説明

貼付剤および貼付製剤

【課題】品質を長期間安定に維持しながら良好な粘着物性を有する貼付剤を提供する。
【解決手段】支持体、および当該支持体の少なくとも片面上に設けられた粘着剤層を含む貼付剤であって、当該粘着剤層が、式I:


(式中、P1およびP2はそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシ基または有機基を表す。)
の構造部分を有するエラストマーを含有する、貼付剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貼付剤および貼付製剤に関し、特に皮膚接着力に優れ、皮膚面の糊残りが少ない貼付剤および貼付製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
貼付剤は、傷口の保護、あるいは薬物の生体への投与のために簡便かつ効果的な剤形である。貼付剤は、品質を長期間安定に維持しつつ、良好な粘着物性を有することが要求される。
そのような粘着物性に取り組んだ貼付剤として、例えば特許文献1および特許文献2には、粘着剤層を、官能基を有するゴム成分を架橋させたものとする貼付剤が開示されている。しかし、特許文献1の実施例4には、このような貼付剤について、試験片の周辺部にて3mm以内の粘着剤の滲み出しが見られたことが記載されていることから、これらの貼付剤は凝集力が不十分であることが示唆される。さらに、これらの文献における貼付剤は、ゴム成分中の官能基の存在によって、貼付剤の品質の安定性が満足いくものではない可能性がある。このように、従来の貼付剤では、上記の要求を十分に満たすものは得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平03−127727号公報
【特許文献2】特開平10−151185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、品質を長期間安定に維持しながら良好な粘着物性を有する貼付剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)支持体、および当該支持体の少なくとも片面上に設けられた粘着剤層を含む貼付剤であって、当該粘着剤層が、式I:
【0006】
【化1】

【0007】
(式中、P1およびP2はそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシ基または有機基を表す。)
の構造部分を有するエラストマーを含有する、貼付剤。
(2)上記有機基が、それぞれ置換されてもよい、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アシルおよびアシルオキシからなる群から選ばれる、(1)記載の貼付剤。
(3)上記有機基が、フェニル、ベンゾイルおよびベンゾイルオキシからなる群から少なくとも1つ選ばれる有機基である、(1)または(2)記載の貼付剤。
(4)上記粘着剤層が、有機液状成分をさらに含有する、(1)〜(3)のいずれかに記載の貼付剤。
(5)上記粘着剤層が、粘着付与剤をさらに含有する、(1)〜(4)のいずれかに記載の貼付剤。
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の貼付剤の粘着剤層に薬物をさらに含有してなる、貼付製剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、品質を長期間安定に維持しつつ、皮膚接着力に優れ、皮膚面の糊残りが少ない貼付剤を得ることができる。従って、本発明の貼付剤は、哺乳動物の皮膚への貼付用途に適する。また、かかる本発明の貼付剤を、例えば貼付製剤に使用した場合、良好な粘着物性を有しながら、薬物と粘着剤組成物との望まない反応を低減することができ、薬物の品質を長期間安定に維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好ましい実施態様を示すが、それらの詳細な説明および特定の例は、例示の目的のみのためのものであることが意図されており、本発明の範囲を限定しない。以下の好ましい実施態様の説明は、単に例示的な性質のものであり、決して本発明、その応用、または用途を限定することが意図されるわけではない。
【0010】
本発明の貼付剤は、支持体、および支持体の少なくとも片面上に設けられた粘着剤層を含む構成を採用することができる。支持体としては、特に限定されないが、粘着剤層の成分、例えば、粘着剤、添加剤、薬物等が実質的に不透過性であるもの、すなわちこれらが支持体の中に浸透し、支持体の背面から漏洩しないものが好ましい。
【0011】
このような支持体としては、例えば、ポリエステル、ナイロン、サラン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、サーリン(登録商標)、金属箔等の単独フィルム又はこれらの積層フィルム等が挙げられる。支持体の厚さは、特に限定されないが通常10〜500μm、好ましくは10〜200μmである。
【0012】
これらのうち支持体と粘着剤層との接着力(投錨力)を良好とするために、支持体を、上記に列挙した無孔タイプのプラスチックフィルムと多孔質フィルムとの積層フィルムとすることが好ましく、この場合、粘着剤層は多孔質フィルム側に形成することが好ましい。
【0013】
このような多孔質フィルムとしては、粘着剤層との投錨力が向上するものが採用されるが、具体的には紙、織布、不織布、編布、機械的に穿孔処理を施したシート等が挙げられ、これらのうち取扱い性等の観点からは、特に紙、織布、不織布が好ましい。
【0014】
また、多孔質フィルムは、投錨力向上、貼付製剤全体の柔軟性及び貼付操作性等の点から厚み10〜200μmの範囲のものが採用され、プラスタータイプや粘着テープタイプのような薄手の製剤の場合には厚み10〜100μmの範囲のものが採用される。
また、多孔質フィルムとして織布や不織布を用いる場合、目付量は特に限定されないが、通常5〜30g/m2、好ましくは6〜15g/m2である。
【0015】
本発明において、最も好適な支持体としては、1.5〜6μm厚のポリエステルフィルム(好ましくは、ポリエチレンテレフタレートフィルム)と、目付量6〜12g/m2のポリエステル(好ましくは、ポリエチレンテレフタレート)製不織布との積層フィルムである。
【0016】
また、粘着剤層は、式I:
【0017】
【化2】

【0018】
に示す構造部分を有するエラストマーを含有するものである。式中、P1およびP2は独立して、それぞれ水素、ヒドロキシ基または有機基を表す。
式Iに示すように、粘着剤層に含有するエラストマーは、不飽和炭化水素鎖を有する2以上の基本ポリマー間を、炭素−炭素単結合で架橋した構造としたものである。官能基を介さずに炭素−炭素単結合で架橋される構造としたので、貼付剤の製造中および保管中の品質を長期間安定に維持することができる。
【0019】
式Iにおいて、粘着剤層の品質の安定性の観点から、P1およびP2は独立して、それぞれ水素、ヒドロキシ基、および有機基からなる群より選ばれる。
上記「有機基」は、例えば、それぞれ、その一部が他の置換基で置換されてもよいアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アシルおよびアシルオキシからなる群より選ばれる。特に、これらのうち、ヒドロキシ、カルボキシまたはアミノなどの官能基で置換されていないものが、粘着剤層の品質の安定化の観点から好ましい。
【0020】
ここで、「置換されてもよいアルキル」としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、sec−プロピル、t−プロピル、t−ブチル、t−ペンチル、t−ヘキシルなどのC1−6アルキルが挙げられる。
また、「置換されてもよいアルコキシ」としては、例えば、上記C1−6アルキルが酸素原子と結合してなるC1−6アルコキシなどが挙げられる。
また、「置換されてもよいアリール」としては、例えば、フェニル、ナフチル、クミルなどのC6−10アリールが挙げられる。
また、「置換されてもよいアリールオキシ」としては、例えば、フェニルオキシ、クミルオキシなどの上記C6−10アリールが酸素原子と結合してなるC6−10アリールオキシが挙げられる。
また、「置換されてもよいアシル」としては、例えば、ベンゾイル、イソブチリル、ラウロイル、2−エチルヘキシルモノカーボネート、3−メチルベンゾイルなどのC1−6アルキル−カルボニル、C6−10アリール−カルボニルなどが挙げられる。
また、「置換されてもよいアシルオキシ」としては、例えば、ベンゾイルオキシなどの上記「アシル」が酸素原子と結合してなるC1−6アルキル−カルボニルオキシ、C6−10アリール−カルボニルオキシなどが挙げられる。
【0021】
上記有機基のなかでも、入手容易性および反応性の観点から、フェニル、ベンゾイルまたはベンゾイルオキシが特に好ましい。
【0022】
ここで上記エラストマーは、例えば不飽和炭化水素鎖を有するポリマーを基本ポリマーとし、これを有機過酸化物の存在下で、基本ポリマーの不飽和結合部分である炭素−炭素二重結合部分を開裂させて、開裂させた部分を炭素−炭素単結合により基本ポリマー間を架橋させて得ることができる。従って、架橋のために基本ポリマーに官能基を導入する必要がなく、また導入した官能基に制限されることなく種々の基本ポリマーを選択することができ、基本ポリマーの選択の自由度を広げることができる。また、このように得られたエラストマーは、比較的高分子量の炭化水素鎖を有することとなり、粘着剤層に貼付剤として必要な皮膚接着力および凝集力を付与することができる。また、エラストマーは、炭化水素鎖が3次元的に複雑に絡み合う構造となり、高いゲル分率のエラストマーとなる。これにより、貼付剤として十分な凝集力を粘着剤層に付与することができる。
【0023】
ここで、基本ポリマーとしては、特に限定されないが、式II:
【0024】
[化3]

―CH−CH=CH−CH

【0025】
で示される不飽和炭化水素鎖を有するポリマー、例えばポリブタジエン、スチレン−ブタジエンブロックコポリマー(SB)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SBS)等が挙げられる。このようなポリマーの重量平均分子量は特に限定されないが、好ましくは50,000〜5,000,000である。また、該重量平均分子量は、下記の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される値を意味する。
分析条件
GPC装置:HLC8120(東ソー株式会社製)
カラム:TSKgelGMH−H(S)(東ソー株式会社製)
標準:ポリスチレン
溶離液:テトラヒドロフラン 流速:0.5ml/min
測定温度:40℃
検出手段:示差屈折計
【0026】
例えば、基本ポリマーとしてポリブタジエンを用いると、式Iの構造部分を繰り返し単位とするエラストマーとなり、式Iの構造部分を主体とするエラストマーが得られるため好ましい。
また、基本ポリマーとしてスチレン−ブタジエンブロックコポリマー(SB)またはスチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SBS)を用いると、式Iの構造部分に、スチレン部分を連結させたエラストマーが得られ、強い凝集力を粘着剤層に付与することができる。
【0027】
また、上記エラストマーは、粘着剤層中に10重量%〜80重量%含有することが、凝集力維持等の観点から好ましく、特に、30重量%〜60重量%含有することが好ましい。
【0028】
また、有機過酸化物としては、特に限定されず、高分子化学の分野で通常用いられる自体公知の有機過酸化物を用いることができる。例えばジアシルパーオキサイド(例えばジベンゾイルパーオキサイド、ジイソブチリルパーオキサイド、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジスクシニックアシッドパーオキサイド)、パーオキシエステル(例えば1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン)、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート)、ケトンパーオキサイド(例えばメチルエチルケトンパーオキサイド)、パーオキシケタール(例えば1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン)、ハイドロパーオキサイド(例えばp−メンタンハイドロパーオキサイド)、ジアルキルパーオキサイド(例えばジクミルパーオキサイド)、パーオキシジカーボネート(例えばジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート)等が挙げられる。
【0029】
これらのうち、反応性の観点から、ジアシルパーオキサイド(特にジベンゾイルパーオキサイド)およびパーオキシエステル(特に1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート)が好ましい。特にジアシルパーオキサイドが好ましく、基本ポリマーと反応し、P1およびP2が、それぞれ同一または異なって、置換されていてもよい、アルキル、フェニル、アシル、ベンゾイル、アシルオキシまたはベンゾイルオキシであるエラストマーを生成する。また、パーオキシエステルは、P1およびP2が、それぞれ同一または異なって、置換されていてもよい、アルキル、アルコキシ、フェニル、アシル、ベンゾイル、アシルオキシまたはベンゾイルオキシであるエラストマーを生成する。また、有機過酸化物の含有量は、100重量部の基本ポリマーに対して、好ましくは0.1〜5重量部である。有機過酸化物の含有量が、100重量部の基本ポリマーに対して0.1重量部未満であると凝集力が不足する可能性があり、5重量部を超えると、粘着剤層が硬くなり、粘着力が不足する可能性がある。
【0030】
上述の通り、本発明の式Iの構造部分を有するエラストマーは、炭化水素鎖が複雑に絡み合う構造であるため、このようなエラストマーを含有する粘着剤層は十分な凝集力を有する。したがって、本発明の貼付剤は、粘着剤層が多量の他の成分、例えば粘着付与剤等を含有することが可能となる。その結果、本発明の貼付剤は、皮膚に貼付する際に、粘着力、タックをより向上させることが可能となる。一方で、本発明の貼付剤を皮膚に貼付後に剥離しても粘着剤層が皮膚面に残留する可能性は小さい。
【0031】
粘着付与剤(タッキファイヤー)としては、貼付剤の分野で公知のものを適宜選択して用いればよい。粘着付与剤としては、例えば、石油系樹脂(例えば、芳香族系石油樹脂、脂肪族系石油樹脂)、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、クマロンインデン樹脂、スチレン系樹脂(例えば、スチレン樹脂、α−メチルスチレン)、水添石油樹脂(例えば、脂環族飽和炭化水素樹脂)等が挙げられる。中でも、脂環族飽和炭化水素樹脂は薬物の保存安定性が良好になるため好適である。
【0032】
粘着付与剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、2種以上を組み合わせて使用する場合には、例えば、樹脂の種類や軟化点の異なる樹脂を組み合わせてもよい。
粘着付与剤の含有量は、60重量部の基本ポリマーに対して、好ましくは10〜180重量部、より好ましくは30〜90重量部である。粘着付与剤の量が10重量部未満であるとタック及び凝集力が乏しい場合があり、他方180重量部を超えると粘着剤層が柔らかくなりすぎ、べたつく傾向にある。
【0033】
また、本発明の貼付剤は、上述の通り、粘着剤層が十分な凝集力を有するため、粘着剤層に多量の有機液状成分を含有することが可能となる。その結果、本発明の貼付剤は皮膚に貼付する際にソフト感を与え、皮膚から剥離する際に低刺激であることが可能となる。その場合においても、本発明の貼付剤を皮膚に貼付後に剥離した場合であっても、粘着剤層が皮膚面に残留する可能性が小さい。また、粘着剤層が後述の薬物を含有する場合には、その経皮吸収を促進することが可能となる。
【0034】
このような有機液状成分としては粘着剤層との相溶性の観点から疎水性液状成分が好ましく、例えば脂肪酸アルキルエステルが挙げられる。
【0035】
脂肪酸アルキルエステルとしては、例えば、炭素数が12〜16、好ましくは12〜14の高級脂肪酸と炭素数が1〜4の低級1価アルコールとからなる脂肪酸アルキルエステルが挙げられる。上記高級脂肪酸としては、ラウリン酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、パルミチン酸(C16)が挙げられ、好ましくはミリスチン酸である。上記1価アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられ、好ましくはイソプロピルアルコールである。従って、好ましい脂肪酸アルキルエステルは、ミリスチン酸イソプロピルである。有機液状成分は、一種または二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
また、有機液状成分の含有量は、60重量部の基本ポリマーに対して、好ましくは3〜240重量部、より好ましくは4〜150重量部である。有機液状成分の含有量が3重量部以上である場合、粘着剤層に優れたソフト感を付与すると共に、粘着剤層に薬物を含有する場合は高い経皮吸収促進効果が得られる。240重量部以下である場合、粘着剤層全体の粘着力、凝集力の低下を抑制しつつ、粘着剤層に優れたソフト感を付与すると共に、粘着剤層に薬物を含有する場合は高い経皮吸収性が得られるので有利である。
【0037】
また、粘着剤層には、その他必要に応じて、自体公知の添加剤、例えば老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤等が添加されてもよい。
【0038】
また、粘着剤層の厚みは皮膚接着性の観点から10μm〜1000μmが好ましく、特に好ましくは20μm〜500μmである。
【0039】
また本発明は、粘着剤層に薬物を含有する貼付製剤に関する。上述の通り、本発明の貼付剤は、粘着剤層に式Iの構造を有するエラストマーを含み、2以上の基本ポリマーを、官能基を介さずに炭素−炭素単結合で架橋される構造を有するものとしたので、官能基と薬物との望まない反応を考慮する必要が低減され、貼付製剤の設計の自由度が向上する。また、基本ポリマーにおける不飽和炭化水素鎖中の炭素−炭素二重結合が、基本ポリマー間の炭素−炭素単結合に伴って、その数を減ずることにより、反応点が低減し、薬物の安定性に貢献する可能性がある。
【0040】
ここにいう薬物は特に限定されず、ヒトなどの哺乳動物に、その皮膚を通して投与し得る、すなわち経皮吸収可能な薬物が好ましい。そのような薬物としては、具体的には、例えば、全身性麻酔薬、催眠・鎮静薬、抗癲癇薬、解熱鎮痛消炎薬、鎮暈薬、精神神経用薬、局所麻酔薬、骨格筋弛緩薬、自律神経用薬、鎮痙薬、抗パーキンソン薬、抗ヒスタミン薬、強心薬、不整脈用薬、利尿薬、血圧降下薬、血管収縮薬、冠血管拡張薬、末梢血管拡張薬、動脈硬化用薬、循環器用薬、呼吸促進薬、鎮咳去痰薬、ホルモン薬、化膿性疾患用外用薬、鎮痛・鎮痒・収斂・消炎用薬、寄生性皮膚疾患用薬、止血用薬、痛風治療用薬、糖尿病用薬、抗悪性腫瘍用薬、抗生物質、化学療法薬、麻薬、禁煙補助薬などが挙げられる。
薬物の含有量は、その経皮吸収用薬物の効果を満たし、粘着剤の接着特性を損なわない範囲であれば特に限定されないが、60重量部の基本ポリマーに対して例えば0.5〜50重量部である。
【0041】
また、本発明の貼付剤および貼付製剤は、任意の方法で製造することができるが、例えば次の方法により製造することができる。
〔1〕(i)不飽和炭化水素鎖を含む基本ポリマーと、必要により粘着付与剤、有機液状成分、薬物等を、溶媒に溶解または分散させ、さらに有機過酸化物を添加し混合攪拌する工程;(ii)得られた粘着剤溶液または分散液を支持体の少なくとも片面に塗布し、乾燥して粘着剤層を支持体の表面に形成する工程;(iii)次いで、剥離ライナーを粘着剤層上に設ける工程を含む方法(いわゆる直写法)。
〔2〕(i)上記の粘着剤溶液または分散液を保護用の剥離ライナーの少なくとも片面に塗布する工程;(ii)乾燥して粘着剤層を剥離ライナーの表面に形成する工程;(iii)次いで支持体を粘着剤層に接着させる工程を含む方法(いわゆる転写法)。
また、粘着剤層における基本ポリマーの架橋を促進するため、上記〔1〕、〔2〕の方法には、例えば熟成工程をさらに設けることが好ましい。熟成工程は例えば50〜300℃で10〜100時間加温・保管することにより実施できる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明について、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0043】
1.粘着剤層の原料
不飽和炭化水素鎖を含む基本ポリマー:BR(ポリブタジエン)重量平均分子量458,000
不飽和炭化水素鎖を含まない基本ポリマー:PIB(ポリイソブチレン)重量平均分子量425,000
有機過酸化物(PO):ジベンゾイルパーオキサイド
粘着付与剤:脂環族飽和炭化水素樹脂(軟化点100.5℃)
有機液状成分:ミリスチン酸イソプロピル
【0044】
2.フラスコ内でのエラストマーの生成
ポリブタジエンまたはポリイソブチレンおよび有機過酸化物(ジベンゾイルパーオキサイド)を、トルエンを溶媒として、表1に示す割合で配合し、混合後、120℃で4時間加温し、エラストマーを得た。得られたエラストマーの引っ張り強度を下記の通り測定した。
測定法
剥離ライナー上に、エラストマー溶液を、乾燥後の厚さが100μmとなるように塗布し、これを乾燥させ粘着シートを得た。粘着シートを幅20mm、長さ40mmの矩形に切断して試料を得た。試料をその矩形の長さ方向の一辺から、その一辺を中心軸として密に巻き、円柱ないし丸棒状の試験片を得た。試験片を引張試験機(島津製作所社製、AUTOGRAPH AG−IS)で、チャック間距離20mm、引張強度300mm/minでの応力を測定し、破断するまでの最大応力を比較した。結果を表1に示す。
表1より明らかなように、BRはPIBに比して、PO存在下で最大応力が著しく上昇していた。PIBはPO存在下で最大応力が低下していた。この著しい最大応力の差異は、BRがPO存在下で炭素−炭素単結合により架橋されたことを示している。
【0045】
3.貼付剤
実施例1〜4、比較例1、2
トルエンを溶媒とし、表2に示す配合で、固形分が20〜40重量%となるよう粘着剤溶液を調製した。これを粘着剤層の乾燥後の厚みが100μmとなるように剥離ライナーとしてのポリエチレンテレフタレートフィルム上に均一に塗布し、100℃で5分間乾燥した。次に、支持体として、ポリエチレンテレフタレート不織布とポリエチレンテレフタレートフィルムのラミネート品を用い、該ポリエチレンテレフタレート不織布面と粘着剤層を対向させて貼り合せ、積層体を作製した。作製した積層体を窒素存在下で加温・保管して熟成させ、貼付剤を作製した。
【0046】
4.試験方法
実施例1〜4及び比較例1、2の貼付剤を、下記評価項目について、下記の通り測定した。
【0047】
(1)粘着力
23℃、60%RHの室内にて、貼付剤を幅12mm、長さ5cmの試験片に切断し、その試験片の剥離ライナーを除去し、試験片を試験板であるフェノール樹脂板に、2kgローラーで1往復させることにより圧着させた。その環境下で30分間放置した後、引張り試験機により試験片を剥離角度180°、剥離速度300mm/分で引っ張った際の粘着力を測定した。破壊モードは凝集破壊をG、界面破壊をKとした。ここで、貼付剤の粘着力としては、0.2N/12mm以上であって凝集破壊しないものが好ましい。
【0048】
(2)保持力
23℃、60%RHの室内にて、貼付剤を幅10mm、長さ5cmの試験片に切断し、その試験片の剥離ライナーを除去し、試験片を試験板であるフェノール樹脂板に、2kgローラーで1往復させることにより圧着させた。その際、貼付面積が200mmとなるようにした。40℃環境下で20分間放置した後、40℃環境下で、試験板が床に対して垂直となるよう、試験板の、試験片が貼付されていない面を固定するとともに、試験片に300gの荷重を吊り下げ、試験片が試験板より落下するまでの時間を保持力として評価した。破壊モードは凝集破壊をG、界面破壊をK、および一部凝集破壊をK/Gとした。ここで、貼付剤の保持力としては、短時間で落下しないものが好ましい。
【0049】
表2の結果より、実施例1〜4の貼付剤は、貼付剤の粘着剤層として、良好な粘着力および凝集力を有し、特に実施例2の貼付剤が、粘着力に優れるとともに、その保持力より適度な凝集力を有し、貼付剤として好ましい特性を有していた。また、実施例1〜4の貼付剤は、粘着力測定時に試験板と貼付剤の粘着剤層との間で界面破壊が起こり、試験板に粘着剤が残る糊残りは見られなかった。
これに対し、比較例1および比較例2は、粘着力測定時に凝集破壊が起こり、試験板に粘着剤が残る糊残りが見られた。また、凝集力も不十分であり、保持力測定時に、試験片が短時間で落下するとともに、試験片の落下の際に凝集破壊が起こった。これらは、比較例1は、有機過酸化物を配合しなかったため、不飽和二重結合を有する基本ポリマー間が炭素−炭素単結合で架橋されなかったため凝集力が不足したものと考えられる。また、比較例2は、炭素−炭素二重結合のないPIBを基本ポリマーとして用いたため、基本ポリマー間が炭素−炭素単結合で架橋されなかったか、または架橋が不十分で、凝集力が不足したものと考えられる。
【0050】
5.貼付製剤
実施例5〜8
実施例1〜4における35〜60重量部の基本ポリマーからそれぞれ1重量部を減じ、薬物としてインドメタシン1重量部をそれぞれ配合する以外は、上記実施例1〜4と同様にして実施例5〜8の貼付製剤を作製する。
実施例5〜8の貼付製剤は、上記実施例1〜4の貼付剤と同様の特性を有するものである。
【0051】
本発明の説明は、単に例示的な性質のものであり、かくして本発明の要旨から離れないその変形態様は、本発明の範囲内であるべきことが意図される。そのような変形態様は、本発明の精神および範囲から離れるものとしてみなされるべきではない。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の貼付剤は、品質を長期間安定に維持しつつ、皮膚接着力に優れ、皮膚面の糊残りが少ない貼付剤であり、貼付製剤に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体、および当該支持体の少なくとも片面上に設けられた粘着剤層を含む貼付剤であって、当該粘着剤層が、式I:
【化1】


(式中、P1およびP2はそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシ基または有機基を表す。)
の構造部分を有するエラストマーを含有する、貼付剤。
【請求項2】
上記有機基が、それぞれ置換されてもよい、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アシルおよびアシルオキシからなる群から選ばれる、請求項1記載の貼付剤。
【請求項3】
上記有機基が、フェニル、ベンゾイルおよびベンゾイルオキシからなる群から少なくとも1つ選ばれる有機基である、請求項1または2記載の貼付剤。
【請求項4】
上記粘着剤層が、有機液状成分をさらに含有する、請求項1〜3のいずれか1項記載の貼付剤。
【請求項5】
上記粘着剤層が、粘着付与剤をさらに含有する、請求項1〜4のいずれか1項記載の貼付剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の貼付剤の粘着剤層に薬物をさらに含有してなる、貼付製剤。

【公開番号】特開2010−43065(P2010−43065A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161898(P2009−161898)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】