説明

質量分析方法及び質量分析装置

【課題】タンパク質やペプチドを、高速且つ高感度に同定可能な質量分析方法を実現する。
【解決手段】基準試料である健常者のマススペクトルを得てこのマススペクトルから選出したイオンを前駆イオンとするマススペクトルを取得する((a)〜(d))。測定対象試料である患者のマススペクトルを得てこのマススペクトルから基準試料の前駆イオン以外の新たなイオンを前駆イオンとしてそのマススペクトルを取得する((g)〜(k))。基準試料固有の、測定対象試料固有の、基準試料と測定試料共通の、ペプチド/タンパク質の同定((r)〜(q))を行いこれらに基づき測定対象試料のペプチド/タンパク質の比較解析を行なう(t)。測定対象の全ての成分に由来するイオンを前駆イオンとする必要なくMS/MSスペクトルを得て測定対象の複数成分の同定を短時間、高感度に行なえる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量分析により試料中のタンパク質やペプチドの解析を行う質量分析方法及び質量分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体内においてタンパク質は、細胞骨格の形成、筋肉の収縮、生体防御(免疫)、情報伝達、各種触媒や血液凝固など、多くの役割を担っている。しかし、個々のタンパク質の具体的な役割については、まだ解明されていないものが多い。
【0003】
そこで、特定の疾患の有無や、薬物の投与の有無または経時変化、物理的ストレス有無や程度、組織の違いなどに着目し、生体内で発現するタンパク質を網羅的に検出することにより、それらを特徴づけるタンパク質の変異を検出することが試みられている。
【0004】
例えば、特定の疾患においてのみ発現し、健常者では検出されないタンパク質が明らかになれば、そのタンパク質は、何らかのかたちでその疾患に関与している可能性が考えられる。さらに当該タンパク質の機能を研究することによって、疾患の原因が明らかとなり、医薬品の開発が可能となるかもしれない。また、その疾患に対する特性が与えられることにより、類似する所見を与える疾患群の中から正確な診断が可能となる可能性もある。
【0005】
このように、生体におけるタンパク質を網羅的に同定し、比較解析することは非常に重要と考えられている。
【0006】
このため、質量分析装置によってタンパク質を分析する方法が知られている。この分析方法において、ペプチド分子に由来したイオンを前駆イオンとして選択、開裂させ、順次ペプチドの構造情報を有するマススペクトル(所謂、MS/MSスペクトル、またはMSスペクトル)を取得する方法が実現されている。
【0007】
液体クロマトグラムによって分離された成分を順次質量分析する場合、MSスペクトル(MSスペクトルに対して、その前駆イオンを観測したマススペクトル)には液体クロマトグラムによって分離された各成分に由来する情報が時系列的に含まれている。特にペプチドをESI(エレクトロスプレイイオン化法)によってイオン化した場合、その分子イオンにプロトン(水素イオン:H+)などが付加または脱離し、多価イオンとして観測されることが多い。
【0008】
また、MSスペクトルには、前駆イオンに関する構造情報が含まれている。特にペプチドの場合、アミノ酸のペプチド結合におけるC−N間などで開裂して生成されたイオンが観測されるなど、構造に関する知見が得られる場合が多い。尚、MSスペクトルを与えた前駆イオンが、液体クロマトグラムによって分離されたペプチド由来のものであれば、同一条件によって測定を行った場合、理想的には同じ前駆イオンは同じ保持時間に観測することができる。
【0009】
尚、MSスペクトルにおいて観測されたイオンの中から前駆イオンを選び、さらにそれを開裂させ、マススペクトル(所謂、MSスペクトル)を得る方法も実現されている。特に、構造が異なるにもかかわらずMSスペクトルが酷似している場合や、MSスペクトルで観測されるイオンの種類が少なく構造的な情報に乏しい場合など、MSスペクトルの取得が構造の解析において有効になる場合がある。
【0010】
特許文献1には、マススペクトルの比較による試料の評価が記載されている。この特許文献1においては、ウイルス遺伝子導入ベクターのフラグメントの標準シグナルを用意し、サンプルシグナルと標準シグナルとを比較して、夾雑物の存在を検出し、夾雑物フラグメントに対応するシグナルを同定している。
【0011】
【特許文献1】特表2003−510008号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記従来技術においては、試料のタンパク質およびペプチドを同定する場合、次に挙げる問題があった。
【0013】
(a)試料における複数成分の同定数
試料中の成分に由来する前駆イオンのマススペクトルによって同定を行う場合、全ての成分に由来するイオンを前駆イオンとして選択し、そのマススペクトルを得ることが理想的である。しかし、前駆イオンの候補となるイオンが観測可能な時間や、MS/MSスペクトルを得るために必要な測定時間などの制約があるため、必ずしも存在する全ての成分に対応するイオンを前駆イオンとして選択しMS/MSスペクトルを得ることができない。
【0014】
つまり、全ての成分に由来するイオンを前駆イオンとして選択し、そのマススペクトルを得ようとすれば、非常に長時間が必要となってしまうため、実際上、困難である。
【0015】
(b)測定時間と試料の量
上記の同定数を多くする手法として、同一試料を複数回測定し、より多くの成分に関する情報を得る手法もある。しかし、測定を繰り返すには時間を要するため、スループットが低下してしまう。また、測定回数に応じて試料の量が必要となるため、入手しにくい試料については実施が困難となる。
【0016】
(c)成分の同定に要する時間
また、多くの種類のイオンからMS/MSスペクトルが得られたとしても、対応する成分の解析に時間が必要となるため、必ずしも効率的ではない。特に、電気泳動によってタンパク質やペプチドを分離する方法の場合、電気泳動そのものに時間を要してしまう。
【0017】
(d)微量成分の同定
電気泳動による場合、画像として識別できる濃度が必要であり、それ以下の微量成分については無視されてしまう。また、試料を酵素消化後に液体クロマトグラムで分析する場合にも、保持時間が近接する微量成分については、それに由来するMS/MSスペクトルを取得できないことも多い。
【0018】
特に、複数種類の試料について測定と解析を繰り返す場合、これらがより重要な問題となる。
【0019】
本発明の目的は、生体試料を、高速且つ高感度に同定可能な質量分析方法および装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明においては、基準試料をイオン化してマススペクトルを取得し、このマススペクトルの中から選出したイオンを第1の前駆イオンとする第1の前駆イオンマススペクトルを取得する。そして、測定対象試料をイオン化してマススペクトルを取得し、このマススペクトルから、第1の前駆イオンと共通するイオンを除外して選出したイオンを第2の前駆イオンとする第2の前駆イオンマススペクトルを取得する。
【0021】
次に、第1の前駆イオンのうちの測定対象試料のマススペクトルのイオンと共通するイオンのマススペクトルと、第1の前駆イオンのうちの上記測定対象試料のマススペクトルのイオンとは異なるイオンのマススペクトルと、第2の前駆イオンのマススペクトルとを選出し、それぞれのマススペクトルを互いに比較することにより、測定対象試料の成分を分析する。
【発明の効果】
【0022】
測定対象試料から得られたマススペクトル中の全てを前駆イオンとして、MS/MSを行なう必要がなく、生体試料を、高速且つ高感度に同定可能な質量分析方法および装置を実現することができる。
【0023】
より微量成分を同定できる可能性が高まる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は本発明の実施形態である質量分析装置の動作説明図であり、図2は、本発明の実施形態である質量分析装置の概略構成図である。
【0025】
図2において、質料分析装置は、試料の分離のためのクロマトグラフ装置10と、質量分析装置本体11と、制御部15と、データ処理部17とを備えている。クロマトグラフ装置10及び質量分析装置本体11と制御部15とは、信号線16で接続されている。また、制御部15とデータ処理部17も、信号線16で互いに接続されている。
【0026】
質量分析装置本体11は、試料をイオン化するためのイオン源12と、質量分析部13と、検出部14とを備えている。また、データ処理部17には、キーボード18と、表示装置19とが接続されている。
【0027】
データ処理装置17は、インターネット等の外部の公衆回線に接続可能であり、これにより、ネット上に接続されたデータベースにアクセスし、必要な情報を入手することが出来る。また、データベースの情報は、CD−ROM等の記録メディアを用いて入手しても良い。
【0028】
また、図示した例は、クロマトグラフ装置とイオントラップ型の質量分析計であるが、質量分析計には、MS分析によって前駆イオンを選択しMS分析を行うこと(所謂、MS/MS分析)が可能な全ての質量分析計が適用可能である。また、イオン源には、タンパク質やペプチドをなるべく壊さないようにイオン化できるイオン源が好ましく、例えばエレクトロスプレイイオン源(ESI:Electro Spray Ionization)を用いることが出来る。また、クロマトグラフ装置は必ずしも必要ではなく、マトリクス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI: Matrix Assisted Laser Desorption Ionization)などを用いる質量分析装置であっても応用できる。
【0029】
次に、図1を参照して、本発明の実施形態である質量分析装置の動作を説明する。なお、この実施形態においては、基準となる生体試料及び比較すべき生体試料として、健常者と患者に由来する酵素消化されたタンパク質を想定したが、必ずしもその組合せに固執するものではなく、薬剤を投与した検体とそうでない検体、すい臓と肝臓、上皮細胞と真皮細胞など異なる組織由来の検体等に適用できる。また、ICATなどの標識を用いる場合、その混合試料を本手法における一つの試料としてとらえることができる。
【0030】
基本的な流れとしては、まず、健常者由来試料のタンデム質量分析装置による分析とMS/MSスペクトルの作成、及び前駆イオン除外リストの作成を行う。そして、除外リストに基づき前駆イオンを選択しながら患者由来試料を分析し、健常者と同様にMS/MSスペクトルを作成後、それらを比較解析する。その結果得られた、共通して発現しているイオン、健常者に固有のイオン、患者固有のイオンごとに、それぞれのMS/MSスペクトルを整理し、タンパク質の同定や比較解析を行う。
【0031】
以下、図1を参照しつつ、詳しく説明する。
【0032】
(a)健常者由来の試料の前処理
基準とする試料として、ここでは健常者由来の試料を想定する。健常者の血液や尿、または臓器などの組織から試料を採取し、タンパク質の抽出やトリプシンなどに代表される酵素消化を行い、後述するLC/MS/MS測定が可能となるような前処理を施す。
【0033】
(b)健常者のLC/MS/MS測定
健常者由来の試料を液体クロマトグラムによって分離しつつ、エレクトロスプレーイオン化などの方法によって順次イオン化する。さらに、タンデム質量分析装置によってMSスペクトルを測定する。ここで、観測されるイオンにはペプチド由来のものも含まれており、それらを前駆イオンとして開裂させMSスペクトルを取得する。
【0034】
このように、MSスペクトルと、その中から選択された1または複数の前駆イオンに由来するMSスペクトルを交互に取得する。
【0035】
(c)健常者の測定データの記憶
健常者由来の試料をタンデム質量分析装置によって測定したデータを記憶手段に記憶させる。この測定データにはMSスペクトルやMSスペクトル、それらを取得した際の保持時間などを含む。
【0036】
(d)健常者のMS/MSスペクトル作成
健常者の測定データから健常者のMS/MSスペクトル等を抽出する処理を行う。タンパク質やペプチドの同定、および後述する前駆イオン比較解析に必要な情報として、MS/MSスペクトルと、対応する前駆イオンの質量、価数、イオン強度、保持時間、同位体イオンの強度パターンなどをMSスペクトルから求め、それらを集積する。
【0037】
なお、同一成分由来のイオンを前駆イオンとしたMS/MSスペクトルが複数得られた場合、S/N比改善などのため、それらの質量/電荷の観測値ごとにイオン強度を加算または平均して得たMS/MSスペクトルをもって統合する場合もある。
【0038】
(e)健常者のMS/MSスペクトル等の記憶
健常者のMS/MSスペクトル等として、MS/MSスペクトルと、対応する前駆イオンの質量、価数、イオン強度、保持時間、同位体イオンの強度パターンなどを集積し、記憶手段に記憶させる。
【0039】
(f)前駆イオン除外リスト作成
上記(c)の健常者の測定データから、MS/MSスペクトルを得た前駆イオンの情報を抽出し、前駆イオン除外リストを作成する。ここで、前駆イオンの情報には、保持時間、質量、価数、同位体イオンの強度パターンなどを含むことができる。
【0040】
なお、前駆イオン除外リストにおいて、保持時間に範囲(始値−終値)を登録することにより、比較的長時間に渡って観測されるイオンを、他と区別して除外することも可能となる。また、装置に由来するようなペプチド以外のイオンの情報を追加することも考えられる。
【0041】
また、前駆イオン除外リストを作成する方法として、(e)の健常者のMS/MSスペクトル他に集積した情報からのみ、除外する前駆イオンの一覧を得る別法が考えられる。
【0042】
また、保持時間の範囲ではなく、イオンを最大のイオン強度で検出した際の時間や、MS/MSスペクトルを測定した時間など、代表値のみを登録する方法もある。さらに、質量分析装置の制御部において、健常者のLC/MS/MS測定の最中に、リアルタイムに前駆イオン除外リストを作成する方法も想定できる。
【0043】
(g)前駆イオン除外リストの作成
比較すべき試料の測定において、MS/MSスペクトルを得るための前駆イオンから除外すべきものの一覧を作成する。図6に、保持時間の範囲と質量観測値(質量/価数)のリストを例示した。
【0044】
(h)患者由来の試料の前処理
健常者由来の試料と比較すべき試料として、患者由来の試料を想定する。これは、健常者由来の試料と同様に、患者の血液や尿、または臓器などの組織から採取し、タンパク質の抽出と、トリプシンなどに代表される酵素消化を行っているものとする。
【0045】
(i)患者のLC/MS/MS測定
患者由来の試料も、健常者由来の試料と同様にLC/MS/MS測定を実施する。その際、健常者由来の試料に含まれていたものと同じペプチドは、極力同じ保持時間で出現するよう、基本的に同一測定条件を適用する。ただし、前述の(g)において作成した前駆イオン除外リストに規定されているものはMS/MSスペクトルを取得する前駆イオンの候補から除外する。これによって、理想的には患者由来の試料にのみ存在するペプチドのイオンを選択的に前駆イオンとして選択し、MS/MSスペクトルを取得することができる。
【0046】
除外リストの適用に際しては、保持時間に対して尤度を設ける。例えば、前駆イオン除外リストに指定されている保持時間に対して、プラスマイナス20秒、または5%等の許容誤差の値をユーザーが適宜設定できることが望ましい。
【0047】
なお、前駆イオン除外リストにおいて、保持時間の範囲を指定する場合には、あらかじめ尤度を持った数値を設定することもできる。
【0048】
(j)患者の測定データの記憶
患者の測定データは、ここでは健常者の測定データと同様の様式で登録されているものを想定している。すなわち、タンデム質量分析装置によって取得したMSスペクトルやMSスペクトル、それらを取得した際の保持時間などを含んでいる。
【0049】
なお、前駆イオン除外リストにないイオンを、(i)患者のLC/MS/MS測定において選択していることにより、健常者の測定データと比較した場合、新規に観測した成分由来のイオンを前駆イオンとしたMS/MSスペクトルを含んでいる。また、健常者の測定においてイオン強度が小さいために選択されなかったイオンも、ここで前駆イオンとして選ばれることによってMSスペクトルが取得されている可能性もある。
【0050】
(k)患者のMS/MSスペクトル作成
患者のMS/MSスペクトル作成においても、健常者のMS/MSスペクトル作成と同様の処理を行う。すなわち、患者のMS/MSスペクトル等として、MS/MSスペクトルと、対応する前駆イオンの質量、価数、イオン強度、保持時間、同位体イオンの強度パターンなどをMSスペクトルから求め、それらを集積する。
【0051】
(l)患者のMS/MSスペクトル等の記憶
患者のMS/MSスペクトル等として、健常者のMS/MSスペクトル等と同様に、MS/MSスペクトルと、対応する前駆イオンの質量、価数、イオン強度、保持時間、同位体イオンの強度パターンなどを集積し、記憶手段に記憶させる。
【0052】
(m)前駆イオン比較解析
前駆イオン比較解析は、記憶された(c)における健常者の測定データ、(e)における健常者のMS/MSスペクトル等、(j)における患者の測定データ、(l)における患者のMS/MSスペクトル等を参照することにより、健常者と患者との共通MS/MSスペクトル等の記憶(n)、健常者固有のMS/MSスペクトル等の記憶(o)、患者固有のMS/MSスペクトル等の記憶(p)を行なう。
【0053】
なお、(e)における健常者のMS/MSスペクトル等と、(l)における患者のMS/MSスペクトル等は、それぞれ、(c)において記憶させた健常者の測定データと、(j)において記憶させた患者の測定データから生成している。
【0054】
したがって、(m)の前駆イオン比較解析においては、少なくとも(c)におい記憶させた健常者の測定データと(j)において記憶させた患者の測定データとを参照できれば、処理を行うことが可能である。
【0055】
なお、上記(m)における前駆イオン比較解析についての詳細這、後述する。
【0056】
(n)共通MS/MSスペクトル等の記憶
上述した(m)前駆イオン比較解析において生成され、健常者と患者とに共通すると判定された前駆イオン由来のMS/MSスペクトルと、対応する前駆イオンの質量、価数、イオン強度、保持時間などを集積し、記憶させる。なお、対応する前駆イオンのイオン強度等については、健常者と患者との観測値をそれぞれ含むことにより、後でイオン強度の比較などが可能となる。
【0057】
(o)健常者固有のMS/MSスペクトル等の記憶
上述した(m)前駆イオン比較解析において生成され、健常者にのみ存在すると判定された前駆イオン由来のMS/MSスペクトルと、対応する前駆イオンの質量、価数、イオン強度、保持時間などを集積し、記憶させる。
【0058】
(p)患者固有のMS/MSスペクトル等の記憶
上述した(m)前駆イオン比較解析において生成され、患者にのみ存在すると判定された前駆イオン由来のMS/MSスペクトルと、対応する前駆イオンの質量、価数、イオン強度、保持時間などを集積し、記憶させる。
【0059】
(q)共通ペプチド/タンパク質の同定
上述した(n)において記憶させた共通MS/MSスペクトル等に基づき、対応するペプチドやタンパク質を同定する。
【0060】
(r)健常者固有のペプチド/タンパク質同定
上述した(o)において記憶させた健常者固有MS/MSスペクトル等に基づき、対応するペプチドやタンパク質を同定する。
【0061】
(s)患者固有ペプチド/タンパク質同定
上述した(p)において記憶させた患者固有MS/MSスペクトル等に基づき、対応するペプチドやタンパク質を同定する。
【0062】
(t)ペプチド/タンパク質比較解析
上述した(q)におい手同定した共通ペプチド/タンパク質、(r)において同定した健常者固有のペプチド/タンパク質、(s)において同定した患者固有のペプチド/タンパク質に基づき、健常者や患者に固有のペプチドやタンパク質の特定などを行う。また、前駆イオンのイオン強度を比較することにより、量的な増減の検討が可能となる。つまり、特定の患者固有のペプチド/タンパク質について、前回解析した結果が存在すれば、それと今回解析した結果とを比較すれば、何が増加したか又は減少したかの判断を行なうことができる。
【0063】
以上が、本発明の一実施形態である質量分析装置の一連の動作である。
ここで、図2に示した装置構成と、図1に示す処理内容との対応を説明する。図1における健常者のLC/MS/MS測定(b)に際して、制御部15によって前駆イオンの選択などを行う。また、前駆イオン除外リストを参照しながら実施する患者のLC/MS/MS測定(i)も、制御部15によって行なわれる。測定以外の情報処理関連は、データ処理部17によって行われる。
【0064】
なお、前駆イオン除外リストの作成は、制御部15によって実施することも可能である。
【0065】
また、データ処理装置17は、インターネット等の外部の公衆回線に接続可能であるが、上記(q)、(r)、(s)の同定においては、インターネットを介して、蛋白質情報を入手し、入手した情報に基づいて同定を行なうことも可能である。
【0066】
次に、上述した(m)における前駆イオン比較解析について、詳細に説明する。
【0067】
図3は、(m)前駆イオン比較解析の動作フローチャートである。また、図7は、同一成分由来のイオンが健常者および患者のMSスペクトルで観測されたかどうか、さらにそれを前駆イオンとして選択してMSスペクトルを得たかどうかについての全ケースを示す表である。
【0068】
図7のMSスペクトルにおける丸印は、当該マススペクトルにおいて当該イオンが観測されていることを示す。また、MSスペクトルにおける丸印は、当該イオンを前駆イオンとするMSスペクトルが取得されていることを示す。
【0069】
以下、図3を参照して説明する。
(m1)処理対象MS/MSスペクトル選択
健常者のMS/MSスペクトル等から、MS/MSスペクトルと、対応する前駆イオンの質量、価数、イオン強度、保持時間などの情報を読み出す。
【0070】
(m2)患者の測定データチェック
上記(m1)で読み出した前駆イオンの情報を、患者の測定データと照合、保持時間および質量等に対応するイオンが存在するかを評価する。
【0071】
(m3)イオン判定
上記(m2)の評価結果を受け、健常者のMS/MSスペクトルに対応するイオンが、患者の測定データ内のMSスペクトルに存在するかどうかを判定する。
【0072】
(m4)パターンBの処理
上記(m3)のイオン判定において、健常者と患者で対応するイオンが存在する場合、図7におけるパターンBの処理を行う。すなわち、健常者のMS/MSスペクトル等を共通MS/MSスペクトル等に追加する。
【0073】
(m5)パターンCの処理
上記(m3)のイオン判定において、健常者で検出したMS/MSスペクトルが患者には存在しない場合、図7におけるパターンCの処理を行う。すなわち、健常者のMS/MSスペクトル他を健常者固有MS/MSスペクトル等に追加する。
【0074】
(m6)終了判定
全ての健常者のMS/MSスペクトル等について処理が終了した場合は、次に説明する(m7)の処理を行う。未処理のスペクトル等がある場合は、(m1)に戻って続きを処理する。
【0075】
(m7)処理対象MS/MSスペクトル選択
患者のMS/MSスペクトル等から、MS/MSスペクトルと、対応する前駆イオンの質量、価数、イオン強度、保持時間などの情報を読み出す。
【0076】
(m8)健常者の測定データチェック
上記(m7)で読み出した前駆イオンの情報を、健常者の測定データと照合し、保持時間および質量等に対応するイオンが存在するかを評価する。
【0077】
(m9)イオン判定
上記(m8)の評価結果を受け、患者のMS/MSスペクトルに対応するイオンが、健常者の測定データ内のMSスペクトルに存在するかどうかを判定する。
【0078】
(m10)パターンDの処理
上記(m9)のイオン判定において、患者と健常者で対応するイオンが存在する場合、図7におけるパターンDの処理を行う。すなわち、患者のMS/MSスペクトル等を共通MS/MSスペクトル等に追加する。
【0079】
(m11)パターンGの処理
上記(m9)のイオン判定において、患者で検出したMS/MSスペクトルが健常者には存在しない場合、図7におけるパターンGの処理を行う。すなわち、患者のMS/MSスペクトル等を患者固有MS/MSスペクトル等に追加する。
【0080】
(m12)終了判定
全ての患者のMS/MSスペクトル等について処理が終了した場合は処理を終了する。未処理のスペクトル他がある場合は、(m7)に戻って続きを処理する。
【0081】
なお、図7のパターンE、パターンF、パターンHは、MSスペクトルが取得されていないため、ペプチドやタンパク質の同定に寄与しなと判断し無視している。
【0082】
また、図7におけるパターンAは前駆イオン除外リストに従って患者のLC/MS/MS測定を実施した場合はありえないパターンであるため、これも無視した。
【0083】
ただし、患者のLC/MS/MS測定において明らかに健常者よりも強くイオンが観測されている場合など、患者由来の試料においても健常者ですでに測定したイオンのMS/MSスペクトルを取得することが考えられる。その場合、共通MS/MSスペクトル他に対して、より前駆イオンの強度の強いMS/MSスペクトルを登録する、またはスペクトルを加算または平均化した上で登録する処理を行うことができる。
【0084】
次に、表示装置19に表示させる前駆イオン除外リスト作成の画面について説明する。
【0085】
図4は、前駆イオン除外リスト作成の条件指定画面例を示す図である。
【0086】
図4において、前駆イオン除外リストの作成条件は、上部に位置する健常者の測定データ解析条件と、中央部の測定データにおけるMSスペクトルにおける観測イオン、下部の前駆イオン除外リスト出力条件に大別できる。
【0087】
健常者の測定データ解析条件として、測定データファイル、イオン強度の閾値、保持時間範囲、保持時間精度、質量範囲、質量精度を指定する。イオン強度の閾値は、図1の(g)の除外リストに登録する前駆イオンとして、微細なイオンを除くために指定し、マススペクトルにおける%値またはイオンの観測値を指定する。
【0088】
さらに、上記除外リストに登録する保持時間や質量の範囲、および複数のイオンを同一と判定するための時間精度および質量精度を設定する。この例では、測定データ解析実行のボタン20を指定することにより、指定された条件で解析を行う。その結果は、測定データにおけるMSスペクトルにおける観測イオンにリスト表示される。
【0089】
さらに、前駆イオン除外リスト出力条件として、多価イオン拡張、保持時間タイプ、前駆イオン除外リストファイルなどを指定する。ここで、多価イオン拡張とは、観測されたイオンについて、それぞれの多価イオンをリストに追加するかどうかの指定を意味する。また、保持時間タイプとして範囲を指定した場合、前駆イオン除外リストの保持時間には、個々の前駆イオンを観測した保持時間の範囲、すなわち出現した保持時間と消失した保持時間の双方が記録される。
【0090】
保持時間の代表値を指定した場合、当該イオンの代表値として、最強値を与えた保持時間などを記録する。最後に、前駆イオン除外リスト作成実行のボタンを指定することにより、測定データの解析結果を、指定された前駆イオン除外リストファイルとして出力する。
【0091】
次に、表示装置19に表示させる前駆イオン比較解析の画面について説明する。
【0092】
図5は、前駆イオン比較解析の条件指定画面例を示す図である。
【0093】
前駆イオン比較解析条件は、測定データ比較解析条件と、解析結果出力条件に大別できる。測定データ比較解析条件としては、健常者および患者の測定データファイルの指定、イオン強度の閾値指定、保持時間や質量の範囲指定、および保持時間や質量の精度指定である。
【0094】
イオン強度の閾値は、除外リストに登録する前駆イオンとして、微細なイオンを除くために指定し、マススペクトルにおける%値またはイオンの観測値を指定する。さらに、除外リストに収載する保持時間や質量の範囲、および複数のイオンを同一と判定するための時間精度および質量精度を設定する。
【0095】
また、解析結果出力条件では、それぞれのMS/MSスペクトルのファイルを指定している。
【0096】
最後に、前駆イオン比較解析実行ボタンを指定することにより、比較解析とファイルの出力が実行される。
【0097】
以上のように、本発明によれば、基準試料のマススペクトルを得て、このマススペクトルから選出したイオンを前駆イオンとするマススペクトルを取得する。そして、測定対象試料のマススペクトルを得て、このマススペクトルから、基準試料において測定した前駆イオン以外の新たに観測したイオンを前駆イオンとして選択し、そのマススペクトルを取得する。
【0098】
そして、基準試料固有のペプチド/タンパク質の同定、測定対象試料固有のペプチド/タンパク質の同定、基準試料と測定試料共通のペプチド/タンパク質の同定を行い、これらの同定結果に基づいて、測定対象試料のペプチド/タンパク質の比較解析を行なっている。
【0099】
したがって、測定対象の全ての成分に由来するイオンを前駆イオンとする必要なく、MS/MSスペクトルを得ることができ、測定対象の複数成分の同定を短時間で、かつ、高感度に行なうことが可能となる。
【0100】
なお、本発明は、液体クロマトグラムにより試料成分を分離する場合のみならず、ガスクロマトグラムにより試料成分を分離する場合にも適用可能である。ガスクロマトグラムにより成分を分離する場合は、生体試料の代謝物を分析する場合に適用することが好ましい。
【0101】
また、本発明は、特定の疾患において特異的に発現するタンパク質やペプチドを効率よく補足可能となることより、疾患マーカーとなるタンパク質やペプチドの探索に応用することができる。
【0102】
また、上述した例は、MSスペクトルと、MSスペクトルとを使用して成分の分析を行なったが、MSスペクトルやそれ以上のMSスペクトルを取得して、成分分析を行うことも可能である。ここで、MSスペクトルとは、複数回のMSを実行することである。
【0103】
また、取得したマススペクトル中の同位体イオンや、その質量分析装置のバックグランドに由来するイオンを判別して、測定対象物についての前駆イオンから除外することもできる。つまり、図1に示した前駆イオン除外リスト(g)に、取得したマススペクトル中の同位体イオンや、その質量分析装置のバックグランドに由来するイオンを追加し、測定対象物についての前駆イオンから除外することもできる。
【0104】
また、基準試料に対して、取得したマススペクトルの中からの前駆イオンの選択を複数回行い、前駆イオンを選択する毎に、測定対象試料の前駆イオンを決定して、マススペクトルを取得し、測定対象試料のマススペクトルのイオンと共通するイオンのマススペクトルと、測定対象試料のマススペクトルのイオンとは異なるイオンのマススペクトルとを取得し、測定対象試料の成分を分析することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の実施形態である質量分析装置の動作説明図である。
【図2】本発明の実施形態である質量分析装置の概略構成図である。
【図3】本発明の実施形態における前駆イオン比較解析の動作フローチャートである。
【図4】前駆イオン除外リスト作成の画面例を示す図である。
【図5】前駆イオン比較解析の画面例を示す図である。
【図6】保持時間の範囲と質量観測値(質量/価数)のリストを示す図である。
【図7】前駆イオン比較解析における処理のパターンを示す図である。
【符号の説明】
【0106】
10 クロマトグラフ装置
11 質量分析装置本体
12 イオン源
13 質量分析部
14 検出器
15 制御部
16 信号線
17 データ処理部
18 キーボード
19 表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料をイオン化し、質量分析を行なうことにより試料の成分を分析する質量分析方法において、
基準試料をイオン化してマススペクトルを取得し、取得したマススペクトルの中から選出したイオンを第1の前駆イオンとする第1の前駆イオンマススペクトルを取得し、
測定対象試料をイオン化してマススペクトルを取得し、取得したマススペクトルから、上記第1の前駆イオンと共通するイオンを除外して選出したイオンを第2の前駆イオンとする第2の前駆イオンマススペクトルを取得し、
上記第1の前駆イオンのうちの上記測定対象試料のマススペクトルのイオンと共通するイオンのマススペクトルと、上記第1の前駆イオンのうちの上記測定対象試料のマススペクトルのイオンとは異なるイオンのマススペクトルと、上記第2の前駆イオンのマススペクトルとを選出し、
上記選出したそれぞれのマススペクトルを互いに比較することにより、測定対象試料の成分を分析することを特徴とする質量分析方法。
【請求項2】
請求項1記載の質量分析方法において、試料成分は、液体クロマトグラム又はガスクロマトグラムによって分離し、分離した試料成分をイオン化し、そのイオンの質量、保持時間又はイオンの質量、保持時間、価数、同位体イオンの強度パターンに基づいて、測定対象試料の成分を分析することを特徴とする質量分析方法。
【請求項3】
請求項1記載の質量分析方法において、基準試料に対して、取得したマススペクトルの中からの前駆イオンの選択は、複数回行い、前駆イオンを選択する毎に、上記測定対象試料の前駆イオンを決定して、マススペクトルを取得し、上記第1の前駆イオンのうちの上記測定対象試料のマススペクトルのイオンと共通するイオンのマススペクトルと、上記第1の前駆イオンのうちの上記測定対象試料のマススペクトルのイオンとは異なるイオンのマススペクトルと、上記第2の前駆イオンのマススペクトルとを取得することを特徴とする質量分析方法。
【請求項4】
請求項1記載の質量分析方法において、上記取得したそれぞれのマススペクトルのイオン強度に基づいて、測定対象試料の各成分量を分析することを特徴とする質量分析方法。
【請求項5】
請求項1記載の質量分析方法において、上記第1の前駆イオンと共通するイオンの同位体イオンと、質量分析を行なう装置のバックグランドに由来するイオンも、除外して選出したイオンを第2の前駆イオンとすることを特徴とする質量分析方法。
【請求項6】
請求項1記載の質量分析方法において、上記第1の前駆イオンマススペクトルの中から第3の前駆イオンを選出して、第3の前駆イオンマススペクトルを取得し、上記第2の前駆イオンマススペクトルの中から第4の前駆イオンを選出して、第4の前駆イオンマススペクトルを取得し、これら第3及び第4の前駆イオンマススペクトルについても、基準試料と測定対象試料とを互いに比較して、測定対象試料の成分を分析することを特徴とする質量分析方法。
【請求項7】
請求項6記載の質量分析方法において、第5以降の前駆イオンを選出して、イオンマススペクトルを取得し、基準試料と測定対象試料とを互いに比較して、測定対象試料の成分を分析することを特徴とする質量分析方法。
【請求項8】
試料をイオン化し、質量分析を行なうことにより試料の成分であるタンパク質及びペプチドを分析する質量分析方法において、
基準試料をイオン化してマススペクトルを取得し、取得したマススペクトルの中から選出したイオンを第1の前駆イオンとする第1の前駆イオンマススペクトルを取得し、上記第1の前駆イオンのリストを作成し、
測定対象試料をイオン化してマススペクトルを取得し、取得したマススペクトルから、上記第1の前駆イオンのリストに基づいて、上記第1の前駆イオンと共通するイオンを除外して選出したイオンを第2の前駆イオンとする第2の前駆イオンマススペクトルを取得し、
上記第1の前駆イオンのうちの上記測定対象試料のマススペクトルのイオンと共通するイオンのマススペクトルと、上記第1の前駆イオンのうちの上記測定対象試料のマススペクトルのイオンとは異なるイオンのマススペクトルと、上記第2の前駆イオンのマススペクトルとを選出し、
上記選出したそれぞれのマススペクトルを互いに比較することにより、測定対象試料の成分であるタンパク質及びペプチドを分析することを特徴とする質量分析方法。
【請求項9】
試料の成分を分離する試料分離手段と、この試料分離手段により分離された成分をイオン化するイオン化手段と、このイオン化手段によりイオン化された成分を質量分析する質量分析手段と、上記イオン化手段の動作を制御すると共に、上記質量分析手段により分析されるイオンを選択し、MS分析を行なうように上記質量分析手段を制御する制御手段とを備える質量分析装置において、
上記制御手段は、
基準試料をイオン化してマススペクトルを取得し、取得したマススペクトルの中から選出したイオンを第1の前駆イオンとする第1の前駆イオンマススペクトルを取得し、
測定対象試料をイオン化してマススペクトルを取得し、取得したマススペクトルから、上記第1の前駆イオンと共通するイオンを除外して選出したイオンを第2の前駆イオンとする第2の前駆イオンマススペクトルを取得し、
上記第1の前駆イオンのうちの上記測定対象試料のマススペクトルのイオンと共通するイオンのマススペクトルと、上記第1の前駆イオンのうちの上記測定対象試料のマススペクトルのイオンとは異なるイオンのマススペクトルと、上記第2の前駆イオンのマススペクトルとを選出し、
上記選出したそれぞれのマススペクトルを互いに比較することにより、測定対象試料の成分を分析することを特徴とする質量分析装置。
【請求項10】
請求項9記載の質量分析装置において、上記試料分離手段は、液体クロマトグラム又はガスクロマトグラムであり、上記制御手段は、試料分離手段により分離された試料成分をイオン化させ、そのイオンの質量、保持時間又はイオンの質量、保持時間、価数、同位体イオンの強度パターンに基づいて、測定対象試料の成分を分析することを特徴とする質量分析装置。
【請求項11】
請求項9記載の質量分析装置において、上記制御手段は、基準試料に対して、取得したマススペクトルの中からの前駆イオンの選択を、複数回行い、前駆イオンを選択する毎に、上記測定対象試料の前駆イオンを決定して、マススペクトルを取得し、上記第1の前駆イオンのうちの上記測定対象試料のマススペクトルのイオンと共通するイオンのマススペクトルと、上記第1の前駆イオンのうちの上記測定対象試料のマススペクトルのイオンとは異なるイオンのマススペクトルと、上記第2の前駆イオンのマススペクトルとを抽出することを特徴とする質量分析装置。
【請求項12】
請求項9記載の質量分析方法において、上記取得したそれぞれのマススペクトルのイオン強度に基づいて、測定対象試料の各成分量を分析することを特徴とする質量分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−329896(P2006−329896A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−156508(P2005−156508)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】