説明

貯湯式給湯装置

【課題】貯湯タンクの大きさに関係なく、実際の使用感覚に即した条件で沸き上げ運転の開始と停止を制御し、不必要な沸き上げ運転を防止しつつ、効率的な運転を提供する。
【解決手段】湯切れ沸き上げ運転の開始を判定する起動使用可能湯量を時間別に任意の値に設定する湯切れ使用可能湯量設定手段34を有し、湯切れ使用可能湯量設定手段34で設定された起動使用可能湯量と使用可能湯量算出手段47で算出された使用可能湯量に基づいて加熱手段14の起動及び停止を行うようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力を利用して湯を沸かす貯湯式給湯装置おける残湯量演算装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、深夜電力を使用してタンク全量の沸き上げを行う貯湯式給湯装置にあっては、貯湯タンク内に満たした水を電力料金の安価な深夜時間帯で全量沸き上げて、昼間時間帯に使用する湯をまかなうという考え方が一般的であった。そのため、貯湯タンクの容量は、一日に使用する湯の使用量の上限に合せた大きさのものを選択するようになっていた。
【0003】
そして、貯湯タンクにどのくらいの湯量が蓄えられているかを確認する手段として、貯湯タンクの内部温度を検出する複数の温度検出器と、湯温とする下限温度及び水温とする前記下限温度よりも低い上限温度を有し前記温度検出器により検出された各検出温度と前記下限温度及び上限温度とを比較し、前記各検出温度が前記下限温度以上、前記下限と上限温度との間または前記上限温度以下であるかを判別して、前記各温度検出器の設置位置別に前記各検出温度を表示するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、複数の貯湯温度センサの検出温度の各々を沸き上げ目標温度に対する割合として演算する割合演算手段と、この割合演算手段で演算された各々の割合を基に残湯量をグラフ化するグラフ情報作成手段と、グラフ情報作成手段で作成されたグラフ情報をリモートコントローラの表示部にグラフ化して表示させるようにしたものがある。さらに、複数の貯湯温度センサの検出温度から貯湯タンク内の残熱量を演算する残熱量演算手段と、前記残熱量演算手段で演算された残熱量の目標貯湯熱量に対する割合を演算する残熱量割合演算手段と、この残湯量割合演算手段で演算された割合を残湯量としてリモートコントローラの表示部に表示させるようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
さらに、深夜時間帯の全量沸き上げ運転以外に昼間時間帯にも湯切れ沸き上げ運転等を行い、全量沸き上げ運転で不足する湯量を補うための沸き上げ動作を行うようにしたヒートポンプ式給湯装置が提案されている。(例えば特許文献3参照)。
【特許文献1】実開平4−50353号公報
【特許文献2】特開2004−360956号公報
【特許文献3】特開2003−161545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の貯湯式給湯装置では、湯の使用量の上限に合せた大型の貯湯タンク、例えば360Lとか420Lを用いて夜間に供給される電気料金の割安な深夜電力を使って沸き上げ、その深夜電力で沸き上げられた大量の湯水で1日の使用湯量を賄うという利用形態が一般的であった。
【0007】
そのため、貯湯タンクの残湯量表示も上記特許文献1、2に示されるように、貯湯タンクの各位置における検出温度をそのまま表示したり、目標温度に対する割合で表示したり、さらには残熱量に換算し目標残熱量に対する割合で表示するというように、貯湯タンクに残っている湯量の状態をそのまま表示しても、特に違和感を持つものではなかった。
【0008】
しかし、上記従来の貯湯式給湯装置のように大型の貯湯タンクを有する構成においては
、商品の外形も大きくなり、広い設置スペースが必要であり、集合住宅等における狭小スペースへの設置が困難となって、使用範囲が制限されるという課題があり、特に、近年のように少子化傾向が進み家族数が少なくなって1日の使用湯量も従来のように大量の湯水を必要としない場合やマンション等の集合住宅でベランダ設置で使用する場合が増加してきており、その対応として貯湯タンクの容積を小さくして機器を小型化した貯湯式給湯装置が商品化されてきている。
【0009】
その場合、貯湯量が従来に比べ極端に減少するため、深夜時間帯に全量沸き上げた湯量だけでは1日の使用湯量を賄うことができず、途中で湯切り現象を起こす心配があり、昼間時間帯において頻繁に湯切れ沸き上げ運転を行うことにより、ある程度の湯を確保しておく必要がある。
【0010】
このため、貯湯タンク内は常に沸き上がった状態に近い貯湯形態となるため、電力料金の安価な深夜時間帯に沸かすべき水が貯湯タンク内に少量しか残っていないので、結果的に、電力料金の高い昼間時間帯に沸かす比率が大きくなり、ランニングコストがアップするという課題が発生する。
【0011】
さらに、従来の湯切れ沸き上げ運転の起動及び停止の条件は、予め定めた基準温度に基づいて判定される有効残湯量を用いて判断するようにしているため、有効残湯量が保有する熱量に関係なく、保有量そのもので判断され、場合によっては不必要な湯切れ沸き上げ運転が行われるという課題も有していた。
【0012】
また、貯湯タンクの容積を小さくした場合において、貯湯タンクに残っている湯量の状態をそのまま表示して残湯量を確認するようにすると、例えばタンク容量を100Lとした場合、標準的な浴槽(200L)に湯張りをする場合等において使用者は湯量が足りないと錯覚して違和感を持つようになる。実際は高温の湯水を貯湯しているため湯量不足になることはないが、タンク容量(100L)を基本に残湯量を表示する方法は使用者に誤解を与えることになる。さらに、昼間時間帯に行われる追加沸き上げ運転時や湯水使用時における残湯量の変化も、貯湯タンク内の湯温変化が安定してからでないと正確な残湯量を確認することができず、使い勝手の面で不便なものであった。
【0013】
本発明は上記課題を解決するもので、貯湯タンクに蓄えられた熱量、負荷側で使用される熱量、加熱手段から供給される熱量に基づいて、それぞれ同一条件で標準的な使用温度における湯量に換算し、減算・加算処理を行って最新の使用可能湯量をリアルタイムに求めるとともに、その使用可能湯量を用いて実際の使用条件に即して湯切れ沸き上げ運転の起動及び停止を判断するようにして、不必要な湯切れ沸き上げ運転を防止し、かつ、貯湯タンクの大きさに関係なく、使用者は使用可能湯量の値を見るだけで直感的に貯湯タンク内に残っている湯水の使用状況を把握できるようにした貯湯式給湯装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上記目的を達成するために、貯湯タンクと、前記貯湯タンクの湯水を負荷側に供給する負荷経路と、前記貯湯タンクの湯水を加熱する加熱手段と、前記貯湯タンクの湯水が保有する熱量から所定温度における使用可能湯量を演算する湯量演算手段と、前記負荷経路より流出する熱量から所定温度に換算した使用湯量を演算する使用量演算手段と、前記加熱手段より流入する熱量から所定温度に換算した追加使用可能量を演算する供給量演算手段と、前記湯量演算手段と前記使用量演算手段と前記供給量演算手段の演算結果より求められる湯量に基づき使用可能湯量を算出する使用可能湯量算出手段を備え、全量沸き上げ運転を行う時間帯を設定するとともに、前記使用可能湯量算出手段で所定の使用可能湯量を算出した場合に湯切れ沸き上げ運転を行うことを設定した貯湯式給湯装置であっ
て、前記湯切れ沸き上げ運転の開始を判定する起動使用可能湯量を時間別に任意の値に設定する湯切れ使用可能湯量設定手段を有し、前記湯切れ使用可能湯量設定手段で設定された起動使用可能湯量と前記使用可能湯量算出手段で算出された使用可能湯量に基づいて前記加熱手段の起動及び停止を行うようにしたものである。
【0015】
上記発明によれば、貯湯タンクに蓄えられた湯水が保有する熱量を求め、その熱量から標準的に使用される湯温(例えば40℃)において連続出湯した場合にどれだけの湯量が使用できるかを示す使用可能湯量に換算するようにしているため、貯湯タンクの大きさに関係なく、現在蓄えられている貯湯量で標準的な使用条件において、どれだけ使用できるかを容易に判断することができ、使用可能湯量に応じた適正な使い方が可能となる。また、負荷経路に接続された給湯カラン、風呂湯張り回路、風呂追い焚き回路で消費される熱量をそれぞれ求め、その熱量から使用可能湯量を求めたときと同条件の湯温(例えば40℃)においてどれだけの湯量を使用したことになるかを示す使用湯量に換算するようにしているため、使用可能湯量から使用湯量を減算処理することで、負荷経路の消費状態に連動して現在の使用可能湯量の変化をリアルタイムに確認することができ、使用者はその変化を見ながら残りどれだけ使用できるかを容易に確認することができ、使い勝手の向上を図ることができる。さらに、貯湯量が減少し加熱手段が動作して追加沸き上げ運転が開始されると、加熱手段から供給される熱量を求め、その熱量から使用可能湯量を求めたときと同条件の湯温(例えば40℃)においてどれだけの湯量が供給されたかを示す追加使用可能湯量に換算するようにしているため、使用可能湯量に追加使用可能湯量を加算処理することで、加熱手段の沸き上げ運転状態に応じて現在の使用可能湯量の変化をリアルタイムに確認することができ、使用者はその変化を見ながら残りどれだけ使用できるかを容易に確認することができ、使い勝手の向上を図ることができる。
【0016】
そして、貯湯タンクの保有熱量から換算した使用可能熱量に対して、使用量演算手段及び供給量演算手段で算出された使用湯量及び供給湯量を減算・加算処理して求めた現在の使用可能湯量を用いて、湯切れ使用可能湯量設定手段で設定された起動使用可能湯量と比較することで、湯切れ沸き上げ運転の開始を判断するようにしているため、実際に使用者が湯水を使用する感覚で湯切れ沸き上げ運転の要否を判断することができ、従来のように有効残湯量が保有する熱量に関係なく保有量そのもので判断していた場合における不必要な湯切れ沸き上げ運転が行われてしまうという課題を解消することができ、かつ、起動使用可能湯量の設定値を、湯切れ沸き上げ運転が行われる時間帯において、その時間別にそれぞれ任意の値に設定するようにしているため、設置スペース、イニシャルコストを低減するために貯湯タンクを小型化した場合でも、一日の湯量の使用形態に応じた最適な使用可能湯量の確保を実現することができ、無駄な湯切れ沸き上げ運転を行うことなく、効率的な沸き上げ動作を確保することができ、さらに、湯量を大量に使用する湯張り動作に対応して事前に必要湯量を確保することができると共に、湯張り動作中における湯切れ沸き上げ運転を早期に開始することで湯張り動作後の湯切れ現象を解消することができる。つまり、昼間の電力供給時間帯の沸き上げは湯切れを防止するための最小限に抑え、深夜時間帯に沸かすべき水を貯湯タンク内に確保できるため、ランニングコストアップを必要最小限に抑えることができる。そして、設置スペース、イニシャルコスト、ランニングコストの最適化を図るときに、貯湯タンクの小型化によるランニングコストアップを低減できるため、貯湯タンクの容量をより小さいものにすることができ、トータルのコストダウンおよび設置性の向上が図れる。
【0017】
以上のように、貯湯タンクに蓄えられた熱量、負荷側で使用される熱量、加熱手段から供給される熱量に基づいて、それぞれ同一条件で標準的な使用温度における湯量に換算し、減算・加算処理を行って最新の使用可能湯量をリアルタイムに求めるとともに、その使用可能湯量を用いて実際の使用条件に即して湯切れ沸き上げ運転の起動を判断するようにして、不必要な湯切れ沸き上げ運転を防止し、かつ、貯湯タンクの大きさに関係なく、現
在の使用可能湯量を実際に使用する温度条件またはそれに近い値として知ることができ、使用者はその値を見るだけで直感的に貯湯タンク内に残っている湯水の使用状況を把握することができるので、使い勝手を飛躍的に向上させることができる。
【0018】
よって、貯湯タンクの容量が、例えば一般的な浴槽の容積(200L)より小さい100L程度のものであっても、使用可能湯量としては300Lと求め、その値を表示することができるため、使用者はその値を見て浴槽への湯張りが可能であると判断でき、浴槽への湯張りが終わった後は使用可能湯量が100Lに減ったことをリアルタイムに確認することができ、さらに、沸き上げ動作が開始された場合は、100Lから徐々に使用可能湯量が増加している状況をリアルタイムに確認することができ、特に、貯湯タンクの容量が小さい貯湯式給湯装置の残湯量確認装置としては最適なものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、貯湯タンクに蓄えられた熱量、負荷側で使用される熱量、加熱手段から供給される熱量に基づいて、それぞれ同一条件で標準的な使用温度における湯量に換算し、減算・加算処理を行って最新の使用可能湯量をリアルタイムに求めるとともに、その使用可能湯量を用いて実際の使用条件に即して湯切れ沸き上げ運転の起動を判断するようにして、不必要な湯切れ沸き上げ運転を防止し、かつ、貯湯タンクの大きさに関係なく、現在の使用可能湯量を実際に使用する温度条件またはそれに近い値として知ることができ、使用者はその値を見るだけで直感的に貯湯タンク内に残っている湯水の使用状況を把握することができるので、使い勝手を飛躍的に向上させることができる。特に、貯湯タンクの容量が小さい貯湯式給湯装置の残湯量確認装置としては最適なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
第1の発明は、貯湯タンクと、前記貯湯タンクの湯水を負荷側に供給する負荷経路と、前記貯湯タンクの湯水を加熱する加熱手段と、前記貯湯タンクの湯水が保有する熱量から所定温度における使用可能湯量を演算する湯量演算手段と、前記負荷経路より流出する熱量から所定温度に換算した使用湯量を演算する使用量演算手段と、前記加熱手段より流入する熱量から所定温度に換算した追加使用可能量を演算する供給量演算手段と、前記湯量演算手段と前記使用量演算手段と前記供給量演算手段の演算結果より求められる湯量に基づき使用可能湯量を算出する使用可能湯量算出手段を備え、全量沸き上げ運転を行う時間帯を設定するとともに、前記使用可能湯量算出手段で所定の使用可能湯量を算出した場合に湯切れ沸き上げ運転を行うことを設定した貯湯式給湯装置であって、前記湯切れ沸き上げ運転の開始を判定する起動使用可能湯量を時間別に任意の値に設定する湯切れ使用可能湯量設定手段を有し、前記湯切れ使用可能湯量設定手段で設定された起動使用可能湯量と前記使用可能湯量算出手段で算出された使用可能湯量に基づいて前記加熱手段の起動を行うようにしたことを特徴とするものである。
【0021】
そして、貯湯タンクに蓄えられた湯水が保有する熱量を求め、その熱量から標準的に使用される湯温(例えば40℃)において連続出湯した場合にどれだけの湯量が使用できるかを示す使用可能湯量に換算するようにしているため、貯湯タンクの大きさに関係なく、現在蓄えられている貯湯量で標準的な使用条件において、どれだけ使用できるかを容易に判断することができ、使用可能湯量に応じた適正な使い方が可能となる。また、負荷経路に接続された給湯カラン、風呂湯張り回路、風呂追い焚き回路で消費される熱量をそれぞれ求め、その熱量から使用可能湯量を求めたときと同条件の湯温(例えば40℃)においてどれだけの湯量を使用したことになるかを示す使用湯量に換算するようにしているため、使用可能湯量から使用湯量を減算処理することで、負荷経路の消費状態に連動して現在の使用可能湯量の変化をリアルタイムに確認することができ、使用者はその変化を見ながら残りどれだけ使用できるかを容易に確認することができ、使い勝手の向上を図ることができる。さらに、貯湯量が減少し加熱手段が動作して追加沸き上げ運転が開始されると、
加熱手段から供給される熱量を求め、その熱量から使用可能湯量を求めたときと同条件の湯温(例えば40℃)においてどれだけの湯量が供給されたかを示す追加使用可能湯量に換算するようにしているため、使用可能湯量に追加使用可能湯量を加算処理することで、加熱手段の沸き上げ運転状態に応じて現在の使用可能湯量の変化をリアルタイムに確認することができ、使用者はその変化を見ながら残りどれだけ使用できるかを容易に確認することができ、使い勝手の向上を図ることができる。
【0022】
そして、貯湯タンクの保有熱量から換算した使用可能熱量に対して、使用量演算手段及び供給量演算手段で算出された使用湯量及び供給湯量を減算・加算処理して求めた現在の使用可能湯量を用いて、湯切れ使用可能湯量設定手段で設定された起動使用可能湯量と比較することで、湯切れ沸き上げ運転の開始を判断するようにしているため、実際に使用者が湯水を使用する感覚で湯切れ沸き上げ運転の要否を判断することができ、従来のように有効残湯量が保有する熱量に関係なく保有量そのもので判断していた場合における不必要な湯切れ沸き上げ運転が行われてしまうという課題を解消することができ、かつ、起動使用可能湯量の設定値を、湯切れ沸き上げ運転が行われる時間帯において、その時間別にそれぞれ任意の値に設定するようにしているため、設置スペース、イニシャルコストを低減するために貯湯タンクを小型化した場合でも、一日の湯量の使用形態に応じた最適な使用可能湯量の確保を実現することができ、無駄な湯切れ沸き上げ運転を行うことなく、効率的な沸き上げ動作を確保することができ、さらに、湯量を大量に使用する湯張り動作に対応して事前に必要湯量を確保することができると共に、湯張り動作中における湯切れ沸き上げ運転を早期に開始することで湯張り動作後の湯切れ現象を解消することができる。つまり、昼間の電力供給時間帯の沸き上げは湯切れを防止するための最小限に抑え、深夜時間帯に沸かすべき水を貯湯タンク内に確保できるため、ランニングコストアップを必要最小限に抑えることができる。そして、設置スペース、イニシャルコスト、ランニングコストの最適化を図るときに、貯湯タンクの小型化によるランニングコストアップを低減できるため、貯湯タンクの容量をより小さいものにすることができ、トータルのコストダウンおよび設置性の向上が図れる。
【0023】
以上のように、貯湯タンクに蓄えられた熱量、負荷側で使用される熱量、加熱手段から供給される熱量に基づいて、それぞれ同一条件で標準的な使用温度における湯量に換算し、減算・加算処理を行って最新の使用可能湯量をリアルタイムに求めるとともに、その使用可能湯量を用いて実際の使用条件に即して湯切れ沸き上げ運転の起動を判断するようにして、不必要な湯切れ沸き上げ運転を防止し、かつ、貯湯タンクの大きさに関係なく、現在の使用可能湯量を実際に使用する温度条件またはそれに近い値として知ることができ、使用者はその値を見るだけで直感的に貯湯タンク内に残っている湯水の使用状況を把握することができるので、使い勝手を飛躍的に向上させることができる。
【0024】
よって、貯湯タンクの容量が、例えば一般的な浴槽の容積(200L)より小さい100L程度のものであっても、使用可能湯量としては300Lと求め、その値を表示することができるため、使用者はその値を見て浴槽への湯張りが可能であると判断でき、浴槽への湯張りが終わった後は使用可能湯量が100Lに減ったことをリアルタイムに確認することができ、さらに、沸き上げ動作が開始された場合は、100Lから徐々に使用可能湯量が増加している状況をリアルタイムに確認することができ、特に、貯湯タンクの容量が小さい貯湯式給湯装置の残湯量確認装置としては最適なものである。
【0025】
第2の発明は、特に上記第1の発明において、湯量演算手段は、貯湯タンクに設けた複数の温度検出器で検出される温度から各層毎に保有する熱量を求め所定温度に換算した使用可能湯量を演算すると共に、前記温度検出器で検出される温度が予め定めた判定温度以下の場合は、残湯無しと判断して使用可能湯量に加算しないようにしたことを特徴とするものである。
【0026】
そして、貯湯タンク下部の水を上部に循環させその循環過程で加熱しタンク上部から高温の湯を層状に蓄えていく積層タイプの貯湯方式にあっては、貯湯タンクの高さ方向に設けた複数の温度検出器により検出される温度に基づいて各層毎に保有する熱量を求めることで、貯湯タンクの保有熱量を精度よく検出することができ、その保有熱量から標準的に使用する温度における使用可能湯量を求めることができる。また、温度検出器の検出する温度が低く標準的な使用温度として適さないと判断したときは、使用可能湯量に加算しないようにしているため、予め定めた使用条件における使用可能湯量を精度よく求めることができる。
【0027】
第3の発明は、特に上記第1または第2の発明において、湯量演算手段は、貯湯タンク上部の所定湯量を残して使用可能湯量の演算を行うようにしたことを特徴とするものである。
【0028】
そして、貯湯タンク上部の所定量は使用可能湯量に加算しないようにしているため、熱量演算時に誤差が生じた場合でも、タンク上部の湯量で誤差分をカバーすることで、湯量有りの演算結果に対して実際の湯量はないという事態を回避することができる。
【0029】
第4の発明は、特に上記第1〜第3のいずれかの発明において、湯量演算手段は、温度検出器で検出される温度と残湯の有無を判断する判定温度より、残湯あり/なし情報が切り替わったことを検出したとき、使用可能湯量の演算を行うようにしたことを特徴とするものである。
【0030】
そして、貯湯タンクに設けられた複数の温度検出器で検出される温度が標準的な使用温度として適さないと判断したとき、または適する温度に復帰したと判断したときは、その時点で再度貯湯タンクの保有する熱量を求め、その熱量から標準的に使用される湯温において連続出湯した場合にどれだけの湯量が使用できるかを示す使用可能湯量に換算する演算を行うようにしているため、途中で使用された場合や沸き上げ動作が行われた場合における使用可能湯量の変化を所定のタイミングで検証することができ、使用可能湯量を精度よく求めることができる。
【0031】
第5の発明は、特に上記第1〜第4のいずれかの発明において、使用量演算手段は、負荷経路に設けた流量検知器と出湯温検知器で検出される流量及び出湯温度から流出する熱量を求め所定温度に換算した使用量を演算すると共に、湯量演算手段で求めた使用可能湯量の減算補正を行うようにしたことを特徴とするものである。
【0032】
そして、負荷経路を構成するカランに連通した給湯回路と浴槽水循環回路に連通した風呂湯張り回路に設けた流量検知器と出湯温検知器で検出される流量及び出湯温度に基づいて、給湯と風呂湯張り時に使用される熱量を求め、その熱量から使用可能湯量を求めたときと同一の温度条件における使用湯量に換算するようにしているため、負荷経路で使用される湯量を精度よく求めることができ、この使用湯量を用いて湯量演算手段で求めた使用可能湯量の減算補正を行うことで、現在の使用可能湯量をリアルタイムに求めることができ、使用者は使用状態に連動した使用可能湯量の変化を確認することができるため、使い勝手の向上を図ることができる。
【0033】
第6の発明は、特に上記第1〜第4のいずれかの発明において、使用量演算手段は、負荷経路に設けた風呂追い焚き回路で使用される熱量を求め所定温度に換算した使用量を演算すると共に、湯量演算手段で求めた使用可能湯量の減算補正を行うようにしたことを特徴とするものである。
【0034】
そして、貯湯タンク上部から取り出した湯を下部に戻す循環路の途中に浴槽水と熱交換を行う風呂熱交換器を配置して構成した風呂追い焚き回路に設けた循環ポンプの流量と、貯湯タンクからの出口温度及び戻り温度から風呂熱交換器で使用される熱量を求め、その熱量から使用可能湯量を求めたときと同一の温度条件における使用湯量に換算するようにしているため、負荷経路を構成する風呂追い焚き回路で使用される湯量換算値を精度よく求めることができ、この湯量換算値を用いて湯量演算手段で求めた使用可能湯量の減算補正を行うことで、現在の使用可能湯量をリアルタイムに求めることができ、使用者は風呂追い焚き運転状態に連動した使用可能湯量の変化を確認することができるため、使い勝手の向上を図ることができる。
【0035】
第7の発明は、特に上記第1〜第4のいずれかの発明において、供給量演算手段は、沸き上げ動作が開始されたとき、所定時間毎の沸き上げ量を求め所定温度に換算した供給湯量を演算すると共に、湯量演算手段で求めた使用可能湯量の加算補正を行うようにしたことを特徴とするものである。
【0036】
そして、加熱手段による沸き上げ運転が開始されると、そのときの加熱能力、沸き上げ温度、給水温度から所定時間毎の沸き上げ量を求め、その沸き上げ量から使用可能湯量を求めたときと同一の温度条件における追加使用可能湯量となる供給湯量に換算するようにしているため、加熱手段から供給される追加使用可能湯量を精度よく求めることができ、この追加使用可能湯量を用いて湯量演算手段で求めた使用可能湯量の加算補正を行うことで、現在の使用可能湯量をリアルタイムに求めることができ、使用者は加熱手段による沸き上げ運転状態に連動した使用可能湯量の変化を確認することができるため、使い勝手の向上を図ることができる。
【0037】
第8の発明は、特に上記第7の発明において、供給量演算手段は、能力可変な加熱手段への入水温度に応じて加熱能力を変更して所定時間毎の沸き上げ量を求め所定温度に換算した供給湯量を演算するようにしたことを特徴とするものである。
【0038】
そして、加熱手段に供給される入水温度が高くなるに伴って加熱能力を小さく、入水温度が低くなるに伴って加熱能力を大きくするというように、入水温度に応じて加熱能力が変更されたとき、その変更された加熱能力に基づいて沸き上げ量を求め、その沸き上げ量から使用可能湯量を求めたときと同一の温度条件における追加使用可能湯量となる供給湯量に換算するようにしているため、加熱手段から供給される追加使用可能湯量を精度よく求めることができ、この追加使用可能湯量を用いて湯量演算手段で求めた使用可能湯量の加算補正を行うことで、現在の使用可能湯量をリアルタイムに求めることができ、使用者は加熱手段による沸き上げ運転状態に連動した使用可能湯量の変化を確認することができるため、使い勝手の向上を図ることができる。
【0039】
第9の発明は、特に上記第7の発明において、供給量演算手段は、能力可変な加熱手段の沸き上げ運転モードに応じて加熱能力を変更して所定時間毎の沸き上げ量を求め所定温度に換算した供給湯量を演算するようにしたことを特徴とするものである。
【0040】
そして、夜間の特定時間帯に行われる全量沸き上げ運転が通常能力、昼間時間帯の残湯量が減少したときに行われる追加沸き上げ運転がハイパワー能力というように、沸きあげ運転モードに応じて加熱能力が変更されたときは、変更された加熱能力に基づいて沸き上げ量を求め、その沸き上げ量から使用可能湯量を求めたときと同一の温度条件における追加使用可能湯量となる供給湯量に換算するようにしているため、加熱手段から供給される追加使用可能湯量を精度よく求めることができ、この追加使用可能湯量を用いて湯量演算手段で求めた使用可能湯量の加算補正を行うことで、現在の使用可能湯量をリアルタイムに求めることができ、使用者は加熱手段による沸き上げ運転状態に連動した使用可能湯量
の変化を確認することができるため、使い勝手の向上を図ることができる。
【0041】
第10の発明は、特に上記第1〜第9のいずれかの発明において、使用可能湯量算出手段は、湯量演算手段で求めた使用可能湯量に対して、使用量演算手段で求めた使用量で減算補正を行うと共に、供給量演算手段で求めた供給湯量で加算補正を行うことで、現在の使用可能湯量を常に更新するようにしたことを特徴とするものである。
【0042】
そして、貯湯タンクに蓄えられた熱量、負荷側で使用される熱量、加熱手段から供給される熱量に基づいて、それぞれ同一条件で標準的な使用温度における湯量に換算し、減算・加算処理を行って最新の使用可能湯量をリアルタイムに求めるようにしているため、貯湯タンクの大きさに関係なく、現在の使用可能湯量を実際に使用する温度条件またはそれに近い値として知ることができ、使用者はその値を見るだけで直感的に貯湯タンク内に残っている湯水の使用状況を把握することができるので、使い勝手を飛躍的に向上させることができる。
【0043】
第11の発明は、特に上記第1〜第10のいずれかの発明において、湯切れ使用可能湯量設定手段は、風呂湯張り動作が行われる時間帯において起動使用可能量が最も多くなるように設定したことを特徴とするものである。
【0044】
そして、湯が大量に使用される風呂湯張り動作が行われる時間帯において湯切れ沸き上げ運転の開始条件である起動使用可能湯量を最大値に設定し、沸き上げ運転に入り易い条件に設定することで、湯張り動作に必要な湯量を確保することができ、かつ、湯張り動作中の湯切れ沸き上げ運転を確実に行うことで、湯張り動作終了後の湯切れ現象を解消することができる。
【0045】
第12の発明は、特に上記第1〜第11のいずれかの発明において、加熱手段は、圧縮機、放熱器、膨張弁、及び蒸発器を配管で接続したヒートポンプサイクルとし、全量沸き上げ運転時よりも湯切れ沸き上げ運転時に、前記圧縮機の能力を高くすることを特徴とするものである。
【0046】
そして、残湯量が少なくなり、緊急に必要湯量を確保する必要が発生した場合は圧縮機の能力を高めて湯切れ沸き上げ運転を行うことで、短時間に所定量の温水を貯留することができる。
【0047】
第13の発明は、特に上記第1〜第12のいずれかの発明において、加熱手段は、圧縮機、放熱器、膨張弁、及び蒸発器を配管で接続したヒートポンプサイクルとし、前記ヒートポンプサイクルに用いる冷媒を二酸化炭素とし、高圧側では臨界圧を越える状態で運転することを特徴とするものである。
【0048】
そして、90℃に近い高温水を貯湯することができるとともに、レジオネラ菌などを考慮した65℃程度の温水の貯湯を高いCOPで行うことができる。
【0049】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0050】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態による貯湯式給湯装置の全体構成を示すブロック図である。
【0051】
貯湯タンク1の上部には複数の負荷側に高温湯を供給する出湯管2を設け、カラン24
への出湯経路として出湯管2a、湯張り回路19aへの出湯経路として出湯管2b、風呂追い焚き回路29aへの出湯経路として出湯管2cを有している。また、貯湯タンク1の下部には減圧弁3a、逆止弁3bを接続した給水管3を有している。
【0052】
出湯管2aより供給される高温水は給水管3より供給される水と給湯混合弁20により設定温度に混合された後、カラン24から出湯される。出湯された流量は流量検知器22で検出され、混合された後の湯温は出湯温検知器21で検出され、この検出データを給湯混合弁20の混合制御にフィードバックすることで設定温度の湯水を得るようにしている。
【0053】
また、上記検出データを用いてカラン出湯時に使用される熱量を算出することも可能となる。
【0054】
出湯管2bより供給される高温水は開閉弁17を開くことにより給水管3より供給される水と風呂混合弁15により設定温度に混合された後、風呂湯張り回路19aから浴槽水循環経路31を経由して浴槽30に供給される。このとき湯張り回路19aの流量は流量検知器18で検出され、混合された後の湯温は出湯温検知器16で検出され、この検出データを風呂混合弁15の混合制御にフィードバックすることで設定温度の湯水を得ると共に、浴槽30に供給される湯張り量を求めるようにしている。また、上記検出データを用いて風呂湯張り時に使用される熱量を算出することも可能となる。
【0055】
出湯管2cより供給される湯水は循環ポンプ27により所定の循環量で追い焚き回路29aを介して貯湯タンク1の下部に戻し、その循環過程で風呂熱交換器26により風呂ポンプ32を介して浴槽水循環経路31を流れる浴槽水と熱交換することで風呂追い焚き運転を行うようにしている。このとき風呂熱交換器26の出口温度を温度検知器28で検出し、入口温度は貯湯タンク1の最上部に取り付けた温度検知器7dで検出される温度で代用する。さらに、循環流量は循環ポンプ27の制御データを用いることで代用することができ、以上の入口温度、出口温度、循環流量より風呂追い焚き運転で使用される熱量を求めることができる。
【0056】
以上のように、貯湯タンク1に蓄えられた湯水は、出湯管2a、2b、2cより供給され、給湯手段25と風呂湯張り手段19と風呂追い焚き手段29で構成される負荷回路で消費される。
【0057】
次に、貯湯タンク1の構成を説明すると、貯湯タンク1の下部と上部とは、沸き上げ配管4によって連通され、貯湯タンク1下部の水は、沸き上げポンプ5によって熱交換器6に導かれ、その熱交換器6によって加熱されて湯となり、貯湯タンク1上部に導かれる。出湯管2から出湯されると、それに伴い給水管3から貯湯タンク1内に水が給水され、貯湯タンク1内では、比重差から湯が上部、水が下部に分離し、湯が押し下げられる形で層を成して蓄積される。
【0058】
貯湯タンク1には、貯湯タンク1下部から上部の湯温を各位置毎に検出する複数の残湯温検出器7が設けられている。ここでは、貯湯タンク1の最下部に配置された残湯温検出器7aと、その残湯温検出器7aの上方に配置された残湯温検出器7bと、貯湯タンク1の最上部に配置された残湯温検出器7dと、その残湯温検出器7dの下方に配置された残湯温検出器7cを設けている。例えば、貯湯タンク1の全容量を150Lとすると、残湯温度検出器7aは130Lの位置に配置し、この残湯温度検出器7aが所定温度以上の湯温を検出している場合は貯湯タンク1内に使用可能な湯量として130L以上が貯留されていると判断する残湯量検出機能を有している。同様に残湯温度検出器7bは100Lの位置に配置し、この残湯温度検出器7bが所定温度以上の湯温を検出している場合は貯湯
タンク1内に使用可能な湯量として100L以上が貯留されていると判断する。また、残湯温度検出器7cは50L、残湯温度検出器7dは20Lの位置に配置し、それぞれ残湯量として50L、20Lが貯留されているか否かを判断する信号を出力する。そして、有効残湯量の判断基準としては、例えば、それぞれの残湯温検出器7a、7b、7c、7dが45℃を下回った時点で残湯量なしと判断し、検出温度が例えば60℃以上または設定温度になると残湯量ありと判断する。つまり、残湯温検出器7a、7b、7c、7dは、検出温度が例えば60℃以上または設定温度の時はそれぞれの位置に配置された残湯量検出器7d、7c、7b、7aの設置位置まで湯があり、45℃を下回った時点で湯がなしと判断する。45℃と60℃または設定温度とを判断温度とすることでチャタリングを防止している。
【0059】
次に、熱源を構成する加熱手段14について説明すると、加熱手段14は、圧縮機10、放熱器6、膨張弁12、及び蒸発器11を配管によって接続したヒートポンプサイクルで構成されている。このヒートポンプサイクルは、冷媒として二酸化炭素を用い、高圧側では臨界圧を越える状態で運転することが好ましい。このようなヒートポンプサイクルを用いることで、90℃に近い高温水を貯湯することができるとともに、レジオネラ菌などを考慮した65℃程度の温水の貯湯は高いCOPで行うことができる。
【0060】
熱交換器6に至るまでの沸き上げ配管4には入水温検出器13aが設けられ、熱交換器6の出口側の沸き上げ配管4には出湯温検出器13bが設けられている。また、本実施の形態による貯湯式給湯装置は、外気温度を検出する外気温検出器13cを備えている。なお、沸き上げ配管4に接続した三方弁8は沸き上げ経路を変更するもので、沸き上げ当初の湯温が上昇していない期間は沸き上げ経路を貯湯タンク1下部に切り換えて循環させ、出湯温検出器13bが所定温度を検出した時点から三方弁8を貯湯タンク1上部に切り換えて設定温度の湯水を貯湯するようにしている。また、この三方弁8は外気温度が極端に低い場合等、貯湯タンク1下部に切り換えて循環させることで凍結防止運転にも利用することができる。
【0061】
上記構成において、沸き上げ運転時には、沸き上げポンプ5及び圧縮機10を運転する。 例えば、沸き上げ温度が90℃の場合は、出湯温検出器13bの温度が90℃になるように沸き上げポンプ5を適切な流量に調節して制御する。また、出湯温度の制御は、圧縮機10の回転数や膨張弁12の開度などのヒートポンプサイクルでの制御によって行うこともできる。上記動作により貯湯タンク1には、上部から順に90℃の湯が貯留され、入水温検出器13aが所定温度、例えば60℃を検出すると、90℃の湯が貯湯タンク1の下部まで達したと判断し、沸き上げポンプ5及び圧縮機10を停止し、沸き上げ運転を終了する。
【0062】
また、本実施の形態による貯湯式給湯装置では、第1の所定時間帯と第2の所定時間帯とを設定している。第1の所定時間帯は、例えば23時から7時までの深夜時間帯で、加熱手段14を動作させて全量沸き上げ運転を行う時間を含む時間帯であり、ピークシフト時間帯を含んでいる。ピークシフト時間帯は、全量沸き上げ運転を待機させている時間帯である。第2の所定時間帯は、例えば7時から23時までの昼間時間帯で、原則として、全量沸き上げ運転を行わない時間帯である。このピークシフト時間帯と第2の所定時間帯では、第1の所定時間帯に行われる全量沸き上げ運転では湯量が足りないと判断された場合に湯切れ沸き上げ運転を行う。
【0063】
本実施の形態の貯湯式給湯装置は、貯湯タンク1に設けられた複数の温度検出器7でタンク各位置における温度を求める残湯温度検出手段32と、残湯温度検出手段32のデータを基に現在のタンク内有効残湯量が保有する熱量から所定温度に換算した場合の使用可能湯量を求める湯量演算手段40と、負荷側で消費される熱量から所定温度に換算した場
合の使用湯量を求める使用量演算手段47と、加熱手段14で供給される熱量から所定温度に換算した場合の供給湯量を求める供給量演算手段44と、湯量演算手段40で求めた使用可能湯量に対して使用量演算手段47で求めた使用湯量を減算処理し、供給量演算手段44で求めた供給湯量を加算処理して現在の使用可能湯量を求める使用可能湯量算出手段45と、湯切れ沸き上げ運転の開始及び停止を判定する基準となる使用可能湯量を設定する湯切れ使用可能湯量設定手段34と、使用可能湯量算出手段45で求めた現在の使用可能湯量と湯切れ使用可能湯量設定手段34で設定された基準値とを比較し湯切れ沸き上げ運転の開始及び停止を判断する湯切れ沸き上げ運転判別手段35と、加熱手段14に設けられた各種温度センサで検出される温度を求める熱源機温度検出手段36とを備えている。なお、湯量演算手段40、使用量演算手段47、供給量演算手段44、使用可能湯量算出手段45の詳細説明については後ほど記述する。
【0064】
湯温・能力レベル変更手段38は、湯切れ沸き上げ運転判別手段35と熱源機温度検出手段36からの信号に基づいて沸き上げ湯温の設定や、沸き上げポンプ5及び圧縮機10の能力設定を行う。沸き上げ運転制御手段39は、湯温・能力レベル変更手段38での設定内容に基づいて、沸き上げポンプ5及び圧縮機10の能力を制御する。操作部37は、各種運転モードの設定手段を有し、使用者が好みの運転条件を任意に設定することができ、例えば、風呂自動設定手段によって設定が入力されると、湯温・能力レベル変更手段33に設定信号を出力するとともに、風呂湯張り手段19と風呂追い焚き手段29に対して動作開始信号を出力する。風呂湯張り手段19に対しては、予め設定された湯温となるように、貯湯タンク1の上部からの貯湯水と、給水管3からの冷水とを混合し、予め設定した湯量を浴槽30に供給する。その後、風呂追い焚き手段29に対して、予め設定した風呂温度を保つように保温動作等を行う。
【0065】
湯切れ使用可能湯量設定手段34は、起動使用可能湯量あるいは停止使用可能湯量あるいは起動使用可能湯量と停止使用可能湯量を時間別に任意に設定し、昼間時間帯及びピークシフト時間帯に行われる湯切れ沸き上げ運転の開始条件と停止条件をパターン化して設定するようにしたものである。ここで起動使用可能湯量とは、湯切れ沸き上げ運転を開始する使用可能湯量の設定値であり、使用可能湯量算出手段45で求めた現在の使用可能湯量がこの起動使用可能湯量を下回ると湯切れ沸き上げ運転を開始する。具体的には上記使用可能湯量算出手段45から出力される現在の使用可能湯量信号が湯切れ使用可能湯量設定手段34で設定された起動使用可能湯量信号を下回ると沸き上げ開始信号が出力される。また、停止使用可能湯量とは、湯切れ沸き上げ運転を停止する使用可能湯量の設定値であり、沸き上げ運転により沸き上げ湯量演算手段44で算出される供給湯量の加算処理で求められる使用可能湯量がこの停止使用可能湯量を上回ると湯切れ沸き上げ運転を停止する。具体的には、上記使用可能湯量算出手段45から出力される使用可能湯量信号が湯切れ使用可能湯量設定手段34で設定された停止使用可能湯量信号を上回ると沸き上げ停止信号が出力される。
【0066】
そして、起動使用可能湯量と停止使用可能湯量は図2に示すように、時間別に任意の値に設定され、生活パターンに応じた湯水の使用状況に対応して効率的な沸き上げ運転により適正な湯量を確保するようにしている。図2を用いてさらに詳細に説明すると、例えば、朝の7時から10時頃までは比較的湯水の使用量が多い時間帯ではあるが、前夜の全量沸き上げ運転により貯湯タンク1内に多くの湯量が確保されており、この湯を利用することが可能であるため、この時間帯における起動使用可能湯量は低めに設定し、湯切れ沸き上げ運転に入りにくい状態に設定する。湯の使用量が多くなって万一湯切れ沸き上げ運転に入った場合でも、その後の時間帯においてあまり湯が使われないことを考慮すると多くの沸き上げ湯量は必要がない。そこで、この時間帯における停止使用可能湯量は少な目に設定し、沸き上げ湯量を控えるようにする。
【0067】
次に、10時から17時頃までは一日のうちで最も湯水の使用量が少ない時間帯であり、この時間帯は7時から10時頃までの起動使用可能湯量よりさらに低めに設定し、より湯切れ沸き上げ運転に入りにくい状態に設定する。そして、停止使用可能湯量もさらに少な目に設定することで、電力料金の高い昼間時間帯の沸き上げ運転を制限することができる。そして、17時から入浴時間帯を含む20時頃までの一日のうちで最も湯水の使用量が多い時間帯にあっては、起動使用可能湯量を最高に設定し、入浴時間帯に備えるために事前に沸き上げ運転を開始させ、必要湯量を確保するように運転を行うとともに、湯張り動作開始により貯湯タンク1内の湯量が少し減っただけでも湯切れ沸き上げ動作を開始するようにして、湯張り動作中に沸き上げ動作を行うことで、その後のシャワー使用時の湯量確保を行うようにしている。また、この時間帯の停止使用可能湯量も貯湯タンク1の略全量が沸き上がるように最高の設定としている。そして、入浴時間帯が終了する20時以降は起動使用可能湯量と停止使用可能湯量を少な目に設定し、沸き上げ湯量を控えることで、電力料金の安い深夜時間帯の沸き上げ比率を高めるようにしている。そして、23時以降は深夜時間帯となりピークシフト時間帯を経過して全量沸き上げ運転を開始するようにしている。このピークシフト時間帯も当然、起動使用可能湯量と停止使用可能湯量を少な目に設定し、沸き上げ湯量を控えるようにしている。
【0068】
以上のように、時間別に細かく起動使用可能湯量と停止使用可能湯量を任意に設定することで、生活パターンに応じた湯水の使用状況に対応して効率的な沸き上げ運転により適正な湯量を確保することができる。
【0069】
湯切れ沸き上げ運転判別手段35は、湯切れ使用可能湯量設定手段34により上記の如く時間帯別に細かく設定された起動使用可能湯量及び停止使用可能湯量と使用可能湯量算出手段45で算出される現在の使用可能湯量とを比較し、湯切れ沸き上げ運転の開始が必要か、あるいは湯切れ沸き上げ運転を停止させるべきかを判断して、湯温・能力レベル変更手段38と沸き上げ運転制御手段39に信号を出力する。熱源機温度検出手段36は、入水温検出器13a、出湯温検出器13b、及び外気温検出器13cで検出した温度信号を湯温・能力レベル変更手段38と沸き上げ運転制御手段39に出力する。
【0070】
以上の構成により、例えば、湯切れ使用可能湯量設定手段34で設定された起動使用可能湯量の設定値に対し、使用可能湯量算出手段45で算出された使用可能湯量値が下回ったことを湯切れ沸き上げ運転判別手段35で判断した場合には、湯温・能力レベル変更手段38によって、全量沸き上げ運転時と同じ沸き上げ温度(例えば85℃)に設定され、湯切れ沸き上げ運転を行う。そして、この湯切れ沸き上げ運転では、設定温度に基づき、沸き上げ運転制御手段39から、沸き上げポンプ5及び圧縮機10に動作信号が出力される。また、熱源機温度検出手段36によって出湯温検出器13bでの出湯温度が検出され、この出湯温度が目標の沸き上げ温度(例えば85℃)となるように、湯温・能力レベル変更手段38によって沸き上げポンプ5及び圧縮機10の能力が変更される。上記沸き上げ動作により沸き上げ湯量演算手段44で算出される熱量から所定温度に換算した供給湯量が加算処理され、使用可能湯量算出手段45で求められる現在の使用可能湯量が増加し、湯切れ使用可能湯量設定手段34で設定された停止使用可能湯量の設定値になると、沸き上げ運転制御手段39によって沸き上げポンプ5及び圧縮機10の運転を停止する。なお、停止使用可能湯量を最高に設定する場合は、最下部の残湯温度検出器7aの温度が設定温度に到達したときとしてもよく、また、全量沸き上げ時の停止条件である、熱源機温度検出手段36によって入水温検出器13aでの入水温度が検出され、この入水温度が目標の沸き上げ温度(例えば85℃)になると、沸き上げ運転制御手段39によって沸き上げポンプ5及び圧縮機10の運転を停止するようにしてもよい。なお、熱源機温度検出手段36によって外気温検出器13cでの外気温度が検出され、この外気温度に応じて目標の沸き上げ温度を設定変更したり、圧縮機10の能力設定を変更するように構成されている。
【0071】
次に、図3を用いて本実施の形態の貯湯式給湯装置の制御フローを説明する。
【0072】
まず、湯温・能力レベル変更手段38によって沸き上げ湯温・能力を決定する(ステップ1)。そして現在の時刻から、昼間時間帯(第2の所定時間帯)か否かを判断する(ステップ2)。現在が第2の所定時間帯であれば、使用可能湯量演算手段45で求められる使用可能湯量値が湯切れ使用可能湯量設定手段34で時間別に設定された起動使用可能湯量の設定値を下回っているか否かを判断する(ステップ3)。
【0073】
ステップ3において、使用可能湯量演算手段45で算出される使用可能湯量値が起動使用可能湯量を下回っていない場合には、使用可能湯量の変化を継続して監視する(ステップ4)。ステップ3において、使用可能湯量値が起動使用可能湯量をを下回った場合には、湯温・能力レベル変更手段38によって、圧縮機10の能力を全量沸き上げ運転時の能力(例えば4.5kW)よりも高い能力(例えば9kW)に変更し(ステップ5)、湯切れ沸き上げ運転を行う(ステップ6)。
【0074】
そして、沸き上げ運転により供給される熱量から所定温度に換算した供給量を加算処理して求めた現在の使用可能湯量が湯切れ使用可能湯量設定手段34で時間別に設定された停止使用可能湯量の設定値を上回っているか否かを判断する(ステップ7)。
【0075】
ステップ7において、使用可能湯量が停止使用可能湯量を上回っていない場合には、湯切れ沸き上げ運転を継続する(ステップ6)。ステップ7において、使用可能湯量が停止使用可能湯量を上回ったと判断された場合には、湯切れ沸き上げ運転を停止する(ステップ8)。
【0076】
ステップ2において、第2の所定時間帯でないと判断された場合には、ピークシフト時間帯であるか否かが判断される(ステップ9)。
【0077】
ステップ9において、ピークシフト時間帯であると判断された場合には、上記昼間時間帯の場合と同様に、使用可能湯量演算手段45で求められる使用可能湯量値が湯切れ使用可能湯量設定手段34で時間別に設定された起動使用可能湯量の設定値を下回っているか否かを判断する(ステップ10)。
【0078】
ステップ10において、使用可能湯量演算手段45で算出される使用可能湯量値が起動使用可能湯量を下回っていない場合には、使用可能湯量の変化を継続して監視する(ステップ11)。ステップ10において、使用可能湯量値が起動使用可能湯量を下回った場合には、湯温・能力レベル変更手段38によって、圧縮機10の能力を全量沸き上げ運転時の能力(例えば4.5kW)よりも高い能力(例えば9kW)に変更し(ステップ12)、湯切れ沸き上げ運転を行う(ステップ13)。
【0079】
そして、沸き上げ運転により供給される熱量から所定温度に換算した供給量を加算処理して求めた現在の使用可能湯量が湯切れ使用可能湯量設定手段34で時間別に設定された停止使用可能湯量の設定値を上回っているか否かを判断する(ステップ14)。
【0080】
ステップ14において、使用可能湯量が停止使用可能湯量を越えていない場合には、湯切れ沸き上げ運転を継続する(ステップ13)。ステップ14において、使用可能湯量が停止使用可能湯量を越えたと判断された場合には、湯切れ沸き上げ運転を停止する(ステップ15)。
【0081】
ステップ9において、ピークシフト時間帯でないと判断された場合には、第2の所定時
間帯終了時に、入水温度検出手段13aでの検出温度が所定温度に達しているか否かを判断する(ステップ16)。
【0082】
ステップ16において、入水温度検出手段13aでの検出温度が所定温度に達していないと判断した場合には、予定通り全量沸き上げ運転を行う(ステップ17)。またステップ16において、入水温度検出手段13aでの検出温度が所定温度以上であると判断した場合には、全量沸き上げ運転を行わない(ステップ18)。
【0083】
以上のようなステップで沸き上げ運転が行われ、貯湯タンク1に必要な有効残湯量を確保するようにしている。
【0084】
次に、上記した湯量演算手段40、使用量演算手段47、供給量演算手段44、使用可能湯量算出手段45で構成する本実施の形態における残湯量確認装置に関して説明する。
【0085】
本実施の形態による貯湯式給湯装置では、貯湯タンク1に設けられた複数の温度検出器7の検出データよりタンク高さ方向の各位置における温度を求める残湯温度検出手段32の情報に基づいて、現在貯湯タンク1内にある有効残湯量の保有する熱量を演算する。また、残湯温度検出手段32は予め定めた判定温度と温度検出器7の検出温度を比較し、判定温度以下の場合は残湯量なしと判断し、判定温度以上の場合のみ有効残湯量と判断して熱量計算の情報として湯量演算手段40に伝達する。ただし、貯湯タンク1の上部の所定湯量は有効残湯量から除いて残湯量を求めるようにしている。例えば、タンク上部の10L分を除くように設定した場合は、タンク最上部に設けた温度検出器7dが判定温度以上を検出した場合、10Lのみ有効残湯量として熱量演算に用いる。20L分を除くようにした場合は、温度検出器7dが判定温度以上を検出しても残湯量無しとして処理を行う。これは、熱量演算時等に誤差が生じた場合でも、タンク上部の湯量で誤差分をカバーすることで、湯量有りの演算結果に対して実際の湯量はないという事態を回避するための処置である。
【0086】
そして、演算された熱量からカラン出湯や風呂湯張り時に標準的に使用される湯温、例えば40℃において、連続出湯した場合にどれだけの湯量が使用できるかを示す使用可能湯量に換算して算出する湯量演算手段40を有している。また、この湯量演算手段40で求められる使用可能湯量は、図6に示すように、貯湯タンク1上部の所定湯量(20L)を残した位置を表示上のゼロポイントとし、貯湯タンク1最下点(150L)との間でシフトさせながら表示処理を行うようにしたもので、タンク全量(150L)が判定温度以上の場合は、実際のタンク容量を用いて使用可能湯量を表示し、タンク上部所定量からタンク全量の間は所定の関係でシフトさせながら使用可能湯量を表示することで、誤差分による異常表示を回避しつつ、実際の湯量に近い湯量に基づく使用可能湯量の表示を可能とするものである。
【0087】
そして、湯量演算手段40は貯湯タンク1に設けられた複数の温度検出器7で検出される温度が標準的な使用温度として適さないと判断したとき、または適する温度に復帰したと判断したときは、その時点で再度貯湯タンク1の保有する熱量を求め、その熱量から標準的に使用される湯温において連続出湯した場合にどれだけの湯量が使用できるかを示す使用可能湯量に換算する演算を行うようにしている。この処理を行うことにより、途中で使用された場合や沸き上げ動作が行われた場合における使用可能湯量の変化を所定のタイミングで検証することができ、使用可能湯量を精度よく求めることができる。また、再計算により求められた使用可能湯量と表示データとの間に誤差が発生した場合は、予め定めた補正条件に基づき段階的に表示データの補正を行うようにしている。このように誤差を一度に補正するのではなく、所定のタイミングで段階的に補正することで、突然表示が変わるという違和感もなく、スムーズに表示データの変更を行うことができる。
【0088】
また、出湯管2aより供給される高温水と給水管3より供給される水を混合弁20で所定温度に混合してカラン24より出湯する給湯手段25で使用される熱量を出湯温度検出器21と流量検出器22で検出されるデータに基づいて演算し、その熱量から湯量演算手段40で使用可能湯量を求めたときと同条件の湯温、例えば40℃においてどれだけの湯量を使用したことになるかを示す使用湯量に換算して算出する給湯湯量演算手段41を有している。
【0089】
また、出湯管2bより供給される高温水と給水管3より供給される水を混合弁15で所定温度に混合して風呂湯張り回路19aより浴槽水循環回路31に供給する風呂湯張り手段19で使用される熱量を湯張り温度検出器16と湯張り流量検出器18で検出されるデータに基づいて演算し、その熱量から湯量演算手段40で使用可能湯量を求めたときと同条件の湯温、例えば40℃においてどれだけの湯量を使用したことになるかを示す使用湯量に換算して算出する湯張り量演算手段42を有している。
【0090】
また、出湯管2cより供給される高温水を風呂追い焚き回路29aを介して所定の循環量でタンク下部に戻し、その循環過程で風呂熱交換器26において浴槽水循環回路31を循環する浴槽水と熱交換して消費する熱量を風呂熱交換器26の入口温度と出口温度及び循環流量に基づいて演算する。このとき、出口温度を温度検知器28で検出し、入口温度は貯湯タンク1の最上部に取り付けた温度検知器7dで検出される温度で代用し。さらに、循環流量は循環ポンプ27の制御データ、例えば回転パルス、デューティー比、電流値等を用いることで代用することができ、以上の入口温度、出口温度、循環流量より風呂追い焚き運転で使用される熱量を求めることができる。そして、その熱量から湯量演算手段40で使用可能湯量を求めたときと同条件の湯温、例えば40℃においてどれだけの湯量を使用したことになるかを示す使用湯量に換算して算出する追い焚き湯量演算手段43を有している。
【0091】
そして、上記給湯湯量演算手段41と湯張り量演算手段42と追い焚き湯量演算手段43で負荷経路より流出する熱量から所定温度に換算した使用湯量を演算する使用量演算手段47を構成することで、負荷経路で使用される湯量を精度よく求めることができ、この使用湯量を用いて湯量演算手段40で求めた使用可能湯量の減算補正を行うことで、現在の使用可能湯量をリアルタイムに求めることができ、使用者は使用状態に連動した使用可能湯量の変化を確認することができるため、使い勝手の向上を図ることができる。
【0092】
また、沸き上げ運転制御手段39により沸き上げ運転が開始されたときは、湯温・能力レベル変更手段38及び熱源機温度検出手段36の情報に基づいて、沸き上げ運転により加熱手段14から貯湯タンク1にどれだけの熱量が供給されたかを演算し、その熱量から湯量演算手段40で使用可能湯量を求めたときと同条件の湯温、例えば40℃においてどれだけの湯量が供給されたかを示す追加使用可能湯量に換算して算出する沸き上げ湯量演算手段44を有し、この沸き上げ湯量演算手段44で加熱手段より流入する熱量から所定温度に換算した追加使用可能量を演算する供給量演算手段を構成することで、加熱手段14から供給される追加使用可能湯量を精度よく求めることができ、この追加使用可能湯量を用いて湯量演算手段40で求めた使用可能湯量の加算補正を行うことで、現在の使用可能湯量をリアルタイムに求めることができ、使用者は加熱手段14による沸き上げ運転状態に連動した使用可能湯量の変化を確認することができるため、使い勝手の向上を図ることができる。
【0093】
具体的には、湯温・能力レベル変更手段38で設定される加熱能力(例えば、通常時は4.5KW、沸き終い時は2KW、フルパワー時は9KW)と熱源機温度検出手段36で求められる入水温検出器13aと出湯温検出器13bからの検出温度に基づいて、所定時
間当たりの沸き上げ量を求め、所定温度に換算した追加使用可能湯量を算出するようにしている。つまり、外気温度や入水温度の変化、あるいは全量沸き上げか、追加沸き上げか、で変化する加熱能力に応じて沸き上げ量を求め、特に、入水温度か高くなる沸き終い時は加熱能力を小さくして沸き上げ運転を行うため、沸き上げ量を求める場合も小さくした加熱能力を用いて演算を行う。
【0094】
そして、上記湯量演算手段40で求めた使用可能湯量に対して、給湯湯量演算手段41と湯張り量演算手段42と追い焚き湯量演算手段43で構成した使用量演算手段で使用される湯量を減算処理し、さらに沸き上げ湯量演算手段44で構成する供給量演算手段から供給される追加使用可能湯量を加算処理して、現在の使用可能湯量を求める使用可能湯量算出手段45を有している。また、この使用可能湯量算出手段45で求めた使用可能湯量は操作部37等に設けられた表示手段46を介して所定のタイミングで更新しながら常に最新のデータを表示するようにすると共に、上記した沸き上げ運転の開始及び停止を判断するデータとして使用するようにしている。
【0095】
次に、表示構成について説明すると、表示手段46の一例として、図5に示すように、操作部37と表示部47を有するリモコン48において、表示部47の一部に0L―400Lの目盛りを設け、その間において使用可能湯量算出手段45で求めた使用可能湯量のデータに基づきリニアーに変化させるレベル表示器を設けた構成としている。また、レベル表示器以外に使用可能湯量のデータを数値データとして直接表示させるようにしてもよく、実際に使用者が使用する感覚で判りやすく表示するものであれば、本実施の形態に限定されるものではない。
【0096】
要は、タンク容量が100L程度しかない小型の貯湯式給湯装置であっても、200L以上の浴槽に十分湯を供給することができるという、使用者感覚にたった残湯量の表示形態を提供することを基本に、その使用過程における残湯量の変化を使用量と供給量の演算処理による補正動作でリアルタイムに表示するようにしたものである。
【0097】
次に、図4を用いて上記本実施の形態の貯湯式給湯装置における残湯量確認装置の演算フローを説明する。
【0098】
まず、ステップ101で貯湯タンク1に設けた複数の温度検知器7a、7b、7c、7dで検出する温度が予め定めた判定温度以上あるか否かを判定し、いずれかの検出温度が判定温度以上あると判定した場合は貯湯タンク1内に有効残湯量が存在すると判断し、ステップ102で貯湯タンク1内に有効残湯量がいくらあるかを検出する。例えば、温度検出器7bまで判定温度以上であると判定した場合は貯湯タンク1内に100Lの有効残湯量を保有していると検出する。
【0099】
そして、ステップ103で検出した有効残湯量が保有する熱量を演算する。この場合、温度検知器7の取付位置毎に検出した温度と湯量よりそれぞれ熱量を演算したのち加算して有効熱量を求めるようにする。有効熱量が求まるとステップ104でその有効熱量からカラン出湯、湯張り出湯時に標準的に使用される湯温、例えば40℃において連続出湯した場合にどれだけの湯量が使用できるかを示す使用可能湯量に換算し、そのデータを表示手段46に送って数値表示またはグラフ表示等で使用者に判り易く報知する。
【0100】
以上のように、貯湯タンク1に蓄えられている有効残湯量が標準的な使用条件でどれだけの湯量が使用できるかを求めた後、負荷側で消費される湯量を同一条件で求め、減算処理を行うことで、湯量の消費状態に連動した使用可能湯量の変化をリアルタイムに求める。まず、ステップ105でカラン24からの出湯があるか否かを判定し、ある場合はステップ106で流量検知器22と出湯温検知器21で検出される流量と出湯温度からカラン
出湯により消費した熱量を演算し、ステップ107で消費熱量から使用可能湯量を求めたときと同一条件の湯温でどれだけの湯量を使用したことになるかを示す値に換算して使用湯量を求める。そして、ステップ108で減算処理を施し使用可能湯量の補正を行った後、ステップ109で使用可能湯量の更新を行い、そのデータを表示手段46に送って表示データの更新を行う。
【0101】
また、ステップ105でカラン出湯がないと判定した場合は、ステップ110で湯張り回路19aへの出湯があるか否かを判定し、ある場合はステップ111で流量検知器18と出湯温検知器16で検出される流量と出湯温度から湯張り出湯により消費した熱量を演算し、ステップ112で消費熱量から使用可能湯量を求めたときと同一条件の湯温でどれだけの湯量を使用したことになるかを示す値に換算して使用湯量を求める。そして、ステップ108で減算処理を施し使用可能湯量の補正を行った後、ステップ109で使用可能湯量の更新を行い、そのデータを表示手段46に送って表示データの更新を行う。
【0102】
また、ステップ110で湯張り出湯がないと判定した場合は、ステップ113で追い焚き出湯があるか否かを判定し、ある場合はステップ114で風呂熱交換器26で消費される熱量を演算し、ステップ115で消費熱量から使用可能湯量を求めたときと同一条件の湯温でどれだけの湯量を使用したことになるかを示す値に換算して使用湯量を求める。そして、ステップ108で減算処理を施し使用可能湯量の補正を行った後、ステップ109で使用可能湯量の更新を行い、そのデータを表示手段46に送って表示データの更新を行う。
【0103】
また、ステップ109で使用可能湯量のデータ更新が行われた後は、ステップ116で沸き上げ運転が行われたか否かを判定し、行われた場合はステップ117で設定された沸き上げ条件に基づき沸き上げ量を演算し、ステップ118で沸き上げ量から使用可能湯量を求めたときと同一条件の湯温でどれだけの湯量を供給したことになるかを示す値に換算して追加使用可能湯量を求める。そして、ステップ119で加算処理を施し使用可能湯量の補正を行った後、ステップ120で使用可能湯量の更新を行い、そのデータを表示手段46に送って表示データの更新を行う。
【0104】
そして、ステップ121で有効残湯量の変化を監視し、変化ありと判断した場合はステップ101に戻って再度有効残湯量の検出ステップから使用可能湯量の演算を行い、表示データとの誤差を検証する。誤差が発生した場合は、所定のタイミングで表示データの調整を行うようにしている。具体的には、湯量演算手段40により使用可能湯量の再計算が行われ表示データとのマイナス誤差がある場合は、給湯湯量演算手段41、湯張り量演算手段42,追い焚き湯量演算手段43で構成される使用量演算手段により減算補正が行われるときに、マイナス誤差分のうち所定量を限度として減算補正量に加えて補正するようにし、表示データとのマイナス誤差を徐々に調整することで、使用可能湯量の表示精度を高めるようにしている。また、表示データとのプラス誤差がある場合は、沸き上げ湯量演算手段44で構成する供給量演算手段により加算補正が行われるときに、プラス誤差分のうち所定量を限度として加算補正量に加えて補正するようにし、表示データとのプラス誤差を徐々に調整することで、使用可能湯量の表示精度を高めるようにしている。
【0105】
また、ステップ121で有効残湯量の変化がないと判定した場合及びステップ116で沸き上げ運転がないと判定した場合は、ステップ105に戻って負荷側の使用状態を監視するようにしている。
【0106】
また、ステップ101で有効残湯量がないと判定した場合およびステップ113で追い焚き出湯なしと判定した場合は、ステップ116に進み、沸き上げ運転の状態を監視するようにしている。
【0107】
以上のように、貯湯タンクに蓄えられた湯水が保有する熱量を求め、その熱量から標準的に使用される湯温(例えば40℃)において連続出湯した場合にどれだけの湯量が使用できるかを示す使用可能湯量に換算し表示するようにしているため、貯湯タンクの大きさに関係なく、現在蓄えられている貯湯量で標準的な使用条件において、どれだけ使用できるかを容易に判断することができ、使用可能湯量に応じた適正な使い方が可能となる。また、負荷経路に接続された給湯カラン24、風呂湯張り回路19a、風呂追い焚き回路29aで消費される熱量をそれぞれ求め、その熱量から使用可能湯量を求めたときと同条件の湯温(例えば40℃)においてどれだけの湯量を使用したことになるかを示す使用湯量に換算し、使用可能湯量から使用湯量を減算処理して表示するようにしているため、負荷経路の消費状態に連動して現在の使用可能湯量の変化をリアルタイムに確認することができ、使用者はその変化を見ながら残りどれだけ使用できるかを容易に確認することができ、使い勝手の向上を図ることができる。さらに、貯湯量が減少し加熱手段が動作して追加沸き上げ運転が開始されると、加熱手段14から供給される熱量を求め、その熱量から使用可能湯量を求めたときと同条件の湯温(例えば40℃)においてどれだけの湯量が供給されたかを示す追加使用可能湯量に換算し、使用可能湯量に追加使用可能湯量を加算処理して表示するようにしているため、加熱手段14の沸き上げ運転状態に応じて現在の使用可能湯量の変化をリアルタイムに確認することができ、使用者はその変化を見ながら残りどれだけ使用できるかを容易に確認することができ、使い勝手の向上を図ることができる。
【0108】
つまり、貯湯タンク1に蓄えられた熱量、負荷側で使用される熱量、加熱手段から供給される熱量に基づいて、それぞれ同一条件で標準的な使用温度における湯量に換算し、減算・加算処理を行って最新の使用可能湯量をリアルタイムに求め、表示するようにしているため、貯湯タンクの大きさに関係なく、現在の使用可能湯量を実際に使用する温度条件またはそれに近い値として知ることができ、使用者はその値を見るだけで直感的に貯湯タンク内に残っている湯水の使用状況を把握することができるので、使い勝手を飛躍的に向上させることができる。
【0109】
よって、貯湯タンクの容量が、例えば一般的な浴槽の容積(200L)より小さい150L程度のものであっても、使用可能湯量としては300Lと求め、その値を表示することができるため、使用者はその値を見て浴槽への湯張りが可能であると判断でき、浴槽への湯張りが終わった後は使用可能湯量が100Lに減ったことをリアルタイムに確認することができ、さらに、沸き上げ動作が開始された場合は、100Lから徐々に使用可能湯量が増加している状況をリアルタイムに確認することができ、特に、貯湯タンクの容量が小さい貯湯式給湯装置の残湯量確認装置としては最適なものである。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明の貯湯式給湯装置は、特に冷媒として二酸化炭素を用いたヒートポンプサイクルを利用した貯湯式給湯装置に有用であり、その他ヒータやガスを熱源とする貯湯式給湯装置にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明の実施の形態1による貯湯式給湯装置の全体構成を示すブロック図
【図2】同貯湯式給湯装置の湯切れ沸き上げ運転の動作を示す図
【図3】同貯湯式給湯装置の制御フロー図
【図4】同貯湯式給湯装置の残湯量演算フロー図
【図5】同貯湯式給湯装置の表示手段を有するリモコン構成図
【図6】同貯湯式給湯装置のタンク湯量と表示湯量の関係を示す図
【符号の説明】
【0112】
1 貯湯タンク
14 加熱手段
19 風呂湯張り手段(負荷回路)
25 給湯手段(負荷回路)
29 風呂追い焚き手段(負荷回路)
34 湯切れ使用可能湯量設定手段
40 湯量演算手段
41 給湯湯量演算手段(使用量演算手段)
42 湯張り量演算手段(使用量演算手段)
43 追い焚き湯量演算手段(使用量演算手段)
44 沸き上げ湯量演算手段(供給量演算手段)
45 使用可能湯量算出手段




【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯湯タンクと、前記貯湯タンクの湯水を負荷側に供給する負荷経路と、前記貯湯タンクの湯水を加熱する加熱手段と、前記貯湯タンクの湯水が保有する熱量から所定温度における使用可能湯量を演算する湯量演算手段と、前記負荷経路より流出する熱量から所定温度に換算した使用湯量を演算する使用量演算手段と、前記加熱手段より流入する熱量から所定温度に換算した追加使用可能量を演算する供給量演算手段と、前記湯量演算手段と前記使用量演算手段と前記供給量演算手段の演算結果より求められる湯量に基づき使用可能湯量を算出する使用可能湯量算出手段を備え、全量沸き上げ運転を行う時間帯を設定するとともに、前記使用可能湯量算出手段で所定の使用可能湯量を算出した場合に湯切れ沸き上げ運転を行うことを設定した貯湯式給湯装置であって、前記湯切れ沸き上げ運転の開始を判定する起動使用可能湯量を時間別に任意の値に設定する湯切れ使用可能湯量設定手段を有し、前記湯切れ使用可能湯量設定手段で設定された起動使用可能湯量と前記使用可能湯量算出手段で算出された使用可能湯量に基づいて前記加熱手段の起動制御を行うようにした貯湯式給湯装置。
【請求項2】
湯量演算手段は、貯湯タンクに設けた複数の温度検出器で検出される温度から各層毎に保有する熱量を求め所定温度に換算した使用可能湯量を演算すると共に、前記温度検出器で検出される温度が予め定めた判定温度以下の場合は、残湯無しと判断して使用可能湯量に加算しないようにした請求項1記載の貯湯式給湯装置。
【請求項3】
湯量演算手段は、貯湯タンク上部の所定湯量を残して使用可能湯量の演算を行うようにした請求項1または2記載の貯湯式給湯装置。
【請求項4】
湯量演算手段は、温度検出器で検出される温度と残湯の有無を判断する判定温度より、残湯あり/なし情報が切り替わったことを検出したとき、使用可能湯量の演算を行うようにした請求項1〜3のいずれか1項記載の貯湯式給湯装置。
【請求項5】
使用量演算手段は、負荷経路に設けた流量検知器と出湯温検知器で検出される流量及び出湯温度から流出する熱量を求め所定温度に換算した使用量を演算すると共に、湯量演算手段で求めた使用可能湯量の減算補正を行うようにした請求項1〜4のいずれか1項記載の貯湯式給湯装置。
【請求項6】
使用量演算手段は、負荷経路に設けた風呂追い焚き回路で使用される熱量を求め所定温度に換算した使用量を演算すると共に、湯量演算手段で求めた使用可能湯量の減算補正を行うようにした請求項1〜4のいずれか1項記載の貯湯式給湯装置。
【請求項7】
供給量演算手段は、沸き上げ動作が開始されたとき、所定時間毎の沸き上げ量を求め所定温度に換算した供給湯量を演算すると共に、湯量演算手段で求めた使用可能湯量の加算補正を行うようにした請求項1〜4のいずれか1項記載の貯湯式給湯装置。
【請求項8】
供給量演算手段は、能力可変な加熱手段への入水温度に応じて加熱能力を変更して所定時間毎の沸き上げ量を求め所定温度に換算した供給湯量を演算するようにした請求項7記載の貯湯式給湯装置。
【請求項9】
供給量演算手段は、能力可変な加熱手段の沸き上げ運転モードに応じて加熱能力を変更して所定時間毎の沸き上げ量を求め所定温度に換算した供給湯量を演算するようにした請求項7記載の貯湯式給湯装置。
【請求項10】
使用可能湯量算出手段は、湯量演算手段で求めた使用可能湯量に対して、使用量演算手段
で求めた使用量で減算補正を行うと共に、供給量演算手段で求めた供給湯量で加算補正を行うことで、現在の使用可能湯量を常に更新するようにした請求項1〜9のいずれか1項記載の貯湯式給湯装置。
【請求項11】
湯切れ使用可能湯量設定手段は、風呂湯張り動作が行われる時間帯において起動使用可能量が最も多くなるように設定した請求項1〜10のいずれか1項記載の貯湯式給湯装置。
【請求項12】
加熱手段は、圧縮機、放熱器、膨張弁、及び蒸発器を配管で接続したヒートポンプサイクルとし、全量沸き上げ運転時よりも湯切れ沸き上げ運転時に、前記圧縮機の能力を高くすることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項記載の貯湯式給湯装置。
【請求項13】
加熱手段は、圧縮機、放熱器、膨張弁、及び蒸発器を配管で接続したヒートポンプサイクルとし、前記ヒートポンプサイクルに用いる冷媒を二酸化炭素とし、高圧側では臨界圧を越える状態で運転することを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項記載の貯湯式給湯装置。


【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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