説明

貼付剤及び徐放性組成物

【課題】必要量のニコチンを持続的に放出でき、かつ、人体に対する安全性の高い貼付剤及び徐放性組成物の提供。
【解決手段】支持体と、該支持体上に積層された基体にニコチン及び該ニコチンと相溶しうる樹脂からなる混合液を含浸させてなる薬物貯蔵層と、該薬物貯蔵層上に設けられた粘着剤層とを備えた貼付剤。ニコチン及びニコチンと相溶しうる樹脂からなる徐放性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貼付剤及び徐放性組成物に関し、特にニコチン含有貼付剤及びニコチン含有徐放性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ニコチン量を調整しながら必要量だけ投与し、たばこの禁断症状をおさえながら禁煙を段階的に進めていく禁煙方法が提案されており、この方法を実施する製剤として、ニコチンを粘着剤層に含有させた貼付剤が知られていた(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、ニコチンは粘着剤層に用いられる樹脂に対して可塑剤として働くため、必要量のニコチンを単に粘着剤層に含有させただけでは、ニコチンの放出量をコントロールできず、血中のニコチン濃度の急激な上昇による副作用が発現するといった問題があった。そこで、ニコチンと溶媒と低分子固体物質との混合液を多孔質繊維に含浸させた後、溶媒を蒸発させてニコチン含有薬物貯蔵層を作製することで、ニコチンの放出をコントロールしようとした貼付剤が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特許2837337号公報(請求項1等)
【特許文献2】特開2004−168734号公報(請求項1等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記ニコチン含有薬物貯蔵層を設けた貼付剤で用いられる溶媒は、主として有機溶媒であるので、薬物貯蔵層に溶媒が残留した場合、該溶媒が皮膚刺激の原因となったり、また、血中へ移行したりして、人体に対して有害となるという問題がある。また、ニコチンは揮発性が高いため、溶媒を蒸発させるために加熱処理すると、ニコチンも揮発してしまい、必要量を投与することができなくなるという問題がある。
【0004】
そこで、本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決することにあり、必要量のニコチンを持続的に放出でき、かつ、安全性の高い貼付剤及び徐放性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の貼付剤は、支持体と、該支持体上に積層された基体にニコチン及び該ニコチンと相溶しうる樹脂からなる混合液を含浸させてなる薬物貯蔵層と、該薬物貯蔵層上に設けられた粘着剤層とを備えたことを特徴とする。
【0006】
ニコチンと相溶しうる樹脂を用いることで、溶媒残留の問題を生じない薬物貯蔵層を提供できるので、人体に対する安全性が高い。また、薬物貯蔵層に溶媒を含まないため、作製工程において溶媒を蒸発させるために加熱処理する必要がないので、ニコチンが揮発されてしまうこともなく、十分な量のニコチンを薬物貯蔵層中に貯蔵でき、持続的に必要量のニコチンを放出することが可能となる。ここで、相溶とは、ニコチンと樹脂とが巨視的に相分離を起こさず、または化学反応も起こさず、均質に混ざり合っている状態をいう。
【0007】
前記ニコチンと相溶しうる樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体、ゴム系高分子、及びポリ酢酸ビニルから選ばれた少なくとも一つであることが好ましい。これらのニコチンと相溶しうる樹脂を用いることで、溶媒を用いないで所望の貼付剤を得ることができる。
【0008】
前記混合液の25℃での粘度は、150〜2000mPa・Sであることが好ましい。2000mPa・Sより高いと、薬物貯蔵層に混合液が十分に含浸できない。他方で、150mPa・Sより低いと、薬物貯蔵層から混合液の浸み出しが発生し、貼付剤の製品価値がなくなる。
【0009】
前記基体は、目付20〜100g/mの織物、編物、不織布又は紙であることが好ましい。目付20〜100g/mの織物、編物、不織布又は紙を用いることで、混合液を基体中に貯蔵でき、浸み出しが生じないので、所望の貼付剤を得ることが可能である。
【0010】
また、本発明の徐放性組成物は、ニコチン及びニコチンと相溶しうる樹脂からなるものである。ニコチンと相溶しうる樹脂を用いることで、持続的なニコチンの放出が可能である。
【0011】
本発明の徐放性組成物に用いられるニコチンと相溶しうる樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体、ゴム系高分子及びポリ酢酸ビニルから選ばれた少なくとも一つであることが好ましい。
【0012】
前記徐放性組成物の25℃での粘度は、150〜2000mPa・Sであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の貼付剤は、ニコチン及びニコチンと相溶しうる樹脂を基体中に含浸せしめてなる薬物貯蔵層を備えたものであり、この薬物貯蔵層の作製工程中溶媒を使用しないので、溶媒を除去するために加熱処理する必要がない。従って、必要量のニコチンを薬物貯蔵層中に貯蔵することができるという優れた効果を奏する。また、本発明の貼付剤は、薬物貯蔵層中に含浸せしめた樹脂により、持続的に必要量のニコチンを均一に放出することが可能であるという優れた効果を奏する。さらに、本発明の貼付剤は、薬物貯蔵層中に溶媒を含んでいないために人体に使用しても安全性が高いという優れた効果を奏する。
【0014】
本発明の徐放性組成物は、ニコチンを持続的に放出できるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の貼付剤は、支持体と、該支持体上に積層された基体にニコチン及びニコチンと相溶しうる樹脂からなる混合液を含浸させてなる薬物貯蔵層と、該薬物貯蔵層上に設けられた粘着剤層とを備えて構成されている。
【0016】
薬物貯蔵層に用いられる基体は、混合液を含浸させて一定量のニコチンを放出させることができるものであればよく、例えば、織物、編物、不織布及び紙などがあげられる。基体の素材は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエステル、ポリアミド、アクリル等を用いることができる。また、基体は、目付20〜100g/mの織物、編物、不織布又は紙が好ましい。20g/mより小さいと、薬物貯蔵層から混合液の浸み出しが起こる。他方、100g/mより大きいと、混合液を含浸させることが困難である。なお、100g/mより大きくても、含浸時に加圧すれば基体に混合液を含浸させることが可能であるが、実用的ではない。
【0017】
貼付剤におけるニコチンの含有量は、特に限定されないが、その治療目的および安全性を考慮して適宜決定でき、例えば、一製剤あたり5〜100mgが好ましい。
【0018】
前記ニコチンと相溶しうる樹脂は、ニコチンに溶解させたときに巨視的に相分離を起こさないものであれば良い。該樹脂を用いることで、ニコチンを持続的に長時間に亘って均一の放出速度で放出することが可能となる。この樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体、ゴム系高分子、ポリ酢酸ビニルがあげられる。
【0019】
前記ニコチンと相溶しうる樹脂の数平均分子量は、ニコチンとの混合液の粘度を適度に調整しうる点で、1000〜300000であることが好ましく、3000〜200000であることがより好ましい。該樹脂のニコチンに対する配合割合は、所望する該混合液の粘度に応じて適宜決定されるが、ニコチン1質量部に対し、0.15〜5質量部であることが好ましく、より好ましくは、0.2〜4.8質量部である。
【0020】
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体に用いられるモノマーとしては、アルキル基の炭素数が1〜24の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。アルキル基は、直鎖であっても、分岐鎖を有するものであってもよい。
【0021】
また、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体には、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルエステルなどのヒドロキシル基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有モノマー;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸などのカルボキシル基含有モノマー;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル;(メタ)アクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル;N−ビニル−2−ピロリドン;酢酸ビニルなどを、上記モノマーと共重合可能なモノマーとして適宜使用することができる。これらのうち、特にアクリル酸2−エチルヘキシルとN−ビニル−2−ピロリドンとの共重合体が好ましい。
【0022】
ゴム系高分子としては、例えば、ポリイソプレンゴム、ポリイソブチレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、シリコーンゴム及び天然ゴムから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0023】
上記樹脂とニコチンとの混合液の25℃での粘度は、150〜2000mPa・Sであることが好ましく、より好ましくは、150〜1800mPa・Sである。なお、2000mPa・Sより高い粘度であっても含浸時に加圧すれば基体に混合液を含浸させることが可能であるが、実用的ではない。
【0024】
支持体としては、特に限定されないが、柔軟性を有する材料からなり、さらに混合液が浸透しにくい材料からなることが好ましい。例えば、ポリエステル、ナイロン、ポリオレフィン、ポリウレタン、セルロースエステル、ポリ塩化ビニル及びポリテトラフルオロエチレンなどからなるプラスチックフィルム、これらのラミネートフィルム、及びプラスチックフィルムと織物、編物、不織布及び紙等とのラミネートシートを用いることが可能である。
【0025】
粘着剤層は、皮膚への低刺激性や、ニコチンの透過性等に鑑みて、アクリル系粘着剤からなることが好ましい。アクリル系粘着剤としては、主成分として、例えば(メタ)アクリル酸エステル単独重合体、(メタ)アクリル酸エステル単位2種以上を含む共重合体及び(メタ)アクリル酸エステルと他の官能性モノマーとの共重合体の中から選ばれた少なくとも1種を含有するものが用いられる。該(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸ペンチルエステル、(メタ)アクリル酸ヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸ヘプチルエステル、(メタ)アクリル酸オクチルエステル、(メタ)アクリル酸ノニルエステル、(メタ)アクリル酸デシルエステルなどが挙げられる。また、官能性モノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルエステルなどのヒドロキシル基含有モノマー、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有モノマー、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸などのカルボキシル基含有モノマーなどが挙げられる。その他、上記モノマーと共重合可能なモノマーとして、N−ビニル−2−ピロリドン、酢酸ビニルなどが挙げられる。このアクリル系粘着剤には、必要によりイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤等の架橋剤;ロジン樹脂、テルペン樹脂、石油樹脂等の粘着付与剤;シリカ、炭酸カルシウム、酸化チタン等の充填剤などを配合することができる。
【0026】
この粘着剤層の厚みは、10〜200μmであることが好ましく、20〜100μmであることがより好ましい。前記したようにアクリル系粘着剤を用いて所定の厚さの粘着剤層を形成することで、薬物貯蔵層から放出されたニコチンが皮膚から吸収されることが可能となる。
【0027】
保護シートとしては、粘着剤層と剥離可能であれば特に限定されないが、例えば、紙類の少なくとも片面にシリコーン処理がなされた剥離紙や、ポリエステルフィルムやポリオレフインフィルムなどのプラスチックフィルムの少なくとも片面にシリコーン処理がなされた剥離フイルムもしくはシートなどを用いることができる。
【0028】
上記の本発明の貼付剤は、次の手順で作製される。初めに、ニコチンと樹脂との混合液を所定の配合割合で調製する。次いで、この混合液を支持体上に積層した基体に公知の塗布方法により塗布し、又は浸漬させて、基体に混合液を含浸させて薬物貯蔵層を形成する。そして、保護シートのシリコーン処理面に粘着剤層材料を公知の塗布方法により塗布して粘着剤層を形成し、この粘着剤層と薬物貯蔵層とを貼合すればよい。貼合する際には、圧着工程により、粘着剤層と薬物貯蔵層との密着性を高めてもよい。公知の塗布方法としては、例えばバーコート法、ロールコート法、ナイフコート法、ロールナイフコート法、ダイコート法、グラビアコート法、エアドクターコート法、ドクターブレードコート法などがあげられる。
【0029】
この作製方法によれば、貼付剤は有機溶媒を必要としないので、人体に対する安全性が高い。また、溶媒を蒸発させるための加熱処理工程を必要としないので、必要量のニコチンを薬物貯蔵層中に貯蔵でき、さらに、ニコチンと相溶しうる樹脂を用いることで、持続的に長時間に亘って必要量のニコチンを一定の速度で放出させることが可能である。
【実施例1】
【0030】
以下、実施例及び比較例により詳細に本発明を説明する。
【0031】
本実施例では、本発明の貼付剤を作製し、混合液の基体への含浸状態及び貼付剤端部からの浸み出しの有無について評価した。
【0032】
ニコチン(和光純薬工業株式会社製、25℃での粘度:40mPa・s)と、樹脂としてのアクリル酸2−エチルヘキシルとN−ビニル−2−ピロリドンとの共重合体(数平均分子量:4000)とを、この共重合体の配合割合がニコチン1質量部に対し2質量部になるように配合し、混合液を調製した。混合液の25℃での粘度をB型粘度計(東機産業株式会社製)により測定すると、500mPa・sであった。
【0033】
その後、混合液を、ダイコーターを用いてポリエステルフィルム上に設けた基体としてのポリエステル不織布(デュポン株式会社製ソンタラ8021、目付81g/m)に25g/m塗布し、混合液を含浸させた。含浸の状態を目視により確認したところ、混合液がポリエステル不織布に十分に含浸されていた。次いで、シリコーン処理したポリエステルフィルム上にアクリル系粘着剤(アクリル酸n−ブチル65質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル32質量部、及びアクリル酸3質量部からなるモノマー組成物を酢酸エチル溶液中でラジカル重合したアクリル酸エステル系共重合体の固形分100質量部に対して、ヘキサメチレンジエチレン尿素(アジリジン系架橋剤)を固形分で0.2質量部添加した粘着剤組成物)を乾燥後の厚みが60μmになるように塗布し、形成した粘着剤層を前記薬剤貯蔵層に貼合させて圧着し、9cmの円形にカットして、本発明の貼付剤を3つ作製した。この貼付剤をアルミニウム個装し、40℃、50℃、及び50g加重下50℃でそれぞれ保管し、10日後に貼付剤端部からの混合液の浸み出しの有無を目視により確認したところ、いずれの保管条件の場合も浸み出しはなく、本発明の貼付剤は密封性がよいことが分かった。
【0034】
次に、実施例1と同一の手順により、以下の表1(実施例2〜9)に示す作製条件(樹脂・配合割合・基体)で本発明の貼付剤を作製し、各場合において、25℃での粘度をB型粘度計(東機産業株式会社製)により測定した。
【0035】
また、各貼付剤について、実施例1と同様に混合液の基体への含浸状態及び貼付剤端部からの混合液の浸み出しについて評価した。結果を表1に示す。
【0036】
なお、表1中、樹脂を示すA〜Cは、それぞれ
A:アクリル酸2−エチルヘキシルとN−ビニル−2−ピロリドンとの共重合体(数平 均分子量:4000)
B:スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(シェルジャパン株式会社製クレイトンD−1117、数平均分子量:174000)
C:ポリ酢酸ビニル(日本合成化学工業株式会社製ゴーセニールNZ−3、数平均分子量:30000)
を示す。
【0037】
また、基体の種類を示すア〜エは、それぞれ
ア:ポリエステル不織布(デュポン株式会社製ソンタラ8021)
イ:ポリエステル不織布(デュポン株式会社製ソンタラ8001)
ウ:アクリル/ポリエステル不織布(旭化成株式会社製シャレリアC1040)
エ:ポリエステル不織布(ユニチャーム株式会社製ソフロンE PL−60)
を示す。
【0038】
また、混合液の薬部貯蔵層への含浸状態の評価は、それぞれ、○:十分に含浸されている、△:一部含浸されており、実用上は問題がない、×:含浸が不十分で実用的ではないことを示す。また、端部からの浸み出しの評価は、それぞれ、○:浸み出しがない、△:一部に浸み出しが確認されたが、実用上問題はない、×:浸み出しが多く、実用的ではないことを示す。
(表1)

【0039】
表1から、混合液が、薬物貯蔵層を構成する基体に実用上問題のない状態で含浸されていることが分かった。また、端部からの混合液の浸み出しもほとんどなく、密封性に富んでおり、実用上問題のないことが分かった。
【0040】
(比較例)
比較例として、実施例1と同一の手順で以下の表2(比較例1〜4)に示す条件で貼付剤を作製し、実施例1と同様に、混合液の粘度を測定すると共に、含浸の状態の評価と、混合液の浸み出しの評価を行なった。結果を表2に示す。
【0041】
表2中、樹脂Aは、アクリル酸2−エチルヘキシルとN−ビニル−2−ピロリドンとの共重合体を示し、基体は、それぞれ
ア:ポリエステル不織布(デュポン株式会社製ソンタラ8021)
オ:ポリエステル不織布(ユニチカ株式会社製エルベスS0153WDO)
カ:ポリエステル不織布(旭化成株式会社製コルドンQ0140)
を示す。
【0042】
また、表2中、混合液の薬部貯蔵層への含浸状態の評価は、それぞれ、○:十分に含浸されている、×:含浸が不十分で実用的ではないことを示す。また、端部からの浸み出しの評価は、それぞれ、×:浸み出しが多く、実用的ではない、−:測定不可能であったことを示す。
(表2)

【0043】
表2から、比較例1の場合には、粘度が高すぎるために基体に混合液が含浸することができず、実用的な貼付剤が作製できなかった。比較例2の場合には、粘度が低すぎるために含浸はできるが、混合液が浸み出してしまい、密封性が悪く、実用的ではなかった。比較例3の場合には、目付値が小さすぎるために含浸はできるが、混合液が浸み出してしまい、密封性が悪く、実用的ではなかった。比較例4の場合には、目付値が大きすぎるために混合液が基体に含浸できず、実用的ではなかった。
【0044】
以上の実施例及び比較例から、本発明の貼付剤は、基体の目付値及び樹脂の粘度の最適化を行なうことで、密封性がよく、貼付剤の外周部をシールすることが不要となる工程上の利点があり、しかも必要量のニコチンを含んでいるものであることが分かった。
【0045】
また、実施例1に従って本発明の貼付剤を作製し、この貼付剤単位面積(cm)あたりのニコチンの累積透過量(μg/cm)をラット皮膚によるin vitro皮膚透過試験により測定した。結果を図1に示す。
【0046】
図1から、ニコチンの累積透過量は、経過時間に比例していた。従って、ニコチンは長時間にわたって一定量が持続的に放出されていることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の貼付剤は、ニコチンと樹脂とを含浸せしめた薬物貯蔵層を有する貼付剤であり、溶媒を用いないで作製できるので、人体に対する安全性が高く、かつ、必要量のニコチンを持続的に長時間に亘って一定量放出させることができる。さらには、貼付剤端部からのニコチンと樹脂との浸み出しがなく、密封性に優れたものである。従って、本発明は医薬品分野において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】ニコチンの経時的徐放性を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体上に積層された基体にニコチン及び該ニコチンと相溶しうる樹脂からなる混合液を含浸させてなる薬物貯蔵層と、該薬物貯蔵層上に設けられた粘着剤層とを備えたことを特徴とする貼付剤。
【請求項2】
前記ニコチンと相溶しうる樹脂が、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体、ゴム系高分子及びポリ酢酸ビニルから選ばれた少なくとも一つであることを特徴とする請求項1に記載の貼付剤。
【請求項3】
前記混合液の25℃での粘度が、150〜2000mPa・Sであることを特徴とする請求項1又は2に記載の貼付剤。
【請求項4】
前記基体が、目付20〜100g/mの織物、編物、不織布又は紙であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の貼付剤。
【請求項5】
ニコチン及び該ニコチンと相溶しうる樹脂からなることを特徴とする徐放性組成物。
【請求項6】
前記ニコチンと相溶しうる樹脂が、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体、ゴム系高分子及びポリ酢酸ビニルから選ばれた少なくとも一つであることを特徴とする請求項5に記載の徐放性組成物。
【請求項7】
前記徐放性組成物の25℃での粘度が、150〜2000mPa・Sであることを特徴とする請求項5又は6に記載の徐放性組成物。


【図1】
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【公開番号】特開2007−262007(P2007−262007A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−90261(P2006−90261)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】