説明

貯湯式給湯機

【課題】簡易な構成で浴槽内に繰り返し微細気泡を送り込むことで、浴槽壁面に付着した汚れの洗浄を行うことのできる貯湯式給湯機を提供する。
【解決手段】浴槽15内に湯水を注入可能な注水配管26と、注水配管26の途中に配置され、浴槽15の内壁を洗浄するための微細気泡を注水配管26内の湯水中に生じさせることのできる注水用エジェクタ31と、注水配管26から浴槽15内への注水流量を調整する注水電磁弁44と、浴槽15内の浴水を排出する排水動作の実行中に、微細気泡を含んだ湯水を注水配管26から浴槽15内に注入する注水動作を行うことによって当該浴槽15の内壁を洗浄する洗浄手段と、を備え、注水流量を浴槽15内から排出される排出流量よりも大きな流量とする状態と、排出流量よりも低い流量かまたはゼロとなる状態とが交互に繰り返されるように注水電磁弁44を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯式給湯機に関する。
【背景技術】
【0002】
追焚き機能を付加した給湯機には、例えば、貯湯タンクの上部から湯を取水して該貯湯タンクの下部に戻す熱源用循環管路、浴槽から取水した浴水を浴槽に戻す追焚き用循環管路、および上記の追焚き用熱交換器が付加される。追焚き用熱交換器は、熱源用循環路を流下する湯を熱源として用いて、該湯と追焚き用循環管路を流れる浴水との間で熱交換を行い、追焚き用循環管路内の浴水を加温する。
【0003】
このような追焚き機能付き給湯機では、人体から浴水中に洗い流された皮脂や角質等の汚れが追焚き用循環管路を循環して該循環管路の配管内面や追焚き用熱交換器内に不可避的に付着する。そして、上記の汚れがある程度以上堆積すると、追焚き運転時に当該汚れが浴槽に再循環して浴槽や浴水を汚したり、追焚き用熱交換器の熱交換効率を低下させたりする。
【0004】
上記の問題に対処するものとして、微細気泡発生装置であるエジェクタを用いて配管内に自動で微細気泡を発生させて洗浄動作を行い、追いだき配管や熱交換器内部を清潔に保ち、メンテナンスが不要である追いだき配管付給湯機が発明されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−186092号公報
【特許文献2】特開平11−313771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の装置では、給湯機から発生させた微細気泡による洗浄は、追焚き配管内部や熱交換器内部の範囲に留まっており、浴槽壁面への洗浄には適用されていない。このため、浴槽壁面に付着する皮脂汚れやぬめりに対しては、ユーザが市販の浴室洗浄用洗剤等の薬品を用いて除去することが求められる。また、浴槽壁面を微細気泡で洗浄するための装置が発明されているが、通常、給湯や湯はりを行うために必要となる給湯機の他に、専用の浴槽および専用の微細気泡発生装置をユーザが別途購入して取り付ける必要があり、手間とコストを要していた。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、簡易な構成で浴槽内に繰り返し微細気泡を送り込むことで、浴槽壁面に付着した汚れの洗浄を行うことのできる貯湯式給湯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る貯湯式給湯機は、貯湯タンクに貯留された湯を浴槽内へ湯張り可能な貯湯式給湯機であって、浴槽内に湯水を注入可能な注水配管と、注水配管の途中に配置され、浴槽の内壁を洗浄するための微細気泡を注水配管内の湯水中に生じさせることのできる注水用エジェクタと、注水配管から浴槽内への注水流量を調整する注水流量調整装置と、浴槽内の浴水を排出する排水動作の実行中に、微細気泡を含んだ湯水を注水配管から浴槽内に注入する注水動作を行うことによって当該浴槽の内壁を洗浄する洗浄手段と、を備え、洗浄手段は、注水流量を浴槽内から排出される排出流量よりも大きな流量とする第1の状態と、排出流量よりも低い流量かまたはゼロとなる第2の状態とが交互に繰り返されるように注水流量装置を制御する制御手段を含むものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡易な構成で浴槽内に繰り返し微細気泡を送り込むことができるので、浴槽壁面に付着した汚れの洗浄を有効に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の貯湯式給湯機の実施の形態1としてのヒートポンプ給湯装置の回路構成図である。
【図2】実施の形態1のヒートポンプ給湯装置が備える微細気泡発生装置の制御ブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態1における浴槽洗浄動作のルーチンを示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態2における浴槽洗浄動作のルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。尚、各図において共通する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0012】
実施の形態1.
図1は、本発明の貯湯式給湯機の実施の形態1としてのヒートポンプ給湯装置の回路構成図である。図1に示すヒートポンプ給湯装置は、ヒートポンプユニット1とタンクユニット2とを備えている。ヒートポンプユニット1は、圧縮機3、放熱器4、膨張弁5、及び蒸発器6を順に配管7で接続して構成され、ヒートポンプユニットケース8内に収められている。このヒートポンプユニット1は、自然冷媒である二酸化炭素を冷媒として用い、高圧側では臨界圧を越える状態で運転することが好ましい。タンクユニット2は、タンクユニットケース9内に、貯湯タンク10および風呂追いだき用のプレート式熱交換器11を内蔵している。
【0013】
プレート式熱交換器11は水流が対向して流れる水−水熱交換器であり、上部にはタンク側入口111および風呂側出口114が設けられ、下部にはタンク側出口112および風呂側入口113が設けられている。上部のタンク側入口111から供給された温水は、下部のタンク側出口112から排出される。下部の風呂側入口113から供給された浴槽水は、上部の風呂側出口114から排出される。
【0014】
貯湯タンク10には、上部に温水導出口101および温水導入口103が設けられ、下部に水導入口102および水導出口104が設けられている。プレート式熱交換器11の上部のタンク側入口111には、貯湯タンク10の上部の温水導出口101から配管12を通って温水が供給され、プレート式熱交換器11で熱交換後、下部のタンク側出口112から排出される。この排出された水は、タンク側送水ポンプ13により配管14を通って貯湯タンク10の下部の水導入口102から貯湯タンク10内に戻される。配管12、プレート式熱交換器11、タンク側送水ポンプ13および配管14により、プレート式熱交換器11の一次側送水回路が形成される。
【0015】
一方、プレート式熱交換器11の下部の風呂側入口113には、浴槽15からの湯水が風呂側送水ポンプ16により浴槽アダプタ34を通って浴槽戻り配管17から供給され、プレート式熱交換器11で熱交換されて加温された温水となる。その後、上部の風呂側出口114から排出された温水は浴槽往き配管18と浴槽アダプタ34を通って浴槽15内に戻される。浴槽戻り配管17、風呂側送水ポンプ16、プレート式熱交換器11および浴槽往き配管18により、プレート式熱交換器11の二次側送水回路が形成される。
【0016】
浴槽戻り配管17の途中には、浴槽水位を検知する水位検知装置(例えば水位センサ39)と、風呂側送水ポンプ16にて送水した際に水流有無を確認する水流有無検知装置(例えばフロースイッチ47)と、微細気泡発生用の循環用エジェクタ28とが設置されている。循環用エジェクタ28の空気取入れ部には、逆流防止用の循環用エジェクタ空気逆止弁30と、該エジェクタへの空気の導入を制御する循環用エジェクタ空気電磁弁29とが設置されている。エジェクタ空気導入口に設けられた循環用エジェクタ空気電磁弁29を閉じた状態で温水を流してから循環用エジェクタ空気電磁弁29を開けることにより、導入口は常に負圧になり空気が吸い込まれる状態になる。尚、この操作手順を守ることで循環用エジェクタ空気逆止弁30は不要になるが、誤操作を考慮した場合は循環用エジェクタ空気逆止弁30を配置することが望ましい。吸い込まれた空気を循環用エジェクタ28に通すことで微細気泡を生成させ、浴槽戻り配管17、プレート式熱交換器11および浴槽往き配管18へ流すことにより、これらの内部および浴槽15の壁面を洗浄することができる。
【0017】
貯湯タンク10の下部の水導出口104からの水は、沸き上げ用送水ポンプ19により配管20を通ってヒートポンプユニット1の放熱器4に供給され、放熱器4で加熱された後、配管21を通って貯湯タンク10の上部の温水導入口103から貯湯タンク10内に戻される。沸き上げ用送水ポンプ19、配管20、放熱器4および配管21により貯湯回路が構成される。
【0018】
風呂給湯用混合弁23は、リモコン46で設定された所望の温度の湯を、貯湯タンク10からの湯と市水からの水とを混合することで作り出す。この作り出された湯は、注水配管26、浴槽戻り配管17、および浴槽往き配管18を通って浴槽15に注水される。注水配管26の途中には、注水配管流量調整装置(例えば注水電磁弁44)と、流量検出装置(例えば風呂給湯用流量センサ40)と、微細気泡発生用の注水用エジェクタ31とが設置されている。注水用エジェクタ31の空気取入れ部には、逆流防止用の注水用エジェクタ空気逆止弁33と、エジェクタへの空気の導入を制御する注水用エジェクタ空気電磁弁32とが設けられている。エジェクタ空気導入口に設けられた注水用エジェクタ空気電磁弁32を閉じた状態で温水を流してから注水用エジェクタ空気電磁弁32を開けることにより、導入口は常に負圧になり空気が吸い込まれる状態になる。尚、この操作手順を守ることで注水用エジェクタ空気逆止弁33は不要になるが、誤操作を考慮した場合は注水用エジェクタ空気逆止弁33を配置することが望ましい。吸い込まれた空気を注水用エジェクタ31に通すことで微細気泡を生成させ、浴槽戻り配管17及び浴槽往き配管18へ微細気泡を流すことにより、これらの内部および浴槽15の壁面を洗浄することができる。
【0019】
減圧弁25は、水源から供給された市水を所定圧に減圧し、貯湯タンク10へ給水する。給湯用混合弁24は、リモコン46で設定された所望の温度の湯を貯湯タンク10からの湯と市水からの水を混合することで作り出す。この作り出された湯は、給湯配管27を通って蛇口42から給湯される。給湯配管27の途中には、流量検出装置(例えば給湯用流量センサ41)が設置されている。
【0020】
図2は、実施の形態1のヒートポンプ給湯装置が備える微細気泡発生装置の制御ブロック図である。図2に示すとおり、制御部45は、風呂給湯用流量センサ40、給湯用流量センサ41、フロースイッチ47、水位センサ39およびリモコン46からの信号を受けて、給湯用混合弁24、風呂給湯用混合弁23、注水電磁弁44、風呂側送水ポンプ16、沸き上げ用送水ポンプ19、タンク側送水ポンプ13、循環用エジェクタ空気電磁弁29、注水用エジェクタ空気電磁弁32を制御する。このヒートポンプ給湯機の制御系においては、ユーザがリモコン46を操作することにより、制御部45へ信号が伝達され、制御部45はその信号により、各動作を制御する。尚、リモコン46には、ユーザが浴槽15の洗浄モードを選択するための浴槽洗浄釦461が付加されている。
【0021】
次に、本ヒートポンプ給湯装置の動作について説明する。図1において、貯湯運転信号により、ヒートポンプユニット1が運転される。具体的には、冷媒は圧縮機3で圧縮され高温高圧となり、放熱器4で冷却され、膨張弁5により減圧され、蒸発器6により大気から吸熱して蒸発し、圧縮機3に戻る。一方、貯湯タンク10の下部の水導出口104から配管20へ流下した水は、沸き上げ用送水ポンプ19により放熱器4に供給されて加熱される。そして、加熱されて高温となった温水は貯湯タンク10の上部の温水導入口103から順次流入する。
【0022】
また、ユーザがリモコン46から湯はりを指示したときには、貯湯タンク10に貯留された湯と市水から供給される冷水とが風呂給湯用混合弁23によって混合され、ユーザ所望の温度の湯が浴槽15へ順次供給される。浴槽15への湯はり動作中は、風呂側送水ポンプ16を動作させることで浴槽15内の浴槽水を循環させる。そして、水位センサ39により湯はり水位を検出しながら、ユーザ所望の湯はり量となるまで湯の供給が行われる。
【0023】
その後、ユーザは湯はりが完了した浴槽15内に入浴するわけだが、この際、入浴中に体表面から剥がれ落ちた皮脂汚れが浴槽15内に浮遊し、やがて浴槽15壁面に付着してしまう。そこで、これらの汚れを除去するために、本実施の形態1の装置では、非入浴時に浴槽15内の浴水を排水させつつ浴槽戻り配管17および浴槽往き配管18から浴槽15内へ微細気泡を含む水を繰り返し注水する動作が実行される。これにより、浴槽15壁面に微細気泡が繰り返し行き渡るので、浴槽15の壁面が有効に洗浄される。
【0024】
図3は、本発明の実施の形態1における浴槽洗浄動作のルーチンを示すフローチャートである。以下、図3に示すフローチャートを用いて、上述した浴槽15の壁面の洗浄動作をより詳細に説明する。ステップS1では、ユーザによって浴槽栓が開かれ、浴水の排水動作が開始されたことが検出される。排水動作を検出する方法としては、例えば、排水管路に流量センサ(図示せず)を設ける方法や、水位センサ39によって検出される水位の変化によって検出することが考えられる。次のステップS2では、排水により低下していく水位が、予め制御部45に記憶させておいた所定水位Hまで低下したか否かを判定する。その結果、所定水位Hに到達していれば、後述する注水動作を実行しても浴槽15から浴水が直ぐに溢れることはないと判断されて、次のステップS3へ進む。一方、所定水位Hまで低下していない場合は低下するまで当該ステップS2の判定を繰り返す。
【0025】
次に、ステップS3では、制御部45が注水電磁弁44のON信号を発することにより、この注水電磁弁44が開弁される。すると、市水からの水が、風呂給湯混合用混合弁23、注水配管26、浴槽戻り配管17、および浴槽往き配管18を通って浴槽15に注水される。尚、本ステップS3の処理による注水流量は、排水流量よりも多量となるように(すなわち水位が上昇するように)調整されている。これにより、排水による水位の低下によって浴槽15の壁面に再付着してしまう汚れを、水位を上昇させて除去することができる。また、注水に使用する水は、貯湯タンク10から出湯される湯を混合せずに市水から供給される水のみを用いることが好ましい。これにより、貯湯タンク内の湯を無駄にすることなく、浴槽15壁面の洗浄を行なうことができる。
【0026】
次に、ステップS4では、制御部45が注水用エジェクタ空気電磁弁32のON信号を発することにより、この注水用エジェクタ空気電磁弁32が開放される。注水配管26内は、上記ステップS3の処理によって生じた水流によって負圧になっている。このため、注水用エジェクタ空気電磁弁32を通過した空気は、微細気泡となって注水配管26内に導入され、水と共に浴槽15へと注水される。注水された微細気泡は、浴槽15内に放出され、浴槽15壁面に付着することで浴槽15壁面に付着した汚れを除去する。
【0027】
次に、ステップS5では、上記ステップS3の処理によって浴槽15へ注水されている水量が、あらかじめ制御部45に記憶させておいた所定注水量を超過したか否かを判定する。この所定注水量は、排水によって低下していく水位を注水動作によって再度所定の水位まで上昇させるための閾値であって、例えば湯はり水位よりも高い水位となる注水量に設定することができる。その結果、注水量が所定注水量を超過している場合は、次のステップS6へ進み、超過していない場合は本ステップS5の判定を、水位が超過するまで繰り返し実行する。
【0028】
ステップS6では、制御部45が注水用エジェクタ空気電磁弁32のOFF信号を発することにより、当該注水用エジェクタ空気電磁弁32が閉弁される。続いてステップS7では、制御部45が注水電磁弁44のOFF信号を発することにより、注水電磁弁44が閉弁される。ステップS7の処理の終了後、浴槽15への注水は停止されるが排水は続いているため、浴槽15の水位は低下する。この際、除去した汚れが浴槽15の壁面へ再付着するため、再度ステップS3に戻り、ステップS3〜ステップS7の浴槽洗浄動作を繰り返す。ステップS8では、ステップS3〜S7までの動作が、あらかじめ制御部45に記憶させておいた所定回数を超過したか否かを判定し、所定回数に到達した場合は浴槽洗浄終了となる。浴槽洗浄動作を繰り返すことで、汚れの濃度を薄くすることができ、浴槽15壁面に付着する汚れをその都度少なくすることができるため、この所定回数は可能な限り多くの回数とすることが好ましい。具体的には5回程度繰り返すと効果的である。一方、上記ステップS8において、注水動作所定回数を超過していない場合には、所定回数に到達するまで当該判定を繰り返す。
【0029】
このように、従来は、浴槽洗浄を行なうにあたり、給湯や湯はりを行なう給湯機の他に、専用の浴槽および専用の微小泡発生装置を必要としていたが、本発明に係る貯湯式給湯機では、給湯機から発生させた微細気泡を浴槽15へ放出させつつ水位を上昇させて浴槽15壁面を洗浄する注水動作が繰り返し実行される。これにより、都度浴槽洗浄を行うことができ、壁面に再付着した汚れを再度除去することができる。また、浴槽洗浄中は常に排水されているため、除去された汚れは浴槽15外へと徐々に排出され、汚れの密度は薄くなっていく。このため、給湯機以外の装置を追加することなく、浴槽洗浄を完了することができる。
【0030】
ところで、上述した実施の形態1の装置では、浴槽15への注水量が所定注水量を超過した場合に微細気泡の生成および注水を停止することとしている。しかしながら、注水停止の判定は注水量を用いる方法に限られず、例えば、水位センサ39によって検出される水位が所定水位まで上昇した場合に注水を停止することとしてもよい。また、注水の停止動作に関しても、排水流量との関係で水位が低下する範囲であれば、弁を閉止して注水を完全に停止する態様に限られず、例えば、注水電磁弁44の開度を所定の小開度とすることで、微細気泡を含む水を少量ずつ注水し続けることとしてもよい。
【0031】
また、上述した実施の形態1の装置では、微細気泡による注水動作を繰り返し行うにあたって、ステップS7において注水電磁弁44を閉じてからステップS3において再び開くまでの待ち期間について特に言及していないが、浴水の汚れ度合に応じて可変に設定することとしてもよい。すなわち、例えば、排水初期の期間は、排水後期の期間に比して浴槽15内の汚れ濃度が濃い。このため、例えば、1〜3回目の注水動作では、上記待ち時間を短く設定することにより、微細気泡を含んだ注水による洗浄を頻繁に行うこととし、4、5回目の注水動作では、上記待ち時間を長めに設定することで洗浄動作頻度を減らすこととしてもよい。
【0032】
実施の形態2.
次に、実施の形態2のヒートポンプ給湯装置の動作について説明する。本実施の形態2のヒートポンプ給湯装置の動作は、上述した図1および図2に示すハードウェア構成を用いて、制御部45に後述する図4に示すルーチンを実行させることで実現することができる。実施の形態2の洗浄動作は、実施の形態1に比べてより丹念に洗浄を実施する場合に適用する。具体的には、上述した実施の形態1の洗浄動作は、1〜2名の入浴後の洗浄に適用するのが望ましく、後述する実施の形態2の洗浄動作は、それ以上の人数の入浴後の洗浄に適用するのが望ましい。図4は、本発明の実施の形態2における浴槽洗浄動作のルーチンを示すフローチャートである。以下、このフローチャートを用いて、本実施の形態2の装置の洗浄動作をより詳細に説明する。
【0033】
先ず、ステップS9においてユーザがリモコン46内の浴槽洗浄釦461を押下することで、浴槽洗浄が開始される。次に、ステップS10では、予め制御部45に記憶された湯はり水位より現在水位が低いか否かを判定する。水面水位部分(喫水線)の浴槽15壁面には汚れが滞留し易い。このため、本ステップS10の判定において、現在水位が湯はり水位よりも低い場合は、喫水線の汚れも除去する必要があるため、次のステップS11へ進み、制御部45が注水電磁弁44のON信号を発することにより当該注水電磁弁44が開かれる。すると、市水からの水が、風呂給湯混合用混合弁23、注水配管26、浴槽戻り配管17、および浴槽往き配管18を通って浴槽15に注水され、水面水位を上昇させる。一方、上記ステップS10の判定において、現在水位が湯はり水位よりも高い場合は、後に説明するステップS14へ進む。
【0034】
ステップS12では、ステップS11の処理による注水動作によって上昇した現在水位が、湯はり時の湯はり水位より高いか否かを判定する。その結果、現在水位のほうが高い場合には、後のステップS14、ステップS15による循環時の微細気泡放出により、元の水面水位部分の滞留汚れも除去することが可能と判断されて、次のステップS13へ進む。一方、上記ステップS12において、湯はり水位と同じか現在水位のほうが低い場合には、本ステップS12の判定を繰り返す。
【0035】
次に、ステップS13では、制御部45が注水電磁弁44のOFF信号を発することにより、注水が終了される。次に、ステップS14では、制御部45が風呂側送水ポンプ16のON信号を発することによりこれを駆動させる。すると、浴槽15内の浴水が、浴槽戻り配管17、プレート式熱交換器11、および浴槽往き配管18を流下して循環する。
【0036】
ステップS15では、制御部45が循環用エジェクタ空気電磁弁29のON信号を発することによりこれを開放させる。浴槽戻り配管17内は、上記ステップS14の処理によって浴水が循環しているので、循環用エジェクタ28内は負圧になっている。このため、循環用エジェクタ空気電磁弁29を通過した空気が循環用エジェクタ28に導入されると、微細気泡が発生し、循環している浴水と共に浴槽15内へと放出される。浴槽15内へ放出された微細気泡は、浴槽15壁面に付着することで、浴槽15壁面に付着した汚れを除去する。
【0037】
次に、ステップS16では、ステップS14およびステップS15の処理による循環時の微細気泡放出による浴槽洗浄の時間が予め制御部45に記憶された所定時間を経過しているか否かを判定する。その結果、所定時間を経過していればステップS17へ進み、経過していない場合は、ステップS16の判定を繰り返す。尚、所定時間は、例えば15分間の循環による洗浄を行なうと汚れ除去に効果があるので、それ以上の時間を設定することが望ましい。次に、ステップS17では、制御部45が循環用エジェクタ空気電磁弁29のOFF信号を発し、続いてステップS18では、風呂側送水ポンプ16のOFF信号を発する。これにより、循環時の微細気泡放出による浴槽洗浄が終了される。
【0038】
上記ステップS9から上記ステップS18までの動作が完了したら、次に、ステップS19において循環時の微細気泡放出による浴槽洗浄が完了した旨をリモコン46に表示するとともに、音声でも報知を行う。次のステップS1では、ステップS19の処理による連絡を受けたユーザが浴室へ行き、浴槽栓を開いて浴槽水を排水する動作を行ったことを検出する。その後、実施の形態1において上述したステップS2からステップS8までの処理が実行されて、微細気泡を浴槽15へ放出させつつ水位を上昇させて浴槽15壁面を洗浄する動作が繰り返し実行される。
【0039】
その後、ステップS8において注水動作が所定回数を超過していると判断された場合には、次のステップS20へ進み、浴水が全て排水されたか否かを判定する。その結果、浴水が無いと判定された場合はステップS21に進み、浴水があると判定された場合は、浴水が無いと判定されるまで判定を繰り返す。
【0040】
浴水を全て排水した後の浴槽15底面には、排水時に一緒に浴槽15外へ排出することができなかった汚れが残留している可能性がある。そこで、ステップS21では、制御部45が注水電磁弁44のON信号を発することにより、この注水電磁弁44が開弁される。すると、市水からの水が、風呂給湯混合用混合弁23、注水配管26、浴槽戻り配管17、浴槽往き配管18を通って浴槽15に注水される。次に、ステップS22では、制御部45が注水用エジェクタ空気電磁弁32のON信号を発することにより、この注水用エジェクタ空気電磁弁32が開放される。注水配管26内は、上記ステップS3の処理によって生じた水流によって負圧になっている。このため、注水用エジェクタ空気電磁弁32を通過した空気は、微細気泡となって注水配管26内に導入され、水と共に浴槽15へと注水される。これにより、最後に浴槽15底面を洗浄することができる。
【0041】
次に、ステップS23では、予め制御部45に記憶させておいた浴槽15底面を洗浄するのに必要な所定注水量を超過しているかどうかを判定する。この所定注水量は、浴槽15底面に水が行き渡る程度の水量を設定することが好ましい。上記ステップS23の判定の結果、所定注水量を超過している場合には、次のステップS24に進み,所定注水量を超過していない場合には、超過するまで判定を繰り返す。ステップS24では、制御部45が注水用エジェクタ空気電磁弁32のOFF信号を発し、続いてステップS25で注水電磁弁44のOFF信号を発することにより、注水用エジェクタ空気電磁弁32および注水電磁弁44が閉弁されて、一連の浴槽洗浄動作が終了される。
【0042】
このように、汚れが滞留しやすい喫水線、複数人入浴後の汚れや浴槽15底面に残留し易い汚れに対しても、浴槽15内の浴水を一定時間循環させながらの微細気泡放出、浴槽15内の水位を上昇させながらの微細気泡放出、更には、浴槽15内の浴水の排水後の注水による微細気泡放出によって、専用の浴槽および専用の微細気泡発生装置を追加することなく、浴槽15全体を洗浄することを可能とした。
【符号の説明】
【0043】
10 貯湯タンク
15 浴槽
16 風呂側送水ポンプ(循環ポンプ)
17 浴槽戻り配管(注水配管,循環管路)
18 浴槽往き配管(注水配管,循環管路)
26 注水配管
28 循環用エジェクタ
31 注水用エジェクタ
39 水位センサ(水位検出手段)
44 注水電磁弁(注水流量調整装置)
45 制御部(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯湯タンクに貯留された湯を浴槽内へ湯張り可能な貯湯式給湯機であって、
前記浴槽内に湯水を注入可能な注水配管と、
前記注水配管の途中に配置され、前記浴槽の内壁を洗浄するための微細気泡を前記注水配管内の湯水中に生じさせることのできる注水用エジェクタと、
前記注水配管から前記浴槽内への注水流量を調整する注水流量調整装置と、
前記浴槽内の浴水を排出する排水動作の実行中に、前記微細気泡を含んだ湯水を前記注水配管から前記浴槽内に注入する注水動作を行うことによって当該浴槽の内壁を洗浄する洗浄手段と、を備え、
前記洗浄手段は、前記注水流量を前記浴槽内から排出される排出流量よりも大きな流量とする第1の状態と、前記排出流量よりも低い流量かまたはゼロとなる第2の状態とが交互に繰り返されるように前記注水流量装置を制御する制御手段を含むことを特徴とする貯湯式給湯機。
【請求項2】
前記注水流量調整装置は、前記注水配管を開閉する注水電磁弁で構成され、
前記注水電磁弁を開放した状態が前記第1の状態に相当し、前記注水電磁弁を閉止した状態が前記第2の状態に相当することを特徴とする請求項1記載の貯湯式給湯機。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第1の状態の持続時間に対する前記第2の状態の持続時間の比率を、前記洗浄手段による洗浄時間の経過とともに大きくする手段を含むことを特徴とする請求項1または2記載の貯湯式給湯機。
【請求項4】
前記浴槽内の水位を検出する水位検出手段を更に備え、
前記洗浄手段は、前記排水動作により前記浴槽内の水位が所定の水位以下に低下したことが検出された場合に、前記注水動作を開始することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の貯湯式給湯機。
【請求項5】
前記注水配管は、水源の水を注水可能に構成され、
前記洗浄手段は、前記微細気泡を含んだ水源の水を用いて前記洗浄手段による洗浄を実行することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の貯湯式給湯機。
【請求項6】
前記貯湯式給湯機は、貯湯タンクに貯留された湯と、浴槽内の浴水とを熱交換器で熱交換させることによって前記浴槽内の浴水を追焚きすることができる貯湯式給湯機であって、
前記浴槽から前記熱交換器を通って前記浴槽に戻るように配置された循環管路と、
前記循環管路の途中に配置され、前記浴槽の内壁を洗浄するための微細気泡を前記循環管路内の湯水中に生じさせることのできる循環用エジェクタと、
前記循環管路の途中に配置され、前記浴槽内の浴水を前記循環管路に循環させる循環ポンプと、
前記排水動作に先立って、前記循環ポンプを作動させることにより、前記微細気泡を含んだ湯水を前記循環管路から前記浴槽内に循環させる第2の洗浄手段と、
を更に備えることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項記載の貯湯式給湯機。
【請求項7】
前記第2の洗浄手段は、前記循環ポンプの作動に先立って、前記微細気泡を含んだ湯水を前記注水配管から前記浴槽内に注入し、該浴槽内の水位を所定の水位となるまで上昇させる手段を含むことを特徴とする請求項6記載の貯湯式給湯機。
【請求項8】
前記第2の洗浄手段により前記循環ポンプを所定期間作動させた場合に、前記排水動作を行うべき旨をユーザに報知する報知手段を更に備えることを特徴とする請求項6または7記載の貯湯式給湯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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