説明

負荷制御装置、及び半導体スイッチング素子駆動方法

【課題】車両のヘッドランプのように複数の負荷が同時に駆動される負荷制御装置の電源線には、左右のヘッドランプの負荷電流が電源線にまとめて流れるが、左右のヘッドランプの負荷電流(パルス電流)が重なってしまうため、電流変動が複雑になって高周波成分が増加しノイズが増加してしまう。
【解決手段】複数の半導体スイッチング素子6、7をスイッチング制御し前記半導体スイッチング素子6、7のそれぞれに対応した負荷8、9に供給される電力を制御する負荷制御装置1において、ゲート駆動手段4、5により前記半導体スイッチング素子6のターンオン遅れ時間とターンオフ遅れ時間を他の前記半導体スイッチング素子7のターンオン期間とターンオフ期間の近傍においてほぼ同量ずらして負荷電流の変動率を抑え、ノイズを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体スイッチング素子を用いた負荷制御装置及び半導体スイッチング素子駆動方法に係り、特に、EMI(Electromagnetic Interference:電磁気妨害)ノイズを減少させることができる負荷制御装置及びその半導体スイッチング素子駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体スイッチのスイッチング制御により負荷に電力を供給する電源装置として、例えば特許文献1に挙げた特開2003−259634号公報の負荷駆動回路のような技術がある。特許文献1に開示の技術では、スイッチング素子であるMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)をPWM(Pulse Width Modulation)制御し、車両のヘッドランプに印加される電圧を制御している。PWM制御によりヘッドランプなどの負荷を駆動する場合、MOSFETのチョッパ制御によるオン/オフ動作が急峻であると、EMIノイズが大きくなったりする問題がある。この特許文献1では、左右のヘッドランプをPWM制御により駆動する際、それら左右のヘッドランプに印加されるPWM制御パルスが重ならないようにして、EMIノイズの発生量の増加を防止するようにしている。
【特許文献1】特開2003−259634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1では、36Vバッテリを用いたシステムでのPWM制御時のEMIノイズについて説明しているが、12Vのバッテリを用いた車でも同様にPWM制御を行なうとEMIノイズが問題になる。車両のヘッドランプのように複数の負荷が同時に駆動される場合、電源線には左右の負荷線の電流がまとめて流れるが、上記特許文献1の従来技術の方法によればデューティ比が50%以下では左右のパルスが重ならないようにできる。しかしながら、デューティ比が50%を超えると必ず左右のパルスが重なってしまうため、電流変動が複雑になって高周波成分が増加しノイズが増加してしまう。むしろ、左右を同位相で駆動したほうが電源線のノイズは小さくなる。
【0004】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、50%を超えるデューティ比での高調波成分を減少させ、その結果、EMIノイズを減少させることができる負荷制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る発明の要旨は、複数の半導体スイッチング素子をスイッチング制御し前記半導体スイッチング素子のそれぞれに対応した負荷に供給される電力を制御する負荷制御装置において、前記半導体スイッチング素子のターンオン遅れ時間とターンオフ遅れ時間を他の前記半導体スイッチング素子のターンオン期間とターンオフ期間の近傍においてほぼ同量ずらすゲート駆動手段を備えたことを特徴とする負荷駆動装置に存する。
また、本発明の請求項2に係る発明の要旨は、前記半導体スイッチング素子はPチャンネルMOSFETであることを特徴とする請求項1に記載の負荷駆動装置に存する。
また、本発明の請求項3に係る発明の要旨は、前記半導体スイッチング素子はNチャンネルMOSFETであることを特徴とする請求項1に記載の負荷駆動装置に存する。
また、本発明の請求項4に係る発明の要旨は、前記ゲート駆動手段でずらされる前記半導体スイッチング素子のターンオン遅れ時間とターンオフ遅れ時間は、複数備わる他の半導体スイッチング素子のターンオン時又はターンオフ時における電流変化率の高い期間が重ならないように設定されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の負荷駆動装置に存する。
また、本発明の請求項5に係る発明の要旨は、前記複数の半導体スイッチング素子は数十Hzから100Hzでスイッチングされ、前記ゲート駆動手段でずらされる前記半導体スイッチング素子のターンオン遅れ時間とターンオフ遅れ時間は約1μs乃至10μsであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の負荷駆動装置に存する。
また、本発明の請求項6に係る発明の要旨は、前記ゲート駆動手段は、
前記半導体スイッチング素子のゲート端子に接続された前記ゲート駆動手段の出力抵抗を異ならしめて、前記半導体スイッチング素子のターンオン遅れ時間とターンオフ遅れ時間を調整することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の負荷駆動装置に存する。
また、本発明の請求項7に係る発明の要旨は、複数の半導体スイッチング素子をスイッチング制御し前記半導体スイッチング素子のそれぞれに対応した負荷に供給される電力を制御する負荷制御装置の、前記半導体スイッチング素子を駆動する半導体スイッチング素子駆動方法において、入力されたパルス入力信号の立上がりタイミングと立下りタイミングをほぼ同量ずらし、該ずらす量を異ならしめたパルス信号を前記半導体スイッチング素子の数に対応して複数生成し、生成された前記パルス信号により前記複数の半導体スイッチング素子を駆動することを特徴とする半導体スイッチング素子駆動方法に存する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、制御信号入力によりPWMパルスを出力して複数の同じ定格の負荷を同時に駆動する装置において、50%を超えるデューティ比での高調波成分を減少させ、その結果、EMIノイズを減少させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
<第1の実施の形態>
図1に本発明による第1の実施の形態である負荷制御装置1の構成図を示す。本実施の形態における負荷制御装置1は、車輌のヘッドランプのPWM調光駆動に適用した例を示しており、駆動周波数は数十から100Hz程度である。デューティ比は数%から90%以上の広い範囲で用いられる。出力素子は従来技術と同じくPチャンネルパワーMOSFET(以下PMOSFETと記載する)を用いている。本実施の形態では左右のヘッドランプ(負荷8、9)を駆動するためにそれぞれPMOSFET6及びPMOSFET7が用いられている。
【0008】
図1を参照して本実施の形態である負荷制御装置1の構成を説明する。負荷制御装置1は、制御入力スイッチ2、PWMパルス生成部(PWMパルス生成手段)3、ゲート駆動部(ゲート駆動手段)4、ゲート駆動部(ゲート駆動手段)5、PMOSFET(半導体スイッチング素子)6、PMOSFET(半導体スイッチング素子)7、負荷8、負荷9、電源10などから構成されている。なお、LBは電源線の寄生インダクタンスを示している。PMOSFET6、7のソース端子は電源10の正極側に接続され、ドレイン端子はそれぞれ負荷8、9の一端に接続されている。また、負荷8、9の他端は電源10の負極側(接地電位)に接続されている。ゲート駆動部4の入力端子はPWMパルス生成部3の出力端子に接続され、また、ゲート駆動部4の出力端子はPMOSFET6のゲート端子に接続されている。ゲート駆動部5の入力端子はPWMパルス生成部3の出力端子に接続され、また、ゲート駆動部5の出力端子はPMOSFET7のゲート端子に接続されている。また、PWMパルス生成部3の入力端子は制御入力スイッチ2の一端に接続され、制御入力スイッチ2の他端は電源10の負極側(接地電位)に接続されている。
【0009】
ゲート駆動部4はトランジスタQ1、Q2、Q5、抵抗R1、R1'、R2、R2'、R6、R11、R12などから構成されている。トランジスタQ1のコレクタ端子は電源10の正極側に接続され、エミッタ端子は抵抗R1、R1'を介してPMOSFET6のゲート端子に接続されている。トランジスタQ2のコレクタ端子は電源10の負極側(接地電位)に接続され、エミッタ端子は抵抗R2、R2'を介してPMOSFET6のゲート端子に接続されている。トランジスタQ1とトランジスタQ2のベース端子は互いに接続され、その接続点は抵抗R6を介して電源10の正極側に接続されるとともにトランジスタQ5のコレクタ端子に接続されている。トランジスタQ5のベース端子は抵抗R11を介して電源10の負極側(接地電位)に接続されるとともに抵抗R12を介してPWMパルス生成部3の出力端子に接続されている。
【0010】
また、ゲート駆動部5はトランジスタQ3、Q4、Q6、抵抗R3、R4、R9、R13、R14などから構成されている。トランジスタQ3のコレクタ端子は電源10の正極側に接続され、エミッタ端子は抵抗R3を介してPMOSFET7のゲート端子に接続されている。トランジスタQ4のコレクタ端子は電源10の負極側(接地電位)に接続され、エミッタ端子は抵抗R4を介してPMOSFET7のゲート端子に接続されている。トランジスタQ3とトランジスタQ4のベース端子は互いに接続され、その接続点は抵抗R9を介して電源10の正極側に接続されるとともにトランジスタQ6のコレクタ端子に接続されている。トランジスタQ6のベース端子は抵抗R13を介して電源10の負極側(接地電位)に接続されるとともに抵抗R14を介してPWMパルス生成部3の出力端子に接続されている。
【0011】
PMOSFET6、7はゲート電圧Vgsが閾値電圧Vthよりも低くなると(例えば、閾値電圧Vthが−2Vならばゲート電圧Vgsは−5V)オンして負荷8、9に負荷電流ILが流れる。PMOSFET6とPMOSFET7は、オン抵抗、ゲート容量や閾値電圧Vthなど同じ特性とされる。負荷8と負荷9も例えば左右のヘッドランプのように同じワッテージのものに限定される。負荷抵抗が違うとMOSFETのゲート電圧とドレイン電圧の関係が変わり、スイッチング時間特性が変わってしまうので、狙ったノイズ低減効果が得られなくなるためである。また、片方の負荷だけが駆動されることはなく、必ず負荷8と負荷9は同時に同じ明るさで駆動される。
【0012】
PWMパルス生成部は、例えば三角波と基準電圧を比較するような回路で構成され、制御入力スイッチ2に従い、制御入力スイッチ2がオンされると一定周期、一定デューティ比のPWMパルスを出す。このパルスは左右のゲート駆動部4、5に入力される。ゲート駆動部4、5はパルス入力をPMOSFET6、7のオン・オフ動作に必要な電圧に変換する。必要な電圧とは先に示した閾値電圧Vthよりも低又は高となる電圧であればよいが、ここでは、トランジスタのベース・エミッタ間順方向電圧をVbeとして、PMOSFET6、7をオフさせるために(VB−Vbe)の電圧をゲート駆動部4、5でそれぞれ独立に発生させ、また、オンさせるためにVbeの電圧をゲート駆動部4、5でそれぞれ独立に発生させている。そして、ゲート駆動部4、5からのオンさせるための電圧は、ゲート駆動部4の出力については(R2+R2')を通してPMOSFET6のゲートに加えられ、ゲート駆動部5の出力についてはR4を通してPMOSFET7のゲートに加えられる。オフさせるための電圧は、ゲート駆動部4の出力については(R1+R1')を通してPMOSFET6のゲートに加えられ、ゲート駆動部5の出力についてはR3を通してPMOSFET7のゲートに加えられる。ここで、R1〜R4の各抵抗の値をR1=R3、R2=R4と設定するので、必ず(R2+R2')>R4かつ(R1+R1')>R3となる。なお、図1ではゲート駆動部をバイポーラトランジスタの構成としたが、MOSFETの構成としてもよい。
【0013】
以下、回路の動作について、図2の動作波形と共に説明する。図2は横軸に時間tをとってあり、図の上側より、パルス入力、PMOSFET6、7のゲート電圧VG1及びVG2、PMOSFET6、7のドレイン電圧VD1及びVD2、PMOSFET6、7(負荷8及び負荷9)に流れる電流IL1及びIL2、電源電流IB、電源電圧VBの各波形を示している。なお、図2、後述の図3は電源電圧VBを12Vとした例である。以下図2を参照して本実施の形態による負荷制御装置1のスイッチング動作を詳しく説明する。
【0014】
PWMパルス生成部3の出力であるパルス入力信号がローレベルLoのとき、ゲート駆動部4のトランジスタQ5とゲート駆動部5のトランジスタQ6はオフしている。これらトランジスタQ5とトランジスタQ6のコレクタ電圧はほぼ電源10の電源電圧VBとなる。このとき、トランジスタQ1とトランジスタQ3のベース電圧は同じ電圧になるので、トランジスタQ1とトランジスタQ3のエミッタ電圧はベース電圧よりもベース・エミッタ間電圧Vbeだけ下がった電圧になる。トランジスタQ1とトランジスタQ3の特性が揃えてあるので、それぞれのベース・エミッタ間電圧Vbeが等しく、PMOSFET6、7のゲート電圧VG1及びVG2は同じ電圧になっている。PMOSFET6、7のゲート・ソース間電圧は電源電圧VBを基準としてほぼ−Vbeとなり、また、Vth<−Vbeとなるような閾値電圧VthのMOSFETが選定されているので、その結果、PMOSFET6、7はオフ状態になっている。なお、このとき、トランジスタQ5とトランジスタQ6は逆バイアスで遮断状態とされる。
【0015】
PWMパルス生成部3の出力であるパルス入力信号が時刻t1でハイレベルHiになるとゲート駆動部4のトランジスタQ5とゲート駆動部5のトランジスタQ6はオンし、トランジスタQ5とトランジスタQ6のコレクタ電圧はほぼ0Vとなる。このとき、トランジスタQ1とトランジスタQ3のベース・エミッタ間には逆電圧が掛かるのでオフする。また、トランジスタQ2とトランジスタQ4はオンし、エミッタ電圧はベース電圧よりもベース・エミッタ間電圧Vbeだけ上がった電圧になり、ゲート駆動部4の出力については(R2+R2')を通して電流が制限されながらPMOSFET6のゲートを充電し、ゲート駆動部5の出力についてはR4を通して電流が制限されながらPMOSFET7のゲートを充電する。先に述べたように(R2+R2')>R4なので、PMOSFET7のゲートの方が先に閾値電圧Vthに達する。ゲート電圧VG1、2が閾値電圧Vthに達するとILが流れ始め、ドレイン電圧VDが上昇を始める。ここでゲート容量のミラー効果のためゲート電圧VG1、2の波形に踊り場状の部分が発生し、ドレイン電圧VD1、2に傾きが付く。
【0016】
ミラー効果とは、ゲート電圧VGが下がってPMOSFETのドレイン・ソース間抵抗が下がっていき、ドレイン電圧VDが上がっていくとFET内部に寄生しているゲート・ドレイン間容量に掛かる電圧が小さくなるので電荷を放電してしまい、そのためドレイン電圧VDが変化している間だけ見かけ上の容量が大きくなるもので、結果としてゲート電圧VG1、2変化が緩やかになってドレイン電圧VD1、2の波形に傾きがつく。ドレイン電圧VD1、2の傾きはゲート抵抗が大きいPMOSFETの方が当然大きくなるが、見かけ上のゲート容量が大きくなっている影響で、オンし始めるまでの遅れ時間の差ほどにはドレイン電圧VD1、2の傾きに違いが出ない。そのためドレイン電圧VD1、2の傾きによるスイッチング損失はPMOSFET6とPMOSFET7では発熱に影響が出るほどの違いを生じることはない。ドレイン電圧VD1、2が電源電圧VBに近づくとミラー効果が消えて再びゲート電圧VG1、2は下降していき、ドレイン電圧VD1、2及び負荷電流IL1、2は一定値となる。
【0017】
このように、パルス入力のハイレベルHiからVD及びILが立上がり始めるまでの遅れ時間tdon1とtdon2が異なるので、負荷電流IL1、2が0Aから立上がり始めるときと、スロープの終盤で一定値に近づくときの、特に変化が急峻な二つの区間で重なりがなくなるため、電源線を流れる電流IBはこれらの区間での変化がゆっくりとなり、電源線の寄生インダクタンスLBにより生じる電源電圧VBの電圧変動も小さくなる。それに伴い、発生する電源ノイズも小さくなる。比較のため、ゲート抵抗を同じにして左右同じタイミングで駆動したときの動作波形の例を図3に示す(図3は図2に対応した各波形を示している)。電源線を流れる電流IBの変化率が大きく、それに伴い電源電圧VBの落ち込みが大きくなっているのがわかる。
【0018】
パルス入力がローレベルLoに切り替わったときのドレイン電圧VD及び負荷電流ILの立下りは以上の工程を逆に辿って行なわれる(動作波形の図示は省略)。先に述べたように(R1+R1')>R3なので、ゲート電荷の放電でゲート電圧VGが上がるときもPMOSFET7の方が先に閾値電圧Vthに達し、ドレイン電圧VD1、2及び負荷電流IL1、2が立下がり始めるまでの遅れ時間がPMOSFET6とPMOSFET7でずれ、立下り時の電流変化に伴う電源ノイズも小さくなる。
【0019】
長波帯の電源線伝導ノイズを実測したところ、同相駆動でのノイズレベルは−47dBmとなり、4dBmのノイズ減少を確認することができた。ゲート電圧VGの立上がり時はPMOSFET6の方の遅れが長く、また、ゲート電圧VGの立下り時もPMOSFET6の方の遅れ時間が長いので、抵抗値の調整により立上がり時と立下り時におけるそれぞれの遅れ時間の差が同じになるようにしておけば、負荷8と負荷9のオンしている時間は同じとなり、明るさ(電力)も等しくなる。従来技術のようなゲート駆動部の構成であると、立上がりを変えようとすると立下りもつられて変化してしまい、細やかな調整ができないが、本実施の形態では立上がりと立下りが独立して調整できるので、このような遅れ時間の調整も容易である。
【0020】
更に、上記特許文献1に挙げた従来技術において、左右のヘッドランプのを制御する入力パルスの位相を互いに180度ずらすと、PWM周波数40Hzの場合は左右のヘッドランプでPWMパルスが12.5msずれる。これだけの時間差があると人間の感覚で左右の点灯の時間ずれが確認されて、商品性が落ちてしまう。本実施の形態での左右の時間差は1〜10μs程度なので、左右の点灯ずれが確認されることはなく、商品性が落ちることはない。また、本実施の形態では従来技術のような負荷電流が重なることによる電源の電圧降下の軽減は狙っていないが、スイッチングに伴う電源線の寄生L成分による電圧降下を軽減する効果はある。
【0021】
以上、本実施の形態によれば、制御信号入力によりPWMパルスを出力して複数の同じ定格の負荷を同時に駆動する装置において、左右のゲート抵抗の値を変えるだけという極めて簡単な事により、ターンオン遅れ時間とターンオフ遅れ時間をほぼ同量ずらせて、特に電流変化率が高い期間が重ならないようにして電源線の電流変化率を下げることができ、明るさの違いや点灯タイミングのずれといった不具合を生じることなく50%を超えるデューティ比での高調波成分(ラジオノイズ)を減少させることができる。
【0022】
<第2の実施の形態>
図4に、本発明による第2の実施の形態の負荷駆動装置21を示した。本実施の形態は、第1の実施の形態におけるゲート駆動部4、5の構成を変えている。図4のように、ゲート駆動部4に対応するゲート駆動部41は、トランジスタQ1のエミッタ端子とPMOSEFT6のゲート端子の間を繋ぐ抵抗R1、R1'とトランジスタQ2のエミッタ端子とPMOSEFT6のゲート端子の間を繋ぐ抵抗R2、R2'を一体化して抵抗R1、R1'とし、トランジスタQ1のコレクタ端子と電源10の正極側の間に抵抗R21、トランジスタQ2のコレクタ端子と電源10の負極側の間に抵抗R22を接続してある。また、ゲート駆動部5に対応するゲート駆動部51は、トランジスタQ3のエミッタ端子とPMOSEFT7のゲート端子の間を繋ぐ抵抗R3とトランジスタQ4のエミッタ端子とPMOSEFT7のゲート端子の間を繋ぐ抵抗R4を一体化して抵抗R3とし、トランジスタQ3のコレクタ端子と電源10の正極側の間に抵抗R23、トランジスタQ4のコレクタ端子と電源10の負極側の間に抵抗R24を接続してある。その他の構成は第1の実施の形態と同じである。
【0023】
本実施の形態の場合、PMOSEFT6、7の立上がりと立下りの調整はR1、R1'、R3、及び新たに設けたR21〜R24を使って行う。ここで、R21=R23、R22=R24としてR1+R1'>R3で遅れ時間を調整してもよいが、R1+R1'=R3、R21>R23、R22>R24として遅れ時間を変えることもできる。要はゲート駆動部41、51の出力抵抗が独立して変えられるようになっている。その他の構成は第1の実施の形態と同じであり、本実施の形態の動作は第1の実施の形態の説明から容易に類推できるので詳細説明は省略する。
【0024】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様に、PMOSEFT6、PMOSEFT7の立上がりと立下りが独立して調整できるので、このような遅れ時間の調整も容易である。
【0025】
<第3の実施の形態>
図5に、本発明による第3の実施の形態の負荷駆動装置22を示した。本実施の形態は、第1の実施の形態に対し、図5のように、出力素子をNチャンネルMOSFET(以下NMOSFETと記載する)として構成したものである。これに伴い、パルス入力信号(PWMパルス生成部の出力信号)の立上がりでNMOSEFT16がオフ、NMOSEFT17がオンし、パルス入力信号の立下がりでNMOSEFT16がオン、NMOSEFT17がオフする。図5の例では、NMOSEFT16と負荷8の接続関係、NMOSEFT17と負荷9の接続関係は、NMOSEFT16、NMOSEFT17が電源10の正極側に接続されたハイサイドタイプを示している。この場合、NMOSFET16、17が十分にオンするために必要な電圧を作るため、トランジスタQ1、Q3のコレクタと出力素子NMOSEFT16、NMOSEFT17のドレイン端子の間に昇圧回路11が追加されている。
【0026】
本実施の形態のゲート駆動部42、43はトランジスタのベース保護用の抵抗R5、R6、R8、R10を接続してある点を除けば、第1の実施の形態のゲート駆動部4、5と同じ構成である。しかし、これらの抵抗は削除しても良い。その他の構成は第1の実施の形態と同じであり、本実施の形態の動作は第1の実施の形態の説明から容易に類推できるので詳細説明は省略する。
【0027】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様に、NMOSEFT16、NMOSEFT17の立上がりと立下りが独立して調整できるので、このような遅れ時間の調整も容易である。
【0028】
<第4の実施の形態>
図6に、本発明による第4の実施の形態の負荷駆動装置23を示した。本実施の形態は第3の実施の形態と同様に出力素子をNMOSFETとして構成したものである。本実施の形態では、第3の実施の形態に対し、図6のように出力素子と負荷の接続関係が入れ替わっており、NMOSEFT16、NMOSEFT17が電源10の負極側に接続されたローサイドタイプを示している。これに伴い、パルス入力信号(PWMパルス生成部の出力信号)の立上がりでNMOSFET16、NMOSFET17がオンし、パルス入力信号の立下がりでNMOSEFT16、NMOSEFT17がオフするようにしている(第1の実施の形態と同じ)。本実施の形態ではNMOSEFT16、PMOSEFT17がローサイドに備わるタイプなので上記昇圧回路11は必要がない。なお、LGはグランド線の寄生インダクタンスを示したものである。
【0029】
ゲート駆動部の構成は、図6に示したゲート駆動部43、53のように構成される。すなわち、ゲート駆動部43は、pnpトランジスタQ15のコレクタ端子がトランジスタQ1のベース端子に抵抗R5を介して接続され、トランジスタQ2のベース端子に接続された抵抗R7の他端がトランジスタQ15のコレクタに接続され、また抵抗R7の他端は抵抗R17を介して電源10の負極側に接続されている。トランジスタQ15のベース端子は抵抗R11を介して電源10の正極側に接続され、また、抵抗R12を介してトランジスタQ7のコレクタ端子に接続されている。ゲート駆動部53は、pnpトランジスタQ16のコレクタ端子がトランジスタQ3のベース端子に抵抗R8を介して接続され、トランジスタQ4のベース端子に接続された抵抗R10の他端がトランジスタQ16のコレクタに接続され、また抵抗R10の他端は抵抗R18を介して電源10の負極側に接続されている。トランジスタQ16のベース端子は抵抗R13を介して電源10の正極側に接続され、また、抵抗R14を介してトランジスタQ7のコレクタ端子に接続されている。
【0030】
PWMパルス生成部3の出力にはトランジスタQ7と抵抗R15、R16で構成された信号反転回路が接続されている。その他の構成は第3の実施の形態における図5に示した構成と同じなので、本実施の形態の動作は第1〜第3の実施の形態の説明から容易に類推できるので詳細説明は省略する。
【0031】
このように構成された負荷制御装置においても、第3の実施の形態と同様に、NMOSEFT16、NMOSEFT17の立上がりと立下りが独立して調整できるので、このような遅れ時間の調整も容易であるとともに、本実施の形態では昇圧回路11が不要である。
【0032】
<その他の実施の形態>
制御装置の一部又は全部をIC化してもよい。
【0033】
以上、本発明を上記実施の形態により具体的に説明したが、上記実施の形態によれば、制御信号入力によりPWMパルスを出力して複数の同じ定格の負荷を同時に駆動する装置において、左右のゲート抵抗の値を変えるだけという極めて簡単な事により、一方のMOSFET(PMOSFET6、NMOSFET16)のターンオン遅れ時間とターンオフ遅れ時間を他のMOSFET(PMOSFET7、NMOSFET17)のターンオン期間とターンオフ期間の近傍(ターンオン期間とターンオフ期間が一部重なる程度の範囲)においてほぼ同量ずらせ、特に電流変化率が高い期間が重ならないようにして電源線の電流変化率を下げることによって、明るさの違いや点灯タイミングのずれといった不都合な事象を生じることなく50%を超えるデューティ比での高調波成分(ラジオノイズ)を減少させることができるという効果を得ることができる。なお、ターンオン期間とターンオフ期間が一部重なる程度にずらせば明るさの違いや点灯タイミングのずれといった不具合を生じないが、ターンオン期間とターンオフ期間が重ならない程度に広めにずらした場合でも、実質的に明るさの違いや点灯タイミングのずれといった不具合を生じることのない範囲で実施が可能である(この場合は、ターンオン期間とターンオフ期間の近傍の範囲として、これらの実質的に明るさの違いや点灯タイミングのずれといった不具合を生じることのない範囲を含む)。また、出力素子に使用される半導体スイッチング素子はPMOSFET、NMOSFETに限定されることはなく、上記実施の形態で説明したように、半導体スイッチング素子の制御端子に接続される抵抗でターンオン、ターンオフの遅れ時間を調整できるものであれば本発明を適用することができる。また、本発明は上記実施の形態に限定されないことは勿論であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変形して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、負荷の種類やスイッチング方式にかかわりなく、半導体スイッチング素子を使用した電源制御装置に広く利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明による負荷制御装置の第1の実施の形態の制御ブロック図である。
【図2】第1の実施の形態における負荷制御装置のスイッチング素子の動作波形を示す図である。
【図3】ゲート抵抗を同じにして左右同じタイミングで駆動したときの動作波形の例を、図2と比較するために示した図である。
【図4】本発明による負荷制御装置の第2の実施の形態の制御ブロック図である。
【図5】本発明による負荷制御装置の第3の実施の形態の制御ブロック図である。
【図6】本発明による負荷制御装置の第4の実施の形態の制御ブロック図である。
【符号の説明】
【0036】
1、21〜23・・・負荷制御装置
2・・・制御入力スイッチ
3・・・PWMパルス生成部(PWMパルス生成手段)
4、41〜43、5、51〜53・・・ゲート駆動部(ゲート駆動手段)
6、7・・・PMOSFET(PチャンネルMOSFETの半導体スイッチング素子)
8、9・・・負荷
11・・・昇圧回路
10・・・電源
16、17・・・NMOSFET(NチャンネルMOSFETの半導体スイッチング素子)
R1〜R16・・・抵抗
Q1〜Q7、Q15、Q16・・・トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体スイッチング素子をスイッチング制御し前記半導体スイッチング素子のそれぞれに対応した負荷に供給される電力を制御する負荷制御装置において、
前記半導体スイッチング素子のターンオン遅れ時間とターンオフ遅れ時間を他の前記半導体スイッチング素子のターンオン期間とターンオフ期間の近傍においてほぼ同量ずらすゲート駆動手段を備えたことを特徴とする負荷駆動装置。
【請求項2】
前記半導体スイッチング素子はPチャンネルMOSFETであることを特徴とする請求項1に記載の負荷駆動装置。
【請求項3】
前記半導体スイッチング素子はNチャンネルMOSFETであることを特徴とする請求項1に記載の負荷駆動装置。
【請求項4】
前記ゲート駆動手段でずらされる前記半導体スイッチング素子のターンオン遅れ時間とターンオフ遅れ時間は、複数備わる他の半導体スイッチング素子のターンオン時又はターンオフ時における電流変化率の高い期間が重ならないように設定されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の負荷駆動装置。
【請求項5】
前記複数の半導体スイッチング素子は数十Hzから100Hzでスイッチングされ、前記ゲート駆動手段でずらされる前記半導体スイッチング素子のターンオン遅れ時間とターンオフ遅れ時間は約1μs乃至10μsであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の負荷駆動装置。
【請求項6】
前記ゲート駆動手段は、
前記半導体スイッチング素子のゲート端子に接続された前記ゲート駆動手段の出力抵抗を異ならしめて、前記半導体スイッチング素子のターンオン遅れ時間とターンオフ遅れ時間を調整することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の負荷駆動装置。
【請求項7】
複数の半導体スイッチング素子をスイッチング制御し前記半導体スイッチング素子のそれぞれに対応した負荷に供給される電力を制御する負荷制御装置の、前記半導体スイッチング素子を駆動する半導体スイッチング素子駆動方法において、
入力されたパルス入力信号の立上がりタイミングと立下りタイミングをほぼ同量ずらし、該ずらす量を異ならしめたパルス信号を前記半導体スイッチング素子の数に対応して複数生成し、
生成された前記パルス信号により前記複数の半導体スイッチング素子を駆動することを特徴とする半導体スイッチング素子駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−232597(P2009−232597A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−76039(P2008−76039)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】