説明

負荷制御装置

【課題】主開閉部としてトライアックを。補助開閉部としてサイリスタを用いた負荷制御装置において、サイリスタのスイッチングノイズを低減する。
【解決手段】商用電源2と負荷3の間に直列に接続され、負荷3に通電する際、先に導通する補助開閉部17と、補助開閉部17が導通した後、補助開閉部17よりも負荷3に近い側で、より安定した電力を供給する主開閉部11を備え、補助開閉部17は、スイッチ素子としてサイリスタ17aを用い、サイリスタのスイッチングノイズを低減させる補助電源部19をさらに備える。補助電源部19は、例えばダイオード191とキャパシタ192で構成されたスナバ回路である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2線式の負荷制御装置、特にその負荷開閉回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、照明装置や換気扇など負荷のオン/オフを制御するために、接点が機械的に開閉される2線式スイッチに変えて、トライアックなどの無接点スイッチ素子を用いた負荷制御装置(電子スイッチ)が実用化されている(特許文献1参照)。その様な負荷制御装置は、省配線の見地から、2線式結線が一般的であり、商用電源(交流電源)と負荷との間に直列に接続される。
【0003】
図7は、特許文献1に記載された従来の商用電源2と負荷3との間に直列に接続される2線式の負荷制御装置50の回路構成を示す。この負荷制御装置50は、負荷3のオン/オフを制御する主開閉部51及び補助開閉部57と、主開閉部51及び補助開閉部57の導通を制御する制御部53と、制御部53に駆動電力を供給するための電源回路で構成されている。
【0004】
この負荷制御装置50は、例えば照明装置などの負荷3のオン及びオフを制御するために、負荷開閉回路を2つ備えている。補助開閉部57は、スイッチ素子としてサイリスタ57aを用いて構成され、負荷3に通電する際、先に導通して通電路を提供する。主開閉部51は、スイッチ素子としてトライアック51aを用いて構成され、補助開閉部57が導通した後、補助開閉部57よりも負荷3に近い側で、より安定した通電路を提供する。
【0005】
負荷3を起動させるための操作ハンドル(SW)4が操作されると、制御部53は制御信号を出力し、それによって第3電源部56のスイッチ素子56cが導通し、さらにスイッチ素子56bが導通する。それによって、整流部52から出力された電流はスイッチ素子56bを介して流れ、バッファキャパシタ58を充電する。バッファキャパシタ58が充電されると、電流は、ツェナーダイオード56aを介して補助開閉部57のサイリスタ57aのゲートに流れ、それによってサイリスタ57aが導通する。サイリスタ57aは整流部52の出力端子間に接続されているので、サイリスタ57aの導通により、整流部52によって整流された電流が負荷3に流れる。この電流は主開閉部51のトライアック51aのゲートにも流れるので、電圧がトライアック51aのトリガ電圧よりも高くなると、トライアック51a、すなわち主開閉部51が導通する。一旦、主開閉部51が導通する(閉状態)と電流を流し続けるが、商用電流がゼロクロス点に達したときにトライアック51aは自己消弧し、主開閉部51が非導通(開状態)になる。主開閉部51が非導通(開状態)になると、整流部52から第3電源部56を経て第1電源部54に電流が流れ、負荷制御装置50の自己回路電源を確保する動作を行う。すなわち、交流の1/2周期ごとに、負荷制御装置50の自己回路電源確保、補助開閉部57の導通及び主開閉部51の導通動作が繰り返される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−97535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、サイリスタやトライアックは、その通電開始時に、いわゆるスイッチングノイズを発生する。図8(a)において、破線は商用電源の電圧波形を示し、実線は負荷に供給される電力の電圧波形を示す。図8(b)は、負荷に供給される電力の電圧波形の拡大図である。これら図8(a)及び(b)に示すように、サイリスタやトライアックによるスイッチングノイズが発生すると、負荷3に供給される電力の電圧波形にスイッチングノイズによる波形の乱れが生じる。そして、負荷3の動作において、電圧波形の乱れによる影響は、例えば照明装置の明るさの瞬間的な変動などが生じる。
【0008】
本発明は、上記従来例の問題を解決するためになされたものであり、補助開閉部を構成するサイリスタのスイッチングノイズを低減した負荷制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る負荷制御装置は、商用電源と負荷の間に直列に接続され、負荷に通電する際、先に導通する補助開閉部と、補助開閉部が導通した後、前記補助開閉部よりも前記負荷に近い側で、より安定した電力を供給する主開閉部を備え、前記補助開閉部は、スイッチ素子としてサイリスタを用い、前記サイリスタのスイッチングノイズを低減させる補助電源部をさらに備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の他の一態様に係る負荷制御装置は、商用電源と負荷の間に直列に接続され、主スイッチ素子の主電極が前記商用電源及び前記負荷に対し直列に接続され、負荷に対する電力の供給を制御する主開閉部と、前記主スイッチ素子の主電極間に接続された整流部と、外部からの信号に応じて負荷のオン又はオフを制御する制御部と、前記制御部に安定して電力を供給するための第1電源部と、前記主開閉部の両端から整流部を介して電力供給され、前記負荷をオフする状態のときに、前記第1電源部への電源を供給する第2電源部と、前記主開閉部の両端から整流部を介して電力供給され、前記負荷をオンする状態のときに、前記第1電源部への電源を供給する第3電源部と、前記整流部の出力端子間に接続され、前記負荷に給電する際、前記主開閉部よりも先に導通する補助開閉部を備え、
前記補助開閉部は、スイッチ素子としてサイリスタを用い、前記サイリスタの端子電圧が低下したときに、電荷を放電してスイッチングノイズを低減させる補助電源部をさらに備えたことを特徴とする。
【0011】
前記補助電源部は、ダイオードとキャパシタを備えたスナバ回路であることが好ましい。
【0012】
前記スナバ回路は、前記整流部の高電位側出力端子にアノードが接続され、前記サイリスタのアノードにカソードが接続されたダイオードと、前記サイリスタのアノードとカソードの間に並列に接続されたキャパシタで構成されていることが好ましい。
【0013】
前記補助電源部は、前記第3電源部から前記第1電源部への電源を供給しているときにのみ作動するバイパス回路であることが好ましい。
【0014】
前記バイパス回路は、前記第3電源部を導通させるスイッチ素子の高電位側と前記サイリスタのアノードに接続されたキャパシタと、カソードが前記キャパシタに接続され、アノードが接地されたダイオードで構成されていることが好ましい。
【0015】
前記バイパス回路は、一端が前記第3電源部が導通した時に高電位側となる点に接続され、他端が接地されたキャパシタと、前記高電位側となる点アノードが接続され、カソードが前記サイリスタのアノードに接続されたダイオードで構成されていることが好ましい。
【0016】
前記補助電源部は、直流電源とスイッチング回路で構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の構成によれば、サイリスタが導通する際、サイリスタの端子電圧が低下すると、補助電源部から電荷が放電され、サイリスタの端子電圧が回復する。その結果、スイッチングノイズが低減され、負荷に供給される電力の電圧波形が安定し、例えば照明装置の明るさの瞬間的な変動などが低減される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る負荷制御装置の基本概念を示す回路図。
【図2】本発明に係る負荷制御装置における電圧波形図。
【図3】上記負荷制御装置の具体的な第1構成例を示す回路図。
【図4】上記負荷制御装置の具体的な第2構成例を示す回路図。
【図5】上記負荷制御装置の具体的な第3構成例を示す回路図。
【図6】上記負荷制御装置の具体的な第4構成例を示す回路図。
【図7】従来の負荷制御装置の構成を示す回路図。
【図8】(a)は従来の負荷制御装置の問題点を示す電圧波形図、(b)は符号Aで示す部分の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態に係る負荷制御装置1の基本概念について、図1を参照しつつ説明する。この負荷制御装置1は、商用電源2と負荷3に対して直列に接続される。負荷制御装置1は、上記従来例と同様に、負荷3のオン/オフを制御する主開閉部11及び補助開閉部17と、主開閉部11及び補助開閉部17の導通を制御する制御部13と、制御部13に駆動電力を供給するための電源回路で構成されている。電源回路は、整流部12と、制御部13への給電を安定させる第1電源部14と、負荷3への電力停止時に第1電源部14へ電力を供給する第2電源部15と、負荷3への電力供給時に第1電源部14へ電力を供給する第3電源部16で構成されている。補助開閉部17は、例えばサイリスタ17aを備えており、サイリスタ17aはダイオードブリッジで構成された整流部12の出力端子間に接続されている。第1電源部14は、入力された直流電流を、出力電圧が入力電圧よりも低くなるように降圧するDC/DCコンバータである。なお、第2電源部15の構成及び動作は上記従来例と同様であるため、その説明を省略する。
【0020】
負荷3を起動させるための操作ハンドル(SW)4が操作されると、制御部13は制御信号を出力し、それによって第3電源部16のスイッチ素子16cが導通し、さらにスイッチ素子16bが導通する。それによって、整流部12から出力された電流はスイッチ素子16bを介して流れ、バッファキャパシタ18を充電する。バッファキャパシタ18が充電されると、電流は、ツェナーダイオード16aを介して補助開閉部17のサイリスタ17aのゲートに流れ、それによってサイリスタ17aが導通する。サイリスタ17aは整流部12の出力端子間に接続されているので、サイリスタ17aの導通により、整流部12によって整流された電流が負荷3に流れる。この電流は主開閉部11のトライアック11aのゲートにも流れるので、電圧がトライアック11aのトリガ電圧よりも高くなると、トライアック11a、すなわち主開閉部11が導通する。一旦、主開閉部11が導通する(閉状態)と電流を流し続けるが、商用電流がゼロクロス点に達したときにトライアック11aは自己消弧し、主開閉部11が非導通(開状態)になる。主開閉部11が非導通(開状態)になると、整流部12から第3電源部16を経て第1電源部14に電流が流れ、負荷制御装置1の自己回路電源を確保する動作を行う。すなわち、交流の1/2周期ごとに、負荷制御装置1の自己回路電源確保、補助開閉部17の導通及び主開閉部11の導通動作が繰り返される。
【0021】
この負荷制御装置1は、サイリスタ17aのスイッチングノイズを低減させる補助電源部19をさらに備えている。図1は、本発明に係る負荷制御装置1の概念を説明するためのものであり、サイリスタ17aと並列に補助電源部19が設けられているように描かれているが、補助電源部19はこの場所に限定されない。補助開閉部19は、サイリスタ17aの端子電圧が低下したときに、電荷を放電してスイッチングノイズを低減させるように機能する。そのため、図2に示すように、サイリスタ17aの端子電圧が変動したとしても、補助電源部19から放電される電荷によって、サイリスタ17aの端子電圧の低下分が補充され、負荷3に供給される電力の電圧波形はなだらかになる。すなわち、サイリスタ17aの導通開始時のスイッチングノイズが低減される。
【0022】
図3は、上記負荷制御装置1の具体的な第1構成例を示す。補助電源部19は、ダイオード191とキャパシタ102を備えたスナバ回路で構成されている。ダイオード191のアノードが整流部12の高電位側出力端子に接続され、カソードがサイリスタ17aのアノードに接続されている。また、キャパシタ192は、サイリスタ17aのアノードとカソードの間に並列に接続されている。サイリスタ17aが非導通の時でも、整流部12からの出力電流がダイオード109を介してキャパシタ192に流れ、キャパシタ192が充電される。サイリスタ17aが導通し、その端子電圧がキャパシタ192の端子電圧よりも低下すると、キャパシタ192から電荷が放電され、サイリスタ17aの端子間電圧の低下を補完する。キャパシタ92から放電された電荷は、ダイオード191の作用によってサイリスタ17aの順方向にのみ流れる。このスナバ回路は、サイリスタ17aと直列にダイオード191を挿入し、並列にキャパシタ192を配列するだけであるので、構造が比較的簡単であるが、ダイオード191及びキャパシタ192に商用電源2のピーク電圧が印加される。従って、ダイオード191及びキャパシタ192として高耐電圧特性が要求される。
【0023】
図4は、上記負荷制御装置1の具体的な第2構成例を示す。補助電源部19は、第3電源部16から第1電源部14への電源を供給しているときにのみ作動するバイパス回路である。このバイパス回路は、第3電源部16を導通させるスイッチ素子16cの高電位側とサイリスタ17aのアノードに接続されたキャパシタ193と、カソードがキャパシタ193に接続され、アノードが接地されたダイオード194で構成されている。キャパシタ193の一端は、スイッチ素子(トランジスタ)16cのコレクタに接続されており、スイッチ素子16cが導通しているときだけキャパシタ193からサイリスタ17aに対して電荷を放電することができる。この場合、キャパシタ193とダイオード194はスナバ回路として機能し、ダイオード194のインピーダンスを高くすることによって、キャパシタ193の耐電圧を低くすることができる。
【0024】
図5は、上記負荷制御装置1の具体的な第3構成例を示す。補助電源部19は、第3電源部16が導通した時に高電位側となるスイッチ素子16bのエミッタとグランドの間に接続されたキャパシタ195と、このエミッタとサイリスタ17aのアノードの間に接続されたダイオード186で構成されている。スイッチ素子16bが導通されると、キャパシタ195が充電されると共に、キャパシタ195からダイオード196を介して、電荷がサイリスタ17aに放電される。図4に示す第2構成例では、キャパシタ193とダイオード194が直列接続されているが、この第3構成例では、キャパシタ195とダイオード196が並列接続されている。このような構成によっても同様の効果が得られる。
【0025】
図6は、上記負荷制御装置1の具体的な第4構成例を示す。補助電源部19は、例えば電池などの直流電源197とスイッチング回路(SW回路)198で構成されている。スイッチング回路198は、サイリスタ17aの端子電圧をモニタし、直流電源197の電圧よりも低下したときに、直流電源197を導通させればよい。このような構成によっても同様の効果が得られる。
【0026】
なお、上記実施形態において、整流部12として全波整流回路を用いたが、それに限定されるものではなく、半波整流回路であってもよい。整流部12が半波整流回路である場合、半波整流回路と第2電源部を2組用意し、2組の半波整流回路と第2電源部を並列接続させ、それぞれの回路に流れる電流の位相を1/2周期ずらすように構成しても、同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0027】
1 負荷制御装置
2 商用電源
3 負荷
11 主開閉部
12 整流部
14 第1電源部
15 第2電源部
16 第3電源部
17 補助開閉部
19 補助電源部
191、194、196 ダイオード
192、193、195 キャパシタ
197 直流電源(電池)
198 スイッチング回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電源と負荷の間に直列に接続され、負荷に通電する際、先に導通する補助開閉部と、補助開閉部が導通した後、前記補助開閉部よりも前記負荷に近い側で、より安定した電力を供給する主開閉部を備え、前記補助開閉部は、スイッチ素子としてサイリスタを用い、前記サイリスタのスイッチングノイズを低減させる補助電源部をさらに備えたことを特徴とする負荷制御装置。
【請求項2】
商用電源と負荷の間に直列に接続され、主スイッチ素子の主電極が前記商用電源及び前記負荷に対し直列に接続され、負荷に対する電力の供給を制御する主開閉部と、
前記主スイッチ素子の主電極間に接続された整流部と、
外部からの信号に応じて負荷のオン又はオフを制御する制御部と、
前記制御部に安定して電力を供給するための第1電源部と、
前記主開閉部の両端から整流部を介して電力供給され、前記負荷をオフする状態のときに、前記第1電源部への電源を供給する第2電源部と、
前記主開閉部の両端から整流部を介して電力供給され、前記負荷をオンする状態のときに、前記第1電源部への電源を供給する第3電源部と、
前記整流部の出力端子間に接続され、前記負荷に給電する際、前記主開閉部よりも先に導通する補助開閉部を備え、
前記補助開閉部は、スイッチ素子としてサイリスタを用い、前記サイリスタの端子電圧が低下したときに、電荷を放電してスイッチングノイズを低減させる補助電源部をさらに備えたことを特徴とする負荷制御装置。
【請求項3】
前記補助電源部は、ダイオードとキャパシタを備えたスナバ回路であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の負荷制御装置。
【請求項4】
前記スナバ回路は、前記整流部の高電位側出力端子にアノードが接続され、前記サイリスタのアノードにカソードが接続されたダイオードと、前記サイリスタのアノードとカソードの間に並列に接続されたキャパシタで構成されていることを特徴とする請求項3に記載の負荷制御装置。
【請求項5】
前記補助電源部は、前記第3電源部から前記第1電源部への電源を供給しているときにのみ作動するバイパス回路であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の負荷制御装置。
【請求項6】
前記バイパス回路は、前記第3電源部を導通させるスイッチ素子の高電位側と前記サイリスタのアノードに接続されたキャパシタと、カソードが前記キャパシタに接続され、アノードが接地されたダイオードで構成されていることを特徴とする請求項5に記載の負荷制御装置。
【請求項7】
前記バイパス回路は、一端が前記第3電源部が導通した時に高電位側となる点に接続され、他端が接地されたキャパシタと、前記高電位側となる点アノードが接続され、カソードが前記サイリスタのアノードに接続されたダイオードで構成されていることを特徴とする請求項5に記載の負荷制御装置。
【請求項8】
前記補助電源部は、直流電源とスイッチング回路で構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の負荷制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−198661(P2012−198661A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61356(P2011−61356)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】