説明

賦活したハロゲン化アルキルアルミニウムを使用するブチルゴムの改良された製造法

【課題】 塩化メチルを使用せず低価格の不活性な脂肪族炭化水素溶媒が使用できる制御が容易な方法において、良好なイソブチレンの変化率をもって平均分子量が400,000より大きいブチルゴム重合体を製造する方法の提供。
【解決手段】 重量平均分子量が少なくとも約400,000のブチル重合体の製造法。この方法は、脂肪族炭化水素希釈剤、および多量のハロゲン化ジアルキルアルミニウム、少量の二ハロゲン化アルキルアルミニウム、および微量の水、アルミノキサンおよびそれらの混合物から成る群から選ばれる化合物から成る触媒混合物を存在させ、約−100〜約+50℃の範囲に温度においてC4〜C8モノオレフィン単量体をC4〜C14多重オレフィン単量体と接触させる工程から成っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はその一態様において、触媒を使用してブチルゴム重合体を製造する改善された溶液法に関する。特に本発明は、低価格の不活性な脂肪族炭化水素溶媒が使用できる制御が容易な方法において、良好なイソブチレンの変化率をもって平均分子量が400,000より大きいブチルゴム重合体を−100〜+50℃の重合温度で製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界中において殆どすべてのブチルゴムの製造には希釈剤として塩化メチルが使用されている。塩化メチルはオゾンを破壊する試薬ではなく、また工業的方法によって生じた量は環境中に生じる量の極めて僅かの割合でしかない。しかし塩化メチルに暴露されると肝臓、腎臓および中枢神経系に障害が生じる原因となる。塩化メチルに対し健康についての関心が増大し、それに刺激されてブチルゴムの製造工程における代替反応媒質についての研究が行われてきた。
【0003】
炭化水素溶媒(例えばヘキサン)中でブチルゴムを製造する方法はまたハロゲン化ブチルゴムの製造にも使用される。何故ならこの方法では溶解工程が省略され、ハロゲン化ブチルゴムの製造法を全体として簡略化しているからである。
【0004】
溶液中でブチルゴム重合体を製造する従来法(溶液ブチルゴム法)では主として三ハロゲン化アルミニウム触媒系、即ち三塩化アルミニウムを使用する触媒系が使用され、或いは三臭化アルミニウムが単独で用いられている。例えば特許文献1および特許文献2参照のこと。これらの従来法は、非常に低い温度、例えば−90℃〜−110℃で行われ、重合中の冷却コストが高くなるから完全に満足には行われない。このような低温においては、重合体溶液は非常に高い粘度をもち、取り扱いが困難である。また重合体溶液の粘度が高いと、熱伝達速度が非常に低くなり、触媒の分散が悪く困難になる。
【0005】
三塩化アルミニウムは多くの望ましい炭化水素系における溶解度が殆どまたは全くないという欠点をもち、しばしば塩化メチルの溶液として反応供給物中に導入される。三臭化アルミニウムはハロゲン化炭化水素に可溶であるが、これを使用すると望ましくないことには非常に分子量の高い部分がかなりの量で生成する。特許文献2[Ernst等]参照。
【0006】
二ハロゲン化アルキルアルミニウムは一般にハロゲン化アルミニウムよりも反応性が低いが、炭化水素に対する溶解度が優れているという利点がある。その反応性を高くするために、しばしば共触媒と一緒に使用される。
【0007】
特許文献3[Scherbakova等(Scherbakova)]には、溶液中でブチルゴムを製造する工業的な方法が記載されている。この方法に使用される触媒系はハロゲン化アルキルアルミニウム(例えばセスキ塩化エチルアルミニウム((C252AlCl・Cl2AlC25)を含み、また共触媒として水または硫化水素を、溶媒としてイソペンタンを含んでいる。この方法に関し詳細の多くは知られていないが、恐らくこの方法は−85〜−80℃において固体分約10重量%で行われる。この方法の欠点を列記すると次の通りである。
【0008】
水とルイス酸との反応が激しく、ハロゲン化アルキルアルミニウムに対しかなりの量の
水が使用されるから、直接の反応は不可能である。従ってこの方法全体において触媒種の製造は厄介な工程であり、数時間を要する。これを行う二つの方法がScherbakovaによって記載されている。
【0009】
触媒を製造する一つの方法は、炭化水素溶媒中にハロゲン化アルキルアルミニウムを含む溶液の中に水を不活性ガスと一緒に導入し、不活性ガスは「ハロゲン化アルキルアルミニウム−水」系の中に循環させ、連続的に水で飽和させておく方法である。
【0010】
他の方法は、炭化水素溶媒中にハロゲン化アルキルアルミニウムを含む溶液の中に鉱酸の塩、例えばCuSO4・5H2Oの結晶水の部分として水を導入する方法である。この場合反応は水を直接導入した場合よりも激しくない。
【0011】
加水分解反応で高級のアルミノキサンが生じるので、これを濾過し透明な溶液を使用して重合を開始させる。このことは、反応を開始させる活性の触媒種を製造する方法全体に余分に複雑な工程を追加することになる。
【0012】
上記の両方の触媒製造法の欠点は、時間が長くかかることの他に、加水分解が進行するにつれ触媒活性が時間と共に変化することである。そのため加水分解の進行を監視する分析方法を使用する必要がある。アルキルアルミニウム化合物は分析処理に特殊な注意を必要とするから、このことは簡単な仕事ではない。
【0013】
特許文献4[Parker等(Parker)]には、ハロゲン化ジアルキルアルミニウム、例えば塩化ジアルキルアルミニウムと、二ハロゲン化モノアルキルアルミニウム、例えば二塩化モノアルキルアルミニウムとの混合物(この中で後者は少量存在する)は、溶液法によるブチルゴムの製造に有効な触媒であり、遥かに経済的な温度(高い温度)で操作され、優れた高分子量のゴムを生成することが記載されている。通常、上記触媒混合物を使用するブチルゴムの重合は約−87〜−57℃、好ましくは−79〜−68℃の温度で行われ、ほぼ大気圧においては−73℃またはそれに近い温度において優れた結果が達成される。
【0014】
重合体は未反応の単量体にやはり溶解するから、希釈剤は比較的少量で使用することができる。単量体および飽和させた触媒の溶媒の全量に関し適度に少量の、例えば0〜50容積%の希釈剤を使用することができる。しかし通常は重合中の希釈剤の濃度は0〜20容積%である。重合中に希釈剤を低濃度で使用できることは経済的な利点である。ブチルゴムの溶液重合反応を行うのに通常使用される希釈剤は、使用される反応温度および圧力において液体のC5〜C6のn−、イソおよび環式パラフィン系炭化水素である。C5およびC6のn−パラフィン、例えばn−ペンタンおよびn−ヘキサンを使用することが好ましい。
【0015】
触媒混合物は約2〜約10モル%の二ハロゲン化モノアルキルアルミニウムと約90〜98モル%のモノハロゲン化ジアルキルアルミニウムから成っている。これによって重合の容易さを触媒効率および重合反応を通じての良好な温度制御との最も有利に組み合わせることができる。この後者の特徴はこの方法の極めて大きな利点である。他方好適な温度範囲において反応時間は約50〜100分が必要である。
【0016】
重合中良好な温度制御を行うことができ、しかもParker記載の触媒を使用する場合よりは速い反応速度が得られ高い分子量のゴムを生成し得る方法が有利である。これによってParker記載の方法よりも経済的な(高い)温度でも重合を行うことができ、しかもなお望ましい性質を示すゴムが得られるに相違ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許2,844,569号
【特許文献2】米国特許2,772,255号
【特許文献3】カナダ特許1,019,095号
【特許文献4】米国特許3,361,725号
【発明の概要】
【0018】
本発明の目的は溶液法でブチルゴムを製造する改善された方法を提供することである。
【0019】
従って本発明によれば少なくとも約400,000の重量平均分子量をもつブチル重合体を製造する方法において、該方法は
脂肪族炭化水素希釈剤、および多量のハロゲン化ジアルキルアルミニウムおよび少量の二ハロゲン化モノアルキルアルミニウム、並びに微量(minute amount)の水、アルミノキサンおよびそれらの混合物から成る群から選ばれる物質から成る触媒を存在させ、約−100〜約+50℃の温度範囲においてC4〜C8モノオレフィン単量体をC4〜C14多重オレフィン単量体と接触させることを特徴とする方法が提供される。
【0020】
さらに詳細に述べれば、本発明は400,000よりも高い重量平均分子量をもつブチルゴム重合体を製造する方法において、該重合体が可溶な脂肪族炭化水素希釈剤、および(A)多量の、例えば0.01〜2.0重量%のハロゲン化ジアルキルアルミニウム、(B)少量の、例えば0.002〜0.4重量%の二ハロゲン化モノアルキルアルミニウム(ここで重量%は存在する重合可能な単量体の全量に関する)から成り、二ハロゲン化モノアルキルアルミニウムは常に触媒混合物の約20モル%(モノハロゲン化物と二ハロゲン化物との合計に関する)以下であり、さらに(C)触媒を賦活する目的で加えられた微量の水またはアルミノキサンを含む触媒を存在させ、約−100〜約+50℃、好ましくは−80〜−20℃の温度範囲において、C4〜C8モノオレフィン単量体、好ましくはC4〜C8イソモノオレフィンをC4〜C14多重オレフィン単量体、好ましくはC4〜C10共役ジオレフィン単量体と反応させる方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明はParker法の改良である。本発明の改良法は触媒混合物の中に微量の水またはアルミノキサンを含ませる方法である。これによって反応速度が速くなり、分子量が高くなり、ゴム中のイソプレン含量が高くなると同時に、重合反応全体を通じ良好な温度制御が維持される。
【0022】
従って本発明方法の一態様は、変性された触媒系を使用し、触媒溶液に微量の水またはアルミノキサンを直接添加することによってParker記載のような触媒を賦活する方法に基づいている。これによって高い反応速度と高い分子量、さらにゴム中における高いイソプレン含量が得られると同時に、重合反応全体を通じ良好な温度制御が維持される。
【0023】
上記に説明したように、本発明方法はブチルゴムの製造法に関する方法である。本明細書を通じて使用される「ブチルゴム」という言葉は、それぞれ反応させる単量体100重量部当たり、多量成分の、例えば約70〜99.5重量部、通常は85〜99.5重量部のイソモノオレフィン、例えばイソブチレンを、少量成分、例えば約30〜0.5重量部、通常は15〜0.5重量部の多重オレフィン、例えば共役ジオレフィン、イソプレンまたはブタジエン等と反応させて製造される重合体を意味する。一般にイソオレフィンはC4〜C8の化合物、例えばイソブチレン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、および4−メチル−1−ペンテンである。
【0024】
本発明方法に使用できる適当な脂肪族炭化水素希釈剤には次のものが含まれるが、これだけには限定されない。即ちC4〜C8の飽和脂肪族および脂環式炭化水素、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン等。C5〜C8のn−パラフィン、例えばn−ペンタンおよびn−ヘキサンを使用することが好ましい。同じ飽和炭化水素を触媒混合物に対する「溶媒」として使用することができる。重合中の希釈剤の濃度は0〜約50容積%、好ましくは0〜約25容積%である。
【0025】
本発明に使用される触媒混合物は約1〜約20モル%の二ハロゲン化モノアルキルアルミニウム、約80〜約99モル%のモノハロゲン化ジアルキルアルミニウム、および微量の水またはアルミノキサンから成る混合物である。通常触媒混合物は約1〜約15モル%の二ハロゲン化モノアルキルアルミニウムと約85〜約99モル%のモノハロゲン化ジアルキルアルミニウムを含んでいるであろう。しかし重合のし易さと触媒効率および重合反応全体に亙る良好な温度制御とが組み合わされた最大の利点を得るためには、触媒混合物は約2〜約10モル%の二ハロゲン化モノアルキルアルミニウムと約90〜約98モル%のモノハロゲン化ジアルキルアルミニウムを含んでいる。
【0026】
通常本発明に使用されるモノハロゲン化ジアルキルアルミニウムはC2〜C16の低分子量のモノ塩化ジアルキルアルミニウムであり、ここで各アルキル基は1〜8個の炭素を含んでいる。好ましくは各アルキル基の炭素数が1〜4のC2〜C8の塩化ジアルキルアルミニウムが使用される。本発明方法に使用できる好適なモノ塩化ジアルキルアルミニウムの例としては、塩化ジメチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム、塩化ジ(n−プロピル)アルミニウム、塩化ジイソプロピルアルミニウム、塩化ジ(n−ブチル)アルミニウム、塩化ジイソブチルアルミニウム、または他の同族列の任意の化合物から成る群から選ばれる化合物が含まれるが、これだけには限定されない。
【0027】
本発明方法に使用される二ハロゲン化モノアルキルアルミニウムはC1〜C8の二ハロゲン化モノアルキルアルミニウムから選ばれるが、モノハロゲン化ジアルキルアルミニウムの記述に関連して上記に説明したように実質的に同じアルキル基を含むC1〜C4の二ハロゲン化モノアルキルアルミニウムが好適である。本発明方法に満足に使用できる好適なC1〜C4の二ハロゲン化モノアルキルアルミニウムの適当な例には、二塩化メチルアルミニウム、二塩化エチルアルミニウム、二塩化プロピルアルミニウム、二塩化ブチルアルミニウム、二塩化イソブチルアルミニウム等が含まれるが、これだけには限定されない。
【0028】
本発明の重要な特徴は、水を直接触媒混合物に加え、得られた不均一な溶液を直ちに使用して重合反応を開始させることである。ハロゲン化アルキルアルミニウム対水のモル比は好ましくは約4:1〜約30:1、さらに好ましくは約7:1〜約12:1である。水の使用量が好適範囲にある場合、厄介で長い特殊な処理を必要とするScherbakovaの方法とは異なり、水とルイス酸とが直接反応することができる(少なくとも実験室規模で)。これが可能なのは、本発明方法における水の使用量がScherbakovaの方法の約10倍だからである。本発明方法がScherbakovaの方法と異なる他の特徴は、本発明方法においては水をルイス酸に加えて得られる不均一溶液を使用するのに対し、Scherbakovaの方法では濾過工程を使用し触媒溶液から得られる可溶な部分だけを用いて反応を開始させることである。従って本発明方法およびScherbakovaの方法で得られる初期生成種の種類および活性は殆どの場合恐らくは異なっている。何故なら水とアルキルアルミニウム化合物との反応から得られる生成種の組成および触媒活性は製造法および老化に依存するからである。
【0029】
別法として、Parkerの触媒の活性を増加させるためには、水の代わりに微量のアルミノキサンを加える。触媒賦活剤として使用されるアルミノキサン成分は、典型的には環式化合物である一般式(R2−Al−O)n、或いは線形化合物であるR2(R2−Al−
O)nAlR22で表されるオリゴマーのアルミニウム化合物である。一般的なアルミノキサンの式においてR2は独立にC1〜C10のヒドロカルビル基(例えばメチル、エチル、プロピル、ブチルまたはペンチル)であり、nは1〜約100の整数である。またR2は独立にフッ素、塩素およびヨードを含むハロゲン、および他の1価の非ヒドロカルビル配位子、例えばアミド、アルコキシド等であることができるが、但しR2はその25モル%以上が上記の非ヒドロカルビル基であることはない。R2がメチルであり、nが少なくとも4であることが最も好適である。
【0030】
アルミノキサンは当業界に公知の種々の方法でつくることができる。例えばアルミニウムアルキルを不活性有機溶媒に溶解した水で処理するか、水和した塩、例えば不活性溶媒に懸濁させた水和した硫酸銅と接触させアルミノキサンを得ることができる。しかし一般的な製造法としては、アルミニウムアルキルを一定量の水と反応させ、線形または環式の種の混合物をつくる方法があり、また結合鎖間の錯化(交叉結合)を起こさせることもできる。アルミノキサンの触媒効率は与えられた製造法ばかりではなく、適切な安定化を行わなかった場合貯蔵した際の触媒活性の劣化(「老化」)にも依存する。メチルアルミノキサンおよび変性されたメチルアルミノキサンが好適である。これ以上の説明は下記の一つまたはそれ以上の米国特許を参照されたい。
4,665,208、4,952,540、5,041,584、5,091,352、5,206,199、5,204,419、4,874,734、4,924,018、4,908,463、4,968,827、5,329,032、5,248,801、5,235,081、5,157,137、5,103,031
これらの内容は参考のために編入される。本発明においては、反応供給物が約0.01〜約10ppm、好ましくは約0.02〜約4ppmを含むような量でアルミノキサンを触媒混合物に加えることが好適である。
【0031】
本発明方法を用いると、高い重合速度、ゴムの高い分子量(特に重量平均分子量が重要)、およびゴム中における高いイソプレン含量を得ることができる。また予想外にも、イソブチレンを含む反応供給物の中にアルミノキサンが存在すると、重合速度および得られるゴムの分子量が高くなることが見出されている。例えばロシア特許SU494,391号には、炭化水素溶媒においてイソブチレンを重合させる反応の触媒としてアルミノキサンを使用した場合、高分子量は達成されるが、重合速度は公知方法よりも遅いと記載されている。他方米国特許5,527,870号[Langstein等]には反応開始剤の系が塩化メチルまたはクロロエタンのような官能基をもった炭化水素とアルミノキサンとから成っている場合、炭化水素溶媒中でイソブチレンを重合させると、従来法に比べ高い分子量が得られ、同時に変化速度も速くなることが記載されている。ゴムの中に混入されたイソプレンの量が多く、同時に重合速度も速く、また重合体が高い分子量をもっていることは本発明の驚くべき結果である。通常、ブチルゴム中に多量のイソプレンを混入するためには、反応供給物中に多量のイソプレンを混入することが必要であり、その結果反応速度は遅くなり、生成物の分子量も低くなる。これは、イソブチレンとイソプレンとが共重合する場合、ジオレフィンは主として重合鎖を切断する過程を支配する(J.Pol.Sci.誌、A、27巻(1989年)、107〜124頁)ためである。本発明方法で得られる高い反応速度、高い分子量およびゴム中における高いイソプレン含量の上記の組み合わせは、工業的観点から見て、特に重合反応全体を通じての温度制御が良好に保たれる場合、極めて望ましい結果が得られる。これによって通常のParker触媒を使用する場合に比べ経済的な(高い)温度でブチルゴムを合成し得るようになる。
【実施例】
【0032】
下記の実施例を参照して本発明を例示する。これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0033】
50mLのエルレンマイヤー・フラスコに3.75mLの蒸溜したヘキサン、4.62mLのEt2AlCl(ヘキサン中1.0モルの溶液)および0.38mLのEtAlCl2(ヘキサン中1.0モルの溶液)を室温で加え、触媒溶液をつくる。
【0034】
オーバーヘッド撹拌機を備えた250mLの三つ口フラスコに40mLのイソブチレンを−75℃で加えた後、8.0mLの室温のヘキサンおよび1.2mLの室温のイソプレンを加えた。この反応混合物を−75℃に冷却し、1.8mLの触媒溶液を加えて反応を開始させた。
【0035】
反応はMBRAUN(R)ドライボックス中で乾燥窒素雰囲気下において行った。反応中の温度の変化を熱電対で追跡した。20分後、5mLのエタノールを反応混合物中に加えて反応を停止させた。
【0036】
重合体溶液をテフロン(R)でライニングしたアルミニウムの容器に入れ、真空炉中において70℃で溶媒および未反応の単量体を蒸発させた。
【0037】
重量的に決定された収率は8.4重量%、Mn=170,100、Mw=394,300であり、イソプレン含量は1.6モル%であった。
【0038】
この実施例は通常のParker法を示し、対照の目的だけのために与えたものである。
【実施例2】
【0039】
実施例1の方法を繰り返したが、触媒溶液に10μlの水を直接加えた。撹拌後懸濁した白色粒子を含むこの溶液1.8mLを直接使用して反応を開始させた。
【0040】
重合体の収率は38.0重量%、Mn=185,000、Mw=585,700であり、ゴム中のイソプレン含量は1.9モル%であった。
【実施例3】
【0041】
実施例1の方法を繰り返したが、触媒溶液に15μlの水を直接加えた。撹拌後懸濁した白色粒子を含む子の溶液1.8mLを直接使用して反応を開始させた。
【0042】
重合体の収率は53.4重量%、Mn=121,000、Mw=514,100であり、ゴム中のイソプレン含量は2.1モル%であった。
【実施例4】
【0043】
実施例1の方法を繰り返したが、触媒溶液に100μlのメチルアルミノキサン(トルエン中10重量%溶液)を直接加えた。撹拌後この均一溶液1.8mLを直接使用して反応を開始させた。
【0044】
重合体の収率は37.4重量%、Mn=159,900、Mw=551,100であり、ゴム中のイソプレン含量は2.2モル%であった。
【実施例5】
【0045】
(対照例)
50mLのエルレンマイヤー・フラスコに3.75mLのヘキサン、4.62mLのEt2AlCl(ヘキサン中1.0モルの溶液)および0.38mLのEtAlCl2(ヘキサン中1.0モルの溶液)を室温で加え、触媒溶液をつくる。
【0046】
オーバーヘッド撹拌機を備えた250mLの三つ口フラスコに40mLのイソブチレンを−60℃で加えた後、8.0mLの室温のヘキサンおよび1.2mLの室温のイソプレンを加えた。この反応混合物を−60℃に冷却し、1.0mLの触媒溶液を加えて反応を開始させた。
【0047】
反応はMBRAUN(R)ドライボックス中で乾燥窒素雰囲気下において行った。反応中の温度の変化を熱電対で追跡した。40分後、5mLのエタノールを反応混合物中に加えて反応を停止させた。
【0048】
重合体溶液をテフロン(R)でライニングしたアルミニウムの容器に注ぎ、真空炉中において70℃で溶媒および未反応の単量体を蒸発させた。
【0049】
重量的に決定された収率は12.5重量%、Mn=184,900、MW=385,100であり、イソプレン含量は1.6モル%であった。
【0050】
この実施例は通常のParker法を示し、対照の目的だけのために与えたものである。
【実施例6】
【0051】
実施例5の方法を繰り返したが、触媒溶液に10μlの水を直接加えた。撹拌後懸濁した白色粒子を含むこの溶液1.0mLを直接使用して反応を開始させた。
【0052】
重合体の収率は26.1重量%、Mn=197,600、Mw=468,200であり、ゴム中のイソプレン含量は1.9モル%であった。
【実施例7】
【0053】
実施例5の方法を繰り返したが、触媒溶液に175μlのメチルアルミノキサン(トルエン中10重量%溶液)を直接加えた。撹拌後均一溶液1.0mLを直接使用して反応を開始させた。
【0054】
重合体の収率は19.7重量%、Mn=203,000、Mw=550,400であり、ゴム中のイソプレン含量は2.3モル%であった。
【0055】
上記のすべての反応において温度制御は良好であった。
【0056】
本発明の主な特徴および態様は次の通りである。
【0057】
1.少なくとも約400,000の重量平均分子量をもつブチル重合体を製造する方法において、該方法は
脂肪族炭化水素希釈剤、および多量のハロゲン化ジアルキルアルミニウムおよび少量の二ハロゲン化モノアルキルアルミニウム、並びに微量の水、アルミノキサンおよびそれらの混合物から成る群から選ばれる物質から成る触媒を存在させ、約−100〜約+50℃の温度範囲においてC4〜C8モノオレフィン単量体をC4〜C14多重オレフィン単量体と接触させる方法。
【0058】
2.該触媒混合物は約80〜99モル%のハロゲン化ジアルキルアルミニウム、および約1〜約20モル%の二ハロゲン化モノアルキルアルミニウムを含み、且つ反応供給物中のアルミノキサン含量が0.01〜10ppmになるような量のアルミノキサンが触媒溶液に加えられている上記第1項記載の方法。
【0059】
3.水を直接触媒溶液に加え、懸濁した白色沈澱を含む得られた溶液を直接使用して重合反応を開始させる上記第1項記載の方法。
【0060】
4.触媒溶液にアルミノキサンを直接加え、得られた均一溶液を直接使用して重合反応を開始させる上記第3項記載の方法。
【0061】
5.存在する該単量体の全量に関し約0.01〜約2.0重量%のハロゲン化ジアルキルアルミニウムを使用する上記第1〜4項記載の方法。
【0062】
6.存在する該単量体の全量に関し約0.002〜約0.4重量%の二ハロゲン化アルキルアルミニウムを使用する上記第1〜9項記載の方法。
【0063】
7.反応供給物中の水の量は2〜100ppmである上記第1〜10項記載の方法。
【0064】
8.反応供給物中のアルミノキサンの量は0.01〜10ppmである上記第1〜10項記載の方法。
【0065】
9.少なくとも約400,000の重量平均分子量をもつブチルゴム重合体を製造する方法において、C4〜C8パラフィン希釈剤、および(i)各アルキル基が1〜8個の炭素を含むC2〜C16ハロゲン化ジアルキルアルミニウム約85〜約99モル%、(ii)各アルキル基が1〜8個の炭素を含むC1〜C8の二ハロゲン化モノアルキルアルミニウム約1〜約15モル%、および(iii)全反応供給物に関し約2〜約100ppmの水から成る触媒混合物の存在下において、−80〜−20℃の温度範囲でC4〜C8イソモノオレフィンをC4〜C10共役ジオレフィンと反応させる方法。
【0066】
10.少なくとも約400,000の重量平均分子量をもつブチルゴム重合体を製造する方法において、C4〜C8パラフィン希釈剤、および(i)各アルキル基が1〜8個の炭素を含むC2〜C16ハロゲン化ジアルキルアルミニウム約85〜約99モル%、(ii)各アルキル基が1〜8個の炭素を含むC1〜C8の二ハロゲン化モノアルキルアルミニウム約1〜約15モル%、および(iii)全反応供給物に関し約0.01〜約10ppmのアルミノキサンから成る触媒混合物の存在下において、−80〜−20℃の温度範囲でC4〜C8イソモノオレフィンをC4〜C10共役ジオレフィンと反応させる方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも400,000の重量平均分子量をもつ重合体を製造する方法において、該方法は
(a)脂肪族炭化水素希釈剤、および
(b)80〜99モル%のハロゲン化ジアルキルアルミニウム、1〜20モル%の二ハロゲン化モノアルキルアルミニウムおよび2〜100ppmの水、アルミノキサンおよびそれらの混合物から成る群から選ばれる物質から成る触媒を存在させ、−100〜+50℃の温度範囲においてC4〜C8イソモノオレフィン単量体をC4〜C14多重オレフィン単量体と接触させること、ここで、重合体中の少量成分であるC4〜C14多重オレフィン単量体含量が1.9モル%以上である方法。
【請求項2】
該触媒混合物は80〜99モル%のハロゲン化ジアルキルアルミニウム、および1〜20モル%の二ハロゲン化モノアルキルアルミニウムを含み、且つ反応供給物中のアルミノキサン含量が0.01〜10ppmになるような量のアルミノキサンが触媒溶液に加えられている請求項1記載の方法。
【請求項3】
水を直接触媒溶液に加え、懸濁した白色沈澱を含む得られた溶液を直接使用して重合反応を開始させる請求項1記載の方法。
【請求項4】
触媒溶液にアルミノキサンを直接加え、得られた均一溶液を直接使用して重合反応を開始させる請求項3記載の方法。
【請求項5】
存在する該単量体の全量に関し0.01〜2.0重量%のハロゲン化ジアルキルアルミニウムを使用する請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
存在する該単量体の全量に関し0.002〜約0.4重量%の二ハロゲン化アルキルアルミニウムを使用する請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
反応供給物中の水の量は2〜100ppmである請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
反応供給物中のアルミノキサンの量は0.01〜10ppmである請求項1〜7項のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
少なくとも約400,000の重量平均分子量をもつブチルゴム重合体を製造する方法において、C4〜C8パラフィン希釈剤、および(i)各アルキル基が1〜8個の炭素を含むC2〜C16ハロゲン化ジアルキルアルミニウム約85〜約99モル%、(ii)各アルキル基が1〜8個の炭素を含むC1〜C8の二ハロゲン化モノアルキルアルミニウム約1〜約15モル%、および(iii)全反応供給物に関し2〜100ppmの水から成る触媒混合物の存在下において、−80〜−20℃の温度範囲でC4〜C8イソモノオレフィンをC4〜C10共役ジオレフィンと反応させる方法。
【請求項10】
少なくとも約400,000の重量平均分子量をもつブチルゴム重合体を製造する方法において、C4〜C8パラフィン希釈剤、および(i)各アルキル基が1〜8個の炭素を含むC2〜C16ハロゲン化ジアルキルアルミニウム85〜99モル%、(ii)各アルキル基が1〜8個の炭素を含むC1〜C8の二ハロゲン化モノアルキルアルミニウム1〜15モル%、および(iii)全反応供給物に関し約0.01〜約10ppmのアルミノキサンから成る触媒混合物の存在下において、−80〜−20℃の温度範囲でC4〜C8イソモノオレフィンをC4〜C10共役ジオレフィンと反応させる方法。

【公開番号】特開2011−231337(P2011−231337A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180803(P2011−180803)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【分割の表示】特願平11−302323の分割
【原出願日】平成11年10月25日(1999.10.25)
【出願人】(509024341)ランクセス・インコーポレーテツド (1)
【Fターム(参考)】