質物を必要としないため、このような炭素質物による放電容量や初期充放電効率の低下を回避することが可能になる。
【0021】
上述の本発明の負極の製造方法によれば、黒鉛の層間に、リチウムと合金化可能な金属の化合物がゲストとして挿入された黒鉛層間化合物の前駆体を作製する工程と、この前駆体を還元することにより金属を黒鉛の層間から取り出して黒鉛に付着成長させる工程とを有して、この黒鉛層間化合物から成る負極を作製することにより、前駆体において金属の化合物は黒鉛の層間にあることから微粒子の状態である。そして、この前駆体を還元することにより金属を黒鉛の層間から取り出して黒鉛に付着成長させるので、金属の化合物から還元された金属が、凝集しないで微粒子の状態で黒鉛に付着成長する。
これにより、上述したように、金属を微粒子化しても、導電性マトリックスと共にあって、金属の微粒子によって電解液が分解しないように抑制することが可能な負極が作製される。
【発明の効果】
【0022】
上述した本発明の負極及び二次電池の構成によれば、金属の微粒子によって電解液が分解しないように抑制することができるので、サイクル特性を改善することができる。また、電気伝導性を確保することができるため、充放電に伴う負極活物質の体積の膨張・収縮による電気伝導性の低下を抑制することができることにより、サイクル特性を改善することができる。
これにより、充分なサイクル特性を有し、寿命の長い二次電池を実現することが可能になる。
【0023】
また、上述した本発明の負極及び二次電池の構成によれば、炭素質物による放電容量や初期充放電効率の低下を回避することが可能になることから、放電容量や初期充放電効率を充分に確保することが可能になる。
これにより、高容量の二次電池を実現することが可能になる。
【0024】
従って、本発明により、高容量と長いサイクル寿命とを共に実現する二次電池を構成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施の形態に係る負極の概略構成図(断面図)である。
【図2】ラミネートフィルムを外装とする二次電池の構成を分解して示す図である。
【図3】図2の巻回電極体のI−I線に沿った断面構造を示す図である。
【図4】本発明を適用する円筒缶電池の一形態の断面構造を示す図である。
【図5】実施例1の黒鉛層間化合物のTEM像である。
【図6】実施例1の黒鉛層間化合物の粒径分布の測定結果を示す図である。
【図7】実施例1の黒鉛層間化合物の制限視野電子線回折像である。
【図8】A グラファイト2倍周期構造の模式的平面図である。 B グラファイト3倍周期構造の模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明による負極を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明するが、本発明は以下の形態に限定されるものではない。また、本発明による負極を用いた電池については、負極と併せて説明する。
【0027】
本発明の一実施の形態に係る負極の概略構成図(断面図)を、図1に示す。
図1に示す負極10は、例えば、一対の対向面を有する負極集電体11と、負極集電体11の片面に設けられた負極活物質層12とを有している。
なお、図示しないが、負極集電体11の両面に負極活物質層12を設けるようにしてもよい。
【0028】
負極集電体11は、良好な電気化学的安定性、電気伝導性及び機械的強度を有することが好ましく、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、或いはステンレス等の、金属材料により構成されている。
【0029】
本実施の形態においては、特に、負極活物質層12の負極活物質として、黒鉛(ホスト)の層間に、リチウムと合金化可能な金属の微粒子(ゲスト)を、インターカレートして成る、金属の黒鉛層間化合物を使用する。
【0030】
そして、上述の黒鉛層間化合物において、ゲストである金属の微粒子は、1μm未満のナノレベル(サブミクロン)の微粒子とする。
より好ましくは、金属の微粒子の黒鉛の面内方向の平均粒子径が1nm〜100nmである構成とする。
【0031】
リチウムと合金を形成することができる金属としては、Sn,Ca,Sr,Ba,Ir,Ag,Al,Ga,In,Ti,Si,Pb,Sb,Bi,Te,Cd,Hg,Bから選択することができる。
より好ましくは、Sn,Si,Pb,Al,Gaから選ばれる金属を用いる。
【0032】
ホストとなる黒鉛としては、天然黒鉛及び人造黒鉛(例えば、メソフューズ系球晶黒鉛)のいずれを使用してもよい。
【0033】
また、上述の黒鉛層間化合物は、同一ステージの層間化合物のみであっても、複数のステージの層間化合物が混合されたものであってもよい。
第1ステージの層間化合物は、ホストの黒鉛層とゲストの金属層とが1層ずつ交互にある構造となっている。
第2ステージの層間化合物は、ゲストの金属層の間に、2層の黒鉛層が入っている構造となっている。
第3ステージの層間化合物は、ゲストの金属層の間に、3層の黒鉛層が入っている構造となっている。
層間化合物のステージ数が小さいほど、即ち、第1ステージに近づくほど、金属層の比率が増えるため、容量を大きくすることができると考えられる。
【0034】
ゲストの金属層は、面内方向の擬2次元微粒子構造をもっていることが好ましく、より好ましくは、黒鉛のc軸方向(層に垂直な方向)の平均粒子厚さが0.335nm〜10nmである構成とする。
【0035】
金属層における金属の結晶構造は、黒鉛層のヘキサゴナル構造にならって、ヘキサゴナル構造となる。
また、黒鉛層のヘキサゴナル構造の周期よりも、長い周期のヘキサゴナル構造となっている。
【0036】
負極活物質層12は、上述した黒鉛層間化合物から成る負極活物質の他に、結着剤として、フッ素系高分子バインダ樹脂、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)を含んでいる。
フッ素系高分子バインダ樹脂は、ゴム系のバインダ樹脂に比べて、いわゆるスプリングバック(弾性回復)が小さく、高温での加温プレスが可能なため、負極活物質の体積密度を1.80g/cm以上の高密度にすることができる。なお、負極活物質の体積密度は、1.80g/cm以上の範囲とすることで、負極における電子伝導性が良くなり、負極の放電負荷特性を向上させることができる。
【0037】
本実施の形態の負極10は、例えば、次のようにして、製造することができる。
【0038】
まず、黒鉛と、ゲストとなる金属の化合物(例えば、金属の塩化物)とを混合する。
次に、得られた混合物に、層間化合物を作製するために必要となる物質を添加して、容器を密閉して、所定の条件下で保持する。これにより、金属の化合物(例えば、塩化物)が黒鉛の層間にインターカレートされた層間化合物を作製する。以下、金属の化合物が層間にインターカレートされた、この層間化合物を、前駆体と呼ぶ。
【0039】
続いて、前駆体に対して還元を行うことにより、ゲストが金属である黒鉛層間化合物を作製する。
例えば、リチウム金属と前駆体とを、テトラヒドロフラン(THF)溶液中で混合することにより、前駆体の還元を行うことができる。
より具体的には、例えば、リチウム金属とナフタレンとをテトラヒドロフラン(THF)溶液中で混合してから、超音波照射を行い、リチウムが黒色化したところで超音波照射を停止して前駆体を加え、その状態で保持することにより、前駆体の還元を行うことができる。
【0040】
次に、得られた黒鉛層間化合物と、結着剤(例えば、フッ素系高分子バインダ樹脂)とを混合して負極合剤を調整する。
そして、この負極合剤を、N−メチル−2−ピロリドン等の溶剤に分散させて、ペースト状の負極合剤スラリーとする。
続いて、この負極合剤スラリーを負極集電体11に塗布して、溶剤を乾燥させる。
その後、ロールプレス機等により圧縮成型することにより、負極集電体11上に負極活物質層12を形成して、負極10を作製することができる。
【0041】
前駆体の具体的な作製方法は、使用する金属元素や化合物の種類にもよるが、金属化合物として塩化物を使用する場合には、以下に挙げる方法が考えられる。
一つの方法として、例えば、混合物を入れた容器を真空引きした後に、塩素ガスを充填させて、密閉した状態で保持する。保持の条件は、金属塩化物の融点以上の温度で、例えば3日程度とする。
他の方法として、例えば、混合物に、CClとSOClとを適量ずつ混合した後に、密閉して、超音波を照射しながら保持する。保持の期間は、例えば2日程度とする。
【0042】
なお、黒鉛層間化合物の作製方法は、上述した方法に限定されるものではなく、その他の方法も採りうる。
【0043】
この負極10は、例えば、次のようにして、ラミネートフィルムを外装とする二次電池に用いられる。
【0044】
ラミネートフィルムを外装とする二次電池の構成を分解して、図2に示す。
この二次電池は、正極リード21及び負極リード22が取り付けられた巻回電極体20を、フィルム状の外装部材30の内部に封入したものである。
【0045】
正極リード21及び負極リード22は、外装部材30の内部から外部に向かい、例えば同一方向にそれぞれ導出されている。正極リード21及び負極リード22は、例えば、アルミニウム(Al)、銅、ニッケル、ステンレス等の金属材料によりそれぞれ構成されており、それぞれ薄板状又は網目状とされている。
【0046】
外装部材30は、例えば、ナイロンフィルム、アルミニウム箔、並びにポリエチレンフィルムを、この順に貼り合わせた矩形状のラミネートフィルムにより構成されている。この外装部材30は、例えば、ポリエチレンフィルム側と巻回電極体20とが対向するように配設されており、各外縁部が融着或いは接着剤により互いに密着されている。
【0047】
なお、外装部材30は、上述したラミネートフィルムに代えて、他の構造を有するラミネートフィルム、ポリプロピレン等の高分子フィルム、金属フィルムにより構成するようにしてもよい。
【0048】
図2に示した巻回電極体20のI−I線に沿った断面構造を、図3に示す。
巻回電極体20は、正極23と負極10とをセパレータ24を介して積層し、巻回したものであり、最外周部は保護テープ25により保護されている。
【0049】
負極10は、上述した構成を有しており、例えば、負極集電体11と、この負極集電体11の両面或いは片面に設けられた負極活物質層12を有している。これにより、高容量で、優れたサイクル特性等が得られるようになっている。負極集電体11には、長手方向における一方の端部に負極活物質層11が設けられず露出している部分があり、この露出部分に負極リード22が取り付けられている。なお、図3では、負極活物質層12は、負極集電体11の両面に形成されているように表されている。
【0050】
正極23は、例えば、正極集電体23Aと、この正極集電体23Aの両面或いは片面に設けられた正極活物質層23Bを有している。
正極集電体23Aには、長手方向における一方の端部に正極活物質層23Bが設けられず露出している部分があり、この露出部分に正極リード21が取り付けられている。正極集電体23Aは、例えば、アルミニウム箔、ニッケル箔、ステンレス箔等の金属材料により構成されている。
正極活物質層23Bは、正極活物質から成る。
【0051】
正極活物質の材料としては、リチウムを吸蔵及び離脱させることが可能な材料、例えば、リチウム酸化物、リチウム硫化物、或いはリチウムを含む層間化合物等のリチウム含有化合物が適当であり、これらの2種以上を混合して用いてもよい。
特に、エネルギー密度を高くするには、一般式LiMOで表されるリチウム複合酸化物、或いはリチウムを含んだ層間化合物が好ましい。なお、Mは1種類以上の遷移金属が好ましく、具体的には、コバルト(Co)、ニッケル、マンガン(Mn)、鉄、アルミニウム、バナジウム(V)、チタン(Ti)のうちの少なくとも1種が好ましい。xは、電池の充放電状態によって異なり、通常、0.05≦x≦1.10の範囲内の値である。
また、他にも、スピネル型結晶構造を有するマンガンスピネル(LiMn)や、オリビン型結晶構造を有するリン酸鉄リチウム(LiFePO)等も、高いエネルギー密度を得ることができるので好ましい。
【0052】
また、リチウムを吸蔵及び離脱することが可能な正極材料として、他の金属化合物や高分子材料も挙げられる。
他の金属化合物としては、例えば、酸化チタン、酸化バナジウム、二酸化マンガン等の酸化物、又は硫化チタンや硫化モリブデン等の二硫化物が挙げられる。
高分子材料としては、例えば、ポリアニリンやポリチオフェンが挙げられる。
【0053】
正極活物質層23Bは、例えば導電剤を含んでおり、必要に応じて更に結着剤を含んでいてもよい。
導電剤としては、例えば、黒鉛、カーボンブラック、ケッチェンブラック等の炭素材料が挙げられる。また、炭素材料の他にも、導電性を有する材料であれば、金属材料或いは導電性高分子材料等を用いるようにしてもよい。導電剤は、いずれか1種を用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
結着剤としては、例えば、スチレンブタジエン系ゴム,フッ素系ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム等の合成ゴム、ポリフッ化ビニリデン等の高分子材料が挙げられる。結着剤は、いずれか1種を用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0054】
セパレータ24は、正極と負極とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。このセパレータ24は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン等の合成樹脂製の多孔質膜、又はセラミック製の多孔質膜により構成されており、これら2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。なかでも、ポリオレフィン製の多孔質膜は、ショート防止効果に優れ、かつシャットダウン効果による電池の安全性向上を図ることができるので好ましい。特に、ポリエチレンは、100℃以上160℃以下の範囲内においてシャットダウン効果を得ることができ、かつ電気化学的安定性にも優れているので、セパレータ24を構成する材料として好ましい。また、ポリプロピレンも好ましく、他にも化学的安定性を備えた樹脂であればポリエチレン或いはポリプロピレンと共重合させたり、又はブレンド化させたりすることで用いることができる。
【0055】
セパレータ24に含浸された電解液は、液状の溶媒、例えば有機溶剤等の非水溶媒と、この非水溶媒に溶解された電解質塩と、必要に応じて添加剤とを含んでいる。液状の非水溶媒というのは、例えば、非水化合物よりなり、25℃における固有粘度が10.0mPa・s以下のものを言う。なお、電解質塩を溶解した状態での固有粘度が10.0mPa・s以下のものでもよく、複数種の非水化合物を混合して溶媒を構成する場合には、混合した状態での固有粘度が10.0mPa・s以下であればよい。
【0056】
非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピロニトリル、N,N−ジメチルフォルムアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、ジメチルスルフォキシド、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル等が挙げられる。
【0057】
特に、優れた充放電容量特性及び充放電サイクル特性を実現するためには、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ジメチルカーボネート及びエチルメチルカーボネート、エチレンサルファイトのうちの少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0058】
また、非水溶媒に常温溶融塩を含むこともできる。なかでも、4級アンモニウムカチオンとフッ素原子含有アニオンとから成る4級アンモニウム塩構造をとるものが好ましい。例えば、下記のアンモニウムカチオン群から選ばれた少なくとも1つのアンモニウムカチオン群と下記のアニオン群から選ばれた少なくとも1つのアニオンから成る塩構造を挙げることができる。
【0059】
アンモニウムカチオン群としては、ピロリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、ベンズイミダゾリウムカチオン、インドリウムカチオン、カルバゾリウムカチオン、キノリニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピペラジニウムカチオン、アルキルアンモニウムカチオン(但し,炭素数1〜30の炭化水素基、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキルで置換されているものを含む。)等が挙げられる。なお、いずれのものも、窒素原子N及び/又は環に炭素数1〜10の炭化水素基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基が結合しているものを含む。
【0060】
アニオン群としては、BF,PF,C2n+1CO(但しnは1〜4の整数),C2n+1SO(但しnは1〜4の整数),(FSON,(CFSON,(CSON,(CFSOC,CFSO−N−COCF,R−SO−N−SOCF(Rは脂肪族基),ArSO−N−SOCF(Arは芳香族基)等が挙げられる。
【0061】
電解質塩には、目的に応じた特性を得るために、下記のリチウム塩のいずれか1種又は2種以上を含んでいてもよい、
このリチウム塩としては、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、過塩素酸リチウム(LiClO)、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiSOCF)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiN[SO(CF)])、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチルリチウム(LiC[SO(CF)])、塩化リチウム(LiCl)、臭化リチウム(LiBr)、等が挙げられる。
【0062】
なお、電解液に代えて、高分子化合物に電解液を保持させたゲル状の電解質を用いてもよい。電解液(即ち、液状の溶媒及び電解質塩)については上述した通りである。
高分子化合物としては、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンとポリヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレン、ポリカーボネートが挙げられる。特に、電気化学的安定性の点からは、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイドの構造を持つ高分子化合物を用いることが望ましい。
なお、電解液に対する高分子化合物の添加量は、両者の相溶性によっても異なるが、通常、電解液の5質量%〜50質量%に相当する高分子化合物を添加することが好ましい。
【0063】
このようにして得られた電極材料は、各種の電池の電極として利用可能であり、電池の種類は特に限定されないが、好ましくは二次電池の電極に用いられる。特に好ましい二次電池としては、過塩素酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、六フッ化リン酸リチウムのようにアルカリ金属塩を含む非水電解液を用いた二次電池を挙げることができる。
【0064】
また、本実施の形態において、正極材料、負極材料を集電体に塗布して電極シートを作製する方法は特に限定されないが、本発明の性質上、結着材や導電材等と共に溶媒に分散させた溶液を塗布後、乾燥させたり、活物質を導電性結着材や導電材と結着材の混合物を用いたりして集電体に張り付ける方法が一般的である。
また、本実施の形態における正極及び負極の各集電体23A,11は、金属を箔状、網状、ラス状等の形態で用いることが可能であるが、これらの形態に限定されるものではない。
【0065】
上述の本実施の形態の負極10によれば、黒鉛の層間に、リチウムと合金化可能な金属の微粒子がインターカレートされて成る黒鉛層間化合物を負極活物質として使用して、負極活物質層12を構成していることにより、リチウムと合金化可能な金属が、黒鉛の層間という導電性マトリックス内にある。
これにより、黒鉛との電気的な接触が充分になされ、充放電に伴う体積の膨張・収縮による電気伝導性の低下を抑制することができる。また、金属を微粒子化しても、導電性マトリックス内に囲われているので、金属の微粒子によって電解液が分解しないように抑制することができる。
従って、サイクル特性を改善することができ、充分なサイクル特性が得られる。
【0066】
また、負極活物質がリチウムと合金化可能な金属を有するので、負極を備えた電池の容量を高めることが可能になる。
【0067】
さらにまた、負極活物質が黒鉛層間化合物であり、ベースが黒鉛であって、黒鉛構造ではない炭素質物を必要としないため、このような炭素質物による放電容量や初期充放電効率の低下を回避することが可能になる。
これにより、放電容量や初期充放電効率を充分に確保することが可能になる。
【0068】
また、本実施の形態の負極10を使用して構成された二次電池によれば、負極10が充分なサイクル特性と、充分な放電容量や初期放電効率とを有するので、高容量であり、かつ長いサイクル寿命を有する二次電池を実現することができる。
【0069】
また、前述した負極10の製造方法によれば、黒鉛の層間にリチウムと合金化可能な金属の化合物がゲストとして挿入された黒鉛層間化合物の前駆体を作製するので、この前駆体において、金属の化合物は、黒鉛の層間にあることから微粒子の状態である。
その後、この前駆体を還元して金属の黒鉛層間化合物を作製するので、金属の化合物から還元された金属が、黒鉛の層間にあって微粒子の状態が保たれる。
これにより、上述したように、金属を微粒子化しても、導電性マトリックス内に囲われていて、金属の微粒子によって電解液が分解しないように抑制することが可能な負極10を作製することができる。
【0070】
なお、金属の微粒子は、全てが黒鉛の層間に入り込んでいることが望ましいが、本発明では、金属の粒子の一部が黒鉛の層間以外に存在する場合も含むものである。
【0071】
続いて、本発明の他の実施の形態について説明する。
本実施の形態においても、先の実施の形態と同様に、図1に示したように、一対の対向面を有する負極集電体11と、負極集電体11の片面に設けられた負極活物質層12とを有する負極10を構成する。
なお、図示しないが、負極集電体11の両面に負極活物質層12を設けるようにしてもよい。
【0072】
本実施の形態では、特に、負極活物質層12の負極活物質として、黒鉛の層構造(グラフェンシート)の表面に、リチウムと合金化可能な金属の微粒子が付着成長して成る、金属の黒鉛層間化合物を使用する。
そして、黒鉛の層構造(グラフェンシート)の表面に付着成長した、リチウムと合金化可能な金属の微粒子は、平均粒子径が10nm〜100nmの範囲内である構成とする。
【0073】
金属の微粒子の平均粒子径が100nmを超えると、前述した微粉化に起因するサイクル特性の低下の問題を生じる虞があるので、好ましくない。
【0074】
リチウムと合金を形成することができる金属としては、Sn,Ca,Sr,Ba,Ir,Ag,Al,Ga,In,Ti,Si,Pb,Sb,Bi,Te,Cd,Hg,Bから選択することができる。
より好ましくは、Sn,Si,Pb,Al,Gaから選ばれる金属を用いる。
【0075】
黒鉛としては、天然黒鉛及び人造黒鉛(例えば、メソフューズ系球晶黒鉛)のいずれを使用してもよい。
【0076】
その他の構成は、先の実施の形態と同様にして、本実施の形態の負極10を構成することができる。
【0077】
本実施の形態の負極10は、例えば、次のようにして、製造することができる。
【0078】
まず、先の実施の形態で説明した製造方法と同様にして、金属の化合物(例えば、塩化物)が黒鉛の層間にインターカレートされた層間化合物を作製し、これを前駆体とする。
【0079】
続いて、前駆体に対して還元を行うことにより、黒鉛の層間にインターカレートされた金属化合物を金属に還元すると共に、黒鉛の層間から取り出して、黒鉛の層構造(グラフェンシート)に金属の微粒子を付着成長させる。
例えば、前駆体を水素ガス雰囲気中において、金属の融点以下の温度で反応させることにより、黒鉛の層構造に金属の微粒子を付着成長させることができる。
これにより、黒鉛の層構造に金属の微粒子が付着成長した複合材料を作製する。
【0080】
次に、得られた複合材料と、結着剤(例えば、フッ素系高分子バインダ樹脂)とを混合して負極合剤を調整する。
そして、この負極合剤を、N−メチル−2−ピロリドン等の溶剤に分散させて、ペースト状の負極合剤スラリーとする。
続いて、この負極合剤スラリーを負極集電体11に塗布して、溶剤を乾燥させる。
その後、ロールプレス機等により圧縮成型することにより、負極集電体11上に負極活物質層12を形成して、負極10を作製することができる。
【0081】
なお、黒鉛の層構造に金属の微粒子が付着成長した複合材料の作製方法は、上述した方法に限定されるものではなく、その他の方法も採りうる。
【0082】
また、本実施の形態の負極10を使用して、図2及び図3に示した二次電池を構成することができる。
そして、正極や電解液、セパレータ等、負極10以外の構成は、先の実施の形態と同様にして二次電池を構成することができる。
【0083】
なお、本実施の形態では、金属の微粒子が黒鉛の層内ではなく、層構造に付着成長しているので、黒鉛の表面に露出している微粒子がある。
そのため、好ましくは、電解液にフルオロエチレンカーボネート(FEC)を含有させる。
電解液にフルオロエチレンカーボネートを含んでいることにより、金属の微粒子の表面に良好な被膜が形成されるため、電解液の過剰な分解を抑制して、比表面積が大きな負極活物質であっても良好な電池特性を実現することが可能になる。
同様の作用を有する材料であれば、フルオロエチレンカーボネート以外の他の材料を電解液に含有させても、同様の効果を得ることができる。
【0084】
また、本実施の形態においても、正極材料、負極材料を集電体に塗布して電極シートを作製する方法は特に限定されないが、本発明の性質上、結着材や導電材等と共に溶媒に分散させた溶液を塗布後、乾燥させたり、活物質を導電性結着材や導電材と結着材の混合物を用いたりして集電体に張り付ける方法が一般的である。
また、本実施の形態における正極及び負極の各集電体は、金属を箔状、網状、ラス状等の形態で用いることが可能であるが、これらの形態に限定されるものではない。
【0085】
上述の本実施の形態の負極10によれば、黒鉛の層構造(グラフェンシート)の表面に、リチウムと合金化可能な金属の微粒子が付着成長した複合材料を負極活物質として使用して、負極活物質層12を構成していることにより、リチウムと合金化可能な金属が、黒鉛という導電性マトリックスと共に存在している。
これにより、黒鉛との電気的な接触が充分になされ、充放電に伴う体積の膨張・収縮による電気伝導性の低下を抑制することができる。また、金属を微粒子化しても、黒鉛の導電性マトリックスと共に存在しているので、黒鉛と金属粒子とが別々にある混合品と比較して、金属の微粒子によって電解液が分解しないように抑制することができる。
従って、サイクル特性を改善することができ、充分なサイクル特性が得られる。
【0086】
また、負極活物質がリチウムと合金化可能な金属を有するので、負極を備えた電池の容量を高めることが可能になる。
【0087】
さらにまた、負極活物質のベースが黒鉛であって、黒鉛構造ではない炭素質物を必要としないため、このような炭素質物による放電容量や初期充放電効率の低下を回避することが可能になる。
これにより、放電容量や初期充放電効率を充分に確保することが可能になる。
【0088】
また、本実施の形態の負極10を使用して構成された二次電池によれば、負極10が充分なサイクル特性と、充分な放電容量や初期放電効率とを有するので、高容量であり、かつ長いサイクル寿命を有する二次電池を実現することができる。
【0089】
また、前述した負極10の製造方法によれば、黒鉛の層間にリチウムと合金化可能な金属の化合物がゲストとして挿入された黒鉛層間化合物の前駆体を作製するので、この前駆体において、金属の化合物は、黒鉛の層間にあることから微粒子の状態である。
その後、この前駆体を還元することにより金属を黒鉛の層間から取り出して黒鉛の層構造(グラフェンシート)の表面に付着成長させるので、金属の化合物から還元された金属が、凝集しないで微粒子の状態で黒鉛に付着成長する。
これにより、上述したように、金属を微粒子化しても、導電性マトリックスと共にあって、金属の微粒子によって電解液が分解しないように抑制することが可能な負極10を作製することができる。
【0090】
なお、金属の微粒子は、全てが黒鉛の層構造に付着成長していることが望ましいが、本発明では、金属の粒子の一部が黒鉛の層構造以外に存在する場合も含むものである。
【0091】
上述した各実施の形態では、正極及び負極を巻回する場合について説明したが、正極と負極とを複数積層するようにしてもよく、また、折り畳むようにしてもよい。
さらに、本発明は、外装部材に缶を用いた円筒型、楕円型、角型、多角形型、コイン型、ボタン型等の電池にも適用することができる。
さらに本発明の負極は、二次電池に限らず、一次電池についても適用することもできる。
【0092】
ここで、本発明を、円筒型の缶を用いた電池(円筒缶電池)に適用した場合の電池の一形態を、以下に示す。
【0093】
本形態に係る円筒缶電池の断面構造を、図4に示す。
図4に示すように、本形態の円筒缶電池は、ほぼ中空円柱状の電池缶31の内部に、例えば微多孔性ポリエチレン延伸フィルムより成るセパレータ43を介して、帯状の正極41と負極42とが巻回された巻回電極体40を有している。
【0094】
巻回電極体40は、セパレータ、負極、セパレータ、正極の順に積層してから多数回巻回することにより形成された、ジェリーロール型の巻回電極体から構成されている。
【0095】
電池缶31は、例えば、ニッケル(Ni)のめっきがされた鉄(Fe)により構成され、一端部が閉鎖され他端部が開放されている。
電池缶31の内部には、巻回電極体40を挟むように巻回周面に対して垂直に、一対の絶縁板32,33がそれぞれ配置されている。
電池缶31の開放端部には、電池蓋34が、ガスケット37を介してかしめられることにより取り付けられており、電池缶31の内部は密閉されている。電池蓋34は、電池缶31と同様の材料により構成されている。ガスケット37は、絶縁材料により構成されており、表面にはアスファルトが塗布されている。
【0096】
巻回電極体40の中心には、例えばセンターピン44が挿入されている。
巻回電極体40の正極41には、例えばアルミニウムよりなる正極リード45が、安全機構35に溶接されることで電池蓋34と電気的に接続されている。
巻回電極体40の負極42には、例えばニッケルより成る負極リード46が接続されており、この負極リード46は溶接により電池缶31へ電気的に接続されている。
【0097】
電池缶31の内部には、図示しないが電解液が注入されている。
電解液としては、前述した各種の電解液を使用することができる。例えば、炭酸エチレンと炭酸ジエチルとの混合溶媒(例えば、体積比1:1で混合)にLiPF等の電解質を使用することができる。
【0098】
そして、本形態の円筒缶電池において、負極42の負極活物質として、前述した各実施の形態の負極10と同様の負極活物質、即ち、リチウムと合金化可能な金属の黒鉛層間化合物、又は黒鉛の層構造にリチウムと合金化可能な金属の微粒子が付着成長した材料、を使用することができる。いずれか1種のみ、又は2種の併用の、どちらも可能である。
本形態の円筒缶電池においても、このような前述した各実施の形態の負極10と同様の負極活物質を使用することにより、高容量と長いサイクル寿命とを実現することができる。
【0099】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述した各実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【実施例】
【0100】
以下、実施例をもって本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、これにより限定されるものではない。
【0101】
(実施例1)
負極活物質のベースとなる黒鉛材料として、メソフェーズ系球晶黒鉛を用いた。
そして、平均粒子径20μmのメソフェーズ系球晶黒鉛粉末と、平均粒子径20μmのSnCl粉末とを、50重量部/50重量部の比でパイレックスアンプル内において混合した後に、アンプル内を真空引きした。
続いて、アンプル内に塩素ガスを充填させてから、シールすることにより、塩素ガス雰囲気の密閉アンプルを作製した。
さらに、この密閉アンプルを、SnClの融点より高い400℃で3日保持した。これにより、SnCl−メソフェーズ系球晶黒鉛の黒鉛層間化合物から成る前駆体を作製した。
続いて、作製した前駆体の構造をXRD(X線回折)により確認した。その結果、SnClが黒鉛の層間にインターカレートされており、このときのステージは、第2ステージと第3ステージの混合ステージであることがわかった。
次に、得られた前駆体を還元した。還元方法は、以下のようにして行った。
まず、リチウム金属とナフタレンとを、テトラヒドロフラン(THF)溶液に混合し、室温で超音波照射したまま保持した。溶液の色が黒色化したところで超音波照射を停止して、得られた前駆体を溶液に加えて、2日間放置した。これにより、Sn−メソフェーズ系球晶黒鉛の黒鉛層間化合物を作製した。
【0102】
得られた黒鉛層間化合物の構造をXRDにより確認したところ、Snが黒鉛の層間にインターカレートされており、ゲスト挿入層の層間距離は1.716nmであり、黒鉛のc軸方向のSn粒子の厚さは3〜4原子層程度であった。
また、得られた黒鉛層間化合物をTEM(透過型電子顕微鏡)により観察した。観察されたTEM像を、図5に示す。
さらに、得られた黒鉛層間化合物の粒径分布の測定を行った。粒径分布の測定結果を、図6に示す。
観察されたTEM像及び粒径分布により、Sn粒子の黒鉛面内における平均粒子径が6.5nmであり、黒鉛の層間に金属Snの微粒子(ナノパーティクル)がインターカレートされていることが確認された。また、比較的狭い粒径分布であることが確認された。
【0103】
また、得られた黒鉛層間化合物の制限視野電子線回折像を観察した。観察された制限視野電子線回折像を、図7に示す。図7中の矢印は、グラファイトの炭素原子のヘキサゴナル周期構造の2つの軸の向きを示している。
電子線回折像から得られた、黒鉛層間化合物の結晶面の面間隔d[pm]と、対応する結晶面を表1に示す。
【0104】
【表1】

【0105】
表1において、hex2aはグラファイト2倍周期構造の結晶面を示し、hex3aはグラファイト3倍周期構造の結晶面を示し、fccは金属Snの面心立方格子を示している。
グラファイト2倍周期構造の模式的平面図を図8Aに示し、グラファイト3倍周期構造の模式的平面図を図8Bに示す。図8A及び図8Bにおいて、六角形は炭素原子から成る黒鉛の(100)面を示しており、黒い丸はSn原子を示しており、左下のダイヤ型の太線は、黒鉛の炭素原子の周期構造を示しており、中央のダイヤ型の太線はそれぞれSn原子の長周期構造を示している。
図8Aでは、Sn原子による長周期構造が、黒鉛の炭素原子の周期構造の2倍の周期となっている。
図8Bでは、Sn原子による長周期構造が、黒鉛の炭素原子の周期構造の3倍の周期となっている。
表1の結果から、この実施例1の試料では、2倍周期構造と3倍周期構造とが共に存在していることがわかる。
図8A及び図8Bに示したように、Sn原子は、金属Snの面心立方格子構造と黒鉛のヘキサゴナル構造とに影響されて、黒鉛の炭素原子の周期構造の2倍又は3倍の周期を有する長周期構造で規則的に配列していることがわかる。
【0106】
(放電容量の測定)
続いて、得られた黒鉛層間化合物から成る負極活物質を負極に用いて、放電容量を調べた。
まず、得られた黒鉛層間化合物の粉末90質量%と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン10質量%とを混合して、負極合剤を調製した。
次に、この負極合剤を溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて、ペースト状の負極合剤スラリーとした。
そして、この負極合剤スラリーを、厚さ15μmの帯状の銅箔より成る負極集電体11に塗布した後に、乾燥させることにより、負極10を作製した。
次に、この負極10を使用して、正極に金属リチウムを用い、セパレータにポリエチレン製多孔質膜を用い、電解液に炭酸エチレンと炭酸ジエチルとの混合溶媒(1:1(体積比))にLiPFを1mol/dmの割合で溶解させた溶液を用いて、直径20mmで厚さ1mmのコイン型のテストセルを作製した。
【0107】
上述のテストセルに対して、まず、0.1Cの定電流で平衡電位がリチウムに対し30mVとなるまで充電を行い、さらに、30mVで20時間の定電圧充電を行った。その後、テストセル電圧が1.5Vになるまで0.1Cの定電流で放電を行い、その放電容量を負極の放電容量とした。なお、0.1Cは、理論容量を10時間で放出しきる電流値である。このようにして見積もられた放電(負極)容量は、平衡電位を基準としているので、材料固有の特性を反映したものとなっている。
【0108】
測定の結果として、477mAh/gという高い放電容量が得られた。
【0109】
(サイクル試験)
続いて、得られた黒鉛層間化合物から成る負極活物質を負極に用いて二次電池を作製して、サイクル試験を行った。
まず、レーザ回折法により得られる累積50%粒径が15μmのリチウム・コバルト複合酸化物を正極活物質として用いて、このリチウム・コバルト複合酸化物粉末95質量%と炭酸リチウム粉末5質量%とを混合し、この混合物94質量%と、導電剤であるケッチェンブラック3質量%と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン3質量%とを混合して、正極合剤を調製した。
次に、この正極合剤を溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて、ペースト状の正極合剤スラリーとした。
そして、この正極合剤スラリーを、厚さ20μmの帯状のアルミニウム箔より成る正極集電体に均一に塗布した後に、乾燥して、さらに圧縮成型することにより正極合剤層を形成して、正極を作製した。
また、放電容量の測定で使用した負極10と同様にして、負極10を作製した。
次に、作製した正極及び負極10を、ポリエチレン製セパレータを介して、直径20mmで厚さ1mmのコインセルに組み込み、電解液として炭酸エチレンと炭酸ジエチルとの混合溶媒(1:1(体積比))にLiPFを1mol/dmの割合で溶解させた溶液を用いてコイン型のテストセル(二次電池)を作製した。
【0110】
上述のテストセル(二次電池)に対して、下記のようにして初回放電容量(mAh)を測定した。
まず、テストセルに対して、1.0Cの定電流で電池電圧が4.2Vとなるまで充電を行い、さらに4.2Vで3時間の定電圧充電を行った。その後、電池電圧が3.0Vになるまで1.0Cの定電流で放電を行い、初回放電容量とした。なお、1.0Cは、理論容量を1時間で放出しきる電流値である。
【0111】
また、下記のようにして放電容量維持率(%)を算出した。
まず、1.0Cの定電流で電池電圧が4.2Vとなるまで充電を行い、さらに4.2Vで3時間の定電圧充電を行った。その後、電池電圧が3.0Vになるまで1.0Cの定電流で放電を行い、この充放電を続けて行い、100サイクル時の放電容量を測定した。
そして、1サイクル時の放電容量(即ち、初回放電容量)に対する100サイクル時の放電容量(100サイクル時の放電容量/1サイクル時の放電容量)を求めて、その容量維持率((100サイクル時の放電容量/1サイクル時の放電容量)×100)(%)を放電容量維持率(%)とした。
【0112】
サイクル試験の結果、初期放電容量は10.2mAhとなり、100サイクル後の容量維持率は92.5%と高いサイクル特性を示した。
【0113】
(実施例2)
平均粒子径20μmのメソフェーズ系球晶黒鉛粉末と、平均粒子径20μmのSnCl粉末とを50重量部/50重量部の比でサンプル瓶内において混合し、さらにCClとSOClを適量ずつ添加して混合した後に、サンプル瓶を密封した。
続いて、室温で超音波照射を2日行い、その他は実施例1と同様にして、黒鉛層間化合物から成る前駆体を作製した。
続いて、作製した前駆体の構造をXRDにより確認した。その結果、SnClが黒鉛の層間にインターカレートされていることが確認された。
次に、得られた前駆体を、実施例1と同様の方法で還元して、黒鉛層間化合物を作製した。
【0114】
得られた黒鉛層間化合物の構造をXRDにより確認したところ、Snが黒鉛の層間にインターカレートされており、ゲスト挿入層の層間距離は1.701nmであることがわかった。
【0115】
続いて、実施例1と同様の方法により、それぞれの測定用のコイン型テストセル(正極がリチウムであるテストセル及び正極活物質がリチウム・コバルト複合酸化物であるテストセル)を作製した。
そして、作製したそれぞれのテストセルを使用して、放電容量の測定及びサイクル試験を行った。
その結果、476mAh/gという高い放電容量が得られ、100サイクル後の容量維持率は91.5%と高いサイクル特性を示した。
【0116】
(実施例3)
負極活物質のベースとなる黒鉛材料として、メソフューズ系球晶黒鉛の代わりに天然黒鉛を用いた他は、実施例1と同様にして、黒鉛層間化合物を作製した。
【0117】
得られた黒鉛層間化合物の構造をXRDにより確認したところ、Snが黒鉛の層間にインターカレートされており、ゲスト挿入層の層間距離は1.710nmであることがわかった。
【0118】
続いて、実施例1と同様の方法により、それぞれの測定用のコイン型テストセルを作製した。
そして、作製したそれぞれのテストセルを使用して、放電容量の測定及びサイクル試験を行った。
その結果、489mAh/gという高い放電容量が得られ、100サイクル後の容量維持率は90.2%と高いサイクル特性を示した。
【0119】
(実施例4)
負極活物質のベースとなる黒鉛材料として、メソフェーズ系球晶黒鉛を用いた。
そして、実施例1と同様の方法により、SnCl−メソフェーズ系球晶黒鉛の黒鉛層間化合物から成る前駆体を作製した。
次に、得られた前駆体を還元した。還元方法は、前駆体を水素ガス雰囲気中にて、200℃で反応させた。これにより、Snと黒鉛との複合材料を作製した。
【0120】
得られた複合材料の構造をXRDにより確認したところ、Snが黒鉛の層間からディインターカレートされている(離脱している)ことが確認された。
また、得られた複合材料をTEMにより観察した。観察されたTEM像により、Sn粒子の黒鉛面内における平均粒子径が40.5nmであり、黒鉛の層構造(グラフェンシート)上に金属Snの微粒子(ナノパーティクル)が付着成長していることが確認された。
さらに、得られた複合材料の制限視野電子線回折像を観察した。観察された電子線回折像により、Snの微粒子(ナノパーティクル)の結晶構造は、通常の金属Snと同じく面心立方格子であることがわかった。
【0121】
続いて、実施例1と同様の方法により、それぞれの測定用のコイン型テストセルを作製した。
そして、作製したそれぞれのテストセルを使用して、放電容量の測定及びサイクル試験を行った。
その結果、501mAh/gという高い放電容量が得られ、100サイクル後の容量維持率は90.5%と高いサイクル特性を示した。
【0122】
(実施例5)
負極活物質のベースとなる黒鉛材料として、メソフェーズ系球晶黒鉛を用いた。
そして、実施例2と同様の方法により、SnCl−メソフェーズ系球晶黒鉛の黒鉛層間化合物から成る前駆体を作製した。
続いて、得られた前駆体を、実施例4と同様の方法で還元して、Snと黒鉛との複合材料を作製した。
【0123】
得られた複合材料の構造をXRDにより確認したところ、Snが黒鉛の層間からディインターカレートされている(離脱している)ことが確認された。
【0124】
続いて、実施例1と同様の方法により、それぞれの測定用のコイン型テストセルを作製した。
そして、作製したそれぞれのテストセルを使用して、放電容量の測定及びサイクル試験を行った。
その結果、499mAh/gという高い放電容量が得られ、100サイクル後の容量維持率は91.3%と高いサイクル特性を示した。
【0125】
(実施例6)
負極活物質のベースとなる黒鉛材料として、メソフューズ系球晶黒鉛の代わりに天然黒鉛を用いた他は、実施例4と同様にして、Snと黒鉛との複合材料を作製した。
【0126】
得られた複合材料の構造をXRDにより確認したところ、Snが黒鉛の層間からディインターカレートされている(離脱している)ことが確認された。
【0127】
続いて、実施例1と同様の方法により、それぞれの測定用のコイン型テストセルを作製した。
そして、作製したそれぞれのテストセルを使用して、放電容量の測定及びサイクル試験を行った。
その結果、517mAh/gという高い放電容量が得られ、100サイクル後の容量維持率は90.0%と高いサイクル特性を示した。
【0128】
(実施例7)
実施例4と同様にして作製した負極活物質を使用して、負極10を作製した。
また、電解液にフルオロエチレンカーボネートを全電解液量に対して5wt%添加し、その他は、実施例4と同様にして、測定用のコイン型テストセル(正極がリチウムであるテストセル及び正極活物質がリチウム・コバルト複合酸化物であるテストセル)を作製した。
【0129】
そして、作製したそれぞれのテストセルを使用して、放電容量の測定及びサイクル試験を行った。
その結果、532mAh/gという高い放電容量が得られ、100サイクル後の容量維持率は95.2%と高いサイクル特性を示した。
実施例4より放電容量が大きくなっており、電解液にフルオロエチレンカーボネートを添加したことにより、さらに放電容量を大きくする効果が得られると考えられる。
【0130】
(比較例1)
負極活物質のベースとなる黒鉛材料として、メソフェーズ系球晶黒鉛を用いた。
そして、平均粒子径20μmのメソフェーズ系球晶黒鉛70質量部と、平均粒子径0.3μmのSn粒子30質量部、フェノール樹脂(残炭率約40質量%)10質量部、及びエタノール200質量部を、二軸混練機を用いて混合して、分散液を調製した。
次に、この分散液を、アグロマスターを用いてスプレー噴霧すると同時に、80℃でエタノールを除去し、機内で流動させることによって造粒した。
次に、造粒品を、ホソカワミクロン(株)製のメカノフュージョンシステム(メカノフュージョンはホソカワミクロン(株)の登録商標)内に投入して、回転ドラムの周速度20m/s、処理時間30分、回転ドラムと内部部材の距離5mmの条件で、圧縮力と剪断力を繰り返し付加した。
このようにして得られた複合体100質量部、コールタールピッチ(残炭率約60質量%)7質量部、及びタール中油100質量部を、二軸混練機を用いて、150℃で1時間混合した後に、減圧してタール中油を除去して、乾燥した。
さらに、この乾燥させた複合体を、1000℃で10時間焼成して、複合黒鉛粒子を得た。
【0131】
続いて、得られた複合黒鉛粒子から成る負極活物質を用いて、実施例1と同様にして負極を作製した。
この負極を使用して、実施例1と同様の方法により、それぞれの測定用のコイン型テストセルを作製した。
そして、作製したそれぞれのテストセルを使用して、放電容量の測定及びサイクル試験を行った。
その結果、466mAh/gという放電容量が得られたが、100サイクル後の容量維持率は10.8%と低いサイクル特性を示した。
【0132】
即ち、リチウムと合金化可能な金属と黒鉛を単に混合しただけの複合材料では、充分なサイクル特性が得られないことがわかる。
一方、実施例1〜実施例3のように、金属を黒鉛の層間にインターカレートした黒鉛層間化合物や、実施例4〜実施例7のように、金属の微粒子を黒鉛の層構造(グラフェンシート)の表面に成長させた複合材料を、負極活物質に使用することにより、充分なサイクル特性が得られ、長寿命の二次電池を実現できることがわかる。
また、実施例1と実施例2、実施例4と実施例5は、それぞれ前駆体の作製方法が異なっているが、いずれの作製方法でも同様に充分な特性が得られることが分かった。
【0133】
なお、上述の各実施例では、リチウムと合金化可能な金属としてSnを使用したが、Si,Pb,Al,Ga等のその他の金属を用いても、同様に、本発明の効果が得られる。
【0134】
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でその他様々な構成が取り得る。
【符号の説明】
【0135】
10,42 負極、11 負極集電体、12 負極活物質層、20,40 巻回電極体、21,45 正極リード、22,46 負極リード、23,41 正極、23A 正極集電体、23B 正極活物質層、24 セパレータ、30 外装部材、31 電池缶、34 電池蓋


【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極集電体と負極活物質とから構成され、
前記負極活物質が、黒鉛とリチウムと合金化可能な金属との複合材料であって、
前記金属が、平均粒子径が10nm〜100nmの微粒子となっており、かつ前記黒鉛の層構造の表面に付着成長している
負極。
【請求項2】
前記金属が、Sn,Si,Pb,Al,Gaから選択される金属である請求項1に記載の負極。
【請求項3】
正極及び負極と共に電解質を備え、
前記負極が負極集電体と負極活物質とから構成され、
前記負極活物質が、黒鉛とリチウムと合金化可能な金属との複合材料であって、
前記金属が、平均粒子径が10nm〜100nmの微粒子となっており、かつ前記黒鉛の層構造の表面に付着成長している
二次電池。
【請求項4】
前記電解質を含む電解液に、フルオロエチレンカーボネート(FEC)を含有する請求項3に記載の二次電池。
【請求項5】
黒鉛の層間に、リチウムと合金化可能な金属の化合物がゲストとして挿入された黒鉛層間化合物の前駆体を作製する工程と、
前記前駆体を還元することにより、前記金属を黒鉛の層間から取り出して黒鉛に付着成長させる工程とを有して、
前記黒鉛と前記金属との複合材料から成る負極を作製する
負極の製造方法。
【請求項6】
前記前駆体を還元する工程において、水素ガス雰囲気中で、前記前駆体を前記金属の融点以下の温度で反応させる請求項5に記載の負極の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−84554(P2012−84554A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−21179(P2012−21179)
【出願日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【分割の表示】特願2006−73116(P2006−73116)の分割
【原出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】