説明

貨物用コンテナ

【課題】 従来比較的行い難かった吊り下げ荷役作業等、上方からの荷役に適した貨物の積み下ろしに対応でき、更にはその際の目視確認が安全且つ容易に行い得る構造を具えた、新規な貨物用コンテナの開発を試みたものである。
【解決手段】 本発明の貨物用コンテナ1は、荷室Sの床面3と、床面3から立ち上がる周壁パネル4と、床面3に対向する天井パネル2とによって、内部を密閉することのできる荷室を構成した積貨のための装置において、前記天井パネル2と周壁パネル4とは、それぞれ開放できるように構成され、且つ天井パネル2の開放構造は、天井パネル2の支持部材に対し、荷室長手方向を回動基軸として、ハッチタイプ天井パネル220の場合には、その自由端を、中折タイプ天井パネル20の場合には、その中折部を上方に移動させて天井面を全面開放できるようにしたことを特徴として成るものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海上輸送、陸上輸送、更には航空輸送に用いられる箱型の積貨のためのコンテナに関するものであって、特に荷室天井部を十分開放できるようにするとともに、同時に周壁パネル部も開放できるようにした新規な構造の貨物用コンテナに係るものである。
【背景技術】
【0002】
貨物用コンテナは、国際的な物流環境に耐えるため第一に堅牢性が要求され、加えてクレーンをはじめとする各種荷役設備を汎用的に利用できるように国際的に規格化がされている。
このため従来の貨物用コンテナは、比較的耐加重や高度な密閉機能が優先され、荷役作業の開口部に関して言えば、後部の観音開き状の扉と側面のスライド扉との組み合わせタイプが多く採用されている。
しかしながら、輸送対象の積荷物によっては、このような開口部のみでは積荷作業が行い難かったり、更には不可能であったり、また作業そのものにも危険が伴う場合もあった。
具体的な事例としては、例えば一般家庭の引っ越し作業の場合は、ピアノ等は比較的重量、形状ともに大であるため、扱い難く、一般貨物用のコンテナを用いようとしても、対応が難しく、多くは別途クレーン装置を具えた専用車輌の手配を必要としている。また重量のある工作機械等をクレーンで吊り下げた状態でコンテナ内に格納を試みるにあたり、後方や側部からの荷役が不可能である場合には、天井部のみを作業時のみ取り外せるタイプのコンテナを利用し、天井パネルを固定しているボルトを外し、天井パネルを除去した上で、上方から貨物を荷室内に搬入して行く形態も採られていた。このような態様により、コンテナに特殊な貨物を収納することは可能であるものの、当然ながら付随作業も含めて、全体の工程数が多く、効率の良い荷役作業は行えない。
しかもこのような重量物は、輸送時の積貨の安定と損傷を防ぐため、貨物の正確な設置と固定を確実に行わなければならないが、荷役作業時に全周囲から荷物の載置状況を観察しずらく、このためコンテナ内に確認、誘導の作業者が待機して荷役を行うとなると、重量物が至近距離に吊り下ろされてくるだけに極めて危険な状況を呈することになる。いずれにせよ天井部が扉状に完全開放されるようなコンテナは存在せず、上方からの吊り荷の荷役作業を満足させるものはない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】山辺正二郎,「別冊ベストカー The特装トラック(ISBN4−06−339979−6)」,三推社・講談社,2001.11.27,P28〜P31
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、これらの種々の背景を考慮してなされたものであって、従来比較的行い難かった吊り下げ荷役作業等、上方からの荷役に適した貨物の積み下ろしに対応でき、更にはその際の目視確認が安全且つ容易に行い得る構造を具えた、新規な貨物用コンテナの開発を試みたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の貨物用コンテナは、荷室の床面と、床面から立ち上がる周壁パネルと、床面に対向する天井パネルとによって、内部を密閉することのできる荷室を構成した積貨のための装置において、前記天井パネルと周壁パネルとは、それぞれ開放できるように構成され、且つ天井パネルの開放構造は、天井パネルの支持部材に対し、荷室長手方向を回動基軸として、ハッチタイプ天井パネルの場合には、その自由端を、中折タイプ天井パネルの場合には、その中折部を上方に移動させて、天井面を全面開放できるようにしたことを特徴として成るものである。
【0006】
請求項2記載の貨物用コンテナは、前記請求項1記載の要件に加え、前記床面と、天井パネルと、周壁パネルとは、各外辺部に配されたフレームにより支持されていることを特徴として成るものである。
【0007】
請求項3記載の貨物用コンテナは、前記請求項1または2記載の要件に加え、前記開放されるにあたっての天井パネルの立ち上がり高さ寸法については、車輌荷台の幅寸法のほぼ1/2を限度とすることを特徴として成るものである。
【0008】
請求項4記載の貨物用コンテナは、前記請求項1、2または3記載の要件に加え、前記中折タイプ天井パネルにおいて、自由端のロックは、先端ローラを案内するハッチガイドレールにおける先端降下部と、その上方に設けられる上押さえ片とにより構成される保持ポケットに対し、前記先端ローラを収めることによって行われることを特徴として成るものである。
【0009】
請求項5記載の貨物用コンテナは、前記請求項1、2、3または4記載の要件に加え、前記中折タイプ天井パネルにおける中折部シールド構造については、中折部の中心に被せられるように基部パネルまたは自由端パネルのいずれか一方に設けられる中折部覆板と、この中折部覆板の内側に設けられる中折部ウェザーシールとを具え、天井パネルの閉鎖時おいて、中折部覆板が、中折部ウェザーシールを上方から押さえ付けるようにして密閉状態を出現させるように構成されていることを特徴として成るものである。
【0010】
請求項6記載の貨物用コンテナは、前記請求項1、2、3、4または5記載の要件に加え、前記天井パネルにおける先端部シールド構造については、先端覆板と、その内側下面に設けられる先端ウェザーシールと、周壁パネル上端を囲うように外嵌される前記先端覆板における先端下がり部を具えて構成されていることを特徴として成るものである。
【0011】
請求項7記載の貨物用コンテナは、前記請求項1、2、3、4、5または6記載の要件に加え、前記天井パネルが閉鎖された状態において、これを支承する可動ビームが設けられていることを特徴として成るものである。
【発明の効果】
【0012】
まず請求項1記載の発明によれば、貨物用コンテナの天井パネルと周壁パネルとを共に開放した状態で作業を行うことができるから、例えば上方からの重量物を収める際、クレーン等の起重装置が存在すれば、極めて効率的な荷役作業が可能となる。
そしてその際、作業者が誘導等を行うにあたっては、作業者はコンテナ内に入らず側面を開放した状態で外側において誘導することができることから、作業の確実性、安全性が向上する。
そして、このような重量物はコンテナ内においても充分な固定のため、いわゆるラッシング作業も必要であるが、このような作業も周壁パネルを開放した状態で至近位置に作業者が位置してできるから、より効率的な作業が行い得る。
【0013】
また請求項2記載の発明によれば、貨物用コンテナにおける天井面と、周壁パネルとが開放できるように構成され、従ってこの部位を全体の強度メンバーとして利用し難いものであるが、全体の強度をフレームにより確保し、結果的に充分な強度を有する貨物用コンテナが得られる。
【0014】
また請求項3記載の発明によれば、天井面が開放されるにあたって、天井パネルの立ち上がり高さは低く抑えられるから、荷役作業を行う場所、例えば倉庫等において極端な上部高さの余裕寸法を必要としない。加えて、クレーン等による操作の場合、オペレータが積荷物を吊り下ろす際に、その目視状態を妨げてしまうことを最小限に抑え、正確な積載を可能とする。
【0015】
また請求項4記載の発明によれば、中折タイプ天井パネルの場合において、これを閉鎖状態としたときに、自由端ロックが自動的に行われ、自由端側が衝撃等により上方に開く事態を完全に回避することができる。
【0016】
また請求項5記載の発明によれば、中折タイプ天井パネルにあっては、中折部のシールが確実になり、天井部が開放可能な構造の場合に懸念される雨水等のしみ込みが完全に防止できる。
【0017】
また請求項6記載の発明によれば、天井パネルの自由端側においても、雨水等のシールを確実に行うことができる。
【0018】
また請求項7記載の発明によれば、天井パネル閉鎖時における天井パネルの支承が確実になされる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の貨物用コンテナの積荷作業状態の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の貨物用コンテナの斜視図であり、密閉状態(a)と、開放状態(b)とを併せて示すものである。
【図3】同上貨物用コンテナを分解して示す斜視図である。
【図4】同上貨物用コンテナの背面図である。
【図5】天井パネルとフレームとの構成を示す縦断側面図である。
【図6】中折タイプの天井パネルユニットとフレームとの関連態様を示す断面図である。
【図7】天井パネルを閉鎖した状態での側面開放ユニットの開放途中の状態を示す縦断側面図である。
【図8】中折部シールド構造の二形態を示す縦断側面図である。
【図9】先端部シールド構造の他の実施例を示す縦断側面図である。
【図10】ハッチタイプ天井パネルを一部に具えた構造の荷台を示す背面図である。
【図11】側部パネル、後部扉の他の形態を示す斜視図である。
【図12】天井パネルを支持するための可動フレームを設けたフレームの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実施するための最良の形態は、以下述べる実施例をその一つとするものであるとともに、この技術思想に基づく種々の改良を施した実施例も含むものである。
【実施例】
【0021】
以下、本発明を図示の実施例に基づいて具体的に説明する。
本発明の貨物用コンテナ1は、図示のトレーラ・トラクタタイプなどの貨物車輌Tに積載され、また鉄道貨物車両に積載されて、陸上輸送に供されるとともに、船舶、航空機による海上輸送、航空輸送に供されるものである。
貨物用コンテナ1は、その上面を天井パネル2によって構成するとともに、それと対向して設けられる床面3と、床面3から立ち上がる周壁パネル4とにより、内部に密閉状態の荷室Sを構成したものである。このうち周壁パネル4については、実質的には後部扉5、前部固定パネル6、側部パネル7とによって構成される。
【0022】
更に具体的に説明すると、これら部材は、フレーム10を骨格部材として構成されるものであり、床面3は、その外周位置に平面視矩形状の床枠フレーム11を具える。この床枠フレーム11は、更にその内側部位に図示を省略するが必要な強度の桟状構造等のフレーム部材を適宜具える。そしてその側面には、フォークリフト等の操作を受け入れるためのフォークスロット110を設けている。このような床枠フレーム11の四隅部から4本のピラーフレーム12が立ち上がるように設けられ、その上端において後方にリアビーム13を具え、対向する前方にフロントビーム14を具え、更にそれらを結ぶように両側面にサイドビーム15、16を具えるものである。そして、前記サイドビーム15は、後述する天井パネル2が全て中折タイプ天井パネル20で構成されているときの開放基部となるものであり、他方サイドビーム16は開放側とされるものである。更に、中折タイプ天井パネル20の開閉に寄与するハッチガイドレール17がリアビーム13、フロントビーム14のそれぞれ内側に設けられ、更にハッチガイドレール17は、その開放側、すなわちサイドビーム16側において先端を幾分か下方に斜降するような先端降下部171と、反対側のサイドビーム15側において案内位置を上昇させた基部上昇部172を具えている。
【0023】
次に天井パネル2について説明する。
図1から図5に示す実施例は、中折タイプ天井パネル20によって天井部を構成したものである。まず中折タイプ天井パネル20について説明する。このものは、基部パネル21Aと自由端パネル21Bとが組み合わされた天井パネルユニット21が、中折状に開放され、また閉鎖時には、リアビーム13、フロントビーム14、サイドビーム15、16の上端縁を覆うように平板状態となる。まず基部パネル21Aは、回動基軸たる基部パネルヒンジ22aにより、前記フレーム10におけるサイドビーム15に回動自在に取り付けられる。また、前記基部パネル21Aと、自由端パネル21Bとは、中折ヒンジ22bにより山折れ状に屈曲するように構成されている。そして、前記自由端パネル21Bは、その先端側に先端ローラ23をローラステー23aを介して取り付けている。
【0024】
このような、中折タイプの天井パネルユニット21を開閉シフトするにあたっては、天井パネルシリンダ24を用いる。この天井パネルシリンダ24は、リアビーム13、フロントビーム14に対し、パネルシリンダボディ24aをパネルシリンダ基部ピボット25aにおいて回動自在に接続し、一方他端であるパネルシリンダロッド24bは、基部パネル21Aにおけるパネルシリンダ可動ピボット25b側に回動自在に接続される。
【0025】
このような中折タイプの天井パネルユニット21は、更に荷室Sの完全な密閉の状態を維持するために、先端ロック構造26、基部シールド構造27、中折部シールド構造28、先端部シールド構造29を具える。
まず先端ロック構造26について説明する。
この先端ロック構造26の一例は、図5、図6、図7に示すように前記フレーム10におけるリアビーム13、フロントビーム14の内側側面等を用いて設けたハッチガイドレール17の先端側(サイドビーム16側)に形成される。すなわちハッチガイドレール17は、リアビーム13、フロントビーム14のほぼ全幅にわたって、それに沿った形態であるが、その先端部近く、サイドビーム16に接近した辺りで下方に降下させ、先端降下部171を構成する。一方この部位には、前記フレーム10に上押さえ片251を設け、これら先端降下部171と上押さえ片251との間の空間を保持ポケット252とするものである。
【0026】
これにより、中折タイプの天井パネルユニット21を閉鎖状態にしたときには、その先端ローラ23が保持ポケット252に収められるような形態となり、基部パネル21Aと自由端パネル21Bとがともに平板状態に連なったとき、基部パネルヒンジ22aを中心に、自由端が上方に浮き上がるような状態が完全に回避されるのである。もちろん、保持ポケット252の先端ローラ23の嵌まり込みには、先端ローラ23の配設位置が重要であり、先端ローラ23は、前記自由端パネル21Bのほぼ先端近くであって、上下方向については先端降下部171の深さに相当する高さ寸法を保って自由端パネル21Bに設けられている。
また前記ハッチガイドレール17は、基部側、すなわちサイドビーム15側の範囲を上昇させ、基部上昇部172とする。これにより図4に示すように天井パネルユニット21の開放時、自由端パネル21Bの先端が充分に上昇し、天井パネルユニット21の先端が、フレーム10の上端と干渉しない状態が得られている。
【0027】
次に基部シールド構造27について説明する。
この基部シールド構造27は、前記サイドビーム15と、中折タイプ天井パネル20の基部パネル21Aと間のシールド構造である。具体的構成は、図5に示すようにフレキシブルなシールシート227Aを回動中心上面を覆うように張設しているものである。
【0028】
次に中折部シールド構造28について説明する。
このものは、図8(a)に示すように一例として基部パネル21Aにおける中折部近くに連設された、一例として逆チャンネル状の中折部覆板281をその一部とするものであり、基端側に立ち上がり部281aを有し、更にその上面に天部281bが連設され、更に天部281bの他端には、先端押さえ部281cが設けられている。このような中折部覆板281に保持されるように中折部ウェザーシール282が設けられる。このものは、例えば中空のゴム状部材であり、天井パネル2が閉鎖されるときには、図8(a)下図に示すようにこの中折部ウェザーシール282が、下面では自由端パネル21Bに接触しながら、その上方は、前記中折部覆板281における先端押さえ部281cにより押さえ付けられて、結果的に一定の弾力性をもって、自由端パネル21Bに押さえ付けられて密閉状態を出現させるものである。
【0029】
次に先端部シールド構造29について説明する。
このものは、図7に示すように自由端パネル21Bの先端側に設けられる一例としてアングル状の部材である先端部覆板291と、その内側(下面)に設けられる先端ウェザーシール292と、フレーム10におけるサイドビーム(開放側)16に設けられたシール受けリブ293とにより構成されるものである。すなわち、先端部覆板291は、前張出部291aと、更に先端下がり部291bとを具えた断面アングル状の部材であり、前張出部291aの下面に先端ウェザーシール292が設けられている。そして、閉鎖状態においては、先端ウェザーシール292は、シール受けリブ293の間に挟み込まれるようになり、更に前記先端部覆板291の先端下がり部291bは、サイドビーム16上端の外側に覆い被さるようになってシール作用を奏する。
【0030】
次に周壁パネル4を構成する後部扉5、前部固定パネル6、側部パネル7について説明する。まず後部扉5は、一例として観音扉状の扉が適用されるものであり、図1〜図4に示すように後部2方のリアビーム13に設けたヒンジ51によってその開閉がなされる。なお常法に従ったラッチ装置52が具えられている。一方前部固定パネル6は、通常固定状態で設けられているが、もちろんこの部分が開放されるような扉を具えたものであっても差し支えない。
また側部パネル7は、サイドビーム15、サイドビーム16を支持部材とし、それぞれヒンジ71によりハッチ状に開放される構造を採る。図示の実施例では、側部パネル7が一枚構成で開放されるものであり、これについても常法に従いラッチ構造72を具えるとともに、その開放を行うアシストシリンダ73を具える。なおアシストシリンダ73は、それ自体のシフト駆動により側部パネル7を開放閉鎖できるようにすることもできるが、ガスダンパなどの適宜のカウンタバランサの機能により、手動での開放を助けるような形態であってももとより差し支えない。また側部パネル7についても、後述するように種々の形態が採り得るが、いずれも天井パネル2の開放時においても、側部パネル7が開放できる構成である。
【0031】
本発明の貨物用コンテナ1は、以上述べたような構成を一つの基本的な構成とするものであり、次のように作動する。
≪始発状態≫
まず本発明の貨物用コンテナ1における荷室Sが全て閉鎖した状態を始発状態として説明する。この始発状態にあっては、周壁パネル4を構成する後部扉5、側部パネル7が閉鎖された状態であり、天井パネル2についても閉鎖された状態である。
天井パネル2にあっては、天井パネルユニット21は、基部パネル21Aと自由端パネル21Bとが平坦に連続した状態となり、荷室Sの天井面を覆った状態となっている。この状態では、天井パネルシリンダ24は収縮した状態である。
また自由端パネル21B側における先端ローラ23は、保持ポケット252に収まった状態である。
【0032】
≪主たる荷役作業の状態≫
本発明の主たる狙いである天井面からの荷役作業は、次のように行われる。
まず単純に天井パネル2のみが開放されていればよい場合、例えばバルク状の荷物等を収納する場合には、上方のみを開放して行うが、本発明の貨物用コンテナ1が最も機能を発揮する重量物を上方から搬入搬出させる場合には、次のように作業することが好ましい。
まず天井パネル2を開放するにあたっては、天井パネルシリンダ24を伸張させて、基部パネル21Aと自由端パネル21Bとから成る天井パネルユニット21を中折れ状に上方に扛起させる
これに伴い中折タイプの天井パネルユニット21は、中折ヒンジ22bを中心に持ち上げられ、その先端側の先端ローラ23は、ハッチガイドレール17上を転動して、まず先端降下部171から基端側に向けて抜け出し、その上昇に伴い前記自由端パネル21Bは、一挙に先端面を上昇させ、先端部シールド構造29における先端部覆板291がサイドビーム(回動側)16に干渉しないように移動しながら、基部パネル21A側に引き寄せられてゆき開放状態を得る。このときハッチガイドレール17における基部上昇部172により自由端パネル21Bは、より一層上昇し、フレーム10の上端と干渉しないように移動する。この状態では、前記天井パネルユニット21が中折れ状に折り重ねられたような状態で、サイドビーム15側に立ち上がるような形態を採る。
周壁パネル4における側部パネル7にあっても、ハッチタイプの場合、ヒンジ71を中心に上方に開放する。もちろん側部パネル7は、その両方を開放したり、片側のみを開放させたりして作業を行う。また後部扉5についても、これを必要に応じて開放する。
【0033】
このような状態で例えば重量物をクレーン等により吊り上げオペレータが荷室Sの床面3を狙ってこれを降下させ所定の位置に設置する。このとき、荷役作業を案内する作業者は、側部パネル7が解放されていることから、床面3内に入らないものの、至近距離から作業の指示等がなし得るものである。そして、積荷物Bが床面3に設置されたときには、更に側方からの積荷物Bへの作業者のアクセスが可能であり、荷物を固定するためのラッシング操作が確実に行い得る。
このような作業を終了した後に、適宜開放されていた側部パネル7、後部扉5等を閉鎖する。また天井パネル2については、これを閉鎖するものであるが、その操作は、天井パネルシリンダ24を収縮させて、基部パネル21Aを倒伏させる。これに伴い自由端パネル21Bも中折状を保ったまま倒伏してゆき、最終的には基部パネル21Aと自由端パネル21Bとが連続した一枚の平板状となった状態を得る。
【0034】
なお、このような作動態様から理解されるように、天井パネルシリンダ24を一例とする天井パネル2の開閉駆動構造は、種々のものが適用できる。
例えば、油圧シリンダー、油圧アクチュエータ、電動シリンダー、電動アクチュエータ、ガスダンパ、スクリュージャッキ、空圧シリンダー、空圧アクチュエータ、ロッドアクチュエータ、直動アクチュエータ、ラック、ピニオン機構、巻バネ等を使用した押し上げ装置等を適用し、これらによって直接駆動したり、これら機器にリンク、ワイヤー、滑車等とを組み合わせて天井パネル2の開閉を行うことも可能である。
【0035】
≪閉鎖状態の維持:密閉状態の維持≫
このとき自由端パネル21Bにおける先端ローラ23は、保持ポケット252に嵌まり込むような状態となり、衝撃等を受けたとしても天井パネルユニット21が開放しないような状態に維持される。
また中折部シールド構造28により、中折部ウェザーシール282が中折部における基部パネル21Aと自由端パネル21Bとの上面のシール状態を得る。もちろん中折部シールド構造28は、図8(a)に示す形態に限らず、図8(b)示されるような中央部にいわゆる山ゴム等と称されるものを配したような簡易な形態でも差し支えない。
【0036】
また先端部においても、先端ウェザーシール292、更には先端部覆板291における先端下がり部291b、シール受けリブ293等の作用により先端部側でのシール状態が得られる。
もちろん先端部シールド構造29は、このような図6に示す構成に限られるものではなく、更に図9に示すような構造とすることができる。すなわちこの形態は、一対の先端ウェザーシール292aと、先端ウェザーシール292bとの組み合わせであって、まず先端ウェザーシール292aは、サイドパネル13の上端縁に設けられている。一方先端ウェザーシール292bは、天井パネルユニット21の先端部覆板291の内側に設けられている。そして、天井パネルユニット21の閉鎖時に2本の先端ウェザーシール292a、292bは、互いに接触し、且つ先端ウェザーシール292の天井パネルユニット21の一部に押さえ付けられ、これによりこの部位における密閉が図られる。
なお各シールド構造は、基本的部材の説明にとどめたが、防水を確実にするため、常法に従い、防水ゴム、防水ゴムパッキン、樹脂パッキン、耐水シーラ剤、防水布シート等を組み合わせて用いることももとより差し支えない。
【0037】
そして貨物用コンテナ1に収納した積荷物Bを搬出する場合には、前述の搬入の操作と逆の手順によって行うものである。もちろん積荷物Bを荷下ろしするにあたりクレーン等の扛上手段がない場合には、側部パネル7を開放させることにより、積荷物Bの至近距離にフォークリフト等が接近し、フォークリフトによる取り出しが可能である。
【0038】
〔他の実施例〕
本発明は以上述べた実施例を一つの基本的な技術思想の体現形態とするものであるが、更に次のような改変が考えられる。
まず図10に示すものは、例えば天井パネル2の種々の応用形態である。
図10(a)に示すものは、天井パネル2を構成する中折タイプ天井パネル20にあって、天井パネルユニット21を2組併せたような形態である。すなわちそれぞれサイドビーム(基部側)15、サイドビーム(回動側)16側を基部パネルとして、真ん中から両側に天井パネル2が退去して開放されるものである。
また図10(b)に示す形態は、天井パネルユニット21が天井面の全幅にわたって設けられておらず、一部は単純なハッチタイプ天井パネル220を適用し、これらを組み合わせた形態のものである。具体的には、ハッチパネル221が一例としてサイドビーム16に対しハッチパネルヒンジ222を介して扛伏自在に設けられている。
【0039】
また更に図11に示す形態は、側部パネルに関する種々の実施例であり、図11(a)は、一枚の側部パネル7ではなく、上部ハッチ75、下部あおり76の組み合わせで構成したものであり、また図11(b)に示す形態は、側部パネル7をスライド扉としたものである。
また更に図11(c)に示す形態は、側部パネル7を観音扉状の扉としたものである。
【0040】
また更に図11(a)、図11(b)に示す実施例は、後部扉5に関する他の実施例であり、観音扉状の扉に替えて、後方にハッチ状に跳ね上げられるハッチタイプ後部扉である。このように各種の周壁パネル4の形態及び天井パネル2の形態を適宜組み合わせて構成し得るものである。
もちろん、この貨物用コンテナ1については、荷役作業を行うにあたり、図示のようなトレーラ・トラクタタイプの貨物車輌Tのトレーラー部位に搭載したまま荷役作業を行ってもよいし、荷役現場の床面乃至は地上面にコンテナを下ろした状態で作業を行うことももとより差し支えない。
【0041】
更に図12に示すものは、天井面に設けられる天井パネル2の支承のための可動ビーム18である。本発明の特徴の一つに天井面が全開放されることがある。このような構成であると天井パネル2の支承が必要になる場合が生ずるが、支承のための部材を設けることと、全開放することとの相反する要請に応えるべく、可動ビーム18が設けられる。すなわち可動ビーム18は、一例として貨物用コンテナ1の幅方向に添った2本の支承部材であり、その両端は、左右のサイドビーム15、16に支持されている。そして、コロ181の移動により可動ビーム18は、例えばチェーン等の駆動手段182により、支承作用位置からリアビーム13又はフロントビーム14の近くの退去位置へと移動できるように構成されている。これにより、天井パネル2の閉鎖時には、可動ビーム18は、貨物用コンテナ1の長手方向中間位置に設定され天井パネル2を下支えするように作用する。一方天井パネル2を開放し、天井面を全開放するときには、可動ビーム18を前後の退去位置へ移動させる。
【符号の説明】
【0042】
T 貨物車輌
S 荷室
B 積荷物
1 貨物用コンテナ
2 天井パネル
3 床面
4 周壁パネル
5 後部扉
51 ヒンジ
52 ラッチ装置
6 前部固定パネル
7 側部パネル
71 ヒンジ
72 ラッチ構造
73 アシストシリンダ
75 上部ハッチ
76 下部あおり
10 フレーム
11 床枠フレーム
110 フォークスロット
12 ピラーフレーム
13 リアビーム
14 フロントビーム
15 サイドビーム(基部側)
16 サイドビーム(回動側)
17 ハッチガイドレール
171 先端降下部
172 基部上昇部
18 可動ビーム
181 コロ
182 駆動手段
20 中折タイプ天井パネル
21 天井パネルユニット
21A 基部パネル
21B 自由端パネル
22a 基部パネルヒンジ(回動基軸)
22b 中折ヒンジ
220 ハッチタイプ天井パネル
221 ハッチパネル
222 ハッチパネルヒンジ
227A シールシート
23 先端ローラ
23a ローラステー
24 天井パネルシリンダ
24a パネルシリンダボディ
24b パネルシリンダロッド
25a パネルシリンダ基部ピボット
25b パネルシリンダ可動ピボット
251 上押さえ片
252 保持ポケット
26 先端ロック構造
27 基部シールド構造
28 中折部シールド構造
281 中折部覆板
281a 立ち上がり部
281b 天部
281c 先端押さえ部
282 中折部ウェザーシール
29 先端部シールド構造
291 先端部覆板
291a 前張出部
291b 先端下がり部
292 先端ウェザーシール
292a 先端ウェザーシール
292b 先端ウェザーシール
293 シール受けリブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷室の床面と、床面から立ち上がる周壁パネルと、床面に対向する天井パネルとによって、適宜の密閉することのできる荷室を構成した積貨のための装置において、前記天井パネルと周壁パネルとは、それぞれ開放できるように構成され、且つ天井パネルの開放構造は、天井パネルの支持部材に対し、荷室長手方向を回動基軸として、ハッチタイプ天井パネルの場合には、その自由端を、中折タイプ天井パネルの場合には、その中折部を上方に移動させて、天井面を全面開放できるようにしたことを特徴とする貨物用コンテナ。
【請求項2】
前記床面と、天井パネルと、周壁パネルとは、各外辺部に配されたフレームにより支持されていることを特徴とする請求項1記載の貨物用コンテナ。
【請求項3】
前記開放されるにあたっての天井パネルの立ち上がり高さ寸法は、コンテナの幅寸法のほぼ1/2を限度とすることを特徴とする請求項1または2記載の貨物用コンテナ。
【請求項4】
前記中折タイプ天井パネルにおいて、自由端のロックは、先端ローラを案内するハッチガイドレールにおける先端降下部と、その上方に設けられる上押さえ片とにより構成される保持ポケットに対し、前記先端ローラを収めることによって行われることを特徴とする請求項1、2または3記載の貨物用コンテナ。
【請求項5】
前記中折タイプ天井パネルにおける中折部シールド構造は、中折部の中心に被せられるように基部パネルまたは自由端パネルのいずれか一方に設けられる中折部覆板と、この中折部覆板の内側に設けられる中折部ウェザーシールとを具え、天井パネルの閉鎖時おいて、中折部覆板が、中折部ウェザーシールを上方から押さえ付けるようにして密閉状態を出現させるように構成されていることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の貨物用コンテナ。
【請求項6】
前記天井パネルにおける先端部シールド構造は、先端覆板と、その内側下面に設けられる先端ウェザーシールと、周壁パネル上端を囲うように外嵌めされる前記先端覆板における先端下がり部とを具えて構成されていることを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の貨物用コンテナ。
【請求項7】
前記天井パネルが閉鎖された状態において、これを支承する可動ビームが設けられていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6記載の貨物用コンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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