説明

貯蔵安定性プロスタグランジン組成物

【課題】薬学的組成物中のプロスタグランジンの化学的安定性を増強すること
【解決手段】プロスタグランジン組成物中でのポリエトキシ化ひまし油の使用は、プロスタグランジンの化学的安定性を大きく増強する。
このような組成物中のポリエトキシ化ひまし油を使用することにより、薬学的組成物中のプロスタグランジンの化学的安定性が増強されることを、今回期せずして発見した。本発明の組成物は、種々の方法で身体に投与され得る。眼に局所的に施用される場合、本発明の組成物は、初期時の快適さおよび継続的な快適さの両方を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は一般に、プロスタグランジン組成物に関する。特に、本発明は、プロスタグランジンおよび界面活性剤を含有する貯蔵安定性薬剤組成物に関する。本明細書中で使用される、用語「プロスタグランジン」または「PG」は、文脈により特に示される場合を除いて、薬学的に受容可能な塩およびエステルを含有する、プロスタグランジンおよびこの誘導体ならびにこのアナログを意味する。
【背景技術】
【0002】
プロスタグランジンは、周知のように、低い水溶性を有し、そして一般に不安定である。様々なプロスタグランジンを、種々のシクロデキストリンと錯形成させることにより、可溶化させ、そして安定化させるための試みがなされた。例えば、欧州特許出願第330
511 A2号(Uenoら)および欧州特許出願第435 682 A2号(Wheeler)を参照のこと。これらの試みは、それぞれ成功している。
【0003】
界面活性剤および/または可溶化剤が、低い水溶性を有する他のタイプの薬剤と共に用
いられる。しかし、界面活性剤および/または可溶化剤の添加は、薬剤化合物の化学的安
定性を増強し得るか、またはその化学的安定性に悪影響を及ぼし得る。Surfactant Systems, Their Chemistry, Pharmacy, and Biology(Attwoodら編)、Chapman and Hall、New York、1983、11章、特に698〜714頁を参照のこと。
【0004】
可溶化剤として、ポリエトキシ化ひまし油のような非イオン性界面活性剤の使用は公知である。例えば、米国特許第4,960,799号(Nagy)を参照のこと。
【0005】
安定な乳剤中のポリエトキシ化ひまし油のような非イオン性界面活性剤の使用もまた公知である。米国特許第4,075,333号(Josse)は、ビタミンの安定な、静脈内乳剤処方物を開示する。El−Sayedら、Int. J. Pharm.、13:303−12(1983)は、抗新生物薬剤の安定な水中油型乳剤を開示する。米国特許第5,185,372号(Ushioら)は、安定な調製物(ここで、非イオン性界面活性剤が使用され、水性媒体中のビタミンAの乳剤を形成する)である、ビタミンAの局所的に投与可能な眼科用処方物を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願第330 511 A2号
【特許文献2】欧州特許出願第435 682 A2号
【特許文献3】米国特許第4,960,799号
【特許文献4】米国特許第4,075,333号
【特許文献5】米国特許第5,185,372号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Surfactant Systems, Their Chemistry, Pharmacy, and Biology(Attwoodら編)、Chapman and Hall、New York、1983、11章、特に698〜714頁
【非特許文献2】El−Sayedら、Int. J. Pharm.、13:303−12(1983)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
市販可能な、貯蔵安定性プロスタグランジン組成物が、必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の要旨
本発明は、プロスタグランジンを含有する薬剤組成物中のポリエトキシ化ひまし油の使用に関する。このような組成物中のポリエトキシ化ひまし油を使用することにより、薬学的組成物中のプロスタグランジンの化学的安定性が増強されることを、今回期せずして発見した。本発明の組成物は、種々の方法で身体に投与され得る。眼に局所的に施用される場合、本発明の組成物は、初期時の快適さおよび継続的な快適さの両方を提供する。
【0010】
具体的には、本発明によれば、以下の組成物および方法などが提供される。
(1)プロスタグランジン、該プロスタグランジンの化学的安定性を増強するために有効な量のポリエトキシル化ひまし油、および薬学的に受容可能なベヒクルを含有する薬学的組成物。
(2)前記ポリエトキシ化ひまし油が、約0.02重量%と約20.0重量%との間の濃度で存在する、上記項1に記載の組成物。
(3)前記ポリエトキシ化ひまし油が、約0.1重量%と約5.0重量%との間の濃度で存在する、上記項2に記載の組成物。
(4)前記ポリエトキシ化ひまし油が、約0.5重量%と約2.0重量%との間の濃度で存在する、上記項3に記載の組成物。
(5)前記ポリエトキシ化ひまし油が、PEG−2ひまし油〜PEG−200ひまし油およびPEG−5水素添加ひまし油〜PEG−200水素添加ひまし油からなる群から選択される、上記項1に記載の組成物。
(6)前記ポリエトキシ化ひまし油が、PEG−15ひまし油〜PEG−50ひまし油からなる群から選択される、上記項5に記載の組成物。
(7)前記ポリエトキシ化ひまし油が、PEG−30ひまし油〜PEG−35ひまし油からなる群から選択される、上記項6に記載の組成物。
(8)前記プロスタグランジンが、
(5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸;
(5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 イソプロピルエステル;
(5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 t−ブチルエステル;
(5Z)−(9S,11R,15R)−15−シクロヘキシル−3−オキサ−9,11,15−トリヒドロキシ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸
イソプロピルエステル;
(5Z)−(9R,11R,15S)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 イソプロピルエステル;
(5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸アミド;
(5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 N,N−ジメチルアミド;
(5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 1−メチルシクロヘキシルエステル;
(5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 1−メチルシクロペンチルエステル;
(5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 シクロペンチルエステル;
(5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 2,2−ジメチルプロピルエステル;
(5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 アダマンチルエステル;
(5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 2,6−ジイソプロピルフェニルエステル;
(5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 2,6−ジメチルフェニルエステル;
(5Z,13E)−(9S,11R,15R)−3−オキサ−9,11,15−トリヒドロキシ−16−(3−クロロフェノキシ)−17,18,19,20−テトラノル−5,13−プロスタジエン酸 イソプロピルエステル;
(5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11−ヒドロキシ−15−メトキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 t−ブチルエステル;
(5Z)−(9R,11R,15R)−15−シクロヘキシル−3−オキサ−9,11,15−トリヒドロキシ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸
イソプロピルエステル;
(5E)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 イソプロピルエステル;
(5Z)−(9R,11R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11−ヒドロキシ−3−オキサ−15−オキソ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 t−ブチルエステル;
(5Z)−(9S,11R,15R)−3−オキサ−17−フェニル−9,11,15−トリヒドロキシ−18,19,20−トリノル−5−プロステン酸 イソプロピルエステル;
(5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−1−(ジメチルアミノ)−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン−11,15−ジオール;
(5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステノール;
(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11−ヒドロキシ−3−チア−16,17,18,19,20−ペンタノル−13−プロスチン酸;
ラタノプロスト(PhXA41);
クロプロステノール イソプロピルエステル;
(5Z)−(9S,11R,15R)−1−デカルボキシ−1−(ピバロイルオキシ)メチル−9,11,15−トリヒドロキシ−16−[(3−クロロフェニル)オキシ]−17,18,19,20−テトラノル−5−プロステン酸;
(5Z)−(9S,11R,15R)−1−デカルボキシ−1−(ピバロイルオキシ)メチル−9,11,15−トリヒドロキシ−16−[(3−クロロフェニル)オキシ]−17,18,19,20−テトラノル−5,13−プロスタジエン酸;
(5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 イソプロピルエステル;
(5Z)−(9S,11R,15S)−15−シクロヘキシル−9,11,15−トリヒドロキシ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 イソプロピルエステル;
(5Z,13E)−(9S,11R,15R)−9,11,15−トリヒドロキシ−16−(3−クロロフェノキシ)−17,18,19,20−テトラノル−5,13−プロスタジエン酸アミド;
PGF2αイソプロピルエステル;および
フルプロステノールイソプロピルエステル
からなる群から選択される、上記項1に記載の組成物。
(9)前記プロスタグランジンが、
(5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 イソプロピルエステル;
(5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 t−ブチルエステル;
(5Z)−(9S,11R,15R)−15−シクロヘキシル−3−オキサ−9,11,15−トリヒドロキシ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸
イソプロピルエステル;
(5Z)−(9R,11R,15S)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 イソプロピルエステル;
(5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸アミド;
(5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 N,N−ジメチルアミド;および
(5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 1−メチルシクロヘキシルエステル
からなる群から選択される、上記項8に記載の組成物。
(10)前記プロスタグランジンが、
(5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 イソプロピルエステルおよび
(5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 t−ブチルエステル
からなる群から選択される、上記項9に記載の組成物。
(11)前記プロスタグランジンが、約0.0001重量%と約0.1重量%との間の濃度で存在する、上記項1に記載の組成物。
(12)前記組成物が、局所的に投与可能な眼科用組成物である、上記項1に記載の組成物。
(13)薬学的プロスタグランジン組成物の化学的安定性を増強する方法であって、ポリエトキシ化ひまし油を該組成物に添加する工程を包含する方法。
(14)前記ポリエトキシ化ひまし油が、約0.02重量%と約20.0重量%との間の濃度で存在する、上記項13に記載の方法。
(15)前記ポリエトキシ化ひまし油が、約0.1重量%と約5.0重量%との間の濃度で存在する、上記項14に記載の方法。
(16)前記ポリエトキシ化ひまし油が、約0.5重量%と約2.0重量%との間の濃度で存在する、上記項15に記載の方法。
(17)前記ポリエトキシ化ひまし油が、PEG−2ひまし油〜PEG−200ひまし油およびPEG−5水素添加ひまし油〜PEG−200水素添加ひまし油からなる群から選択される、上記項13に記載の方法。
(18)前記ポリエトキシ化ひまし油が、PEG−15ひまし油〜PEG−50ひまし油からなる群から選択される、上記項17に記載の方法。
(19)前記ポリエトキシ化ひまし油が、PEG−30ひまし油〜PEG−35ひまし油からなる群から選択される、上記項18に記載の方法。
(20)前記プロスタグランジンが、
(5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸;
(5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 イソプロピルエステル;
(5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 t−ブチルエステル;
(5Z)−(9S,11R,15R)−15−シクロヘキシル−3−オキサ−9,11,15−トリヒドロキシ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸
イソプロピルエステル;
(5Z)−(9R,11R,15S)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 イソプロピルエステル;
(5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸アミド;
(5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 N,N−ジメチルアミド;
(5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 1−メチルシクロヘキシルエステル;
(5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 1−メチルシクロペンチルエステル;
(5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 シクロペンチルエステル;
(5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 2,2−ジメチルプロピルエステル;
(5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 アダマンチルエステル;
(5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 2,6−ジイソプロピルフェニルエステル;
(5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 2,6−ジメチルフェニルエステル;
(5Z,13E)−(9S,11R,15R)−3−オキサ−9,11,15−トリヒドロキシ−16−(3−クロロフェノキシ)−17,18,19,20−テトラノル−5,13−プロスタジエン酸 イソプロピルエステル;
(5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11−ヒドロキシ−15−メトキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 t−ブチルエステル;
(5Z)−(9R,11R,15R)−15−シクロヘキシル−3−オキサ−9,11,15−トリヒドロキシ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸
イソプロピルエステル;
(5E)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 イソプロピルエステル;
(5Z)−(9R,11R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11−ヒドロキシ−3−オキサ−15−オキソ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 t−ブチルエステル;
(5Z)−(9S,11R,15R)−3−オキサ−17−フェニル−9,11,15−トリヒドロキシ−18,19,20−トリノル−5−プロステン酸 イソプロピルエステル;
(5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−1−(ジメチルアミノ)−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン−11,15−ジオール;
(5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステノール;
(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11−ヒドロキシ−3−チア−16,17,18,19,20−ペンタノル−13−プロスチン酸;
ラタノプロスト(PhXA41);
クロプロステノール イソプロピルエステル;
(5Z)−(9S,11R,15R)−1−デカルボキシ−1−(ピバロイルオキシ)メチル−9,11,15−トリヒドロキシ−16−[(3−クロロフェニル)オキシ]−17,18,19,20−テトラノル−5−プロステン酸;
(5Z)−(9S,11R,15R)−1−デカルボキシ−1−(ピバロイルオキシ)メチル−9,11,15−トリヒドロキシ−16−[(3−クロロフェニル)オキシ]−17,18,19,20−テトラノル−5,13−プロスタジエン酸;
(5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 イソプロピルエステル;
(5Z)−(9S,11R,15S)−15−シクロヘキシル−9,11,15−トリヒドロキシ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 イソプロピルエステル;
(5Z,13E)−(9S,11R,15R)−9,11,15−トリヒドロキシ−16−(3−クロロフェノキシ)−17,18,19,20−テトラノル−5,13−プロスタジエン酸アミド;
PGF2αイソプロピルエステル;および
フルプロステノール イソプロピルエステル
からなる群から選択される、上記項13に記載の方法。
(21)前記プロスタグランジンが、(5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 イソプロピルエステル;
(5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 t−ブチルエステル;
(5Z)−(9S,11R,15R)−15−シクロヘキシル−3−オキサ−9,11,15−トリヒドロキシ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸
イソプロピルエステル;
(5Z)−(9R,11R,15S)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 イソプロピルエステル;
(5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸アミド;
(5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 N,N−ジメチルアミド;および
(5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 1−メチルシクロヘキシルエステルからなる群から選択される、上記項20に記載の方法。
(22)前記プロスタグランジンが、(5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 イソプロピルエステルおよび
(5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 t−ブチルエステル
からなる群から選択される、上記項21に記載の方法。
(23)前記プロスタグランジンが、約0.0001重量%と約0.1重量%との間の濃度で存在する、上記項13に記載の方法。
(24)前記組成物が局所的に投与可能な眼科用組成物である、上記項13に記載の方法。
(25)緑内障および高眼圧症を治療する方法であって、プロスタグランジン、ポリエトキシ化ひまし油、および眼科的に受容可能なベヒクルを含有する組成物を、患眼部に局所的に投与する工程を包含し、ここで、該ポリエトキシ化ひまし油が、該プロスタグランジンを化学的に安定化するために有効な量で存在する、方法。
【発明の効果】
【0011】
このような組成物中のポリエトキシ化ひまし油を使用することにより、薬学的組成物中のプロスタグランジンの化学的安定性が増強される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、pH5.0で保存されたプロスタグランジン処方物中のポリエトキシ化ひまし油の、異なる濃度における安定化効果を示す。
【図2】図2は、pH5.0で保存されたプロスタグランジン処方物中の異なる界面活性剤の安定化効果を比較する。
【図3】図3は、pH7.4で保存されたプロスタグランジン処方物中の異なる界面活性剤の安定化効果を比較する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の詳細な説明
プロスタグランジンエステルは、加水分解的に不安定である傾向があるので、貯蔵安定な溶液中で処方するのが難しい。いくつかの場合では、いくつかのプロスタグランジンエステルの親酸(parent acid)もまた不安定である。しかし、本発明の薬剤組成物は貯蔵安定性である。これらの組成物は、プロスタグランジンおよび安定性を増強させる量のポリエトキシ化ひまし油を含有する。
【0014】
本発明の組成物中の有用なポリエトキシ化ひまし油は、市販されており、そしてPEG−2ひまし油〜PEG−200ひまし油として分類されたひまし油、ならびにPEG−5水素添加ひまし油〜PEG−200水素添加ひまし油として分類されたひまし油を包含する。このようなポリエトキシ化ひまし油は、Alkamuls(登録商標)ブランドのRhone−Poulenc(Cranbury、New Jersey)によって製造されたポリエトキシ化ひまし油、およびCremophor(登録商標)ブランドのBASF(Parsippany、New Jersey)によって製造されたポリエトキシ化ひまし油を包含する。PEG−15ひまし油〜PEG−50のひまし油として分類されたポリエトキシ化ひまし油を使用することが好ましい。そして、PEG−30ひまし油〜PEG−35ひまし油を使用することがより好ましい。Cremophor(登録商標)ELおよびAlkamuls(登録商標)EL−620として知られるポリエトキシ化ひまし油を使用することが最も好ましい。
【0015】
用語「プロスタグランジン」および「PG」は、一般に、プロスタン酸(prostanoic acid)(1)のアナログおよび誘導体である化合物のクラスを記載するために使用される:
【0016】
【化1】

PG類は、例えば、文字表示を用いて、5員環構造に従ってさらに分類され得る:
A系列のプロスタグランジン類(PGA’s):
【0017】
【化2】

B系列のプロスタグランジン類(PGB’s):
【0018】
【化3】

C系列のプロスタグランジン類(PGC’s):
【0019】
【化4】

D系列のプロスタグランジン類(PGD’s):
【0020】
【化5】

E系列のプロスタグランジン類(PGE’s):
【0021】
【化6】

F系列のプロスタグランジン類(PGF’s):
【0022】
【化7】

J系列のプロスタグランジン類(PGJ’s):
【0023】
【化8】

PG類は、側鎖上の不飽和結合の数に基づいてさらに分類され得る:
PG類(13,14−不飽和):
【0024】
【化9】

PG類(13,14−および5,6−不飽和)
【0025】
【化10】

PG類(13,14− 5,6−および17,18−不飽和):
【0026】
【化11】

本発明において利用され得るプロスタグランジンは、薬学的に受容可能なプロスタグランジン、これらの誘導体およびアナログ、ならびにこれらの薬学的に受容可能なエステルおよび塩を全て包含する。このようなプロスタグランジンは、天然の化合物:PGE、PGE、PGE、PGF1α、PGF2α、PGF3α、PGDおよびPGI(プロスタサイクリン)、ならびにより大きい効力かあるいはより小さい効力かのどちらかの同様な生物学的活性を有する、これらの化合物のアナログおよび誘導体を包含する。天然のプロスタグランジンのアナログは、以下を包含するが、これらに限定されない:アルキル置換(例えば、15−メチルまたは16,16−ジメチル)、これらは、生物学的代謝を減少させることによって増強されたまたは維持された効力を与えるか、あるいは作用の選択性を変化させる;飽和(例えば、13,14−ジヒドロ)または不飽和(例えば、2,3−ジデヒドロ、13,14−ジデヒドロ)、これらは、生物学的代謝を減少させることによって維持された力を与えるか、あるいは作用の選択性を変化させる;削除(deletion)または置換(例えば、11−デオキシ、9−デオキソ−9−メチレン)、酸素に対してクロロ(またはハロゲン)(例えば、9β−クロロ)、炭素に対して酸素(例えば、3−オキサ)、酸素に対して低級アルキル(例えば、9−メチル)、酸素に対して水素(例えば、1−CHOH、1−CHOアシル)、これらは、化学的安定性および/または作用の選択性を増強する;そしてω−鎖の修飾(例えば、18,19,20−トリノル−17−フェニル、17,18,19,20−テトラノル−16−フェノキシ)、これらは、作用の選択性を増強し、そして生物学的代謝を減少させる。これらのプロスタグランジンの誘導体は、全ての薬学的に受容可能な塩およびエステルを包含する。これらは、対応するアルコールまたは有機酸試薬を適切に使用することによって、プロスタグランジンの1-カルボキシル基または任意のヒドロキシル基に結合され得る。用語「アナログ」および「誘導体」は、プロスタグランジン自体のそれらと類似の機能的応答および物理的応答を示す化合物を包含する。
【0027】
本発明において有用なプロスタグランジンの特定の例は、以下の化合物を包含する:
化合物番号
1. (5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸(prostenoic acid);
2. (5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 イソプロピルエステル;
3. (5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 t−ブチルエステル;
4. (5Z)−(9S,11R,15R)−15−シクロヘキシル−3−オキサ−9,11,15−トリヒドロキシ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 イソプロピルエステル;
5. (5Z)−(9R,11R,15S)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸イソプロピルエステル
6. (5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸アミド;
7. (5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 N,N−ジメチルアミド;
8. (5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 1−メチルシクロヘキシルエステル;
9. (5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 1−メチルシクロペンチルエステル;
10. (5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 シクロペンチルエステル;
11. (5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 2,2−ジメチルプロピルエステル;
12. (5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 アダマンチルエステル;
13. (5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 2,6−ジイソプロピルフェニルエステル;
14. (5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 2,6−ジメチルフェニルエステル;
15. (5Z,13E)−(9S,11R,15R)−3−オキサ−9,11,15−トリヒドロキシ−16−(3−クロロフェノキシ)−17,18,19,20−テトラノル−5,13−プロスタジエン酸(prostadienoic acid)イソプロピルエステル;
16. (5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11−ヒドロキシ−15−メトキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 t−ブチルエステル;
17. (5Z)−(9R,11R,15R)−15−シクロヘキシル−3−オキサ−9,11,15−トリヒドロキシ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 イソプロピルエステル;
18. (5E)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 イソプロピルエステル;
19. (5Z)−(9R,11R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11−ヒドロキシ−3−オキサ−15−オキソ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 t−ブチルエステル;
20. (5Z)−(9S,11R,15R)−3−オキサ−17−フェニル−9,11,15−トリヒドロキシ−18,19,20−トリノル−5−プロステン酸 イソプロピルエステル;
21. (5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−1−(ジメチルアミノ)−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン−11,15−ジオール;
22. (5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−3−オキサ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステノール;
23. (9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11−ヒドロキシ−3−チア−16,17,18,19,20−ペンタノル−13−プロスチン酸(prostynoic acid);
24. ラタノプロスト(Latanoprost)(PhXA41);
25. クロプロステノール(Cloprostenol)イソプロピルエステル;
26. (5Z)−(9S,11R,15R)−1−デカルボキシ−1−(ピバロイルオキシ)メチル−9,11,15−トリヒドロキシ−16−[(3−クロロフェニル)オキシ]−17,18,19,20−テトラノル−5−プロステン酸;
27. (5Z)−(9S,11R,15R)−1−デカルボキシ−1−(ピバロイルオキシ)メチル−9,11,15−トリヒドロキシ−16−[(3−クロロフェニル)オキシ]−17,18,19,20−テトラノル−5,13−プロスタジエン酸;
28. (5Z)−(9R,11R,15R)−9−クロロ−15−シクロヘキシル−11,15−ジヒドロキシ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 イソプロピルエステル;
29. (5Z)−(9S,11R,15S)−15−シクロヘキシル−9,11,15−トリヒドロキシ−16,17,18,19,20−ペンタノル−5−プロステン酸 イソプロピルエステル;
30. (5Z,13E)−(9S,11R,15R)−9,11,15−トリヒドロキシ−16−(3−クロロフェノキシ)−17,18,19,20−テトラノル−5,13−プロスタジエン酸アミド;
31. PGF2αイソプロピルエステル;および
32. フルプロステノール(Fluprostenol)イソプロピルエステル。
【0028】
前述の化合物は、全て公知である。本発明の組成物における使用に対して好ましいプロスタグランジンは、上記の化合物2〜8である。上記の化合物2および3が最も好ましい。化合物2および3の構造を、以下に示す。
【0029】
【化12】

本発明のプロスタグランジン組成物は、プロスタグランジンの安定性を増強するために有効な量の、1種またはそれ以上のポリエトキシ化ひまし油を含有する。図1に例示するように、ポリエトキシ化ひまし油の安定化効果は、ポリエトキシ化ひまし油の濃度の増加と共に増加する。しかし、他の要因が、本発明の組成物中で利用されるポリエトキシ化ひまし油の量を制限し得る。例えば、プロスタグランジンの薬理学的な活性に悪影響を及ぼさないためには、あまりにも多くのポリエトキシ化ひまし油を使用するべきではない。
【0030】
一般に、本発明の組成物は、約0.02重量%(wt%)と約20.0重量%(wt%)との間の量で、1種またはそれ以上のポリエトキシ化ひまし油を、そして約0.00001重量%と約0.2重量%との間の量で、1種またはそれ以上のプロスタグランジンを含有する。約0.1重量%と約5.0重量%との間の量で、1種またはそれ以上のポリエトキシ化ひまし油を使用することが好ましく、そして約0.5重量%と約2.0重量%との間の量で使用することが特に好ましい。プロスタグランジンの効力に応じて、約0.0001重量%と約0.1重量%との間の量で1種またはそれ以上のプロスタグランジンを使用することが好ましい。
【0031】
本発明の組成物は、種々の方法で、身体に投与され得る。この組成物は、口により、静脈内注射により、または皮膚、鼻または眼への局所的施用により投与され得る。眼への局所的投与に対して調製された組成物が最も好ましい。
【0032】
上記の主要な活性成分に加えて、本発明の組成物は、抗菌保存剤、張性剤(tonicity agent)、および緩衝剤のような様々な処方(formulatory)成分をさらに含有し得る。適切な抗菌保存剤の例としては、塩化ベンザルコニウム、チメロサール、クロロブタノール、メチルパラベン、プロピルパラベン、フェニルエチルアルコール、エデト酸二ナトリウム、ソルビン酸、Polyquad(登録商標)および当業者に周知の他の試薬が挙げられる。このような保存剤は、利用される場合、代表的には、約0.001重量%と約1.0重量%との間の量で使用される。処方物の張度(tonicity)またはモル浸透圧濃度(osmolality)を調整するために利用され得る適切な試薬の例としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトール、デキストロース、グリセリンおよびプロピレングリコールが挙げられる。このような試薬は、利用される場合、約0.1重量%と約10.0重量%との間の量で使用される。適切な緩衝剤の例としては、酢酸、クエン酸、炭酸、リン酸、ホウ酸、前述の薬学的に受容可能な塩、およびトロメタミンが挙げられる。このような緩衝剤は、利用される場合、約0.001重量%と約1.0重量%との間の量で使用される。
【0033】
本発明の組成物は、持続放出性および/または快適性を提供するための成分をさらに含有し得る。このような組成物としては、米国特許第4,861,760号(Mazuelら)、同第4,911,920号(Janiら)、および同一譲渡人に係る米国特許出願第08/108,824号(Langら)に記載されるような、高分子量で、アニオン性のムコミメティック(mucomimetic)ポリマーおよびゲル化多糖(gelling polysaccharides)が挙げられる。上記に引用されたポリマーに関係する、これらの特許および特許出願の内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0034】
当業者により認識されるように、本組成物は、局所的な眼科用送達に快適な様々な投与形態(液剤、懸濁剤、乳化剤、ゲル剤および腐食性(erodible)固体の眼挿入剤を含む)で製剤化され得る。本組成物は、好ましくは水性であり、3.5〜8.0の間のpHおよび1キログラム当たり260ミリオスモル〜320ミリオスモル(mOsm/kg)の間のモル浸透圧濃度を有する。
【0035】
本発明はまた、緑内障および他の眼科疾患および異常の治療方法に関する。本方法は、本発明に従う組成物の治療有効量を、患者の患眼部(affected eye)に局所的に施用する工程を包含する。投与の頻度および量は、様々な臨床的要因に基づいて主治医により決定される。この方法は、代表的には、1滴または2滴(約30マイクロリットル)の液体組成物、あるいは等量の固体または半固体投与形態を、患眼部に、1日当たり1回〜2回、局所的に施用する工程を包含する。
【実施例】
【0036】
実施例
以下の局所的に投与可能な眼科用処方物は、本発明の組成物の代表例である。
【0037】
【表1】

処方物A〜Cの調製:
適切な大きさのきれいなガラス容器に、バッチ容量の水の約75%を加えた。これに、酢酸ナトリウム、トロメタミン、ホウ酸、マンニトール、EDTA、塩化ベンザルコニウム、およびCremophor(登録商標)ELを次の成分を添加する前に、1つの成分が完全に溶解するように連続的に加えた。次に、この溶液のpHをNaOHおよび/またはHClを用いて調整し、そして水を加えて、容量を100%にした。
【0038】
別のきれいなガラス容器に、適切な量のプロスタグランジンを加え、続いて適切な量のベヒクル(調製は上記)を加えた。次いで、この容器をしっかりとキャップし、そしてプロスタグランジンが完全に溶解するまで、超音波浴中で1時間超音波処理するか、または代わりに磁気撹拌子で一晩撹拌した。次いで、得られた溶液を、滅菌容器中へ滅菌濾過し
た(0.2ミクロンフィルター)。次いで、これらの容器を無菌的に接続し、キャップし、そしてラベルした。
【0039】
本発明の組成物中のポリエトキシ化ひまし油の安定化効果を、以下の手順に従って、評価した。
【0040】
1. 必要量の1%w/vプロスタグランジンのエタノールストック溶液をピペットで取って、1.5mLの高速液体クロマトグラフ(HPLC)サンプル瓶に入れる。
【0041】
2. ヘリウム気流下でサンプル瓶を乾燥する。
【0042】
3. 1mLの適切なベヒクル(または標準についてはHPLC移動相)を加える。
【0043】
4. プロスタグランジンを溶解させるために、瓶を1時間超音波処理する。
【0044】
5. 最初のHPLCアッセイを行う。
【0045】
6. HPLCサンプル瓶を、数mLの脱イオン化水と共に、20ccのシンチレーション瓶内に配置し、そしてしっかりとキャップする。(留意:これは、蒸発によるロスを防ぐ。)標準を、HPLC移動相と共にシンチレーション瓶に保存する。
【0046】
7. この瓶を、適切に制御された温度のオーブン内に配置し、そしてHPLCによって定期的に再アッセイする。標準を、冷蔵庫中に保存する。
【0047】
8. HPLCデータ分析:サンプルのピーク面積を標準ピーク面積で割り、そして100を掛けて、各時間点での各サンプルに対する標準のパーセントを得る。
【0048】
9. 半対数グラフ上で、標準のパーセントを時間に対してプロットする。単−指数関数方程式(monoexponential equation)をデータに適合させる。傾き時間(slope time)2.303は、各プロットに対する見かけの1次分解速度定数である。(留意:2.303の因子は、常用対数を自然対数に変換する。)
図1は、処方物A中のポリエトキシ化ひまし油の濃度を増大させる効果を示す。所定の濃度のプロスタグランジンの化学的安定性は、Cremophor(登録商標)ELの濃度が増加するに従い、増加する。
【0049】
図2は、タイプAの処方物(pH=5.0)中のポリソルベート80に対する、ポリエトキシ化ひまし油、Cremophor(登録商標)ELおよびAlkamuls(登録商標)EL−620の優れた安定化効果を示す。
【0050】
図3は、タイプCの処方物(pH=7.4)中のポリソルベート80に対する、ポリエトキシ化ひまし油、Cremophor(登録商標)ELおよびAlkamuls(登録商標)EL−620の優れた安定化効果を示す。
【0051】
図1〜3に示されるデータを、Spherisorb(登録商標)10 ODS(2)パッキングを有するPhenomenex 250×4.6mm HPLCカラムを用いて得た。移動相は、50/50 アセトニトリル/0.1%リン酸(NaOHを用いてpH3にした)、5mM 水酸化テトラブチルアンモニウム、および5mMドデシル硫酸ナトリウムであった。流速は2mL/分であり、検出は190〜192nmのUVであり、そして注入量は25mcLであった。
【0052】
本発明は、特定の好ましい実施態様を参考に記述されている;しかし、本発明が、その精神または本質的な特徴から離れることなく、他の特定の形態またはその変形において具現化され得ることは、理解されるべきである。従って、上記の実施態様は、全ての点で例示的であり、限定するものではないと考えられ、そして本発明の範囲は先の記載によるよりもむしろ添付の請求の範囲により示される。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によれば、プロスタグランジンを含有する薬剤組成物中のポリエトキシ化ひまし油の使用が提供される。このような組成物中のポリエトキシ化ひまし油を使用することにより、薬学的組成物中のプロスタグランジンの化学的安定性が増強されることを、今回期せずして発見した。本発明の組成物は、種々の方法で身体に投与され得る。眼に局所的に施用される場合、本発明の組成物は、初期時の快適さおよび継続的な快適さの両方を提供する。
本発明の好ましい実施形態においては、以下の組成物および方法が提供される。
(項1)
プロスタグランジン、該プロスタグランジンの化学的安定性を増強するために有効な量のポリエトキシル化ひまし油、および薬学的に受容可能なベヒクルを含有する薬学的組成物。
(項2)
薬学的プロスタグランジン組成物の化学的安定性を増強する方法であって、ポリエトキシ化ひまし油を該組成物に添加する工程を包含する方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−43131(P2010−43131A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266859(P2009−266859)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【分割の表示】特願2004−302299(P2004−302299)の分割
【原出願日】平成7年12月19日(1995.12.19)
【出願人】(594195498)アルコン ラボラトリーズ,インコーポレイティド (3)
【Fターム(参考)】