説明

貯湯式給湯機

【課題】貯湯タンクの保温性能を向上した保温効率の高い貯湯式給湯機を提供することを目的とする。
【解決手段】円筒状の胴板105と、胴板105に接合される略半球状の上部鏡板106および下部鏡板107とを有し、湯を貯留する貯湯タンク10を備える。胴板105を覆う真空断熱材12を備える。上部鏡板106は、真空状態とされる内部空間106cを有する2重構造に構成されている。真空断熱材12は、胴板105と上部鏡板106との接合部(外側周溶接部108)を越えて上部鏡板106をも覆うように延設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、湯を貯留する貯湯タンクを備える貯湯式給湯機に関する。
【背景技術】
【0002】
貯湯式給湯機は、加熱手段により水から湯への沸き上げを行い、沸き上げられた湯を貯湯タンクに貯えることで、使用者が湯を適宜使用することができる。しかしながら、時間とともに貯湯タンク内に貯えられた湯の温度が低下し、湯の使用可能量が減少し、システムの効率が悪化するという問題がある。
【0003】
また、貯湯式給湯機は、グラスウール、発泡スチロールおよび真空断熱材等の保温材で貯湯タンクを覆い、貯湯タンクの保温効率を向上させている。しかしながら、グラスウールや発泡スチロールでは断熱性能が低く、厚みが必要となるので製品が大きくなり、また、真空断熱材については複雑な曲面への配置が困難であるといった問題があった。
【0004】
一方、例えば特許文献1には、保温性能を向上させるべく、真空状態とされた内部空間を有する2重構造の温水槽が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−257729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の構成では、真空となる内部空間を形成する継手部分が缶体内部の湯温を低下させる熱橋となってしまい、保温性能を十分に維持できない可能性がある。
【0007】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、貯湯タンクの保温性能を向上した保温効率の高い貯湯式給湯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る貯湯式給湯機は、円筒状の胴板と、胴板に接合される略半球状の上部鏡板および下部鏡板とを有し、湯を貯留する貯湯タンクと、胴板を覆う真空断熱材と、を備え、上部鏡板は、真空状態とされる内部空間を有する2重構造に構成されており、真空断熱材は、胴板と上部鏡板との接合部を越えて上部鏡板をも覆うように延設されているものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、貯湯タンクの保温性能を向上した保温効率の高い貯湯式給湯機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1における貯湯タンクを備えた貯湯式給湯機の回路構成図である。
【図2】図1に示す貯湯タンク周辺の構成を示す拡大断面図である。
【図3】図2に示す上部鏡板の外側鏡板および内側鏡板と胴板との接合部周辺の構成を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
以下、本発明の実施の形態1について、図面とともに詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施の形態1における貯湯タンク10を備えた貯湯式給湯機100の回路構成図である。図1に示す貯湯式給湯機100は、ヒートポンプユニット1と貯湯タンクユニット2とを備えている。ヒートポンプユニット1は、圧縮機3、放熱器4、膨張弁5および蒸発器6を順に配管7で接続して構成されている。なお、このヒートポンプユニット1は、自然冷媒である二酸化炭素を冷媒として用い、高圧側では臨界圧を越える状態で運転することが好ましい。
【0013】
貯湯タンクユニット2は、ヒートポンプユニット1を用いて沸き上げられた湯を貯留する貯湯タンク10と、風呂追いだき用のプレート式の熱交換器11とを内蔵している。貯湯タンク10としては、温度層ごとに分離して、上部に高温水が貯留され、下部に低温水が貯留される積層式貯湯タンクが使用される。プレート式熱交換器11としては、複数の伝熱プレートを積層したものが使用される。
【0014】
また、貯湯タンク10には、上部に温水導出口101および温水導入口103が設けられており、下部に水導入口102および水導出口104が設けられている。更に、貯湯タンク10は、時間経過に伴う放熱を防ぐべく、真空断熱材12により覆われており、更に、真空断熱材12の外側が、グラスウール、発泡スチロール等を用いた断熱材13により覆われている。なお、真空断熱材12および断熱材13の詳細な設置部位は、図2および図3を参照して後述する。
【0015】
貯湯タンク10の下部の水導入口102には、水源から水を供給するための給水配管14が接続されている。貯湯タンク10内を所定圧以下に保つため、給水配管14の途中には、減圧弁15が備えられている。また、貯湯タンク10の下部の水導出口104からの水は、沸き上げ用送水ポンプ16によりヒートポンプ往き配管17を通ってヒートポンプユニット1の放熱器4に供給され、放熱器4で加熱された後、ヒートポンプ戻り配管18を通って貯湯タンク10の上部の温水導入口103から貯湯タンク10内に戻される。このような沸き上げ用送水ポンプ16、ヒートポンプ往き配管17、放熱器4およびヒートポンプ戻り配管18により貯湯回路が構成されている。
【0016】
貯湯タンク10の上部の温水導出口101から出た湯は、給湯配管19を通って、混合弁20または混合弁21に供給される。混合弁20に供給された貯湯タンク10からの湯は、設定温度の湯水となるように、混合弁20で給水配管14から分岐した給水分岐配管14aからの給水と混合された後、図示省略する電磁弁が開かれた場合に注水配管22から浴槽戻り配管23または浴槽往き配管24を通して浴槽25に供給される。一方、混合弁21に供給された貯湯タンク10からの湯は、設定温度の湯水となるように、混合弁21で給水分岐配管14aからの給水と混合された後、給湯口(蛇口)26に供給される。
【0017】
また、貯湯式給湯機100は、熱交換器11を用いて貯湯タンク10に貯えられている高温水と浴槽水とを熱交換させて浴槽水を温め直す追焚き運転を行うための構成を備えている。すなわち、貯湯式給湯機100は、給湯配管19、配管27、熱交換器11、タンク側送水ポンプ28および配管29を備える熱交換器11の一次側送水回路30を備えている。また、貯湯式給湯機100は、浴槽戻り配管23、風呂側送水ポンプ31、熱交換器11および浴槽往き配管24を備える熱交換器11の二次側送水回路32を備えている。
【0018】
貯湯タンクユニット2には、貯湯式給湯機100を総合的に制御する制御部33が設置されている。制御部33には、ヒートポンプユニット1、沸き上げ用送水ポンプ16、混合弁20、21、タンク側送水ポンプ28、および風呂側送水ポンプ31などが電気的に接続されている。また、制御部33には、貯湯タンク10の外側鏡板106a(図2参照)の外表面温度を検出する温度センサ34が電気的に接続されている。更に、制御部33には、貯湯式給湯機100を遠隔操作するためのリモコン35が電気的に接続されている。リモコン35は、各種の操作スイッチ類35aとともに、貯湯式給湯機100の設定および運転状態を表示する表示部35bを備えている。
【0019】
上述した構成を有する貯湯式給湯機100において、貯湯タンク10内の水を沸き上げる沸き上げ運転時には、貯湯運転信号に従ってヒートポンプユニット1が運転される。その結果、冷媒は、圧縮機3によって圧縮されて高温高圧となり、放熱器4で冷却され、膨張弁5により減圧され、蒸発器6により大気から吸熱して蒸発し、圧縮機3に戻る。また、沸き上げ用送水ポンプ16が駆動されることによって、貯湯タンク10の下部の水導出口104からヒートポンプ往き配管17を通って放熱器4に水が供給される。放熱器4に供給された水は、放熱器4で加熱された後に貯湯タンク10の上部の温水導入口103から貯湯タンク10内に流入する。従って、高温水が、貯湯タンク10の上部から順次貯湯される。
【0020】
図2は、図1に示す貯湯タンク10周辺の構成を示す拡大断面図である。図3は、図2に示す上部鏡板106の外側鏡板106aおよび内側鏡板106bと胴板105との接合部周辺の構成を示す拡大断面図である。
【0021】
図2に示すように、貯湯タンク10は、胴板105と、胴板105に接合される上部鏡板106および下部鏡板107とを備えている。上述した温水導出口101および温水導入口103は、上部鏡板106に溶接により接続されており、水導入口102および水導出口104は、下部鏡板107に溶接により接続されている。また、上述した真空断熱材12は、主に胴板105の周囲を覆うように設置されており、更に、断熱材13は、真空断熱材12の周囲を覆うように設置された断熱材13aと、下部鏡板107を直接的に覆う断熱材として別途設置された断熱材13bとからなる。
【0022】
胴板105は、一例として厚さ0.5〜1.5mmのステンレス鋼板を円筒状に丸め、継ぎ目をTIG溶接等で溶接することで、円筒状に製作されている。また、上部鏡板106および下部鏡板107は、胴板105と同様のステンレス鋼板を皿型(略半球状)に絞り加工することで製作されている。貯湯タンク10は、このように製作された胴板105と上部鏡板106、および胴板105と下部鏡板107とがそれぞれ外側周溶接部108においてTIG溶接等で周溶接することによって、密閉された缶体として形成されている。
【0023】
本実施形態では、上記のように構成された貯湯タンク10の上部鏡板106を、貯湯タンク10の外郭を形成する外側鏡板106aと、接水側を形成する内側鏡板106bとによる2重構造で構成している。また、図3に示すように、上部鏡板106側の胴板105の端部には、胴板105の中心側に折り曲げられたフランジ部105aが形成されている。このフランジ部105aの折曲部(根元部)には、外側鏡板106aの端部をTIG溶接等で周溶接することによって接合するための上記外側周溶接部108が設けられている。また、フランジ部105aの先端部には、内側鏡板106bの端部周辺部位を同様に周溶接によって接合するための内側周溶接部109が設けられている。このような構成によって、外側鏡板106aと内側鏡板106bとの間に、内部空間106cが形成されている。
【0024】
また、図2に示すように、外側鏡板106aには、図示省略する減圧装置(真空引き装置)を接続するための減圧装置接続口110が設置されている。上部鏡板106の内部空間106cは、減圧装置によって減圧することで真空状態とされる。上部鏡板106(外側鏡板106a)の外表面は、胴板105との接合部(外側周溶接部108)の近傍において胴板105の外表面と同一曲面となるように形成されている。そして、胴板105を覆う真空断熱材12は、胴板105側から外側周溶接部108を越えて外側鏡板106a(より具体的には、外側鏡板106aのストレート部106a1)をも覆うように延設されている。
【0025】
また、図3に示すように、上部鏡板106の内部空間106c内には、空気中に含まれる酸素や水分等を吸着するゲッター材111が設置されている。
【0026】
また、制御部33は、上記減圧装置を用いて内部空間106cの減圧を行った際の外側鏡板106aの外表面温度を温度センサ34によって検出し、初期検出温度として記憶する。そして、制御部33は、貯湯式給湯機100の使用中に、外側鏡板106aの外表面温度の初期検出温度からの上昇度合いを判断する。内部空間106cの真空度が低下すると、貯湯タンク10内の高温の湯から外側鏡板106aへの内部空間106cを介して熱伝達が促進され、外側鏡板106aの外表面温度が上昇する。そこで、本実施形態では、制御部33は、この温度上昇度合いが所定値以上である場合には、内部空間106cの真空度が低下したと判断し、真空度が低下したことを示す情報を表示部35bを用いて報知する。より具体的には、表示部35bは、例えば、サービス(減圧装置を接続して真空度を再度確保する動作)が必要なことを表示する。
【0027】
以上説明したように、本実施形態では、真空状態とされる内部空間106cを有する2重構造に構成された上部鏡板106を備えており、かつ、真空断熱材12が胴板105と上部鏡板106との接合部(外側周溶接部108)を越えて上部鏡板106(外側鏡板106a)をも覆うように延設されている。内部空間106cを形成する外側周溶接部108から内側周溶接部109までの部位は、熱橋となって断熱に対して悪影響となる部位であるが、上記のように真空断熱材12を延設させているので、高い断熱性能を確保することができる。また、貯湯タンク10の上部を上述した断熱構造とすることは、温度による水の密度変化を利用する貯湯式給湯機100においては最も高温の湯が貯えられる部分の断熱性能を高めることになるので保温効率の改善に有効である。また、上部鏡板106自体が断熱構造となっていることで、貯湯タンク10の上部に別の断熱材を配置する必要がなく、混合弁20、21や給湯配管19等の配管のレイアウトの自由度を高めることが可能となる。
【0028】
また、本実施形態では、上部鏡板106(外側鏡板106a)の外表面を、胴板105との接合部(外側周溶接部108)の近傍において胴板105の外表面と同一曲面となるように形成している。これにより、断熱係数は高いが複雑な曲面への配置が難しい真空断熱材12を用いて、外側周溶接部108周辺(上記熱橋となる部位)を覆うことが可能となる。また、胴板105の端部に胴板105の中心に向けて施したフランジ加工によるフランジ部105aの先端部で内側鏡板106bをガイドし、かつ、当該フランジ部105aの折曲部(根元部)で外側鏡板106aをガイドすることで、内部空間106cの形状を安定させることができる。
【0029】
また、上部鏡板106の内部空間106c内に設置したゲッター材111によって、内部空間106cの真空度を保持することができる。更に、内部空間106cの真空度が低下した場合には、貯湯タンク10の設置後であっても減圧装置接続口110を利用することで、減圧装置を用いて減圧度(真空度)を再度確保することが可能となる。
【0030】
また、本実施形態では、貯湯式給湯機100の使用中に、外側鏡板106aの外表面温度の上昇度合いが所定値以上である場合には、内部空間106cの真空度が低下したと判断され、真空度が低下したことを示す情報が表示部35bを用いて報知される。このため、貯湯式給湯機100の設置後における内部空間106cの真空度の低下によって、貯湯タンク10の保温性能が低下するのを防止することができる。
【0031】
ところで、上述した実施の形態1においては、上部鏡板106の全体を2重構造で構成するようにしているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、上部鏡板の一部に、2重構造にしない部位を設けるようにしてもよい。例えば、上部鏡板に設けられる温水導入口および温水導出口のうちの少なくとも一方を、上記2重構造にしない部位とすることも製造上有効である。
【0032】
また、上述した実施の形態1においては、制御部33によって内部空間106cの真空度が低下したと判断された場合に、真空度が低下したことを示す情報を表示部35bを用いて視覚的に報知するようにしている。しかしながら、本発明の報知手段は、これに限定されるものではなく、内部空間の真空度が低下したことを示す情報を音声によって報知するものであってもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 ヒートポンプユニット
2 貯湯タンクユニット
10 貯湯タンク
12 真空断熱材
33 制御部
34 温度センサ
35 リモコン
35b 表示部
100 貯湯式給湯機
105 胴板
105a 胴板のフランジ部
106 上部鏡板
106a 上部鏡板の外側鏡板
106a1 外側鏡板のストレート部
106b 上部鏡板の内側鏡板
106c 内部空間
107 下部鏡板
108 外側周溶接部
109 内側周溶接部
110 減圧装置接続口
111 ゲッター材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の胴板と、前記胴板に接合される略半球状の上部鏡板および下部鏡板とを有し、湯を貯留する貯湯タンクと、
前記胴板を覆う真空断熱材と、
を備え、
前記上部鏡板は、真空状態とされる内部空間を有する2重構造に構成されており、
前記真空断熱材は、前記胴板と前記上部鏡板との接合部を越えて前記上部鏡板をも覆うように延設されていることを特徴とする貯湯式給湯機。
【請求項2】
前記上部鏡板の外表面は、前記接合部の近傍において前記胴板の外表面と同一曲面となるように形成されていることを特徴とする請求項1記載の貯湯式給湯機。
【請求項3】
前記上部鏡板の一部に、2重構造にしない部位が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の貯湯式給湯機。
【請求項4】
前記上部鏡板に設けられる温水導入口および温水導出口のうちの少なくとも一方が、前記2重構造にしない部位とされていることを特徴とする請求項3記載の貯湯式給湯機。
【請求項5】
前記内部空間に、空気中に含まれる少なくとも酸素およびまたは水分を吸着するゲッター材が設置されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の貯湯式給湯機。
【請求項6】
前記上部鏡板に、前記内部空間を減圧するための減圧装置の接続口が設置されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項記載の貯湯式給湯機。
【請求項7】
前記上部鏡板の外表面温度を検出する温度センサと、
前記温度センサにより検出される前記上部鏡板の外表面温度の上昇度合いを判定する温度判定手段と、
前記上部鏡板の外表面温度の上昇度合いが所定値以上である場合に、前記内部空間の真空度が低下したことを示す情報を報知する報知手段と、
を更に備えることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項記載の貯湯式給湯機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−257012(P2011−257012A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129003(P2010−129003)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】