説明

貴金属触媒担持方法

【課題】貴金属のナノ粒子を分散させた状態で担体に担持させ得、さらに環境負荷の問題、コストの問題を改善させるのに有利なる貴金属触媒担持方法を提供する。
【解決手段】本方法は、貴金属元素を含有する前駆体と、マイクロ波吸収性を有する担体とを含有する混合物を準備する準備工程と、混合物にマイクロ波を照射させて熱処理することにより、前駆体を還元処理させて貴金属のナノ粒子を分散させた状態で担体に担持させる担持工程とを実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は貴金属触媒担持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、金属化合物と還元剤である有機溶媒と分散剤との混合液を形成し、その混合液にマイクロ波を照射させて加熱し、金属微粒子を析出させる技術を開示している。また、特許文献2は、複数の金属元素を含む複合金属粒子が分散されてなるコロイドに、マイクロ波を照射することによって複合金属粒子を改質してから担体に担持させる技術を開示している。また、特許文献3は、一種類以上の金属化合物を一種類以上の溶媒に溶解した状態で活性炭と混合し、活性炭に金属化合物を吸着させてから、所定雰囲気条件にてマイクロ波を照射させて活性体を加熱させることにより、金属または金属酸化物の粒子を活性炭表面に担持させる技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-169557号公報
【特許文献2】特許第4056775号
【特許文献3】特開2006-265005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に係る技術は、還元剤として有機溶媒を多量に用いているため、環境負荷が高く、更にコストも掛かる。また、有機溶媒の他に分散剤も添加されているので、マイクロ波の照射にて金属微粒子を析出させてから、濾過・洗浄・乾燥工程が必要とされ、作業時間が長くなり、設備投資も嵩む。更に反応系の殆どの体積を占める有機溶媒の熱容量は大きく、それ故、有機溶媒の加熱には余分なエネルギー消費が生じてしまう。のみならず、反応後の冷却に時間が掛かり、金属粒子径が成長してしまうおそれがある。
【0005】
特許文献2に係る技術は、複合金属コロイド(微粒子)をマイクロ波にて加熱し、熱拡散によって組成分布を調整(改質)する技術である。この場合、複合金属コロイドの形成にあたり、マイクロ波を照射をしていないものの、還元剤を使用しており、特許文献1と同様に、環境負荷が高く、コストも掛かるという問題点が残る。なお、担体への担持は、マイクロ波の照射によって改質されたコロイドに担体を分散させ、濃縮乾固してから、焼成することによって行っている。このため工程は煩雑であり、相応な設備も必要とされる。特許文献3に係る技術は、担体を加えたことを除いて、基本的には特許文献1の技術と同様であり、特許文献1と同様な問題点を抱えている。
【0006】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、貴金属のナノ粒子を分散させた状態で担体に担持させ、さらに環境負荷の問題、コストの問題を改善させるのに有利な貴金属触媒担持方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る貴金属触媒担持方法は、貴金属元素を含有する前駆体とマイクロ波吸収性を有する担体とを含有する混合物を準備する準備工程と、混合物にマイクロ波を照射させて熱処理することにより、前駆体を還元処理させて貴金属のナノ粒子を分散させた状態で担体に担持させる担持工程とを実施する。
【0008】
前駆体は貴金属元素を含有する化合物であり、貴金属のナノ粒子または貴金属を含むナノ粒子を生成させる物質を意味する。前駆体は、貴金属を含有する貴金属前駆体を採用できる。貴金属としては、具体的には、白金、金、銀、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウムのうちの少なくとも1種が例示される。前駆体としては、硝酸塩、硫酸塩、塩化物、臭化物のうちの少なくとも1種の貴金属化合物が例示される。前駆体としては、貴金属が白金である場合には、ジニトルジアミン白金、ジニトロジアンミン白金(II)、ヘキサアンミン白金(IV)塩化物、ヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物、テトラアンミン白金(II)塩化物、塩化白金、塩化白金酸カリウム、四塩化白金酸カリウム等の白金化合物が例示される。貴金属がパラジウムである場合には、硫酸パラジウム、塩化パラジウム、硝酸パラジウム、ジニトロジアンミンパラジウム(II)等のパラジウム化合物が例示される。貴金属がロジウムである場合には、硫酸ロジウム、塩化ロジウム、硝酸ロジウム等のロジウム化合物が例示される。貴金属がルテニウムである場合には、塩化ルテニウム、硝酸ルテニウム等のルテニウム化合物が例示される。
【0009】
マイクロ波吸収性を有する担体としては、炭素質担体、セラミックス質担体が挙げられる。炭素質担体としてはカーボンブラック、黒鉛粉末、活性体、カーボン繊維、カーボンナノ繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナノウォールが例示される。殊に、比表面積が大きくて貴金属ナノ粒子を担持させ易いカーボンブラックが好ましい。セラミックス質担体としてはアルミナ、マグネシア、ジルコニア、シリカが例示される。担体は、ナノ粒子の担持密度等を高めるため、多孔質とすることができるが、非孔質でも良い。
【0010】
担体としてはマイクロ波の吸収性が高いものが好ましい。マイクロ波は一般的には300MHz〜300GHzの電磁波を意味する。500MHz〜250GHzの電磁波、1GHz〜100GHzの電磁波が例示される。マイクロ波を照射する時間としては、特に限定されるものではないが、混合物に含まれている貴金属前駆体等の前駆体を熱分解できる熱処理温度に加熱させる時間とすることが好ましく、または、その熱分解できる温度に近い温度領域に加熱させる時間とすることが好ましい。マイクロ波を照射する時間としては、マイクロ波加熱反応装置の出力、マイクロ波の波長等によっても相違し、例えば、5分間、10分間、20分間、30分間が例示されるが、これらに限定されるものではない。マイクロ波を照射する雰囲気としては、大気中の酸素の影響を考慮すると、不活性雰囲気等の非酸化性雰囲気が好ましい。
【0011】
本発明方法によれば、マイクロ波の吸収性を有する担体と前駆体とを含有する混合物を準備する工程と、混合物にマイクロ波を照射させて熱処理することにより、前駆体を還元処理させて貴金属のナノ粒子を担体に分散させた状態で担持させる工程とを実施する。混合物にマイクロ波が照射されると、担体が急激に選択的に加熱され、貴金属前駆体等の前駆体の熱分解が促進される。貴金属のナノ粒子は、貴金属単体のナノ粒子のほかに、貴金属および卑金属を含むナノ粒子でも良い。
【0012】
なお、マイクロ波を照射する担持工程においては、混合物を収容する容器を用いることができる。容器としては、マイクロ波の吸収性をもつもの、マイクロ波の吸収性をもたないもののいずれを採用しても良い。混合物を収容する容器がマイクロ波の吸収性をもてば、混合物における温度むらの低減に貢献できると考えられる。
【0013】
本発明方法によれば、マイクロ波を照射する段階の混合物としては、溶媒または分散媒を実質的に含まない方が好ましい。この場合、溶媒または分散媒の影響を回避させつつ、担体を選択的に加熱でき、担体の表面に貴金属のナノ粒子を担持させ易い。更に、熱容量が大きな溶媒や分散媒をマイクロ波の照射で加熱させずともよく、熱処理時間を短縮できる。更に、濾過、洗浄、乾燥といった工程も省略できるばかりか、環境に与える環境負荷も低減される。
【0014】
本発明方法によれば、準備工程における混合物は、溶媒または分散媒を含有しており、準備工程と担持工程との間において、混合物における溶媒または分散媒を蒸発させる蒸発工程を実施することが好ましい。この場合、準備工程における混合物は溶媒または分散媒を含有しているため、混合物における担体、貴金属前駆体等の前駆体の均一分散性を高めることができる。この場合、後工程である担持工程において、担体の表面にナノ粒子を担持させる均一担持性を高めるのに有利である。更に、担持工程において混合物にマイクロ波が照射されるとき、混合物における溶媒または分散媒は蒸発工程により既に消失または低減されている。このため、前述したように、熱容量が大きな溶媒や分散媒をマイクロ波の照射で加熱させずともよく、熱処理時間を短縮でき、更に、濾過、洗浄、乾燥工程も簡略または省略できる。
【0015】
本発明方法によれば、担体がカーボンブラック、活性炭、黒鉛粉末等のように高いマイクロ波吸収性を有する場合には、その担体を選択的に加熱でき、貴金属前駆体等の前駆体の熱分解および還元は、担体の表面で発生し易くなり、析出した貴金属のナノ粒子が担体に担持されている担持性が良い。
【0016】
本発明方法によれば、担体が非還元性を有する場合には、熱処理温度は貴金属前駆体等の前駆体の熱分解温度以上とすることができる。また、担体が炭素質担体等のように還元性を有する場合には、前駆体の熱分解および還元が進行し易いため、熱処理温度としては、前駆体の熱分解温度以下または熱分解温度未満とすることができる。この場合、熱分解温度に近くできる。
【0017】
本発明方法によれば、好ましくは、貴金属元素を含有する貴金属前駆体と卑金属元素を含有する卑金属元素前駆体とマイクロ波吸収性を有する担体とを含有する混合物を準備する準備工程と、混合物にマイクロ波を照射させて熱処理することにより、貴金属前駆体と卑金属元素前駆体とを還元処理させて貴金属と卑金属との合金からなるナノ粒子を分散させた状態で担体に担持させる担持工程とを順に実施することができる。
【0018】
また、本発明方法によれば、混合物は、貴金属元素を含有する貴金属元素前駆体と、卑金属元素を含有する卑金属元素前駆体と担体とを含有しており、担持工程において、貴金属前駆体と卑金属元素前駆体とを還元処理させ、卑金属と合金化した貴金属のナノ粒子を分散させた状態で担体に担持させる担持工程とを順に実施することができる。
【0019】
卑金属元素としては遷移金属元素が好ましい。遷移金属元素としては、コバルト、ニッケル、鉄が例示される。前駆体としては、硝酸塩、硫酸塩、塩化物、臭化物等が例示できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、貴金属(貴金属単体,貴金属と卑金属との合金を含む)のナノ粒子を担体に分散させた状態で担持させ得、さらに、環境負荷の問題、コストの問題を改善させるのに有利な貴金属触媒担持方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例1に係り、担体に担持されているナノ粒子の状態を示すTEM写真を示す図である。
【図2】実施例2に係り、担体に担持されているナノ粒子の状態を示すTEM写真を示す図である。
【図3】実施例3に係り、担体に担持されているナノ粒子の状態を示すTEM写真を示す図である。
【図4】比較例に係り、担体に担持されているナノ粒子の状態を示すTEM写真を示す図である。
【図5】実施例4に係り、担体に担持されているナノ粒子の状態を示すTEM写真を示す図である。
【図6】実施例5に係り、担体に担持されているナノ粒子の状態を示すTEM写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
実施例および比較例を説明する。
【0023】
(実施例1)
実施例1は次のように実施した。貴金属前駆体を溶解させる溶媒として、エタノール(アルコール,有機溶媒)を用いた。そして、準備工程において、まず、50.11g白金/Lを含有するジニトルジアミン白金の硝酸溶液(フルヤ金属製,貴金属前駆体,白金化合物)を3.265cc計量した。それから、少量(7グラム)のエタノールに、85.25mgの硝酸コバルト6水和物(和光純薬製,卑金属前駆体)を溶かした後、ジニトルジアミン白金の硝酸溶液に添加して混合物を形成した。ここで、硝酸コバルトは卑金属元素前駆体として機能するものであり、遷移金属の硝酸塩である。その後、その混合物に、炭素質の担体として、400mgのカーボンブラック(デンカブラック,電気化学工業製)を配合させた。混合物において、Pt:Co=3:1(原子比)とし、Pt:カーボンブラック=30:70(質量比)とした。ただし原子比はこれに限定されるものではない。
【0024】
このようにカーボンブラックを含む混合物を所定温度(70℃)に加熱しながら、真空引きを所定時間(1時間)かけて行って乾燥させてアルコールを混合物から蒸発させ、蒸発工程を実施した。なお、使用されているアルコールは少量であるため、アルコールを蒸発させる蒸発時間も短縮できる。アルコールはできるだけ少なく、カーボンブラック担体を完全に浸すために必要最小限の量があれば十分である。
【0025】
上記した蒸発工程を経た混合物をアルミナ製るつぼに入れて、市販のマイクロ波加熱反応装置(『四国計測工業製μリアクター750W』)に設置した。そして、不活性雰囲気である窒素雰囲気において、フルパワー(750W)にて成り行きでマイクロ波を6分間混合物に照射させて混合物を加熱させ、混合物を240℃(ジニトルジアミン白金の熱分解温度256℃より低い温度)まで昇温させた。更に、その後、その温度に1分間加熱保持し、マイクロ波の照射による加熱を終了し、担持工程を終了した。ここで、マイクロ波の周波数は2.45GHzとした。マイクロ波の波長は約12cmとした。
【0026】
マイクロ波を照射して熱処理する段階では、混合物においては、熱容量が大きな溶媒としてのアルコールが蒸発している。すなわち、マイクロ波が混合物に照射されるときにおいて、混合物には溶媒が含有されていない。従って、溶媒を加熱させる時間が必要とされず、熱処理時間を短縮でき、生産性を高めることができる。殊に、カーボンブラックはマイクロ波の吸収性が高いため、熱処理時間を短時間で済ませ得る。
【0027】
このように生成させた生成物を走査型走査型電子顕微鏡(TEM)にて観察した。図1は観察結果を示す。図1に示すように、島状をなす担体(カーボン担体)であるカーボンブラックに、白金とコバルトとの合金からなるナノメートル単位の多数の貴金属触媒粒子(合金ナノ粒子)が良好に担持されていた。貴金属触媒粒子のサイズは20ナノメートル未満、10ナノメートル未満であった。なお、貴金属触媒粒子の凝集が一部にみられた。カーボンブラックに担持されていない貴金属触媒粒子も認められた。貴金属触媒粒子が白金とコバルトとの合金になっていることは、X線回折により確認されている。
【0028】
本実施例によれば、準備工程における混合物は、溶媒または分散媒としてアルコール(エタノール)を含有している。そして準備工程と担持工程との間において、混合物におけるアルコールを蒸発させて混合物から除去させる蒸発工程を実施している。このように本実施例によれば、準備工程における混合物はアルコールを含有しているため、担体であるカーボンブラックと貴金属前駆体であるジニトルジアミン白金と卑金属前駆体である硝酸コバルトとが混合している混合物における均一分散性を高めるのに有利である。この場合、後工程である担持工程において、担体であるカーボンブラックの表面に貴金属触媒粒子を均一に担持させる均一担持性を高めるのに有利である。
【0029】
更に本実施例によれば、前述したように、担持工程において混合物にマイクロ波が照射されるとき、混合物におけるアルコールは蒸発工程において既に消失されている。このため前述したように、熱容量が大きなアルコールをマイクロ波の照射で加熱させずともよく、熱処理時間を短縮できて生産性を向上でき、更に、濾過、洗浄、乾燥工程も省略でき、作業時間が短縮され、設備投資および製造コストの低減に貢献できる。
【0030】
更に、混合物に溶媒や分散媒が部分的に残留していると、マイクロ波の照射で混合物を加熱させるとき、残留している溶媒や分散媒が混合物の加熱むらの要因となるおそれがある。この点について本実施例では、蒸発工程によりアルコールを蒸発させて混合物から溶媒や分散媒を除去しているため、残留する溶媒や分散媒に起因する混合物の加熱むらが抑制され、貴金属触媒粒子を担体の表面に良好に担持させるのに有利である。なお本実施例によれば、エタノール、ジニトルジアミン白金、硝酸コバルト、カーボンブラックの配合量については、上記した数値に限定されず、必要に応じて適宜変更できることはもちろんである。なお、熱重量分析により硝酸コバルトの熱分解温度は約250℃であった。
【0031】
(実施例2)
実施例2は基本的に実施例1と同様の手順により実施した。但し、少量(7グラム)のエタノールの代わりに少量(7グラム)の水を用い、この水に、85.25mgの硝酸コバルト6水和物(和光純薬製,卑金属前駆体,遷移金属の化合物)を溶かした。また、混合物の熱処理温度を280℃(ジニトルジアミン白金の熱分解温度256℃より高い温度)とした。
【0032】
このように生成させた生成物を走査型電子顕微鏡(TEM)にて観察した。図2は観察した結果を示す。図2に示すように、島状をなす担体であるカーボンブラックに、白金とコバルトとの合金からなるナノメートル単位の多数の貴金属触媒粒子が良好に担持されていた。貴金属触媒粒子のサイズは20ナノメートル未満、10ナノメートル未満であった。なお、貴金属触媒粒子の凝集が一部にみられた。貴金属触媒粒子が白金とコバルトとの合金になっていることは、X線回折により確認されている。
【0033】
本実施例によれば、前述したように、準備工程における混合物は、溶媒または分散媒として水を含有している。しかし準備工程と担持工程との間において、混合物における水を蒸発させて混合物から水を除去させる蒸発工程を実施している。この場合、準備工程における混合物は水を含有しているため、担体であるカーボンブラックと、貴金属前駆体であるジニトルジアミン白金と、卑金属前駆体である硝酸コバルトとが混合する混合物における均一分散性を高めることができる。なお、使用されている水は少量(できるだけ少なく、カーボンブラック担体を完全に浸すために必要最小限の量があれば十分)であるため、水を蒸発させる蒸発時間も短縮できる。更に、担持工程において混合物にマイクロ波が照射されるとき、混合物における水は既に消失されている。すなわち、マイクロ波が混合物に照射されるときにおいて、混合物は分散媒を有していない。このため前述したように、熱容量が大きな水をマイクロ波の照射で加熱させずともよく、熱処理時間を短縮でき、更に、濾過、洗浄、乾燥工程も省略できる。
【0034】
(実施例3)
実施例3は次のように実施した。282.22mgのジニトルジアミン白金(フルヤ金属製,貴金属前駆体)と、85.25mgの硝酸コバルト6水和物(和光純薬製,卑金属前駆体)と、400mgのデンカブラック(カーボンブラック,電気化学工業製)とを乳鉢にて粉砕混合させて混合物を形成した。混合物において、Pt:Co=3:1(原子比)、Pt:カーボンブラック=30:70(質量比)とされている。上記した混合物をアルミナ製るつぼに入れて、マイクロ波加熱反応装置(『四国計測工業製μリアクター750W』)に設置した。窒素雰囲気下において、フルパワーにて成り行きで混合物にマイクロ波を6分間照射させて混合物を加熱させ、240℃(ジニトルジアミン白金の熱分解温度256℃より低い温度)まで混合物を昇温させた。その後、その混合物をその温度に1分間加熱保持し、マイクロ波照射による加熱を終了した。実施例1と同様に、マイクロ波の周波数は2.45GHzとし、マイクロ波の波長は約12cmとした。
【0035】
このように生成させた生成物を走査型電子顕微鏡(TEM)にて観察した。図3は観察した結果を示す。図3に示すように、島状をなす担体であるカーボンブラックに、白金とコバルトとの合金からなるナノメートル単位の多数の貴金属触媒粒子が良好に担持されていた。貴金属触媒粒子のサイズは20ナノメートル未満、10ナノメートル未満であった。なお、貴金属触媒粒子の凝集がみられた。貴金属触媒粒子が白金とコバルトとの合金になっていることは、X線回折により確認されている。
【0036】
(比較例)
まず、ガラスフラスコ内に、還元剤である0.5Lのテトラエチレングリコール(和光純薬)と、1605.80mgのジニトルジアミン白金(フルヤ金属製,貴金属前駆体)と、483.11mgの硝酸コバルト6水和物(和光純薬製,卑金属前駆体)と、2267mgのカーボンブラック(デンカブラック、電気化学工業製) とを配合して、懸濁液(混合物に相当)を形成した。懸濁液において、Pt:Co=3:1(原子比)、Pt:カーボンブラック=30:70(質量比)とされている。その懸濁液をホモジナイザーにより所定時間(15分間)分散処理した。更に、その懸濁液をマイクロ波加熱反応装置(『四国計測工業製μリアクター750W』)に設置した。そして、窒素雰囲気下において、そのマイクロ波加熱反応装置によりフルパワーにて成り行きでマイクロ波を17分間照射させてその懸濁液を加熱させ、その懸濁液を280℃(ジニトルジアミン白金の熱分解温度256℃より高い温度)まで昇温させた。
【0037】
更にその懸濁液を280℃から更に40分間保持し、マイクロ波照射による加熱を終了した。実施例1と同様に、マイクロ波の周波数は2.45GHzとし、マイクロ波の波長は約12cmとした。このように処理した懸濁液を吸引ろ過装置でろ過させて懸濁液から固形分を取出した。固形分をエタノールで洗浄する洗浄工程を実施し、その後、水洗工程を実施し、その後、固形分を乾燥させる乾燥工程を実施した。上記した固形物を走査型電子顕微鏡(TEM)にて観察した。図4は観察した結果を示す。図4に示すように、島状をなす担体であるカーボンブラックに、白金とコバルトとの合金からなるナノメートル単位の多数の貴金属触媒粒子が担持されていた。貴金属触媒粒子のかなり大きな凝集がみられた。凝集度合は実施例の場合よりも大きかった。
【0038】
(実施例4)
実施例4は基本的には実施例2と同様の手順により実施した。但し、混合物の熱処理温度を230℃(ジニトルジアミン白金の熱分解温度256℃より低い温度)とした。このように生成させた生成物を走査型電子顕微鏡(TEM)にて観察した。図5は観察した結果を示す。図5に示すように、島状をなす担体であるカーボンブラックに、白金とコバルトとの合金からなるナノメートル単位の多数の貴金属触媒粒子が良好に担持されていた。貴金属触媒粒子のサイズは20ナノメートル未満、10ナノメートル未満であった。なお貴金属触媒粒子の凝集が一部にみられた。貴金属触媒粒子が白金とコバルトとの合金になっていることは、X線回折により確認されている。
【0039】
(実施例5)
実施例5は基本的には実施例2と同様の手順により実施した。但し、混合物の熱処理温度を400℃(ジニトルジアミン白金の熱分解温度256℃より高い温度)とした。このように生成させた生成物を走査型電子顕微鏡(TEM)にて観察した。図6は観察した結果を示す。図6に示すように、島状をなす担体であるカーボンブラックに、白金とコバルトとの合金からなるナノメートル単位の多数の貴金属触媒粒子が良好に担持されていた。貴金属触媒粒子のサイズは20ナノメートル未満、10ナノメートル未満であった。なお、貴金属触媒粒子の凝集が一部にみられた。貴金属触媒粒子が白金とコバルトとの合金になっていることは、X線回折により確認されている。
【0040】
(実施例6)
実施例6は基本的には上記した各実施例1〜5と同様の手順により実施することができる。マイクロ波照射による加熱では加熱速度が速いため、混合物の温度むらが生じることがある。そこで本実施例によれば、担持工程において、マイクロ波の照射を複数段階に分けて実施する。すなわち、蒸発工程を経た混合物をるつぼに入れて、市販のマイクロ波加熱反応装置に設置する。そして、不活性雰囲気である窒素雰囲気においてマイクロ波を混合物に照射させて混合物を加熱させ、貴金属前駆体の熱分解温度未満の所定温度まで混合物を昇温させるにあたり、マイクロ波を混合物に照射させない非照射操作を途中に複数回設ける。非照射操作において、マイクロ波が混合物に直接照射されない。このため、いったん加熱された混合物の内部における熱伝導により、混合部の均熱化が期待される。この場合、混合物における温度むらであるホットスポットの低減が期待され、貴金属触媒粒子の凝集むらのさらなる低減が期待される。
【0041】
(その他) 本発明は上記し且つ図面に示した実施例のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。マイクロ波の周波数を2.45GHzとしたが、これに限定されるものではなく、マイクロ波の周波数を300MHz〜300GHzの範囲内で変更でき、要するに担体を加熱できれば良い。実施例では貴金属として白金を使用し、卑金属としてコバルトを使用したが、貴金属として白金以外の貴金属元素を使用してもよく、金、銀、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウムが例示される。卑金属としてコバルト以外の卑金属元素を使用してもよい。卑金属元素としては遷移金属元素であることが好ましい。遷移金属元素としては、コバルト、ニッケル、鉄が例示される。また卑金属を使用せず、貴金属元素のみの貴金属触媒粒子の担持方法に使用できることは言うまでもない。
【0042】
上記した実施例では、混合物が溶媒または分散媒を有していない状態でマイクロ波を混合物に照射しているが、これに限らず、溶媒または分散媒がわずかに残っている場合にマイクロ波照射によって蒸発させてもよい。すなわち、マイクロ波照射の初期に溶媒または分散媒が蒸発し、その後、引き続き担持工程が実施されるといえる。なお、熱重量分析により硝酸コバルトの熱分解温度は約250℃であった。
【0043】
上記した記載から次の技術的思想も把握できる。
[付記項1]金属を含有する金属化合物からなる金属前駆体と、マイクロ波吸収性を有する担体とを含有する混合物を準備する準備工程と、混合物にマイクロ波を照射させて熱処理することにより、金属前駆体を還元処理させて金属の粒子を分散させた状態で担体に担持させる担持工程とを順に実施する金属粒子担持方法。金属としては、貴金属、遷移金属が挙げられる。
[付記項2]貴金属元素を含有する貴金属前駆体と卑金属元素を含有する卑金属元素前駆体とマイクロ波吸収性を有する担体とを含有する混合物を準備する準備工程と、前記混合物にマイクロ波を照射させて熱処理することにより、前記貴金属前駆体と前記卑金属元素前駆体とを還元処理させて前記貴金属と前記卑金属との合金ナノ粒子を分散させた状態で前記担体に担持させる担持工程とを順に実施する貴金属触媒担持方法。卑金属元素としては、遷移金属元素が好ましい。遷移金属元素としては、コバルト、ニッケル、鉄が例示される。前駆体化合物としては、硝酸塩、硫酸塩、塩化物、臭化物なとが例示できる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は例えば燃料電池システムまたは排気ガス浄化システムに使用される触媒に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貴金属元素を含有する前駆体とマイクロ波吸収性を有する担体とを含有する混合物を準備する準備工程と、前記混合物にマイクロ波を照射させて熱処理することにより、前記前駆体を還元処理させて前記貴金属のナノ粒子を分散させた状態で前記担体に担持させる担持工程とを順に実施する貴金属触媒担持方法。
【請求項2】
請求項1において、前記担体が非還元性を有する場合には、前記熱処理の温度は前記貴金属前駆体の熱分解温度以上である貴金属触媒担持方法。
【請求項3】
請求項1において、前記担体が還元性を有する場合には、前記熱処理の温度は前記前駆体の熱分解温度以下である貴金属触媒担持方法。
【請求項4】
請求項1〜4のうちの一項において、前記準備工程における前記混合物は、溶媒または分散媒を含有しており、前記準備工程と前記担持工程との間において、前記混合物における前記溶媒または前記分散媒を蒸発させる蒸発工程を実施する貴金属触媒担持方法。
【請求項5】
請求項1〜4のうちの一項において、前記混合物は、貴金属元素を含有する貴金属元素前駆体と、卑金属元素を含有する卑金属元素前駆体と前記担体とを含有しており、
前記担持工程において、前記貴金属前駆体と前記卑金属元素前駆体とを還元処理させ、前記卑金属と合金化した貴金属のナノ粒子を分散させた状態で前記担体に担持させる貴金属触媒担持方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−253408(P2010−253408A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107408(P2009−107408)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】