説明

貯湯式風呂給湯装置

【課題】沸き上げながらの風呂の追い焚きを効率良く行う貯湯式風呂給湯装置を提供する。
【解決手段】加熱手段3で加熱された高温水を貯湯タンク2上部に戻す加熱戻し管10と、貯湯タンク2内の上部に設けられ該貯湯タンク2内の湯水との熱交換で浴槽水を加熱する風呂熱交換器19とを備えたもので、前記加熱戻し管10に連通し風呂熱交換器19下部まで垂下された吐出管44を設け、この吐出管44の風呂熱交換器19と対向する位置には該風呂熱交換器19部分に高温水がない時、沸き上げられた高温水を直接風呂熱交換器19に集中的に供給する第1吐出口45を備え、更に吐出管44の風呂熱交換器19より上の位置には該風呂熱交換器19部分に高温水がある時、沸き上げられた高温水を貯湯タンク2内上部に吐出する第2吐出口46を備えたので、沸き上げながらの追い焚きの効率が向上するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、貯湯タンクに貯湯された高温水を用いて給湯と風呂の追い焚きを行う貯湯式風呂給湯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種のものに於いては、風呂の保温や追い焚きを行う時に、貯湯タンク内の風呂熱交換器付近の湯温が低下して熱量不足であった場合には、急遽加熱手段による加熱を行う沸き上げ運転(沸き増し運転)を開始して、貯湯タンク内の風呂熱交換器付近の湯水を高温水とすることで、良好に風呂の保温や追い焚きが行われるものであった。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4294612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところでこの従来のものでは、貯湯タンク内に残っていた高温水の残湯量にもよるが、残湯がまったくなかった或いは少なかった場合には、風呂熱交換器付近に高温水の層が到達するまでには時間がかかり、この間は追い焚きが出来ず無駄な時間であり、風呂循環ポンプが駆動している場合は、極めて効率の悪い追い焚きが行われる課題を有するものであった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は上記課題を解決するために、特にその構成を、湯水を貯湯する貯湯タンクと、前記貯湯タンク下部から湯水を取り出し加熱手段へ供給する加熱往き管と、加熱手段で加熱された高温水を貯湯タンク上部に戻す加熱戻し管と、貯湯タンク底部に接続された給水管と、貯湯タンク上部に接続された先端に給湯栓を備えた給湯管と、貯湯タンク内の上部に設けられ該貯湯タンク内の湯水との熱交換で浴槽水を加熱する風呂熱交換器とを備えたものに於いて、前記加熱戻し管に連通し風呂熱交換器下部まで垂下された吐出管を設け、この吐出管の風呂熱交換器と対向する位置には該風呂熱交換器部分に高温水がない時、沸き上げられた高温水を直接風呂熱交換器に集中的に供給する第1吐出口を備え、更に吐出管の風呂熱交換器より上の位置には該風呂熱交換器部分に高温水がある時、沸き上げられた高温水を貯湯タンク内上部に吐出する第2吐出口を備えたものである。
【0006】
又請求項2では、前記吐出管は内外の二重管で構成し、内管下部の形状記憶合金バネと上部のバイアスバネとで内管を上下動自在に保持し、内管下開口と外管下開口とが重合することで第1吐出口が形成され、内管上開口と外管上開口とが重合することで第2吐出口が形成されるものである。
【0007】
又請求項3では、前記内管下開口と外管下開口及び内管上開口と外管上開口は、共に同一方向に傾斜した複数の開口で形成したものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、吐出管の風呂熱交換器と対向する位置には該風呂熱交換器部分に高温水がない追い焚き時、沸き上げられた高温水を直接風呂熱交換器に集中的に供給する第1吐出口を備え、更に吐出管の風呂熱交換器より上の位置には該風呂熱交換器部分に高温水がある時、沸き上げられた高温水を貯湯タンク内上部に吐出する第2吐出口を備えたことにより、追い焚き時には極めて効率の良い追い焚きが行われるものであり、更に通常の沸き上げ時には、上方の第2吐出口より高温水を吐出して流れを乱すことなく、上方から高温水層を形成出来て常に良好な貯湯が行われるものである。
【0009】
又請求項2によれば、二重管構造の内管を、内管下部の形状記憶合金バネと上部のバイアスバネとで上下動自在に保持し、貯湯タンク内の高温水の位置によって、機械的に第1吐出口と第2吐出口とを切り替えて開閉するので、電気的な駆動部がなくより確実に作動し、的確な吐出口の開閉で効率の良い追い焚きや貯湯が得られるものである。
【0010】
又請求項3によれば、内管下開口と外管下開口及び内管上開口と外管上開口は、共に同一方向に傾斜した複数の開口で形成したので、流路面積が拡大し風呂熱交換器や貯湯タンク内上部に供給される高温水の流量を確実に確保することが出来、良好な追い焚きや貯湯運転を行うことが出来るものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の一実施形態を示す貯湯式風呂給湯装置の概略構成図。
【図2】同第1吐出口開口状態を示す説明図。
【図3】同第2吐出口開口状態を示す説明図。
【図4】同第1吐出口閉口状態の斜視図。
【図5】同第1吐出口閉口状態の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次にこの発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
1は湯水を貯湯する貯湯タンク2を備えた貯湯タンクユニットであり、3は貯湯タンク2内に貯湯された湯水を加熱するヒートポンプユニットからなる加熱手段、4は台所や洗面所等に設けられた給湯栓、5は前記貯湯式給湯装置を遠隔操作するリモコン、6は浴槽である。
【0013】
前記貯湯タンクユニット1内にある貯湯タンク2は、上端に高温水を給湯する給湯管7と、下端に水道水を給水する給水管8とが接続されている。また、貯湯タンク2下部から加熱手段3を配管で繋ぎ低温水を供給する加熱往き管9と、加熱手段3で沸き上げられた高温水を貯湯タンク2上部に供給する加熱戻し管10とが接続されている。
【0014】
前記加熱手段3内には、圧縮機11、凝縮器としての冷媒水熱交換器12、電子膨張弁13、強制空冷式の蒸発器14で構成されたヒートポンプサイクル15が設置されており、貯湯タンク2内の湯水を前記加熱往き管9から加熱手段3へ搬送して、冷媒水熱交換器12で加熱され加熱戻し管10から貯湯タンク2へ搬送するヒーポン循環ポンプ16が加熱往き管9途中に設置されており、その駆動を制御するヒーポン制御部17が備えられており、外気温センサ18が凍結危険温度の外気温を検知した時には、ヒーポン制御部17は凍結防止運転を行わせるものである。
【0015】
19は前記浴槽6の湯水を加熱するためのステンレス製の蛇管よりなる風呂熱交換器であり、貯湯タンク2内の上部に円筒状に巻回した状態で配置されており、この風呂熱交換器19には風呂往き管22及び浴槽水を搬送するための風呂循環ポンプ21を備えた風呂戻り管20よりなる風呂循環回路23が接続され、浴槽6内の湯水が貯湯タンク2内の高温水によって加熱されて保温あるいは追い焚きが行われる。
【0016】
24は風呂往き管22から風呂熱交換器19に流入する浴槽水の温度を検出する風呂往き管温度センサであり、25は風呂熱交換器19から流出して風呂戻り管20から浴槽6へ流れ込む浴槽水の温度を検出する風呂戻り管温度センサである。
【0017】
26は風呂往き管22の風呂往き管温度センサ24と風呂熱交換器19の間に設置された風呂三方弁であり、27は風呂三方弁26の弁開度を変えることで風呂戻り管20の風呂戻り管温度センサ25と風呂熱交換器19の間の配管に湯水が流入するように接続された風呂循環バイパス管である。
【0018】
28は給湯管7で搬送されてきた高温水と給水管8から分岐した第1給水バイパス管29内の低温水を混合する給湯混合弁であり、その下流の給湯管7に設けられた給湯サーミスタから成る給湯温度センサ30で検出した温度がリモコン5で使用者が設定した給湯設定温度になるよう弁開度を調節するものであり、31は給湯する湯水の流れを検知して給湯の有無を判断させる給湯フローセンサである。
【0019】
32は給湯管7から分岐されて風呂往き管22に連通された湯張り管で、分岐部分の近傍には貯湯タンク2からの高温水と、第1給水バイパス管29から分岐した第2給水バイパス管33からの低温水とを混合して所定温度の湯張り温水とする風呂混合弁34が備えられ、又この湯張り管32には浴槽6への湯張り開始と停止を行う湯張り弁35と、浴槽6への湯張り量をカウントする風呂流量カウンタ36と、浴槽6内の湯水が給湯管7に逆流するのを防止する逆止弁37とが設けられており、貯湯タンク2内の高温水を浴槽6に直接差し湯して追い焚きを行う際にもこの湯張り管32を介して行われる。
【0020】
38は貯湯タンク2の上下方向に複数個配置された貯湯温度センサであり、貯湯タンク2の上方向から順に38a、38b、38c、38d、38eとし、この貯湯温度センサ38が検出する温度情報によって貯湯タンク2内の残湯量を検知し、そして貯湯タンク2の上下方向の温度分布を検知するものである。
【0021】
前記リモコン5には、給湯設定温度を設定する給湯温度設定スイッチ39と、風呂設定温度を設定する風呂温度設定スイッチ40とがそれぞれ設けられていると共に、浴槽6へ風呂設定温度の湯をリモコン5の湯張り量設定スイッチ(図示せず)で設定された湯張り量だけ湯張りする風呂自動スイッチ41と、浴槽水を風呂設定温度まで追い焚きさせその後所定時間に渡って保温させる保温追い焚きスイッチ42とが設けられている。
【0022】
43は貯湯タンクユニット1内に設置された各センサの入力を受け各アクチュエーターの駆動を制御すると共に、現在時刻を刻む時計機能も有したマイコンから成る制御部を構成する給湯制御部である。この給湯制御部43に前記リモコン5が無線もしくは有線によって接続され、使用者が所望の給湯設定温度及び風呂設定温度を設定可能としている。
【0023】
44は前記貯湯タンク2の頂部に接続した加熱戻し管10から延設して垂下し、円筒状に巻回した状態の風呂熱交換器19の円筒状中心を貫通して備えられた吐出管で、風呂熱交換器19と対向する位置には第1吐出口45を形成し、風呂熱交換器19より上の位置には第2吐出口46が形成されており、この吐出管44は内外の二重管構造で内管47底部と外管48下部との間には、雰囲気温度で伸縮して内管47を上下動させる形状記憶合金バネ49が取り付けられ、内管47上部と外管48との間には常に内管47を下方に押し下げるように作用するバイアスバネ50が設けられている。
【0024】
前記吐出管44の第1吐出口45は、内管47の下方周壁に向かって右側に傾斜した複数の開口からなる内管下開口51と、外管48の下方周壁に向かって同じく右側に傾斜した複数の開口からなる外管下開口52とが、貯湯タンク2内の風呂熱交換器19周辺の湯温が所定温度未満ここでは50℃未満で形状記憶合金バネ49が縮み、バイアスバネ50の押圧で内管47が押し下げられることで、重合することで形成されるものであり、この時に加熱手段3の沸き上げが開始されれば、沸き上げられた高温水が吐出管44下部の第1吐出口45から貯湯タンク2内に吐出され、対向位置している風呂熱交換器19を集中的に直接加熱することが出来、風呂熱交換器19内を浴槽水が流通する風呂の追い焚きでは効率良く該浴槽水を加熱出来るものである。
【0025】
又第2吐出口46は、内管47の上方周壁に向かって右側に傾斜した複数の開口からなる内管上開口53と、外管48の上方周壁に向かって同じく右側に傾斜した複数の開口からなる外管上開口54とが、貯湯タンク2内の風呂熱交換器19周辺の湯温が所定温度以上ここでは50℃以上で形状記憶合金バネ49が延びて、バイアスバネ50の押圧に反して内管47を押し上げることで、重合することで形成されるものであり、この時に加熱手段3の沸き上げが開始されれば、沸き上げられた高温水が吐出管44上部の第2吐出口46から貯湯タンク2内に吐出され、風呂熱交換器19より上の貯湯タンク2内に供給するようにしたことで、すでに高温水中にある風呂熱交換器19を加熱し過ぎないようにすると共に、温度境界層を壊すことなく良好な貯湯が行えるものである。
【0026】
55は貯湯タンク2内の圧力が所定値を超えた際に作動する過圧逃がし弁であり、給湯管7の先端に備えられ過圧で開弁して、過圧分の高温水を逃がし管56を介して排水して圧力を調整し閉弁するものである。
【0027】
次にこの一実施形態の作動について説明する。
今契約した深夜時間帯の23:00〜翌朝7:00までの時間帯で、給湯制御部43が残湯等を考慮して丁度翌朝7:00に沸き上がるように、加熱手段3及びヒーポン循環ポンプ16を駆動して、貯湯タンク2下部の低温水を加熱手段3で高温水に沸き上げて、加熱戻し管10から貯湯タンク2上部に戻すものであるが、この時に加熱戻し管10に連通した吐出管44では、貯湯タンク2内が低温水或いは給水が貯湯されているので、形状記憶合金バネ49は縮み内管47の内管下開口51と外管下開口52とが重合して、第1吐出口45が開口して、風呂熱交換器19と対向した部分から高温水が供給されるが、沸き上げが進み形状記憶合金バネ49の部分まで高温水が貯湯されれば、バイアスバネ50の押圧に反して形状記憶合金バネ49が延びて内管47を押し上げるので、第1吐出口45が閉じると共に、内管上開口53と外管上開口54とが重合して、第2吐出口46が開口して風呂熱交換器19より上の方から高温水の供給が行われるように貯湯が終了するものである。
【0028】
ここで給湯栓4を開栓すれば、貯湯タンク2上部の給湯管7からの高温水と、第1給水バイパス管29からの給水とを、給湯混合弁28でリモコン5の給湯設定温度に調節して給湯され、そして貯湯タンク2内には使用された高温水分の給水が下部に貯水され、順次これが繰り返され高温水が効率良く給湯に使用されるものである。
【0029】
次にリモコン5の保温追い焚きスイッチ42を押圧し風呂の追い焚きを行う時に貯湯タンク2内に熱量(残湯)がない場合には、貯湯温度センサ38を介して給湯制御部43がこの状態を検知して、自動的に沸き上げ(沸き増し)運転を開始するので、貯湯タンク2内では、吐出管44の形状記憶合金バネ49が低温で縮んでいるので、内管47が下動して内管下開口51と外管下開口52とが重合し、下方の第1吐出口45が開口されて加熱手段3で沸き上げられた高温水を、対向している風呂熱交換器19に向かって吐出して、風呂熱交換器19内を風呂循環ポンプ21の駆動で循環している浴槽水を集中的に加熱し、追い焚き効率を向上させることが出来、追い焚き時間も短時間で済むものである。
【0030】
更に風呂の追い焚きは終了しても沸き上げが継続されると、貯湯タンク2内の吐出管44下部まで高温水が達することで、吐出管44下部の形状記憶合金バネ49がバイアスバネ50に反して上方へ向かって延び、内管47が上動され内管上開口53と外管上開口54とが重合し、上方の第2吐出口46が開口されて加熱手段3で沸き上げられた高温水を、風呂熱交換器19より上の貯湯タンク2内上部から供給して、温度境界層を破壊することなく上方から順に高温水を貯湯タンク2内に貯湯して行くものである。
【0031】
又内管下開口51と外管下開口52及び、内管上開口53と外管上開口54は、ともに右側に傾斜した複数の開口から形成されているので、流路面積の拡大が図れ流量も十分確保出来、風呂熱交換器19も更に良好に加熱されるものであり、しかも貯湯タンク2内の上部では、高温水の十分な放出で短時間で強力な貯湯が得られるものである。
【符号の説明】
【0032】
2 貯湯タンク
3 加熱手段
4 給湯栓
7 給湯管
8 給水管
10 加熱戻し管
19 風呂熱交換器
44 吐出管
45 第1吐出口
46 第2吐出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯水を貯湯する貯湯タンクと、前記貯湯タンク下部から湯水を取り出し加熱手段へ供給する加熱往き管と、加熱手段で加熱された高温水を貯湯タンク上部に戻す加熱戻し管と、貯湯タンク底部に接続された給水管と、貯湯タンク上部に接続された先端に給湯栓を備えた給湯管と、貯湯タンク内の上部に設けられ該貯湯タンク内の湯水との熱交換で浴槽水を加熱する風呂熱交換器とを備えたものに於いて、前記加熱戻し管に連通し風呂熱交換器下部まで垂下された吐出管を設け、この吐出管の風呂熱交換器と対向する位置には該風呂熱交換器部分に高温水がない時、沸き上げられた高温水を直接風呂熱交換器に集中的に供給する第1吐出口を備え、更に吐出管の風呂熱交換器より上の位置には該風呂熱交換器部分に高温水がある時、沸き上げられた高温水を貯湯タンク内上部に吐出する第2吐出口を備えた事を特徴とする貯湯式風呂給湯装置。
【請求項2】
前記吐出管は内外の二重管で構成し、内管下部の形状記憶合金バネと上部のバイアスバネとで内管を上下動自在に保持し、内管下開口と外管下開口とが重合することで第1吐出口が形成され、内管上開口と外管上開口とが重合することで第2吐出口が形成される事を特徴とする請求項1記載の貯湯式風呂給湯装置。
【請求項3】
前記内管下開口と外管下開口及び内管上開口と外管上開口は、共に同一方向に傾斜した複数の開口で形成した事を特徴とする請求項2記載の貯湯式風呂給湯装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−117692(P2012−117692A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265283(P2010−265283)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000000538)株式会社コロナ (753)
【Fターム(参考)】