説明

貼付装置、放射線像変換パネルの製造方法、および放射線像変換パネル

【課題】放射線像変換パネル部材を精度よく、ダメージを与えないで基板に貼り合わせることが可能な貼付装置および放射線像変換パネルの製造方法を提供する。
【解決手段】放射線像変換パネル部材14を基板16上に貼りあわせる貼付装置10は、放射線像変換パネル部材14を吸引力で保持する保持部12bを持つ保持手段を有し、保持手段の保持面が曲面状で、保持手段が転動可能となっている。放射線像変換パネル部材14を湾曲させた状態で保持しながら、放射線像変換パネル部材14の一端部を基板16に接触させた後、放射線像変換パネル部材14および基板16のいずれかを移動させて、これらを貼り合わせる。保持手段の保持面の高さは、基板16の貼り合わせ面と枠との高さの差より大きくしておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貼付装置、放射線像変換パネルの製造方法、および放射線像変換パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
X線、γ線、電子線等の放射線や紫外線等により励起すると、近紫外領域から青色領域に発光(瞬時発光)を示す二価ユーロピウム賦活フッ化ハロゲン化バリウム蛍光体(BaFX:Eu2+,但し、Xはフッ素以外のハロゲン原子を表す。)が知られており、X線撮影等に利用される放射線増感スクリーン用の蛍光体として使用されている。
【0003】
さらに近年では、蛍光体にX線、γ線、電子線等の放射線や紫外線等を照射した後、可視光線から赤外線に及ぶ波長領域の電磁波(励起光)で励起すると、近紫外領域から青色領域に及ぶ波長領域の発光(輝尽発光)を示すことが見出され、このような蛍光体は、放射線撮影において、従来の放射線写真法に代替する放射線像変換技術に有用な蛍光体として、非常に注目されている。
【0004】
この放射線像変換技術は、支持体上に輝尽性蛍光体を含有する蛍光体層が設けられた放射線像変換パネル(蓄積性蛍光シート)を利用するものであり、被写体を透過した放射線又は被写体から発せられた放射線をパネル上の輝尽性蛍光体に吸収させた後、輝尽性蛍光体を可視光線から赤外線に及ぶ波長領域より選ばれる電磁波(励起光)を用いて時系列的に励起することによって、輝尽性蛍光体中に蓄積されている放射線エネルギーを蛍光(輝尽発光)として放出させ、光電的に読み取ることにより電気信号を得、得られた電気信号を画像化するものである。
【0005】
この放射線像変換パネルを用いることにより、従来の放射線写真法に比べ、少ない被爆量で画像形成することが可能となり、また、得られた画像をコンピュータにより画像処理することができるため、さらに情報量の豊富な放射線画像を得ることができるとともに、撮影不良画像の救済も可能となる。
【0006】
放射線像変換パネルの製造方法としては、種々の方法が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。特許文献1では、蛍光体プレートの平面を保持しながら位置決めを行ない、第1のベースと離れた第2のベース上で平板の位置決めを行ない、封止蛍光体プレート、平板のうち少なくともどちらか一方を他方へ移動させて貼り付けを行なって、放射線像変換パネルを製造する方法が提案されている。また、特許文献2では、蛍光体シートと平板を平行状態に保持し、接触/離反により貼り合せて放射線像変換パネルを製造する方法が提案されている。しかし、これらの方法では、枠構造を有する剛直基板にIPを位置精度良く貼り付けることは非常に困難である。
【0007】
また、特許文献3で提案されている技術は、枠付きLCDパネルへの偏光板貼付け装置の技術であり、段部を有する枠付きLCDパネルの凹部へ偏光板を貼り付ける装置で、半円筒形状のゴムローラを具備する貼付け装置である。しかし、当該装置では、枠構造を有する剛直基板に対して重量があり、傷が付き易いIPを保持し、均一に貼り付けることは不可能である。
【特許文献1】特開平11−295828号公報
【特許文献2】特開2005−164518号公報
【特許文献3】特開平8−282906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明では、上記従来の課題を解決することを目的とする。すなわち、本発明は、放射線像変換パネル部材を精度よく、かつ、ダメージを与えないで基板に貼り合わせることが可能な貼付装置および放射線像変換パネルの製造方法を提供することを目的とする。また、基板上に放射線像変換パネル部材が精度よく、かつ、ダメージが与えられないで製造された放射線像変換パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明者等は、下記本発明に想到し、当該課題を解決できることを見出した。すなわち、本発明は、放射線像変換パネル部材を基板上に貼りあわせる貼付装置であって、前記放射線像変換パネル部材を保持する保持手段を有し、当該保持手段の保持面が曲面状となっており、前記保持手段が転動可能となっていることを特徴とする貼付装置である。
【0010】
本発明の貼付装置には、下記第1〜第7の態様のうち少なくともいずれかの態様が適用されていることが好ましい。
【0011】
(1)第1の態様は、前記保持手段が前記放射線像変換パネル部材に負圧を生じさせる減圧手段であり、前記保持面の前記放射線像変換パネル部材との摩擦係数が0.1〜0.9である態様である。
(2)第2の態様は、前記基板の周囲に枠が設けられており、前記保持手段の保持面が凸面となっており、当該保持面の高さが、前記枠と前記基板の貼り合わせ面との高さの差より大きい態様である。
(3)第3の態様は、前記保持面に直径0.5〜3.0mmの孔(吸引孔)を有し、当該孔の占める面積が前記保持面の0.1〜10%である態様である。
(4)第4の態様は、前記保持面と前記基板の貼り合わせ面との相対位置を調整する調整機構を有する態様である。
(5)第5の態様は、前記保持面がゴム材料からなり、その硬度が30〜90である態様である。
(6)第6の態様は、前記保持面の表面抵抗の常用対数値(logSR)が13以下である態様である。
(7)第7の態様は、貼り合わせの際の圧力が20〜2000kPaである態様である。
【0012】
また、本発明は、前記放射線像変換パネル部材を湾曲させた状態で保持しながら、前記放射線像変換パネル部材の一端部を基板に接触させた後、前記放射線像変換パネル部材および基板のいずれかを移動させて、これらを貼り合わせることを特徴とする放射線像変換パネルの製造方法である。
さらに、本発明は、上記本発明の放射線像変換パネルの製造方法により製造されることを特徴とする放射線像変換パネルである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、放射線像変換パネル部材を精度よく、かつ、ダメージを与えないで基板に貼り合わせることが可能な貼付装置および放射線像変換パネルの製造方法を提供することができる。また、基板上に放射線像変換パネル部材が精度よく、かつ、ダメージが与えられないで製造された放射線像変換パネルを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[貼付装置および放射線像変換パネルの製造方法]
本発明の貼付装置は、放射線像変換パネル部材を基板上に貼りあわせる装置であって、図1に示すように、当該貼付装置10は、放射線像変換パネル部材14を保持する保持手段を有する。当該保持手段は、例えば、ドラム12aと保持面を形成する保持部12bとを備える。そして、保持面は、曲面状(例えば、曲率半径:R(φ)=20〜300cm)となっており、保持手段におけるドラム12aは矢印A方向に転動可能となっている。なお、ドラム12aを転動させずに基板16を矢印B方向に移動させ、これに従動させる形で、ドラム12aを転動(回転)させてもよい。
【0015】
ドラム12aや基板16を移動させる場合、保持面と基板の貼り合わせ面との相対位置を調整する調整機構を有することが好ましい。具体的には、マイクロメータにより基板搬送モータを制御して上記相対位置を調整することが好ましい。また、マイクロメータにより相対基板位置を調整しても良いし、ステッピングモータのパルス数を制御して上記相対位置を調整しても良い。
【0016】
保持手段による放射線像変換パネル部材14の保持方法としては、例えば、保持面に静電気をかけて静電力により当該部材を保持する方法;保持面に粘着剤を塗布してその粘着力により当該部材を保持する方法;放射線像変換パネル部材に負圧を生じさせる減圧手段を設け、吸引力により当該部材を保持する方法;が挙げられる。これらの方法のなかでも、保持面への放射線像変換パネル部材の保持や基板への貼り合わせといった、保持・剥離の制御性を考慮して、減圧手段を設け、吸引力により当該部材を保持する方法を採用することが好ましい。
【0017】
減圧手段としては、図1に示すように、保持部に孔として吸引孔12cを複数設けて、不図示のポンプにより矢印X方向に減圧し、放射線像変換パネル部材14に負圧を生じさせて、これを保持することが好ましい。負圧は、30〜100kPaであることが好ましい。また、吸引孔12cは、少なくとも、放射線像変換パネル部材14の四隅にあることが好ましい。孔の直径は0.5〜3.0mmが好ましく、さらには1.0〜2.0mmの範囲がより好ましい。孔が占める面積は保持面に対し、0.1〜10%である事が好ましく、より好ましくは0.5〜5%の範囲である。このような範囲とすることで、放射線像変換パネル部材などの被保持部材に損傷を与えることなく良好にこれを保持することができる。
【0018】
当該装置を使用して、放射線像変換パネルを製造する場合は、まず、放射線像変換パネル部材14を湾曲させた状態で保持部12bの保持面に保持しながら、この放射線像変換パネル部材14の一端部を基板16の枠内端部に接触させる。このとき、予め粘着層18を基板16の貼り合わせ面に形成しておくことが好ましい。その後、放射線像変換パネル部材14および基板16のいずれかを矢印Aまたは矢印B方向に移動させて、これらを貼り合わせて放射線像変換パネルを製造する。
【0019】
粘着層18が形成されている場合は、その粘着力により放射線像変換パネル部材14が保持面から剥離されて基板16上に貼り合わされるが、確実に基板16上に貼り合わせるために、貼り合わせ処理と共に負圧を小さくする等の保持力を低下させる処理を施すことが好ましい。
【0020】
保持面の放射線像変換パネル部材14との摩擦係数が0.1〜0.9であることが好ましく、0.5〜0.7であることがより好ましい。摩擦係数が0.1未満であると、保持面から放射線像変換パネル部材14が滑りやすくなることがある。摩擦係数が0.9を超えると、放射線像変換パネル部材14にシワが発生しやすくなることがある。
【0021】
ここで、放射線像変換パネル部材14とは、該部材の周囲に基板16の枠が設けられる前のものをいい、当該部材だけでも放射線像変換パネルとして利用することができる。放射線像変換パネル部材14の製造方法については後述する。
【0022】
また、上記枠は、パネルの画像領域の保護、取り扱い、パネルの強度確保等のために設けられるものであり、基板の周囲に設けられている。枠は基板と同じ材質のものを使用してもよいが、ポリアミド(PA:ナイロン)、ポリアセタール(POM)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、PE(ポリエチレン)等の樹脂などで構成される。
【0023】
図1に示すように、保持手段の保持面は凸面となっているが、当該保持面の高さ(h)は、枠と基板の貼り合わせ面との高さの差(h)より大きいことが好ましく、「h−h」が0.5〜10mmであることが好ましい。「h>h」であることで、枠とパネル部材もしくは貼付装置が干渉せず、精度良い貼付を行うことができる。
【0024】
保持部12b(特に保持面)はゴム材料からなり、その硬度(JIS No.K6301)が30〜90であることが好ましい。具体的には、表面層がシリコーンゴムシート(A,Sラバー(宮川ロール) 硬度50 体積抵抗 1010Ω/cm PETとの静止摩擦係数0.65)、ニトリルゴム(JSR−NBR(JRS製) 硬度50 10Ω/cm 静止摩擦係数0.7や、Hycar(BF Goodrich社製)、Chemigum(Eliokem社製)、ポリサー(ランクセス社製))を使用することが好ましい。
【0025】
保持面の表面抵抗の常用対数値(logSR)が13以下であることが好ましく、9〜13であることがより好ましい。「logSR」が13を超えると、帯電によるごみの付着量が多くなることがある。表面抵抗の測定法は、体積固有抵抗(Ω/cm 25℃でASTM D257により測定することができる。
【0026】
貼り合わせの際の圧力は20〜2000kPaであることが好ましく、40〜200kPaであることがより好ましい。20〜2000kPaであることで、パネル、枠に悪い影響を与えること無く、均一に精度良く貼り合わせることができる。
【0027】
[放射線像変換パネル]
本発明の放射線像変換パネルは、上記本発明の製造方法により製造される。当該放射線像変換パネルとなる前の放射線像変換パネル部材の好ましい態様は、以下の通りである。
【0028】
(1)保護層表面のユニバーサル硬度が55N/mm以上である。
(2)放射線像変換パネルの長さ20cmに対する撓み量が20mm未満である。
(3)蛍光体層が蓄積性蛍光体粒子を分散状態で含有支持する結合剤からなり、該蓄積性蛍光体粒子の充填率が65容量%以上である。
(4)結合剤と蓄積性蛍光体粒子の重量混合比(前者/後者)が1/25以下である。
(5)蛍光体層の層厚が250μm以上である。
(6)蛍光体層の保護層とは反対側の表面に光反射層が設けられていて、蓄積性蛍光体粒子の発光ピーク波長における該光反射層の反射率が70%以上である。
【0029】
以下に、本発明の放射線像変換パネルについて、図面を参照しながら詳細に述べる。
【0030】
図2は、本発明の放射線像変換パネルの基本的な構成の例を概略的に示す断面図である。放射線像変換パネル20は、順に支持体22、蛍光体層24、および保護層26から構成される。
【0031】
本発明において、保護層26の表面のユニバーサル硬度は53N/mm以上であることが好ましく、70N/mm以下であることが好ましい。ここで、ユニバーサル硬度は、DIN50359、ISO14577に準処した硬度HUを意味し、負荷した荷重Fとくぼみの表面積A(h)との商として定義される。具体的には、保護層表面を微小硬度計(フィッシャースコープH100C)を用いて、ビッカース圧子、荷重F100mN、荷重アプリケーション時間50秒の条件にて測定して得られた値(押し込み深さh)と、負荷荷重Fとから、下記(1)式により求められる値である(くぼみの表面積A(h)は、押し込み深さhから(2)式により算出される)。
【0032】
HU = F/A(h) = F/{26.43×h} …(1)
【0033】
A(h) = 4×sin(α/2)/cos(α/2) × h …(2)
(α:136゜)
【0034】
また、保護層26は、その表面粗さが0.10乃至0.50μmの範囲にある。好ましくは、表面粗さは0.12乃至0.30μmの範囲にある。ここで、表面粗さは、JIS B 0601で規定された表面粗さRa(算術平均粗さ)であり、粗さ曲線からその平均線の方向の基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線から測定曲線までの偏差の絶対値を合計し平均して得られる値である。
【0035】
さらに、保護層26は、その層厚が1乃至40μmの範囲にあることが好ましく2乃至20μmの範囲にあることがより好ましい。
【0036】
上述したように、保護層26の表面硬度、表面粗さおよび層厚をそれぞれ特定の範囲内とすることにより、保護層表面に傷がつきにくくなり、また傷がついたとしても目立ちにくくなり、よって耐傷性を顕著に高めることができる。特に、放射線画像の高い画質を維持しながら、耐傷性を向上させることができる。
【0037】
さらに、耐傷性の点から、放射線像変換パネルは、その端部から長さ20cmの部分を支持して端部を撓ませたときに、支持部からの鉛直方向の長さで表した撓み量が20mm未満であることが好ましい。好ましくは、撓み量は10mm以下である。撓み量は、例えば支持体22の裏面に硬い第二の支持体を設けることにより小さくすることができる。このようにパネルの撓み量を小さくして柔軟性を低くすることによって、パネルの取扱いが容易になり、結果としてパネル表面の耐傷性を高めることができる。
【0038】
蛍光体層24は、一般には蓄積性蛍光体を含む層であり、通常は蓄積性蛍光体粒子を分散状態で含有支持する結合剤からなる層である。画質の点から、蛍光体層中の蛍光体粒子の充填率は65容量%以上であることが好ましく、特に好ましくは70容量%以上である。同様に画質の点から、結合剤と蛍光体粒子の重量混合比(前者/後者)は1/25以下であることが好ましく、そして蛍光体層24の層厚は250μm以上であることが好ましい。これらにより、X線等の放射線に対する吸収率を高めることができる。
【0039】
画質の点から更に、蛍光体層24の片面には光反射層が設けられていることが好ましい。光反射層は、蓄積性蛍光体粒子の発光ピーク波長における反射率が70%以上であることが好ましい。これにより、発光光の取出し効率を高めることができる。
【0040】
なお、本発明の放射線像変換パネルにおいて、保護層26は、単層である必要はなく、二層以上の層から構成されていてもよい。
【0041】
本発明の放射線像変換パネルは、例えば以下のようにして製造することができる。まず、支持体は通常、柔軟な樹脂材料からなる厚みが50μm乃至1mmのシートあるいはフィルムを使用する。支持体は透明であってもよく、あるいは支持体に、励起光もしくは発光光を反射させるための光反射性材料(例、アルミナ粒子、二酸化チタン粒子、硫酸バリウム粒子)を充填してもよく、あるいは空隙を設けてもよい。または、支持体に励起光もしくは発光光を吸収させるため光吸収性材料(例、カーボンブラック)を充填してもよい。支持体の形成に用いることのできる樹脂材料の例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、アラミド樹脂、ポリイミド樹脂などの各種樹脂材料を挙げることができる。さらに、画像の鮮鋭度を高める目的で、支持体の蛍光体層が形成される側の表面(支持体表面に下塗層、光反射層あるいは光吸収層等の補助層が設けられる場合には、それら補助層の表面であってもよい)には微小な凹凸が形成されていてもよい。必要に応じて、支持体は金属シート、セラミックシート、ガラスシートなどであってもよい。
【0042】
支持体の片面(蛍光体層または光反射層が設けられる側とは反対側の表面)には、前述したようにパネルの柔軟性を低くするために、カーボンシートなど硬くて軽量の材料からなる第二の支持体が設けられてもよい。
【0043】
支持体上には、光反射性物質と結合剤とからなる光反射層が設けられてもよい。光反射性物質の例としては、Al、ZrO、TiO、MgO、BaSO、SiO、ZnS、ZnO、CaCO、Sb、Nb、2PbCO・Pb(OH)、PbF、BiF、Y、YOCl、MIIFX(MIIはBa、Sr及びCaのうちの少なくとも一種であり、XはCl及びBrのうちの少なくとも一種である)、リトボン(BaSO+ZnS)、ケイ酸マグネシウム、塩基性ケイ硫酸鉛、塩基性リン酸鉛、ケイ酸アルミニウムなどの白色顔料、および中空ポリマーを挙げることができる。これらの物質は単独で用いてもよいし、あるいは組み合わせて用いてもよい。これらのうちでも高い屈折率を有する好ましい物質は、Al、Y、ZrO、TiOである。
【0044】
光反射層は、前述したように蓄積性蛍光体の発光ピーク波長における反射率が70%以上であることが好ましい。また、励起光に対する散乱長(励起光が一回散乱するまでに直進する平均距離を意味し、散乱長が短いほど光散乱性が高い。散乱長は、光反射層の透過率の測定値から、クベルカ・ムンクの理論に基づく計算方法により決定することができる)が5μm以下であることが好ましく、そのためには、光反射性物質の平均粒子径は励起光の波長の1/4乃至2倍の範囲にあることが好ましい。通常使用される励起光の波長は500〜800nmの範囲にあるので、光反射性物質の平均粒子径は0.1乃至2.0μmの範囲にあることが好ましい。
【0045】
また、光反射性物質のBET比表面積(単位質量当たりの表面積)は、一般には1.5m/g以上であり、好ましくは2乃至10m/gの範囲であり、より好ましくは2.5乃至8m/gの範囲にある。光反射性物質の嵩密度(粉体の質量を、粉体を振動によって最密に充填したときの嵩体積で割った値)は、1mg/cm以下であることが好ましく、より好ましくは0.6mg/cm以下である。
【0046】
光反射層の形成は、上記の微粒子状の光反射性物質を結合剤と共に有機溶剤に分散溶解して塗布液を調製した後、この塗布液を支持体の表面に均一に塗布し、乾燥することにより行う。塗布液中の結合剤と光反射性物質の比率は、一般に1:10乃至1:50(重量比)の範囲にあり、好ましくは1:10乃至1:20(重量比)の範囲にある。結合剤および有機溶剤としては、後述する蛍光体層形成用の塗布液に使用できる結合剤および溶剤の中から任意に選択して用いることができる。塗布液には更に、光反射性物質の分散性を高める目的で、アルミニウム系カップリング剤、チタネート系カップリング剤およびシランカップリング剤などの分散剤を添加してもよい。塗布操作は、通常の塗布手段、例えばドクターブレード、ロールコータ、ナイフコータなどを用いる方法により行うことができる。光反射層の層厚は、一般には5乃至100μmの範囲にある。
【0047】
なお、支持体と光反射層との間には、両者の接着性を高めるために、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂などからなる接着層が設けられてもよいし、あるいは帯電防止のために、これら樹脂中に導電剤が含有された導電層が設けられてもよい。
【0048】
支持体(または光反射層)上には、蓄積性蛍光体粒子と結合剤とからなる蛍光体層が設けられる。蓄積性蛍光体としては、波長が400〜900nmの範囲の励起光の照射により、300〜500nmの波長範囲に輝尽発光を示す輝尽性蛍光体が好ましい。そのような好ましい輝尽性蛍光体の例としては、ユーロピウム又はセリウムで付活したアルカリ土類金属ハロゲン化物系蛍光体(例、BaFBr:Eu、およびBaF(Br,I):Eu)、およびセリウム付活希土類オキシハロゲン化物系蛍光体を挙げることができる。
【0049】
これらのうちでも、基本組成式(I)「MIIFX:zLn」で代表される希土類付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体は特に好ましい。ただし、MIIはBa、Sr及びCaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属を表し、LnはCe、Pr、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Nd、Er、Tm及びYbからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素を表す。Xは、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンを表す。zは、0<z≦0.2の範囲内の数値を表す。
【0050】
上記基本組成式(I)中のMIIとしては、Baが半分以上を占めることが好ましい。Lnとしては、特にEu又はCeであることが好ましい。また、基本組成式(I)では表記上F:X=1:1のように見えるが、これはBaFX型の結晶構造を持つことを示すものであり、最終的な組成物の化学量論的組成を示すものではない。一般に、BaFX結晶においてXイオンの空格子点であるF(X)中心が多く生成された状態が、600〜700nmの光に対する輝尽効率を高める上で好ましい。このとき、FはXよりもやや過剰にあることが多い。
【0051】
なお、基本組成式(I)では省略されているが、必要に応じて下記のような添加物を基本組成式(I)に加えてもよい。
【0052】
「bA, wN, xNII, yNIII
【0053】
上記式中、AはAl、SiO及びZrOなどの金属酸化物を表す。MIIFX粒子同士の焼結を防止する上では、一次粒子の平均粒径が0.1μm以下の超微粒子でMIIFXとの反応性が低いものを用いることが好ましい。Nは、Li、Na、K、Rb及びCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属の化合物を表し、NIIは、Mg及び/又はBeからなるアルカリ土類金属の化合物を表し、NIIIは、Al、Ga、In、Tl、Sc、Y、La、Gd及びLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の三価金属の化合物を表す。これらの金属化合物としてはハロゲン化物を用いることが好ましいが、それらに限定されるものではない。
【0054】
また、b、w、x及びyはそれぞれ、MIIFXのモル数を1としたときの仕込み添加量であり、0≦b≦0.5、0≦w≦2、0≦x≦0.3、0≦y≦0.3の各範囲内の数値を表す。これらの数値は、焼成やその後の洗浄処理によって減量する添加物に関しては最終的な組成物に含まれる元素比を表しているわけではない。また、上記化合物には最終的な組成物において添加されたままの化合物として残留するものもあれば、MIIFXと反応する、あるいは取り込まれてしまうものもある。
【0055】
その他、上記基本組成式(II)には更に必要に応じて、Zn及びCd化合物;TiO、BeO、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、Y、La、In、GeO、SnO、Nb、Ta、ThO等の金属酸化物;Zr及びSc化合物;B化合物;As及びSi化合物;テトラフルオロホウ酸化合物;ヘキサフルオロケイ酸、ヘキサフルオロチタン酸、及びヘキサフルオロジルコニウム酸の1価又は2価の塩からなるヘキサフルオロ化合物;V、Cr、Mn、Fe、Co及びNiなどの遷移金属の化合物などを添加してもよい。さらに、本発明においては上述した添加物を含む蛍光体に限らず、基本的に希土類付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体とみなされる組成を有するものであれば如何なるものであってもよい。
【0056】
上記基本組成式(I)で表される希土類付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体は、通常はアスペクト比が1.0乃至5.0の範囲にある。本発明に用いられる蓄積性蛍光体粒子は一般に、アスペクト比が1.0乃至2.0(好ましくは、1.0乃至1.5)の範囲、粒子サイズのメジアン径(Dm)が2μm乃至10μm(好ましくは、2μm乃至7μm)の範囲、そして粒子サイズ分布の標準偏差をσとしたときのσ/Dmが50%以下(好ましくは、40%以下)のものである。また、粒子の形状としては、直方体型、正六面体型、正八面体型、14面体型、これらの中間多面体型および不定型粉砕粒子などがあるが、それらのうちでは14面体型が好ましい。
【0057】
ただし、本発明において蓄積性蛍光体は、上記基本組成式(I)で表される輝尽性蛍光体に限定されるものではない。
【0058】
蓄積性蛍光体粒子は、粒状性などの画質の点から、粒子径の異なる二種類以上の蛍光体粒子の混合物であることが好ましい。その場合に、最小の蛍光体粒子の平均粒子径Dm(メジアン粒径:蛍光体粒子について粒径と頻度とからなる分布曲線を得たときに累積分布が全体粒子数の50%を示す粒径(分布の中心値)を意味する)が1.0乃至3.5μmの範囲にあり、最大の蛍光体粒子の平均粒子径DmとDmの比(Dm/Dm)が2.0以上であることが好ましい。混合物中における最小の蛍光体粒子の割合は重量比で10%以上、50%以下であることが好ましく、最大の蛍光体粒子の割合は重量比で50%以上、90%以下であることが好ましい。
【0059】
蛍光体層の形成は、まず上述した蓄積性蛍光体粒子、好ましくは粒子径の異なる二種類以上の蛍光体粒子の混合物を、結合剤と共に適当な有機溶剤に分散溶解して塗布液を調製する。塗布液中の結合剤と蛍光体の比率は、一般に1:1乃至1:100(重量比)の範囲にあり、好ましくは1:25乃至1:50(重量比)の範囲にある。
【0060】
蓄積性蛍光体粒子を分散支持する結合剤の例としては、ゼラチン等の蛋白質、デキストラン等のポリサッカライド、またはアラビアゴムのような天然高分子物質;および、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ニトロセルロース、エチルセルロース、塩化ビニリデン・塩化ビニルコポリマー、ポリアルキル(メタ)アクリレート、塩化ビニル・酢酸ビニルコポリマー、ポリウレタン、セルロースアセテートブチレート、ポリビニルアルコール、線状ポリエステル、熱可塑性エラストマーなどのような合成高分子物質を挙げることができる。なお、これらの結合剤は架橋剤によって架橋されたものであってもよい。
【0061】
塗布液調製用の有機溶剤の例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール等の低級アルコール;メチレンクロライド、エチレンクロライドなどの塩素原子含有炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの低級脂肪酸と低級アルコールとのエステル;ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル;そして、それらの混合物を挙げることができる。
【0062】
塗布液にはさらに、塗布液中における蛍光体の分散性を向上させるための分散剤、形成後の蛍光体層中における結合剤と蛍光体との間の結合力を向上させるための可塑剤、蛍光体層の変色を防止するための黄変防止剤、硬化剤、架橋剤など各種の添加剤が混合されていてもよい。
【0063】
この塗布液を次に、支持体の表面に前記の塗布手段を用いて均一に塗布して塗膜を形成する。この塗膜を乾燥して、支持体上への蛍光体層の形成を完了する。蛍光体層の層厚は、目的とする放射線像変換パネルの特性、蛍光体の種類、結合剤と蛍光体との混合比などによっても異なるが、一般には20μm乃至1mmの範囲にあり、好ましくは250乃至500μmの範囲にある。
【0064】
蛍光体層には更にカレンダー処理などの圧縮処理を施してもよく、これにより、蛍光体層中の蓄積性蛍光体粒子の充填率をより一層高めて65容量%以上とすることができる。
【0065】
蛍光体層は、必ずしも一層である必要はなく、二層以上で構成されていてもよく、その場合には各層の蛍光体の種類や粒子径、結合剤と蛍光体との混合比を任意に変えて、用途に応じて蛍光体層の発光特性および放射線や励起光に対する吸収・散乱特性を変更することができる。また、必ずしも蛍光体層を支持体(または光反射層)上に直接形成する必要はなく、別に用意した基板(仮支持体)上に蛍光体層を形成した後、蛍光体層を基板から引き剥がし、支持体上に接着剤などを用いて接着してもよい。
【0066】
蓄積性蛍光体層の表面には、放射線像変換パネルの搬送および取扱い上の便宜や特性変化の回避のために、保護層が設けられる。本発明において保護層は、前述したように、表面のユニバーサル硬度が53N/mm以上であり、表面粗さが0.10乃至0.50μmの範囲にあるものである。また、保護層は、励起光の入射や発光光の出射に殆ど影響を与えないように、透明であることが望ましく、また外部から与えられる物理的衝撃や化学的影響から放射線像変換パネルを充分に保護することができるように、化学的に安定で防湿性が高く、かつ高い物理的強度を持つことが望ましい。
【0067】
保護層としては、セルロース誘導体、ポリメチルメタクリレート、有機溶媒可溶性フッ素系樹脂などのような透明な有機高分子物質を適当な溶媒に溶解して調製した溶液を蛍光体層の上に塗布することで形成されたもの、あるいはポリエチレンテレフタレートなどの有機高分子フィルムからなる保護層形成用シートを別に形成して蛍光体層の表面に適当な接着剤を用いて設けたもの、あるいは無機化合物を蒸着などによって蛍光体層上に成膜したものなどが用いられる。また、保護層中には酸化マグネシウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、アルミナ等の光散乱性微粒子、パーフルオロオレフィン樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末等の滑り剤、およびポリイソシアネート等の架橋剤など各種の添加剤が分散含有されていてもよい。保護層の層厚は、一般に1乃至40μmの範囲にあり、好ましくは2乃至20μmの範囲にある。
【0068】
保護層は二層以上から構成されていてもよく、例えば上記の層の表面に更に、耐汚染性および表面硬度を高めるためにフッ素樹脂塗布層が設けられてもよい。フッ素樹脂塗布層は、フッ素樹脂を有機溶媒に溶解(または分散)させて調製したフッ素樹脂溶液を上記層の表面に塗布し、乾燥することにより形成することができる。フッ素樹脂は単独で使用してもよいが、通常はフッ素樹脂と膜形成性の高い樹脂との混合物として使用する。また、ポリシロキサン骨格を持つオリゴマーあるいはパーフルオロアルキル基を持つオリゴマーを併用することもできる。フッ素樹脂塗布層には、干渉むらを低減させて更に放射線画像の画質を向上させるために、微粒子フィラーを充填することもできる。フッ素樹脂塗布層の層厚は通常は0.5μm乃至20μmの範囲にある。フッ素樹脂塗布層の形成に際しては、架橋剤、硬膜剤、黄変防止剤などのような添加成分を用いることができる。特に架橋剤の添加は、フッ素樹脂塗布層の耐久性の向上に有利である。
【0069】
保護層の表面には、エンボスロール等を用いて温度および圧力を掛けながら表面処理を施すことが望ましい。これにより、保護層表面に微小の凹凸を設けて所望の表面粗さとすることができる。
【0070】
上述のようにして本発明の放射線像変換パネルが得られるが、本発明のパネルの構成は、公知の各種のバリエーションを含むものであってもよい。例えば、放射線画像の鮮鋭度を向上させることを目的として、上記の少なくともいずれかの層を、励起光を吸収し発光光は吸収しないような着色剤によって着色してもよい。あるいは、更にX線などの放射線を吸収して紫外乃至可視領域に瞬時発光を示す蛍光体(放射線吸収用蛍光体)を含有する層を設けてもよい。そのような蛍光体の例としては、LnTaO:(Nb,Gd)系、LnSiO:Ce系、LnOX:Tm系(Lnは希土類元素である)、CsX系(Xはハロゲンである)、GdS:Tb、GdS:Pr,Ce、ZnWO、LuAlO:Ce、GdGa12:Cr,Ce、HfO等を挙げることができる。
【実施例1】
【0071】
(放射線像変換パネル部材の作製)
(1)蛍光体シートの作製:
蛍光体:14面体型BaF(Br0.850.15):Eu2+蛍光体粒子
平均粒子径Dm:7.2μm 175g
平均粒子径Dm:2.4μm 75g
結合剤:HDI系ポリウレタンエラストマー(パンデックスT−5265H[固形]、大日本インキ化学工業(株)製) 7.1g
架橋剤:HDI系ポリイソシアネート(コロネートHX[固形分100%]、日本ポリウレタン工業(株)製) 0.90g
黄変防止剤:エポキシ樹脂(エピコート#1001[固形]、油化シェルエポキシ(株)製) 2.0g
着色剤:群青(SM−1、第一化成工業(株)製) 0.022g
【0072】
上記組成の材料をメチルエチルケトン(MEK)とともに撹拌容器に投入し、容器の周囲に冷却水を流しながら回転速度2500rpm(周速度約18m/秒)で2時間撹拌を行って、蛍光体粒子を分散させ、粘度3.0Pa・s(25℃)の塗布液(結合剤/蛍光体の重量比:1/25)を調製した。この塗布液を、シリコーン系離型剤が塗布されたポリエチレンテレフタレートシート(仮支持体、厚み:190μm)の表面に、ドクターブレードを用いて400mmの幅で塗布し乾燥したのち仮支持体から引き剥がして、蛍光体シートを作製した。
【0073】
(2)導電層の形成:
導電剤:SnO(Sbドープ)針状微粒子(長軸:0.2〜2μm、短軸:0.01〜0.02μm、FS−10P、石原産業(株)製)のMEK分散体(固形分30重量%) 50g
樹脂:飽和ポリエステル樹脂(バイロン300、東洋紡(株)製) 6g
硬化剤:ポリイソシアネート(オレスターNP38−70S[固形分70%]、三井化学(株)製) 2g
【0074】
上記組成の材料をMEKに加え、混合分散して粘度0.02〜0.05Pa・sの塗布液を調製した。この塗布液をポリエチレンテレフタレート(PET)シート(第一支持体、厚み:188μm、ヘイズ度:約27、ルミラーS−10、東レ(株)製)の表面に、ドクターブレードを用いて塗布し乾燥して、導電層(層厚:2μm)を形成した。
【0075】
(3)光反射層の形成:
光反射性物質:高純度アルミナ微粒子(平均粒子径:0.4μm、UA−5105、昭和電工(株)製) 444g
結合剤:軟質アクリル樹脂(クリスコートP−1018GS[20%トルエン溶液]、大日本インキ化学工業(株)製) 100g
着色剤:群青(SM−03S、第一化成工業(株)製) 2.2g
【0076】
上記組成の材料をMEKに加え、混合分散して粘度2〜3Pa・sの塗布液を調製した。この塗布液を導電層の表面にドクターブレードを用いて塗布し乾燥して、光反射層(層厚:約100μm)を形成した。前記蛍光体粒子の発光ピーク波長(400nm)における光反射層の反射率は98%であった。
【0077】
(4)蛍光体層の付設:
第一支持体の光反射層表面に、上記蛍光体シートを塗布形成時の裏面(仮支持体側)が接するようにして重ね、これをカレンダー機(金属ロール、ロール径:200μm)を用いて熱圧縮した。これにより、蛍光体層は光反射層に完全に融着した。
【0078】
(5)保護層の形成:
高分子物質:フルオロオレフィン・ビニルエーテル共重合体(ルミフロンLF504X[30%キシレン溶液]、旭硝子(株)製) 92.5g
架橋剤:ポリイソシアネート(スミジュールN3500[不揮発分100%]、住友バイエルウレタン(株)製) 5.0g
滑り剤:アルコール変性シリコーン(X−22−2809[不揮発分66%、キシレン含有ペースト]、信越化学(株)製) 0.5g
フィラー:メラミン−ホルムアルデヒド微粒子(平均粒子径:0.6μm、エポスターS6、(株)日本触媒製) 6.5g
カップリング剤:アセトアルコキシアルミニウムイソプロピレート(プレンアクトAL−M、味の素(株)製) 0.1g
触媒:ジブチルチンジラウレート(KS1260、共同薬品(株)製) 0.35mg
【0079】
上記組成の材料をMEKに加え、混合溶解、分散して塗布液を調製した。この塗布液をPETフィルム(厚み:6μm、ルミラー6C−F53、東レ(株)製)の表面に塗布し乾燥して、塗布層(層厚:2μm)を形成した。PETフィルムの塗布層とは反対側に、飽和ポリエステル樹脂(バイロン30SS、東洋紡(株)製)の溶液を塗布し乾燥して、接着層を設けた。このPETフィルムを接着層を介して、蛍光体層の表面にラミネートロールを用いて接着して、二層構成の保護層(層厚:8μm)を設けた。
【0080】
保護層の表面を、微小の凹凸を有するロールを用いて温度50℃で圧力を掛けながら表面処理してエンボスパターンを付け、表面粗さRaを0.20μmとした。
【0081】
(6)縁貼り(枠)の形成:
得られた積層体を430mm×354mmのサイズに裁断した後、積層体の周囲側面にフッ素含有樹脂溶液を1mm厚で塗布し乾燥して、縁貼りを設け、放射線像変換パネル部材を作製した。
【0082】
(放射線像変換パネルの製造)
(1)材料の準備:
高さ1.5mmの枠(幅5mm)が4辺に形成されている平面基板(枠内寸法355×431mm)と、上記放射線増変換パネル部材、両面接着シート(3M(スリーエム)社製4597FL、寸法353mm×429mm)を用意した。
【0083】
(2)両面接着シートの平面基板への貼付け:
貼付装置としては図1に示す構成の装置を使用した。具体的には、ゴム硬度50、厚さ8mmのNBRゴムシート(硬度50、10〜1010Ω/cm PETとの静止摩擦係数0.6)を剛直な700mmφ円筒曲面に貼り付け、表面(保持面)の寸法が354mm×430mmであり、端面は円筒面と垂直となるよう加工されたものを用意した。吸着孔は径1.5mmφのものをゴム貼付部表面に、幅方向に6mm間隔で60個、前後(動作)方向に4mm間隔で3行の孔を空け、左記を1パターンとして前後(動作)方向に10mmの間隔を置いて2パターン作成、さらにそれらを1セットとしてゴム貼付前後端部、及び中央に全3セット作成した。真空ポンプ(ORION DRY−PUMP KRX3−SS−4002−G1)を用いて調整弁にて70kPaでエア吸引可能としている。
【0084】
NBRゴムシート表面の埃を完全に除去し、両面接着シート(4597FL)をNBRゴムシート表面の中央に貼り付け、エア吸引により吸着させた。両面接着シートの表面側離型フィルムを剥がして、接着面を露出させた。
【0085】
枠が形成された平面基板の枠内面が平面となる様な台上に固定し、基板表面の埃を完全に除去した。その後、全体として両面接着シートが平面基板枠内の中央に貼られる様に、保持面の一端の直線部を先頭部として基板枠内にマイクロメータ及び、基板搬送モータ設定により位置合せを行い20kgfの初期荷重で押し付け、その後連続して50kgfの荷重で均一に押し付けた。その後、同荷重を保ちながらドラムを回転させ、さらにその回転外周速度と同期させた速度(50mm/s)で平面基板を平行移動して、NBRゴムシート表面の両面接着層表面が基板と順次密着された。その際、密着された部分のエア吸引は速やかに終了されながら実施された。
【0086】
ドラムの回転と平面基板との平行移動は接着層がすべて基板に密着されるまで続けられる事で、両面接着シートは基板枠内中央に完全密着された。目視で貼り付けられた両面接着シートを観察するとゴミ、気泡は見られなかった。
【0087】
(3)放射線変換パネル部材の平面基板への貼付け:
次に両面接着シートの代わりに放射線変換パネルの読取面側をNBRゴムシート表面に吸着させ、同様に貼り合わせて、放射線像変換パネルを製造した。
【0088】
なお、貼合せ直前に基板の両面接着シートの離型フィルムは剥がされた状態とした。目視で貼り付けられた放射線像変換パネルを観察すると、基板枠内中央に貼付けられており、剥がれ、浮き上がり、表面の傷はなく、放射線像変換パネル部材にダメージは見られなかった。
【0089】
上記(1)〜(3)の処理を行って、さらに3つの放射線像変換パネルを作製し、貼付け位置のズレを基板枠内側とIP端部の間隔を4辺各々ノギスで測定した。上記いずれの放射線像変換パネルについてもズレはすべての箇所において0.5mm以内であった。
以上から、放射線像変換パネル部材を精度よく、かつ、ダメージを与えないで基板に貼り合わせることが可能であることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の貼付装置の要部を説明する概略説明図である。
【図2】放射線変換パネル部材の層構成を例示する概略断面図である。
【符号の説明】
【0091】
10・・・貼付装置
12a・・・ドラム
12b・・・保持部
12c・・・吸引孔
14・・・放射線像変換パネル部材
16・・・基板
18・・・粘着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線像変換パネル部材を基板上に貼りあわせる貼付装置であって、
前記放射線像変換パネル部材を保持する保持手段を有し、当該保持手段の保持面が曲面状となっており、前記保持手段が転動可能となっていることを特徴とする貼付装置。
【請求項2】
前記保持手段が前記放射線像変換パネル部材に負圧を生じさせる減圧手段であり、前記保持面の前記放射線像変換パネル部材との摩擦係数が0.1〜0.9であることを特徴とする請求項1に記載の貼付装置。
【請求項3】
前記保持面に直径0.5〜3.0mmの孔を有し、当該孔の占める面積が前記保持面の0.1〜10%であることを特徴とする請求項2に記載の貼付装置
【請求項4】
前記基板の周囲に枠が設けられており、前記保持手段の保持面が凸面となっており、当該保持面の高さが、前記枠と前記基板の貼り合わせ面との高さの差より大きいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の貼付装置。
【請求項5】
前記保持面と前記基板の貼り合わせ面との相対位置を調整する調整機構を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の貼付装置。
【請求項6】
前記保持面がゴム材料からなり、その硬度が30〜90であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の貼付装置。
【請求項7】
前記保持面の表面抵抗の常用対数値(logSR)が13以下であることを特徴とする請求項6に記載の貼付装置。
【請求項8】
貼り合わせの際の圧力が20〜2000kPaであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の貼付装置。
【請求項9】
前記放射線像変換パネル部材を湾曲させた状態で保持しながら、前記放射線像変換パネル部材の一端部を基板に接触させた後、前記放射線像変換パネル部材および基板のいずれかを移動させて、これらを貼り合わせることを特徴とする放射線像変換パネルの製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の放射線像変換パネルの製造方法により製造されることを特徴とする放射線像変換パネル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−8682(P2008−8682A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−177133(P2006−177133)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】