説明

貼り合わせ装置及びそれを用いた貼り合わせ方法

【課題】表面に微細な構造部分を有する部材同士を気泡が入らないように、位置を合わせて貼り合わせる装置を提供する。
【解決手段】(1)平滑な表面αと微細な構造部分aとを有する第1部材を保持する第1ホルダと、
(2)前記第1ホルダに対向し、平滑な表面βと微細な構造部分bとを有し、更に第2部材を保持する第2部材保持面を有する第2ホルダと、
(3)前記第1部材と前記第2部材の位置関係を検出する位置検出機構と
(4)前記第1部材と前記第2部材の位置を調整する位置合わせ機構と
(5)前記第1ホルダ及び/又は前記第2ホルダを移動させる垂直移動機構とを有し、
(6)前記第2ホルダが可撓性のある素材で形成され、
(7)前記第2部材保持面が、凸曲面であるか、前記第1部材の貼り合わせ面に対して非平行な平面であり、
(8)前記第1ホルダ及び/又は前記第2ホルダを相互の距離を縮める方向に移動させて貼り合わせる貼り合わせ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に微細な構造部分を有する部材と、やはり表面に微細な構造部分を有する、可撓性のある板状又はフィルム状の部材とを、前記構造部分形成面を貼り合わせ面として、互いに位置を合わせて貼り合わせる貼り合わせ装置、及び上記部材を互いに位置を合わせて貼り合わせる貼り合わせ方法に関する。本発明は、マイクロ流体デバイスの製造方法に好ましく適用できる。
【背景技術】
【0002】
マイクロ流体デバイスは、部材中に微細な毛細管状の流路を有し、該流路中で反応や分析を行うデバイスである。その代表的な製造方法は、溝を有する板状又はフィルム状の部材の溝形成面にカバーとなる板状又はフィルム状の部材を貼り合わせることにより、該溝と該カバーとで毛細管状の流路を形成する製造方法である。この場合には、前記二つの部材の精密な位置あわせは不要であるため、ガラス製マイクロ流体デバイスの製造においては、単に重ねて圧迫し、熱融着する方法が広く用いられている。また、前記二つの部材の少なくとも一方が粘着性である場合、例えば粘着性を有するポリマー製部材である場合や、接着剤を塗布した部材である場合には、両部材を端から順に接触するように重ねることで、間に気泡を残さずに積層することが出来る。
【0003】
それに対し、該マイクロ流体デバイスに、例えば立体交差する流路、バルブ、ポンプ機構、濾過機構、内壁に多孔質体が固定された流路、内壁にプローブが固定された流路などの、さらに複雑な構造を形成する場合には、前記カバーとなる部材の表面にも、溝、孔、プローブ固定部分、多孔質層形成部分などの微小な構造部分を形成し、これらの位置を合わせて貼り合わせる必要がある。そのため、例えば部材がガラス製である場合には、上側ホルダと下側ホルダにそれぞれ部材を固定し、両部材を接触又は非接触の状態で、光学的に位置を検出して位置合わせして、非接触の場合には該二つの部材間のギャップを縮めて行き、密着させた後に加熱融着させる装置と方法が知られている。
【0004】
しかしながら、上記表面に微小な構造を有する部材または表面に微小な構造を有する部材の少なくとも一方が、半硬化状態の樹脂のように粘着性を有する場合や、接着剤を流動しない程度に極薄く、例えば0.5〜5μmの厚さに塗布したものである場合には、接触した状態では相互位置をずらすことは出来ないし、非接触の状態で位置を合わせ、両部材間のギャップを平行状態を保って縮めていって接触させる方法では、貼り合わせ面に気泡が入りがちであり、微細な毛細管状の流路をうまく形成できなかった。また、該部材の端から順に接触するように重ねる方法では精密な位置合わせが出来なかった。
【0005】
一方、特許文献1には、第1の基板と第2の基板のそれぞれ対向する表面の端部に沿って環状に接着剤が塗布され、上記接着剤と上記両基板とにより形成される、所定の厚さの隙間に液晶材料が充填された液晶表示装置の製造装置として、真空容器と、第1の基板の下表面全面を真空吸着で保持する第1の吸着機構と、第2の基板の上表面全面を真空吸着で保持する第2の吸着機構と、上記真空容器内の気圧の減圧時に、真空容器内にて、該第2の吸着機構及び第2の基板を鉛直方向に下降させて、第2の基板の下表面を上記液晶材料又は上記接着剤と接触させる、第1の加圧力を備える第1の加圧機構と、同じく上記真空容器内の気圧の減圧時に、真空容器内にて、第2の吸着機構及び第2の基板をさらに鉛直方向に下降させ、第2の基板を接着剤を介して第1の基板に貼り合わせ所定の間隔になるまで加圧する、第1の加圧力より大きい第2の加圧力を備える第2の加圧機構と、から構成される液晶表示装置製造装置が開示されている。
【0006】
しかしながら、真空容器を用いると、接着面に気泡の入る恐れはなくなるが、貼り合わせ装置が大がかりになる上、貼り合わせ工程のスループットが低下しがちであった。
【0007】
また、特許文献2には、やはり液晶表示装置の製造装置として、下固定治具の上に下圧着治具を配置し、この下圧着治具の上に前記第1の基板と第2の基板とを積層した貼り合わせ空セルと、中圧着治具とを交互に積み重ね、最上部に位置する貼り合わせ空セルの上に上圧着治具と上固定治具とを順次配置し、更に個々の圧着治具にシートを設け、このシートにヒーターを設けるとともに、複数個のほぼ同一形状のシートと複数個のほぼ同一形状の貼り合わせ空セルとを交互に積み重ね、上記シート内に流体を流して該シートの膨張により複数個の液晶表示用貼り合わせ空セルを同時に圧着するようにした圧着装置が開示されている。
【0008】
しかしながら、この場合には、あらかじめ前記第1の基板と第2の基板に相当する部材とを積層して、貼り合わせ空セルを作製した上で、圧着するものである。このように、貼り合わせ部分が前記両基板の周囲部だけであるように幅が小さく、しかも、接着剤を流動可能な厚さに塗布した場合には、圧着することで気泡を追い出すことが可能であろうが、マイクロ流体デバイスのように、微細な流路となる欠損部を持つ部材を貼り合わせる場合には、接着剤を流動する程度に塗布すると、前記欠損部が接着剤により埋められてしまい、微細な流路が閉塞されてしまう。即ちこの製造装置と製造方法では、マイクロ流体デバイスの部材の微細な欠損部を除いた全面を、気泡を残さずに貼り合わせることは出来なかった。
【0009】
【特許文献1】特開2001−051284号公報
【特許文献2】特許第3439787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、表面に微細な構造部分を有する部材、及び、やはり表面に微細な構造部分を有する、可撓性のある板状又はフィルム状の部材の少なくとも一方が粘着性である場合のように、両部材を接触させてからずらして位置を合わせることが出来ない場合でも、真空容器を使用することなく、部材間に気泡が入らないように、位置を合わせて貼り合わせる貼り合わせ装置、及び貼り合わせ方法を提供することにある。特に、上記のような部材を貼り合わせる工程を含むマイクロ流体デバイスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、表面に微細な構造部分を有する部材である第1部材を第1ホルダに保持し、やはり表面に微細な構造部分を有する、可撓性のある板状又はフィルム状の第2部材を可撓性のある第2ホルダに密着させて保持し、両部材の貼り合わせ面を互いに向き合わせ、相対位置を合わせた後、両部材間の距離を縮めて行き、前記第2部材の一部を前記第1部材の一部に接触させ、その後も前記第2ホルダと前記第2部材を撓ませながらさらに両部材間の距離を縮めて行き、前記第1部材に前記第2部材を、前記貼り合わせ面の内周部から外周部へ、又は一方の端から他方の端へと順に接触させて貼り合わせることにより、上記課題を解決出来ることを見いだし、本発明に到達した。
【0012】
即ち本発明は、平滑な表面αと該平滑な表面α上に微細な構造部分aとを有する第1部材と、平滑な表面βと該平滑な表面β上に微細な構造部分bとを有し、更に可撓性を有する板状又はフィルム状の第2部材とを、
前記表面αと前記表面βを貼り合わせ面として、前記微細な構造部分aと前記微細な構造部分bの位置関係を調整して貼り合わせるための貼り合わせ装置であって、
(1)前記第1部材を保持する機構を有する第1ホルダと、
(2)前記第1ホルダに対向し、前記第2部材を保持する第2部材保持面を有する第2ホルダと、
(3)前記第1ホルダに保持された前記第1部材と前記第2ホルダに保持された前記第2部材の、前記貼り合わせ面に平行な面内に於ける位置関係を検出する位置検出機構と
(4)前記第1ホルダに保持された前記第1部材と前記第2ホルダに保持された前記第2部材の、前記貼り合わせ面に平行な面内における位置を調整する位置合わせ機構と
(5)前記第1ホルダ及び/又は前記第2ホルダを前記貼り合わせ面に略垂直な方向に移動させて前記第1部材と第2部材を貼り合わせることの出来る垂直移動機構
とを有し、
(6)前記第2ホルダが可撓性のある素材で形成されており、かつ、
(7)前記第2ホルダの前記第2部材保持面が、凸曲面であるか、前記第1ホルダに保持された前記第1部材の貼り合わせ面に対して非平行な平面であり、
(8)前記垂直移動機構により前記第1ホルダ及び/又は前記第2ホルダを相互の距離を縮める方向に移動させた時には、前記第1部材と前記第2部材が、先ず前記貼り合わせ面の一部に於いて接触し、さらなる移動により第2ホルダが変形して、該接触面が広がることにより貼り合わされる
ことを特徴とする貼り合わせ装置を提供するものである。
【0013】
また、本発明は、(1)上記の貼り合わせ装置を使用し、
(2)前記第1部材を、前記表面αが前記第2ホルダと対向するように前記第1ホルダに保持させ、
(3)前記第2部材を、前記表面βが前記表面αと対向するように前記第2ホルダの前記第2部材保持面に密着させて保持させ、
(4)前記位置検出機構により、前記第1部材と前記第2部材の、前記貼り合わせ面に平行な面内に於ける位置関係を検出し、
(5)前記位置合わせ機構により、前記第1部材と前記第2部材を前記貼り合わせ面に平行な面内において位置を合わせ、
(6)前記垂直移動機構により、前記第1ホルダ及び/又は前記第2ホルダを相互の距離を縮める方向に移動させて、前記第1部材と前記第2部材を、前記貼り合わせ面の一部に於いて接触させ、
その後さらに距離を縮める方向に移動させて、該接触面を広げることにより貼り合わせる
ことを特徴とする貼り合わせ方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、表面に微細な構造部分を有する部材、及び、やはり表面に微細な構造部分を有する可撓性のある板状又はフィルム状の部材、の少なくとも一方が粘着性である場合のように、両部材を接触させてからずらして相互の位置を合わせることが出来ない場合でも、真空容器を使用することなく、部材間に気泡が入らないように、位置を合わせて貼り合わせる貼り合わせ装置、及び、位置を合わせて貼り合わせる貼り合わせ方法を提供できる。本発明はまた、表面に微細な凹状構造を有する部材を位置を合わせて貼り合わせる工程を含むマイクロ流体デバイスの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を、図1〜図8に示された態様により説明する。
[第1ホルダ]
図1に第1ホルダ1の平面図とA部断面図を示す。本態様の第1ホルダ1は、第1部材11を固定(保持)する機構(第1部材保持機構3と称する)として真空溝式の真空チャック3を有する。真空溝の幅は任意であるが、第1部材11が柔軟なフィルム状部材である場合にも対応できるように、該真空溝の幅を0.03〜0.5mm、より好ましくは0.05〜0.3mm程度に細くすることが好ましく、また、真空溝の代わりに、直径0.03〜1mm程度、より好ましくは直径0.05〜0.5mmの微小な多数の孔が穿たれた細孔式の真空チャック(図示略)や、金属焼結体などの、平均孔径1〜100μmの多孔質体を用いた多孔質体式の真空チャック(図示略)とすることも好ましい。第1部材保持機構3の第1部材保持方式は任意であり、上記の他、例えばクランプやネジなどの機械的保持、粘着力やや静電気力や磁力による保持、ワックスなどの液体の冷却凝固による保持を使用できる。
【0016】
真空チャック3の場合は、例えば図4に示されたように、切り替えバルブ21を経て真空24と大気25に接続される。第1部材保持機構3として、ワックスなどの液体の冷却凝固による保持方式を用いた場合には、保持の解除のための加熱機構を設けることが出来る。磁力によるものの場合には、第1部材11を強磁性体で形成された板やフィルム状などの一時的な支持体に粘着力などで貼り付けて使用する。粘着力や静電気力や磁力による保持方式を用いた場合には、それらの保持力の強さを、第1部材11と第2部材12の粘着力や最終的な固着力の強さより弱く設定しておけば、該両部材の貼り付け後、剥離により保持を解除できる。
【0017】
第1ホルダ1は、第1部材11が板状又はフィルム状である場合は、図1、図5に示されたように、第1ホルダ1の第1部材保持面は平面とし、水平に配置されることが好ましい。第1ホルダ1は一般的に、前記第1部材11を第2部材12と貼り合わせる面(貼り合わせ面と称する)を外向きにして保持できるものであれば、第1部材11の形状に応じた任意の形状であって良い。
図1に示された第1ホルダ1は、中心部に孔4が開けられており、該孔4を通して、例えば図6、図7に示された様な第1部材11の位置決めマーク107、108と第2部材12の位置決めマーク117、118を光学的に観察し、位置決めできるようになっている。該孔4は、より小さな複数の孔であっても良いし、第1ホルダ1をガラスや透明プラスチックなどの光学的に透明な素材で作製した場合には、孔4を設けなくても良い。
【0018】
[第2ホルダ]
〔第1態様〕
図2に第2ホルダ2の第1態様の平面図とA部断面図を示す。本第1態様の第2部材12は、円筒の一部を切り取った形状の曲面の板状とされ、凸面を第1ホルダ1側に向け、中央部が最も第1ホルダに近く配置されている。これにより、第2部材12を装着した第2ホルダ2を第1部材11に押しつけたとき、先ず凸状に保持された第2部材12の中央部が第1部材11に線状に接触し、更に押しつけると、第2ホルダ2が撓みながら、接触面が両端方向へ広がってゆき、最終的には第2部材12の全体を第1部材11に接触させることが出来る。上記でいう「中央部」は厳密な中央である必要はなく、両端間のいずれかの部分であってよい。
【0019】
或いは、第2ホルダ2は、上記円筒の一方の端と他方の端(即ち、図2の紙面内上端と下端)が、第1部材11の貼り合わせ面に対して遠近がある状態の凸面状としてもよい。この場合は、第2部材12を装着した第2ホルダ2を第1部材11に押しつけたとき、先ず凸状に保持された第2部材12の中央部の一方の端が第1部材11に点状に接触し、更に押しつけると、第2ホルダ2が撓みながら、接触面が3方向へ広がってゆく。
【0020】
第2ホルダ2の表面の曲面の程度は、第1部材11の貼り合わせ面と第2部材12の貼り合わせ面の、両端部に於ける距離Xeと中央部における距離Xmとの差(Xe−Xm)が、好ましくは0.3mm以上、さらに好ましくは0.4mm以上、最も好ましくは0.5mm以上であり、また、好ましくは5mm以下、更に好ましくは4mm以下、最も好ましくは3mm以下である。但し、上記範囲は貼り合わせ面の一辺の長さが10cmのときの値であり、上記距離差(Xe−Xm)の好ましい範囲は、上限、下限共に貼り合わせ面の一辺の長さに比例する。上記下限以上とすることにより、貼り合わせ部に残存する気泡の量を減じることが出来、また、上記上限以下とすることによ貼り合わせた際の位置のずれを最小限に抑えられる。
【0021】
図2に示された例では、第2ホルダ2は、円筒の一部である形状とされているが、厳密に円筒である必要はなく、平面を曲げて作られる任意の凸曲面を使用できる。例えば、円錐の一部である凸曲面であってもよいし、断面が双曲線の一部、放物線の一部、正弦波の一部、正規分布曲線等であるような凸曲面であってよい。
【0022】
図2に示された態様では、常態で曲面状である板状の第2ホルダ2が、図中左右端において、固定部材にて、スポンジ製の緩衝材6を介して移動ステージ13に装着されている。本態様では、板状の第2ホルダ2は常態で安定な曲面状の板であるが、例えば図3に示したように、第2ホルダが、常態では反りのない平面状であって、その中央部をスポンジ製などの柔軟な部材7に押しつけて弾性的に凸面状にされたものであってもよい。
【0023】
本第1態様に於ける第2ホルダ2の厚みは任意であり、資材の弾性率により好適な厚みが異なるが、例えば0.01〜10mmが好ましく、0.1〜5mmがさらに好ましく、0.3〜3mmが最も好ましい。第2ホルダ2の柔軟性は、第2部材12を装着して第1部材11に、最終的に平面状になるまで押しつけたとき、該第2部材12の表面や内部に形成された微細な構造が破損したり不都合なほど著しく変形したりすることがなければ任意である。そのため、好適な範囲は第1部材11と第2部材12の硬度、強度、微細な構造の寸法や種類に依存する。一般には、引張弾性率と厚みの積が、好ましくは1×10〜1×10「Pa・m]、さらに好ましくは3×10〜3×10「Pa・m]である様な範囲である。
【0024】
第2ホルダ2は繰り返し使用するために、使用条件で弾性変形する素材で形成されていることが好ましい。そのような素材としては、例えば有機重合体や金属が好ましい。有機重合体は任意であり、線上重合体であっても架橋重合体であってもよいし、ガラス転移温度(Tg)が室温以上であっても以下であってもよい。
【0025】
図2に示された本第1態様に於いては、第2ホルダ2が第2部材12を保持する機構(第2部材保持機構5と称する)は微細な真空溝式の真空チャック5とされている。第2部材保持機構5は、第2部材12が薄いフィルム状である場合にも対応できるように、第1ホルダー1と同様に、細孔式の真空チャック、微細な真空溝式の真空チャック、又は多孔質体式の真空チャックが好ましい。しかし、保持する方式は任意であり、前記第1部材保持機構3と同様の機構を使用できる。
【0026】
真空チャック5は、例えば図4に示されたように、切り替えバルブ22を経て、真空24と大気25に接続され、これにより着脱される。第2部材保持機構5として、ワックスなどの液体の冷却凝固による保持方式を用いた場合には、保持の解除は加熱により実施できる。第2部材保持機構5として粘着力や静電気力や磁力による保持方式を用いた場合には、それらの保持力の強さを、第1部材11との粘着力の強さより弱く設定しておけば、押しつけ後、第2ホルダ2を元の位置に戻す際に、第2部材12は自然に第2ホルダ2から剥がれる。
【0027】
本第1態様のバリエーションとして、第2ホルダを板状ではなく、中央が円柱の一部のように凸状である柔軟な塊状物で形成することも出来る。この場合には、第2ホルダを第1部材に押しつけ、第2部材の中央部が第1部材に接触した後更に押しつけると、塊状の第2ホルダ2は押しつぶされて変形し、第2部材12の全体を第1部材11に接触させることが出来る。この場合の第2ホルダ2の素材は、引張弾性率が、好ましくは0.1〜100[MPa]、さらに好ましくは0.3〜30[MPa]である。そのような素材としては、例えば、ゴム、エラストマー、ポリジメチルシロキサンのようなシリコン樹脂、ゲル、スポンジ状有機重合体、有機重合体の発泡体を例示できる。この場合には、第2部材保持機構5は、粘着力、静電気力、又は磁力によるものが好ましい。
【0028】
第2ホルダ2は、前記板状物と本塊状物を併用してもよい。そのような例としては、ゴムやスポンジの塊状部材の上にそれより硬い素材で形成された板状部材が張り付けられた或いは乗せられた構造を例示できる。
図2に示された態様では、曲面状である板状の第2ホルダ2が、図中左右端において、固定部材にて、スポンジ製の緩衝材6を介して移動ステージ13に装着されている。そのため、第2ホルダ2は移動ステージ13の表面に平行な面内で多少動き得る。しかしながら、本発明の貼り合わせ装置を用いて貼り合わせる際には、第1部材11と第2部材12が最初に接触すると、粘着性により両部材間の相対位置が固定されるため、その後、接触面が拡大して行く際にも両部材の相対位置がずれることはない。第2ホルダを板状ではなく、中央が円柱の一部のように凸状である柔軟な塊状物で形成されている場合も話は同様である。
【0029】
〔第2態様〕
図4に第2ホルダの第2の態様の平面図とA部断面図を示す。本第2態様では、弾性を持つ板状の第2ホルダ2が、第1部材11の貼り合わせ面に対して一方の端(図中右端)が近く他方の端(図中左端)が遠く設置されている。これにより、第2部材12を装着した第2ホルダ2を第1部材11に押しつけたとき、先ず第2部材12の第1部材に近い側の端の辺が第1部材11に線状に接触し、更に押しつけると、第2ホルダ2が撓みながら、接触面が他端の辺方向へ順次広がってゆく。或いは、先ず第2部材12の第1部材に近い側の辺の一方の端の頂点が第1部材11に点状に接触し、更に押しつけると、第2ホルダ2が撓みながら、接触面が2方向へ順次広がってゆく。そして最終的には第2部材12の全体が第1部材11に接触する。これらにより、貼り合わせ面への気泡の残留を減少させることが出来る。
【0030】
上記板状の第2ホルダは、平面状であっても、第1部材11側に対して凸面状であってもよい。第2ホルダを平面状とした場合には、引張弾性率と厚みの積を好ましくは1×10〜3×10「Pa・m]、さらに好ましくは3×10〜1×10「Pa・m]とすることで、第2部材12を装着した第2ホルダ2を第1部材11に押しつけたとき、第2部材12の全体が一度に第1部材11に接触するのではなく、上記のように順次接触してゆくようにすることが出来る。第2ホルダを、第1部材11側に対して凸面状とすると、第2ホルダ2の引張弾性率と厚みの積が、好ましくは1×10〜1×10「Pa・m]、さらに好ましくは3×10〜3×10「Pa・m]である様なさらに広い範囲で、上記の効果が発揮される。
【0031】
第2ホルダ2の、第1部材11の貼り合わせ面に対する傾きの程度は、貼り合わせ面の一辺の長さが10cmのとき、第1部材11から遠い側の端に於ける距離Xbと第1部材11に近い側の端に於ける距離Xaとの差(Xb−Xa)が、好ましくは0.3mm以上、さらに好ましくは0.4mm以上、最も好ましくは0.5mm以上であり、また、好ましくは5mm以下、更に好ましくは1.4mm以下、最も好ましくは3mm以下である。但し、上記距離差(Xb−Xa)の好ましい範囲は、上限、下限共に貼り合わせ面の一辺の長さに比例する。上記下限以上とすることにより、貼り合わせ部に残存する気泡の量を減じることが出来、また、上記上限以下とすることにより貼り合わせた際の位置のずれを最小限に抑えられる。
【0032】
本第2態様に於ける第2ホルダ2の厚みは任意であるが、例えば0.01〜10mmが好ましい。第2ホルダ2の柔軟性は、第2部材12を装着して第1部材11に押しつけたとき、該部材の表面や内部に形成された微細な構造が破損したり不都合なほど著しく変形したりすることがなければ任意である。そのため、好適な範囲は第1部材11と第2部材12の硬度、強度、微細な構造の寸法や種類に依存する。一般には、引張弾性率と厚みの積を前記の範囲にすることが好ましい。第2ホルダ2は繰り返し使用するために、使用条件で弾性変形する素材で形成されていることが好ましい。
【0033】
第2部材保持機構5については、前記第1態様と同様である。本第2態様のバリエーションとして、第2ホルダを板状ではなく、一方の端が厚く他方の端が薄い柔軟な塊状物で形成することも出来る。この場合には、第2ホルダを第1部材に押しつけ、第2部材の一分が第1部材に接触した後更に押しつけると、塊状の第2ホルダ2は厚い端から薄い端へと順次押しつぶされて変形し、最終的には第2部材12の全体を第1部材11に接触させることが出来る。この場合の第2ホルダ2の素材は、前記第1態様のバリエーションの場合と同様である。
本第2態様の場合も、第2ホルダ2は、前記板状物と本塊状物を併用してもよい。そのような例としては、ゴムやスポンジの塊状部材の上にそれより硬い素材で形成された板状部材が張り付けられた或いは乗せられた構造を例示できる。
【0034】
[位置検出機構]
本発明の貼り合わせ装置は、前記第1部材11と前記第2部材12の、貼り合わせ面に平行な方向の位置関係を検出する位置検出機構14を有する。検出の方式は任意であるが、光学的検出が好ましく、第1ホルダ1を通して、例えば図6、図7に示したような、第1部材11と第2部材12の位置決めマーク107、108、117、118を観察する方式が好ましい。このような光学的な位置検出機構14は、垂直移動機構15の移動方向と同じ方向から観察する向きに設けることが、正確な位置合わせが出来るため好ましく、かつ、第1部材11の貼り合わせ面に垂直な方向から観察する向きに設けることが好ましい。
その他の位置検出機構14としては、例えば、部材の外周を突き当てる位置決めピンや、部材に穿たれた孔に差し込む位置決めピンのような機械的な位置検出と位置決めを同時に行う機構、電極の導通/非導通や電極間の静電容量を検出する電気的検出機構を例示できる。
【0035】
[位置合わせ機構]
本発明の貼り合わせ装置は、第1ホルダ1に保持された第1部材11の前記構造部分と、第2ホルダ2に保持された前記第2部材12の前記構造部分の位置を合わせる位置合わせ機構13を有する。位置合わせ機構13は、前記第1部材11と前記第2部材12の貼り合わせ面に平行な面内で相対的に移動させる位置合わせ機構13が好ましい。図5の例では、位置合わせ機構13と垂直移動機構15を兼ねる機構として、直交する3方向への移動および回転が可能なXYZθ移動ステージ13(15)を使用しているが、位置合わせ機構13は一般には、前記第2ホルダ2を前記貼り合わせ面に平行な面内で、X軸方向(図5の紙面内左右方向とする)、Y軸方向(図5の紙面に対して垂直な方向とする)への平行移動、及び、好ましくはθ方向の回転(図5の紙面内上下方向にとったZ軸回りの回転とする)が可能な機構である。第1部材11と第2部材12の位置合わせ部分が1点である場合はθ方向の移動は不要である。上記のX、Y、θ方向の移動機構は、第1ホルダ1と第2ホルダ2のどちらか一方に設けてもよいし、両方に設けても良いし、第1ホルダと第2ホルダで分担しても良い。
【0036】
位置検出機構14が、位置決めピンのように位置検出と同時に位置合わせも行う機構である場合には、位置合わせ機構13として、第1ホルダ1や第2ホルダ2を移動させる機構ではなく、第1部材11及び第2部材12を各ホルダに装着する際に、前記X、Y、θ方向に移動させて位置合わせする機構が設けられる。
【0037】
位置検出機構と位置合わせ機構による位置合わせの精度(誤差)は、好ましくは0.1μm〜100μm、更に好ましくは0.2μm〜30μm、最も好ましくは0.3μm〜10μmである。かつ該誤差は、第1部材と第2部材に設けられた位置合わせすべき構造部分の寸法の1/10以下とすることが好ましく、1/30以下とすることがさらに好ましい。この範囲とすることで、位置検出機構と位置合わせ機構を簡単で安価な機構で実現でき、かつ、マイクロ流体デバイスなどの貼り合わせ形成物を十分な精度と再現性で得ることができる。
【0038】
[垂直移動機構]
垂直移動機構15は、第1ホルダ1と第2ホルダ2の相互の距離を変化させる機構であり、図5の態様では、紙面内上下方向にとったZ軸方向に第2ホルダを移動させる機構である。該垂直移動機構14により第2ホルダ2に保持された第2部材12を第1ホルダ1に保持された第1部材11に近づけて行き、接触させ、貼りあわることが出来る。垂直移動機構15の移動方向は、第1ホルダ1と第2ホルダ2の相互の距離を変化させる方向であれば任意であるが、位置検出機構14が光学的な検出機構である場合には、位置検出機構14の位置合わせマーク観測方向に垂直な方向であることが好ましく、かつ、第1部材11の貼り合わせ面に垂直な方向であることがさらに好ましい。
垂直方向移動機構14は、第1ホルダ1と第2ホルダ2のどちらを移動させるものであってもよいし、両方を移動させるものであってよい。なお、図5の例では垂直移動機構15は位置合わせ機構13と一体化されており、直交する3方向への移動および回転が可能なXYZθ移動ステージ13(15)を使用している。
【0039】
[その他の機構]
本発明の貼り合わせ装置の姿勢は任意であり、例えば図5に例示された配置の上下逆であってもよいし、横向きであってもよい。本貼り合わせ装置は、第1部材11と第2部材12が半硬化のエネルギー線硬化性樹脂で形成されている場合には、貼り合わせ後完全に固着させるためのエネルギー線照射を行うエネルギー線照射装置(図示略)を有することも好ましい。
【0040】
[マイクロ流体デバイス]
本発明の貼り合わせ装置や貼り合わせ方法で貼り合わせる部材について、マイクロ流体デバイスの例で説明する。本発明により好ましく製造することの出来るマイクロ流体デバイスは、表面に設けられた微細な溝状の流路や、その内部に設けられた微細な空洞状の流路の中で反応や分析を行うデバイスである。マイクロ流体デバイスには、前記流路の他、バルブ機構、ポンプ機構、膜分離機構、抽出機構、吸着機構、空洞中へ吐出するノズル機構、脱気機構、蒸溜機構、多孔質部、検出機構などの種々の微細な機構を形成することにより、その機能と応用範囲を広げることが出来る。このようなマイクロ流体デバイスを使用して、例えば濾過、抽出、反応などの試料の前処理部と、マイクロ・クロマトグラフィー、マイクロ電気泳動などの分離部と、蛍光や可視・紫外吸収などの検出部を一体化し、医療診断、生化学分析、化学分析の方面で微量の試料を分析するマイクロ・トータル・アナリシス・システム(μ−TAS)を構築することが出来る。また、前記微細な流路の内表面に触媒を固定し、反応装置(マイクロリアクター)に応用することも出来る。
【0041】
本発明で作製するマイクロ流体デバイスは、内部に空洞状の流路を有するマイクロ流体デバイスであり、平滑な表面αと、その平滑な表面α上に微細な構造部分aを有する第1部材と、やはり平滑な表面βと、その平滑な表面β上に微細な構造部分bを有する、可撓性のある板状又はフィルム状の第2部材とが、表面αと表面βを貼り合わせ面として、微細な構造部分aと微細な構造部分bの位置関係を調整して互いに貼り合わせされた、マイクロ流体デバイスである。
【0042】
部材の表面の微細な構造部分a及びbとしては、表面のみに微細な構造部分がある場合と、部材内部の構造が表面まで達している場合とがあり、例えば、他方の部材と積層貼り合わせされることにより空洞状の流路となる溝や凹部、該部材に穿たれた孔、フィルム状部材の一部にU字型の長孔で囲まれて形成された、逆止弁の弁体となるフラップ、濾過膜、該部材の表面の一部に形成された多孔質層等の物理的構造部分や、該部材の表面の一部に固定されたプローブ、該部材の表面の一部に固定された、種々の物質を固定するためのアンカーとなる官能基等の化学的構造部分が上げられる。これらの微細な構造部分が前記第1部材と第2部材にそれぞれ形成される組み合わせは任意であるが、本発明に於いては、特に前記構造部分の一方が、前記の溝、凹部、または孔である場合に効果的であり好ましい。
【0043】
このような、位置合わせすべき対象となる微細な構造部分の寸法は任意であるが、その短辺(又は短径)方向の寸法は好ましくは1μm〜5mm、更に好ましくは3μm〜1mm、最も好ましくは5μm〜0.5mmである。この範囲とすることで、本発明の効果が最も発揮される。該微細な構造部分の長辺(又は長径)方向の寸法は任意であり、例えば、該構造が溝である場合の長さ方向の寸法は、マイクロ流体デバイスの最大寸法、例えば10cmであり得る。
【0044】
第1部材11と第2部材12に設ける位置決めマークは、専用のマークであっても良いし、位置合わせする構造部分そのものであってもよい。該位置決めマークの位置は、垂直移動機構15を移動させたときに第1部材11と第2部材12が最初に接触する分部に近い部分とすることが、位置決め精度が高くなり、好ましい。また、2点で位置決めを行う際には、該2つの位置決めマークは、垂直移動機構15を移動させたときに第1部材11と第2部材12の接触面が広がってゆく際の接触/非接触の境界線に略平行に設けることが、位置決め精度が高くなり、好ましい。位置決めが、位置決めピンによるものである場合には、位置決めマークは部材の外周となる。
【0045】
第1部材11は任意の形状の部材であるが、板状又はフィルム状であることが好ましい。第1部材11を両面が実質的に平行な板状又はフィルム状とすることにより、本第1部材11を通して光学的に位置合わせすることが容易になる。厚みや形状は任意である。材質も任意であるが、光学的に透明であることが、該第1部材11を通して、光学的に第2部材12の位置を検出できるため好ましい。
【0046】
第2部材12は可撓性のある板状又はフィルム状の部材である。第2部材12の可撓性の程度は、曲面状の第2ホルダ2の第2部材装着面に密着して装着でき、かつ、第2ホルダに装着された第2部材12を第1部材11に押しつけて行く工程で破壊することが無ければ、硬度や厚みは任意である。そのためには、第2部材12は、円筒形に曲げたときに破壊しない半径が2[m]以下、好ましくは1[m]以下、さらに好ましくは0.5[m]以下のものである。該半径の下限は実質的にゼロ、即ち角を付けて折り曲げられるものであってよい。第2部材12の厚みは任意であり、例えば1μm〜1cmであり得るが、10μm〜1mmが好ましい。また、第2部材保持機構5により不都合無く保持されるために、引張弾性率と厚みの積が、好ましくは3×10〜3×10「Pa・m]、さらに好ましくは3×10〜3×10「Pa・m]の範囲とする。
【0047】
第2部材12の材質は任意であるが、上記の可撓性を示す素材として、有機重合体、金属、ガラス、石英などの結晶が好ましく、有機重合体が特に好ましい。勿論、本発明で製造するマイクロ流体デバイスは、前記第1部材11と第2部材12の他に、更に他の部材を積層貼り合わせすることによって作製されるものであっても良い。
【0048】
[製造方法]
本発明のマイクロ流体デバイスの製造方法は、
(1)本発明の貼り合わせ装置を使用し、
(2)前記第1部材を、前記表面αが前記第2ホルダと対向するように前記第1ホルダに保持させ、
(3)前記第2部材を、前記表面βが前記表面αと対向するように前記第2ホルダの前記第2部材保持面に密着させて保持させ、
(4)前記位置検出機構により、前記第1部材と前記第2部材の、前記貼り合わせ面に平行な面内に於ける位置関係を検出し、
(5)前記位置合わせ機構により、前記第1部材と前記第2部材を前記貼り合わせ面に平行な面内において位置を合わせ、
(6)前記垂直移動機構により、前記第1ホルダ及び/又は前記第2ホルダを相互の距離を縮める方向に移動させて、前記第1部材と前記第2部材を、前記貼り合わせ面の一部に於いて接触させ、
その後該距離をさらに縮める方向に移動させて、該接触面を漸次広げることにより貼り合わせる。
【0049】
位置合わせの精度は、高い方が好ましく、例えば好ましくは0.1〜10μm、更に好ましくは0.1〜3μm、最も好ましくは0.1〜1μmである。本貼り合わせ方法は、本発明の貼り合わせ装置のバリエーションにより、それぞれ好適な製造方法を採ることが出来るが、その方法は前記本発明の貼り合わせ装置の各項に於いて説明したとおりである。
【0050】
本発明の製造方法により貼り合わされた第1部材11と第2部材12は粘着力で固定されているが、さらに強固に貼り合わせさせる場合には、加熱やエネルギー線の照射により半硬化の樹脂の硬化を進めたり、接着剤を硬化させることが出来る。
【0051】
本発明の貼り合わせ方法は、マイクロ流体デバイスの製造方法に好ましく用いることができる。即ち、前記第1部材又は前記第2部材の少なくとも一方が、表面にまたは表面に達する微細な構造部分が、流路となる該部材の欠損部であるような、マイクロ流体デバイスを構成する部材であり、これらを貼り合わせて空洞状の流路を形成する工程を含むマイクロ流体デバイスの製造方法に好ましく適用できる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例の範囲に限定されるものではない。
【0053】
(実施例1)
本実施例では、本発明における第2ホルダ2の第1態様による貼り合わせ装置を用いたマイクロ流体デバイスの製造方法を示す。
[貼り合わせ装置]
第1ホルダ1は、図1の形状とし、外寸が15cm×15cm×1.5cm、第1部材保持機構3である真空チャックの真空溝は直径8cm、孔4は直径6cmとした。第1ホルダ1は、図4に示したように、真空チャック3面を下向きにして装着した。第1ホルダ1の真空チャック3は、図4に示したように、切り替えバルブ21を経て真空24と大気25に接続した。そして、第1ホルダ1の上方に位置検出機構14として、光学顕微鏡14を2基、紙面奥行き方向に平行に設置した。
【0054】
第2ホルダ2は、図3の形状とし、12cm×8cm×1mmの平面状のアクリル樹脂板にレーザー加工機を使用して真空チャック5の真空溝5を形成した。該真空溝5はピッチ1cmの碁盤目状とし、溝幅は約140μm、深さ約150μmである。該2ホルダ2は、真空チャック5面を上向きにし、引張弾性率が約0.5[GPa]のスポンジ製の緩衝材6を介して、2つの止め具7でもってXYZθ方向に移動可能な移動ステージ13(15)に装着した。該移動ステージ13(15)は、位置合わせ機構13と垂直移動機構15の両方の機能を有する物である。
【0055】
本第2ホルダ2は、引張弾性率が約3[GPa]、「引張弾性率×厚み」の値が約3×10[Pa・m]の、常態では反りのない平面状であって、その中央部を、移動ステージ13(15)に貼り付けられた引張弾性率が約0.5[MPa]のスポンジ製の部材8の上に乗せることにより、弾性的に凸面状にしている。これにより、第2ホルダ2は、両端部に比べて中央部が約1mm凸であるような、円筒の一部である形状とされている。第2ホルダ2の裏面には真空溝5に連絡するフィッティング9を接着した。真空溝5は該フィッティング9から、図4に示したように、切り替えバルブ22を経て真空24と大気25に接続した。
【0056】
[マイクロ流体デバイスの製造方法]
〔紫外線照射方法〕
本実施例における紫外線照射の方法を以下に示す。
(紫外線ランプ1による照射)
3000Wメタルハライドランプを光源とするアイグラフィックス株式会社製のUE031−353CHC型UV照射装置を用い、365nmにおける紫外線強度が40mW/cmの紫外線を特に指定が無い限り室温、窒素雰囲気中で照射した。
(紫外線ランプ2による照射)
250W高圧水銀ランプを光源とするウシオ電機株式会社製のマルチライト250Wシリーズ露光装置用光源ユニットを用い、365nmにおける紫外線強度が50mW/cmの紫外線を、特に指定が無い限り室温、空気雰囲気中で照射した。
【0057】
〔組成物(X)の調製〕
エネルギー線重合性化合物として平均分子量2000の3官能ウレタンアクリレートオリゴマー「ユニディックV−4263」(大日本インキ化学工業株式会社製)70部、ヘキサンジオールジアクリレート「ニューフロンティアHDDA」(第1工業製薬株式会社製)30部、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン「イルガキュアー184」(チバガイギー社製)3部、及び重合遅延剤として2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(関東化学株式会社製)0.5部を混合して、組成物(X)を調製した。
【0058】
〔第1部材の作製〕
10cm×10cm×1mmのアクリル樹脂製の基板101の上に、スピンコーターを用いて組成物(X)を塗工し、流路121、導入路105、流出路106と成す部分、及び2つの位置決めマーク107、108以外の部分にフォトマスクを通して紫外線ランプ2による紫外線照射を40秒照射して組成物(X)を半硬化させ、非照射部分の未硬化の該組成物(X)を50%エタノール水溶液で洗浄除去して、流路121を構成する溝104、導入路105となる溝105、流出路106となる溝106が形成された樹脂層102を形成した。この、基板101と樹脂層102からなる部材を第1部材11とした。
【0059】
〔第2部材の作製〕
片面がコロナ放電処理された厚さ30μmの2軸延伸ポリプロピレンシート(二村化学株式会社製)を一時的な支持体111として、この上に組成物(X)をスピンコーターを用いて塗工し、紫外線ランプ1により紫外線を40秒照射して、該組成物を半硬化させて樹脂層112とした。
さらに、上記樹脂層112の上に組成物(X)をスピンコーターを用いて塗工し、流路121、導入路115、流出路116と成す部分、及び2つの位置決めマーク117、118以外の部分にフォトマスクを通して紫外線ランプ2による紫外線照射を40秒照射して組成物(X)を半硬化させ、非照射部分の未硬化の該組成物(X)を50%エタノール水溶液で洗浄除去して、流路121を構成する溝114、導入路115となる溝115、第1流出路116となる溝116が形成された樹脂層113を形成した。一時的な支持体111、樹脂層112及び樹脂層113からなる部材を第2部材12とした。本第2部材の引張弾性率は約2.5[GPa」、「引張弾性率×厚み」の値は約7.5×10[Pa・m」である。
【0060】
〔貼り合わせ〕
上記第1部材11を溝形成面を下側にして第1ホルダ1に真空チャック3で保持し、また上記第2部材12を、溝形成面を上側にして第2ホルダ2に真空チャック5で保持し、XYZθ移動ステージ13(15)を上昇(Z軸方向に移動)させて、中央部に於ける両部材間の距離を1mmに調節した。第2ホルダ2の上方から二つの位置検出機構(光学顕微鏡)14で位置決めマーク107、108、117、118を観察しながら位置調節ステージのX、Y、θを調節して、位置決めマーク107と117、及び位置決めマーク108と118の位置を合わせた。
【0061】
XYZθ移動ステージ13(15)を上昇させると、第2部材12の中央部が、図5の紙面に垂直な方向の線状に第1部材11に接触した。XYZθ移動ステージ13(15)をさらに上昇させると、第2ホルダ2は平面に近づくように変形しながら、第2部材12は中央部から両端方向へと、前記接触した線幅が増すように接触面が広がり、最終的には、第2部材12の全面が第1部材11に接触した。
【0062】
次いで、第2ホルダ2の真空チャック5を解除し、XYZθ移動ステージ13(15)を下降させ、第1ホルダ1の真空チャック3を解除して、第1部材11と第2部材12が粘着力により仮に固着しているマイクロ流体デバイス前駆体を得た。
【0063】
〔固着、及びその他の工程〕
紫外線照射装置(図示略)を用いて60秒間紫外線を照射してエネルギー線硬化性組成物(X)を完全硬化させ、第1部材11と第2部材12を完全に固着した。
その後、第2部材12から一時的な支持体111を剥離除去し、導入路105、流出路106、導入路115、流出路116の各端部において、基板101側からドリルでもって穴を開けて、導入口109、流出口110、導入口119、流出口120を形成し、図8に示されたようなマイクロ流体デバイスを得た。
得られたマイクロ流体デバイスは、第1部材11の溝104と第2部材12の溝114が1μm以下の誤差で完全に重なり合い、毛細管状の流路121が形成されていた。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の貼り合わせ装置の第1ホルダの(a)平面図および(b)A部断面図である。
【図2】本発明の貼り合わせ装置の第1態様の第2ホルダが、位置合わせ装置上に装着された状態を示す(a)平面図および(b)A部断面図である。
【図3】本発明の貼り合わせ装置の第1態様の第2ホルダが、位置合わせ装置上に装着された状態を示す(a)平面図および(b)A部断面図である。
【図4】本発明の貼り合わせ装置の第2態様の第2ホルダが、位置合わせ装置上に装着された状態を示す(a)平面図および(b)A部断面図である。
【図5】本発明の貼り合わせ装置の、配管模式図を含む正面図模式図である。
【図6】本発明で作製するマイクロ流体デバイスの第1部材の(a)平面図模式図および(b)側面図模式図である。
【図7】本発明で作製するマイクロ流体デバイスの第2部材の(a)平面図模式図および(b)側面図模式図である。
【図8】本発明で作製するマイクロ流体デバイスの(a)平面図模式図および(b)側面図模式図である。
【符号の説明】
【0065】
1 第1ホルダ
2 第2ホルダ
3 第1部材保持機構(真空チャック、真空溝)
4 孔
5 第2部材保持機構(真空チャック、真空溝)
6、8 多孔質体
7 留め具
11 第1部材
12 第2部材
13 位置合わせ機構(XYZθ移動ステージ)
14 位置検出機構(光学顕微鏡)
15 垂直移動機構(XYZθ移動ステージ)
21、22、23 切り替えバルブ
24 真空
25 大気
101 基板
102、112、113 樹脂層
104、114 流路となる溝
105、115 流入路(溝)
106、116 流出路(溝)
107、108、117、118 位置決めマーク
111 一時的な支持体
109、119 流入口
110、120 抽出口
121 流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平滑な表面αと該平滑な表面α上に微細な構造部分aとを有する第1部材と、平滑な表面βと該平滑な表面β上に微細な構造部分bとを有し、更に可撓性を有する板状又はフィルム状の第2部材とを、
前記表面αと前記表面βを貼り合わせ面として、前記微細な構造部分aと前記微細な構造部分bの位置関係を調整して貼り合わせるための貼り合わせ装置であって、
(1)前記第1部材を保持する機構を有する第1ホルダと、
(2)前記第1ホルダに対向し、前記第2部材を保持する第2部材保持面を有する第2ホルダと、
(3)前記第1ホルダに保持された前記第1部材と前記第2ホルダに保持された前記第2部材の、前記貼り合わせ面に平行な面内に於ける位置関係を検出する位置検出機構と
(4)前記第1ホルダに保持された前記第1部材と前記第2ホルダに保持された前記第2部材の、前記貼り合わせ面に平行な面内における位置を調整する位置合わせ機構と
(5)前記第1ホルダ及び/又は前記第2ホルダを前記貼り合わせ面に略垂直な方向に移動させて前記第1部材と第2部材を貼り合わせることの出来る垂直移動機構
とを有し、
(6)前記第2ホルダが可撓性のある素材で形成されており、かつ、
(7)前記第2ホルダの前記第2部材保持面が、凸曲面であるか、前記第1ホルダに保持された前記第1部材の貼り合わせ面に対して非平行な平面であり、
(8)前記垂直移動機構により前記第1ホルダ及び/又は前記第2ホルダを相互の距離を縮める方向に移動させた時には、前記第1部材と前記第2部材が、先ず前記貼り合わせ面の一部に於いて接触し、さらなる移動により第2ホルダが変形して、該接触面が広がることにより貼り合わされる
ことを特徴とする貼り合わせ装置。
【請求項2】
前記第2ホルダが可撓性のある板状である請求項1に記載の貼り合わせ装置。
【請求項3】
前記第2ホルダの前記第2部材を保持する機構が真空チャックである請求項1又は2に記載の貼り合わせ装置。
【請求項4】
前記第2ホルダの前記第2部材を保持する機構が粘着力によるものである請求項1又は2に記載の貼り合わせ装置。
【請求項5】
(1)請求項1〜4のいずれか1項に記載の貼り合わせ装置を使用し、
(2)前記第1部材を、前記表面αが前記第2ホルダと対向するように前記第1ホルダに保持させ、
(3)前記第2部材を、前記表面βが前記表面αと対向するように前記第2ホルダの前記第2部材保持面に密着させて保持させ、
(4)前記位置検出機構により、前記第1部材と前記第2部材の、前記貼り合わせ面に平行な面内に於ける位置関係を検出し、
(5)前記位置合わせ機構により、前記第1部材と前記第2部材を前記貼り合わせ面に平行な面内において位置を合わせ、
(6)前記垂直移動機構により、前記第1ホルダ及び/又は前記第2ホルダを相互の距離を縮める方向に移動させて、前記第1部材と前記第2部材を、前記貼り合わせ面の一部に於いて接触させ、
その後さらに距離を縮める方向に移動させて、該接触面を広げることにより貼り合わせる
ことを特徴とする貼り合わせ方法。
【請求項6】
前記第1ホルダ及び/又は前記第2ホルダを相互の距離を縮める方向に移動させて、前記第1部材と前記第2部材を、前記貼り合わせ面の中央部に於いて略線状に接触させ、
その後、さらに前記第1ホルダと前記第2ホルダの相互の距離を縮めることにより、
前記第1部材及び前記第2部材の両端部方向に、接触部分と非接触部分の境界を略線状に保ちながら、前記略線状の接触部分を面状の接触部分として拡大する請求項5に記載の貼り合わせ方法。
【請求項7】
前記第1部材及び前記第2部材がマイクロ流体デバイスを構成する部材であり、前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方の表面に形成された微細な構造部分が、流路となる欠損部である請求項5又は6に記載の貼り合わせ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−307644(P2007−307644A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−137640(P2006−137640)
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【出願人】(000173751)財団法人川村理化学研究所 (206)
【Fターム(参考)】