説明

質量分析用基板並びに分析方法および装置

【課題】基板の表面に固定した物質をレーザ光照射により該表面から脱離させ、その物質を捕捉して質量分析する方法において、より低パワーのレーザ光を使用可能とする。
【解決手段】基板の表面に固定した物質をレーザ光照射により該表面から脱離させ、そのイオンを捕捉して質量分析する方法に用いられる質量分析用基板として、その表面の少なくとも一部が、レーザ光照射を受けて局在プラズモンを励起し得る金属粗面(例えばアルミナ層5の表面に形成された多数の微細孔6内に、該微細孔6の径よりも大きな頭部がアルミナ層5表面よりも上に突出した状態で金微粒子8が充填されてなる)とされている基板3を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の表面に固定した物質をレーザ光照射により該表面から脱離させ、その脱離した物質を捕捉して質量分析する装置および方法に関するものである。
【0002】
また本発明は、そのような装置あるいは方法に用いられる質量分析用基板に関するものである。
【背景技術】
【0003】
従来、試料中における特定物質の存在等を検出する方法の一つとして、例えば特許文献1に示されラマン分光法が知られている。同文献に示される方法は、表面に金属微粒子が分布配置されてなる誘電体基板を用いるものであり、その基板の表面に試料を接触させてから該表面にレーザ光を照射し、それによって生じるラマン散乱光を分光検出し、検出されたスペクトルに基づいて基板表面に特定物質が付着したか否かを、さらにはその物質の分子構造等を分析するものである。その場合、表面に金属微粒子が分布配置されてなる誘電体基板を用いることにより、該金属微粒子の部分にレーザ光が照射されたとき局在プラズモンが励起され、ラマン散乱光が局在プラズモン共鳴により顕著に増強されて高い分析精度が得られることが分かっている。
【0004】
なお、上述のように表面に金属微粒子が分布配置されてなる誘電体基板の他に、金属表面に多数の微細凹凸が加工されてなる基板や、特許文献2に示されるように、誘電体の表面に形成された多数の微細孔内に、該微細孔の径よりも大きな頭部が誘電体表面よりも上に突出した状態で金属微粒子が充填されてなる基板を用いても、同様に局在プラズモン共鳴によるラマン散乱光増強効果が得られる。
【0005】
他方、物質の質量を分析する装置の一つとして従来、例えば特許文献3に示されるような飛行時間型質量分析装置(Time of Flight Mass Spectrometer:TOF-MAS)が公知となっている。このTOF-MASは、基板の表面に固定した物質をレーザ光の照射等により該表面から脱離させ、そのイオンが所定距離を飛行するのに要した時間を検出し、その飛行時間に基づいて物質の質量を分析するものである。
【0006】
ところで、上述したラマン分光法によってある試料中に特定物質が存在することを検出した場合、次に上記TOF-MAS等によってその物質の質量を分析することが考えられるが、そのようにする際には、存在を検出した物質を取り違えることなく質量分析にかけることが当然必要となる。なお特許文献4には、表面プラズモン共鳴を利用したラマン分光法による物質検出と、TOF-MASによる質量分析とを同一の基板を用いて行うようにした質量分析方法が提案されている。
【特許文献1】特開2005−195441号公報
【特許文献2】特開2005−172569号公報
【特許文献3】特開平9−320515号公報
【特許文献4】特表平11−512518号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献4に示される質量分析方法によれば、ラマン分光法によって試料中に存在を確認した特定物質を取り違えることなく質量分析にかけることが可能になるが、この方法においては、基板の表面に固定した物質をイオン化させて該表面から脱離させる上で、高パワーのレーザ光を必要とするという不都合が認められる。
【0008】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、基板の表面に固定した物質をレーザ光照射により該表面から脱離させ、そのイオンを捕捉して質量分析する方法および装置において、従来と比べてより低パワーのレーザ光を使用可能とすることを目的とするものである。
【0009】
さらに本発明は、上述のようにレーザ光の低パワー化を実現できる質量分析用基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による第1の質量分析用基板は、先に述べたように基板の表面に固定した物質をレーザ光照射により該表面から脱離させ、その物質を捕捉して質量分析する方法に用いられる前記基板であって、その表面の少なくとも一部が、レーザ光照射を受けて局在プラズモンを励起し得る金属粗面とされていることを特徴とするものである。
【0011】
また本発明による第1の質量分析用基板は、基板の表面に固定したイオン化物質をレーザ光照射により該表面から脱離させ、そのイオン化物質を捕捉して質量分析する方法に用いられる前記基板であって、その表面の少なくとも一部が、レーザ光照射を受けて局在プラズモンを励起し得る金属粗面とされていることを特徴とするものである。
【0012】
さらに本発明による第3の質量分析用基板は、基板の表面に固定した物質をレーザ光照射によりイオン化させて該表面から脱離させ、そのイオン化物質を捕捉して質量分析する方法に用いられる前記基板であって、その表面の少なくとも一部が、レーザ光照射を受けて局在プラズモンを励起し得る金属粗面とされていることを特徴とするものである。
【0013】
なお上述の金属粗面としては、例えば金属表面に多数の微細凹凸が加工されてなるものや、誘電体の表面に多数の金属微粒子が固定されてなるもの、さらには、誘電体の表面に形成された多数の微細孔内に、該微細孔の径よりも大きな頭部が誘電体表面よりも上に突出した状態で金属微粒子が充填されてなるものを適用することができる。
【0014】
また上記金属粗面の上には、該粗面と前記物質とを結び付ける少なくとも1つの層が形成されていることが望ましい。さらに、上記金属粗面あるいはそれと平行な基板表面の一部には、位置決めマークが形成されていることが望ましい。
【0015】
一方本発明による第1の分析方法は、上述した本発明の質量分析用基板を用いる分析方法であって、
質量分析用基板の前記金属粗面に分析対象物質を付着させた後、分析対象物質をイオン化し、この金属粗面にレーザ光を照射することにより金属粗面から脱離したイオンを捕捉して質量分析することを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明による第2の分析方法は、同じく上述した本発明の質量分析用基板を用いる分析方法であって、
質量分析用基板の前記金属粗面に分析対象物質を付着させた後、この金属粗面にレーザ光を照射して前記物質をイオン化させ、
それにより金属粗面から脱離したイオンを捕捉して質量分析することを特徴とするものである。
【0017】
なお上述の質量分析は、例えばTOF-MASによって行うことが好ましい。
【0018】
また、本発明による第3の分析方法は、同じく本発明の質量分析用基板を用いる分析方法であって、
質量分析用基板の前記金属粗面に試料を接触させた後、該試料が接触している部分の金属粗面にレーザ光を照射して局在プラズモンを励起させ、
この局在プラズモンの励起を利用して、試料中における分析対象物質の存在を検出し、
前記物質をイオン化させ、次いで、前記局在プラズモンを励起させるレーザ光が照射された部分と同じ部分の金属粗面にレーザ光を照射して金属粗面から脱離したイオン化物質を捕捉して質量分析することを特徴とするものである。
【0019】
なお、上記試料中における分析対象物質の存在は、例えばラマン分光法によって検出することが望ましい。
【0020】
ここで、本発明による第3の分析方法においては、質量分析用基板として特に前述の位置決めマークが形成されたものを用いた上で、局在プラズモンを励起させるときのレーザ光照射部分と、前記物質を脱離させるときのレーザ光照射部分とを、この位置決めマークを参照して一致させることが望ましい。
【0021】
他方、本発明による第1の分析装置は、上述した本発明の質量分析用基板を用いる分析装置であって、
分析対象物質が付着している前記質量分析用基板の金属粗面にレーザ光を照射して、前記物質をイオン化させるレーザ光照射手段と、
このレーザ光照射により金属粗面から脱離した物質を捕捉して質量分析する分析手段とからなることを特徴とするものである。
【0022】
なお、上述の分析手段としては、TOF-MASを適用することが好ましい。
【0023】
また、本発明による第2の分析装置は、同じく本発明の質量分析用基板を用いる分析装置であって、
試料が接触している部分の前記金属粗面にレーザ光を照射して局在プラズモンを励起させる第1のレーザ光照射手段と、
この局在プラズモンの励起を利用して、試料中における分析対象物質の存在を検出する検出手段と、
前記局在プラズモンを励起させるレーザ光が照射された部分と同じ部分の金属粗面にレーザ光を照射して、前記物質を基板から脱離させる第2のレーザ光照射手段と、
この第2のレーザ光照射手段のレーザ光照射により金属粗面から脱離した物質を捕捉して質量分析する分析手段とからなることを特徴とするものである。
【0024】
なお、上述の検出手段としては、ラマン分光法によって試料中における前記物質の存在を検出する手段を好適に用いることができる。
【0025】
ここで、本発明による第2の分析装置においては、質量分析用基板として前記位置決めマークが形成された質量分析用基板を用いた上で、局在プラズモンを励起させるときのレーザ光照射部分と、前記物質を脱離させるときのレーザ光照射部分とを、この位置決めマークを参照して一致させる位置決め手段を備えていることが望ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明者は、レーザ光照射を受けて局在プラズモンを励起し得る金属粗面に付着させた物質は、比較的低いパワーのレーザ光照射で基板から脱離させることが可能であることを見出した。この知見に基づいて本発明の質量分析用基板は、その表面の少なくとも一部が、レーザ光照射を受けて局在プラズモンを励起し得る金属粗面とされているので、例えばTOF-MASのようにレーザ光照射により分析物質を脱離させる装置に適用した場合は、従来装置と比べてより低いパワーのレーザ光照射で分析物質をイオン化させることが可能になる。
【0027】
また本発明による分析方法および分析装置は、上述のような質量分析用基板を適用しているので、局在プラズモンの励起を利用して試料中における所定物質の存在を検出した後に、基板に比較的低いパワーのレーザ光を照射して分析物質を脱離させ、質量分析できるものとなる。
【0028】
特に本発明の第3の分析方法および第2の分析装置においては、試料中における分析対象物質の存在検出に続けて、その物質の質量分析を行うように構成されているので、分析対象物質の存在検出と質量分析との間で、試料を取り違えるようなことを防止できる。
【0029】
さらに、上記第3の分析方法および第2の分析装置において、特に質量分析用基板として位置決めマークが形成されている基板を用いた上で、局在プラズモンを励起させるときのレーザ光照射部分と、分析対象物質をイオン化させるときのレーザ光照射部分とを、上記位置決めマークを参照して一致させるようにした場合は、それら2回のレーザ光照射がなされる基板上の位置を正確に一致させることができる。したがってこの場合は、試料を取り違えることが防止されることは勿論のこと、局在プラズモンの励起に基づいて存在を確認した物質そのものについて、それを試料中の別の物質と取り違えることなく質量分析にかけることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態による質量分析用基板について説明する。まず、質量分析用基板の作製方法について説明する。本発明の質量分析用基板は種々の方法によって作製できるものであるが、ここでは、その一例としてアルミニウムの基体を用いた作製方法を示す。図1(a)〜(c)は、本実施形態の質量分析用基板が作製されるまでの各過程における基板断面の形状を概略的に示すものである。
【0031】
まず図1(a)は、質量分析用基板の作製プロセスに入る前の基体1を表している。本実施形態では、基体1としてアルミニウム層4のみからなる基体を用いる。ただし基体1は、例えばガラスなど、アルミニウム以外の材料からなる支持部材の上に、アルミニウムやアルミニウム合金の層が設けられた構造でもよい。すなわち、表層がアルミニウムを主成分とする材料からなるものであれば、他の部分の構造は特に限定されない。
【0032】
質量分析用基板を作製する上で、まず、陽極酸化装置を用いて基体1の表面を陽極酸化処理する。そのために、まず基体1をホルダに固定した状態で対向電極とともに反応容器内の電解液中に配置する。電解液は、例えばシュウ酸、燐酸、硫酸、クロム酸などの酸性電解液とする。あるいは、電解液は、2種類以上の酸性溶液を混合したものであってもよい。
【0033】
次に、基体1と対向電極の間に電圧を印加する。電圧を印加するときは、基体1を電源のプラス側に、対向電極を電源のマイナス側に接続する。電圧を印加すると、まず基板1の表面に酸化被膜が形成され、その酸化被膜の表面に酸による溶解作用で微小な孔が形成される。この中のいくつかの孔は、陽極酸化が進行すると優先的に成長し、ほぼ等間隔に配列される。孔が形成された部分は、他の部分よりも高い電場が加わるため溶解が促進され、アルミニウムの表面に対して垂直な方向に孔が成長する。一方で、孔の周辺は溶解されずに残る。自然形成された細孔が非常に高い規則性をもって配列されることは、陽極酸化により得られるアルミナの1つの特徴である。
【0034】
図1(b)は、上述の陽極酸化処理により、表面に複数の微細孔6を有するアルミナ層5が形成された基体2を表している。微細孔6は、基体表面に、ほぼ全面にわたって規則的に配置される。微細孔の孔径、深さおよび間隔は、陽極酸化の条件(例えば陽極酸化に用いる電解液の濃度や温度、電圧の印加方法、電圧値、時間など)によって変化する。通常、微細孔の間隔(周期)は10〜500nmで、また微細孔の孔径は5〜400nmの範囲で、それぞれ正確に制御することができるが、本実施形態では、微細孔の孔径は約200nm、深さは約100nm、微細孔の間隔は300nm前後になるように陽極酸化の条件を設定している。
【0035】
なお、特開2001−9800号公報や特開2001−138300号公報には、微細孔の形成位置や孔径を、より細かく制御する方法が開示されている。これらの方法を用いれば、任意の孔径、深さの微細孔を、任意の間隔で配列形成することができ、微細孔の孔径のばらつきを15%以下に抑えることができる。
【0036】
次に、陽極酸化処理により自然形成された微細孔6に、電気メッキにより金(Au)を充填する。電気メッキを行う場合には、微細孔底部7の導通性を確保しておく必要がある。導通性を確保する方法としては、例えば陽極酸化処理を行う際に微細孔底部7のアルミナ層が特に薄くなるように条件を制御する方法、陽極酸化処理を複数回繰り返すことにより微細孔底部7のアルミナ層を薄くする方法、微細孔底部7のアルミナ層をエッチングにより除去する方法などが考えられる。
【0037】
電気メッキは、基体2をめっき液中で処理することにより行う。アルミナ層5が非導電性であるのに対し、微細孔底部7は上記処理により導通性が確保されている。このため、電場が強い微細孔6内において優先的に金属が析出し、微細孔6に金が充填される。
【0038】
このような金属微粒子作製プロセスでは、通常、微細孔6内に金属が充填された時点でメッキ処理を終了する。すなわち、基体2の表面と同位置まで金属が充填された時点あるいはそれ以前にメッキ処理を終了する。なおこの場合は、金が基体2の表面と同位置まで充填された後もメッキ処理を継続する。言い換えれば、微細孔6が金で完全に埋められ、さらに微細孔6の周辺に過剰に金がメッキされるまで処理を継続する。
【0039】
すなわち、微細孔6を埋めることによって形成するのは金微粒子の下部に過ぎず、さらにこの上に金微粒子の頭部を形成することによって金微粒子8を完成させる。微細孔6が金で完全に埋められた後も、微細孔6の周辺の電場の影響により、金は微細孔6の周辺で析出される。これにより、各微細孔6において、図1(c)に示すように、頭部が基体2の表面よりも上に突出し、且つ、その頭部の径が微細孔6の孔径よりも大きい(いわばマッシュルーム型の)金微粒子8が形成される。
【0040】
本実施形態においてメッキ処理は、金微粒子8の頭部同士の隙間が10nm以下になるまで継続する。例えば、実験段階で、電子顕微鏡により金微粒子8の頭部間の距離を計測しながらメッキを行い、ほとんどの金微粒子8について頭部間の距離が10nm以下となるような処理時間を予め計測しておく。製品を製造する過程では、実験の結果をもとに、メッキ処理の時間を管理すれば、頭部間の距離が10nm以下になった時点でメッキを終了することができる。
【0041】
以上の方法においてはメッキ処理のみで金属微粒子を形作るので、比較的簡単に質量分析用基板を作製することができる。また、質量分析用基板の表面構造として、金微粒子8の頭部がほとんど隙間なく配列された構造を得ることができる。微細孔の間隔は、微細孔の形成方法によっては十分狭くできない場合があるが、この方法によれば、そのような場合であっても、金属微粒子の頭部同士の隙間を数nmにまで狭くすることができる。
【0042】
図2は、質量分析用基板3の一部を表す斜視図である。この図に示すように、金微粒子8は質量分析用基板3の表面全体に亘って高密度で配列される。質量分析用基板3の微細孔6の孔径は200nm程度であり、深さは孔径の半分の100nm程度である。質量分析用基板3の表面は均質な構造をしており、孔径のばらつきは15%以下である。金微粒子8の下部の径は、微細孔6の孔径よりも少し小さいが概ね200nm程度である。金微粒子8の頭部の径は微細孔6の孔径よりも大きく、隣接する頭部同士の隙間は、数nmである。
【0043】
次に、上述の通りにして作製された質量分析用基板3を用いるラマン分光装置、およびその装置を用いてなされるラマン分光法による分析について説明する。図3は、ラマン分光装置の概略構成を示すものである。図示のようにこの装置は、透明窓10を備えた容器9と、容器9の底部に固定された質量分析用基板3と、容器9内の質量分析用基板3に向けてレーザ光を照射する第1のレーザ光照射手段としてのレーザ光源12と、質量分析用基板3の表面における散乱光を分光して散乱光のスペクトルを得、ラマン散乱光が含まれる場合にはそれを検出する分光検出器13とから構成されている。
【0044】
なお質量分析用基板3は、前述した金微粒子8の頭部が突出している面が上を向いた状態で配置される。また容器9内には、ラマン分光分析の対象となる液体試料11が充填され、液体試料11の中の成分が質量分析用基板3の表面に付着し得る状態となっている。
【0045】
質量分析用基板3に対して、透明窓10越しに光源12からレーザ光L1を照射すると、そのレーザ光L1は質量分析用基板3の表面で散乱され、散乱光は分光検出器13により検出される。分光検出器13は、検出した散乱光を分光し、ラマンスペクトルを生成する。生成されたラマンスペクトルは、図示されない表示画面あるいはプリンタに出力される。
【0046】
本実施形態において、レーザ光L1としては例えば波長が532nm、633nm、785nm等のものが適用される。しかしレーザ光L1の波長はこれに限られるものではなく、質量分析用基板3が最も強くプラズモン共鳴する波長付近の波長とすることが好ましい。また、質量分析用基板3への照射位置におけるレーザ光L1のビーム径は5μm〜10μm程度、そのパワーは0.001mW〜1mW程度に設定される。
【0047】
本発明者は、質量分析用基板3の効果を確認するために、図4に示すような比較用構造体14を用いて実験を行った。比較用構造体14は、アルミニウムの基体を陽極酸化することによってアルミニウム層4の上にアルミナ層5を形成し、アルミナ層5の微細孔に金を電気メッキにより充填することにより作製した。ただし、メッキ処理はメッキされた金が基体表面を越える前に終了し、メッキ処理終了後にアルミナ層5を化学的に研磨することによって図に示すように、金微粒子15の頭部を突出させた。なお、微細孔の孔径、深さ、間隔は質量分析用基板3の基体の微細孔と同じであり、したがって金微粒子15の下部の大きさや形状は、質量分析用基板3の金微粒子8の下部の大きさや形状とほぼ同じである。
【0048】
図5は、質量分析用基板3および比較用構造体14を用いて、メタクリル樹脂(PMMA)を対象にラマン分光を行って得られたラマンスペクトルを示す図である。横軸は光の波長の逆数であるラマンシフト(cm−1)、縦軸は散乱光の強度(任意単位a.u.)を表している。スペクトル16は質量分析用基板3を用いてラマン分光を行った場合、スペクトル17は比較用構造体14を用いラマン分光を行った場合に得られるスペクトルである。比較用構造体14を用いてラマン分光を行った場合には有効なラマンスペクトルが得られず、一方、質量分析用基板3を用いた場合には、ラマン散乱光が大幅に増強され、有効なラマンスペクトルが得られていることが分かる。
【0049】
このように質量分析用基板3の表面には、局在プラズモン共鳴を誘起し得る大きさの金微粒子8が高密度で分布配置されており、金微粒子と金微粒子の隙間が比較的狭くなっている。このため、この質量分析用基板3をラマン分光に用いれば、ラマン散乱光が十分に増幅され、分光の精度が向上する。また金微粒子8は、あらかじめ配列形成された微細孔内および微細孔の上に配置されるため、質量分析用基板3の表面は全面に亘って均質な構造となり、そこで、該基板3の全面に亘ってほぼ同じ増強率が得られるようになる。
【0050】
また質量分析用基板3の構造は、基体上に予め形成する微細孔6の大きさを調整することによって制御できるので、製品として提供する場合も、同じ品質の質量分析用基板3を、安定して供給することができる。特に、本実施形態のように、陽極酸化処理とメッキ処理の組み合わせにより質量分析用基板3を作製すれば、金属微粒子の大きさ、形状、間隔を比較的簡単に制御でき、また質量分析用基板の作製コストも低く抑えることができる。
【0051】
上述のような質量分析用基板3を用いてラマン分光を行えば、ラマン散乱光が増強されている分、高い精度でラマン散乱光を検出することができ、正確なスペクトルを得ることができる。これにより、質量分析用基板3に特定の物質が付着したことを正確に検出可能となる。
【0052】
なお質量分析用基板3の金微粒子8には、ラマン分光の対象となる被検体物質と特異的結合する性質を有する物質を固定しておいてもよい。例えば図6に示すように、金微粒子8に抗体物質18を固定しておき、被検体である抗原物質19が表面に接触した場合に、両者の間に特異な化学結合が生じ得る状態とする。この場合、特異的結合が生じた際に分光により得られるスペクトルが大きく変化するので、抗原物質の同定あるいは分子構造の分析を高い精度で行うことができる。金微粒子8に固定する物質の種類は、分光の対象となる被検体物質の種類に応じて異なるものを選択するのがよい。そのような抗体物質18と抗原物質19の組み合わせとしては、例えばストレプトアビジンとビオチンの組み合わせなどが知られている。
【0053】
本実施形態では、金微粒子8の頭部の径は200nm程度であるが、金属微粒子の頭部の径は、局在プラズモン共鳴を誘起し得る大きさであればよく、上記実施形態に限定されない。局在プラズモン共鳴(ラマン散乱光の増強効果)は、金属微粒子の頭部の径が光の波長よりも小さいときに生じるので、金属微粒子の頭部の径は概ね200nm以下とすることが好ましい。ただし、レーザ光の波長によっては、頭部の径が200nmより多少大きくても、局在プラズモン共鳴は誘起され得る。
【0054】
また本実施の形態では、微細孔6の間隔は300nm前後であるが、微細孔の間隔はこれに限定されるものではない。ただし、質量分析用基板にレーザ光を照射する際、少なくとも1個の金微粒子に必ずレーザ光が当たるようにするためには、微細孔の間隔はレーザ光のビーム径以下とするのがよい。
【0055】
ラマン散乱光の増強効果を高めるためには、金属微粒子の頭部同士の隙間を狭くすることが重要であるので、微細孔と微細孔の隙間が広い場合ほど、金属微粒子の頭部の径は大きくする必要がある。反対に、微細孔と微細孔の間隔が狭い場合には、金属微粒子の頭部の径と下部の径の差は小さくてもよい。
【0056】
また、メッキ処理により微細孔6に充填する金属、すなわち金属微粒子の材料は、例えば銀、銅、アルミニウム、ニッケル、コバルトなど、金以外の金属でもよい。ただし、金は耐食性に優れており、また比較的低い温度での蒸着が可能なので、微細孔への充填は容易である。
【0057】
また、本発明の質量分析用基板の他の作製方法としては、基体表面に電子線露光、ナノインプリント、近接場光リソグラフィなどの微細加工技術によって微細孔を形成した後、金属をメッキ法により充填する方法も考えられる。この場合、基体の材料は、必ずしもアルミニウムである必要はない。例えば、導電層の上に、ガラス、レジストなどからなる誘電体層を設け、その誘電体層に導電層まで貫通する微細孔を、上記微細加工技術を用いて形成し、メッキ処理により、その微細孔に金属を充填してもよい。
【0058】
次に、上記ラマン分光によって存在が確認された物質を質量分析する点について説明する。図7は、本発明の一実施形態による分析装置を構成するTOF-MAS(飛行時間型質量分析装置)の基本構成を示すものである。
【0059】
図示の通りこの装置は、前述した質量分析用基板3を保持する基板保持手段20と、そこに保持された質量分析用基板3の表面つまり金微粒子8が配置された側の面の一部に向けてレーザ光L2を照射する第2のレーザ光照射手段としてのレーザ光源21と、質量分析用基板3の表面に対向する状態に配置された引き出しグリッド22と、この引き出しグリッド22を間に置いて質量分析用基板3の表面に対向する状態に配置されたエンドプレート23と、引き出しグリッド22およびエンドプレート23の中央の孔を通して質量分析用基板3の表面に対向するように配置された検出器24と、この検出器24の出力を増幅するアンプ25と、このアンプ25の出力信号を処理するデータ処理部26とから構成されている。
【0060】
なお図示は省略してあるが、上記構成の全体あるいは、少なくとも引き出しグリッド22、エンドプレート23および検出器24は、真空に保たれた分析室内に配置される。ただし本実施形態では、ラマン分光装置から取り出された質量分析用基板3を本装置まで移動させて基板保持手段20に保持させる必要があるので、この基板保持手段20およびレーザ光源21は上記分析室の中ではなくその外部に配設する方が、基板受け渡し機構を簡素化する上でより好ましいと言える。
【0061】
以下、上記構成のTOF-MASによる質量分析について説明する。質量分析に際して質量分析用基板3は、金微粒子8(図1、2参照)が配置された表面がレーザ光源21側に位置する状態で基板保持手段20に保持される。またこの質量分析用基板3には、電圧Vsが印加される。この状態で、レーザ光源21が所定のスタート信号を受けて駆動すると、そこから射出されたレーザ光L2が質量分析用基板3の上記表面に照射される。このレーザ光L2としては、例えば波長が337nmで、パルス幅が50ps(ピコ・秒)〜50ns(ナノ・秒)程度のパルス発振レーザ光が適用される。
【0062】
この表面には、図3に示す液体試料11中に存在した物質が付着しており、この物質はあらかじめイオン化処理が施されていてレーザ光L2が照射されることにより基板から脱離する。こうして発生した物質は、質量分析用基板3と引き出しグリッド22との電位差Vsにより、引き出しグリッド22の方向に引き出されて加速し、質量分析用基板3外の空間をエンドプレート23側に飛行する。このときの物質の速度はその物質の質量数に依存し、質量数が小さいほど大きな速度となる。このイオンは引き出しグリッド22を通過した後、上記空間内をほぼ直進してエンドプレート23を通過し、最終的に検出器24に到達する。
【0063】
上記イオンを検出したことを示す検出器24の出力信号はアンプ25によって所定レベルに増幅され、その増幅された信号はデータ処理部26に入力される。このデータ処理部26には、レーザ光源21に与えられたスタート信号と同期する同期信号が入力される。該データ処理部26はこの同期信号とアンプ25の出力信号とに基づいて上記飛行時間を求め、その飛行時間から導出されるイオンの速度に基づいて、分析対象の物質の質量数を求める。
【0064】
本実施形態のTOF-MASにおいては、脱離させる物質が固定される基板として、金微粒子8が表面に多数配設されてなり、レーザ光照射を受けて局在プラズモンを励起し得る質量分析用基板3を用いているので、従来装置と比べてより低いパワーのレーザ光L2を用いても分析物質を脱離させることが可能になる。具体的に説明すると、本実施形態の構成によれば、従来装置に比べて1桁以上低いレーザパワーで十分なイオン化が可能となっている。
【0065】
なお上記実施形態では、誘電体であるアルミナ層5の表面に形成された多数の微細孔6内に、該微細孔6の径よりも大きな頭部がアルミナ層表面よりも上に突出した状態で金微粒子8が充填されてなる質量分析用基板3が用いられているが、そのような質量分析用基板の他に、例えば金属表面に多数の微細凹凸が加工されてなる金属粗面を有する基板や、平坦な誘電体の表面に多数の金属微粒子が固定されてなる金属粗面を有する基板などを用いることも可能である。それらの質量分析用基板も、レーザ光照射を受けたとき局在プラズモンを励起し得るものである。
【0066】
また本発明による分析装置は、図8に示すように、質量分析用基板3において局在プラズモンを励起させるレーザ光L1を発する第1のレーザ光照射手段31と、質量分析用基板3に付着している物質をイオン化させるレーザ光L2を発する第2のレーザ光照射手段32とを互いに近い位置に並設する一方、例えばレール33に沿って移動することにより、保持した質量分析用基板3をレーザ光L1の照射位置からレーザ光L2の照射位置まで移送する移送手段34を設けて、基板の移送を自動化することも可能である。
【0067】
そのようにする場合は、質量分析用基板3として表面部分に位置決めマーク3aが形成された基板3を用いることが望ましい。すなわち、そのような質量分析用基板3を用いれば、例えば光電式の読取手段によって位置決めマーク3aを読み取り、読み取られる位置決めマーク3aがレーザ光L1の照射位置、レーザ光L2の照射位置に対して互いに等しい相対位置を取るように移送手段34の動作を制御することにより、質量分析用基板3上でレーザ光L1が照射される部分と、レーザ光L2が照射される部分とを正確に一致させることが可能となる。
【0068】
また、金微粒子8等から構成される金属粗面の上には、該粗面と検出対象物質とを結び付ける少なくとも1つの層が形成されてもよい。そのような層としては、例えばAngewandte.Chemie.International.Edition.2004-43,pp5973-5977のFig1-Cに示される、マレイミド上にさらにペプチドを結合させてなる層を挙げることができる。すなわち、そのような層を例えば金からなる金属粗面の上に結合させて、マトリクス支援レーザ脱離イオン化飛行時間型質量分析装置(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization Time of Flight Mass Spectrometer :MALDI-TOF-MAS)等を用いて質量分析に供することが可能である。
【0069】
さらに、本発明の質量分析用基板を用いて局在プラズモン励起により特定物質の存在を検出する方法としては、前述したラマン分光法に限らず、例えば特開2005−195440号公報に示されるように、金属粗面に特定物質が付着することにより局在プラズモン共鳴波長が変化することを利用して、該金属粗面を経た透過光あるいは反射光の強度を検出して特定物質の存在を検出する方法などを適用することができる。
【0070】
他方、本発明の質量分析用基板を用いて質量分析する方法も前述した飛行時間型質量分析に限られるものではなく、レーザ光照射により該基板から分析対象物質を脱離させるような質量分析方法一般に対して、本発明の質量分析用基板を適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の一実施形態による質量分析用基板の作製方法を説明する図
【図2】上記質量分析用基板の一部を示す斜視図
【図3】本発明の一実施形態による分析装置を構成するラマン分光装置の概略構成図
【図4】比較用構造体の断面構造を示す図
【図5】ラマンスペクトルの一例を表す図
【図6】表面に所定物質が固定された質量分析用基板を示す概略図
【図7】本発明の一実施形態による分析装置を構成する飛行時間型質量分析装置の概略構成図
【図8】本発明の分析装置に適用され得る質量分析用基板の移送機構を示す斜視図
【符号の説明】
【0072】
1 陽極酸化処理前の基体
2 陽極酸化処理後の基体
3 質量分析用基板
4 アルミニウム層
5 アルミナ層
6 微細孔
7 微細孔底部
8 金微粒子
11 液体試料
12 レーザ光源(第1のレーザ光照射手段)
13 分光検出器
21 レーザ光源(第2のレーザ光照射手段)
22 引き出しグリッド
23 エンドプレート
24 検出器
25 アンプ
26 データ処理部
L1、L2 レーザ光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に固定した物質をレーザ光照射により該表面から脱離させ、その物質を捕捉して質量分析する方法に用いられる前記基板であって、その表面の少なくとも一部が、レーザ光照射を受けて局在プラズモンを励起し得る金属粗面とされていることを特徴とする質量分析用基板。
【請求項2】
基板の表面に固定したイオン化物質をレーザ光照射により該表面から脱離させ、そのイオン化物質を捕捉して質量分析する方法に用いられる前記基板であって、その表面の少なくとも一部が、レーザ光照射を受けて局在プラズモンを励起し得る金属粗面とされていることを特徴とする質量分析用基板。
【請求項3】
基板の表面に固定した物質をレーザ光照射によりイオン化させて該表面から脱離させ、そのイオン化物質を捕捉して質量分析する方法に用いられる前記基板であって、その表面の少なくとも一部が、レーザ光照射を受けて局在プラズモンを励起し得る金属粗面とされていることを特徴とする質量分析用基板。
【請求項4】
前記金属粗面が、金属表面に多数の微細凹凸が加工されてなるものであることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の質量分析用基板。
【請求項5】
前記金属粗面が、誘電体の表面に多数の金属微粒子が固定されてなるものであることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の質量分析用基板。
【請求項6】
前記金属粗面が、誘電体の表面に形成された多数の微細孔内に、該微細孔の径よりも大きな頭部が誘電体表面よりも上に突出した状態で金属微粒子が充填されてなるものであることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の質量分析用基板。
【請求項7】
前記金属粗面の上に、該粗面と前記物質とを結び付ける少なくとも1つの層が形成されていることを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の質量分析用基板。
【請求項8】
前記金属粗面あるいはそれと平行な基板表面の一部に、位置決めマークが形成されていることを特徴とする請求項1から7いずれか1項記載の質量分析用基板。
【請求項9】
請求項1から8いずれか1項記載の質量分析用基板を用いる分析方法であって、
質量分析用基板の前記金属粗面に分析対象物質を付着させた後、分析対象物質をイオン化し、この金属粗面にレーザ光を照射することにより金属粗面から脱離したイオンを捕捉して質量分析することを特徴とする分析方法。
【請求項10】
請求項1から8いずれか1項記載の質量分析用基板を用いる分析方法であって、
質量分析用基板の前記金属粗面に分析対象物質を付着させた後、この金属粗面にレーザ光を照射して前記物質をイオン化させ、
それにより金属粗面から脱離したイオンを捕捉して質量分析することを特徴とする分析方法。
【請求項11】
前記質量分析を、TOF-MASによって行うことを特徴とする請求項9または10記載の分析方法。
【請求項12】
請求項1から8いずれか1項記載の質量分析用基板を用いる分析方法であって、
質量分析用基板の前記金属粗面に試料を接触させた後、該試料が接触している部分の金属粗面にレーザ光を照射して局在プラズモンを励起させ、
この局在プラズモンの励起を利用して、試料中における分析対象物質の存在を検出し、
前記物質をイオン化させ、次いで、前記局在プラズモンを励起させるレーザ光が照射された部分と同じ部分の金属粗面にレーザ光を照射して金属粗面から脱離したイオン化物質を捕捉して質量分析することを特徴とする分析方法。
【請求項13】
前記試料中における分析対象物質の存在を、ラマン分光法によって検出することを特徴とする請求項12記載の分析方法。
【請求項14】
前記質量分析用基板として請求項8に記載の質量分析用基板を用い、
前記局在プラズモンを励起させるときのレーザ光照射部分と、前記物質を脱離させるときのレーザ光照射部分とを、前記位置決めマークを参照して一致させることを特徴とする請求項12または13記載の分析方法。
【請求項15】
請求項1から8いずれか1項記載の質量分析用基板を用いる分析装置であって、
分析対象物質が付着している前記質量分析用基板の金属粗面にレーザ光を照射して、前記物質を脱離させるレーザ光照射手段と、
このレーザ光照射により金属粗面から脱離した物質を捕捉して質量分析する分析手段とからなることを特徴とする分析装置。
【請求項16】
前記分析手段が、TOF-MASであることを特徴とする請求項15記載の分析装置。
【請求項17】
請求項1から8いずれか1項記載の質量分析用基板を用いる分析装置であって、
試料が接触している部分の前記金属粗面にレーザ光を照射して局在プラズモンを励起させる第1のレーザ光照射手段と、
この局在プラズモンの励起を利用して、試料中における分析対象物質の存在を検出する検出手段と、
前記局在プラズモンを励起させるレーザ光が照射された部分と同じ部分の金属粗面にレーザ光を照射して、前記物質を脱離させる第2のレーザ光照射手段と、
この第2のレーザ光照射手段のレーザ光照射により金属粗面から脱離した物質を捕捉して質量分析する分析手段とからなることを特徴とする分析装置。
【請求項18】
前記検出手段が、ラマン分光法によって試料中における前記物質の存在を検出するものであることを特徴とする請求項17記載の分析装置。
【請求項19】
前記質量分析用基板として請求項8に記載の質量分析用基板を用い、
前記局在プラズモンを励起させるときのレーザ光照射部分と、前記物質を脱離させるときのレーザ光照射部分とを、前記位置決めマークを参照して一致させる位置決め手段を備えたことを特徴とする請求項17または18記載の分析装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−171003(P2007−171003A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−369441(P2005−369441)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】