説明

貼合せ用ポリウレタン接着剤

少なくとも1種のNCO−反応性ポリウレタンプレポリマー及び/又はポリイソシアネートを含有するフィルム貼合せ用ポリウレタン接着剤であって、エポキシ基、(メタ)アクリル基及びカルボン酸無水物基から選択される第一アミノ基に対して反応性を示す基を少なくとも1個有する低分子量化合物(A)を0.5〜20重量%含有する該ポリウレタン接着剤が開示される。さらに、フィルムを貼合せるための該ポリウレタン接着剤の使用、及び該ポリウレタン接着剤によって接着結合された多層フィルムであって、移動性の芳香族アミンの含有量が少ない該多層フィルムも開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムを貼合せるために適したNCO−反応性ポリウレタン接着剤に関する。貯蔵中及びその後の加工過程においては、貼合せた多層フィルムに含まれる芳香族第一アミンの量は低減される。
【背景技術】
【0002】
産業界においては、貼合せ用接着剤は一般的に知られている。この種の接着剤は、溶剤を含有するか、又は溶剤を含有しない架橋性又は物理的硬化性の接着剤であって、薄い二次元的支持体、例えば、プラスチック製フィルム、金属箔、紙又は厚紙等を相互に貼合せるために使用されている。この場合、接着層によって個々の薄層の可撓性が僅かに低減するに過ぎないようにすることが必要である。個々のフィルム層を選択することによって、多層フィルムの特性、特に、水やその他の液体に対する透過性、耐薬品性及び酸素やその他のガスに対する透過性等に影響を及ぼすことが可能である。
【0003】
さらに、包装材をこの種の多層フィルムから製造することも知られている。固体状、ペースト状又は液状の食品は、例えば、この種の包装材を用いて包装してもよい。日常的に使用される物品、例えば、プラスチック製の食事用器具類等もこの種の包装材を用いて包装してもよい。また、この種の包装材は医療用の材料や物品の保存にも適している。
【0004】
上記の適用分野においては、低分子量物質が包装材から包装内容物へ可能な限り移動しないようにすべきである。この種の可能な物質としては、風味を損なう物質又は摂取されたときに健康に対して有害な効果をもたらすような物質が挙げられる。ポリウレタンを用いて接着されるフィルムの場合、この種の物質は、使用されるイソシアネート前駆体、例えば、加水分解されたポリイソシアネートからの分解生成物等を含有する可能性がある。この場合、第一アミン、特に芳香族第一アミンは、この種のポリイソシアネート前駆体から生成する可能性がある。このようなアミン類が健康を害することは知られている。このため、包装用に適したフィルム中の芳香族第一アミンの最大含有量を規定する種々の基準が示されている。
【0005】
ポリウレタン接着剤の合成においては、低分子量イソシアネートが常用されている。化学的な理由から、少量のモノマー性イソシアネートが接着剤中に存在させないようにすることは不可能である。別のポリウレタン接着剤群においては、オリゴマー性イソシアネートを接着剤中へ添加することによって、特定の特性を改善することが行われている。この種の成分は、架橋化接着剤をもたらすために、架橋剤、例えば、ポリオール又は水等と反応させるために使用される。この場合も、接着後の接着剤中にオリゴマー性イソシアネートの一部が残留する。この場合、次のことが知られている。即ち、このような残留物が長期間の貯蔵期間にわたって湿気に曝されると、残留する少量のイソシアネート基は、アミノ基の生成反応に消費される。このようにして形成される第一アミンは、経時的にその周囲へ移動する。このような現象は、特に低分子量の加水分解生成物を用いる場合にみられる。
【0006】
しかしながら、高分子量のポリイソシアネートプレポリマーを使用する場合には、頻繁に要求されるフィルムの滅菌処理中において、架橋時に形成されるウレタン基又は尿素基の加水分解的解離過程中にアミノ基が形成させる可能性がある。このような加水分解的過程は、特に、昇温下での湿気に曝すことによる滅菌処理の場合に知られている。この場合も、芳香族第一アミンが形成され、該アミンは材料中へ移動する。
【0007】
このような移動物は、特に包装分野、就中、食品の包装分野においては望ましくない。このような不都合を回避するために、特許文献1においては、ポリウレタンプレポリマーを二段階反応で製造する方法が提案されている。即ち、第一段階において単環状ジイソシアネートを多官能性アルコールと反応させ、次いで第二段階においては、第一段階において生成したプレポリマーの存在下において、過剰のジイソシアネートを多官能性アルコールと反応させる。このようにして製造される混合物中のモノマー性イソシアネートの量は低減される。
【0008】
特許文献2には、ポリウレタンプレポリマーの製造法が開示されている。この製造法においては、多官能性アルコールを非対称ジイソシアネートの反応性のより高いイソシアネート基と反応させ(該ジイソシアネートの反応性のより低いイソシアネート基は保持される)、得られた反応生成物を対称性ジイソシアネートと反応させる(該対称性ジイソシアネートの両方のイソシアネート基は、上記の非対称性ジイソシアネートの反応性のより低いイソシアネート基に比べてより速く反応する)。この方法によって得られるポリウレタンプレポリマー中に含まれる芳香族のモノマー性イソシアネートの含有量は低減される。
【0009】
特許文献3には、耐候性の平坦な弾性製品の製造法に関する方法が開示されている。この目的のためには、二段階の方法が提案されている。即ち、第一段階においては、トルエンジイソシアネート(TDI)を少なくとも等モル量のポリオールと反応させ、得られた生成物をジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)及びポリオールと反応させる。この方法によって得られるポリウレタンバインダーは、水分又は大気中の湿気と硬化し得る接着剤として機能しうる。この方法によれば、比較的低粘度の生成物が得られるが、該生成物中には揮発性の高い遊離のジイソシアネートが常に存在する。この種のジイイソシアネートの含有量は、時間がかかり多量のエネルギーを消費する方法(例えば、膜蒸留法等)を適用して過剰の高揮発性ジイソシアネートを除去することによってのみ低減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許公報EP−A 0 118 065
【特許文献2】独国特許公報DE−A 34 01 129
【特許文献3】欧州特許公報EP−A 0 019 120
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、架橋後において、長期間の貯蔵又は滅菌処理に付しても第一アミン、特に芳香族第一アミンの含有量が少ない接着剤をもたらすポリウレタン接着剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題は、少なくとも1種のNCO−反応性ポリウレタンプレポリマー及び/又はポリイソシアネートを含有するフィルム貼合せ用ポリウレタン接着剤であって、エポキシ基、(メタ)アクリル基及びカルボン酸無水物基から選択される第一アミノ基に対して反応性を示す反応性基を少なくとも1個有する低分子量化合物(A)を0.5〜20重量%含有する該ポリウレタン接着剤を提供することによって解決された。
【0013】
さらに、本発明は、移動性の芳香族第一アミンの含有量が少ない多層フィルムの製造法に関する。さらにまた、本発明はこの種のポリウレタン接着剤の貼合せ用接着剤としての使用法にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ポリウレタン接着剤は一般的に知られている。この種の接着剤は多層フィルムを貼合せるためにも使用されている。本発明による適当な接着剤は1成分系ポリウレタン接着剤又は2成分系接着剤である。このような接着剤は液状接着剤であってもよく、あるいはホットメルト接着剤であってもよい。このような接着剤は溶剤を含有していてもよいが、好ましくは溶剤を含有しない。本発明による適当なポリウレタン接着剤の架橋は、反応性NCO基、特に芳香族NCO基とH−酸性官能基、例えば、OH基、アミノ基又はカルボキシル基等との反応に基づく。別の架橋法には、塗布され接着剤、支持体(substrate)又は周囲環境からの湿気とNCO基から尿素基が形成される反応が含まれる。これらの架橋反応は既知であり、これらの反応は併発してもよい。この種の接着剤は、一般的には触媒、例えば、アミン触媒又はスズ触媒を含有しており、これによって上記反応は促進される。
【0015】
2個又はそれよりも多くのイソシアネート基を有するポリイソシアネートを含有する既知のコーティング材料又は接着性ポリイソシアネートを使用してもよい。適当なポリイソシアネートとしては以下の化合物が例示される:
1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、2,4−又は4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、水素化MDI(H12MDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、ジ−及びテトラアルキレンジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、1,3−又は1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、1−メチル−2,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,6−ジイソシアナト−2,2,4−トリメチルヘキサン、1,6−ジイソシアナト−2,4,4−トリメチルヘキサン、1−イソシアナトメチル−3−イソシアナト−1,5,5−トリメチルシクロヘキサン(IPDI)、テトラメトキシブタン1,4−ジイソシアネート、ブタン1,4−ジイソシアネート、ヘキサン1,6−ジイソシアネート(HDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、メチレントリフェニルトリイソシアネート(MIT)、フタル酸ビス−イソシアナトエチルエステル、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアナトブタン、1,12−ジイソシアナトドデカン、及びダイマー脂肪酸ジイソシアネート。
【0016】
適当な少なくとも3官能性のイソシアネートは、ジイソシアネートの3量化又はオリゴマー化、あるいはジイソシアネート及びヒドロキシル基又はアミノ基を有する低分子量多官能性化合物との反応によって得られるポリイソシアネートである。このようなポリイソシアネートの市販品としては、HDI、MDI又はIPDIのようなイソシアネートの3量化生成物、又はジイソシアネートと低分子量トリオール(例えば、トリメチロールプロパン及びグリセロール等)との付加物等が例示される。
【0017】
原則としては、脂肪族イソシアネート、脂環式イソシアネート又は芳香族イソシアネートを使用してもよいが、芳香族イソシアネートが特に適当である。本発明によるポリウレタン接着剤は、ポリウレタンプレポリマーとして反応した形態のイソシアネートを含有していてもよく、あるいは、低分子量のオリゴマー性イソシアネートを少なくとも部分的に含有していてもよい。
【0018】
本発明によれば、ポリウレタン接着剤は、少なくとも1種のポリオールを含有しているべきである。該接着剤は個別のポリオールを含有していてもよいが、好ましくは、2種又はそれよりも多くのポリオールから成る混合物を含有していてもよい。適当なポリオールは、1分子当たり2〜6個(好ましくは2〜4個)のOH基を有する脂肪族及び/又は芳香族アルコールである。OH基は第一OH基及び第二OH基の両方であってもよい。
【0019】
適当な脂肪族アルコールとしては、次のアルコールが例示される:エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、及びより高位の同族体、並びにこれらの異性体。より高位の多官能性アルコール、例えば、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、及び前記の化合物のオリゴマー性エーテル等も適当である。
【0020】
ポリオール成分としては、好ましくは、低分子量の多官能性アルコールとアルキレンオキシドとの反応生成物が使用される。アルキレンオキシドの好ましい炭素原子数は2〜4である。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、異性ブタンジオール、ヘキサンジオール又は4,4’−ジヒドロキシジフェニルプロパンとエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド又は2種以上のこれらの混合物との反応生成物が適当である。多官能性アルコール、例えば、グリセロール、トリメチロールエタン若しくはトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、糖アルコール又は2種以上のこれらの混合物と前記のアルキレンオキシドとの反応生成物であるポリエーテルポリオールも適当である。本発明の目的に対して有用な別のポリオールは、テトラヒドロフランの重合によって得られるポリオール(ポリ−THF)である。
【0021】
ビニルポリマーによって変性されたポリエーテルも、適当なポリオール成分として使用される。この種の生成物は、例えば、ポリエーテルの存在下において、スチレン、アクリロニトリル又はこれらの混合物を重合させることによって得られる。
【0022】
別の適当なポリオールはポリエステルポリオールである。ポリエステルポリオールとしては、低分子量アルコール、特に、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、ブタンジオール、プロピレングリコール、グリセロール又はトリメチロールプロパンをカプロラクトンと反応させることによって得られるポリエステルポリオール等が例示される。
【0023】
さらに別の適当なポリエステルポリオールは重縮合によって調製してもよい。この種のポリエステルポリオールは、好ましくは、多官能性(好ましくは2官能性)アルコールと多官能性(好ましくは2官能性及び/又は3官能性)カルボン酸又はポリカルボン酸無水物との反応生成物を含有する。この種のポリエステルポリオールを調製するために適した化合物は、特に次の化合物である:ヘキサンジオール、1,4−ヒドロキシメチルシクロヘキサン、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,4−ブタントリオール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール及びポリブチレングリコール。3官能性アルコールも部分的に添加してもよい。
【0024】
ポリカルボン酸は脂肪族、脂環式、芳香族及び/又は複素環式のポリカルボン酸であってもよい。このようなポリカルボン酸は、所望により、例えば、アルキル基、アルケニル基、エーテル基又はハロゲンによって置換されていてもよい。適当なポリカルボン酸としては、次のものが例示される:コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、グルタル酸無水物、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、ダイマー脂肪酸、トリマー脂肪酸及び2種以上のこれらの混合物。所望により、トリカルボン酸を部分的に添加してもよい。
【0025】
油化学的起源(oleochemical origin)から得られるポリエステルポリオールを使用することも可能である。この種のポリエステルポリオールは、例えば、少なくとも部分的にオレフィン性不飽和結合を有する脂肪酸を含有する脂肪混合物のエポキシ化トリグリセリドを、炭素原子数が1〜12の1種又は複数種のアルコールを用いて完全に開環させた後、トリグリセリド誘導体を部分的にエステル交換反応させることにより、炭素原子数が1〜12のアルキル基を有するアルキルエステルポリオールを形成させることによって製造してもよい。別の適当なポリオールはポリカーボネートポリオール、ダイマージオール(ヘンケル社の市販品)、ヒマシ油及びこれらの誘導体である。ヒドロキシ官能性ポリブタジエンも本発明による組成物用のポリオール成分として使用してもよい。ヒドロキシ官能性ポリブタジエンとしては「poly-BD」の商品名で市販されている製品が例示される。
【0026】
ポリアセタールもポリオール成分としては適当な化合物である。ポリアセタールは、グリコール、例えば、ジエチレングリコール、ヘキサンジオール又はこれらの混合物とホルムアルデヒドから得られるような化合物を意味する。本発明の目的に対して有用なポリアセタールは、環状アセタールの重合によって調製してもよい。ポリカーボネートもポリオールとしては適当な化合物である。ポリカーボネートは、例えば、ジオール(例えば、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びこれらの2種以上の混合物等)をジアリールカーボネート(例えば、ジフェニルカーボネート等)又はホスゲンと反応させることによって調製してもよい。ポリラクトンのヒドロキシエステルも適当なポリオール成分である。その他のポリオール群は、OH−官能性ポリウレタンポリオールであってもよい。
【0027】
OH基を有するポリアクリレートも適当なポリオール成分である。この種のポリアクリレートは、例えば、OH基を有するエチレン性不飽和モノマーの重合によって調製してもよい。このような目的に適したエチレン性不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸及びこれらとC〜Cアルコールとのエステルが例示される。OH基を有する対応するエステルとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート及び2種以上のこれらの混合物等が例示される。
【0028】
ポリウレタンプレポリマーは、既知の方法により、前記のポリオールとポリイソシアネートから調製してもよい。NCO基を有するプレポリマーはポリオールとイソシアネートから調製してもよい。この種のプレポリマーとしては、国際公開公報WO 2005/097861及び欧州特許公報EP−A951493、EP−A1341832、EP−A150444及びEP−A1456265に記載されている化合物が例示される。対応するポリウレタンプレポリマーを、その他の自体既知の助剤と配合することによって貼合せ用接着剤を調製してもよい。
【0029】
この種の接着剤は、所望により、該接着剤中に存在するイソシアネート基と反応しない有機溶剤を含有していてもよい。
【0030】
得られるポリウレタンプレポリマーは、OH基又は水に対して反応性を示すイソシアネート基を有する。該ポリウレタンプレポリマーは500〜20000 g/mol のモル質量(ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定される数平均分子量)を有する。接着剤の塗布温度(20℃〜100℃)における該プレポリマーの粘度は、500〜25000mPa・sの範囲にすべきである(ブルックフィールドISO 2555に従って、該温度において測定した値)。
【0031】
本発明によるポリウレタン接着剤は、上述の既知の成分の外に、第一アミノ基に対して反応性を示す官能基を有する低分子量のオリゴマー性化合物を含有していなければならない。「低分子量」とは、2000 g/mol 未満の分子量を意味する。この種の化合物は、アミン、特に第一アミンに対して反応性を示す反応性基を少なくとも2個〜10個有する化合物である。このような官能基としては、カルボン酸無水物基、エポキシ基、及び特に(メタ)アクリル基が例示される。架橋化接着剤中に存在するか、又は架橋化接着剤中で生成するアミノ基には、特に芳香族の第一アミノ基が含まれる。このようなアミノ基を捕捉するための反応は、所望により、触媒によって補助してもよい。
【0032】
アミノ基に対して反応性を示す低分子量化合物が複数の官能基を有する態様が好ましい。このようにして、反応後に得られる生成物の分子量は増加してもよい。従って、芳香族第一アミノ基の量が低減されるだけでなく、得られる反応生成物の分子量が高くなり、該反応生成物自体の移動性も低下する。
【0033】
アミノ基に対して反応性を示す低分子量化合物(A)は、例えば、不飽和カルボン酸のオリゴマー性ポリエステルを含有していてもよい。OH基を2〜10個有するポリオールは、例えば、(メタ)アクリル酸によってエステル化されてもよい。その他の適当な酸としては、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、ケイ皮酸、ビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸及びこれらの誘導体が例示される。第一又は第二ポリアミン化合物を前記の不飽和カルボン酸と反応させることによって調製してもよい対応するアミドを使用してもよい。
【0034】
アミンに対して反応性を示す有用なその他の低分子量化合物群は、酸無水物基を有するオリゴマーである。この種のオリゴマーは、例えば、単官能性〜10官能性の不飽和カルボン酸、例えば、脂肪酸、芳香族ポリカルボン酸(例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等)、脂肪族カルボン酸(例えば、クエン酸、トリメリット酸等)の無水物を含んでいてもよい。これらのポリカルボン酸には、必要な酸無水物基の外に、カルボン酸エステル基を含ませることも可能である。混合した酸無水物基を存在させてもよい。
【0035】
アミンに対して反応性を示す基を有する別の低分子量化合物群はオリゴマー性エポキシドである。この種の化合物はポリカルボン酸のグリシジルエステルを含んでいてもよい。この場合、常套の既知のポリカルボン酸を使用してもよい。さらに、低分子量のポリアクリル酸をグリシジルアルコールと反応させてもよい。さらに別の可能性には、低分子量の不飽和化合物を少なくとも1つの二重結合へエポキシ化させる態様が含まれる。この種の化合物としては、エポキシ化ポリブタジエンが例示される。
【0036】
アミンに対して反応性示すこれらの低分子量化合物が2000 g/mol 未満、特に1000 g/mol 未満の分子量を有することは、本発明においては必須要件である。この分子量が過度に高くなると、架橋接着剤中におけるこれらの化合物の移動度が低下し、その結果、第一アミノ基との反応性が低減する。さらに、この種の低分子量オリゴマーに付加的なOH基を含ませることも可能である。好ましくは、このようなOH基は、所望により存在させるポリオール架橋剤中の大多数のOH基の反応性よりも低い反応性を示すべきである。このようにして、遊離のNCO基がなお存在する場合には、これらの基が、架橋化接着剤が形成されたときに低分子量化合物と反応できるようにすることを保証することが可能となる。
【0037】
アミノ基に対して反応性を示す基を有する低分子量化合物は、出来る限り安定した状態でポリウレタン接着剤中へ配合されるべきである。この要件は、ポリウレタンプレポリマーに対して低分子量化合物が良好な混和性を示すことによって達成される。本発明の1つの実施態様においては、本発明において適当なこの種の化合物にH−酸性基(例えば、OH基)を付加的に含ませることも可能である。このようなOH基の場合(特に第一又は第二OH基)、これらの基を、ポリウレタンプレポリマーの架橋反応中において、存在するNCO基と反応させることが可能である。従って、アミノ基に対して反応性を示す基を有するこの種の化合物の移動性は低下する。
【0038】
アミノ基に対して反応性を示す化合物の含有量は、接着剤全体に対して、0.5〜20重量%、特に1〜15重量%である。本発明によれば、ポリウレタン接着剤は、架橋反応前においては反応性アミノ基を含まず、このため、接着剤の貯蔵中においては、付加的なアミン−反応性化合物との時期尚早の反応は発生しない。第一アミノ基とオリゴマーとの反応は、イソシアネート基の架橋反応に比べてゆっくりと進行する。イソシアネート基がH−酸性基と反応してウレタン又は尿素が形成されると、生成した第一アミノ基(特に芳香族第一アミノ基)をより遅い反応によって消費させることが可能となる。所望により、ポリウレタン接着剤中へ、芳香族第一アミノ基と該基に対して反応性を示す基との間の反応を促進する触媒を含有させることも可能である。例えば、活性化二重結合との反応を促進するアルカリ性触媒を存在させてもよい。さらに、例えば、エポキシ基との反応を促進する求電子性触媒を使用することも可能である。
【0039】
本発明による接着剤は、常套の添加剤をさらに含有していてもよい。このような添加成分には、例えば、樹脂(粘着付与剤)、有機金属化合物又は第三アミンに基づく触媒(例えば、スズ化合物及びDABCO)、安定剤、架橋剤又は粘度調整剤、充填剤又は顔料、可塑剤、及び酸化防止剤等が含まれる。
【0040】
1成分系のポリウレタン接着剤は、一般に1種又は複数種のNCO−反応性ポリウレタンプレポリマーを含有する。これらの成分は、接着されるべき支持体の構成成分としての水分又は空気中の水分に曝されると、架橋して接着剤を形成する。2成分系のポリウレタン接着剤は、上記のポリウレタンプレポリマー又は前述のポリイソシアネートを含む成分を含有する。H−酸性ポリマー、例えば、前述のポリオール、ポリアミド又はSH−基を有するポリマーを、第二の架橋性成分として使用してもよい。塗布する直前において、2成分を混合することによって反応性接着剤を調製する。この反応性接着剤は、架橋反応が進行する前に加工されなければならない。
【0041】
本発明によるポリウレタン接着剤は、塗布温度又は室温において液状であってもよく、あるいは該接着剤はホットメルト型接着剤であってもよい。該ポリウレタン接着剤は、常套の装置を用いて、接着されるべき支持体(特にフィルム)上へ塗布され、次いで既知の方法に従って、該支持体は相互に接着される。塗布性を高めると共に、より迅速な架橋反応を達成するために、所望により、これらの操作を昇温条件下でおこなうことが便利である。
【0042】
本発明によるポリウレタン接着剤は、貼合せ用接着剤として特に適している。該接着剤は、ポリマー(例えば、PP、PE、OPA、ポリアミド、PET、ポリエステル等)に基づく既知のフィルム及び金属箔を相互に接着させる工程において使用してもよい。本発明による接着剤は、所望により前処理又はプリント処理に付されたフィルム上へ塗布される。薄くて均一な塗膜を得るために、この操作を昇温条件下でおこなってもよい。次いで、同一又は異なる材質の第二フィルムを、加圧下で第一フィルムに貼合せる。この場合、熱を印加してもよく、塗布された接着剤が架橋することによって多層フィルムが得られる。所望により、多層フィルムは2層よりも多くのフィルム層から構成されていてもよい。
【0043】
このような多層フィルムは、一般的には、製造後に貯蔵される。貯蔵期間中において、本発明による接着剤はさらに架橋してもよい。発生する第一アミノ基(特に芳香族第一アミノ基)は、付加的に存在するアミン−反応性化合物と貯蔵期間中にわたって反応する。これによって、活性なアミノ基を含まない反応生成物がもたらされ、該反応生成物は移動性を示さない。
【0044】
さらに、該フィルムのその後の加工処理において、供給されるべき接着多層フィルムを加熱する工程に付すことが可能である。このような処理は、例えば、滅菌処理に付すときのような湿潤雰囲気下においておこなってもよい。このような昇温条件下においても、本発明によれば、発生する芳香族第一アミノを、架橋された積層接着層中に依然として存在する低分子量化合物の官能基と反応させることが可能である。
【0045】
本発明による液状接着剤又はホットメルト接着剤を貼合せ用接着剤として使用することによって、食品又は医薬品の包装適合性に関する厳格な要求を満たす2層又はこれよりも多くの層から成る貼合せ多層フィルムを得ることが可能となる。特に、関連する試験法においてフィルムから抽出される芳香族第一アミンの量を著しく低減させることが可能となる。特に、EEC 2002/72に従って測定される芳香族第一アミンの含有量が10μg未満(抽出溶液1リットル当たりの値)であるフィルムを得ることが可能である。この効果は、接着剤の架橋直後に認められるが、その後の滅菌処理後においても認められる。
【0046】
芳香族ポリイソシアネート及び/又は芳香族イソシアネートに基づくポリウレタンプレポリマーを含有していてもよい本発明によるポリウレタン接着剤によれば、貼合せ用接着剤として非常に適した接着剤を調製することが可能となる。塗布性、架橋、及びフィルム相互間の接着性は非常に良好である。さらに、本発明による接着剤を用いる接着によれば、接着層中で移動可能な芳香族第一アミンは非常に少量であり、しかも該アミンはフィルム中に強く固着される。この特性は、本発明による多層フィルムを滅菌処理に付すか、又は該フィルムの製造過程にわたって該フィルムを高温に加熱しても保持される。
【0047】
本発明を、以下の実施例によって例示的に説明する。
実施例1
ポリエステルポリオール1(OH価:60)1);16.5%
ポリエステルポリオール2(OH価:60)2);30.5%
MDI;13%
酢酸エチル;40%
1)芳香族/脂肪族ジカルボン酸混合物とポリエーテルジオールとの反応生成物
(分子量:<200 g/mol )。
2)芳香族/脂肪族ジカルボン酸混合物と低分子量脂肪族ジオール(炭素原子数:
20未満)との反応生成物。
【0048】
特性値
固形分含有量:約67%
粘度:150〜500mPa・s(20℃)
NCO値:2.2%
【0049】
実施例2
ポリエステルポリオール1(OH価:60);13.2%
ポリエステルポリオール2(OH価:60);24.4%
MDI;10.4%
酢酸エチル;32%
ポリマー性アクリレート添加剤3);20%
3)トリメチロールプロパンとメタクリル酸との反応生成物(分子量:約390
g/mol )。
【0050】
特性値
固形分含有量:約69%
粘度:150〜500mPa・s(20℃)
NCO値:1.8%
【0051】
実施例3
ポリエステルポリオール1;14.85%
ポリエステルポリオール2;27.45%
MDI;11.7%
酢酸エチル;36%
エポキシ化ポリマー添加剤4);10%
4)エポキシ化ポリブタジエン(分子量:約1400 g/mol )
【0052】
特性値
固形分含有量:約63%
粘度:300〜1000mPa・s(20℃)
NCO値:2.0%
【0053】
調製方法
最初に2種のポリエステルポリオールを酢酸エチル中へ導入して混合した。該混合物中へMDIを添加し、反応温度を70℃に調整した。NCO値が所定の値に達したときに、反応溶液を冷却させた。次いで、50℃未満の温度で添加剤を添加し、均質化させた。
【0054】
実施例1〜3において調製したプレポオリマー溶液中へポリオール(OH価:約350)を20:1の割合(NCOは僅かに過剰)で添加して混合した。得られた接着剤を、PET/Al複合フィルム上へ塗布した(膜厚:約5μm)。このフィルムを常套のCPPフィルム(市販品)と貼合せた。この複合フィルムを7日間にわたって完全に硬化させた。
【0055】
これらのフィルムの縁部を溶封することによって小袋(500cm)を作成した。これらのパウチ内へ水を充填した後、封止し、次いで121℃での滅菌処理を30分間おこなった。芳香族第一アミン(PAA)の移動性をEEC 2000/72に従って測定した。この測定は、貼合せ後、硬化後及び滅菌処理後において、フィルムの複数の部分についておこなった。
【0056】
比較試験1における濃度値を100としたところ、試験2と試験3における測定値は、硬化を1日おこなった後では、比較値の50%となり、また、硬化を7日間おこなった後と滅菌処理後においては、比較値の30〜40%となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のNCO−反応性ポリウレタンプレポリマー及び/又はポリイソシアネートを含有するフィルム貼合せ用ポリウレタン接着剤であって、エポキシ基、(メタ)アクリル基及びカルボン酸無水物基から選択される第一アミノ基に対して反応性を示す反応性基を少なくとも1個有すると共に2000 g/mol 未満の分子量を有する低分子量化合物(A)を0.5〜20重量%含有する該ポリウレタン接着剤。
【請求項2】
低分子量化合物(A)が1000 g/mol 未満の分子量及び2〜10個の反応性基を有する請求項1記載のポリウレタン接着剤。
【請求項3】
低分子量化合物(A)がOH基も有する請求項1又は2記載のポリウレタン接着剤。
【請求項4】
ポリウレタン接着剤が芳香族ポリイソシアネート及び/又は芳香族ポリイソシアネートに基づく少なくとも1種のポリウレタンプレポリマーを含有する請求項1から3いずれかに記載のポリウレタン接着剤。
【請求項5】
ポリウレタン接着剤が、ポリオールによって架橋する2成分系ポリウレタン接着剤である請求項1から4いずれかに記載のポリウレタン接着剤。
【請求項6】
ポリウレタン接着剤が、湿分によって架橋する1成分系ポリウレタン接着剤である請求項1から4いずれかに記載のポリウレタン接着剤。
【請求項7】
低分子量化合物(A)が複数の(メタ)アクリレート基を有し、ポリウレタン接着剤が、アミン−二重結合付加反応用触媒を付加的に少なくとも1種含有する請求項1から6いずれかに記載のポリウレタン接着剤。
【請求項8】
低分子量化合物(A)が複数のエポキシ基を有する請求項1から6いずれかに記載のポリウレタン接着剤。
【請求項9】
低分子量化合物(A)の官能基が末端基又は側基である請求項1から8いずれかに記載のポリウレタン接着剤。
【請求項10】
低分子量化合物(A)を1〜15重量%含有する請求項1から9いずれかに記載のポリウレタン接着剤。
【請求項11】
フィルムを貼合せるための1成分系又は2成分系のNCO−反応性ポリウレタン接着剤の使用法であって、該ポリウレタン接着剤が、エポキシ基、(メタ)アクリレート基及びカルボン酸無水物基から選択される第一アミノ基に対して反応性を示す反応性基を少なくとも1個有する低分子量オリゴマー化合物(A)を0.5〜20重量%含有する該使用法。
【請求項12】
ポリウレタン接着剤が、NCO−反応性プレポリマー及び/又は芳香族イソシアネートに基づくポリイソシアネートを含有する請求項11記載の使用法。
【請求項13】
ポリウレタン接着剤が、1000 g/mol 未満の分子量を有すると共に2〜10個のエポキシ基及び/又は(メタ)アクリレート基を有する化合物(A)を1〜15重量%含有する請求項11又は12記載の使用法。
【請求項14】
貼合せフィルムが滅菌可能である請求項11から13いずれかに記載の使用法。
【請求項15】
移動可能な少量の芳香族第一アミンを含有するか又は形成する貼合せ多層フィルムの製造法であって、1又は複数のフィルムが、請求項1から10いずれかに記載のポリウレタン接着剤によって貼合される該製造法。
【請求項16】
フィルムを30〜60℃の温度で貼合せる請求項15記載の製造法。
【請求項17】
貼合せフィルムを、硬化後に、滅菌処理に付す請求項15又は16記載の製造法。
【請求項18】
移動可能な芳香族アミンの含有量が少なく、各々のフィルム層が請求項1から10いずれかに記載のポリウレタン接着剤によって貼合される多層フィルム。

【公表番号】特表2010−513577(P2010−513577A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540676(P2009−540676)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【国際出願番号】PCT/EP2007/060190
【国際公開番号】WO2008/071470
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(391008825)ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン (309)
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D−40589 Duesseldorf,Germany
【Fターム(参考)】