説明

貯湯式電気温水器

【課題】限られた設置スペースに設置可能で貯湯タンク内の水や湯の沸き上げ性や湯の押し出し性に優れた貯湯式電気温水器を提供する。
【解決手段】貯湯タンク10と、貯湯タンクの所定位置に備わった入水部11と、貯湯タンクの入水部とは異なる位置に備わった出湯部12と、貯湯タンク内の入水部近傍から出湯部近傍に亘って複数の流路を形成するように設けられた仕切り構造体20とを有した貯湯式電気温水器であって、貯湯式電気温水器が設置された状態で貯湯タンクの上下方向の高さより横方向の長さが長くなるように当該貯湯タンクが備わった貯湯式電気温水器において、少なくとも一部の隣接する流路が連通するように当該仕切り構造体に連通開口部25が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、限られた設置スペースに設置可能な横置き型の貯湯式電気温水器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から建物の壁などに縦長の状態で設置され、貯湯タンクの下部から水を入れて上部から沸き上がった湯を出す貯湯式電気温水器が広く用いられてきた。設置状態で貯湯タンクがこのように縦長となった理由は、貯湯タンクの下部から入った水が温められると湯と水の密度差により湯が自然に上昇する作用を利用して湯の押出し性、即ち高温の湯を安定して押し出す性能を高めているためである。そして、近年、例えばトイレルーム内などの手洗い用の蛇口に温水を供給するために、トイレルーム内に電気温水器が直接設置されることが多くなっている。
【0003】
トイレルームへの貯湯式電気温水器の設置に際して、トイレルーム内のインテリア性としての美観や統一感を損なわないために、貯湯式電気温水器自体を従来のように壁面に縦長の状態で直接設置する代わりに、例えば図13に点線で示すように洗面器カウンタやキャビネットの裏面でトイレルーム内から目に付かない場所に貯湯タンク50を寝かせた状態で設置されることが望まれている。
【0004】
なお、このような貯湯タンク50を寝かせた状態で設置する態様は、例えばキッチンカウンタの下面やキッチンキャビネットのケコミ部などに貯湯式電気温水器を設置する場合にも適用でき、これによってキッチンルームの壁面に貯湯式電気温水器を設置しなくて済み、キッチンルームの美観やインテリア性を向上できるので、このような設置形態は広く望まれている。
【0005】
このような寝かせた状態で設置される貯湯式電気温水器の場合、これをカウンタ下面などの狭いスペースに設置するためには、貯湯タンク50をかなり扁平の薄型形状にする必要がある。しかしながら、上下方向の高さを低くして扁平にした横長の貯湯タンク50を有する貯湯式電気温水器の場合、貯湯量一定で単純に高さを低くすると、設置状態で貯湯タンク50が水平方向に広くなるため、湯と水が接する面が広くなって湯と水が混合し易くなる。そこで、このような薄型の貯湯タンクを備えた寝かせ置き式の貯湯式電気温水器の押し出し性を改善した特別な構成も考えられている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
かかる特許文献1に記載の貯湯式電気温水器は、図14に示すように、貯湯タンク50の内部に細長い隙間を有するハニカム体51を設け、貯湯タンク内の各流路断面積を小さくすることで、給水時に水が湯と混ざらずに湯を高温のまま出湯部側に押し出すようにしている。
【特許文献1】特開平7−12405号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような構成を有する従来型の貯湯式電気温水器によると湯の押し出し性は向上するが、各流路内の水や湯はハニカム体51の隔壁で遮断されているため、貯湯タンク内に沸き上げ用のヒータを備えた場合、貯湯タンク内の水や湯の沸き上げは、ハニカム体51を介した各流路間の熱伝導か又はハニカム体51の両端部51a,51bと貯湯タンク50の両端壁部50a,50bとの間にそれぞれ形成された僅かな対流空間X,Y内での水や湯の対流に加えて、例えば空間XとYと上下のハニカム流路を通じた貯湯タンク内周壁近傍に沿った大きな迂回経路の対流によって行われる。しかしながら、ハニカム体51を介した各流路間の熱伝導では十分な熱が伝わらず、貯湯タンク50の両脇の対流空間X,Yのみの対流及び空間XとYとハニカム流路を通じた貯湯タンク内周壁近傍に沿った大きな迂回経路の対流による伝熱では、各流路での対流に差が生じ、流路内の水やぬるま湯がよどむ場所が生じる可能性があり、貯湯タンク内での効率的な沸き上げが行われない。そのため、出湯部53からの湯の出湯量が多い場合、貯湯タンク内の水を再び沸き上げるために時間がかかり、使い勝手の悪い貯湯式電気温水器となってしまう。
【0008】
また、このような沸き上げ性の問題を解決するために、図15に示すようなヒータ60と循環ポンプ61を貯湯タンク50の外側に設けてヒータ60で湯を沸き上げ、この沸き上げた湯を循環ポンプ61と循環パイプ62で貯湯タンク内に供給すると共に貯湯タンク内の水を循環パイプ63でヒータ60に戻して加熱する構造も考えられている。
【0009】
しかしながら、このような構造では貯湯式電気温水器全体の大きさが大型化するので、例えば図13に示すようなトイレルームやキッチンのカウンタ下部の限られた収容スペースに貯湯式電気温水器を収容する場合にかなり大きな収容スペースを占有し、本来これらの収容スペースに収容すべきその他の備品等が収容できなくなってしまう。
【0010】
本発明の目的は、限られた設置スペースに設置可能な横置き型の貯湯式電気温水器であって貯湯タンク内の水や湯の沸き上げ性や湯の押し出し性に優れた貯湯式電気温水器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、本発明にかかる貯湯式電気温水器は、
貯湯タンクと、前記貯湯タンクの所定位置に備わった入水部と、前記貯湯タンクの前記入水部とは異なる位置に備わった出湯部と、前記貯湯タンク内の入水部近傍から出湯部近傍に亘って複数の流路を形成するように設けられた仕切り構造体とを有した貯湯式電気温水器であって、前記貯湯式電気温水器が設置された状態で前記貯湯タンクの上下方向の高さより横方向の長さが長くなるように当該貯湯タンクが備わった貯湯式電気温水器において、
前記少なくとも一部の隣接する流路が連通するように当該仕切り構造体に連通開口部が設けられていることを特徴としている。
【0012】
貯湯式電気温水器がこのようないわゆる横置き式となっていても、仕切り構造体により独立した複数の流路が形成されると共に、各流路の断面積が小さくなることにより、貯湯タンクの湯の押し出し性が向上する。
【0013】
また、仕切り構造体にこのような連通開口部を設けることで少なくとも一部の隣接する流路間でも水や湯の対流を生じ、連通開口部がない場合と比較して、流れに乱れが生じ、3次元的に複雑な対流となる。これによって、ヒータに近い流路からヒータから離れた流路間への熱の伝達がよりスムーズに行われ、貯湯タンク内の水やぬるま湯を効率良く沸き上げることができる。
【0014】
また、本発明の請求項2に記載の貯湯式電気温水器は、請求項1に記載の貯湯式電気温水器において、
前記連通開口部が形成された流路において当該連通開口部が当該流路の一部に形成されるか、当該流路の全体に亘って形成されていることを特徴としている。
【0015】
このような連通開口部が流路の一部に形成されるか、流路の全体に亘って形成されることで、貯湯タンク内の湯の押し出し性と水や湯の沸き上げ性のバランスを調整し、水の沸き上げから湯の押し出しを通じた全体の性能が最も良くなるように貯湯式電気温水器の仕様を適宜変更することができる。
【0016】
また、本発明の請求項3に記載の貯湯式電気温水器は、請求項1又は請求項2に記載の貯湯式電気温水器において、
前記連通開口部が形成された流路において当該連通開口部を2箇所以上設けたことを特徴としている。
【0017】
連通開口部を設けた流路においてこの連通開口部を2箇所以上設けることで、この連通開口部を介して上下方向の対流が更に複雑になり、水やぬるま湯が貯湯タンク内でよどむ部分を少なくでき、水やぬるま湯の沸き上げ性が向上する。
【0018】
また、本発明の請求項4に記載の貯湯式電気温水器は、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の貯湯式電気温水器において、
前記連通開口部を前記仕切り構造体の各流路に設けることによって前記貯湯タンク内の各流路を全て連通するようにしたことを特徴としている。
【0019】
このような連通開口部を設けることで、この連通開口部への水やぬるま湯の流入、流出により貯湯タンク内の流入部近傍、流出部近傍、及び仕切り構造体の上下の流路を介した貯湯タンク内周壁近傍に沿った大きな迂回経路の対流も促進させる。このように貯湯タンク内全体で水や湯の対流を生じさせることで、貯湯タンク内の水やぬるま湯を更に効率良く沸き上げることができる。
【0020】
また、本発明の請求項5に記載の貯湯式電気温水器は、請求項1乃至請求項4の何れかに記載の貯湯式電気温水器において、
前記仕切り構造体で形成される各流路の端部開口部が、前記貯湯式電気温水器の設置状態で水平方向より下向きに開口し、前記貯湯タンク内で自然対流により上昇した湯が当該端部開口部を介して前記各流路内に流入するようになったことを特徴としている。
【0021】
仕切り構造体で形成される各流路の端部開口部がこのような構造を有することで、貯湯タンク内の湯の上昇流を仕切り構造体で形成される各流路内に積極的に導くことができ、貯湯タンク内全体の水やぬるま湯を簡単な構造でより効率良く沸き上げることができる。
【0022】
また、本発明の請求項6に記載の貯湯式電気温水器は、請求項1乃至請求項5の何れかに記載の貯湯式電気温水器において、
前記仕切り構造体で形成される各流路の端部開口部のうち貯湯式電気温水器の設置状態で上側となる端部開口部が下側の端部開口部よりも水平方向に突出するようになっていることを特徴としている。
【0023】
仕切り構造体で形成される各流路の端部開口部がこのような構造を有することで、貯湯タンク内の湯の上昇流を仕切り構造体で形成される各流路内に積極的により隈なく導くことができ、貯湯タンク内全体の水や湯を簡単な構造でより効率良く沸き上げることができる。
【0024】
また、本発明の請求項7に記載の貯湯式電気温水器は、請求項6に記載の貯湯式電気温水器において、
前記仕切り構造体で形成される各流路の端部開口部に加えて当該各流路の水平方向に突出した部分の下側に対流促進用開口部が設けられ、前記貯湯タンク内で自然対流により上昇した湯が当該対流促進用開口部を介して前記各流路内に流入するようになったことを特徴としている。
【0025】
仕切り構造体で形成される各流路の水平方向に突出した部分の下側にこのような対流促進用開口部を有することで、貯湯タンク内の湯の上昇流を各仕切り管内へ積極的により隈なく導くことができ、貯湯タンク内全体の水やぬるま湯を簡単な構造でより効率良く沸き上げることができる。
【0026】
また、本発明の請求項8に記載の貯湯式電気温水器は、請求項1乃至請求項6の何れかに記載の貯湯式電気温水器において、
前記ヒータが、前記貯湯式電気温水器の設置状態で前記仕切り構造体よりも下側に設置されていることを特徴としている。
【0027】
ヒータを仕切り構造体よりも下側となるように設置することで、いわゆる死に水と呼ばれる貯湯タンク内のヒータより下側にあって対流に取り残された沸き上がり難い水の容量を少なくでき、貯湯タンク内の水やぬるま湯をより効率良く沸き上げることができる。
【0028】
なお、ヒータ加熱による対流はヒータの僅かに下の面まで生じるため、設置状態におけるヒータ下面が仕切り構造体の下面と同じかそれ以下であれば、多くの流路を占める仕切り構造体の各流路内の水やぬるま湯はヒータ加熱による対流の中に配置されることになり、いわゆる死に水を少なくでき、効率良く沸き上げることができる。
【0029】
また、本発明の請求項9に記載の貯湯式電気温水器は、請求項1乃至請求項8の何れかに記載の貯湯式電気温水器において、
前記貯湯式電気温水器の設置状態で前記入水部が前記出湯部よりも低い位置になるように前記貯湯タンクに備わり、かつ前記貯湯タンクの入水部側の下面が出湯部側の下面よりも低くなったことを特徴としている。
【0030】
いわゆる横置き式の貯湯式電気温水器の場合、全体が扁平型をなしているので、入水部から入った水が貯湯タンク内の底面全体に拡がり易く、その結果、出湯部側にこの水が達して出湯部からの湯と混ざり合う虞があるが、貯湯タンクがこのような構成を有することで、貯湯タンク内の水や湯が対流する時に比重の違いで貯湯タンク内上部に向かって常に上昇していく高温の湯のみを出湯部に確実に導くことができ、貯湯タンク内の湯の押し出し性をより向上させる。
【0031】
また、本発明の請求項10に記載の貯湯式電気温水器は、請求項1乃至請求項9の何れかに記載の貯湯式電気温水器において、
前記貯湯タンクを複数備え、連結パイプを介して当該各貯湯タンクを互いに直列又は並列に連結したことを特徴としている。
【0032】
複数の貯湯タンクをこのように連結することで、貯湯式電気温水器の全体形状の自由度を高めながら貯湯容量を大きくすることができ、貯湯式電気温水器の限られた設置スペースに貯湯容量のより大きい貯湯式電気温水器を設置できる。なお、複数の貯湯タンクを連結パイプで直列に連結した場合、並列に接続した場合に比べて流速が速くなるため、湯の押し出し中に湯水が混ざり難くなり、押し出し性が向上する。
【発明の効果】
【0033】
本発明によると、限られた設置スペースに設置可能な横置き型の貯湯式電気温水器であって貯湯タンク内の水や湯の沸き上げ性や湯の押し出し性に優れた貯湯式電気温水器を提供することができる。
【0034】
より具体的には、貯湯式電気温水器が横置き式となっていても、仕切り構造体により独立した複数の流路が形成されると共に、各流路の断面積が小さくなることにより、貯湯タンクの湯の押し出し性が向上する。
【0035】
また、仕切り構造体に少なくとも一部の隣接する流路が連通する連通開口部を設けることで、これらの流路間でも水や湯の対流を生じ、連通開口部がない場合と比較して、流れに乱れが生じ、3次元的に複雑な対流となる。これによって、ヒータに近い流路からヒータから離れたから流路間への熱の伝達がよりスムーズに行われ、貯湯タンク内の水やぬるま湯を効率良く沸き上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の一実施形態にかかる貯湯式電気温水器について図1乃至図3に基づいて説明する。本発明の一実施形態にかかる貯湯式電気温水器1は、貯湯式電気温水器が設置された状態で貯湯タンクの上下方向の高さより横方向の長さが長くなるように当該貯湯タンクが配置される(以下、これを単に「横置き式」とする)ようになっている。そして、貯湯式電気温水器1は、図1に示すように、両端部が入水部11と出湯部12を除いて閉塞した略円筒体形状を有する貯湯タンク10と、貯湯タンク10の一方の端部に設けられた入水部11と、貯湯タンク10の他方の端部に設けられた出湯部12と、貯湯タンク10の内部に設けられ、貯湯タンク10の設置状態で貯湯タンク内に収容され、タンク長手方向に所定長さを有する複数の横板21と本実施形態では一枚の縦板22をタンク端面視で格子状となるように配置して構成された仕切り構造体20と、同じく貯湯タンク10の内部に設けられたヒータ30と、同じく貯湯タンク10の外側に設けられた図示しない温度センサを備えている。なお、仕切り構造体20の横板21の左右縁部と縦板22の上下縁部がそれぞれ貯湯タンク10の内周壁に例えば溶接等で固定されている。また、仕切り構造体20の各横板21、縦板22、及び貯湯タンク10の内周壁とで仕切られた細長の空間のそれぞれが貯湯タンク内で独立した流路を形成している。なお、本実施形態では、縦板22が一枚であるが、複数枚の縦板で構成されていても良いことは言うまでもない。また、仕切り構造体20はタンク10内に挿入固定しても良い。
【0037】
そして、貯湯タンク10は、ここでは図示しない筐体内に収容されている。筐体には、貯湯タンク10の他に貯湯タンク10の入水部11又は出湯部12とこれらに接続される配管との間に介在する図示しない開閉バルブと、ヒータ30を駆動する図示しないヒータ駆動制御部が備わっている。
【0038】
貯湯タンク10は、ステンレス鋼(SUS)などの金属でできているが、この代わりに耐熱性の樹脂でできていても良い。又、貯湯タンク内に収容された仕切り構造体20もSUSでできているが、これも耐熱性樹脂でできていても良い。貯湯タンク10や仕切り構造体20を金属製とした場合、これらの耐熱性や耐圧性を高めることができる。一方、貯湯タンク10や仕切り構造体20を樹脂製とした場合、これらの成型コストを低減できる。
【0039】
そして、本実施形態における貯湯タンク10の場合、仕切り構造体20は、上述したように貯湯タンク10の内周壁と協働して貯湯タンク内の入水部側から出湯部側に向かう複数の流路を形成することに加えて、仕切り構造体によって形成される各流路の適所に連通開口部25を設け、この連通開口部25を介してその流路と隣接する流路とを一部連通させている。本実施形態の場合、貯湯式電気温水器の設置状態で連通開口部25は、図1に示すように水平方向に向かって開口した仕切り構造体20の縦板22の各流路を形成する部分にそれぞれ設けられ、鉛直方向に向かって開口した連通開口部25は、図2に一部を示すように、仕切り構造体20の横板21の各流路を形成する両端部近傍(図2では一方の端部近傍の連通開口部25のみを図示)にそれぞれ備わっている。
【0040】
なお、本実施形態では、鉛直方向に向かって開口した連通開口部25は仕切り構造体20の両端部近傍にある構成を有しているが、仕切り構造体の長さが長い場合は仕切り構造体の長手方向中央付近に連通開口部があることが好ましい。この理由は、連通開口部は仕切り構造体内のよどみを少なくするため、それらのよどみ位置付近に開口するのが好ましく、仕切り構造体が長い場合は仕切り構造体の中央付近に対流の少ないよどみ部を生じ易いので、中央付近にある方が、貯湯タンク内の水やぬるま湯を効果的に沸き上げることができるからである。
【0041】
仕切り構造体20の各流路を形成する部分の適所にこのような連通開口部25が形成されることで、貯湯式電気温水器1の設置状態で各連通開口部25を介して貯湯タンク間で水や湯が上下に対流可能となっている。すなわち、仕切り構造体20によって貯湯タンク内での水や湯の複数の流路を形成すると共に、各連通開口部25を介してこれらの流路間を連通し、貯湯タンク内全体での水や湯の対流を可能としている。なお、各流路において本実施形態の場合、2つ以上の連通開口部25が設けられていることで、この連通開口部25を介して上下方向の対流が更に複雑になり、水やぬるま湯が貯湯タンク内でよどむ部分を少なくでき、水やぬるま湯の沸き上げ性が向上する。
【0042】
また、ヒータの設置位置が貯湯タンクの底部中央近傍ではなく、左右に偏って設置された場合においても、この連通開口部により左右方向に対しても対流を促進させることができる。即ち、ヒータの設置位置が貯湯タンクの中心部分であるか左右何れかに偏って配置されているかに係わらず、貯湯タンク内の水やぬるま湯の沸き上げ性を十分に確保できる。
【0043】
また、仕切り構造体20は、その両端部が貯湯タンク10の両端壁よりも若干引っ込むように貯湯タンク内に収容され、これによって仕切り構造体20の一方の端部(図1中左側端部)と貯湯タンク10の入水部側端壁の間には一定の容積を有した対流用空間Aが形成され、かつ仕切り構造体20の他方の端部(図1中右側端部)と貯湯タンクの出湯部側端壁の間にも一定の容積を有した対流用空間Bが形成されている。
【0044】
そして、貯湯タンク10のこれら両端の対流用空間A,Bのみならず、これに加えて一方の対流用空間A(B)から上下の仕切り構造体20を介して他方の対流用空間B(A)に至る貯湯タンク内周壁近傍に沿った大きな迂回経路、並びに仕切り構造体の適所に形成された連通開口部25を介して貯湯タンク内の水又は湯がタンク内で全体的に対流するようになっている。
【0045】
また、貯湯タンク内のヒータ30は、仕切り構造体20と同様の長さを有する棒状体からなり、内部にニクロム線等の発熱体を有すると共に、その外側が防水性に優れた絶縁体で完全に囲繞され、貯湯式電気温水器1の設置状態で貯湯タンク10によって支持され、貯湯式電気温水器1の設置状態で仕切り構造体20の下部と貯湯タンク10の底面とで挟まれ貯湯タンク10の底部近傍(図1中下側部分)、即ち貯湯式電気温水器1の設置状態で仕切り構造体20の下側に配置されるようになっている。
【0046】
そして、仕切り構造体20とヒータ30が上述のように同様の長さを有することで、このようなヒータ30により加熱することで貯湯タンク全体10に亘って対流を生じさせることができ、仕切り構造体内外の水と湯の対流を最も効果的に生じさせ、貯湯タンク内で湯を均等に沸き上げることを可能としている。また、ヒータ30の長さをこのように長くすることで、単位表面積あたりの出力(ワット密度)を下げることによりヒータ表面での局所沸騰を抑制でき、ヒータ表面の腐食やスケールの付着などを抑制することでヒータの耐久性を向上させることができる。更に、局所沸騰によって沸騰音が発生する可能性を低く抑えている。
【0047】
なお、上述の実施形態のようにヒータ30は貯湯タンク10の長手方向全体に亘って延在していなくても良い。即ち、ヒータ長さを仕切り構造体20より短くした状態で貯湯タンク内にヒータを設置しても良い。この場合、ヒータが撓み難くなり、貯湯式電気温水器の運搬中の耐振性を向上させることで貯湯式電気温水器の信頼性が向上する。
【0048】
また、図示しない温度センサは、例えばバイメタルなどの感温素子でできており、貯湯式電気温水器1の設置状態で貯湯タンクの上部外側面に直接接触するように取り付けられ、貯湯タンク内の湯が一定の温度以下であることを検知したとき、ヒータ制御回路にこれを知らせ、ヒータ制御回路の制御によりヒータ30を適宜加熱して本実施形態では貯湯タンク内の湯を約85℃程度に保つようにしている。
【0049】
なお、本実施形態における「沸き上げ」とは、貯湯タンク内の水や比較的温度の低い所謂ぬるま湯を加熱して貯湯タンク内の湯が全体的に約85℃程度になるようにすることを言うが、貯湯式電気温水器の各種仕様に応じてこの沸き上げ温度は適宜変更されることは言うまでもない。
【0050】
続いて、上述した構成を有する貯湯式電気温水器1の設置の仕方と貯湯式電気温水器1を実際に使用した場合の作用について説明する。貯湯式電気温水器1を設置するに当って、この貯湯式電気温水器1を例えば図13に示すトイレルームのカウンタの下部やキッチンのカウンタのケコミ部に貯湯タンク10の上下方向の高さより横方向の長さが長くなるように横置き状態で設置する。
【0051】
そして、貯湯タンク10の入水部11に水道水の一次側に至る配管を接続すると共に、出湯部12に蛇口と連結された混合バルブの一方に至る配管を接続する。なお、本実施形態による貯湯式電気温水器1は、従来型の横置き式貯湯式電気温水器と異なり、貯湯タンク10の外部にヒータや循環ポンプ、循環パイプを設けた構成をとっていないので、全体的に小型となり、上述のような場所に横置き状態で設置しても省スペースを十分に保つことができる。
【0052】
次いで、蛇口を開くことで入水部11を介して水道水からの水を貯湯タンク10に貯め込み、貯湯タンク10を水で満たす。次に電源を入れて、ヒータ制御回路を介して貯湯タンク内のヒータ30を作動させる。
【0053】
そして、貯湯式電気温水器1の貯湯タンク内に満たされた水がヒータ30によって上述したように約85℃まで加熱されて沸き上げられる。その後、使用者が蛇口を開くと水圧により水道水の一次側配管から入水部11を介して貯湯タンク内に水が供給される。これにより、この供給された分だけ貯湯式電気温水器1の出湯部12からこの沸き上がった湯が押し出され、混合栓を介して水と混合されて適当な温度の温水として蛇口から使用者に供給されると共に、この供給された分だけ水道水の一次側配管から入水部11を介して貯湯タンク内に水が供給される。
【0054】
この時、貯湯タンクに備わった温度センサが内部の温度を検知し、所定温度以下になったことを検知すると、ヒータ制御回路を介して貯湯タンク内のヒータ30を作動させ、再度沸き上げる。
【0055】
このように貯湯タンク内の湯が押し出されるに当たって、仕切り構造体20に仕切られたそれぞれ断面積の小さい狭い複数の流路が形成されているため、入水部11から貯湯タンク内に入った水が湯に混ざることなく、貯湯タンク10の湯の良好な押し出し性を確保する。
【0056】
また、本実施形態の貯湯式電気温水器1の場合、ヒータ30の発熱により加熱される貯湯タンク内の水や湯は、貯湯タンク10の両端壁部と仕切り構造体20の両端部との間の対流空間A,B、及び一方の対流用空間A(B)から上下の仕切り構造体20を介して他方の対流用空間B(A)に至る貯湯タンク内周壁近傍に沿った大きな迂回経路での対流に加えて、仕切り構造体20の各流路に形成された連通開口部25を介しても貯湯タンク内で上下方向に対流するようになっているので、貯湯タンク内の水や湯を全体的に対流させることができる。そのため、従来型の貯湯式電気温水器のように、貯湯タンク内のヒータ加熱時に貯湯タンク内に備わったハニカム体51の両端部と貯湯タンク50の両端壁部との間の限られた対流空間X,Y(図14参照)における対流、及び空間Xと空間Yと上下のハニカム流路を通じた貯湯タンク内周壁近傍に沿った経路の大きい対流だけで貯湯タンク内の水や湯が対流する場合に比べて貯湯タンク内の水や湯の沸き上げ性を遥かに高めることができる。
【0057】
なお、仕切り構造体20の連通開口部25は仕切り構造体20の端部からその長手方向内側に亘って一部延在する切欠き状のものであっても良く、本実施形態の連通開口部25のように矩形状を有する代わりに長孔等の形状を有していても良い。
【0058】
また、仕切り構造体20の長手方向全体に亘って連通開口部を設けても良い。なお、仕切り構造体20の長手方向全体に亘って連通開口部を設けると、構造上仕切り構造体を一体化し難くなるが、この場合は仕切り構造体の長手方向両端部かその近傍を特別な支持体を介して貯湯タンクの内周壁に支持すれば解決できる。このような支持体を用いることで貯湯タンクへの仕切り構造体の組み付け時のハンドリングを向上させることができる。
【0059】
なお、上述の実施形態において、複数の横板21と縦板22を端面視で格子状に配置した仕切り構造体20を組み付けるに当たって、予め連通開口部25を有する板と連通開口部25を有さない板をそれぞれ別体として作り、これらを上下左右に並べた状態で互いに結合して仕切り構造体全体を構成しても良い。このような組み付け方法によって、仕切り構造体20の組み付け性向上を図ると共に、製造コストの低減を達成する。
【0060】
また、仕切り構造体20に設ける連通開口部25は必ずしも各流路に設ける必要はなく、一部の流路に設けても良い。また、各流路に連通開口部25を一つだけ設けても良いが、各流路の離間した位置に少なくとも2つの連通開口部25を設けた方がこの連通開口部25を介して上下方向の対流が更に複雑になり、水やぬるま湯が貯湯タンク内でよどむ部分を少なくでき、水やぬるま湯の沸き上げ性が向上する。
【0061】
続いて、上述した実施形態に係る貯湯式電気温水器の各種変形例について説明する。なお、上述した実施形態と同等の構成については、対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
【0062】
上述した実施形態の第1変形例は、図4に示すように、上述した貯湯タンク10の内部に設けた各仕切り構造体20の代わりに、周面長手方向一部に亘って切欠き120a(121a〜126a)を備えた円筒体からなる複数の円筒状仕切り構造体120(121〜126)を貯湯タンク110の内部に収容している。なお、各円筒状仕切り構造体120は隣接する円筒状仕切り構造体同士がそれぞれ周方向に接するように溶接等で固定され、かつ外側の円筒状仕切り構造体が貯湯タンク110の内周壁に接するように溶接等で固定されて貯湯タンク内に収容されている。これによって、各円筒状仕切り構造体120がそれぞれ断面積の小さい狭い通路を形成すると共に、貯湯タンク110の内周壁と各円筒状仕切り構造体120との間の隙間も流路としての役目を果たすようになっている。なお、各円筒状仕切り構造体120に形成された切欠き120a(121a〜126a)は、長手方向の適当な場所に適当な長さに亘って部分的に形成されている。
【0063】
そして、貯湯タンク内の各円筒状仕切り構造体120にこのような切欠き120aが形成されることで、円筒状仕切り構造体同士の隙間や円筒状仕切り構造体120と貯湯タンク内周壁との隙間に形成される押し出し対流用空間から切り欠き120a(121a〜126a)を介して各円筒状仕切り構造体内にヒータ130で温められた湯が流入すると共に、各円筒状仕切り構造体内の水や温度の比較的低いぬるま湯が切欠き120a(121a〜126a)を介して円筒状仕切り構造体同士の隙間や円筒状仕切り構造体120と貯湯タンク内周壁との隙間に形成された押し出し対流用空間に流出する。
【0064】
これによって、貯湯式電気温水器の沸き上げ中に貯湯タンク内の水や湯の上下方向の対流をこの円筒状仕切り構造体同士や円筒状仕切り構造体と貯湯タンク内周壁との隙間の間で積極的に生じさせる。従って、貯湯タンク内において図1に示す対流用空間A,Bのみならず、これに加えて一方の対流用空間A(B)から上下の仕切り構造体20を介して他方の対流用空間B(A)に至る貯湯タンク内周壁近傍に沿った大きな迂回経路、並びに各円筒状仕切り構造体120の適所に形成された切欠き120aを介して貯湯タンク内の水又は湯がタンク内で全体的に対流するようになっている。
【0065】
なお、このような切欠き120aを各円筒状仕切り構造体120の全てにおいて形成する必要なく、少なくとも1つ円筒状の仕切り構造体120に形成しても良い。このようにしても、かかる切欠き120aを設けた円筒状仕切り構造体とこれに隣接する円筒状仕切り構造体や貯湯タンク内周面間の隙間領域との間で水や湯がこの切欠き120aの幅や長さに応じて対流する。即ち、貯湯タンク内における水や湯の対流効果を切欠き120aの形成度合いに応じて向上させることができる。
【0066】
また、このような切欠き120aを各円筒状仕切り構造体120の全長に亘って形成しても良い。この場合、各円筒状仕切り構造体120の切欠き120aが形成されていない周面同士で接していたり、切欠き120aが形成されていない周面と貯湯タンク内周面に接していたりすれば、上述した実施形態において仕切り構造体20の各流路に長手方向全体に亘って開口部を形成した場合のように特別な支持体でこれらの円筒状仕切り構造体120を支持する必要がない。
【0067】
切欠き120aを各円筒状仕切り構造体120に全長に亘って形成した場合、各切欠き120aを介してその円筒状仕切り構造体内外の水や湯が連通するようになる。そのため、各円筒状仕切り構造体120の長手方向の一部に切欠き120aを形成した場合に較べて貯湯タンク内の湯の押し出し性は若干低下するが、貯湯タンク内の水や湯の対流効果に関してはかなり高めることができる。
【0068】
この第1変形例において各円筒状仕切り構造体120に形成する切欠き120aの大きさや長さ及び貯湯タンク内の円筒状仕切り構造体120の一部にこのような切欠き120aを形成するか又は全ての円筒状仕切り構造体120にこのような切欠き120aを形成するかについては、これを備えた貯湯式電気温水器に関する貯湯タンク内の湯の押し出し性と沸き上げ性の各仕様に応じて適宜決定すれば良い。
【0069】
なお、この第1変形例の別の変形例として、図5に示すような変形例が考えられる。この別の変形例は、第1変形例にかかる円筒状仕切り構造体120(121〜126)よりも内径及び外径の大きい円筒状仕切り構造体150(151〜154)を貯湯タンク内に備えると共に、各円筒状仕切り構造体150の内部を仕切り板160(161〜164)で仕切って複数の流路(本変形例では各円筒状仕切り構造体内を4つの流路)に分割するようになっている。また、各円筒状仕切り構造体150の外周部には第1変形例と同等の切欠き150a(151a〜154a)が形成されると共に、各仕切り板160にも矩形状の連通開口部160a(161a〜164a)が形成されている。
【0070】
このように各円筒状仕切り構造体150の内部を仕切り板160で更に複数の流路に分割することで、上述の第1変形例の作用を同様に発揮することに加えて、貯湯タンク内に収容する円筒状仕切り構造体の総本数を減らしながら多数の流路を貯湯タンク内に形成することができ、これにより貯湯タンクの組み付け工数の低減を図ることが可能となる。
【0071】
続いて、上述した実施形態の第2変形例について説明する。この第2変形例は、図4に示した第1変形例の更なる変形例であり、図6に示すように、図4に示した第1変形例と同様の基本的構成を備えた円筒状仕切り構造体220(第1変形例に対応する切欠きは図示せず)を有するが、図4に示す円筒状仕切り構造体220と異なる点として、各円筒状仕切り構造体220(図6では円筒状仕切り構造体221〜223のみ図示)の端部開口部220a(221a〜223a)が、貯湯式電気温水器の設置状態で水平方向より下向きに開口すると共に、各仕切り構造体220の各端部開口部220aのうち、上側の端部開口部221a(222a)が下側の端部開口部222a(223a)よりも貯湯タンクの長手方向端部側(図4中右側)に突出するようにこの円筒状仕切り構造体220が貯湯タンク内に収容されている。
【0072】
貯湯タンク内の各円筒状仕切り構造体220がこのような構成を有することで、貯湯タンク内の湯の上昇流を各円筒状仕切り構造体内へ隈なく導くことができ、貯湯タンク内全体の水や湯を簡単な構造で効率良く沸き上げることができる。特に、このような端部開口部220aの下方にヒータの端部が配置されていると、ヒータによって温められた高温の湯の上昇流がちょうど図6の矢印に示すように各開口部220aに最短距離で流入するので、その対流効果が大きくなる。
【0073】
なお、この場合、円筒状仕切り構造体220のヒータ設置側の端部開口部220aが水平方向より下向きに開口している構成と、各円筒状仕切り構造体220の各端部開口部220aのうち、上側の端部開口部221a(222a)が下側の端部開口部222a(223a)よりも貯湯タンクの長手方向端部側に突出するようになった構成の双方を必ずしも満たす必要はなく、何れか一方の構成を満たせば貯湯タンク内の水や湯の沸き上げ性向上をそれなりに達成することができる。
【0074】
また、この第2変形例は、上述した第1変形例の更なる変形例として紹介したが、必ずしもこれに限定されず、貯湯タンクの端面視で格子状に形成された本発明の一実施形態にかかる仕切り構造体10のヒータ設置側端部を図6に対応するように変形させても良い。これによっても、第2変形例と同様の作用効果を発揮し得ることは言うまでもない。
【0075】
また、この第2変形例の更なる変形例として、図7に示すような変形例が考えられる。この更なる変形例は、各円筒状仕切り構造体230(図7では仕切り管231〜233のみ図示)の端部開口部230a(231a〜233a)に加えて円筒状仕切り構造体230の突出した部分の下側に対流促進用開口部230b(231b〜233b)が設けられている。そして、貯湯タンク内で自然対流により上昇した湯がこの対流促進用開口部230bを介して円筒状仕切り構造体内に流入するようになっている。
【0076】
各円筒状仕切り構造体がこのような構造を有することで、貯湯タンク内の湯の上昇流を上述した第2変形例と同様に各円筒状仕切り構造体内へ積極的により隈なく導くことができ(図7中の矢印参照)、貯湯タンク内全体の水や湯を簡単な構造によってより効率良く沸き上げることができる。
【0077】
続いて、上述した実施形態の第3変形例について説明する。この第3変形例は、第1変形例の更なる変形例であり、図8に示すように、貯湯式電気温水器が被取付け対象物である例えばトイレルームのカウンタ下面やキッチンカウンタのケコミ部に取り付けられた状態で貯湯タンク310の出湯部312が入水部311よりも高く位置するようになっており、かつ貯湯タンク310の入水部近傍の下面310aが出湯部近傍の下面310bよりも低く位置するようになっている。
【0078】
いわゆる横置き式の貯湯式電気温水器の場合、全体が扁平型をなしているので、入水部311から入った水が貯湯タンク内の底面全体に拡がり易く、その結果、出湯部側にこの水が容易に達して出湯部からの湯と混ざりあう虞があるが、貯湯タンク310がこのような構成を有することで、貯湯タンク内の水や湯が対流する時に比重の違いで貯湯タンク内上部に向かって常に上昇していく高温の湯のみを出湯部312に確実に導くことができ、貯湯タンク内の湯の押し出し性をより向上させる。
【0079】
なお、本変形例では、図9(a)に示すように、貯湯タンク310の出湯部側端部が入水部側端部より高くなるように全体的に傾いた状態で貯湯タンク310が設置されているが、貯湯タンク310をこのように傾けて設置することを必ずしも必要としない。具体的には、図9(b)に示すように、貯湯タンク自体は傾いていないが、貯湯タンク320の入水部321の近傍の下面320aが出湯部322の近傍の下面320bよりも低くなるように、貯湯タンク320の下面のみが入水部側に向かうに従って下方に向かうテーパ面をなしていても良い。また、この場合、貯湯タンク320の下面全体がテーパ面をなす代わりに緩やかな段差をなして入水部近傍の下面が出湯部近傍の下面より低くなっていても良い。
【0080】
続いて、上述した実施形態の第4変形例及び第5変形例について説明する。この第4変形例及び第5変形例は、貯湯式電気温水器がその筐体内に単一の貯湯タンクを収容するのではなく、複数の貯湯タンクを収容した形態の変形例である。そして、第4変形例は、貯湯式電気温水器の設置状態で貯湯タンク410,420,430を図10に示すように水平方向に並列に配置した状態で連結パイプ401,402,411,421,431を介して互いに並列に連結した構成を有している。同じく上述した実施形態の第5変形例は、貯湯式電気温水器の設置状態で貯湯タンク510,520,530を図11に示すように鉛直方向に並列に配置した状態で連結パイプ501,502,511,521,531を介して互いに並列に連結した構成を有している。
【0081】
貯湯タンクをこのように複数設けて連結パイプを介してこれらを互いに並列に連結することで、貯湯式電気温水器の貯湯容量を高めながら貯湯式電気温水器の全体形状の自由度を高めることができ、トイレルームの下面やキッチンカウンタのケコミ部などの限られた設置スペースを有効活用しながら貯湯容量のより大きい貯湯式電気温水器を所望のスペースに設置できる。
【0082】
なお、これら第4変形例及び第5変形例とは異なり、複数の貯湯タンクをこのように配置した後、連結パイプを介して互いに直列に連結した状態で筐体内に収容した貯湯式電気温水器の構成としても同様の効果を発揮し得る。即ち、図12に示すように、貯湯タンク410,420,430をそれぞれ連結パイプ403,404,405,406で直列に連結した場合、上述のように各貯湯タンクを連結パイプで並列に連結した場合に較べて各貯湯タンク内に流入する水の流速が速くなるため、押し出し中に湯水が混ざり難くなり、押し出し性が向上する。
【0083】
なお、上述の実施形態及びその各種変形例において、ヒータは貯湯タンクの長手方向全体に亘って延在していなくても良い。即ち、貯湯タンクの入水部側又は出湯部側の何れかに偏倚して貯湯タンク内に設けられていても良い。
【0084】
また、ヒータは上述の実施形態及びその各種変形例に示したような細長い円柱状のヒータであることに限定されず、例えば発熱体であるニクロム線を防水性と耐熱性に優れた樹脂で完全に囲繞しかつその外側を金属でできたシース(鞘管)で覆ったいわゆるシースヒータを用いて、これを貯湯タンクの一方の端部から挿入して他方の端部近傍でU字状に折り曲げて再び一方の端部から外部に導出するようにしても良い。
【0085】
また、ヒータは必ずしも貯湯タンクの内部に設ける必要はなく、例えば板状ヒータを貯湯タンクの外側に直接当接させた状態で設けても良い。この場合、貯湯タンク内のいわゆる死に水の容積をなくすために貯湯式電気温水器の設置状態で貯湯タンクの底面にヒータを設けるのが良い。
【0086】
また、貯湯タンクの出湯部は貯湯タンクの一側端部のどの場所に備わっていても良いが、貯湯式電気温水器の設置状態で貯湯タンクの一側端部の上側に備わっていると湯をより多く押し出すことができる。
【0087】
また、上述した実施形態及びその各種変形例において貯湯タンクは全て両端部が閉塞した円筒形状を有していた。貯湯タンクが円筒形状を有することで耐圧性を高めることができるが、貯湯タンクはこのような形状に限定されるものでなく、例えば直方体形状で貯湯タンクを構成しても構わない。このように例えば直方体形状で貯湯タンクを構成することで、一般的に箱型形状を有する筐体内に貯湯タンクを収容した場合、筐体の内部にデッドスペースを生じさせることなく貯湯タンクを収容することができ、貯湯式電気温水器全体の小型化を図りつつその貯湯容量を高めることができる。
【0088】
以上説明したように、貯湯式電気温水器を狭いスペースに設置するために横置き式の貯湯タンクを備え、この湯の押し出し効率を改善したものとして、特許文献1に記載のようにタンク内に細長い隙間を有するハニカム体を設けて各流路断面積を小さくすることで、給水時には水が湯と混ざらずに湯を高温のまま押し出すようにしたものが考えられていた。しかしながら、この従来技術では、湯を沸かすためのヒータを貯湯タンクの外に設置して循環ポンプと循環パイプで循環する構成とした場合、貯湯式電気温水器の全体システムが複雑になり大きくて高価なものになる。また、この従来技術においてヒータを貯湯タンクの内部に設けた構成とした場合、ハニカム体により上下方向の対流が制限され、貯湯タンク内の水や湯を効率良く沸き上げることができない。
【0089】
一方、本実施形態による貯湯式電気温水器の場合、ヒータが貯湯タンク内に設けられているので、貯湯式電気温水器全体の小型化を図ることができ、かつ貯湯式電気温水器が横置き式となっていても仕切り構造体により独立した複数の流路が形成されると共に各流路の断面積が小さくなることにより、貯湯タンクの湯の押し出し性を向上させている。
【0090】
また、仕切り構造体に少なくとも一部の隣接する流路が連通する開口部を設けることで、これらの流路間でも水や湯の対流を生じ、連通開口部がない場合と比較して、流れに乱れが生じ、3次元的に複雑な対流となる。これによってヒータに近い流路からヒータから離れた流路間への熱の伝達がよりスムーズに行われ、貯湯タンク内の水やぬるま湯を効率良く沸き上げることができる。
【0091】
また、連通開口部が形成された流路においてこの連通開口部が流路の一部に形成されるか、流路の全体に亘って形成されることで、貯湯タンク内の湯の押し出し性と水や湯の沸き上げ性の優劣を貯湯式電気温水器の仕様に応じて適宜変更することができる。
【0092】
また、連通開口部が形成された流路においてこの連通開口部を2箇所以上設けることで、この連通開口部を介して上下方向の対流が更に複雑になり、水やぬるま湯が貯湯タンク内でよどむ部分を少なくでき、水やぬるま湯の沸き上げ性が向上する。
【0093】
また、連通開口部を仕切り構造体の各流路に設けることで、この連通開口部への水やぬるま湯の流入、流出により貯湯タンク内の流入部近傍、流出部近傍、及び仕切り構造体の上下の流路を介した貯湯タンク内周壁近傍に沿った大きな迂回経路の対流も促進させる。このように貯湯タンク内全体で水や湯の対流を生じさせることで、貯湯タンク内の水やぬるま湯を更に効率良く沸き上げることができる。
【0094】
また、仕切り構造体で形成される各流路の端部開口部が、貯湯式電気温水器の設置状態で水平方向より下向きに開口していることで、貯湯タンク内の湯の上昇流を仕切り構造体で形成される各流路内に積極的に導くことができ、貯湯タンク内全体の水や湯を簡単な構造でより効率良く沸き上げることができる。
【0095】
また、仕切り構造体で形成される各流路の端部開口部のうち貯湯式電気温水器の設置状態で上側となる端部開口部が下側の端部開口部よりも水平方向に突出するようになっていることで、貯湯タンク内の湯の上昇流を仕切り構造体で形成される各流路内に積極的により隈なく導くことができ、貯湯タンク内全体の水や湯を簡単な構造でより効率良く沸き上げることができる。
【0096】
また、仕切り構造体で形成される各流路の水平方向に突出した部分の下側に対流促進用開口部を有することで、貯湯タンク内の湯の上昇流を各流路内へ積極的により隈なく導くことができ、貯湯タンク内全体の水やぬるま湯を簡単な構造でより効率良く沸き上げることができる。
【0097】
また、ヒータが、貯湯式電気温水器の設置状態で仕切り構造体よりも下側に設置されていることで、いわゆる死に水と呼ばれる貯湯タンク内のヒータより下側にあって対流に取り残された沸き上がり難い水の容量を少なくでき、貯湯タンク内の水や湯をより効率良く沸き上げることができる。
【0098】
また、いわゆる横置き式の貯湯式電気温水器の場合、全体が扁平型をなしているので、入水部から入った水が貯湯タンク内の底面全体に拡がり易く、その結果、出湯部側にこの水が達して出湯部からの湯と混ざり合う虞があるが、貯湯式電気温水器の設置状態で入水部が出湯部よりも低い位置になるように貯湯タンクに備わり、かつ貯湯タンクの入水部側の下面が出湯部側の下面よりも低くなったことで、貯湯タンク内の水や湯が対流する時に比重の違いで貯湯タンク内上部に向かって常に上昇していく高温の湯を出湯部に確実に導くことができ、貯湯タンク内の湯の押し出し性をより向上させる。
【0099】
また、前記貯湯タンクを複数備え、各貯湯タンクを連結パイプを介して互いに直列又は並列に連結することで、貯湯式電気温水器の全体形状の自由度を高めながら貯湯容量を大きくすることができ、貯湯式電気温水器の限られた設置スペースに貯湯容量のより大きい貯湯式電気温水器を設置できる。なお、複数の貯湯タンクを連結パイプで直列に連結した場合、並列に接続した場合に比べて流速が速くなるため、湯の押し出し中に湯水が混ざり難くなり、押し出し性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の一実施形態に係る貯湯式電気温水器の貯湯タンクをその内部構造と共に概略的に示す断面図である。
【図2】図1に示した貯湯タンクの出湯側端部を除いて出湯部側斜め上方から見た斜視図である。
【図3】図1に示した貯湯タンクを各仕切り構造体の端部の連通開口部を含む位置においてタンク中心軸線と垂直に切断した状態を示す概略断面図である。
【図4】図1に示した貯湯式貯湯タンクの第1変形例を各円筒状仕切り構造体の端部においてタンク中心軸線と垂直に切断した概略断面図である。
【図5】図4に示した第1変形例の別の変形例を図4に対応して示す概略断面図である。
【図6】図1に示した貯湯タンクの第2変形例をその作用と共に部分的に示す概略側面図である。
【図7】図4に示した貯湯タンクの第2変形例の更なる変形例を図6に対応して示す概略側面図である。
【図8】図1に示した貯湯タンクの第3変形例を図1に対応して示す概略断面図である。
【図9】図8に示した第3変形例の概略側面図(図9(a))及びその更なる変形例の概略側面図(図9(b))である。
【図10】図1に示した貯湯タンクの第4変形例を示す概略斜視図である。
【図11】図1に示した貯湯タンクの第5変形例を示す概略斜視図である。
【図12】図10に示した貯湯タンクの第4変形例の更なる変形例を示す概略斜視図である。
【図13】横置き式貯湯式電気温水器の設置状態の一例を概略的に示す説明図である。
【図14】従来の貯湯式電気温水器に備わる貯湯タンクの構造の一例を図1に対応して示す概略断面図である。
【図15】図14に関連した従来の貯湯式電気温水器の構造を概略的に示す全体構成図である。
【符号の説明】
【0101】
1 貯湯式電気温水器
10 貯湯タンク
11 入水部
12 出湯部
20 仕切り構造体
21 横板
22 縦板
25 連通開口部
30 ヒータ
50 貯湯タンク
50a,50b 端壁部
51 ハニカム体
51a,51b 端部
53 出湯部
60 ヒータ
61 循環ポンプ
62,63 循環パイプ
110 貯湯タンク
120(121〜126) 円筒状仕切り構造体
120a(121a〜126a) 切欠き
130 ヒータ
150(151〜154) 円筒状仕切り構造体
150a(151a〜154a) 切欠き
160(161〜164) 仕切り板
160a(161a〜164a) 連通開口部
220(221〜223) 仕切り構造体
220a(221a〜223a) 端部開口部
230(231〜233) 円筒状仕切り構造体
230a(231a〜233a) 端部開口部
230b(231b〜233b) 対流促進用開口部
310 貯湯タンク
310a 入水部側端部
310b 出湯部側端部
311 入水部
312 出湯部
320 貯湯タンク
320a,320b 下面
321 入水部
322 出湯部
401〜406 連結パイプ
410,420,430 貯湯タンク
411,421,431 連結パイプ
501,502 連結パイプ
510,520,530 貯湯タンク
511,521,531 連結パイプ
A,B,X,Y 対流空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯湯タンクと、前記貯湯タンクの所定位置に備わった入水部と、前記貯湯タンクの前記入水部とは異なる位置に備わった出湯部と、前記貯湯タンク内の入水部近傍から出湯部近傍に亘って複数の流路を形成するように設けられた仕切り構造体とを有した貯湯式電気温水器であって、前記貯湯式電気温水器が設置された状態で前記貯湯タンクの上下方向の高さより横方向の長さが長くなるように当該貯湯タンクが備わった貯湯式電気温水器において、
前記少なくとも一部の隣接する流路が連通するように当該仕切り構造体に連通開口部が設けられていることを特徴とする貯湯式電気温水器。
【請求項2】
前記連通開口部が形成された流路において当該連通開口部が当該流路の一部に形成されるか、当該流路の全体に亘って形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の貯湯式電気温水器。
【請求項3】
前記連通開口部が形成された流路において当該連通開口部を2箇所以上設けたことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の貯湯式電気温水器。
【請求項4】
前記連通開口部を前記仕切り構造体の各流路に設けることによって前記貯湯タンク内の各流路を全て連通するようにしたことを特徴とする、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の貯湯式電気温水器。
【請求項5】
前記仕切り構造体で形成される各流路の端部開口部が、前記貯湯式電気温水器の設置状態で水平方向より下向きに開口し、前記貯湯タンク内で自然対流により上昇した湯が当該端部開口部を介して前記各流路内に流入するようになったことを特徴とする、請求項1乃至請求項4の何れかに記載の貯湯式電気温水器。
【請求項6】
前記仕切り構造体で形成される各流路の端部開口部のうち貯湯式電気温水器の設置状態で上側となる端部開口部が下側の端部開口部よりも水平方向に突出するようになっていることを特徴とする、請求項1乃至請求項5の何れかに記載の貯湯式電気温水器。
【請求項7】
前記仕切り構造体で形成される各流路の端部開口部に加えて当該各流路の水平方向に突出した部分の下側に対流促進用開口部が設けられ、前記貯湯タンク内で自然対流により上昇した湯が当該対流促進用開口部を介して前記各流路内に流入するようになったことを特徴とする、請求項6に記載の貯湯式電気温水器。
【請求項8】
前記ヒータが、前記貯湯式電気温水器の設置状態で前記仕切り構造体よりも下側に設置されていることを特徴とする、請求項1乃至請求項6の何れかに記載の貯湯式電気温水器。
【請求項9】
前記貯湯式電気温水器の設置状態で前記入水部が前記出湯部よりも低い位置になるように前記貯湯タンクに備わり、かつ前記貯湯タンクの入水部側の下面が出湯部側の下面よりも低くなったことを特徴とする、請求項1乃至請求項8の何れかに記載の貯湯式電気温水器。
【請求項10】
前記貯湯タンクを複数備え、連結パイプを介して当該各貯湯タンクを互いに直列又は並列に連結したことを特徴とする、請求項1乃至請求項9の何れかに記載の貯湯式電気温水器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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