説明

貯湯式温水器

【課題】蛇口から出湯中に風呂湯はりを行った際、蛇口からの出湯温度の変動を低減し、安定した湯水を蛇口に供給することができる貯湯式温水器を提供する。
【解決手段】貯湯タンク1から湯水を取出す出湯管12と、貯湯タンク1からの湯水と給水管5からの水を混合し所定温度の湯を蛇口8等へ供給する給湯混合弁10と、貯湯タンク1からの湯水と給水管5からの水を混合し所定温度の湯水を風呂へ供給する風呂混合弁11と、風呂湯はりの入り切りを行う注湯弁20と、風呂湯はり流量を調節する流量調節弁19と、給湯混合弁10と風呂混合弁11および流量調節弁19の弁制御を行う制御部18を備え、蛇口8から出湯中の風呂湯はりに備えて、風呂湯はり停止中に流量調節弁19の弁開度制御を行うもので、風呂湯はりの湯の使用量を調節し、蛇口8等に供給する湯の瞬間的な減少を低減し、出湯温度の変動が少ない湯水を蛇口等に供給することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯式温水器に関するものであり、特に、混合弁を用いた湯水混合制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の、この種の貯湯式温水器は、ヒートポンプ回路で加熱された湯水を、貯湯タンクの上部から成層状態で貯湯し、その貯湯された湯水を、上部出湯管より取り出し、給水管から供給される水と混合して、所定の湯温に調節して蛇口等の給湯端末や風呂等の負荷側に供給する構成であり、蛇口等への出湯中に、風呂湯はりを開始すると、風呂湯はりの湯の使用量が、蛇口等の出湯に比べ多量となるため、蛇口等に供給する湯が瞬間的に減少し出湯温度の変動が起こる。
【0003】
この現象を防止するため、蛇口等の出湯中に、風呂湯はりを開始すると、風呂回路に設けた流量調節弁を絞り、風呂湯はり流量を減少させて前記出湯温度の変動を低減するようにしていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−89954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の貯湯式温水器の構成では、同時給湯開始時に注湯開閉弁の開弁と流量調節弁の絞り制御を行うため、複数個の弁の開閉に起因した配管内の瞬間的な水圧変動が発生する。特に、給水圧が300kPa前後の高圧力型になると、この水圧変動が拡大し、水撃作用となって給湯装置内配管の振動や衝撃音を発生させ、異常音が発生するという課題があった。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、同じタイミングでの複数個の弁の開閉に起因した配管内の瞬間的な水圧変動に起因する前記不具合を解消し、蛇口等から出湯中に風呂湯はりを開始しても、出湯温度の変動が少ない安定した湯水を蛇口等に供給することができる貯湯式温水器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明の貯湯式温水器は、湯水を貯える貯湯タンクと、前記貯湯タンクから湯水を取出す出湯管と、前記貯湯タンクからの湯水と給水管からの水を混合し、所定温度の湯水を蛇口等へ供給する給湯混合弁と、前記給湯混合弁からの出湯流量を検出する出湯流量センサと、前記貯湯タンクからの湯水と前記給水管からの水を混合し、所定温度の湯水を風呂へ供給する風呂混合弁と、風呂湯はりの入り切りを行う注湯弁と、風呂湯はり流量を調節する流量調節弁と、前記給湯混合弁と前記風呂混合弁および前記流量調節弁の弁開度制御を行う制御部を備え、蛇口等から出湯中の風呂湯はりに備えて、風呂湯はり停止中に前記流量調節弁の弁開度制御を行うもので、風呂湯はりの湯の使用量を調節し、蛇口等に供給する湯の瞬間的な減少を低減して、出湯温度の変動が少ない安定した湯水を蛇口等に供給することができるとともに、流量調節弁は次の風呂湯はりに備えて、事前に弁開度制御を行い、注湯弁の開弁のみを行うため、同じタイミングでの複数個の弁の開閉に起因した水圧変動による配管の振動や衝撃音の発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の貯湯式温水器は、蛇口等の出湯中に風呂湯はりを開始しても出湯温度の変動が
少ない安定した湯水を蛇口等に供給することができるとともに、同じタイミングでの複数個の弁の開閉に起因した水圧変動による配管の振動や衝撃音の発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
第1の発明は、湯水を貯える貯湯タンクと、前記貯湯タンクから湯水を取出す出湯管と、前記貯湯タンクからの湯水と給水管からの水を混合し、所定温度の湯水を蛇口等へ供給する給湯混合弁と、前記給湯混合弁からの出湯流量を検出する出湯流量センサと、前記貯湯タンクからの湯水と前記給水管からの水を混合し、所定温度の湯水を風呂へ供給する風呂混合弁と、風呂湯はりの入り切りを行う注湯弁と、風呂湯はり流量を調節する流量調節弁と、前記給湯混合弁と前記風呂混合弁および前記流量調節弁の弁開度制御を行う制御部を備え、蛇口等から出湯中の風呂湯はりに備えて、風呂湯はり停止中に前記流量調節弁の弁開度制御を行うもので、風呂湯はりの湯の使用量を調節し、蛇口等に供給する湯の瞬間的な減少を低減して、出湯温度の変動が少ない安定した湯水を蛇口等に供給することができるとともに、流量調節弁は次の風呂湯はりに備えて、事前に弁開度制御を行い、注湯弁の開弁のみを行うため、同じタイミングでの複数個の弁の開閉に起因した水圧変動による配管の振動や衝撃音の発生を防止することができる。
【0009】
第2の発明は、特に、第1の発明の風呂湯はり停止中に、風呂湯はり流量を、単独での風呂湯はり流量より減少させるよう流量調節弁の弁開度制御を行うもので、風呂湯はりの湯の使用量が蛇口等の出湯と略同等となるため、風呂湯はりに湯をとられ、蛇口等に供給する湯が瞬間的に減少する現象を防止でき、出湯温度の変動が少ない安定した湯水を蛇口等に供給することができる。
【0010】
第3の発明は、特に、第1の発明の風呂湯はり停止中に、蛇口等から出湯を開始すると、風呂湯はり流量を、単独での風呂湯はり流量より減少させるよう流量調節弁の弁開度制御を行うもので、風呂湯はりの湯の使用量が蛇口等の出湯と略同等となるため、風呂湯はりに湯をとられ、蛇口等に供給する湯が瞬間的に減少する現象を防止でき、出湯温度の変動が少ない安定した湯水を蛇口等に供給することができる。
【0011】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか一つの発明の蛇口等からの出湯と風呂湯はりの同時出湯中に、前記蛇口等からの出湯を停止すると、流量調節弁の弁開度制御を行うもので、単独での風呂湯はり流量を回復させるよう流量調節弁を調節することができる。
【0012】
第5の発明は、特に、第4の発明の蛇口等からの出湯を停止すると、時間差を設けて、流量調節弁の弁開度制御を行うもので、特に、蛇口等からの出湯と風呂湯はりの同時出湯中に、蛇口等からの出湯停止と風呂湯はり流量を回復させるための流量調節弁の調節を同タイミングで行うことに起因した急激な水圧変動による配管の振動や衝撃音の発生を防止することができる。
【0013】
第6の発明は、特に、第4又は第5の発明の蛇口等からの出湯を停止すると、時間差を設けて、風呂湯はり流量を、蛇口等からの出湯と風呂湯はりの同時出湯中の風呂湯はり流量より増加するよう流量調節弁の弁開度制御を行うもので、流量調節弁で制限していた風呂湯はり流量を増大して、風呂湯はり時間の短縮を図ることができる。
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における貯湯式温水器の構成を示す図である。
【0016】
図1において、本実施の形態における貯湯式温水器は、熱源ユニット4と貯湯ユニット17とから構成されている。熱源ユニット4は、循環冷媒を圧縮して高温を得る圧縮機などの熱源部2と、熱交換部3を接続した回路からなり、その回路内には例えば、二酸化炭素冷媒が循環している。
【0017】
筐体(図示せず)で覆われた貯湯ユニット17内部には、貯湯タンク1と、貯湯タンク1の下部から水道水を供給する給水管5と、貯湯タンク1の下部から熱交換部3へ水を送水する循環ポンプ6と、貯湯タンク1の上部へ加熱された湯水を供給する循環水路7とを備えている。そして給湯回路は、貯湯タンク1の上部から湯水を取出す出湯管12と、貯湯タンク1からの湯水と給水管5からの水を混合し、所定温度の湯水を蛇口8へ供給する給湯混合弁10と、蛇口8の出湯量を検出する出湯流量センサ21を備え、さらに風呂回路は、貯湯タンク1上部から湯水を取出す出湯管12と、貯湯タンク1からの湯水と給水管5からの水を混合し、所定温度の湯水を風呂14へ供給する風呂混合弁11と、風呂湯はりの入り切りを行う注湯弁20と、風呂湯はりの流量を調節する流量調節弁19とを備えている。
【0018】
以上のように構成された貯湯式温水器について、以下その動作、作用を説明する。
【0019】
まず、貯湯タンク1へ湯を供給する沸き上げ運転動作を説明する。操作部16で、沸き上げ運転を開始すると、熱源ユニット4内のヒートポンプシステムで構成された熱源部2は、冷媒温度を上げながら冷媒を熱交換部3へ供給する。一方、循環水路7内では、循環ポンプ6が駆動し、貯湯タンク1下部の水が熱交換部3へ流入し、ここで冷媒から水へ熱交換が行われ、水が温水となって貯湯タンク1へと供給される。
【0020】
次に蛇口8の出湯及び風呂湯はり運転動作を説明する。
【0021】
操作部16で出湯温度を設定し、蛇口8の出湯を開始すると、出湯流量センサ21が出湯流量を検出し、給湯混合弁10は、制御部18からの弁開度制御に基づき、貯湯タンク1からの湯水と給水管5からの水を所定温度の湯水に混合し、蛇口8へ供給する。また、操作部16で風呂温度を設定し、風呂湯はりを開始すると、注湯弁20が開いて、風呂混合弁11は、制御部18からの弁開度制御に基づき、貯湯タンク1からの湯水と給水管5からの水を所定温度の湯水に混合し、流量調節弁19は、風呂湯はり停止中に制御部18からの弁開度制御に基づき、設定された弁開度で湯水を風呂14へ供給する。
【0022】
次に蛇口8から出湯中に、風呂湯はりを行った場合について説明する。
【0023】
蛇口8から出湯を開始すると、給湯混合弁10は、貯湯タンク1からの湯水と給水管5からの水を所定温度の湯水に混合して蛇口8へ供給し、風呂回路の流量調節弁19は、制御部18からの弁開度制御に基づき、風呂湯はり停止中に、蛇口8等からの出湯と風呂湯はりの同時出湯に備えて、事前に設定された弁開度で待機している。その後、風呂湯はりを開始すると、注湯弁20が開いて、風呂混合弁11は、制御部18からの弁開度制御に基づき、貯湯タンク1からの湯水と給水管5からの水を所定温度の湯水に混合し、流量調節弁19は、あらかじめ設定された弁開度で風呂湯はり流量を制限し、湯水を風呂14へ供給する。
【0024】
このように事前に弁開度制御を行い風呂湯はり流量を制限する構成としたことから、蛇口8から出湯中に、風呂湯はりを開始しても、出湯管12内の蛇口8に供給する湯の瞬間的な減少を低減して、出湯温度の変動が少ない安定した湯水を蛇口8に供給することができるとともに、流量調節弁19は、風呂湯はり停止中に、事前に弁開度制御を行い、風呂
湯はりを開始すると、注湯弁20の開弁のみを行うため、同じタイミングでの複数個の弁の開閉に起因した水圧変動による配管の振動や衝撃音の発生を防止することができる。
【0025】
また、風呂湯はり流量を、単独での風呂湯はり流量より減少させるよう流量調節弁19の弁開度制御を行うことにより、風呂湯はりの湯の使用量が、蛇口8の出湯と略同等となるため、風呂湯はりに湯をとられ、蛇口8に供給する湯が瞬間的に減少する現象を防止でき、さらに出湯温度の変動が少ない安定した湯水を蛇口8に供給することができる。
【0026】
また、風呂湯はり停止中に、蛇口8から出湯を開始すると、出湯流量センサ21が出湯中を検出し、制御部18の指示に基づき、風呂湯はり流量を単独での風呂湯はり流量より減少させるよう流量調節弁19の弁開度制御を行う場合も同様の作用となる。
【0027】
そして、蛇口8からの出湯と、風呂湯はりの同時出湯中に、蛇口8からの出湯を停止すると、出湯流量センサ21が出湯停止を検出し、流量調節弁19は、制御部18の指示に基づいた弁開度制御を行うことにより、単独での風呂湯はりに備えて、風呂湯はり流量を回復させるよう流量調節弁19を調節することができる。
【0028】
さらに、蛇口8からの出湯を停止すると、時間差を設けて、流量調節弁19の弁開度制御を行うことにより、特に、蛇口8からの出湯と風呂湯はりの同時出湯中に、蛇口8からの出湯停止と風呂湯はり流量を回復させるための流量調節弁19の調節を同タイミングで行うことに起因した急激な水圧変動による配管の振動や衝撃音の発生を防止することができる。
【0029】
さらに、蛇口8からの出湯を停止すると、時間差を設けて、風呂湯はり流量を、蛇口8からの出湯と風呂湯はりの同時出湯中の風呂湯はり流量より増加するよう流量調節弁19の弁開度制御を行うことにより、流量調節弁19で制限していた風呂湯はり流量を増大して、風呂湯はり時間の短縮を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上のように、本発明に係る貯湯式温水器は、蛇口等の出湯中に風呂湯はりを開始しても出湯温度の変動が少ない安定した湯水を蛇口等に供給することができるとともに、同じタイミングでの複数個の弁の開閉に起因した水圧変動による配管の振動や衝撃音の発生を防止することができるもので、複数の混合弁や開閉弁を有する各種温水器、給湯機に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1の実施の形態における貯湯式温水器の構成を示す図
【符号の説明】
【0032】
1 貯湯タンク
2 熱源部
3 熱交換部
4 熱源ユニット
5 給水管
8 蛇口
10 給湯混合弁
11 風呂混合弁
12 出湯管
14 風呂
18 制御部
19 流量調節弁
20 注湯弁
21 出湯流量センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯水を貯える貯湯タンクと、前記貯湯タンクから湯水を取出す出湯管と、前記貯湯タンクからの湯水と給水管からの水を混合し、所定温度の湯水を蛇口等へ供給する給湯混合弁と、前記給湯混合弁からの出湯流量を検出する出湯流量センサと、前記貯湯タンクからの湯水と前記給水管からの水を混合し、所定温度の湯水を風呂へ供給する風呂混合弁と、風呂湯はりの入り切りを行う注湯弁と、風呂湯はり流量を調節する流量調節弁と、前記給湯混合弁と前記風呂混合弁および前記流量調節弁の弁開度制御を行う制御部を備え、蛇口等から出湯中の風呂湯はりに備えて、風呂湯はり停止中に前記流量調節弁の弁開度制御を行う貯湯式温水器。
【請求項2】
風呂湯はり停止中に、風呂湯はり流量を、単独での風呂湯はり流量より減少させるよう流量調節弁の弁開度制御を行う請求項1に記載の貯湯式温水器。
【請求項3】
風呂湯はり停止中に、蛇口等から出湯を開始すると、風呂湯はり流量を、単独での風呂湯はり流量より減少させるよう流量調節弁の弁開度制御を行う請求項1に記載の貯湯式温水器。
【請求項4】
蛇口等からの出湯と風呂湯はりの同時出湯中に、前記蛇口等からの出湯を停止すると、流量調節弁の弁開度制御を行う請求項1〜3のいずれか1項に記載の貯湯式温水器。
【請求項5】
蛇口等からの出湯を停止すると、時間差を設けて、流量調節弁の弁開度制御を行う請求項4記載の貯湯式温水器。
【請求項6】
蛇口等からの出湯を停止すると、時間差を設けて、風呂湯はり流量を、蛇口等からの出湯と風呂湯はりの同時出湯中の風呂湯はり流量より増加するよう流量調節弁の弁開度制御を行う請求項4または5に記載の貯湯式温水器。

【図1】
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【公開番号】特開2009−115395(P2009−115395A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−289491(P2007−289491)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】