説明

貯蔵米の製造方法及びその装置

【課題】無菌状態を保持し、単粒化し、計量誤差の発生も減らし、風味のある米飯を常時得られる貯蔵米の製造方法及びその装置の提供。
【解決手段】洗浄し20〜120分間水浸漬した後水切りした米を0.25〜1.5kg/cmの蒸気で蒸して米澱粉の一部をアルファー化し、その蒸し米を熱い状態のまま予備ほぐしを行い、計量して袋10に入れ、開封のまま容器11に入れて密封し、容器11内で690mmHg以上の真空状態を10秒間〜30秒間保持して蒸し米を常温にしたあと、容器11内に無菌エアーを送り大気圧としてから袋10をシールし、その後容器11を開いて袋入り蒸し米を取り出し常温にて24〜48時間放置して熟成させ、袋入り蒸し米に本ほぐしを行い、単粒化した状態のアルファー化処理米を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長期にわたり保存出来、足りない分の水を貯蔵米に添加し加熱して含有させることにより、風味のある米飯を容易に得ることの出来る貯蔵米の製造方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
貯蔵米の製造方法として、本発明者及び本出願人らによる以下のものが知られている。
【特許文献1】 特開平1−304856号公報
【特許文献2】 特開平3−123456号公報
【特許文献3】 特開平7−31391号公報
【0003】
上記した特許文献1及び2の貯蔵米の製造方法は、洗った米を水に120分間以上浸漬してから水切りをし、その米を1.0kg/cm程度の蒸気で蒸して少なくとも米澱粉の一部をアルファー化し、その蒸し米を外気に触れないように素早く容器に移して、その容器を収納庫に入れその収納庫を密封して、収納庫内を減圧し真空冷却して蒸し米の温度を常温まで下げ、収納庫を開けて冷却した蒸し米入りの容器を取り出し、5℃程度の低温且つ無菌状態を保持した低温無菌室に入れて2日間ほど放置し、アルファー化した米澱粉を熟成させる。熟成が終わった蒸し米は塊となっているから、ほぐし単粒化して所定量に計量し袋詰めして、製品化している。
【0004】
したがって、上記した特許文献1及び2の貯蔵米の製造方法は、工程中に人が介在し且つ外気に米が触れる機会が多いから、特に衛生管理の面で無菌状態を保持することが煩わしく、高度な衛生管理を常時しなければならないため、コスト高となりやすい。このような不都合な点を解消したのが、特許文献3の貯蔵米の製造方法である。
【0005】
この特許文献3の貯蔵米の製造方法は、洗米した米を常温の水に20分間〜120分間浸漬してから水切りをし、その米を0.25kg/cm〜1.5kg/cmの蒸気で蒸して少なくとも米澱粉の一部をアルファー化し、その蒸し米を熱い状態のまま直ちに計量して袋に入れ、この袋を開封状態のまま容器内に入れてその容器を密封し、該容器内で690mmHg以上の真空状態を10秒間〜30秒間保持出来るようにして蒸し米を常温にしたあと、容器内に無菌エアーを送り大気圧としてから容器内で袋をシールし、そのあと容器を開いて袋入り蒸し米を取り出し常温にて24時間〜48時間放置しアルファー化した米澱粉を熟成させ、さらにこの袋入り蒸し米をそのままほぐして、米を単粒化した状態のアルファー化処理米とするものである。
【0006】
したがって、特許文献3の貯蔵米の製造方法は、工程中に人が介在することがなく、外気に触れる機会もほとんどなく、衛生管理の面で無菌状態を保持することが容易であり、高度な衛生管理を常時行う必要性がなくなって、コストを下げることが可能となるものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3の貯蔵米の製造方法は、人手間をかけなくても、無菌状態を容易に保持できる点で優れているが、蒸し米を熱い状態のまま直ちに計量して袋に入れるため、袋入り蒸し米の米澱粉を熟成させたあと、ほぐしを行っても単粒化しづらく、塊(通称「ダマ」)が貯蔵米の中に残ってしまう。この塊が大きく且つ多いと、貯蔵米に足りない分の水を添加し熱しても、その水が貯蔵米に均等に含有することができなくなり、風味のある米飯を得ることが難しくなる。加えて、この塊が貯蔵米の中に多くあることで、塊の重量が重く分割できないから、その塊が計量側に入るのか、入らないのかにより、計量差が大きくなって、計量が不安定となり、計量誤差が生じ計量不良品(不足する場合と多すぎる場合との両方)が発生する虞も多くなる。
【0008】
そこで、本発明の目的は、本発明者及び本出願人らによる特許文献3の貯蔵米の製造方法を改良することであり、人手間をかけないで無菌状態を保持できるのに、貯蔵米の中に塊が残りづらく、計量誤差の発生も減らして、風味のある米飯を常時得ることが可能な貯蔵米の製造方法及びその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであって、下記の構成からなることを特徴とするものである。
すなわち、本発明によれば、洗った米を水に20分間〜120分間浸漬してから水切りをし、その米を0.25kg/cm〜1.5kg/cmの蒸気で蒸して少なくとも米澱粉の一部をアルファー化し、その蒸し米を熱い状態のまま直ちに予備ほぐしを行うと共に計量して袋に入れ、該袋を開封状態のまま容器内に入れて容器を密封し、該容器内で690mmHg以上の真空状態を10秒間〜30秒間保持出来るようにして蒸し米を常温にしたあと、前記容器内に無菌エアーを送り大気圧としてから容器内で袋をシールし、そのあと前記容器を開いて袋入り蒸し米を取り出し常温にて24時間〜48時間放置しアルファー化した米澱粉を熟成させ、さらにこの袋入り蒸し米をそのまま本ほぐしを行い、前記米を単粒化した状態のアルファー化処理米としたことを特徴とする貯蔵米の製造方法が提供される。
【0010】
また、本発明によれば、米貯留タンクから米を受け入れて洗う洗米部と、洗米後の米を貯留し常温の水にて20分間〜120分間浸漬すると共に水切りする浸漬水切部と、浸漬水切後の米を一定量貯留するタンクの底板及び側板の多数の孔より0.25kg/cm〜1.5kg/cmの蒸気を吹き込んで蒸しかつ内部に米を一定量排出する定量フィーダーを有してなる蒸し機と、蒸し米を受け入れ予備ほぐしを行うと共にその所定量を計量する計量機と、計量された蒸し米を袋にて受け入れ開封のまま容器内に入れて該容器を閉じ690mmHg以上の真空状態を10秒間〜30秒間保持するようにしたあと前記容器内に無菌エアーを入れ大気圧とし袋を密封して前記ハッチ内から袋入り蒸し米を取り出す真空冷却包装機と、アルファー化した米澱粉を熟成させたあと袋入り蒸し米を本ほぐしをして単粒化した状態のアルファー化処理米とする熟成ほぐし部と、を具備してなることを特徴とする貯蔵米の製造装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の貯蔵米の製造方法によれば、洗った米を水に20分分間〜120分間浸漬してから水切りをし、その米を0.25kg/cm〜1.5kg/cmの蒸気で蒸して米澱粉をアルファー化し、その蒸し米を熱い状態のまま直ちに予備ほぐしを行いそのあと計量して袋に入れ、該袋を開封状態のまま容器内に入れて容器を密封し、該容器内で690mmHg以上の真空状態を10秒間〜30秒間保持出来るようになると20℃程度になるから、容器内に無菌エアーを送り大気圧としたあと袋をシールするので、米や袋内にゴミや細菌等が混入しない。袋詰めされた状態であるから、広大な低温の無菌室が無くても常温にて24時間〜48時間放置してアルファー化した米澱粉を熟成させることができる。更に無菌エアーで大気圧とした容器内で袋を密封するから無菌エアーが袋に入った状態になり、蒸し米同士が付着していても本ほぐしを行えば、米粒が容易にばらけ単粒化した状態のアルファー化処理米になる。したがって、本発明者及び本出願人らによる特許文献3の貯蔵米の製造方法による、不十分な単粒化と不安定な計量の改良が可能となり、すなわち、人手間をかけないで無菌状態を保持できるのに、貯蔵米の中に塊が残りづらく、計量誤差の発生も減らして、風味のある米飯を常時得ることが可能となる効果がある。
【0012】
また、本発明の貯蔵米の製造装置によれば、上記発明の貯蔵米の製造方法を効率よく実施でき、効率良く貯蔵米を製造することができるから、その分従来のものよりメリットがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1は本発明の貯蔵米の製造方法を具体化した製造装置のフロシート図、図2は貯蔵米の製造装置を構成する蒸し機の一部を切欠した斜視図である。図において、1は貯蔵米の製造装置を示し、この製造装置1は、貯留タンク2から米を受け入れ洗う洗米部3と、洗米後の米を貯留し常温の水にて20分間〜120分間浸漬すると共に水切りする浸漬水切部4と、浸漬水切後の米を一定量貯留するタンク5の底板5a及び側板5bの多数の孔6より0.25kg/cm〜1.5kg/cmの蒸気を吹き込んで蒸しかつ内部に米を一定量排出する定量フィーダー7を有してなる蒸し機8と、蒸し米を受け入れ予備ほぐしを行うと共にその所定量を計量する計量機9と、計量された蒸し米を袋10にて受け入れ開封のまま容器である容器11内に入れて該容器11を閉じ690mmHg以上の真空状態を10秒間〜30秒間保持するようにしたあと容器11内に無菌エアーを入れ大気圧とし袋10を密封して容器11内から袋入り蒸し米を取り出す真空冷却包装機12と、アルファー化した米澱粉を熟成させたあと袋入り蒸し米を本ほぐしを行って単粒化した状態のアルファー化処理米とする熟成ほぐし部13と、を具備してなるものである。
【0014】
前記洗米部3は、生米を貯留する貯留タンク2が3基に対して洗米機20が1台であるから、移動する供給タンク21に貯留タンク2から洗浄する1回分の米を受け入れ、洗米機20の上方に供給タンク21を移動して、洗米機20に米を投入して洗米する。洗米終了後に水と共に米をポンプ22により浸漬タンク23に送る。
【0015】
前記浸漬水切部4は、2基の浸漬タンク23と、前記蒸し機8に浸漬水切りした米を送るコンベアー24とを有している。浸漬タンク23の浸漬時間は20分間〜120分間であるから、少なくとも最小値の20分間分以上の容量が必要となる。すなわち、一方の浸漬タンク23から浸漬水切りした米を蒸し機8に供給している間に、他方の浸漬タンク23に洗米した米を貯留すると共に浸漬水切り作業を実行する。これらの作業はパイプ25に設けたバルブ26を切り替えることにより実行する。なお、浸漬タンク23、23から交互に蒸し機8にコンベアー24により浸漬水切りした米を送るために、浸漬タンク23、23の下部にロータリーバルブやバタフライ弁などの切替弁27、27を設け、これら切替弁27、27を開閉することにより行う。
【0016】
前記蒸し機8は、下部がV字状なったタンク5内の底部に定量フィーダー7を設け、この定量フィーダー7はモータ7aに直結し、タンク5の側面には定量フィーダー7の排出管30が設けられている。この排出管30は、水平に設けた直管31とその先端に曲管32を取り付けてなる。そして、このタンク5は、そのV字状になった底板5a及び側板5bの外側を板にて覆い蒸気室33を形成し、さらに、タンク5内にある定量フィーダー7の上方に蒸気吹出管34を設けている。これら蒸気室33及び蒸気吹出管34はボイラー35に直結している。このボイラー35は、タンク5内に0.25kg/cm〜1.5kg/cmの蒸気を吹き込むことができるものが選択される。
【0017】
前記計量機9は、図3に示すように、蒸し機8の排出管30からの蒸し米を一旦受け入れるホッパー40と、そのホッパー40下に取り付けた予備ほぐし機41と、この予備ほぐし機4を通過したあとの蒸し米を計量する計量部42とからなる。この計量機9は、蒸し機8の排出管30から定量フィーダー7によりほぼ定量的に送られてくる蒸し米をホッパー40にて受け入れ、予備ほぐし機41の2本のパドル41aとほぐしドラム41bとにより予備ほぐしを行い、さらに計量部42にて予め定めた量を計量すると、排出管30からの蒸し米の供給を一時的に止め、袋10に計量した量の蒸し米を入れる。なお、袋10に蒸し米を入れる際、脱酸素剤供給機43により脱酸素剤44も入れる。この脱酸素剤44は酸化鉄などであり、袋10内の酸素を吸収し蒸し米の保存性を向上させるものである。
【0018】
前記真空冷却包装機12は、既に述べたように、複数の容器11を少なくとも4個有している。これらの容器11には、自動的に開閉し密封できるフタが設けられ、順次以下に示す工程50、51、53、55を踏み循環するようになっている。第1の工程50は、容器11のフタを開いて、蒸し米を収容した袋10を開封のままの状態で容器11内に入れる工程である。第2の工程51は、容器11のフタを閉じて密封し、真空発生機52に接続して690mmHg以上の真空状態を10秒間〜30秒間保持するようにしてた工程である。第3の工程53は、無菌エアー発生機54に接続して容器11内を大気圧にすると共に、容器11内に設けたシール機(図示せず)により袋10をシールする工程である。第4の工程55は、容器11を開いて袋10を取り出し搬送コンベアー56に載せる工程である。
【0019】
上記真空冷却包装機12の冷却負荷を軽減するために、すなわち、真空発生機52の容量を小さくするために、排出管30から排出した蒸し米を計量して袋10に入れるまでの間に、バルブ45を開いて前述の無菌エアー発生機54から無菌エアーを蒸し米に吹き付けるのが良い。このようにすることにより、排出管30から排出した直後の蒸し米は98℃ぐらいであるが、直ちに80℃〜70℃に低下させることができる。
【0020】
前記熟成ほぐし部13は、搬送コンベアー56により搬送された袋10入りの20℃程の蒸し米を、常温にて24時間〜48時間放置しアルファー化した米澱粉を熟成させる熟成ヤード14と、この袋入りの熟成させた蒸し米をそのまま本ほぐしを行い、単粒化した状態にする本ほぐし機15と、からなる。この熟成ヤード14は、常温でも良いから、夏場などで著しく気温が上昇しない倉庫であれば、その役割を果たすことができる。この熟成ヤード14において、袋10入り蒸し米は、アルファー化状態、すなわち、通常の炊き上がった状態である澱粉分子が水分子と結合しそれらを媒介にして互いに連なった状態が安定化し離しょう現象が生じない状態となる。この袋10入りアルファー化処理米は、予備ほぐしされてはいるものの、米粒子が付着して塊状態になっている。
【0021】
そこで、前記本ほぐし機15により、袋10入りアルファー化処理米は更にほぐされ、単粒化した状態とされる。すなわち、この本ほぐし機15は、上部コンベアー57と下部コンベアー58とからなり、これら双方のコンベアー57及び58のローラ57a及び58aが千鳥状に配置されている。これらコンベアー57及び58のローラ57a及び58aの間に袋10を通すことにより、塊状のアルファー化処理米は既に予備ほぐしされているので米粒子の付着力が弱く、この本ほぐしにより更にほぐされて、ほぼ完全に単粒化し、通常の生米とほとんど変わらないような状態になり、製品59となる。この製品59は前記製品ヤード16に積まれる。
【0022】
次に、上記構成になる貯蔵米の製造装置1により、その製造方法を説明する。
生米が貯留されているいずれかの貯留タンク2の真下に供給タンク21を移動させ、下部にあるバルブ(不図示)を開いて供給タンク21内に米を供給する。供給タンク21内に米を供給し終わったら、供給タンク21を洗米機20の上に移動させ、洗米機20に米を投入し洗米する。洗米し終わったら配管25中の一方のバルブ26を開き洗米した米を水と共にポンプ22にて一方の浸漬タンク23に送り、一方の浸漬タンク23が満杯になったら、一方のバルブ26を閉じ、他方のバルブ26を開き洗米した米を他方の浸漬タンク23に送る。
【0023】
次に、所定量の米が入った浸漬タンク23内に水を張り、20分間〜120分間浸漬させ米に水を充分吸収させてから、浸漬タンク23から水を抜くことで米の水切りを行う。水切りの終わった米は、切替弁27を開いて稼働しているコンベアー24から蒸し機8のタンク5内に投入される。タンク5内に一定量の生米が投入されたらボイラー35からタンク5の外側にある蒸気室33及び蒸気吹出管34に0.25kg/cm〜1.5kg/cmの蒸気を送り込み、タンク5の底板5a及び側板5bの多数の孔6並びに蒸気吹出管34から蒸気を吹き出し、米を蒸す。この間、定量フィーダー7を稼働させると、排出管30から予め設定した蒸し具合まで蒸していない米を排出することになるので、タンク5内の米を攪拌する程度に定量フィーダー7を間欠的に稼働させさせたり、正逆回転させたりして予め設定した蒸し具合の蒸し米になるまで、排出管30から排出しないようにしている。
【0024】
蒸し機8内で米が、予め設定した蒸し具合まで蒸し上がったら、定常的な定量フィーダー7の運転に入る。すなわち、生米が、蒸し機8のタンク5内に投入され排出管30から排出されるまで、予め設定した蒸し具合まで蒸し上がる所定の時間滞留するようにする。この滞留時間は、米の浸漬時間、換言すれば、生米に水がどの程度吸収しているか、蒸気圧、米澱粉のアルファー化度をどの程度にするか、などのファクターにより大きく変化する。
【0025】
定常運転に入った蒸し機8の排出管30から、蒸し米が計量機9のホッパー40に投入されるが、排出管30の先端が曲管32になっているから、排出管30内に蒸し米が充満した状態になり、蒸し米がかなり高い精度で定量的にホッパー40に投入されることになる。そして、ホッパー40下の予備ほぐし機41により蒸し米を予備ほぐしする。この予備ほぐしは、回転している2本のパドル41aの間を蒸し米が通り、さらに回転しているドラム41bを通過することにより実施され、蒸し米は一旦バラける。予備ほぐしにより一旦バラけた蒸し米は、計量部42により計量が行われる。すなわち、計量部42が蒸し米を予め定めた量に計量すると、排出管30からの蒸し米の供給を一時的に止めると共に、計量部42の下部を開き計量した量の蒸し米を袋10に入れ、さらに脱酸素剤供給機43により脱酸素剤44も袋10に入れる。
【0026】
この蒸し米及び脱酸素剤44入りの袋10は、その口を開いたまま前記真空冷却包装機12の第1の工程50の位置にある容器11内にセットされ、その一方で計量部42の下部に空の袋11がセットされる。さらに、排出管30から排出した蒸し米に、バルブ45を開いて無菌エアー発生機54から無菌エアーを吹き付ければ、排出した直後の98℃程度の蒸し米の温度を直ちに80℃〜70℃に低下させ得るから、真空冷却包装機12の冷却負荷を大幅に軽減することができる。
【0027】
次に、真空冷却包装機12の第1の工程50の位置にある容器11は、フタを閉じ第2の工程51に進み、ここで真空発生機52に接続して減圧して行き蒸し米の温度を急速に下げ、690mmHg以上の真空状態を10秒間〜30秒間保持することができるようになると、蒸し米の温度は常温、約20℃程になる。
【0028】
ハッチ11が第3の工程53に進むと、無菌エアー発生機54により容器11内に無菌エアーを送り大気圧にしてから、容器11内に設けたシール機(図示せず)により袋10をシールして密封する。さらに、ハッチ11は第4の工程55に進み、ハッチ11のフタを開いて袋10を取り出し搬送コンベアー56に載せ、熟成ほぐし部13の熟成ヤード14に袋10を搬送する。
【0029】
この熟成ヤード14にて、袋10を常温で24時間〜48時間放置し、その間に袋10内の蒸し米は熟成し、米澱粉のアルファー化状態が安定化すると共に、予備ほぐしにより一旦バラけた米粒同士が再び付着して塊となる。したがって、本ほぐし機15の上部コンベアー57及び下部コンベアー58のローラ57a及び58aの間に袋10を通すことにより、塊状のアルファー化処理米はほぐされて、ほぼ完全に単粒化し、通常の生米とほとんど変わらないような状態になり、製品59となる。この製品59は製品ヤード16に積まれ保管される。
【0030】
次に、本発明方法による効果を証明するため、本発明方法による貯蔵米及び従来の特許文献3による貯蔵米による、計量誤差の発生具合と、塊の残り具合とを対比する。
〈実施例1〉
本発明方法によりアルファー化処理米を作製する。すなわち、日本産もち米を20℃の水に60分間浸漬してから水切りし、1.0kg/cmの蒸気で10分間蒸して米澱粉をアルファー化し、その蒸し米を熱い状態のまま直ちに予備ほぐしを行ってから1Kgに計量して袋に入れ、その袋を開封状態のまま容器内に入れて容器を密封し、容器内で690mmHg以上の真空状態を10秒間〜30秒間保持出来るようにして、蒸し米を常温にしたあと、容器内に無菌エアーを送り大気圧としてから容器内で袋をシールし、そのあと容器を開いて袋入り蒸し米を取り出し常温にて24時間放置して熟成させ、さらにこの袋入り蒸し米をそのまま本ほぐしを行った。得られたアルファー化処理米について以下の計測をする。(1)1Kg入り袋の重量(袋を除く)を実測する。(2)多数の1Kg入り袋から5検体をランダムに選び、各検体ごとに、塊が0.5g未満、0.5g以上〜1.0g未満、1.0g以上〜1.5g未満、1.5g以上〜2.0g未満、2.0g以上〜2.5g未満、2.5g以上〜3.0g未満、3.0g以上の7区分とし、それぞれの分布数をカウントする。
【0031】
〈比較例1〉
従来の特許文献3による貯蔵米の製造方法にてアルファー化処理米を作製する。すなわち、日本産もち米を20℃の水に60分間浸漬してから水切りし、1.0kg/cmの蒸気で10分間蒸して米澱粉をアルファー化し、その蒸し米を熱い状態のまま直ちに予備ほぐしを行わずに、1Kgあて計量して袋に入れ、その袋を開封状態のまま容器内に入れて容器を密封し、容器内で690mmHg以上の真空状態を10秒間〜30秒間保持出来るようにして、蒸し米を常温にしたあと、容器内に無菌エアーを送り大気圧としてから容器内で袋をシールし、そのあと容器を開いて袋入り蒸し米を取り出し常温にて24時間放置して熟成させ、さらにこの袋入り蒸し米をそのままほぐしを行った。得られたアルファー化処理米について実施例1と同様に(1)1Kg入り袋の重量(袋を除く)を実測する。(2)多数の1Kg入り袋から5体をランダムに選び、各体ごとに上記と同じ7区分とし、それぞれの分布数をカウントする。
以上の計測結果を表1及び表2に示す。
【0032】
【表1】

【表2】

【0033】
表1及び表2に示す通り、本発明方法によるアルファー化処理米は、従来の特許文献3によるアルファー化処理米に比べて、明らかに計量誤差の発生具合が低く、塊の残り具合も少ないことが実証された。
【0034】
以上、本発明の実施例を説明したが、具体的な構成はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲での変更は適宜可能であることは理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の貯蔵米の製造方法及びその装置は、厳正な計量を要求され、計量不良を厳しく抑制して貯蔵米の無駄を省きたい場合、塊がなく見た目も良くて風味のある米飯を常時得たいような場合に、利用可能性が極めて高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】 本発明の貯蔵米の製造方法を具体化した製造装置のフロシート図である。
【図2】 本発明の貯蔵米の製造装置を構成する蒸し機の一部を切欠した斜視図である。
【図3】 本発明の貯蔵米の製造装置を構成する計量機を示す側面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 貯蔵米の製造装置
2 貯蔵タンク
3 洗米部
4 浸漬水切部
5 タンク
5a 底板
5b 側板
6 孔
7 定量フィーダー
7a モーター
8 蒸し機
9 計量機
10 袋
11 容器
12 真空冷却包装機
13 熟成ほぐし部
14 熟成ヤード
15 本ほぐし機
16 製品ヤード
20 洗米機
21 供給タンク
22 ポンプ
23 浸漬タンク
24 コンベアー
25 パイプ
26、45 バルブ
27 切替弁
30 排出管
31 曲管
32 直管
33 蒸気室
34 蒸気吹出管
35 ボイラー
40 ホッパー
41 予備ほぐし機
41a パドル
41b ほぐしドラム
42 計量部
43 脱酸素剤供給機
44 脱酸素剤
50 第1の工程
51 第2の工程
52 真空発生機
53 第3の工程
54 無菌エアー発生機
55 第4の工程
56 搬送コンベアー
57 上部コンベアー
57a、58a ローラ
58 下部コンベアー
59 製品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗った米を水に20分間〜120分間浸漬してから水切りをし、その米を0.25kg/cm〜1.5kg/cmの蒸気で蒸して少なくとも米澱粉の一部をアルファー化し、その蒸し米を熱い状態のまま直ちに予備ほぐしを行うと共に計量して袋に入れ、該袋を開封状態のまま容器内に入れて容器を密封し、該容器内で690mmHg以上の真空状態を10秒間〜30秒間保持出来るようにして蒸し米を常温にしたあと、前記容器内に無菌エアーを送り大気圧としてから容器内で袋をシールし、そのあと前記容器を開いて袋入り蒸し米を取り出し常温にて24時間〜48時間放置しアルファー化した米澱粉を熟成させ、さらにこの袋入り蒸し米をそのまま本ほぐしを行い、前記米を単粒化した状態のアルファー化処理米としたことを特徴とする貯蔵米の製造方法。
【請求項2】
米貯留タンクから米を受け入れて洗う洗米部と、洗米後の米を貯留し常温の水にて20分間〜120分間浸漬すると共に水切りする浸漬水切部と、浸漬水切後の米を一定量貯留するタンクの底板及び側板の多数の孔より0.25kg/cm〜1.5kg/cmの蒸気を吹き込んで蒸しかつ内部に米を一定量排出する定量フィーダーを有してなる蒸し機と、蒸し米を受け入れ予備ほぐしを行うと共にその所定量を計量する計量機と、計量された蒸し米を袋にて受け入れ開封のまま容器内に入れて該容器を閉じ690mmHg以上の真空状態を10秒間〜30秒間保持するようにしたあと前記容器内に無菌エアーを入れ大気圧とし袋を密封して前記容器内から袋入り蒸し米を取り出す真空冷却包装機と、アルファー化した米澱粉を熟成させたあと袋入り蒸し米を本ほぐしを行って単粒化した状態のアルファー化処理米とする熟成ほぐし部と、を具備してなることを特徴とする貯蔵米の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−175043(P2007−175043A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−381363(P2005−381363)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(504110948)株式会社アサノ食品 (13)
【Fターム(参考)】