説明

貨幣識別装置

【課題】偽造貨幣を受け入れる可能性を低減させるとともに、偽造貨幣の投入による販売機会の減少を抑えることの可能な貨幣識別装置を提供する。
【解決手段】投入貨幣2の正偽及び金種を判別する金種識別装置20と、金種識別装置20によって正貨と判別された投入貨幣2を受け入れるとともに金種識別装置20によって偽貨と判別された投入貨幣2を返却する硬貨振分装置30と、通常モード時に投入貨幣2が金種識別装置20によって偽貨と判別されると、後続の投入貨幣2を返却するように硬貨振分装置30を制御する受入禁止モードに移行し、受入禁止モード時に投入貨幣2が金種識別装置20によって正貨と判別されると、該投入貨幣2を返却するように硬貨振分装置30を制御するとともに通常モードに移行する制御装置100とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動販売機等に用いられる貨幣識別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の貨幣識別装置として、投入貨幣の正偽及び金種を判別する識別手段と、識別手段によって正貨と判別された投入貨幣を受け入れるとともに識別手段によって偽貨と判別された投入貨幣を返却する貨幣振分手段と、識別手段及び貨幣振分手段を制御する制御手段とを備えたものが知られている。
【0003】
ところで、識別手段による投入貨幣の判別処理は完全に成功するわけではなく、例えば偽貨が連続して投入された場合に、偽貨を正貨として受け入れてしまうことがある。
【0004】
そこで、投入貨幣が識別手段により偽貨と判別された場合に該貨幣が投入された時点からの時間を計測するタイマと、タイマが動作している場合には後続する貨幣の受け入れを禁止する貨幣受入禁止手段とを備えた貨幣識別装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
この貨幣識別装置では、投入貨幣が偽貨と判別されると、該貨幣を返却した後所定時間経過するまで後続の投入貨幣の受け入れを正貨又は偽貨に拘らず禁止することにより、連続投入による偽貨の受入率を低減させることができるようになっている。
【特許文献1】特許第3634562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来例では、前記所定時間内に正貨が投入された場合でも貨幣が受け入れられないことから、例えば貨幣識別装置が自動販売機に設けられている場合に当該時間内における商品の販売を行うことができず、販売機会が減少して利便性に劣るおそれがあった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、偽造貨幣を受け入れる可能性を低減させるとともに、偽造貨幣の投入による販売機会の減少を抑えることの可能な貨幣識別装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記目的を達成するために、投入貨幣の正偽及び金種を判別する識別手段と、識別手段によって正貨と判別された投入貨幣を受け入れるとともに識別手段によって偽貨と判別された投入貨幣を返却する貨幣振分手段と、識別手段及び貨幣振分手段を制御する制御手段とを備えた貨幣識別装置において、前記制御手段は、通常モード時に投入貨幣が識別手段によって偽貨と判別されると、後続の投入貨幣を返却するように貨幣振分手段を制御する受入禁止モードに移行し、受入禁止モード時に投入貨幣が識別手段によって正貨と判別されると、該投入貨幣を返却するように貨幣振分手段を制御するとともに通常モードに移行している。
【0009】
これにより、受入禁止モード時に投入貨幣が正貨と判別されると、該投入貨幣が返却されるとともに通常モードに移行されることから、例えば受入禁止モードに移行した後所定時間経過するまで投入貨幣の受入れを禁止する場合と比較して、正当な貨幣を速やかに受け入れることが可能になる。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように本発明によれば、例えば受入禁止モードに移行した後所定時間経過するまで投入貨幣の受入れを禁止する場合と比較して、正当な貨幣を速やかに受け入れることができるので、販売機会の減少を抑えて利便性を向上させることができる。また、受入禁止モード時には投入貨幣が返却されることから、連続投入によって偽貨を受け入れる可能性を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1乃至図3は本発明の一実施形態を示すもので、図1は貨幣識別装置の概略構成図、図2は制御装置の機能ブロック図、図3は貨幣が投入されたときの動作を説明するフロー図である。
【0012】
まず、図1及び図2を参照して貨幣識別装置の構成について説明する。本実施形態の貨幣識別装置1は自動販売機等に設けられるものであり、図1に示すように、貨幣としての硬貨2の投入口11と、投入口11から投入された硬貨2を案内する硬貨案内通路12と、硬貨案内通路12を通過中の硬貨2の正偽及び金種を判別する識別手段としての金種識別装置20と、硬貨案内通路12を通過した硬貨2を返却側通路又は受け入れ金種毎の各通路に振り分ける硬貨振分装置30と、硬貨振分装置30により振り分けられた硬貨2を収納する硬貨収納筒40と、硬貨収納筒40に収納されている硬貨2を排出する硬貨排出装置50と、制御装置100(図1では図示省略)とを備えている。なお、投入口11、硬貨案内通路12、金種識別装置20、硬貨振分装置30、硬貨収納筒40、硬貨搬出装置50の構成については従来のものと同様なので、ここでの詳述は省略する。
【0013】
硬貨収納筒40は、金種毎に形成された複数のチューブ40A〜40Eからなる。硬貨振分装置30は、制御装置100からの指示に基づき動作し、投入硬貨2を硬貨収納筒40の各チューブ40A〜40Eに振り分けるとともに、必要に応じて投入硬貨2を所定の返却口3や金庫(図示省略)に振り分ける。
【0014】
次に、制御装置100について図2の機能ブロック図を参照して説明する。図2に示すように、制御装置100は、制御部110と、計測部120と、通信制御部130とを備えている。
【0015】
制御部110は、CPU、RAM、ROM等を備えたコンピュータからなり、各装置の制御を行う。また、制御部110のRAMには、硬貨2を投入後所定時間(例えば5秒)内に新たに投入された硬貨2が金種識別装置20によって偽貨と判別された場合に値が増加するカウンタ用の領域が設けられている。なお、カウンタの初期値は0であり、カウンタの値は自然数で表される。さらに、制御部110は、通常モードと受入禁止モードの2つのモードを切替えて貨幣識別装置1を動作させるように構成されている。ここで、受入禁止モードとは、硬貨2の正偽に拘らず後続の投入硬貨2が返却口3から返却される状態をいう。
【0016】
計測部120は周知のタイマーであり、制御部110の制御に基づき時間の計測を行う。通信制御部130は、自動販売機本体の主制御部等と通信するためのものである。
【0017】
次に、本実施形態に係る貨幣識別装置1における硬貨2投入時の動作について、図3のフロー図を参照して説明する。
【0018】
まず、通常モード時に硬貨2が投入口11に投入されると(ステップS1)、金種識別装置20は、硬貨案内通路12を通過中の硬貨2の正偽及び金種を識別する(ステップS2)。そして、硬貨2が偽貨であると金種識別装置20によって判別された場合に(ステップS3)、制御部110は、受入禁止モードで動作しているか否かを判別する(ステップS4)。
【0019】
そして、制御部110は、受入禁止モードで動作しておらず、且つ、制御部110のカウンタの値が0又は計測部120によって計測された時間が5秒未満である場合に(ステップS5)、カウンタの値を一つ増加させる(ステップS6)。
【0020】
次いで、制御部110は、カウンタの値が3以上になった場合に、受入禁止モードに移行し(ステップS8)、硬貨2の投入間隔の計測を開始する(ステップS9)。この場合、制御部110は、計測部120により計測された時間をクリアした後に時間計測を計測部120に行わせるので、ステップS5において用いられる計測時間は硬貨2の投入間隔として表されることになる。よって、本実施形態では、偽造硬貨が5秒未満の間隔で連続して3回投入されると受入禁止モードに移行するので、偽貨が連続投入されることによって偽貨を受け入れる可能性を低減させることができる。なお、上記ステップS5及びステップS7の条件に適合しない場合には、制御部110は、ステップS9の処理を行う。
【0021】
そして、制御部110は、投入硬貨2を返却口3に振り分けるように硬貨振分装置30を制御することにより、投入硬貨2を返却する(ステップS10)。なお、制御部110は、上記ステップS4において受入禁止モードで動作している場合に、ステップS10の処理を行う。
【0022】
一方、ステップS3において硬貨2が正貨であると金種識別装置20によって判別された場合には、制御部110は、受入禁止モードで動作しているか否かを判別し(ステップS11)、受入禁止モードで動作し且つカウンタの値が3未満の場合に(ステップS12)、通常モードに移行する(ステップS13)。この場合、正貨と判別される硬貨2が、カウンタの値が3未満になるまで所定回数以上投入されると、通常モードに移行されることになる。そして、制御部110は、カウンタの値を一つ減算して(ステップS14)、ステップS9及びステップS10の処理を行う。ここで、ステップS14において、投入貨幣が正貨と判別された場合にカウンタの値を一つ減らしているので、上記ステップS12及びステップS13の処理により受入禁止モードが解除された場合でも、その後に偽貨が投入されると速やかに受入禁止モードに移行することができる。
【0023】
このように、受入禁止モード時に投入硬貨2が正貨と判別されると、該投入硬貨2が返却されるとともに通常モードに移行されることから、例えば受入禁止モードに移行した後所定時間経過するまで投入硬貨2の受入れを禁止する場合と比較して、正当な硬貨2を速やかに受け入れることが可能になる。
【0024】
また、ステップS11において通常モードで動作している場合には、制御部110は、カウンタの値を一つ減算して(ステップS15)、硬貨2の投入間隔の計測を開始する(ステップS16)。よって、正貨が投入された場合にカウンタの値が減ることから、受入禁止モードに移行する可能性を低減させることができ、受入禁止モードへの移行による販売機会の減少を抑えることができる。なお、ステップS15の処理内容はステップS14と同様である。そして、制御部110は、投入硬貨2を硬貨収納筒40の各チューブ40A〜40Eに振り分けるように硬貨振分装置30を制御することにより、投入硬貨2を受け入れる(ステップS17)。
【0025】
上記フローでは、受入禁止モード時に正貨が投入されると該正貨は一度返却されるが、返却処理とともに通常モードへの移行が行われるので、正貨が改めて投入されると硬貨収納筒40に受け入れられることになる。
【0026】
このように本実施の形態に係る貨幣識別装置1によれば、通常モード時に投入貨幣2が金種識別装置20によって偽貨と判別されると、後続の投入貨幣2を返却するように硬貨振分装置30を制御する受入禁止モードに移行し、受入禁止モード時に投入貨幣2が金種識別装置20によって正貨と判別されると、該投入貨幣2を返却するように硬貨振分装置30を制御するとともに通常モードに移行する制御装置100を備えたので、例えば受入禁止モードに移行した後所定時間経過するまで投入硬貨2の受入れを禁止する場合と比較して、正当な硬貨2を速やかに受け入れることができ、販売機会の減少を抑えて利便性を向上させることができる。また、受入禁止モード時には投入硬貨2が返却されることから、連続投入によって偽貨を受け入れる可能性を低減させることができる。
【0027】
また、硬貨2投入後所定時間(例えば5秒)内に新たに投入された硬貨2が金種識別装置20によって偽貨と判別された場合に値が増加するカウンタを有し、通常モード時に前記カウンタの値が所定値(例えば3)以上になると、受入禁止モードに移行するので、連続投入によって偽貨を受け入れる可能性を低減させることができる。
【0028】
さらに、投入硬貨2が金種識別装置20によって正貨と判別された場合にカウンタの値を減らすので、受入禁止モードに移行する可能性を低減することができ、受入禁止モードへの移行による販売機会の減少を抑えることができる。また、受入禁止モードが一旦解除された場合でも、その後に偽貨が投入されると速やかに受入禁止モードに移行することができる。
【0029】
さらにまた、受入禁止モード時に金種識別装置20によって正貨と判別される硬貨2が所定回数以上投入されると、投入硬貨2を返却するように硬貨振分装置30を制御するとともに通常モードに移行するので、通常モードに安易に移行することを防ぐことができ、例えば正貨を1回投入して受入禁止モードを解除させた後に連続投入によって偽貨を受け入れさせる等の不正行為を防止することができる。
【0030】
なお、上記実施形態は本発明の具体例に過ぎず、本発明が上記実施形態のみに限定されることはない。例えば、上記実施形態では、硬貨2のみを扱っていたが、紙幣も取扱い可能に構成してもよい。
【0031】
また、制御部110を、通常モード時に金種識別装置20によって偽貨と判別される硬貨2が、偽貨が最初に投入された後所定時間(例えば30秒)内に所定回数(例えば3回)以上投入されると、受入禁止モードに移行するように構成してもよい。この場合、上記実施形態と同様に、連続投入によって偽貨を受け入れる可能性を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態を示す貨幣識別装置の概略構成図
【図2】制御装置の機能ブロック図
【図3】貨幣が投入されたときの動作を説明するフロー図
【符号の説明】
【0033】
1…貨幣識別装置、2…硬貨、20…金種識別装置、30…硬貨振分装置、100…制御装置、110…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入貨幣の正偽及び金種を識別する識別手段と、識別手段によって正貨と判別された投入貨幣を受け入れるとともに識別手段によって偽貨と判別された投入貨幣を返却する貨幣振分手段と、識別手段及び貨幣振分手段を制御する制御手段とを備えた貨幣識別装置において、
前記制御手段は、
通常モード時に投入貨幣が識別手段によって偽貨と判別されると、後続の投入貨幣を返却するように貨幣振分手段を制御する受入禁止モードに移行し、受入禁止モード時に投入貨幣が識別手段によって正貨と判別されると、該投入貨幣を返却するように貨幣振分手段を制御するとともに通常モードに移行する
ことを特徴とする貨幣識別装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
貨幣投入後所定時間内に新たに投入された貨幣が識別手段によって偽貨と判別された場合に値が増加するカウンタを有し、
通常モード時に前記カウンタの値が所定値以上になると、受入禁止モードに移行する
ことを特徴とする請求項1記載の貨幣識別装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
投入貨幣が識別手段によって正貨と判別された場合に前記カウンタの値を減らす
ことを特徴とする請求項2記載の貨幣識別装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記受入禁止モード時に識別手段によって正貨と判別される貨幣が所定回数以上投入されると、投入貨幣を返却するように貨幣振分手段を制御するとともに前記通常モードに移行する
ことを特徴とする請求項1記載の貨幣識別装置。
【請求項5】
前記制御手段は、
前記通常モード時に識別手段によって偽貨と判別される貨幣が所定時間内に所定回数以上投入されると、前記受入禁止モードに移行する
ことを特徴とする請求項1記載の貨幣識別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−86118(P2010−86118A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252100(P2008−252100)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】