説明

貴金属コロイド粒子及びその製造方法

【課題】余剰の還元剤等を除去するための洗浄工程が不要となり、よって、貴金属コロイド粒子の生産性を向上できること、さらに、焼結温度が低くコロイド発色の高い貴金属コロイド粒子を提供する。
【解決手段】水1と、貴金属塩2と、非水溶性有機溶媒3と、保護コロイド10として働く還元剤4とを含む貴金属含有液を撹拌しながら加熱することによって、還元された前記貴金属塩2を保護コロイド化して貴金属コロイド粒子6として非水溶性有機溶媒相に抽出する第1工程と、前記非水溶性有機溶媒相と水相とを分離する第2工程と、前記非水溶性有機溶媒相から前記貴金属コロイド粒子6を得る第3工程とを有すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は貴金属コロイド粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、貴金属コロイド粒子の低温焼結性導電性ペーストへの応用が期待されている。
【0003】
特に、単分散であり、且つ、均一な形状を有したナノサイズの貴金属コロイド粒子を、2次元あるいは3次元構造を有するナノ結晶材料に用いることが期待されている。
【0004】
従来においては、金属微粒子の分散剤としてアルキルアミンを用いた分散液に、極性溶媒を混合することによって金属コロイド粒子が沈殿し、これをデカンテーション法により精製することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−121606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記技術を用いても、単分散、且つ、均一な形状を有するナノサイズの貴金属コロイド粒子を生産性よく提供されていなかった。
【0007】
即ち、特許文献1では、アルキルアミンを分散剤とする金属微粒子をアセチルアセトネート塩を原料にした加熱分解法で生成させており、大きな貴金属コロイドが析出してしまう場合が多く、単分散、且つ、均一な形状を有する貴金属コロイド粒子を得ることができない場合があった。
【0008】
また貴金属コロイドと極性溶媒との分離に時間を要するので生産性が悪くなる場合があった。
【0009】
なお、分散剤のアルキルアミンは、直鎖の炭化水素が付いているため電子供与がしにくく、還元剤としては作用しないため、別途還元剤が必要となる。
【0010】
本発明は、高性能顔料、ナノ結晶、低温焼結性導電性ペースト等の材料として好適に用いることが出来る、焼結温度が低くコロイド発色の高い貴金属コロイド粒子を生産性よく提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題に鑑みて本発明の貴金属コロイド粒子の製造方法は、水と、貴金属塩と、非水溶性有機溶媒と、保護コロイドとして働く還元剤とを含む貴金属含有液を撹拌しながら加熱することによって、還元された貴金属を保護コロイド化して貴金属コロイド粒子として非水溶性有機溶媒相に抽出する第1工程と、前記非水溶性有機溶媒相と水相とを分離する第2工程と、前記非水溶性有機溶媒相から前記貴金属コロイド粒子を得る第3工程とを有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の貴金属コロイド粒子の製造方法によれば、保護コロイドとして働く還元剤を用いることによって、余剰の還元剤等を除去するための洗浄工程が不要となり、また、相転移剤や保護剤を別途投入する必要がないので、貴金属コロイド粒子の生産性を向上できる。
【0013】
さらに本発明の製造方法で得られる貴金属コロイド粒子は、微粒子で単分散、且つ、均一な形状となり易いので、焼結温度が低くできるとともに、コロイド発色を高くすることができる。
【0014】
これにより、高性能顔料、ナノ結晶、低温焼結性導電性ペースト等の材料として好適に用いることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る実施例および比較例で得られた貴金属コロイド粒子の紫外−可視吸収スペクトルのグラフである。
【図2】本発明の一実施形態に係る製造方法で得られた銀コロイド粒子の電子顕微鏡(50万倍)による図面代用写真である。
【図3】本発明の一実施形態に係る貴金属コロイド粒子の製造方法の第1工程における製造プロセスの模式図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る第1工程における分液界面付近での状態を示す模式図であって、(a)は保護コロイド化前、(b)は保護コロイド化後の状態である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を詳しく説明する。
【0017】
本実施形態は、水と、貴金属塩と、非水溶性有機溶媒と、保護コロイドとして働く還元剤とを含む貴金属含有液を撹拌しながら加熱することによって、還元された貴金属を保護コロイド化して貴金属コロイド粒子として非水溶性有機溶媒相に抽出する第1工程と、貴金属コロイドの製造方法によって得られ、貴金属含有液から非水溶性有機溶媒相と水相とを分離する第2工程と、非水溶性有機溶媒相から貴金属コロイド粒子を得る第3工程とを有する。
【0018】
第1工程は図3に示されるステップで進行し、水1に貴金属塩2を溶解したものに対して、非水溶性有機溶媒3に保護剤兼還元剤4(以下、単に還元剤4ともいう)を混ぜたものを加え、撹拌しながら70〜150℃の範囲で加熱を行なう。もしくは、水1に貴金属塩2を溶解したものに対して、非水溶性有機溶媒3を加え、攪拌しながら70〜150℃の範囲で加熱をおこなっているところに還元剤4を滴下してもよい。
【0019】
加熱温度は70〜150℃であれば、保護剤兼還元剤4によって貴金属イオン2を十分還元できるとともに、保護剤兼還元剤4によって貴金属イオン2を保護化することができる。
【0020】
このとき還元剤4は、水相と非水溶性有機溶媒相との界面7付近に存在する。
【0021】
また貴金属含有液5の濃度は、水1に貴金属塩2が完全に溶解(飽和)できていればよく、特に限定されない。
【0022】
非水溶性有機溶媒3の量についても、貴金属コロイド粒子6を保護コロイドとして抽出するのに十分な量であれば良く、特に限定されない。
【0023】
第1工程は、水と、貴金属塩2と、非水溶性有機溶媒3と、保護コロイドとして働く還元剤4とを含む貴金属含有液5を撹拌しながら加熱することによって、還元された貴金属を保護コロイド化して貴金属コロイド粒子6として非水溶性有機溶媒相に抽出する。
【0024】
すなわち、第1工程では、図4に示すように、水相と非水溶性有機溶媒相との界面7付近で、貴金属コロイド6は、水相の貴金属イオン2を還元剤4のアミン基(疎水基4b)で還元されながら、複数の還元剤4の親水基4aで囲まれて保護コロイド化し、非水溶性有機溶媒3中に保護コロイド10として取り込まれていく。
【0025】
この様子は、加熱時間とともに非水溶性有機溶媒相が各貴金属コロイド粒子6特有の色を呈すること、例えば金コロイド粒子であれば赤紫色を呈し、銀コロイド粒子であれば黄色、プラチナコロイド粒子であれば褐色を呈することで観察される。
【0026】
第2工程は、貴金属コロイドの製造方法によって得られ、貴金属含有液5から非水溶性有機溶媒相と水相とを分離する。
【0027】
すなわち、第2工程では、貴金属含有液5から非水溶性有機溶媒相を分離して、この分離された非水溶性有機溶媒3を、さらに蒸留水によって未反応の銀イオンや硝酸イオンを洗浄した後に、再度、非水溶性有機溶媒相のみを分離してもよい。
【0028】
分離方法としては溶媒抽出法を用い、分離装置としては、分液漏斗を用いる他、量産レベルでは向流抽出装置、遠心分離装置を用いてもよい。
【0029】
第3工程は、非水溶性有機溶媒相3から貴金属コロイド粒子6を得る、
すなわち、第3工程では、非水溶性有機溶媒相をエバポレータ等での減圧濃縮や加熱濃縮等によって、必要濃度まで濃縮を行ない所望濃度の貴金属コロイド粒子6を得る。
【0030】
非水溶性有機溶媒3から貴金属コロイド粒子6を抽出することで、溶媒の沸点等の物性的な制限がなくなる。
【0031】
さらに本実施形態では、還元剤は、Nヒドロキシアルキル基を有するアミンおよびポリオキシエチレン基を有するアミンから選択される少なくとも1つである。
【0032】
例えば、Nヒドロキシエチルアミン、Nヒドロキシプロピルアミン等が挙げられる。また例えば、ポリオキシエチレンプロピルアミン、ポリオキシエチレンブチルアミン、ポリオキシエチレンデシルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン等が挙げられる。
【0033】
加熱温度としては70℃〜150℃であれば、加熱攪拌中に還元剤4が分解することを低減しつつ、還元反応が十分になり、必要な貴金属コロイド粒子6が得られる。
【0034】
本実施形態における還元剤4の添加量(A)と貴金属塩2中における貴金属の添加量(B)との関係は、(B)/(A)=0.05〜1.0の範囲であれば、貴金属濃度が薄くなりすぎて生産性が悪くなることを低減でき、また、貴金属濃度が濃すぎて保護剤兼還元剤4で保護化できずに貴金属が析出してしまうことを低減できる点で好ましい。
【0035】
さらに本実施形態は、貴金属塩中に含まれる貴金属が、金、銀、ルテニウム、ロジウム、パラジウムおよび白金からなる群より選択される少なくとも1種である。
【0036】
貴金属塩2としては、上記貴金属を含み、且つ、水溶性のものであれば特に限定されず、例えば塩化金酸、塩化金酸ナトリウム、硝酸銀、塩化銀、塩化白金酸、塩化白金酸カリウム等が好ましい。
【0037】
さらに本実施形態は、非水溶性有機溶媒は、芳香族炭化水素系溶媒、エチレングリコール系溶媒、ジエチレングリコール系溶媒、エーテル系溶媒およびエステル系溶媒からなる群より選択される少なくとも1種である。
【0038】
非水溶性有機溶媒3としては、水1と十分に分離すれば特に限定されないが、非極性溶媒が好ましい。
【0039】
さらに本実施形態の製造方法で得られた貴金属コロイド粒子は、平均粒子径が50nm以下である。
【0040】
平均粒子計を50nm以下に制御するには、前述の(B)/(A)を1.0以下とすればよい。
【0041】
これにより、貴金属塩2中における貴金属を十分保護化できる還元剤4を確保することができるので、平均粒子径が50nmより大きくなって一部の貴金属コロイドが析出し始めることを低減できる。
【0042】
また平均粒子径が50nm以下であれば、例えば一般に使用されている銀粉等と比較して粒子径が1〜2桁小さく粒子表面積が大きくなるので、反応性向上することができ、表面プラズモン共鳴吸収によるコロイド発色が得られ易くなるという点で好ましい。
【0043】
ここで平均粒子径については、図2に示すように透過型電子顕微鏡(TEMで50万倍)などの手法によって測定することができ、平均粒子径の分布としては、標準偏差で±15%以内であることが望ましい。
【0044】
以上のような貴金属コロイド粒子6であれば、例えばインクジェットなどの導体印刷法における導電性ペーストとして用いることができる他、貴金属コロイド粒子6を用いた着色素材や導電性接着材料などにも用いることができる。
【0045】
なお、本発明の製造方法においては、0.1〜1Nの貴金属塩2の水溶液を10〜100ml、非水溶性有機溶媒3を5〜25ml、保護作用を有する還元剤(ここではNヒドロキシアルキル基を有するアミン、またはポリオキシエチレン基を有するアミン)を0.2〜5gとしておくのが適当である。
【実施例】
【0046】
以下、本発明の製造方法の実施例に基づいて生産性を検証した結果を説明する。
【0047】
(試料作製)
試料番号1〜5については、貴金属塩2として塩化銀、非水溶性有機溶媒3としてトルエン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、エーテル、酢酸エチル、還元剤4としてNヒドロキシエチルアミンを用いた。
【0048】
試料番号6〜10については、貴金属塩2として塩化銀、塩化ルテニウム、塩化ロジウム、塩化パラジウム、塩化白金、非水溶性有機溶媒3としてトルエン、還元剤4としてNヒドロキシエチルアミンを用いた。
【0049】
試料番号11としては、貴金属塩2として塩化銀、非水溶性有機溶媒3としてトルエン、還元剤4としてポリオキシエチレンアミンを用いた。
【0050】
これらの試料1〜11については、ビーカーに0.1Nの各貴金属塩2の水溶液を50mLを計り取り、別のビーカーに各非水溶性有機溶媒3を25mLと、各還元剤4を1.0gとを混合した後に、両者のビーカーを混合して、撹拌しながら110℃で加熱を行なった。次いで非水溶性有機溶媒相を取り出し、蒸留水で洗浄後、乾燥機にて80℃で1〜2時間加熱濃縮することによって各貴金属コロイド粒子を得ることができた。
【0051】
試料番号12〜15は還元反応の温度範囲を変化させた実施例であり、貴金属塩2として塩化銀、非水溶性有機溶媒3としてトルエン、還元剤4としてN−ヒドロキシエチルアミンを用いた。ビーカーに0.1N塩化銀水溶液を50mLを計り取り、別のビーカーにトルエン25mLとN-ヒドロキシエチルアミン1.0gとを混合した。塩化銀水溶液入りビーカーにトルエン混合液を加え、各温度条件で30分攪拌を行なった。次いでトルエン相を取り出し、蒸留水で洗浄後、乾燥機にて80℃で1〜2時間加熱濃縮することによって銀コロイド粒子を得ることができた。なお、試料12,15では、銀コロイド粒子は収率は低いものの使用可能な量を得ることができた。
【0052】
試料番号16〜19は還元剤(A)と貴金属(B)の割合(B)/(A)を変化させた実施例であり、貴金属塩2として塩化銀、非水溶性有機溶媒3としてトルエン、還元剤4としてN−ヒドロキシエチルアミンを用いた。ビーカーに各濃度の塩化銀水溶液を50mLを計り取り、別のビーカーにトルエン25mLとN-ヒドロキシエチルアミンを各所定量とを混合し、下記の表1に記載の還元剤(A)と貴金属(B)の割合(B)/(A)となるようにした。塩化銀水溶液入りビーカーにトルエン混合液を加え、110℃で30分攪拌を行なった。次いでトルエン相を取り出し、蒸留水で洗浄後、乾燥機にて80℃で1〜2時間加熱濃縮することによって銀コロイド粒子を得ることができた。なお、試料16では収率は十分ではないものの使用可能、試料19では、一部の銀コロイド粒子が銀として析出して収率が十分ではなかったが使用可能であった。
【0053】
試料番号20は還元剤を使用しなかった実施例であり、貴金属塩2として塩化銀、非水溶性有機溶媒3としてトルエンを用いた。ビーカーに0.1N塩化銀水溶液を50mLを計り取り、別のビーカーにトルエン25mLを入れたものを準備し、塩化銀水溶液入りビーカーにトルエンを加え、110℃で30分攪拌を行なった。次いでトルエン相を取り出し、蒸留水で洗浄後、乾燥機にて80℃で1〜2時間加熱濃縮したが、銀コロイド粒子の生成は確認できなかった。
【0054】
試料番号21は非水溶性有機溶媒を使用せずに水溶性有機溶媒を使用した比較例であり、貴金属塩2として塩化銀、水溶性有機溶媒としてn−プロパノール、還元剤4としてN−ヒドロキシエチルアミンを用いた。ビーカーに0.1N塩化銀水溶液を50mLを計り取り、別のビーカーにn−プロパノール25mLとN-ヒドロキシエチルアミン1.0gとを混合した。塩化銀水溶液入りビーカーにn−プロパノール溶液を加え、110℃で30分攪拌を行なった。資料番号21においては、水相に銀コロイド粒子が存在するため、蒸留水で複数回洗浄後、乾燥機にて80℃で15時間加熱濃縮することによって銀コロイド粒子を得た。
【0055】
(評価方法および結果)
以下、上記の非水溶性有機溶媒3、貴金属塩2、還元剤4の各条件を変更した各試料について、単位時間あたりの生産能力と、発色性を外観で評価した結果を表1に示す。
【0056】
◎は生産性または発色性が優れている、○は生産性、発色性が従来レベル以上、×は生産性、発色性が従来より劣るとして記載した。
【0057】
【表1】

【0058】
実施例である試料番号1〜19については、試料番号20および21に比べて生産性、発色性ともよい貴金属コロイド粒子6が作製できた。
【0059】
試料番号12については加熱温度が低いために還元が進まないが、発色性のみ良好であった。試料番号15については加熱温度が高いため保護コロイド化が十分ではないが、発色性のみ良好であった。
【0060】
試料番号16については、貴金属濃度が低く生産性は十分ではないが、発色性のみ良好であった。試料番号19については、貴金属濃度が高く保護コロイド化が十分ではないが、発色性のみ良好であった。
【0061】
比較例である試料番号20については、還元剤4を使用していないので所望の銀コロイドを得ることができなかった、
また比較例である試料番号21については、銀コロイド粒子の生成は確認できるものの、水とn−プロパノールの混合溶液であるため、銀コロイド粒子分散液の洗浄に時間を要し、また加熱濃縮するのに多大な時間を要したため、簡易な貴金属コロイド粒子6の製造方法としては好ましくなかった。特に、水を含むため、基板に塗布した場合、塗布ムラとなって発色性が悪かった。
【0062】
次に、以下の各試料について、コロイド粒子の発色性を表面プラズモン吸収スペクトルで測定した結果を図1を用いて説明する。
【0063】
(試料作製)
実施例1としては、ビーカーに0.1N硝酸銀水溶液50mLを計り取り、別のビーカーにトルエン25mLとN−ヒドロキシエチルアミン1.0gとを混合した。
【0064】
硝酸銀水溶液入りビーカーにトルエン混合液を加えて90℃で30分攪拌を行い、トルエン相の色が黒みがかった黄色を呈するものとした。次いでトルエン相を取り出し、蒸留水で洗浄後、乾燥機にて80℃で1〜2時間加熱濃縮することによって銀コロイド粒子を得ることができた。
【0065】
実施例2としては、ビーカーに0.1N硝酸銀水溶液50mLを計り取り、別のビーカーにトルエン25mLとポリオキシエチレンアミン1.0gとを混合した。
【0066】
硝酸銀水溶液入りビーカーにトルエン混合液を加えて90℃で30分攪拌を行ない、トルエン相の色が黒みがかった黄色を呈するものとした。次いでトルエン相を取り出し、蒸留水で洗浄後、乾燥機にて80℃で1〜2時間加熱濃縮することによって銀コロイド粒子を得ることができた。
【0067】
実施例3としては、ビーカーに0.1N塩化金酸水溶液25mLを計り取り、別のビーカーにトルエン25mLとN−ヒドロキシエチルアミン1.5gとを混合した。
【0068】
塩化金酸水溶液入りビーカーにトルエン混合液を加えて90℃で30分攪拌を行ない、トルエン相の色が濃い赤紫色を呈するものとした。次いでトルエン相を取り出し、蒸留水で洗浄後、乾燥機にて80℃で1〜2時間加熱濃縮することによって金コロイド粒子を得ることができた。
【0069】
また、比較例としては、前述の試料番号21を用いた。
【0070】
(評価方法および結果)
貴金属コロイド粒子6の生成について、日本分光株式会社製分光光度計を用いて、紫外-可視吸収スペクトルを測定することによって、各貴金属種特有の表面プラズモン吸収の存在を確認した。
【0071】
この表面プラズモン吸収による発色は、金属中の自由電子が光電場により揺さぶられ、粒子表面に電荷が現れ、非線形分極が生じるものである。
【0072】
金コロイド等の貴金属コロイド粒子6による発色は、電子のプラズマ振動に起因する表面プラズモン吸収による発色であり、彩度や光線透過率が高く、耐久性等に優れており、粒径が数nm〜数十nm程度の、いわゆるナノ粒子において見られるものである。
【0073】
例えば、図2に実施例1の銀コロイド粒子の透過型電子顕微鏡にて50万倍で観察した像を示すように、30nmよりも小さな粒子が確認でき、銀コロイド粒子が作製できていることが裏づけられる。
【0074】
図1には、実施例1、2、3、および比較例の紫外-可視吸収スペクトルを示す。
【0075】
実施例1、実施例2、および比較例では、それぞれλ=399.5nm、412.5nm、410.5nmに銀コロイド粒子の表面プラズモン吸収によるピークが見られるため、数〜数十nmサイズの銀コロイド粒子が生成していることが裏づけられる。
【0076】
なお、上記において表面プラズモン吸収によるピーク位置は、実施例1、実施例2、および比較例でほぼ同じであるが、比較例3は水や不純物が多量に残った状態で外観は悪かった。
【0077】
また実施例3では、λ=544.5nmに金コロイド粒子の表面プラズモン吸収によるピークがみられるため、数〜数十nmサイズの金コロイド粒子が生成していることが裏付けられる。
【符号の説明】
【0078】
1:水
2:貴金属塩(貴金属イオン)
3:非水溶性有機溶媒
4:(保護剤兼)還元剤
4a:親水基
4b:疎水基
5:貴金属含有液
6:貴金属コロイド粒子
7:界面
10:保護コロイド


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、貴金属塩と、非水溶性有機溶媒と、保護コロイドとして働く還元剤とを含む貴金属含有液を撹拌しながら加熱することによって、還元された貴金属を保護コロイド化して貴金属コロイド粒子として非水溶性有機溶媒相に抽出する第1工程と、
前記非水溶性有機溶媒相と水相とを分離する第2工程と、
前記非水溶性有機溶媒相から前記貴金属コロイド粒子を得る第3工程とを有する貴金属コロイド粒子の製造方法。
【請求項2】
前記還元剤は、Nヒドロキシアルキル基を有するアミンおよびポリオキシエチレン基を有するアミンから選択される少なくとも1つである請求項1の貴金属コロイド粒子の製造方法。
【請求項3】
前記貴金属塩中に含まれる前記貴金属が、金、銀、ルテニウム、ロジウム、パラジウムおよび白金からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1または2に記載の貴金属コロイド粒子の製造方法。
【請求項4】
前記非水溶性有機溶媒は、芳香族炭化水素系溶媒、エチレングリコール系溶媒、ジエチレングリコール系溶媒、エーテル系溶媒およびエステル系溶媒からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の貴金属コロイド粒子の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の貴金属コロイド粒子の製造方法によって得られた貴金属コロイド粒子であって、
平均粒子径が50nm以下である貴金属コロイド粒子。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−49886(P2013−49886A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187792(P2011−187792)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】